JP2006201106A - 混合ガス中の不純物の分析方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 フィードアルゴンのような2種類のガスを主成分とした混合ガス中に含まれる不純物の濃度を、より簡単な構成の装置によって、リアルタイムかつ連続的に、しかも正確に測定する。
【解決手段】 本発明の分析装置は、一対の放電電極13,14を備えた放電管12と、2種類のガスを主成分とした混合ガスを放電管内に導入する経路16に設けられたオリフィス17と、放電管内のガスを一定の体積流量で排気する真空ポンプ19と、放電によって生じた光から測定対象となる不純物に特有の光の波長を抽出する干渉フィルター21と、干渉フィルターで抽出した光の発光強度を測定する光検出器22と、放電管内の圧力を測定する圧力計20と、光検出器からの光強度信号を圧力測定手段からの圧力信号により補正して混合ガス中の不純物濃度を算出する演算器24とを備えている。
【選択図】 図1
【解決手段】 本発明の分析装置は、一対の放電電極13,14を備えた放電管12と、2種類のガスを主成分とした混合ガスを放電管内に導入する経路16に設けられたオリフィス17と、放電管内のガスを一定の体積流量で排気する真空ポンプ19と、放電によって生じた光から測定対象となる不純物に特有の光の波長を抽出する干渉フィルター21と、干渉フィルターで抽出した光の発光強度を測定する光検出器22と、放電管内の圧力を測定する圧力計20と、光検出器からの光強度信号を圧力測定手段からの圧力信号により補正して混合ガス中の不純物濃度を算出する演算器24とを備えている。
【選択図】 図1
Description
本発明は、混合ガス中の不純物の分析方法及び装置に関し、詳しくは、%オーダーで存在する2種類のガスを主成分とした混合ガス中に数十〜数千ppmの濃度で存在する不純物を分析する方法及び装置であって、特に、酸素、窒素及びアルゴンを製造する空気液化分離装置におけるフィードアルゴン中の不純物である窒素の濃度をリアルタイムで連続的に測定することができる分析方法及び装置に関する。
一般的に、希ガスであるアルゴンは、原料空気を深冷液化分離することによって製造されており、上部塔(低圧塔)及び下部塔(高圧塔)を有する複精留塔に粗アルゴン塔を付設した空気液化分離プラントが用いられている。このような空気液化分離プラントでは、上部塔の中段からアルゴンと酸素とを主成分とし、微量の窒素を不純物として含んだフィードアルゴンを抜き出し、このフィードアルゴンを粗アルゴン塔で精製することにより、不純物である窒素を除去するようにしている。フィードアルゴンの組成は、個々のプラントの設計と操作方法によって異なるが、通常は、窒素が数十〜数千ppm、アルゴンが5〜20%で、残りが酸素となっている。
上部塔から抜き出したフィードアルゴン中の窒素濃度が設定値より高い場合は、粗アルゴン塔上部における窒素濃度が上昇し、粗アルゴン塔での窒素の分離除去が困難となり、塔頂から取り出すアルゴン中の窒素濃度が上昇してしまう。また、ある段階で、粗アルゴン塔内部での上昇ガスの流量が棚段上に液体を維持するために必要な流量以下に低下してしまうと、液体が棚段から塔の底部へ流れ落ちてしまい、アルゴンの損失を招くことになる。
一方、フィードアルゴン中の窒素濃度が設定値より低い場合には、上部塔におけるアルゴン組成の高い位置が、フィードアルゴンの抜き出し位置よりも上方に位置していることになるので、フィードアルゴンとして抜き出すアルゴン量が減少し、多量のアルゴンが廃棄窒素とともに上部塔から排出されてしまい、アルゴンの収率が低下してしまう。
特定の空気液化分離プラント及び操作においては、最大のアルゴン収率を得るためのフィードアルゴン中の最適窒素濃度が存在する。フィードアルゴンの抜き出し位置は、上部塔における急激な窒素濃度勾配の端部(下端)にあるため、フィードアルゴン中の窒素濃度は、プラント内の小さな変化に対し、数十秒レベルで数十ppmから数千ppmの間で変化する。
