JP2006205802A - 自動二輪車のブレーキ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 前後連動ブレーキシステムを採用した自動二輪車の制動フィーリングを向上する。
【解決手段】 前輪側のブレーキ操作により発生した前輪側の液圧に応じて、後輪側のブレーキキャリパ4に供給する液圧を調整する自動二輪車のブレーキ装置において、後輪側のブレーキキャリパ圧の調整パターンを、前輪側のマスターシリンダ圧の時間的な増加率が所定値以上の場合と所定値未満の場合とで異にする。
【選択図】 図1

Description

この発明は、自動二輪車のブレーキ装置に関する。
自動二輪車のブレーキ装置の中には、前輪側のブレーキ操作に後輪側の車輪制動手段が連動するようにしたものがある。例えば、前輪側のブレーキレバーを操作するとマスターシリンダを介して前輪側のブレーキキャリパに制動圧が作用すると共に前記マスターシリンダに作用する圧力の一部がプロポーショニングバルブにより後輪側のブレーキキャリパにも作用して後輪側を制動するものである(特許文献1参照)。
以下、前後輪の一方側をブレーキ操作することにより前後の車輪制動手段が連動して制動動作するブレーキシステムをCBS(COMBINED BRAKE SYSTEM)と称す。
特開平04−368267号公報
しかしながら、従来のプロポーショナルバルブにより後輪側のブレーキキャリパに圧力を供給するCBSでは、前後輪の制動圧はプロポーショナルバルブの特性により一義的に決定されてしまい、前輪側のブレーキレバーからの入力状態によっては、車両の諸元、路面の摩擦係数等の影響により、後輪側が前輪側に比較して路面への接地荷重の比較的大きな減少が生じ、制動フィーリング上好ましくないという課題がある。
そこで、この発明は、前後連動ブレーキシステムを採用した自動二輪車の制動フィーリングをより良いものにすることができる自動二輪車のブレーキ装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、前輪側のブレーキ操作により発生した前輪側の液圧に応じて、後輪側の車輪制動手段(例えば、後述する実施形態における後輪側のブレーキキャリパ4)に供給する後輪側の液圧を調整する自動二輪車のブレーキ装置において、前記前輪側の液圧の時間的な増加率に応じて前記後輪側の液圧を制御するようにしたことを特徴とする。
このように構成することにより、前輪側の液圧の時間的な増加率に応じて後輪側の液圧を制御するので、後輪の路面への接地荷重の比較的大きな減少を抑制することが可能になる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記後輪側の液圧の調整パターンが、前記前輪側の液圧の時間的な増加率が所定値以上の場合と前記所定値未満の場合とで異なることを特徴とする。
このように構成することにより、前輪側の液圧の時間的な増加率が所定値未満では後輪の路面への接地荷重の比較的大きな減少が発生する程度が低く、前記所定値以上では後輪の路面への接地荷重の比較的大きな減少が発生する程度が大きいことが予測されるので、前記所定値を境にして後輪側の液圧の調整パターンを変えることで、後輪の路面への接地荷重の比較的大きな減少を抑制することが可能になる。
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の発明において、前記増加率が前記所定値以上の場合の前記後輪側の液圧の調整パターンは、前記増加率が前記所定値に達してからの経過時間に応じて設定され、初めは前記後輪側の液圧が急増し、その後ほぼ一定になり、漸次減少することを特徴とする。
このように構成することにより、前輪側の液圧の急増に遅れずに、後輪側の車輪制動手段に供給される液圧を急増させることができ、その結果、前輪側の制動力の増大に遅れずに後輪側に大きな制動力を発生させることができる。この後輪側の制動により後輪側のサスペンションを沈み込ませることができるので、前輪側の制動による後輪の路面への接地荷重の比較的大きな減少を抑制することができる。
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前輪側のブレーキ操作により発生した前輪側の液圧を検出する圧力検出手段(例えば、後述する実施形態における前輪の圧力センサ28)と、前輪側の車輪制動手段(例えば、後述する実施形態における前輪側のブレーキキャリパ4)に供給される液圧を検出する圧力検出手段(例えば、後述する実施形態における前輪側の圧力センサ29)と、後輪側の車輪制動手段(例えば、後述する実施形態における後輪側のブレーキキャリパ4)に供給される液圧を検出する圧力検出手段(例えば、後述する実施形態における後輪側の圧力センサ29)と、を備えることを特徴とする。
