JP2006206452A - 1重項酸素の不活性化剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ヒトの皮膚の老化防止や食品の劣化防止のために活性酸素中の1重項酸素を不活性化することを目的とする。
【解決手段】 尿酸を飽和水溶液としたもの又は尿酸をグリセリン等の粘稠な液体に懸濁させたものであって、それらをヒトの皮膚に均一に塗布することによって、活性酸素中の1重項を不活性化して皮膚の老化を防止するもので、それにより皮膚の老化を防止する。又、尿酸の水溶液を含浸させ乾燥した包装材にて食品等を収納、包装して1重項酸素を不活性化して食品の劣化を防止する。
【選択図】なし
【解決手段】 尿酸を飽和水溶液としたもの又は尿酸をグリセリン等の粘稠な液体に懸濁させたものであって、それらをヒトの皮膚に均一に塗布することによって、活性酸素中の1重項を不活性化して皮膚の老化を防止するもので、それにより皮膚の老化を防止する。又、尿酸の水溶液を含浸させ乾燥した包装材にて食品等を収納、包装して1重項酸素を不活性化して食品の劣化を防止する。
【選択図】なし
Description
本発明は、大気中に存在する安定な酸素(三重項酸素)から光によって生成した1重項酸素を不活性化することによりヒトの皮膚の老化防止や食品の劣化を防止することを目的とした不活性化剤に関するものである。
周知のようにヒトの血液中に取り込まれた酸素のうちの一部は好中球内でスーパーオキサイドになる。このスーパーオキサイドは、血液中の特異酸素のスーパーオキサイドディスミュターゼによって過酸化水素になる。
生成した過酸化水素は、次の二つの経路で代謝される。
その一つの代謝経路はペルオキターゼによって水になる。
他の一つの代謝経路は、血液中の2価の鉄イオン(Fe2+)とのフェントン反応によって、ヒドロキシラジカル(・OH)と、ヒドロキシイオン(OH-)に変化し、更にヒドロキシラジカルは、血液中の特異酸素のカタラーゼにより水になることが知られている。
このスーパーオキサイドは、血液中の滅菌作用や、血管を収縮させて一酸化窒素と血管拡張作用とのバランスをとり血圧を維持している。
健康な若年者は、上記の代謝経路がスムーズに作用し、これら活性酸素種による血管壁等に損傷が生じない。
しかし、疾病や老化により、スーパーオキサイドディスミュターゼの産生能が低下するため、ヒドロキシラジカル生成以降の代謝速度が遅延化し、血管に血栓が形成された際、血栓溶解剤を用いて血液再潅流により、高濃度のスーパーオキサイドが生成し、血管壁を損傷して大出血を惹起する等、臨床上でも重大な症状を呈することも稀ではない。
これら活性酸素種のうち、最も反応性が高いのはヒドロキシラジカルであるが、これは極めて短い寿命である。
また、過酸化水素もかなりの反応性をもつが血液中に高濃度で存在する2価の鉄イオンと容易に反応し、しかもぺルオキシターゼとも反応するために寿命はそれほど長くない。スーパーオキサイドは、比較的長寿命であり、PH:7では5秒程度で、血液中では、スーパーオキサイドディスミュターゼの活性により変化するが脂肪酸とはほとんど反応しない。
活性酸素種には、もう1種類、1重項酸素(1O2)がある。
我々が生活しているのは、おおよそ窒素:酸素=80:20の大気中である。特に、ヒト等哺乳動物は、生活環境中の酸素が不足すると、生命の維持さえ危なくなる。また、スーパーオキサイド、過酸化水素、ヒドロキシラジカルなどのひどい活性はないが、元々安定な2重項酸素が20%の大気中に存在している。それがヒトの皮膚や眼における内在性の光増感物質の作用にて生ずる1重項酸素(1O2)が、光により生ずる障害の主たるものと考えられる。即ち、色素分子に光を照射すると励起状態になり、励起エネルギーが酸素にわたされ、1重項酸素(1O2)が生成し、同時に色素分子は基底状態にもどる。
現在市販されている多くの健康食品や化粧品は、この(1O2)消去能が優れていて、老化防止効果があるとされている。
しかし、これら食品は、実際はβ−カロチン(ビタミンA)、トコフェノール(ビタミンE)、リボフラビン(ビタミンB2)であり、それらは、大気中で不安定な物質である。また、β−カロチン、リボフラビンは着色しており、食品として摂取する場合は問題がないが、本発明の目的である皮膚の老化を防止のために、皮膚表面での酸化を防止するための薬剤としては好ましくない。特に顔等の酸化防止のためには使用し得ない。
また、下記文献に記載されているように、1重項酸素(1O2)のスキャヴェンジャーとして、尿酸が知られている。しかし、血液中の1重項酸素に関してであり、しかもその効果についての確認特に定量的効果はほとんど確認されていない。
