JP2006202925A - 厚膜抵抗体及びその製造方法、並びに電子部品 - Google Patents
厚膜抵抗体及びその製造方法、並びに電子部品 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2006202925A JP2006202925A JP2005012143A JP2005012143A JP2006202925A JP 2006202925 A JP2006202925 A JP 2006202925A JP 2005012143 A JP2005012143 A JP 2005012143A JP 2005012143 A JP2005012143 A JP 2005012143A JP 2006202925 A JP2006202925 A JP 2006202925A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- thick film
- film resistor
- resistor
- alkaline earth
- conductive material
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Non-Adjustable Resistors (AREA)
- Conductive Materials (AREA)
Abstract
【課題】 10kΩ/□以上の高い抵抗値を有し、温度特性(TCR)、耐電圧特性(STOL)を良好なものとする。
【解決手段】 少なくとも導電性材料及びガラス組成物を含有する抵抗体ペーストが焼成されてなる厚膜抵抗体であって、RuO2及びRuとアルカリ土類金属との複合酸化物を含有し、前記厚膜抵抗体をX線回折したときのRuO2の(110)面のピーク強度をRとし、Ruとアルカリ土類金属との複合酸化物の(112)面のピーク強度をAとするとき、A/(A+R)が0.1〜0.9であることを特徴とする。
【選択図】 図2
【解決手段】 少なくとも導電性材料及びガラス組成物を含有する抵抗体ペーストが焼成されてなる厚膜抵抗体であって、RuO2及びRuとアルカリ土類金属との複合酸化物を含有し、前記厚膜抵抗体をX線回折したときのRuO2の(110)面のピーク強度をRとし、Ruとアルカリ土類金属との複合酸化物の(112)面のピーク強度をAとするとき、A/(A+R)が0.1〜0.9であることを特徴とする。
【選択図】 図2
Description
本発明は、厚膜抵抗体及びその製造方法、並びに電子部品に関するものであり、特に、鉛フリーで高抵抗値を有する厚膜抵抗体及びその製造方法並びに電子部品に関する。
ガラスや導電材料を含む抵抗体ペーストを基板上に塗布し焼成することによって形成される厚膜抵抗体においては、通常、導電材料として酸化ルテニウム(RuO2)等が用いられ、ガラスとしてPbO系ガラスが用いられている。ガラスは、導電材料及び基板との結着剤としての機能を果たし、また導電材料とガラスの比率によって抵抗値調整が可能である。
近年、環境問題が盛んに議論されてきており、例えば半田材料等においては、鉛を除外することが求められている。厚膜抵抗体も例外ではなく、したがって、環境に配慮した場合、PbO系ガラスの使用は避けなければならない。このような状況から、鉛を含有した抵抗体ペーストを用いることは望ましくなく、鉛フリーの厚膜抵抗体ペーストについての研究がなされている(例えば、特許文献1〜特許文献5等を参照)。
一方、例えば、10kΩ/□以上の高抵抗を有する厚膜抵抗体の場合、導電材料として抵抗率の低いRuO2を用いると、その添加量を大幅に減らす必要があり、僅かな添加量の変動が抵抗値の大きな変動に繋がり、抵抗値調整が難しくなる。そこで、このような高抵抗を有する厚膜抵抗体には、通常、抵抗率の高い鉛ルテニウムの複合酸化物、例えばPb2Ru2O6が導電材料として用いられている。抵抗率の高いPb2Ru2O6を導電材料として用いることで、高抵抗の厚膜抵抗体を得ることは比較的容易である。
特開平8−253342号公報
特開平10−224004号公報
特開2001−196201号公報
特開平11−251105号公報
特許第3019136号公報
しかしながら、先にも述べたように、環境に配慮した場合、PbO系ガラスは勿論のこと、導電性材料についても鉛を含む材料の使用は避けなければならず、Pb2Ru2O6に代わる導電性材料が必要になっている。
前記Pb2Ru2O6と同程度の抵抗率を持つ導電材料としては、SrRuO3、BaRuO3、CaRuO3等の複合酸化物が挙げられる。しかしながら、これらの複合酸化物を導電材料として使用した場合、焼成中にガラス組成物と反応し、RuO2へと分解してしまうため、高い抵抗値を得るためには、導電材料の量を少なくしなければならず、結果として温度特性(TCR)、耐電圧特性(STOL)等の特性を両立した抵抗体を得ることは困難である。
一方、前述の特許文献1〜特許文献5の発明は、Pbフリーの抵抗体を得るための発明ではあるが、目的や視点が異なり、高い抵抗値を有し、温度特性(TCR)、耐電圧特性(STOL)等の特性に優れた抵抗体を提供するという観点からは、不十分と言わざるを得ない。
そこで本発明はこのような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、10kΩ/□以上の高い抵抗値を有し、温度特性(TCR)、耐電圧特性(STOL)にも優れた厚膜抵抗体及びその製造方法を提供することを目的とし、さらには電子部品を提供することを目的とする。
本発明者らは、前述の目的を達成するために長期にわたり検討を重ねてきた。その結果、焼成によってRuO2へと分解するため厚膜抵抗体には残らないと考えられていたRuとアルカリ土類金属との複合酸化物が、分解せずに厚膜抵抗体中に残る場合があることを見出し、さらに、Ruとアルカリ土類金属との複合酸化物の残存量を適正範囲内とすることで前述の問題を解消し得ることを見出すに至った。