このように構成することにより、各圧力検出手段の検出値に基づいて、前輪側の車輪制動手段に供給される液圧と後輪側の車輪制動手段に供給される液圧の配分を適切に制御することが可能になる。これは特に、前後輪が独立してバイワイヤ式の場合に有効である。
請求項5に係る発明は、請求項2に記載の発明において、前記液圧の調整パターンは、前記前輪側の液圧の時間的な増加率が所定値以上の場合は、前記所定値未満の場合に設定される後輪側の液圧よりも大きな液圧が設定されることを特徴とする。
このように構成することにより、前輪側の液圧の時間的な増加率が所定値以上の場合に、前記所定値未満の場合よりも後輪側の液圧を大きくすることができる。
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の発明において、前記液圧の調整パターンは、前記前輪側の液圧に対する液圧マップにて設定され、前記前輪側の液圧の時間的な増加率が前記所定値未満の場合の液圧マップは、前記前輪側の液圧が小さい領域では増加し、中間の領域では一定値となり、大きい領域では漸減する如く設定されることを特徴とする。
このように構成することにより、前輪側の液圧の時間的な増加率が所定値未満のときには、前輪側の液圧の増加に応じて後輪側の制動力を大きくすることができ、且つ、前輪側の液圧が大きい領域では後輪側をスリップしにくくすることができる。
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の発明において、前記前輪側の液圧の時間的な増加率が前記所定値以上の場合の液圧マップは、前記一定値よりも大なる一定値が設定されることを特徴とする。
このように構成することにより、前輪側の液圧の時間的な増加率が所定値以上の場合に、前記所定値未満の場合よりも後輪側の液圧を大きくすることができる。
請求項8に係る発明は、請求項7に記載の発明において、前記液圧マップにより検索された液圧値は、所定時間経過後、漸減されることを特徴とする。
このように構成することにより、前輪側の制動による後輪の路面への接地荷重の比較的大きな減少が抑制された後に、後輪側の液圧を低下させることができる。
請求項9に係る発明は、請求項8に記載の発明において、前記前輪側の液圧の時間的な増加率が前記所定値以上の場合のマップ値と前記所定値未満の場合のマップ値は比較され、どちらか大きい方のマップ値を後輪側の液圧値として設定されることを特徴とする。
このように構成することにより、前輪側の制動による後輪の路面への接地荷重の比較的大きな減少が抑制された後に、前輪側の液圧の時間的な増加率が所定値未満の場合の液圧の調整パターンに戻すことができる。
請求項1に係る発明によれば、前輪側の液圧の時間的な増加率に応じて後輪側の液圧を制御するので、後輪の路面への接地荷重の比較的大きな減少を抑制することが可能になり、制動フィーリングが向上する。
請求項2に係る発明によれば、前輪側の液圧の時間的な増加率が所定値未満では後輪の路面への接地荷重の比較的大きな減少が発生する程度が低く、前記所定値以上では後輪側の路面への接地荷重の比較的大きな減少が発生する程度が大きいことが予測されるので、前記所定値を境にして後輪側の液圧の調整パターンを変えることで、後輪の路面への接地荷重の比較的大きな減少を抑制することが可能になり、制動フィーリングが向上する。
請求項3に係る発明によれば、前輪側の制動による後輪の路面への接地荷重の比較的大きな減少を抑制することができ、制動フィーリングが向上する。
請求項4に係る発明によれば、各圧力検出手段の検出値に基づいて、前輪側の車輪制動手段に供給される液圧と後輪側の車輪制動手段に供給される液圧の配分を適切に制御することが可能になる。これは特に、前後輪が独立してバイワイヤ式の場合に有効である。
請求項5に係る発明によれば、前輪側の液圧の時間的な増加率が所定値以上の場合に、前記所定値未満の場合よりも後輪側の液圧を大きくすることができるので、後輪の路面への接地荷重の比較的大きな減少を確実に抑制することが可能になる。
請求項6に係る発明によれば、前輪側の液圧の時間的な増加率が所定値未満のときには、前輪側の液圧の増加に応じて後輪側の制動力を大きくすることができ、且つ、前輪側の液圧が大きい領域では後輪側をスリップしにくくすることができる。
