JP2006203108A - セラミックス回路基板の接合構造およびパワーモジュール - Google Patents

セラミックス回路基板の接合構造およびパワーモジュール Download PDF

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Abstract

【課題】セラミックス回路基板を他部材に強固にネジ締結することができ、かつ貫通孔周辺部分にクラックが発生することを抑制することができるセラミックス回路基板を提供する。
【解決手段】セラミックス基板2の表裏面に金属板が固着されたセラミックス回路基板1をネジ6で他部材8に締結する接合構造において、セラミックス回路基板は、裏面金属板4とセラミックス基板の二部材にネジを通す貫通穴5が形成され、表面側は補強部材7を介してネジ締めされており、補強部材はネジを通す貫通穴71が形成され、セラミックス基板との当接面における凹部の直径Lはセラミックス基板の貫通穴の直径bに対し、L>bである、また、裏面金属板の貫通穴54の直径aは、セラミックス基板の貫通穴の直径bに対し、a≧bであるセラミックス回路基板の接合構造。
【選択図】図2

Description

本発明は、半導体素子を実装するのに用いられるセラミックス回路基板であって、特にその接合構造体及びこの回路基板を用いたパワーモジュールに関する。
現在の自動車、鉄道車輌、エレベータ、産業機器、ロボット、空調機器などには、トランジスタ、CPU、IGBTなどの半導体素子を搭載した回路基板をヒートシンクなどに直接或いは共通板を介して接合したパワーモジュールが多く用いられている。このような半導体素子は大きな電流を流すことができるが、発生した熱が半導体素子そのものを破壊する場合があり、素子を実装する回路基板としては、電気絶縁性と熱伝導性に優れた窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス基板を用い、その表面に銅、アルミニウム等の金属回路板を接合し、裏面に銅等の高熱伝導体からなる金属板を接合したセラミックス回路基板が用られている。また、セラミックス回路基板は、熱サイクルを受けてもヒートシンク或いは共通板等他部材面と密接していなければならない。この接合は、通常はセラミックス回路基板の裏面金属板と他部材間をはんだ接合する事等により行なわれてきたが、最近では、更にこの接合部の信頼性を高めるために、はんだ接合部に代えて、セラミックス回路基板に貫通穴を形成し、高熱伝導性のグリース等を介してネジで締結する方法も用いられるようになっている。
上記ネジ締結型セラミックス回路基板のセラミックス基板にはネジを通すための貫通穴が形成されているが、他部材へネジ締めする時の締め付け力が大きくなると、セラミックス基板とネジ座面との接触部分、特にセラミックス基板の貫通穴周辺部分にクラックが入ってしまうという問題があった。この問題を解決するためのセラミックス回路基板として、例えば特許文献1に開示されたものがある。このセラミックス回路基板は、図9に示すように、セラミックス基板11の表裏両主面に金属板14が接合されたセラミックス回路基板において、セラミックス基板11は両主面を繋ぐ貫通穴12を有し、少なくとも一つの貫通穴の少なくともネジ頭部側の端部に、前記貫通穴12と同径の貫通穴を有する補強部材13が具備されたものである。補強部材13を接合することで、貫通穴12を起点とするクラックの発生が抑制することができ、このような補強部材13としては、金属材料および樹脂材料を使用することができ、その形成範囲がネジの頭部と同等の大きさから2mm程度大きく、厚さは0.1mm〜0.3mmとすることが好ましい、とされている。また、このセラミックス回路基板の貫通穴12を利用して固定する方法としては、ネジ溝を利用したボルト方式に限らず、ネジ溝のないピン等を使用し、先端をかしめたり、ろう材や接着材で固定してもよい、と説明されている。