本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。すなわち、本発明に係る厚膜抵抗体は、少なくとも導電性材料及びガラス組成物を含有する抵抗体ペーストが焼成されてなる厚膜抵抗体であって、RuO2及びRuとアルカリ土類金属との複合酸化物を含有し、前記厚膜抵抗体をX線回折したときのRuO2の(110)面のピーク強度をRとし、Ruとアルカリ土類金属との複合酸化物の(112)面のピーク強度をAとするとき、A/(A+R)が0.1〜0.9であることを特徴とする。
また、本発明に係る厚膜抵抗体の製造方法は、少なくとも導電性材料としてのRuとアルカリ土類金属との複合酸化物及びガラス組成物を含有し、これらが有機ビヒクルと混合されてなる抵抗体ペーストを塗布又は印刷した後、焼成する厚膜抵抗体の製造方法であって、前記厚膜抵抗体をX線回折したときのRuO2の(110)面のピーク強度をRとし、Ruとアルカリ土類金属との複合酸化物の(112)面のピーク強度をAとするとき、A/(A+R)が0.1〜0.9となるように前記焼成を行うことを特徴とする。
さらに、本発明に係る電子部品は、前記厚膜抵抗体を有することを特徴とする。
導電性材料として用いたRuとアルカリ土類金属との複合酸化物は、焼成中にRuO2へと分解するが、本発明では、例えばRuO2の分解を抑制するように焼成を行うことにより、適正量のRuとアルカリ土類金属との複合酸化物を残している。前記Ruとアルカリ土類金属との複合酸化物の残存量は、厚膜抵抗体中の導電性材料におけるRuとアルカリ土類金属との複合酸化物と、RuO2との比率で表すことができ、具体的には、厚膜抵抗体をX線回折したときのRuO2の(110)面のピーク強度Rと、Ruとアルカリ土類金属との複合酸化物の(112)面のピーク強度Aとの比率A/(A+R)で表す。A/(A+R)を0.1〜0.9と適正な範囲内とすることで、10kΩ/□以上の高い抵抗値を示し、また、温度特性(TCR)や耐電圧特性(STOL)等の特性も良好な厚膜抵抗体が実現される。
本発明によれば、X線回折によるRuO2と、Ruとアルカリ土類金属との複合酸化物とのピーク強度比を適正範囲としているので、10kΩ/□以上の高い抵抗値を有しながらも、温度特性(TCR)の絶対値が小さく、耐電圧特性(STOL)も良好な厚膜抵抗体及びこの厚膜抵抗体を有する電子部品を実現することが可能である。また、本発明の製造方法によれば、焼成後の厚膜抵抗体におけるRuとアルカリ土類金属との複合酸化物の残存量を適正範囲とし、10kΩ/□以上の高い抵抗値を有しながらも、温度特性(TCR)の絶対値が小さく、耐電圧特性(STOL)の良好な厚膜抵抗体を製造することが可能である。
以下、本発明を適用した厚膜抵抗体及びその製造方法、並びに電子部品について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の厚膜抵抗体は、実質的に鉛を含まない鉛フリーの厚膜抵抗体であり、導電性材料としてのRuとアルカリ土類金属との複合酸化物及びガラス組成物を有機ビヒクルと混合してなる抵抗体ペーストを塗布又は印刷した後、焼成することにより形成されるものである。Ruとアルカリ土類金属との複合酸化物は、10kΩ/□以上の高抵抗値を有する厚膜抵抗体において、温度特性(TCR)や耐電圧特性(STOL)等の改善に非常に有用な導電性材料である。そして、本発明では厚膜抵抗体におけるRuとアルカリ土類金属との複合酸化物の含有量を適正な範囲とする。
抵抗体ペーストに導電性材料として用いたRuとアルカリ土類金属との複合酸化物は、通常の焼成条件では焼成中にガラス組成物と反応し、分解してRuO2となり、焼成後の厚膜抵抗体には全く残存しないと従来は考えられてきたが、本発明では、例えば抵抗体ペースト組成等を後述するように最適化することによって、分解を抑制し、Ruとアルカリ土類金属との複合酸化物を残存させるようにしている。
厚膜抵抗体におけるRuとアルカリ土類金属との複合酸化物の含有量、すなわち残存量は、厚膜抵抗体中の導電性材料における、Ruとアルカリ土類金属との複合酸化物と、RuO2との比率で表すことができる。具体的には、厚膜抵抗体をX線回折により分析したときのRuO2の(110)面のピーク強度をRとし、Ruとアルカリ土類金属との複合酸化物の(112)面のピーク強度をAとしたとき、A/(A+R)として表す。本発明の厚膜抵抗体においては、A/(A+R)が0.1〜0.9である。
A/(A+R)が前記範囲内であることは、厚膜抵抗体においてRuとアルカリ土類金属との複合酸化物がRuO2へ分解せずに残存した量(含有量)が適正であることを意味する。したがって、A/(A+R)を前記範囲内とすることで、高い抵抗値を実現し、温度特性(TCR)や耐電圧特性(STOL)等の良好な厚膜抵抗体が実現される。A/(A+R)が前記範囲を下回ることは、すなわち、Ruとアルカリ土類金属との複合酸化物の大部分が焼成中にRuO2へと分解し、厚膜抵抗体にRuとアルカリ土類金属との複合酸化物がほとんど残っていないことを表し、温度特性(TCR)や耐電圧特性(STOL)等の改善が不十分となる。また、A/(A+R)が前記範囲を上回ることは、すなわち、Ruとアルカリ土類金属との複合酸化物の分解が進んでいないことを表し、厚膜抵抗体の抵抗値が高くなりすぎる傾向を示す。
以下、本発明の厚膜抵抗体を得るための抵抗体ペーストについて詳しく説明する。抵抗体ペーストは、実質的に鉛を含まない鉛フリーの抵抗体ペーストであり、少なくとも導電性材料としてのRuとアルカリ土類金属との複合酸化物及びガラス組成物を有機ビヒクルと混合してなるものである。
導電性材料は、絶縁体であるガラス組成物中に分散されることで、構造物である厚膜抵抗体に導電性を付与する役割を持つ。本発明では、導電性材料として、Ruとアルカリ土類金属との複合酸化物を用いる。Ruとアルカリ土類金属との複合酸化物は、Pb2Ru2O6と同程度の抵抗率を持ち、鉛を実質的に含まない鉛フリーで高抵抗値の厚膜抵抗体を実現するために重要である。Ruとアルカリ土類金属との複合酸化物は、具体的にはRuとアルカリ土類金属(Ba、Ca、Sr)の1種若しくは2種以上との複合酸化物であり、例えばSrRuO3、BaRuO3、CaRuO3、(Ca、Mg)RuO3、(Ca、Sr)RuO3、Ca2RuO4、Sr2RuO4等が挙げられる。