請求項7に係る発明によれば、前輪側の液圧の時間的な増加率が所定値以上の場合に、前記所定値未満の場合よりも後輪側の液圧を大きくすることができるので、後輪の路面への接地荷重の比較的大きな減少を確実に抑制することが可能になる。
請求項8に係る発明によれば、前輪側の制動による後輪の路面への接地荷重の比較的大きな減少が抑制された後に、後輪側の液圧を低下させることができる。
請求項9に係る発明によれば、前輪側の制動による後輪の路面への接地荷重の比較的大きな減少が抑制された後に、前輪側の液圧の時間的な増加率が所定値未満の場合の液圧の調整パターンに戻すことができる。
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1はこの発明の1実施形態の自動二輪車のブレーキ装置の液圧回路図を示している。
同図に示すようにこの実施形態のブレーキ装置は、相互に独立した前輪側のブレーキ回路1aと後輪側のブレーキ回路1bとがコントローラ(ECU)20により連係されたものである。
ブレーキ操作は、前輪側のブレーキ回路1aではブレーキ操作部2であるブレーキレバーにより、後輪側のブレーキ回路1bではブレーキ操作部2であるブレーキペダルにより各々行われるが、それ以外の構成は前輪側のブレーキ回路1aも後輪側のブレーキ回路1bもほぼ同様であるので、前輪側のブレーキ回路1aについてのみ詳述し、後輪側のブレーキ回路1bについては、前輪側のブレーキ回路1aと同一部分に同一符号を付して重複する説明を省略する。
このブレーキ装置では前後輪ともバイワイヤ方式を採用しており、ブレーキレバー等のブレーキ操作部の操作量(この実施形態では液圧)を電気的に検出し、その検出値に基づいて液圧モジュレータで作り出した液圧によって制動力を発生させている。
また、このブレーキ装置では前後輪の一方側をブレーキ操作することにより前後の車輪制動手段が連動して制動動作するブレーキシステム(CBS;COMBINED BRAKE SYSTEM,以下、「CBS」という。)を採用している。
具体的にはブレーキ操作部2が先に操作された側のブレーキ回路では、マスターシリンダの液圧に基づいて液圧モジュレータにより作用する液圧が先に操作された側のブレーキキャリパにバイワイヤ方式により作用し、また、先に操作された側のブレーキ回路のマスターシリンダ圧に基づいて後に操作された側のブレーキ回路でも液圧モジュレータにより作用する液圧がブレーキキャリパにバイワイヤ方式によって作用する。
更に、このブレーキ装置では制動時のブレーキ操作によるホイールのスリップ率を制御するブレーキシステム(ABS:ANTI LOCK BRAKE SYSTEM,以下、「ABS」という。)を採用している。
各ブレーキ回路1a,1bは、ブレーキ操作部2に連動するマスターシリンダ3と、このマスターシリンダ3に対応するブレーキキャリパ4とが主ブレーキ通路5によって接続されたものである。前記主ブレーキ通路5の途中には、後述する液圧モジュレータ6が給排通路7により合流接続されている。
主ブレーキ通路5には給排通路7との合流接続部よりもマスターシリンダ3側に、マスターシリンダ3とブレーキキャリパ4とを連通・遮断する常開型(NO)の第1の電磁開閉弁V1が介装されると共に分岐通路8が接続されている。この分岐通路8には、前記第1の電磁開閉弁V1が主ブレーキ通路5を閉じたときに、ブレーキ操作部2の操作量に応じた擬似的な液圧反力をマスターシリンダ3に作用させる液損シュミレータ9が常閉型(NC)の第2の電磁開閉弁V2を介して接続されている。この第2の電磁開閉弁V2は、反力付与時に分岐通路8を開いてマスターシリンダ3側と液損シュミレータ9とを連通させるものである。
前記液損シュミレータ9は、シリンダ10にピストン11が進退自在に収容され、このシリンダ10とピストン11の間に、マスターシリンダ3側から流入した作動液を受容する液室12が形成されたもので、ピストン11の背部側には、特性の異なるコイルスプリング13と樹脂スプリング14が直列に配置されて、これら二つのコイルスプリング13、樹脂スプリング14によってピストン11(ブレーキ操作部2)に対して立ち上がりが緩やかで、ストロークエンドにおいて立ち上がりが急な特性の反力を付与するようになっている。
そして、前記分岐通路8には第2の電磁開閉弁V2を迂回してバイパス通路15が設けられ、このバイパス通路15には液損シュミレータ9側からマスターシリンダ3方向への作動液の流れを許容する逆止弁16が設けられている。