特開2003−197824号公報(段落番号0010、0023〜0024)
特許文献1における補強部材13は、セラミックス基板と当接する面の面積をネジ頭部の座面面積より大きくしたものであり、セラミックス基板11に作用する圧縮力やせん断力を小さくすることによりクラックの発生を抑制しようとするものである。実施例には補強部材13が接合された場合と接合されていない場合とでは不良発生率に差があることが示されている。しかし、この実施例においては、貫通穴は1mmであると説明されており、ネジ止め時の締め付け力は小さいと思われるが、依然として不良が生じていることが示されている。これは、補強部材13の貫通穴内径がセラミックス基板11の貫通穴12の内径と同径であるため、該貫通穴12のエッジ部に締め付け力が作用するためであると思われる。セラミックス回路基板は熱サイクルを受けても他部材と密接していなければならないが、ネジ径1mm程度のネジでは締結力が不十分であり、少なくとも3mm程度以上のネジを用いることが望ましい。この点で、この構造では大きなネジを用いてより大きな締め付け力を付与すると、不良率が高くなることが予想される。また、補強部材13は、ネジ頭部側の貫通穴12の端部に設ければよく、裏側の金属板14は貫通穴12を覆わないサイズでもよいと説明されているが、貫通穴12の裏側部が裏金属板14で支持されている場合と支持されていない場合では、ネジ締めの際に前者では貫通穴12周辺には圧縮荷重だけが作用するのに対し、後者では曲げ荷重も作用するため、後者の方が小さい締め付け力で破壊してしまう。しかもネジ締結部材の補強部材(座金)として一般的な平座金を用いた場合には、補強部材13または、金属板14とセラミックス部材11との接合界面端部に応力集中が発生し、セラミックス基板11に割れが起こりやすくなる問題もある。このように、補強部材を設けるにしてもこのセラミックス回路基板の構造には問題がある。
本発明は、セラミックス回路基板を他部材に強固にネジ締結することができ、かつ貫通穴周辺部分にクラックが発生することを抑制することができるセラミックス回路基板を提供することを目的としている。
本発明のセラミックス回路基板の接合構造は、セラミックス基板の表裏面に金属板が固着されたセラミックス回路基板をネジで他部材に締結する接合構造において、セラミックス回路基板は、裏面金属板とセラミックス基板の二部材にネジを通す貫通穴が形成され、補強部材を介してネジ締めされており、補強部材はネジを通す貫通穴が形成され、セラミックス基板との当接面における凹部の直径Lはセラミックス基板の貫通穴の直径bに対し、L>bであることを特徴としている。
前記本発明において、裏面金属板の貫通穴の直径aは、セラミックス基板の貫通穴の直径bに対し、a≧bであることが望ましいが、前記直径Lに対してはL>aであることが好ましい。
本発明において、表面金属板は電気の流路をなす回路部と該回路部とは電気的に切り離された非回路部を備えた場合も考えられ、補強部材は、セラミックス基板と固着した該非回路部の表面金属板を用いた形態をとることができる。
また、本発明の別のセラミックス回路基板の接合構造は、セラミックス基板の表裏面に金属板が固着されたセラミックス回路基板をネジで他部材に締結する接合構造において、セラミックス回路基板は、表裏面金属板とセラミックス基板の三部材にネジを通す貫通穴が形成され、補強部材を介してネジ締めされており、補強部材はネジを通す貫通穴が形成され、表面金属板との当接面における凹部の直径Lはセラミックス基板の貫通穴の直径bに対し、L>bであることを特徴としている。
前記本発明において、表面金属板及び裏面金属板の貫通穴の直径aは、セラミックス基板の貫通穴の直径bに対し、a≧bであり、かつL>aであることが好ましい。
また、本発明においては、表面金属板は、電気の流路をなす回路部と該回路部とは電気的に切り離された非回路部が形成されており、該非回路部に貫通穴が形成されている形態をとることができる。