導電性材料として用いるRuとアルカリ土類金属との複合酸化物の平均粒径は、例えば1.0μm以下とすることが好ましい。平均粒径が前記範囲を上回ると、抵抗体ペーストにおけるRuとアルカリ土類金属との複合酸化物の分散状態が悪化するおそれがある。
本発明では、以下に述べるように抵抗体ペーストの組成等を制御することによってRuとアルカリ土類金属との複合酸化物の分解を抑制しているので、厚膜抵抗体中にRuとアルカリ土類金属との複合酸化物を平均粒径によらず確実に残すことができる。したがって、本発明では平均粒径の小さいRuとアルカリ土類金属との複合酸化物粒子を導電性材料として使用することが可能となり、具体的には、導電性材料として平均粒径が1.0μm以下のRuとアルカリ土類金属との複合酸化物の使用が実現される。
次に、ガラス組成物について説明する。ガラス組成物は、厚膜抵抗体とされたとき、厚膜抵抗体中で導電性材料及び添加物を基板と結着させる役割を持つ。ガラス組成物は、特に限定されることはないが、本発明では、環境保全上、鉛を実質的に含まない鉛フリーのガラス組成物を用いる。なお、本発明において、「鉛を実質的に含まない」とは、不純物レベルを越える鉛を含まないことを意味し、不純物レベルの量(例えば、ガラス組成物又は導電性材料中の含有量が0.05質量%以下程度)であれば含有されていてもよい趣旨である。鉛は、不可避不純物として極微量程度、含有されることがある。
ガラス組成物としては、例えば、CaO、SrO、BaO、MgOから選択される1種若しくは2種以上を主たる修飾酸化物成分とし、B2O3とSiO2とを網目形成酸化物成分として含有するものを用いることができる。
ここで、ガラス組成物における各成分の含有量について説明すると、先ず、主たる修飾酸化物成分は、ガラス組成物中に13モル%〜45モル%含有されることが好ましい。主たる修飾酸化物成分の含有量が前記範囲を下回る場合、導電性材料との反応性が低下し、TCR、STOL特性を劣化させるおそれがある。逆に、主たる修飾酸化物成分の含有量が前記範囲を越える場合、厚膜抵抗体を形成した時に、過剰な金属酸化物の析出が起こり、特性、信頼性を劣化させるおそれがある。主たる修飾酸化物成分としては、CaO、SrO、BaOを用いることが好ましい。
網目形成酸化物成分は、ガラス組成物中に35モル%〜80モル%含有されることが好ましい。網目形成酸化物成分の含有量が少ない場合、ガラス組成物の軟化点が高くなるため、所定の焼成温度にて厚膜抵抗体を形成した場合、厚膜抵抗体の焼結が不十分となり、信頼性を著しく低下させるおそれがある。逆に、網目形成酸化物成分の含有量が多すぎる場合、ガラス組成物の耐水性が低下するため、厚膜抵抗体としたときの信頼性を著しく低下させるおそれがある。
また、ガラス組成物は、その他の修飾酸化物成分を含有してもよい。その他の修飾酸化物成分としては、例えばZrO2、Al2O3から選択される1種若しくは2種が挙げられる。
ZrO2、Al2O3から選択される1種若しくは2種は、ガラス組成物中に2モル%〜11モル%含有されることが好ましい。含有量が11モル%を越える場合、厚膜抵抗体を形成した時に、過剰な金属酸化物の析出が起こり、特性、信頼性を劣化させるおそれがある。特にZrO2を用いることが好ましい。
また、ガラス組成物は、その他の修飾酸化物成分として、Ta2O5、Nb2O5から選択される1種若しくは2種を含有することが好ましい。Ta2O5、Nb2O5から選択される1種若しくは2種は、ガラス組成物中に0〜8モル%(ただし、0は含まず。)含有されることが好ましい。Ta2O5、Nb2O5が全く含まれていなかったり、含有量が前記範囲を上回ると、TCR、STOLのいずれもが大きくなり、これら特性が劣化するおそれがある。
さらに、ガラス組成物は、任意の金属酸化物を含有してもよい。任意の金属酸化物は、ガラス組成物中に0〜22モル%含有されることが好ましい。任意の金属酸化物としては、例えば、MgO、ZnO、TiO2、SnO2、K2O、Na2O、Li2O、CuO、NiO、CoO、MnO、Fe2O3、Cr2O3、V2O5、Y2O3、Sc2O3、In2O3、Lu2O3、Yb2O3、Tm2O3、Er2O3、Ho2O3、Dy2O3、Tb4O7、Gd2O3、Eu2O3、Sm2O3等が挙げられる。
したがって、ガラス組成物の好ましい組成は、下記のように表すことができる。
CaO、SrO、BaOから選択される1種若しくは2種以上:13〜45モル%
B2O3、SiO2から選択される1種若しくは2種:35〜80モル%
ZrO2:2〜11モル%
Ta2O5、Nb2O5から選択される1種若しくは2種:0〜8モル%(ただし、0は含まず。)
任意の金属酸化物:0〜22モル%
CaO、SrO、BaOから選択される1種若しくは2種以上:13〜45モル%
B2O3、SiO2から選択される1種若しくは2種:35〜80モル%
ZrO2:2〜11モル%
Ta2O5、Nb2O5から選択される1種若しくは2種:0〜8モル%(ただし、0は含まず。)
任意の金属酸化物:0〜22モル%
前記組成範囲を外れると、前述のような効果を十分に得ることができなくなり、TCRやSTOLの改善が不十分になるおそれがある。
なお、ガラス組成物においては、各酸化物はそのままの形で含有されるわけではなく、例えば複合酸化物の形態となっているものと推測される。しかしながら、本明細書においては、ガラス組成物における組成の表記は、通例にしたがい、各酸化物に換算したときの含有量として表記する。例えば、抵抗体ペーストや厚膜抵抗体に含まれるガラス組成物は、厳密に言えばCaをCaOの形態のまま含有するわけではない。また、Ca原料は、通常はCaCO3の形で原料組成に添加される。したがって、「CaO20〜40モル%」とは、ガラス組成物を構成する複合酸化物がCaをCaO換算で20〜40モル%含有するという意味である