これまでの空気液化分離プラントにおけるフィードアルゴン中の窒素濃度の監視は、フィードアルゴンを採取してガスクロマトグラフィーにより窒素濃度を測定したり、上部塔の特定段の温度レベルを監視したりするなどの方法で行われていた。しかしながら、ガスクロマトグラフィーで窒素濃度を測定する方法は、ガスクロマトグラフィーに測定の連続性がなく、1回の測定に10分程度を要するため、数十秒単位で変化する窒素濃度を正確に把握することができず、プラントの制御精度が低下してしまう難点があった。また、温度レベルを監視する方法でも、制御遅れや精留プロセスの運転に固有の検知条件に対して遅れなどが発生する。
ガスクロマトグラフィーを用いずに希ガス中の窒素濃度を測定する方法として、放電を利用した発光分析法が知られており、金属電極をガラス等の絶縁物質で覆うことにより、サンプルガスと金属電極とを接触させることなく放電させる簡易型窒素発光分析計が市販されている。この簡易型窒素発光分析計では、例えば、アルゴン中の窒素の測定においては、337±5nmや357±5nmの波長の光を干渉フィルターで分離し、その発光強度を電気信号に変換することにより、窒素濃度を算出している(例えば、特許文献1参照。)。
特開平11−326219号公報
しかしながら、前記簡易型窒素発光分析計は、通常、大気圧あるいはそれ以上の圧力下で不純物気体より高いイオン化ポテンシャルを有するベースガスを使用する必要があるため、酸素を80〜95%程度含むフィードアルゴン中の窒素濃度を測定することは困難であり、アルゴンやヘリウムといった希ガス中の不純物窒素しか測定できなかった。実際に、電極がガラス等で覆われた放電管を利用した場合、80%以上の高濃度の酸素を含む混合ガスでは、337nmの発光強度は非常に弱く、数ppmの窒素を測定することはできなかった。
さらに、337nmの波長を利用したとき、フィードアルゴン中のアルゴン/酸素濃度比によって検出器からの信号出力による窒素感度が異なり、フィードアルゴン中の酸素濃度が80〜95%で変化すると、窒素濃度に換算して数百ppm程度、光の出力が変動するため、簡易型窒素分析計では、窒素濃度で数十ppmの精度を得ることはできない。
そこで本発明は、フィードアルゴンのような2種類のガスを主成分とした混合ガス中に含まれる不純物の濃度を、より簡単な構成の装置によって、リアルタイムかつ連続的に、しかも正確に測定することができる分析方法及び装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明の混合ガス中の不純物の分析方法は、2種類のガスを主成分とした混合ガス中に含まれる不純物の濃度を、放電により生じた前記不純物に特有の光の発光強度に基づいて測定する混合ガス中の不純物の分析方法において、誘電体で覆われた電極に交流電圧を印加した放電管内を一定の体積流量で排気しながら前記混合ガスを大気圧より低い圧力で導入し、該放電管内での放電により生じた光から前記混合ガス中に含まれる不純物に特有の光を抽出して発光強度を検出するとともに、前記放電管内の圧力を測定し、測定した圧力に応じて前記検出した発光強度を補正して正確な不純物濃度を算出することを特徴としている。
さらに、本発明の混合ガス中の不純物の分析方法は、前記不純物濃度の算出を、あらかじめ作成した不純物濃度と発光強度との関係を表す検量線の勾配及び切片と、前記測定した圧力に基づいて算出される混合ガスの濃度との関係を示す一次関数式を用いて行うことを特徴としている。
また、本発明の混合ガス中の不純物の分析装置は、2種類のガスを主成分とした混合ガス中に含まれる不純物の濃度を、放電により生じた前記不純物に特有の光の発光強度に基づいて測定する混合ガス中の不純物の分析装置において、誘電体で形成された放電管と、該放電管に設けられて誘電体で覆われた放電電極と、該放電電極に交流高電圧を印加する交流高電圧電源と、前記混合ガスを放電管内に導入する経路に設けられた流量制御手段と、放電管内のガスを一定の体積流量で排気する排気手段と、放電管内での放電によって生じた光から前記不純物に特有の光の波長を抽出する光抽出手段と、該光抽出手段で抽出した光の発光強度を測定する光検出器と、放電管内の圧力を測定する圧力測定手段と、前記光検出器からの光強度信号を前記圧力測定手段からの圧力信号により補正して混合ガス中の不純物濃度を算出する演算器とを備えていることを特徴としている。