また、本発明においては、表面金属板は、電気の流路をなす回路部と該回路部とは電気的に切り離された非回路部が形成されており、貫通穴は少なくとも回路部にも形成された形態もとることができるが、表面金属板の貫通穴の直径aはセラミックス基板の貫通穴の直径bに対しa>bであり、かつL>aとすることが好ましい。
また、本発明においては、補強部材は、セラミックス基板との当接面に逃げ穴が形成され、断面がコ字状であることが好ましい。
前述した発明においては、セラミックス基板は、窒化ケイ素を主成分とする焼結体からなるものを用いることが好ましい。
本発明のパワーモジュールは、表面金属板の回路部に半導体素子を搭載したセラミックス回路基板が、前記のいずれかのセラミックス回路基板の接合構造でヒートシンクにネジ締結されていることを特徴としている。
本発明のセラミックス回路基板の接合構造によれば、ネジ締め力は補強部材によりセラミックス基板の貫通穴エッジ部より離れた位置でセラミックス基板に伝達されるので、貫通穴エッジ部に生ずる応力は小さくなり、クラックの発生を抑制することができる。
以下、本発明のセラミックス回路基板の接合構造について、三つの実施の形態をもとに説明する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1におけるセラミックス回路基板の接合構造の一例を示した外観図であり、図2はネジ締結部の断面図である。セラミックス回路基板1は、セラミックス基板2とその表裏面に接合された金属板3、4を備え、セラミックス基板2と金属板3、4とは、直接接合法、ろう材接合法または接着剤で接合されている。表面金属板3には、半導体素子(図示せず)が搭載される回路や半導体素子への電力供給もしくは電気信号を授受するための回路などからなる回路部31が形成されている。裏面金属板4はヒートシンクなど別部材との接合部材であり回路は形成されていない。表面金属板3には導電性の優れた金属を、裏面金属板4には熱伝導の優れた金属を使用するが、銅、アルミニウムまたはその合金或いはクラッド材はどちらの面にも使用することができて好ましい。セラミックス基板(以降、基板と略す)2としては特に限定されるものではなく、アルミナ(Al)基板や窒化アルミニウム(AlN)基板や窒化ケイ素基板(Si)を用いることができる。ネジ締結仕様の基板としては機械的強度に優れている窒化ケイ素基板が望ましく、厚さは熱伝導性面からは薄い方がよいが、薄すぎるとネジ締め時に破損する恐れがあるので0.2mm〜0.8mm程度がよい。金属板3、4の厚さはセラミックスとの熱膨張の差で基板2にクラックが生じないよう1mm以下とすることが好ましい。
セラミックス回路基板1は、回路部31から離れた例えば周辺4箇所の所定位置に基板2、裏面金属板4の二部材を貫いたネジ締め用貫通穴部5を有している。裏面金属板4の貫通穴54(図2参照)は、基板2に形成された貫通穴52とほぼ同心で、その直径a1が貫通穴52の直径bより大きな寸法となるように形成されている。裏面金属4は放熱性の観点からベタ状とするのがよいが、セラミックス回路基板1の反りを抑制し、ネジ締結時のセラミックス基板2の割れや、放熱性を確保するために表面金属板3のパターンに応じた適宜なパターンが形成されていてもよい。また、ネジ部の絶縁を考慮しなくても良い場合には、貫通穴54回りの直径a1を直径bよりも小さくしても良い。更に基板2に加えられるネジ締め力を広く分散できるように、補強部材7と基板2の接触面積を広く取るのが好ましい。