抵抗体ペーストには、前記導電性材料、ガラス組成物の他、添加物が含まれていてもよい。本発明においては、添加物としてCa、Sr、Ba、Mgから選択される1種若しくは2種以上とTiとの複合酸化物を用いることが好ましい。Ca、Sr、Ba、Mgから選択される1種若しくは2種以上とTiとの複合酸化物としては、例えばBaTiO3、SrTiO3、CaTiO3、MgTiO3等から選択される1種若しくは2種以上を用いることができる。
抵抗体ペーストに導電性材料としてRuとアルカリ土類金属との複合酸化物を用いるとともに、添加物としてCa、Sr、Ba、Mgから選択される1種若しくは2種以上とTiとの複合酸化物を用いることによって、この抵抗体ペーストを焼成したとき、焼成中のRuとアルカリ土類金属との複合酸化物の分解が抑制される。その結果、厚膜抵抗体中に前述のような適正量のRuとアルカリ土類金属との複合酸化物を容易に残存させることができ、高い抵抗値を有し、TCR及びSTOLの良好な厚膜抵抗体を作製することができる。
Ruとアルカリ土類金属との複合酸化物の分解が抑制される理由は、抵抗体ペースト中に添加物としてCa、Sr、Ba、Mgから選択される1種若しくは2種以上とTiとの複合酸化物を含有させると、この複合酸化物とガラス組成物との反応がRuとアルカリ土類金属との複合酸化物とガラス組成物との反応に優先して起こるためと推測される。したがって、前述の効果を得る観点では、Ca、Sr、Ba、Mgから選択される1種若しくは2種以上とTiとの複合酸化物を、ガラス組成物成分としてではなく、添加物として抵抗体ペースト中に存在させることが必要である。
TCR及びSTOLを良好な値とする観点では、抵抗体ペーストにおける導電性材料、ガラス組成物、添加物、及び金属材料を合計した質量を100質量%としたとき、Ca、Sr、Ba、Mgから選択される1種若しくは2種以上とTiとの複合酸化物の含有量は、0〜30質量%とすることが好ましい。
また、抵抗体ペーストには、必要に応じて他の添加物が含まれていてもよい。例えば他の添加物として、CuO、Cu2Oから選択される1種若しくは2種を併用することで、STOLをより一層改善することが可能である。CuO、Cu2Oの含有量は、10kΩ/□以上の厚膜抵抗体を作製するための抵抗体ペーストにおいては、導電性材料、ガラス組成物、添加物、及び金属材料を合計した質量を100質量%としたとき、例えば0〜10質量%であり、特に0〜8質量%であることが好ましい。
また、抵抗体ペーストには、他の添加物として、任意の金属酸化物が含まれていてもよい。この場合の任意の金属酸化物としては、例えばNiO、MgO、ZnO等が挙げられる。抵抗体ペーストにおける前記任意の金属酸化物の含有量は、例えば0〜10質量%であることが好ましい。
また、抵抗体ペーストには、AgやPd等の単体金属、Ag−Pd等のAgやPdの合金等、任意の金属材料が含まれていてもよい。特に、Agが好適である。添加物としてCa、Sr、Ba、Mgから選択される1種若しくは2種以上とTiとの複合酸化物を用いた場合、金属材料の微粒子を併用することで、形成される厚膜抵抗体のTCRを著しく平坦化でき、また、STOLについては、広い組成範囲において、ほとんどゼロに近い値を達成できる。TCR及びSTOLを良好な値とする観点で、抵抗体ペーストにおける導電性材料、ガラス組成物、添加物、及び金属材料を合計した質量を100質量%としたとき、任意の金属材料の微粒子の含有量は、例えば0〜45質量%(ただし0は含まず)であり、特に0〜15質量%(ただし0は含まず)であることが好ましい。
前述の導電性材料、ガラス組成物、必要に応じて含まれる添加物、金属材料等は、有機ビヒクル中に分散することで抵抗体ペーストとされるが、このとき、導電性材料、ガラス組成物、添加物、及び金属材料を合計した質量を100質量%とすると、導電性材料の割合は5質量%〜60質量%、ガラス組成物の割合は20質量%〜70質量%、添加物の質量%は0〜30質量%、金属材料の割合は0〜15質量%(ただし0は含まず)とすることが好ましい。
抵抗体ペースト用の有機ビヒクルとしては、この種の抵抗体ペーストに用いられるものがいずれも使用可能であり、例えば、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、メタクリル樹脂、ブチルメタクリレート等のバインダ樹脂と、ターピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、アセテート、トルエン、各種アルコール、キシレン等の溶剤とを混合して用いることができる。このとき、各種の分散剤や活性剤、可塑剤等を用途等に応じて適宜併用することも可能である。
前記有機ビヒクルの配合比率であるが、ガラス組成物、導電性材料、並びに必要に応じて含まれる添加物及び金属材料からなる抵抗体組成物の重量(W1)と、有機ビヒクルの重量(W2)の比率(W2/W1)が、0.25〜4(W2:W1=1:0.25〜1:4)であることが好ましい。より好ましくは、前記比率(W2/W1)が0.5〜2である。前記比率を外れると、厚膜抵抗体を例えば基板上に形成するのに適した粘度の抵抗体ペーストを得ることができなくなるおそれがある。
本発明の厚膜抵抗体を形成するには、前述の成分を含む抵抗体ペーストを例えば基板上にスクリーン印刷等の手法で印刷(塗布)し、焼成すればよい。
抵抗体ペーストが塗布される基板としては、Al2O3基板やBaTiO3基板の誘電体基板や、低温焼成セラミック基板、AlN基板等を用いることができる。基板形態としては、単層基板、複合基板、多層基板のいずれであってもよい。多層基板の場合、厚膜抵抗体は、表面に形成してもよいし、内部に形成してもよい。
本発明では、例えば抵抗体ペーストの添加物としてCa、Sr、Ba、Mgから選択される1種若しくは2種以上とTiとの複合酸化物を用いることにより導電性材料としてのRuとアルカリ土類金属との複合酸化物の分解を抑制しているため、焼成条件については特に変更することなくRuとアルカリ土類金属との複合酸化物の残った厚膜抵抗体を非常に簡単に得ることができる。例えば、焼成雰囲気を通常の焼成雰囲気である空気中とすることができる。焼成温度についても通常の厚膜抵抗体を焼成する際の温度とすることができ、例えば800℃〜900℃とすることが好ましい。