前記液圧モジュレータ6は、シリンダ17内に設けられたピストン18を、これらシリンダ17とピストン18の間に形成された液圧室19方向に押圧するカム機構21と、ピストン18をカム機構21側に常時押し付けるリターンスプリング22と、カム機構21を作動させる電動モータ23とを備えていて、前記液圧室19が前記給排通路7に連通接続されている。この液圧モジュレータ6は電動モータ23によりカム機構21を介してシリンダ17の初期位置を基準としてピストン18を押圧したり、リターンスプリング22によりピストン18を戻すことにより、液圧室19の圧力を増減して、ブレーキキャリパ4の制動圧力を増減できるようになっている。
ここで、前記電動モータ23は、PWM制御により入力デューティ比(ON時間/ON時間+OFF時間)で決定される電流値を調整することで、前述したカム機構21の回動位置で決定されるピストン18の位置を電気的に正確且つ簡単に調整し、前記液圧室19の圧力を調整するようになっている。
前記カム機構21にはバックアップスプリング24を介して図示しないストッパによりストロークを規制されたリフター25が進退自在に配置され、このリフター25によって液圧室19を縮小する方向にピストン18が常時押圧されている。これにより、前記電動モータ23が非通電状態になった場合に、バックアップスプリング24によりリフター25が押圧されストッパにより停止されてピストン18を初期位置へ戻すようになっている。したがって、主ブレーキ通路5(ブレーキキャリパ4)に作動液を積極的に供給するCBS制御と、ピストン18を後退前進させ液圧室19の減圧、保持、再増圧するABS制御を行うことができる。
前記給排通路7には常閉型(NC)の第3の電磁開閉弁V3が介装されている。前記給排通路7には第3の電磁開閉弁V3を迂回してバイパス通路26が設けられ、このバイパス通路26には液圧モジュレータ6側からブレーキキャリパ4方向への作動液の流れを許容する逆止弁27が設けられている。
ここで、前輪側のブレーキ回路1aと後輪側のブレーキ回路1bには、第1の電磁開閉弁V1を挟んでマスターシリンダ3側である入力側に圧力センサ(P)28が、ブレーキキャリパ4側である出力側に圧力センサ(P)29が各々設けられている。また、前記カム機構21の図示しないカム軸には、角度情報フィードバック用の角度センサ30が設けられ、前記ブレーキキャリパ4には車輪速度を検出する車輪速度センサ31が設けられている。また、制御モードをライダーによる手動操作で切換えるモード切換えスイッチ32が設けられ、CBS制御を希望する場合はライダーがこれを切り替えて選択する。尚、以下の説明はCBS制御が選択された場合の説明である。
コントローラ20は、前記圧力センサ28,29の検出信号、及び角度センサ30の検出信号、車輪速度センサ31の検出信号に基づいて、前記第1の電磁開閉弁V1、第2の電磁開閉弁V2、及び第3の電磁開閉弁V3を開閉制御すると共に、電動モータ23を駆動制御する。
具体的には、一方のブレーキ操作部2が操作されると、そのとき前後輪の速度が車輪速度センサ31から、またブレーキ操作量等の情報が前記圧力センサ28を通してコントローラ20に入力され、このときコントローラ20からの指令によって両方のブレーキ回路の第1の電磁開閉弁V1が主ブレーキ通路5を閉じる方向に維持されると同時に電磁開閉弁V2,V3が開く方向に維持され、両液圧モジュレータ6が各ブレーキキャリパ4に車両の運転条件やブレーキ操作に応じた液圧を供給する。
また、前記コントローラ20は、前輪側の車輪速度センサ31、後輪側の車輪速度センサ31とによって検出された車輪速度のうち、高い方の車輪速度を車両の推定車速vrとして設定して、更に、この推定車速vrと前輪又は後輪の車輪速度との差分に基づいて前輪スリップ率又は後輪スリップ率を算出する。ここで、前輪スリップ率、後輪スリップ率が予め設定されたスリップ率の閾値を超えた場合に、車輪にスリップが発生したと判定して液圧モジュレータ6の液圧を減圧するABS制御を作動開始するようになっている。
上記構成によれば、車両が停止している場合(車速=0)には、図1に示すように、前輪側のブレーキ回路1a及び後輪側のブレーキ回路1bにおいては、第1の第1の電磁開閉弁V1が開作動状態、第2の電磁開閉弁V2は閉作動状態、第3電磁開閉弁V3は閉作動状態となっている。したがって、各電磁開閉弁V1,V2,V3には、何ら電力を必要としない。
そして、車両走行中に、ライダーが前輪側のブレーキ操作部2であるブレーキレバーを操作すると、図2に示すように、前輪側のブレーキ回路1aでは第1の電磁開閉弁V1が閉作動、第2の電磁開閉弁V2及び第3の電磁開閉弁V3が開作動される。したがって、主ブレーキ通路5が第1の電磁開閉弁V1の閉作動によってマスターシリンダ3から切り離されると同時に、第2の電磁開閉弁V2の開作動によって分岐通路8、主ブレーキ通路5がマスターシリンダ3と液損シュミレータ9とを導通し、更に第3の電磁開閉弁V3の開作動によって給排通路7、主ブレーキ通路5が液圧モジュレータ6とブレーキキャリパ4とを導通する。