セラミックス回路基板1は、図2(a)に示すように、着脱自在な補強部材7を介して呼び径dのネジ6でヒートシンク8にグリースを介して(図示せず)ネジ込み或いはナットで締結される。補強部材7は、金属或いはセラミックスなどの材質を用いることができ、外形は円状或いは矩形状等特に限定はされないが、少なくともネジ頭部の座面面積以上の範囲、好ましくはネジ外径の2倍以上の相当直径Dとするとよく、中心部にはネジ6を通す貫通穴71が形成されている。補強部材7の裏面、即ち基板2の表側と当接する面に形成された凹部の直径Lは、基板の貫通穴52の直径bより大きな寸法とするとよい。この場合、裏面金属板4の貫通穴54の直径a1はbと比較して大小考えられるが、少なくともL>a1とすることが好ましい。前記凹部の直径Lは、図2(b)に示すように、逃げ穴72を形成した場合はこの直径であり、逃げ穴72を形成しない場合は貫通穴71の直径である。補強部材7と基板2の接触面積は大きい方がよく、ネジ径dと相当外径Dと凹部直径Lの関係は、(D−L)>dとすることが好ましい。補強部材7の最小厚さtは、ネジ頭部からの圧縮力をできるだけ均等に基板2に伝達できるよう、ネジ6の大きさや補強部材7の材質や内外径寸法などを考慮して決めるが、1mm以上あることが望ましい。
これより、締結時の締め付け力は、ネジ座面からは補強部材7を介して基板2の表側に伝達され、ヒートシンク8側からは裏面金属板4を介して基板2の裏側に伝達される。いずれから伝達される締め付け力も、当接面を広くすることで分散されて基板面では小さな面圧にすることができる。また、補強部材7裏面の凹部の直径L及び裏面金属板4の貫通穴54の直径a1を基板2の貫通穴52の直径bより大きくした場合には、締め付け力は、基板2の貫通穴52のエッジ部24には伝わらないか、伝わっても上記よりさらに小さな面圧となる。従って、エッジ部24にクラックを発生するのを防止できるだけでなく、基板面におけるクラックの発生も抑制することができる。
上記説明における補強部材7は、セラミックス回路基板1とは別体で着脱自在であり、製作が容易であるが、装着時に裏面の凹部を基板貫通穴52と同心になるようにセットすることが難しい。この点で、凹部の直径Lをネジ通し用貫通穴71の直径に規制されずに自由に設定できるよう、逃げ穴72を形成したコ字形とすることが好ましい。また、補強部材7として表面金属板3の一部を利用することもできる。前述したように、表面金属板3には回路部31が形成されているが、表面金属板3に回路部31を形成する際に回路部31とは分離した非回路部32も形成し、これを補強部材7として用いるとよい。この補強部材7は基板2と固着しているので、前記逃げ穴72を形成することはできないが、凹部と基板貫通穴52との位置ずれがないという利点がある。
また、上記説明では、裏面金属4の貫通穴54の直径a1は、基板2の貫通穴52の直径bより大きくするとしたが、基板2との当接面の相当直径が例えばネジ外径の3倍以上とかなり広い場合にはほぼ同一としてもよい。これは、基板2裏側に生じる面圧が小さくなり、エッジ部24に作用する応力が小さいためである。
(実施の形態2)
図3は実施の形態2におけるセラミックス回路基板の接合構造の一例を示した外観図であり、図4はネジ締結部の断面図である。実施の形態2におけるセラミックス回路基板10は、ネジ締め用貫通穴部5が表面金属板3、セラミックス基板2、裏面金属板4の三部材を貫いて構成されているという点で、実施の形態1で説明したセラミックス回路基板1と異なっているが、基本的な構造は同様であり同じ部分は同じ符号で示すとともに重複する説明は省略する。
表面金属板3は、回路部31の他に電気回路としては用いない非回路部32を有している。非回路部32は、表面金属板3に回路部31を形成する際に、回路部31とは分離して形成した表面金属板3の一部で、ネジ締め用貫通穴部5はこの非回路部32に形成されている。表裏面金属板3、4の貫通穴53、54は、ほぼ同一寸法の直径a(場合に応じて貫通穴53の直径をa2、貫通穴54の直径をa1と区別して示す)で、基板2に形成された貫通穴52とほぼ同心位置に形成されており、直径aの寸法は基板貫通穴52の直径bとほぼ同一とする。