なお、前記のように厚膜抵抗体中にRuとアルカリ土類金属との複合酸化物を残存させるためには、複合酸化物(SrRuO3、BaRuO3、CaRuO3)の平均粒径を大きくすればよいものと考えられる。この場合には、焼成後の厚膜抵抗体中には、外側がRuO2で覆われる一方、導電性材料の内側に原料として用いた導電材料が残った粒子が含まれる。しかしながら、平均粒径の大きい導電材料を用いると、抵抗体ペースト中の導電材料の分散状態が悪化し、抵抗体ペーストの作製が困難となるおそれがある。
これに対し本発明では、例えば前述のように抵抗体ペーストの組成を制御する等によってRuとアルカリ土類金属との複合酸化物の分解を抑制しているため、粒径によらず確実に厚膜抵抗体中にRuとアルカリ土類金属との複合酸化物を残存させることができ、平均粒径を大きくする必要はない。したがって、前述のように平均粒径1.0μm以下のRuとアルカリ土類金属との複合酸化物の導電性材料としての使用が可能となるのである。
厚膜抵抗体の形成に際しては、通常、基板に電極となる導電パターンを形成するが、この導電パターンは、例えば、AgやPt、Pd等を含むAg系の良導電材料を含む導電ペーストを印刷することにより形成することができる。また、形成した厚膜抵抗体の表面に、ガラス膜等の保護膜(オーバーグレーズ)を形成してもよい。
本発明の厚膜抵抗体を適用可能な電子部品としては特に限定されないが、例えば単層または多層の回路基板、チップ抵抗器等の抵抗器、アイソレータ素子、C−R複合素子、モジュール素子の他、積層チップコンデンサ等のコンデンサやインダクタ等が挙げられ、コンデンサやインダクタ等の電極部分にも適用することができる。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施例の記載に限定されるものではない。
<ガラス組成物の作製>
ガラス原料としては、Ta2O5、Nb2O5、B2O3、SiO2、CaCO3、SrCO3、BaCO3、ZrO2等を用いた。これらの中から所定の成分を選択して所定量秤量し、ボールミルにて混合して乾燥させた。得られた粉末を5℃/分の速度で1300℃まで昇温し、その温度を1時間保持して溶融させた。そして、溶融物を水中に投入することによって急冷し、ガラス化した。作製したガラス組成物の組成を表1に示す。なお、表1に示す組成において、数値は各成分の割合(モル%)を表す。
ガラス原料としては、Ta2O5、Nb2O5、B2O3、SiO2、CaCO3、SrCO3、BaCO3、ZrO2等を用いた。これらの中から所定の成分を選択して所定量秤量し、ボールミルにて混合して乾燥させた。得られた粉末を5℃/分の速度で1300℃まで昇温し、その温度を1時間保持して溶融させた。そして、溶融物を水中に投入することによって急冷し、ガラス化した。作製したガラス組成物の組成を表1に示す。なお、表1に示す組成において、数値は各成分の割合(モル%)を表す。
<導電性材料>
導電性材料としては、CaRuO3、SrRuO3、BaRuO3、(Ca、Mg)RuO3、(Ca、Sr)RuO3、Ca2RuO4、Sr2RuO4を用いた。各導電性材料は、平均粒径が1.0μm以下となるように、ボールミルにて粉砕を行った。
導電性材料としては、CaRuO3、SrRuO3、BaRuO3、(Ca、Mg)RuO3、(Ca、Sr)RuO3、Ca2RuO4、Sr2RuO4を用いた。各導電性材料は、平均粒径が1.0μm以下となるように、ボールミルにて粉砕を行った。
<添加物>
添加物としては、CuO、Cu2O、CaTiO3、SrTiO3、BaTiO3等を用いた。
添加物としては、CuO、Cu2O、CaTiO3、SrTiO3、BaTiO3等を用いた。
<金属材料>
金属材料としては、Ag、Pdを用いた。
金属材料としては、Ag、Pdを用いた。
<有機ビヒクルの作製>
バインダとしてエチルセルロース、有機溶剤としてテルピネオールを用い、有機溶剤を加熱撹拌しながらバインダを溶かして、有機ビヒクルを作製した。
バインダとしてエチルセルロース、有機溶剤としてテルピネオールを用い、有機溶剤を加熱撹拌しながらバインダを溶かして、有機ビヒクルを作製した。
<抵抗体ペーストの作製>
導電性材料、ガラス組成物粉末、添加物、金属材料及び有機ビヒクルを各組成となるように秤量し、3本ロールミルで混練し、抵抗体ペーストを得た。なお、導電性材料、ガラス組成物粉末、添加物及び金属材料の合計質量と有機ビヒクルの質量の比は、得られた抵抗体ペーストがスクリーン印刷に適した粘度となるように、質量比で1:0.25〜1:4の範囲で調合し、抵抗体ペーストを作製した。
導電性材料、ガラス組成物粉末、添加物、金属材料及び有機ビヒクルを各組成となるように秤量し、3本ロールミルで混練し、抵抗体ペーストを得た。なお、導電性材料、ガラス組成物粉末、添加物及び金属材料の合計質量と有機ビヒクルの質量の比は、得られた抵抗体ペーストがスクリーン印刷に適した粘度となるように、質量比で1:0.25〜1:4の範囲で調合し、抵抗体ペーストを作製した。
<厚膜抵抗体の作製>
96%のアルミナ基板上に、Ag−Pt導体ペーストを所定形状にスクリーン印刷して乾燥させた。Ag−Pt導体ペーストにおけるAgの割合は95質量%、Ptの割合は5質量%とした。このアルミナ基板をベルト炉に入れ、投入から排出まで1時間のパターンで焼き付けを行った。この時の焼き付け温度(焼成温度)は750℃〜950℃、その温度での保持時間は10分間とした。
96%のアルミナ基板上に、Ag−Pt導体ペーストを所定形状にスクリーン印刷して乾燥させた。Ag−Pt導体ペーストにおけるAgの割合は95質量%、Ptの割合は5質量%とした。このアルミナ基板をベルト炉に入れ、投入から排出まで1時間のパターンで焼き付けを行った。この時の焼き付け温度(焼成温度)は750℃〜950℃、その温度での保持時間は10分間とした。
このようにして導体が形成されたアルミナ基板上に、先に作製した厚膜抵抗体ペーストをスクリーン印刷法にて所定の形状(1mm×1mmの方形状)のパターンで塗布し、乾燥した。その後、導体焼き付けと同じ条件で抵抗体ペーストを焼き付け、厚膜抵抗体を得た。
<導電性材料比率 A/(A+R)>