一方、このとき後輪側のブレーキ回路1bでも、同時に第1電磁開閉弁V1が閉作動、第2の電磁開閉弁V2及び第3の電磁開閉弁V3が開作動される。したがって、主ブレーキ通路5が第1の電磁開閉弁V1の閉作動によってマスターシリンダ3から切り離されると同時に、第2の電磁開閉弁V2の開作動によって分岐通路8、主ブレーキ通路5がマスターシリンダ3と液損シュミレータ9とを導通し、更に第3の電磁開閉弁V3の開作動によって給排通路7、主ブレーキ通路5が液圧モジュレータ6とブレーキキャリパ4とを導通する。
これにより、ライダーは前輪側及び後輪側のブレーキ回路1a,1bの液損シュミレータ9によって擬似的に再現させた前後輪側でブレーキ操作感を感じることが可能になり(図2において鎖線矢印参照)、同時に液圧モジュレータ6の作動による液圧変動は第1の電磁開閉弁V1が閉作動しているためライダー側に伝達されなくなる。また、このとき、これに並行して液圧モジュレータ6の電動モータ23が作動し、カム機構21によりピストン18が押圧されることにより液圧室19の作動液を加圧する。これによって、電動モータ23の制御に応じた液圧が主ブレーキ通路5を通してブレーキキャリパ4に供給される(図2において実線矢印参照)。
また、前輪あるいは後輪(例えば、図2では前輪)のスリップ率が所定の値を越える状況になったことが、前記車輪速度センサ31により検出された場合には、コントローラ20が電動モータ23を制御してピストン18を後退させ(図2に破線矢印で示す)、ブレーキキャリパ4の制動圧を低下させABS制御により車輪のスリップ率を適切に制御する。
このとき第1の電磁開閉弁V1は閉じられており、マスターシリンダ3と液圧モジュレータ6の連通は遮断され、ライダーのブレーキ操作部2にABS制御の圧力変化が伝達されることはない。
ここで、前述したのはブレーキ操作部2を操作したがABSが作動しないで車両が停止した場合で説明したが、ABSが作動して車両が停止した場合についても同様に制御できる。つまり、ABSが作動した場合には、ABSでは液圧室19の減圧、保持、再増圧するため、車両がどの時点で停止したかによって、前記マスターシリンダ3側の圧力と、ブレーキキャリパ4側の圧力との大小関係が特定できないため、前述した電動モータ23の正逆転駆動を含みこれをPWM制御して入力デューティ比で決定される電流値を調整することで、増圧側に調整する場合でも減圧側に調整する場合でも、前述したカム機構21の回動位置で決定されるピストン18の位置を電気的に正確かつ簡単に自由に調整することができるのである。
ところで、このCBS制御の際には前輪側と後輪側のブレーキキャリパ圧が予め設定された所定の配分になるように制御するが、このブレーキ装置においては、CBS制御時に後輪の路面への接地荷重の比較的大きな減少が発生するのを防止するために、前輪側のマスターシリンダ3の液圧(マスターシリンダ圧)の時間的な増加率(以下、単に増加率という)に応じて後輪側のブレーキキャリパ4の液圧調整パターンを変えている。液圧の時間的な増加率は、換言すると液圧の増加速度である。
前輪側のマスターシリンダ圧の増加率と後輪側の路面への接地荷重の減少との関係について説明すると、前輪側のマスターシリンダ圧の増加率が低いときは前輪側のブレーキキャリパ圧の上昇も緩やかになるので、後輪の路面への接地荷重の比較的大きな減少が発生する程度が低い。これに対して、前輪側のマスターシリンダ圧の増加率が高いときは前輪側のブレーキキャリパ圧の上昇も急激になるので、後輪の路面への接地荷重の比較的大きな減少が発生する程度が大きい。
そこで、この実施形態のブレーキ装置では、前輪側のマスターシリンダ圧の増加率が所定値未満の場合には、前輪側のマスターシリンダ圧に基づいて後輪側のブレーキキャリパ4の目標圧を設定する第1の液圧調整パターンとし、前輪側のマスターシリンダ圧の増加率が所定値以上の場合には、増加率が前記所定値に達してからの経過時間に応じて後輪側のブレーキキャリパ4の目標圧を設定する第2の液圧調整パターンとした。