セラミックス回路基板10は、図4に示すように、着脱自在な補強部材7を介して呼び径dのネジ6でヒートシンク8にネジ締結される。補強部材7は、金属或いはセラミックスなどの材質を用いることができ、外形は円状或いは矩形状または半球状等特に限定はされないが、少なくともネジ頭部の座面との接触面積が、ネジ頭部の座面面積以上、好ましくはネジ外径の2倍以上の相当直径とするとよく、中心部にはネジ6を通す貫通穴71が形成されている。補強部材7の裏面、即ち表面金属板3と当接する面に形成された凹部の直径Lは、基板の貫通穴52の直径bより大きな寸法とする。前記凹部の直径Lは、逃げ穴72を形成した場合はこの直径であり、逃げ穴72を形成しない場合は貫通穴71の直径である。
これより、締結時の締め付け力は、ネジ座面からは補強部材7を伝わり表面金属板3を介して基板2の表側に伝達され、ヒートシンク8側からは裏面金属板4を介して基板2の裏側に伝達される。補強部材7から伝わった締め付け力は、表面金属板3をほぼ補強部材7との当接範囲で伝達され、基板2の貫通穴52のエッジ部24には伝わらないか、伝わっても上記よりさらに小さな面圧となる。この締結時の補強部材7から基板2に作用する応力範囲は表面金属板3が薄くなるほど狭まり、応力集中を起こすため、直径Lの大きさにも因るが、厚さは0.2mm以上とするのがよい。また、裏面金属板4は、通常、基板2との当接面の相当直径が例えばネジ外径の3倍以上とかなり広いので、基板2裏側に生じる面圧が小さくなり、エッジ部24に作用する応力は小さい。従って、エッジ部24にクラックを発生するのを防止できるだけでなく、基板面におけるクラックの発生も抑制することができる。
上記説明では、表裏面金属3、4の貫通穴53、54の直径aは、基板2の貫通穴52の直径bとほぼ同一にするとしたが、a>bとなるように形成する方が好ましい。この場合、金属板3、4は基板2の貫通穴52のエッジ部24に当接しないので、金属板3、4を介した締め付け力が基板2の貫通穴52のエッジ部24に一層伝わり難くなるためであり、表面金属板3が厚い場合にも対応することができる。なお、表面金属板3の厚さが薄く、基板2と補強部材7及び裏面金属4との当接面積が広い場合などでは、前記直径aを直径bより小さい寸法にすることもできると考えている。これは、表面金属板3が薄くても基板当接面に働く応力は分散して大きくはないと考えるからである。
以上説明したように、実施の形態2の接合構造は、補強部材7の裏面がセラミックス回路基板10の表面金属板3に当接されて、締結時の締め付け力がネジ座面から補強部材7に伝わり表面金属板3を介して基板2の表側に伝達されるという点に違いがあるが、実施の形態1で説明したのと同様の作用効果を有している。
(実施の形態3)
基本的には実施の形態2で説明したセラミックス回路基板10の接続構造と同様であるが、締結箇所を増やして強固に接合する場合や、構造的に非回路部が充分に形成できないような場合に、表面金属板3の回路部31を貫いてネジ締めを行なうようにした形態である。図5に実施の形態3におけるセラミックス回路基板20の一例を示す。同じ部分は同じ符号で示すとともに重複する説明は省略する。
図5のセラミックス回路基板20の表面金属板3は、素子を実装する31a部と、ボンディングワイヤーにより31aまたは外部端子と接続される31b、31cにより構成されている。このように表面金属板3全てが電気回路として働く場合、図3の非回路部32に相当する個所は無く、必然的に回路部にネジ締結用の貫通穴部5を形成せざるを得ない。ただしこの場合、当然のことながら、ネジ6もしくは、ネジ6および補強部材7と回路部31(31a、31b、31c)との絶縁は必要となる。また、貫通穴部5を4隅に設ける構造が一般的ではあるが、回路部31の形状によっては貫通穴部5を設けるスペースが十分に確保できない場合も考えられる。