理学電機株式会社製のX線回析装置(商品名RINJ2500)により厚膜抵抗体のX線回析を行った。測定は、CuKα線を用い、管電圧50kV、管電流300mAとした。導電性材料としてCaRuO3を用いる場合、X線回折結果をバックグラウンド除去処理し、処理後のRuO2の(110)面(2θ=27.9)のピーク強度をRとし、CaRuO3の(112)面(2θ=32.9)のピーク強度をAとし、A/(A+R)を焼成後導電性材料比率とした。A/(A+R)は、厚膜抵抗体に含まれる導電性材料における、Ruとアルカリ土類金属との複合酸化物の割合を表すものである。
理学電機株式会社製のX線回析装置(商品名RINJ2500)により厚膜抵抗体のX線回析を行った。測定は、CuKα線を用い、管電圧50kV、管電流300mAとした。導電性材料としてCaRuO3を用いる場合、X線回折結果をバックグラウンド除去処理し、処理後のRuO2の(110)面(2θ=27.9)のピーク強度をRとし、CaRuO3の(112)面(2θ=32.9)のピーク強度をAとし、A/(A+R)を焼成後導電性材料比率とした。A/(A+R)は、厚膜抵抗体に含まれる導電性材料における、Ruとアルカリ土類金属との複合酸化物の割合を表すものである。
<抵抗体の特性評価>
(1)抵抗値
Agilent Technologies 社製の製品番号 34401Aにより測定。試料数24個の平均値を求めた。
(1)抵抗値
Agilent Technologies 社製の製品番号 34401Aにより測定。試料数24個の平均値を求めた。
(2)TCR
室温25℃を基準として、−55℃及び125℃へ温度を変えた時の抵抗値変化率を求めた。試料数10個の平均値である。−55℃、25℃、125℃の抵抗値をR-55、R25、R125(Ω/□)とおくと、TCR(ppm/℃)=[(R-55-R25)/R25/80]×1000000、あるいは、TCR(ppm/℃)=[(R125-R25)/R25/100]×1000000である。数値の大きい方をTCR値とした。
室温25℃を基準として、−55℃及び125℃へ温度を変えた時の抵抗値変化率を求めた。試料数10個の平均値である。−55℃、25℃、125℃の抵抗値をR-55、R25、R125(Ω/□)とおくと、TCR(ppm/℃)=[(R-55-R25)/R25/80]×1000000、あるいは、TCR(ppm/℃)=[(R125-R25)/R25/100]×1000000である。数値の大きい方をTCR値とした。
(3)STOL(短時間過負荷)
厚膜抵抗体に試験電圧を5秒間印加し、その前後における抵抗値の変化率を求めた。試料数10個の平均値である。試験電圧=2.5×定格電圧であり、定格電圧=√(R/4)、Rは抵抗値(Ω/□)である。計算した試験電圧が400Vを越える抵抗値を持つ抵抗体については、試験電圧を400Vにて行った。
厚膜抵抗体に試験電圧を5秒間印加し、その前後における抵抗値の変化率を求めた。試料数10個の平均値である。試験電圧=2.5×定格電圧であり、定格電圧=√(R/4)、Rは抵抗値(Ω/□)である。計算した試験電圧が400Vを越える抵抗値を持つ抵抗体については、試験電圧を400Vにて行った。
<導電性材料比率に関する検討>
抵抗体ペーストの作製に際して、抵抗体ペーストの組成を表2に示すように変化させて、厚膜抵抗体における導電性材料比率が表2に示すように変化するように厚膜抵抗体(試料1〜試料7)を作製し、各厚膜抵抗体の特性(抵抗値、TCR、STOL)を評価した。評価結果を表2に示す。
抵抗体ペーストの作製に際して、抵抗体ペーストの組成を表2に示すように変化させて、厚膜抵抗体における導電性材料比率が表2に示すように変化するように厚膜抵抗体(試料1〜試料7)を作製し、各厚膜抵抗体の特性(抵抗値、TCR、STOL)を評価した。評価結果を表2に示す。
表2から明らかなように、添加物としてBaTiO3を用い、A/(A+R)が0.1〜0.9と適正な範囲内である試料2〜試料6においては、10kΩを超える高い抵抗値を示し、TCRが±100ppm以下と小さく、STOLの絶対値も小さい値となっている。これに対して、添加物としてBaTiO3を用いず、A/(A+R)が本発明の範囲を下回る試料1においては、TCRが±100ppmを越えたり、STOLが大きくなる等の特性劣化が見られる。また、A/(A+R)が本発明の範囲を上回る試料7においては、抵抗値が高くなりすぎて測定不可能であった。
また、試料1、試料3及び試料5のX線回折結果を、図1、図2、図3にそれぞれ示す。図1に示すように、試料1ではCaRuO3の析出が見られないが、試料3及び試料5では、それぞれ図2、図3に示すように、CaRuO3の析出が観察され、厚膜抵抗体中にCaRuO3が残存していることが確認された。
<添加物2(Ca、Sr、Ba、Mgから選択される1種若しくは2種以上とTiとの複合酸化物)に関する検討>
抵抗体ペーストの作製に際して、抵抗体ペーストに含まれる添加物2を表3に示すように変化させて厚膜抵抗体(試料8〜試料18)を作製し、各厚膜抵抗体の特性を評価した。評価結果を表3に示す。
抵抗体ペーストの作製に際して、抵抗体ペーストに含まれる添加物2を表3に示すように変化させて厚膜抵抗体(試料8〜試料18)を作製し、各厚膜抵抗体の特性を評価した。評価結果を表3に示す。
表3から明らかなように、添加物としてCa、Sr、Ba、Mgから選択される1種若しくは2種以上とTiとの複合酸化物を用いることで、導電性材料比率A/(A+R)が適正な範囲内であり、TCR、STOLの良好な厚膜抵抗体が得られている。
<金属材料に関する検討>
抵抗体ペーストの作製に際して、抵抗体ペーストに含まれる金属材料を表4に示すように変化させて厚膜抵抗体(試料19〜試料23)を作製し、各厚膜抵抗体の特性を評価した。評価結果を表4に示す。
抵抗体ペーストの作製に際して、抵抗体ペーストに含まれる金属材料を表4に示すように変化させて厚膜抵抗体(試料19〜試料23)を作製し、各厚膜抵抗体の特性を評価した。評価結果を表4に示す。