平成11年8月30日 丸善株式会社発行、高柳輝夫、大坂武男編「夢化学−21 活性酸素」26頁〜27頁
平成11年8月30日 丸善株式会社発行、高柳輝夫、大坂武男編「夢化学−21 活性酸素」26頁〜27頁
本発明は、ヒトの皮膚に塗布することにより皮膚の老化を防止するための活性酸素の不活性化剤を提供するものである。
本発明の不活性化剤は、尿酸を飽和水溶液(66ppm)としたもので、尿酸のもつ活性酸素中の1重項酸素を特異的に不活性化する作用を利用すると共に、これをヒトの皮膚に均一に塗布し得る等のために水溶液としたものである。
また、本発明の他の不活性化剤は、尿酸をグリセリン等の粘稠な液体に懸濁させることにより、前記の活性酸素のうちの1重項を不活性化作用を保持したままヒトの皮膚に均一に塗布し得るようにしたものである。
また、本発明の不活性化剤は、粉末状化粧品に粉末状にした尿酸を一定量混入したものである。
更に、本発明の不活性化剤は、保湿用クリーム等に尿酸を添加・混合したもので、化粧等の際に保湿用クリーム等を肌等に直接塗ることによりそれに含まれる尿酸の作用によって活性酸素中の1重項酸素を不活性化するものである。
以上述べた本発明の不活性化剤は、尿酸が前記の1重項酸素を不活性化する作用が極めて強いことを実験結果により確認したことと、この尿酸をヒトの皮膚に均一に分散塗布することを可能にしたことにより達成し得たものである。
また本発明は、前記不活性化剤を含浸させた包装材である。
以上述べた本発明の不活性化剤は、ヒトの皮膚の老化防止を主目的とするもので、したがって、いずれもヒトの皮膚に塗布しやすい構成になっている。
しかし、尿酸における活性酸素のうちの1重項酸素による酸化作用は、ヒトの皮膚以外にも起こり得る。
したがって、本発明の原理を応用した不活性化剤は、他の用途にも用い得る。
例えば、食料品に1重項酸素が付着する場合、その酸化反応が進行し、褪色現象や硬化現象が起こる。
そのため、食料品に本発明の不活性化剤を塗布することによって、褪色現象や硬化現象を防止あるいは弱めることが可能である。しかし、塗布する方法が困難性を伴う。
そのため、紙製ダンボール箱やフィルム状、シート状の包装材、あるいはポリスチレン、ポリウレタン等の高分子物質性の多孔性の包装材に本発明の不活性剤である尿酸水溶液を含浸させ、乾燥した包装材を用いて、食品類の褪色、硬化を防止あるいは遅延させ、食品の味の低下を防止し得る。
本発明の活性酸素のうちの1重項酸素を不活性化することにより、ヒトの皮膚の老化を防止し得るという効果を有する。
本発明の第1の実施の形態は、尿酸の飽和水溶液をスプレーを用いてヒトの皮膚に噴霧することにより、皮膚表面に均一に塗布するようにしたものである。 なお、尿酸の水溶液を塗布する方法は、出来る限り均一に塗布される方法であれば、スプレーを用いる以外の他の方法も可能である。
次に、本発明の尿酸の水溶液を皮膚に塗布することにより、活性酸素中の1重項酸素の不活性化が可能であることを次の実験にもとづいて説明する。
ポリプロピレン製試験管に50mlの尿酸水溶液を採取し、トルエンで防錆剤を洗浄・除去した軟鉄の小片(25mm×25mm、重量5.153g)を室温にて浸漬し、24時間密栓して放置した。
対照試験として、尿酸水溶液の代わりに蒸留水を50ml採取し、軟鉄の小片(5.238g)を同時に24時間放置した。
24時間後に、前記の試料を紫外、可視部の吸収スペクトルを測定した。
得られたスペクトルを図1、2に示す。
これら図より明らかなように、尿酸水溶液は、可視部にほとんど吸収が認められず、また、紫外部の200〜300nmの領域に、尿酸自体の吸収が認められるのみである。
一方、対照試料の蒸留水を使用した試料は、380〜400nmに明瞭な吸収が出現した。また、この試料は、420〜600nm付近にもショルダー様の吸収が認められる。
これらの吸収は、いずれも酸化第2鉄(Fe3+イオン)に帰属すると考えられる。つまり、酸化第2鉄は、水への溶解性は貧しく、肉眼でも黄褐色や赤褐色のコロイド状沈殿物が観察された。
以上のように、尿酸を添加することによって、鉄の酸化作用が抑制されることが確認された。このことは、尿酸によって1O2がスキャヴェンジされることが証明されたことになる。
次に、このような尿酸の1O2へのスキャヴェンジング効果をヒトの皮膚の老化防止のために利用することを考え、次のようなシミュレーションを行なった。 それは、ヒトの皮膚を構成する脂質のモデルとしてオレイン酸メチル(C18:1)、リノール酸メチル(C18:2)を選択した。