特に、前記方法及び装置は、前記混合ガスが酸素とアルゴンとを主成分とする混合ガスであり、前記不純物が窒素、水分、メタン、二酸化炭素、一酸化炭素又は水素のいずれか一種であるときに最適である。
本発明によれば、一定の体積流量で排気されている放電管内の圧力の変化に応じて濃度測定値を補正することにより、2種類のガスを主成分とした混合ガス中に含まれる不純物の濃度、例えば、アルゴン濃度が5〜20%で残部が酸素である混合ガスからなるフィードアルゴン中に含まれる窒素の濃度を0〜5000ppmの範囲でppmオーダーで正確かつリアルタイムに測定することが可能となる。
例えば、フィードアルゴン中の窒素の検量線は、アルゴン/酸素濃度比が一定であれば直線性が得られるが、アルゴン濃度の増加に伴って窒素の検量線の勾配と切片とが増加する。放電管内のアルゴン濃度は、放電管内を一定の体積流量で排気しながら混合ガスを放電管内に導入し、そのときの放電管内の圧力を測定することによって算出することが可能である。したがって、算出したアルゴン濃度に応じて窒素検量線を補正することにより、フィードアルゴン中の窒素濃度を正確に求めることができる。
さらに、放電管内の圧力と光電子増倍管との出力には相関があることから、放電管内の圧力監視は光検出装置において必須である。したがって、装置の必須部品として設けられている圧力センサ等の圧力測定手段から得た圧力値に基づいてアルゴン/酸素濃度比を算出することができるので、濃度比算出用として新たな圧力測定手段を設ける必要はなく、光検出装置に通常設けられている演算器に補正手順を組み込むことによって正確な不純物濃度を算出できるので、装置構成が複雑化することもない。また、放電管内の圧力の測定には、一般的なキャパシタンスマノメータを使用することができる。このキャパシタンスマノメータはサブ%程度の感度を有しているため、フィードアルゴン中の窒素の検量線を補正するには十分な分解能があり、正確な窒素濃度を求めることができる。
本発明では、放電管内の圧力変化に基づいて主成分ガスの濃度比を算出するため、主成分となる2種類のガスにある程度以上の密度差が必要となるが、様々な組み合わせの主成分ガス中の不純物濃度を正確に測定することができる。さらに、放電管内を大気圧以下に保つようにしているため、主成分や不純物成分による消光作用も発生しにくいため、ppmオーダーの感度で、ドリフトが少なく、長期間安定した状態で連続的に測定することができる。
図1は本発明方法を実施する分析装置の一形態例を示す系統図である。この混合ガス中の不純物の分析装置は、雰囲気温度を一定に保つための恒温槽11内に設けられており、誘電体で形成された放電管12と、該放電管12に設けられて前記誘電体で覆われた内部放電電極13及び外部放電電極14と、該放電電極13,14に交流高電圧を印加する交流高電圧電源15と、放電管12内に測定対象となる試料ガス(混合ガス)を導入するガス導入経路16と、該導入経路16に設けられた流量制御手段としてのオリフィス17と、放電管12内のガスを導出するガス導出経路18と、該ガス導出経路18を介して放電管12内のガスを一定の体積流量で排気する排気手段としての真空ポンプ19と、ガス導出経路18内の圧力を測定することによって放電管12内の圧力を測定する圧力測定手段としての圧力計20と、放電管12内での放電により発生し、石英窓12aから放射された光Aから対象となる不純物に特有の波長の光を抽出する光抽出手段である干渉フィルター21と、該干渉フィルター21で抽出した光の発光強度を測定する光検出器22と、該光検出器22からの光強度信号Bを増幅するアンプ23と、増幅された光強度信号Cを前記圧力計20からの圧力信号Dにより補正して混合ガス中の不純物濃度を算出する演算器24と、光検出器22に駆動用電源を供給する検出器用高圧電源25とで形成されている。