その場合、セラミックス回路基板20の4隅以外に貫通穴部5を設けたり、使用するネジ径を部分的に変更して使用することも可能である。中でも特にセラミックス回路基板20の4隅と中央の両方に貫通穴部5を設けた場合、ヒートシンク8にセラミックス回路基板20を固着した際のセラミックス回路基板20の反り量を低減でき、セラミックス回路基板20の放熱性も改善できるメリットもある。これ以外にも、前述した図3に示したセラミックス回路基板10のように非回路部32と回路部31が混在する場合に、表面金属板3の貫通穴53を、非回路部32と回路部31の両方に形成したり、回路部31のみに形成したりするのに適用するとよい。
本実施の形態3では、前述したようにネジ締結部は基本的には実施の形態2の場合と同様であり、図6に示す通りである。ただし、本実施の形態3においては、回路部31におけるネジ締め部では、該回路31aの電気が他の回路や非回路部32に伝わらないよう電気的に絶縁されなければならない。このためには、該回路31aの電気が補強部材7を通じてネジ6に伝わらないようにすればよく、非導電性セラミックス製の補強部材7を用いたり、金属製の補強部材7を用いても表面金属板3との間にセラミックス、樹脂又はゴムなどの絶縁材を装着すればよい。しかし、回路31aの電気を補強部材7を通る経路ではネジ6に伝わらないようにしても、回路31aに形成された貫通穴53の側面とネジ6の側面との隙間空間で絶縁が破壊されてはならない。このため、本セラミックス回路基板20においては、回路部貫通穴直径a2は基板2の貫通穴直径bより大きく形成している。これにより、ネジ6との間隙は(a2−d)/2>(b−d)/2となり、回路部貫通穴直径a2と基板貫通穴直径bが同一寸法のものに比べて、回路部貫通穴側面とネジ側面との距離が長くなり、絶縁破壊の防止に有効である。
さらに、基板2の厚さが薄くなり回路部31と裏面金属板4との間隔が狭くなっても、貫通穴部5で回路31aと裏面金属板4間の絶縁が破壊されてはならない。この点でも、本セラミックス回路基板20は、表裏金属板貫通穴直径aと基板貫通穴直径bが同一寸法のものに比べて、基板2が貫通穴部5内で両金属板3、4より内径方向に突出しているので、突出長さの2倍分絶縁距離が長くなり、絶縁破壊の防止に有効である。
実施の形態1において、本発明の接合構造のクラック発生防止面での有効性を確認するため、窒化ケイ素を主成分とするセラミックス基板を用いた試料を作成してネジ締めし、その時のクラックの発生状況を調べた。試料は次の様にして作成した。窒化ケイ素を主成分とするセラミックス粉末を焼結助剤および有機バインダー等の粘結助剤と混合して一辺が約100mmの正方形状グリーンシートとし、脱脂処理および焼結を行ってセラミックス基板(基板と略す)2とした後、所定直径bの貫通穴52を20mmピッチでレーザー加工した。基板2は、0.32mmと0.63mmの2種類の厚さのものを作製した。次いで、基板2の裏面全面に厚さ0.3mmの銅板を活性金属材でろう接した。ろう接後、裏面銅板4に、所定直径a1の貫通穴54を基板貫通穴52と同心になるようにエッチングで形成した。その後、一辺20mmの正方形に切断し、二つの部材を貫いた貫通穴部5を中央部に有する試料を作製した。
締め付けテストは、試料を、タップ穴を有し上面を研磨仕上げされた鉄板にネジ頭部と基板の間に補強部材を介して締め付けて行なった。ネジはM5、M6の2種類を用いた。同一サイズのネジによる締め付けは、試料に所定の同じ締め付け力が作用するようトルクレンチを用いた。しかし、トルクを制御してもネジ面、座面等摺動部材間の摩擦抵抗の違いで各試料に同じ締め付け力が付与されるとは限らないため、締め付けトルクを変えてテストした。補強部材7は、図7、図8に示すように、M5、M6用として外径Dがそれぞれ12mm、14mmで、全厚さは同じ1.5mmのステンレス製円板状部材を準備し、図中(a)、(b)で示す2種の断面形状のものを製作した。(b)で示すものは、逃げ穴を形成した断面コ字状のものである。基板の貫通穴直径bは、M5、M6のネジに対して各々5.5mm、6.6mmとした。表1、表2に、主として裏面銅板の貫通穴直径a1と補強部材の凹部直径Lを変えた時のテストデータを示す。