このことにより、もとの脂質の柔軟性が失われ、皮膚は硬化した触感を示すようになり、いわゆる分子レベルでの老化反応が進行することになる。
今回の実験においては、脂質のモデルとして用いるオレイン酸メチルもリノール酸メチルも水には不溶性であるため、それらをメタノールに溶解した。
一方、尿酸は、メタノール等の有機溶媒には不活性であるため、蒸留水に溶解した。
上記の脂肪酸メチルを夫々溶解したメタノール溶液と、尿酸水溶液あるいは蒸留水のみとを石英製試験管中で所定量混合してシリコンゴムで密栓し、423nmの単色光ランプにて室温中で5時間照射し、ガスクロマトグラフィーにて夫々脂肪酸メチルのピークの面積値の変化率を次の式より算出した。
R=(Sb−Sa)/Sb
ここで、Sbは照射前のピーク面積値、Saは照射後のピークの面積値である。
ここで、Sbは照射前のピーク面積値、Saは照射後のピークの面積値である。
この表1から明らかなように、オレイン酸メチルも、リノール酸メチルも蒸留水を加えた試料に比べ尿酸水溶液を加えたものは、脂肪酸メチルの変化率が低値であり、尿酸による酸化反応が抑制されることがわかる。
このように、先に述べた本発明の第1の実施の形態のように、尿酸の水溶液を噴霧する等の手段により、ヒトの皮膚に均一に塗布することにより皮膚表面の1重項酸素を不活性化することが可能であり、皮膚の老化等を防止し得る。
本発明の第2の実施の形態は、尿酸の飽和水溶液とエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコールとを任意の割合で混合した液体状にしたものである。これによりこの第2の実施の形態の不活性化剤をヒトの皮膚に塗布することにより、皮膚の老化防止等の効果を得ることができる。
更に、本発明の第3の実施の形態は、粉末状の尿酸を粉末状化粧品に一定量混合したものである。これにより、化粧用パフにて顔面等に塗布することにより、尿酸の粉末が皮膚に均一に分散させ塗布されることになり、皮膚の老化防止効果を得ることが可能である。
同様に、他の第4の実施の形態として、保湿用クリーム等のクリームに粉末状尿酸を分散・混合させた不活性化剤がある。
これにより、本発明の不活性化剤を含むクリームを、皮膚に塗ることにより、皮膚の老化防止が可能になる。
以上述べた各実施の形態の1重項酸素の不活性化剤は、ヒトの皮膚に塗布することにより、皮膚の老化防止に有効である。
更に、尿酸は白色であるため、顔等にも塗布することができ、また尿酸は生体由来の物質であるので、無毒、無害であり、また使用料が微弱であっても前記効果が十分得られるので、ヒトの皮膚に対する安全性は極めてたかい。
また、前記実施の形態以外の実施の形態は、紙製のダンボールや、フィルム状やシート状の包装材、あるいはポリスチレンやポリウレタン高分子物質製の多孔性の包装材に本発明の不活性化剤である尿酸水溶液を含浸・乾燥した食品包装材である。
新鮮な食品類は時間が経過すると共に、しばしば褪色現象や硬化現象が認められる。
食品類におけるこれら現象は、その表面の蛋白質や脂質等が1重項酸素により酸化することに他ならない。
したがって、前記実施の形態の包装材を用いて、食品類を収納、包装することにより、本発明の不活性化剤の作用によって、食品中の脂肪酸の2重結合の1重項酸素による酸化反応を遅延することが可能である。つまり食品類の褪色現象や硬化現象の遅延により食品類の商品価値の低下、食品の味の低下を防止し得る。
本発明の不活性化剤は、ヒトの皮膚にスプレーすることや塗ることにより簡単に使用し得、それにより皮膚の老化等を防止することが可能であり、しかも無毒、無害である。
Claims (5)
- 尿酸の希薄液よりなり、ヒトの皮膚に塗布して活性酸素種のうちの1重項酸素を特異的に不活性化する不活性化剤。
- 尿酸をグリセリン等の粘稠な液体に懸濁させた薬剤で、ヒトの皮膚に塗布して活性酸素種のうちの1重項酸素を特異的に不活性化する不活性化剤。
- 粉末状化粧品に尿酸を混合した活性酸素種のうちの1重項酸素を不活性化する不活性化剤。
- 保湿用クリームに尿酸を添加・混合し、ヒトの皮膚に塗布して活性酸素種のうちの1重項酸素を特異的に不活性化する不活性化剤。
- 紙製包装材あるいはポリスチレンやポリウレタン等の高分子物質の発泡多孔性の包装材に請求項1の不活性化剤を含浸させ、乾燥させて、空気中の酸素のうちの一重項酸素を不活性化して、食品類の品質の劣化を防止し得る食品類の包装材。
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