図3(a)に第1の液圧調整パターンを実現するための液圧調整マップ(以下、通常制動時液圧調整マップと称す)の一例を示す。この通常制動時液圧調整マップでは、前輪側のマスターシリンダ圧(横軸)の増加にしたがって、後輪側のブレーキキャリパ圧(縦軸)が漸次増加し、前輪側のマスターシリンダ圧が所定値に達すると後輪側のブレーキキャリパ圧は上限値rcs1(例えば、0.5〜0.8MPa)で一定となり、その後は前輪側のマスターシリンダ圧が増加しても、後輪側のブレーキキャリパ圧は低下する特性に設定されている。この第1の液圧調整パターンでは、前輪側のマスターシリンダ圧の増加に応じて後輪側の制動力を大きくすることができ、且つ、前輪側のマスターシリンダ圧が大きい領域では後輪側をスリップしにくくすることができる。
図3(b)に第2の液圧調整パターンを実現するための液圧調整マップ(以下、急制動時液圧調整マップと称す)の一例を示す。この急制動時液圧調整マップでは、前輪側のマスターシリンダ圧の大きさにかかわらず後輪側のブレーキキャリパ圧(縦軸)が一定値rcs2(例えば、0.8〜1.5MPa)に設定されている。尚、急制動時液圧調整マップにおける後輪側のブレーキキャリパ圧上限値rcs2は、通常制動時液圧調整マップにおける後輪側のブレーキキャリパ圧上限値rcs1よりも大きい圧力に設定されている。
次に、後輪側ブレーキキャリパ目標圧設定処理について、図5のフローチャートに従って説明する。
図5のフローチャートに示す後輪側ブレーキキャリパ目標圧設定処理ルーチンは、コントローラ20によってによって繰り返し実行される。
まず、ステップS101において前輪側のブレーキ回路1aにおける入力側の圧力センサ28の検出値(すなわち、前輪側のマスターシリンダ圧)Pfmを読み込む。
次に、ステップS102に進み、図3(a)に示す通常制動時液圧調整マップに基づいて前輪側のマスターシリンダ圧に応じた後輪側のブレーキキャリパ圧を算出し、さらにステップS103に進んで、ステップS102で算出した後輪側のブレーキキャリパ圧を通常制動時後輪側ブレーキキャリパ圧Pr1とする。
次に、ステップS104に進み、入力側の圧力センサ28の今回値Pfmと以前の値Pfm−nの差(以下、マスターシリンダ圧増加量という)ΔPfmを算出する(ΔPfm=Pfm−Pfm−n)。ここで、入力側の圧力センサ28の以前の値Pfm−nは、前回この制御ルーチンを実行したときに読み込んだ入力側の圧力センサ28の検出値Pfm−1(即ち、前回の検出値)であってもよいし、前々回の検出値Pfm−2であってもよいし、さらにその前の回の検出値Pfm−3であってもよい。このマスターシリンダ圧増加量ΔPfmは、前輪側のマスターシリンダ圧の増加率に対応する。
次に、ステップS105に進み、マスターシリンダ圧増加量ΔPfmが予め設定した所定値S以上か否かを判定する。尚、所定値Sは正の値である。
ステップS105における判定結果が「NO」(ΔPfm<S)である場合は、前輪側のマスターシリンダ圧の増加率が所定値よりも小さいことになるので、ステップS106に進んで後述する急制動時後輪側ブレーキキャリパ圧Pr2をリセットして「0」に設定した後、ステップS116に進む。
一方、ステップS105における判定結果が「YES」(ΔPfm≧S)である場合は、前輪側のマスターシリンダ圧の増加率が所定値よりも大きいことになるので、ステップS107に進んで、図3(b)に示す急常制動時液圧調整マップに基づいて前輪側のマスターシリンダ圧に応じた後輪側のブレーキキャリパ圧を算出する。なお、この実施の形態では、前輪側のマスターシリンダ圧の大きさにかかわらず急制動時の後輪側のブレーキキャリパ圧は一定値rcs2である。
さらに、ステップS108に進んでタイマー値Tmが「0」か否かを判定し、その判定結果が「YES」(Tm=0)である場合はステップS109に進んでタイマーをスタートしてからステップS110に進み、判定結果が「NO」(Tm≠0)である場合は直接ステップS110に進んで、タイマー値Tmが予め設定した所定時間t1(例えば、0.5秒)よりも大きいか否かを判定する。
ステップS110における判定結果が「NO」(Tm<t1)である場合は、ステップS111に進み、ステップS107で算出した後輪側のブレーキキャリパ圧を急制動時後輪側ブレーキキャリパ圧Pr2とした後、ステップS116に進む。
一方、ステップS110における判定結果が「YES」(Tm≧t1)である場合は、ステップS112に進み、急制動時後輪側ブレーキキャリパ圧Pr2の前回値から、予め設定された一定値Δrcs2を減算して得た差を、急制動時後輪側ブレーキキャリパ圧の今回値Pr2とする(Pr2=Pr2の前回値−Δrcs2)。
次に、ステップS113に進み、急制動時後輪側ブレーキキャリパ圧Pr2が0以下か否かを判定し、その判定結果が「NO」(Pr2>0)である場合はステップS116に進み、判定結果が「YES」(Pr2≦0)である場合はステップS114に進んで、急制動時後輪側ブレーキキャリパ圧Pr2を「0」に設定し、さらにステップS115に進み、タイマーをリセットしてステップS116に進む。