Figure 2006203108
表1は、M5のネジで締め付けた場合で、締め付けトルクをそれぞれ3、5、7N・mと違えても、補強部材直径Lが基板穴径bより大きくなる(L/b>1)と、基板の貫通穴エッジ部に割れやクラックが発生しないことがわかる。これは、裏面銅板の穴径a1が基板穴径bと同一の場合でも同様である。
Figure 2006203108
表2は、M6のネジで締め付けた場合である。ネジの大きさが変ることにより関係する穴寸法を変えたが、L/b値と不良発生の関係は表1の結果と同様であると言える。また、基板の厚さを変えた場合でも、ほぼ同様であると言える。テストNo.28でL/bが約1.06のものに不良が1個発生したが、テストに用いた基板の破壊強度に対して、この締め付けトルクは過大で適切でないためと思われる。
以上、上記結果によれば、ネジ締め付け時における基板の貫通穴エッジ部の破損防止には、補強部材の凹部直径Lを基板の貫通穴直径bより大きくすればよいことがわかる。この時、裏面金属板の貫通穴直径a1は、a1≧bになるようにすることが好ましいことがわかる。
実施の形態2において、本発明の接合構造のクラック発生防止面での有効性を確認するため、窒化ケイ素を主成分とするセラミックス基板を用いた試料を作成してネジ締めし、その時のクラックの発生状況を調べた。試料は次の様にして作成した。窒化ケイ素を主成分とするセラミックス粉末を焼結助剤および有機バインダー等の粘結助剤と混合して一辺が約100mmの正方形状グリーンシートとし、脱脂処理および焼結を行ってセラミックス基板(基板と略す)2とした後、所定直径bの貫通穴を20mmピッチでレーザー加工した。基板2は、0.32mmと0.63mmの2種類の厚さのものを作製した。次いで、基板の表裏面全面に厚さ0.3mmの銅板を活性金属材でろう接した。ろう接後、表裏面銅板3、4に、ほぼ同一の所定直径a2、a1の貫通穴53、54を、基板貫通穴52と同心になるようにエッチングで形成した。その後、一辺20mmの正方形に切断し、三つの部材を貫いた貫通穴部5を中央部に有する試料を作製した。締め付けテストは実施例1と同様にして行なったが、ネジ頭部と表面銅板3の間に補強部材7を介して締め付けた点だけが異なっている。表3、表4にテストデータを示す。
Figure 2006203108
Figure 2006203108
表3はM5のネジで締め付けた場合、表4はM6のネジで締め付けた場合であるが、表面金属板貫通穴の直径a2と基板貫通穴の直径bが同一であっても、補強部材の凹部直径Lをそれより大きくすれば不良発生の抑制に効果があることがわかる。しかし、テストNo.68に示すように、締め付け力が大きくなると、補強部材の凹部直径Lが基板の貫通穴bより大きくても不良が出る場合がある。しかし、テストNo.69に示すように、表面金属板貫通穴の直径a2を基板貫通穴の直径bより大きくすれば不良は発生しないことがわかる。
これより、裏面金属板或いは表裏金属板の貫通穴直径aは、基板の貫通穴直径bに対しa>bとすることが好ましいことがわかる。
以上、本発明のセラミックス回路基板の接合構造について説明したが、回路部に半導体素子を搭載したセラミックス回路基板をこの接合構造でヒートシンクに接合すると、接合時の割れ等の不良発生の少ない熱伝達性の良好なパワーモジュールとして提供することができる。