表4から明らかなように、金属材料としてのAg量を適正範囲内とした試料20及び試料21に比較すると、試料19(0質量%)及び試料22(20質量%)では、TCRやSTOL等の特性劣化が見られる。したがって、金属材料の好ましい含有量は0〜15質量%(ただし0を含まず。)であるとわかる。また、試料23から、金属材料としてPdを使用した場合も良好な結果が得られた。
<添加物1及び添加物3に関する検討>
抵抗体ペーストの作製に際して、抵抗体ペーストに含まれる添加物1又は添加物3を表5に示すように変化させて厚膜抵抗体(試料24〜試料30)を作製し、各厚膜抵抗体の特性を評価した。結果を表5に示す。
抵抗体ペーストの作製に際して、抵抗体ペーストに含まれる添加物1又は添加物3を表5に示すように変化させて厚膜抵抗体(試料24〜試料30)を作製し、各厚膜抵抗体の特性を評価した。結果を表5に示す。
表5中、試料24〜試料26の比較から明らかなように、添加物としてのCuOの含有量を8質量%以下とすることで、TCR、STOLの良好な厚膜抵抗体が得られている。また、CuOに代えてCu2Oを用いた場合も良好な厚膜抵抗体が得られている(試料27)。さらに、試料28〜試料30に示すように、抵抗体ペーストに添加物としてNiO、MgO又はZnOを組み合わせて用いた厚膜抵抗体の特性は良好なものであった。
<導電性材料に関する検討>
抵抗体ペーストの作製に際して、抵抗体ペーストに含まれる導電性材料を表6に示すように変化させて厚膜抵抗体(試料31〜試料36)を作製し、各厚膜抵抗体の特性を評価した。結果を表6に示す。
抵抗体ペーストの作製に際して、抵抗体ペーストに含まれる導電性材料を表6に示すように変化させて厚膜抵抗体(試料31〜試料36)を作製し、各厚膜抵抗体の特性を評価した。結果を表6に示す。
表6から明らかなように、表6に示すいずれの導電性材料を用いた場合も、A/(A+R)を適正な範囲内とすることで、高い抵抗値を示し、TCR及びSTOLの良好な厚膜抵抗体が得られている。
<ガラス組成物に関する検討>
抵抗体ペーストの作製に際して、抵抗体ペーストに含まれるガラス組成物として、表1に示すガラス3又はガラス4を使用して厚膜抵抗体(試料37、試料38)を作製し、各厚膜抵抗体の特性を評価した。結果を表7に示す
抵抗体ペーストの作製に際して、抵抗体ペーストに含まれるガラス組成物として、表1に示すガラス3又はガラス4を使用して厚膜抵抗体(試料37、試料38)を作製し、各厚膜抵抗体の特性を評価した。結果を表7に示す
表7から明らかなように、組成の異なるガラス3、ガラス4を用いた場合も良好な特性の厚膜抵抗体が得られている。
<焼成温度に関する検討>
抵抗体ペーストの作製に際して、抵抗体ペーストの焼き付け温度(焼成温度)を750℃〜950℃の範囲内で変化させて厚膜抵抗体(試料39〜試料43)を作製し、各厚膜抵抗体の特性を評価した。結果を表8に示す。
抵抗体ペーストの作製に際して、抵抗体ペーストの焼き付け温度(焼成温度)を750℃〜950℃の範囲内で変化させて厚膜抵抗体(試料39〜試料43)を作製し、各厚膜抵抗体の特性を評価した。結果を表8に示す。
表8から明らかなように、焼成温度を750℃とした厚膜抵抗体(試料39)では、導電性材料の比率A/(A+R)が適正な範囲を上回り、TCR及びSTOL等の特性劣化が確認された。また、焼成温度を950℃とした厚膜抵抗体(試料43)ではTCR特性が損なわれていた。したがって、焼成温度の最適範囲は800℃〜900℃(試料40〜試料42)であり、前記範囲内とすることで、TCR、STOL等の特性改善効果を確実に得られることがわかる。
Claims (15)
- 少なくとも導電性材料及びガラス組成物を含有する抵抗体ペーストが焼成されてなる厚膜抵抗体であって、
RuO2及びRuとアルカリ土類金属との複合酸化物を含有し、
前記厚膜抵抗体をX線回折したときのRuO2の(110)面のピーク強度をRとし、Ruとアルカリ土類金属との複合酸化物の(112)面のピーク強度をAとするとき、A/(A+R)が0.1〜0.9であることを特徴とする厚膜抵抗体。 - 金属材料を含有することを特徴とする請求項1記載の厚膜抵抗体。
- 前記金属材料がAg、Pd、Ag−Pd合金から選択される1種若しくは2種以上であることを特徴とする請求項2記載の厚膜抵抗体。
- 少なくとも導電性材料としてのRuとアルカリ土類金属との複合酸化物及びガラス組成物を含有し、これらが有機ビヒクルと混合されてなる抵抗体ペーストを塗布又は印刷した後、焼成する厚膜抵抗体の製造方法であって、
前記厚膜抵抗体をX線回折したときのRuO2の(110)面のピーク強度をRとし、Ruとアルカリ土類金属との複合酸化物の(112)面のピーク強度をAとするとき、A/(A+R)が0.1〜0.9となるように前記焼成を行うことを特徴とする厚膜抵抗体の製造方法。 - 前記抵抗体ペーストが、添加物としてCa、Sr、Ba、Mgから選択される1種若しくは2種以上とTiとの複合酸化物を含有することを特徴とする請求項4記載の厚膜抵抗体の製造方法。
- 前記抵抗体ペーストが、金属材料を含有することを特徴とする請求項5記載の厚膜抵抗体の製造方法。
- 前記金属材料が、Ag、Pd、Ag−Pd合金から選択される1種若しくは2種以上であることを特徴とする請求項6記載の厚膜抵抗体の製造方法。
- 前記Ruとアルカリ土類金属との複合酸化物の平均粒径が1.0μm以下であることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項記載の厚膜抵抗体の製造方法。
- 前記焼成を800℃〜900℃で行うことを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項記載の厚膜抵抗体の製造方法。
- 前記焼成を空気中で行うことを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項記載の厚膜抵抗体の製造方法。
- 前記ガラス組成物が下記の組成を有することを特徴とする請求項4〜10のいずれか1項記載の厚膜抵抗体の製造方法。
CaO、SrO、BaOから選択される1種若しくは2種以上:13〜45モル%
B2O3、SiO2から選択される1種若しくは2種:35〜80モル%