そして、ステップS116において、通常制動時後輪側ブレーキキャリパ圧Pr1が急制動時後輪側ブレーキキャリパ圧Pr2以上か否かを判定する。
ステップS116における判定結果が「YES」(Pr1≧Pr2)である場合はステップS117に進み、通常制動時後輪側ブレーキキャリパ圧Pr1を後輪側ブレーキキャリパ目標圧Prtに設定して、本ルーチンの実行を一旦終了する。
ステップS116における判定結果が「NO」(Pr1<Pr2)である場合はステップS118に進み、急制動時後輪側ブレーキキャリパ圧Pr2を後輪側ブレーキキャリパ目標圧Prtに設定して、本ルーチンの実行を一旦終了する。
なお、ステップS105で否定判定される通常制動時においては、ステップS106で急制動時後輪側ブレーキキャリパ圧Pr2が「0」に設定されるので、ステップS116では実質的に通常制動時後輪側ブレーキキャリパ圧Pr1が0以上か否かを判定することになり、その判定結果は「YES」となってステップS117に進み、通常制動時後輪側ブレーキキャリパ圧Pr1を後輪側ブレーキキャリパ目標圧Prtに設定することになる。
また、ステップS105で肯定判定される急制動時においては、ステップS107〜118の処理を実行することにより、急制動時後輪側ブレーキキャリパ圧Pr2が通常制動時後輪側ブレーキキャリパ圧Pr1よりも大きい間は急制動時後輪側ブレーキキャリパ圧Pr2を後輪側ブレーキキャリパ目標圧Prtに設定することになるが、急制動時後輪側ブレーキキャリパ圧Pr2が通常制動時後輪側ブレーキキャリパ圧Pr1以下になると、通常制動時後輪側ブレーキキャリパ圧Pr1を後輪側ブレーキキャリパ目標圧Prtに設定することになる。
図4は、ステップS107〜S115の処理を実行して設定される急制動時後輪側ブレーキキャリパ圧Pr2の時間的推移を示しており、これが第2の液圧調整パターンとなる。この第2の液圧調整パターンでは、スタートから時間t1までは急制動時後輪側ブレーキキャリパ圧Pr2(縦軸)がrcs2で一定であり、その後は時間経過とともに急制動時後輪側ブレーキキャリパ圧Pr2は漸次減少し、時間t2(例えば、開始から1秒)においてゼロになる。なお、時間t1以降の単位時間当たりの後輪側ブレーキキャリパ圧の減少程度は、1.6〜3MPa/秒が好ましいが、0.5MPa/秒でも十分に効果がある。
図6を参照してCBS制御における後輪ブレーキキャリパ圧の時間的推移の一例を説明する。
この例では、前輪の制動操作開始から制動初期の段階において前輪側のマスターシリンダ圧の増加率が小さいので、通常制動時液圧調整マップにしたがって後輪のブレーキキャリパ目標圧が設定され、これに一致するように後輪のブレーキキャリパ圧(図6において太い実線)が緩やかに上昇していく。
そして、時間T1においてライダーによりブレーキレバー2が急制動操作されると前輪側のマスターシリンダ圧が急増し、その液圧の増加率が所定値以上(マスターシリンダ圧増加量ΔPfmが所定値S以上)の場合には、後輪の液圧調整マップが通常制動時液圧調整マップから急制動時液圧調整マップに持ち替えられて後輪のブレーキキャリパ目標圧Prtが設定され、図4に示される第2の液圧調整パターンに一致するように後輪のブレーキキャリパ圧が制御される。その結果、後輪のブレーキキャリパ圧は時間T1の直後に上限値rcs2まで一気に増圧され、t1時間が経過するまで後輪のブレーキキャリパ圧が上限値rcs2に保持される。
尚、図6において細線は、前輪マスターシリンダ圧の増加率が所定値以上のときにも通常制動時液圧調整マップに基づいて後輪側のブレーキキャリパ圧を制御したと仮定した場合のブレーキキャリパ圧を示している。つまり、急制動時には通常制動時よりも後輪側のブレーキキャリパ圧を大きくすることができる。
そして、急制動開始から時間t1が経過した後は、後輪側のブレーキキャリパ圧は徐々に低下していく。そして、後輪側のブレーキキャリパ圧が、通常制動時液圧調整マップに基づいて設定したときの後輪側のブレーキキャリパ圧まで低下すると(T2)、その後は通常制動時液圧調整マップにしたがって後輪側のブレーキキャリパ圧の制御が行われる。
このように、前輪側のマスターシリンダ圧の増加率が所定値以上になったことにより後輪の路面への接地荷重の比較的大きな減少が発生する程度が大きいことが予測されたときには、図4に示される第2の液圧調整パターンにしたがって後輪のブレーキキャリパ目標圧Prtを設定しているので、前輪側のマスターシリンダ圧の急増に遅れずに、後輪側のブレーキキャリパ圧を急増させることができ、その結果、前輪側の制動力の増大に遅れずに後輪側にも大きな制動力を発生させることができる。