本発明の実施の形態1におけるセラミックス回路基板の接合構造を示す外観略図である。 上記における接合構造を示す断面図である。 本発明の実施の形態2におけるセラミックス回路基板の接合構造を示す外観略図である。 上記における接合構造を示す断面図である。 本発明の実施の形態3におけるセラミックス回路基板の接合構造を示す外観略図である。 上記における接合構造を示す断面図である。 本発明のセラミックス回路基板の接合構造に用いる補強部材を示す断面図である。 本発明のセラミックス回路基板の接合構造に用いる他の補強部材を示す断面図である。 特許文献1に示された従来のセラミックス回路基板の断面図である。
符号の説明
1、10、20…本発明に係わるセラミックス回路基板、 2…セラミックス基板、
3…表面金属板、 4…裏面金属板、 5…貫通穴部、 6…ネジ、 7…補強部材、
8…ヒートシンク、 24…セラミックス基板貫通穴のエッジ部、
52…セラミックス回路基板の貫通穴、 53…表面金属板の貫通穴、
54…裏面金属板の貫通穴、 a…金属板の貫通穴直径、
b…セラミックス基板の貫通穴直径、 L…補強部材の凹部直径、

Claims (10)

  1. セラミックス基板の表裏面に金属板が固着されたセラミックス回路基板をネジで他部材に締結する接合構造において、
    セラミックス回路基板は、裏面金属板とセラミックス基板の二部材にネジを通す貫通穴が形成され、表面側は補強部材を介してネジ締めされており、補強部材はネジを通す貫通穴が形成され、セラミックス基板との当接面における凹部の直径Lはセラミックス基板の貫通穴の直径bに対し、L>bであることを特徴とするセラミックス回路基板の接合構造。
  2. 裏面金属板の貫通穴の直径aは、セラミックス基板の貫通穴の直径bに対し、a≧bであることを特徴とする請求項1記載のセラミックス回路基板の接合構造。
  3. 前記表面金属板は、電気の流路をなす回路部と該回路部とは電気的に切り離された非回路部とで形成されており、補強部材として該非回路部を用いたことを特徴とする請求項1又は2記載のセラミックス回路基板の接合構造。
  4. セラミックス基板の表裏面に金属板が固着されたセラミックス回路基板をネジで他部材に締結する接合構造において、
    セラミックス回路基板は、表裏面金属板とセラミックス基板の三部材にネジを通す貫通穴が形成され、表面金属側は補強部材を介してネジ締めされており、補強部材はネジを通す貫通穴が形成され、表面金属板との当接面における凹部の直径Lはセラミックス基板の貫通穴の直径bに対し、L>bであることを特徴とするセラミックス回路基板の接合構造。
  5. 前記表面金属板及び裏面金属板の貫通穴の直径aは、セラミックス基板の貫通穴の直径bに対し、a≧bであることを特徴とする請求項4記載のセラミックス回路基板の接合構造。
  6. 前記表面金属板は、電気の流路をなす回路部と該回路部とは電気的に切り離された非回路部とで形成されており、該非回路部に貫通穴が形成されていることを特徴とする請求項4又は5記載のセラミックス回路基板の接合構造。
  7. 前記表面金属板は、電気の流路をなす回路部と該回路部とは電気的に切り離された非回路部とで形成されており、貫通穴は少なくとも回路部にも形成され、表面金属板の貫通穴の直径aはセラミックス基板の貫通穴の直径bに対し、a>bであることを特徴とする請求項4又は5記載のセラミックス回路基板の接合構造。
  8. 補強部材は、セラミックス基板との当接面に逃げ穴が形成され、断面がコ字状であることを特徴とする請求項4乃至7のいずれかに記載のセラミックス回路基板の接合構造。
  9. セラミックス基板は、窒化ケイ素を主成分とする焼結体からなることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のセラミックス回路基板。
  10. 表面金属板の回路部に半導体素子を搭載したセラミックス回路基板が、前記請求項1乃至9のいずれかに記載のセラミックス回路基板の接合構造でヒートシンクにネジ締結されていることを特徴とするパワーモジュール。
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