ZrO2:2〜11モル%
Ta2O5、Nb2O5から選択される1種若しくは2種:0〜8モル%(ただし、0は含まず。)
任意の金属酸化物:0〜22モル% - 前記抵抗体ペーストが、添加物としてCuO、Cu2Oから選択される1種若しくは2種を含有することを特徴とする請求項4〜11のいずれか1項記載の厚膜抵抗体の製造方法。
- 前記抵抗体ペーストが、添加物としてNiO、MgO、ZnOから選択される1種若しくは2種以上を含有することを特徴とする請求項4〜12のいずれか1項記載の厚膜抵抗体の製造方法。
- 前記抵抗体ペーストに含まれる前記導電性材料、ガラス組成物、添加物及び金属材料を合計した合計質量を100質量%とした場合、前記導電性材料の含有量が5質量%〜60質量%、前記ガラス組成物の含有量が20質量%〜70質量%、前記添加物の含有量が0〜30質量%、前記金属材料の含有量が0〜15質量%(ただし0は含まず)であることを特徴とする請求項4〜13のいずれか1項記載の厚膜抵抗体の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の厚膜抵抗体を有することを特徴とする電子部品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005012143A JP2006202925A (ja) | 2005-01-19 | 2005-01-19 | 厚膜抵抗体及びその製造方法、並びに電子部品 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005012143A JP2006202925A (ja) | 2005-01-19 | 2005-01-19 | 厚膜抵抗体及びその製造方法、並びに電子部品 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2006202925A true JP2006202925A (ja) | 2006-08-03 |
Family
ID=36960655
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2005012143A Pending JP2006202925A (ja) | 2005-01-19 | 2005-01-19 | 厚膜抵抗体及びその製造方法、並びに電子部品 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2006202925A (ja) |
-
2005
- 2005-01-19 JP JP2005012143A patent/JP2006202925A/ja active Pending
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR100693896B1 (ko) | 후막저항체 페이스트 및 후막저항체 | |
JP2005235754A (ja) | 導電性材料及びその製造方法、抵抗体ペースト、抵抗体、電子部品 | |
JP2004356266A (ja) | 抵抗体ペースト、抵抗体および電子部品 | |
KR100686533B1 (ko) | 후막저항체 페이스트용 유리조성물, 후막저항체 페이스트,후막저항체 및 전자부품 | |
JP2006108610A (ja) | 導電性材料、抵抗体ペースト、抵抗体及び電子部品 | |
JP4221417B2 (ja) | 厚膜抵抗体ペースト、厚膜抵抗体および電子部品 | |
JP2005244115A (ja) | 抵抗体ペースト、抵抗体及び電子部品 | |
JP2005236274A (ja) | 抵抗体ペースト、抵抗体及び電子部品 | |
JP2005209744A (ja) | 厚膜抵抗体ペースト及び厚膜抵抗体、電子部品 | |
JP2006261350A (ja) | 抵抗体ペースト及び抵抗体、 | |
JP3800614B1 (ja) | 厚膜抵抗体ペーストおよび厚膜抵抗体 | |
JP2005129806A (ja) | 抵抗体ペースト及び厚膜抵抗体 | |
JP4440859B2 (ja) | 厚膜抵抗体ペースト、厚膜抵抗体および電子部品 | |
JP2006202925A (ja) | 厚膜抵抗体及びその製造方法、並びに電子部品 | |
JP2006165347A (ja) | 抵抗体ペースト及び抵抗体、電子部品 | |
JP2005209738A (ja) | 厚膜抵抗体及びその製造方法 | |
JP2005235756A (ja) | 抵抗体ペースト及びその製造方法、抵抗体、電子部品 | |
JP2005209747A (ja) | 抵抗体ペースト及びその製造方法、抵抗体、電子部品 | |
JP2006261250A (ja) | 抵抗体ペースト、抵抗体及び電子部品 | |
JP2006225237A (ja) | 厚膜抵抗体用ガラス組成物及びこれを用いた厚膜抵抗体ペースト | |
JP2006080159A (ja) | 抵抗体ペースト、抵抗体及び電子部品 | |
JP2006073716A (ja) | 厚膜抵抗体用ガラス組成物及びこれを用いた厚膜抵抗体ペースト、厚膜抵抗体、電子部品 | |
JP2006229165A (ja) | 厚膜抵抗体及びその製造方法 | |
JP2005209746A (ja) | 抵抗体ペースト、抵抗体及び電子部品 | |
JP2006079908A (ja) | 導電性材料及びその製造方法、抵抗体ペースト、抵抗体、電子部品 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20071112 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20081210 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20090115 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20090723 |