そして、この後輪側の制動により後輪側のサスペンションを沈み込ませることができるので、後輪の路面への接地荷重の比較的大きな減少を抑制することができる。したがって、制動フィーリングが向上する。
〔他の実施形態〕
尚、この発明は前述した実施形態に限られるものではない。
例えば、前述した実施形態では、ABSとCBSを備えたバイワイヤ式のブレーキ装置を例示したが、ABSを備えなくてもよい。
また、前述した実施形態では前後輪が独立してバイワイヤ式のブレーキ装置に本発明を適用した例で説明したが、CBS制御を実行しないときは前後輪のそれぞれの回路において入力側と出力側を連通させて入力側で発生させた液圧を出力側のブレーキキャリパ(車輪制動手段)に供給して制動力を発生させる非バイワイヤ式にし、CBS制御を実行するときに入力側と出力側を遮断してバイワイヤ式にするタイプのブレーキ装置にも、本発明を実施することが可能である。
この発明の実施の形態における自動二輪車のブレーキ装置の液圧回路図である。 図1の制動時及び前輪ABS作動時を示す液圧回路図である。 (a)は前記実施の形態における通常制動時液圧調整マップの一例を示す図であり、(b)急制動時液圧調整マップの一例を示す図である。 前記実施の形態における急制動時の第2の液圧調整パターンの一例を示す図である。 前記実施の形態における後輪側ブレーキキャリパ目標圧設定処理を示すフローチャートである。 前記実施の形態における後輪ブレーキキャリパ圧の時間的推移を示す図である。
符号の説明
2 ブレーキ操作部
4 ブレーキキャリパ(車輪制動手段)
28 圧力センサ(圧力検出手段)
29 圧力センサ(圧力検出手段)

Claims (9)

  1. 前輪側のブレーキ操作により発生した前輪側の液圧に応じて、後輪側の車輪制動手段に供給する後輪側の液圧を調整する自動二輪車のブレーキ装置において、
    前記前輪側の液圧の時間的な増加率に応じて前記後輪側の液圧を制御するようにしたことを特徴とする自動二輪車のブレーキ装置。
  2. 前記後輪側の液圧の調整パターンが、前記前輪側の液圧の時間的な増加率が所定値以上の場合と前記所定値未満の場合とで異なることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車のブレーキ装置。
  3. 前記増加率が前記所定値以上の場合の前記後輪側の液圧の調整パターンは、前記増加率が前記所定値に達してからの経過時間に応じて設定され、初めは前記後輪側の液圧が急増し、その後ほぼ一定になり、漸次減少することを特徴とする請求項2に記載の自動二輪車のブレーキ装置。
  4. 前輪側のブレーキ操作により発生した前輪側の液圧を検出する圧力検出手段と、前輪側の車輪制動手段に供給される液圧を検出する圧力検出手段と、後輪側の車輪制動手段に供給される液圧を検出する圧力検出手段と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自動二輪車のブレーキ装置。
  5. 前記液圧の調整パターンは、前記前輪側の液圧の時間的な増加率が所定値以上の場合は、前記所定値未満の場合に設定される後輪側の液圧よりも大きな液圧が設定されることを特徴とする請求項2に記載の自動二輪車のブレーキ装置。
  6. 前記液圧の調整パターンは、前記前輪側の液圧に対する液圧マップにて設定され、前記前輪側の液圧の時間的な増加率が前記所定値未満の場合の液圧マップは、前記前輪側の液圧が小さい領域では増加し、中間の領域では一定値となり、大きい領域では漸減する如く設定されることを特徴とする請求項5に記載の自動二輪車のブレーキ装置。
  7. 前記前輪側の液圧の時間的な増加率が前記所定値以上の場合の液圧マップは、前記一定値よりも大なる一定値が設定されることを特徴とする請求項6に記載の自動二輪車のブレーキ装置。
  8. 前記液圧マップにより検索された液圧値は、所定時間経過後、漸減されることを特徴とする請求項7に記載の自動二輪車のブレーキ装置。
  9. 前記前輪側の液圧の時間的な増加率が前記所定値以上の場合のマップ値と前記所定値未満の場合のマップ値は比較され、どちらか大きい方のマップ値を後輪側の液圧値として設定されることを特徴とする請求項8に記載の自動二輪車のブレーキ装置。
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