なお、ガス導入経路16のオリフィス17より上流側には、ベントライン16aが分岐接続されており、装置内に供給された試料ガスの大部分を大気等の一定圧力の雰囲気に排気することにより、オリフィス17を通って放電管12に流入する試料ガスの状態を安定化させている。
前記恒温槽11は、分析装置全体を覆うように形成されており、圧力計20で測定する圧力値が温度変化の影響を受けないようにするとともに、温度の影響を受けやすい光検出器22を安定して作動させるために、特に精度の高い温度制御が行える恒温槽を使用している。
干渉フィルター21は、測定する不純物に特有の発光波長を選択的に透過するものを用いる。例えば、前述のアルゴンと酸素とを主成分とするフィードアルゴン中の窒素を測定する場合は337±2nmに対応した干渉フィルターを用いることが好ましく、水の場合は307nm又は280nm、メタンの場合は430nmを中心とする波長に対応した干渉フィルターを用いればよい。
また、干渉フィルター21に代えて、分光器等の他の特定波長抽出手段を利用してもよい。複数の不純物濃度を測定したいときは、各不純物の波長に対応した干渉フィルター21を各々用意し、一定時間毎に干渉フィルター21を交換するような機構を設けておけばよい。
なお、主成分となる2種類のガスは、前述のアルゴンと酸素とに限定されるものではないが、放電によって化学反応を起こすものは好ましくない。さらに、干渉フィルター21で選択する発光波長も主成分となるガスの種類と不純物成分となるガスの種類とによって適宜選択することができ、例えば、前記フィードアルゴン中の窒素の場合は337±2nmが最適であるが、希ガスとしてクリプトンを含む混合ガス中の窒素を測定する場合には、最も強度を持つ中心発光波長が238nmとなる。
光検出器22は、光電子増倍管であることが望ましいが、フォトダイオードやフォトダイオードアレイを用いて光信号を電気信号に変換してもよい。また、光検出器22、検出器用高圧電源25及びアンプ23が一体化した検出器モジュールを使用することもできる。
放電管12内の圧力と光の出力とには、ガスの種類に関係なく相関性があるため、放電管12内の圧力を圧力計等で常時監視することは必須となっているが、前記圧力計20は、放電管12内の圧力の監視だけでなく、放電管12内の圧力変化に基づいて試料ガス中の主成分である2種類のガスの混合比の変化を監視するためにも必須の機器となっている。
圧力計20には、ブルドン管真空計、隔膜式真空計、キャパシタンスマノメータやベローズ真空計、熱伝導を利用したピラニ真空計、熱電対真空計、サーミスタ真空計、摩擦・粘性を利用したスピニングロータゲージ、水晶真空計やクヌードセン真空計等を用いることができるが、試料ガスが前述のフィードアルゴンのような酸素を高濃度で含む混合ガスの場合は、熱や電子衝撃による引火の可能性、圧力計測定値を窒素濃度補正用として使用するため、サブkPaオーダーでの測定精度のよいキャパシタンスマノメータが最適といえる。また、この真空計20は、真空ポンプ19の異常(例えば、消耗品劣化による到達真空度の低下)を検知するなどの役目も果たすことができる。
一方、前記真空ポンプ19は、吸入・排気するガスの体積流量を一定に保つ必要があることから、排気速度を一定に保つことができる型式の真空ポンプが用いられる。また、真空ポンプ19を駆動させる電圧及び周波数は、経時的に変化が無いものが望ましく、一般的には、商用電源100V、50/60Hzを使用すればよい。放電管12内の圧力は、大気圧以下であれば適当に設定することが可能であるが、通常は、放電管12内が0.5〜1.5kPa(絶対圧、以下同じ。)の範囲になるように、オリフィス17や真空ポンプ19を選択することが好ましい。なお、流量制御手段は。ガス導入経路16内に一定の径の小通孔を設けたものであればよく、オリフィス17に代えて毛細管のようなものを使用することもできる。
前記圧力計20の測定値に基づく濃度の算出は、例えば、特開2003−75318号公報に記載されているように、オリフィス17のような小通孔からなる流量制御手段をガスが通過するときの流量制御手段の前後の圧力差と流量とから求めることができる。すなわち、オリフィス17の上流側の圧力をP1、下流側の圧力をP2とし、下流の流速をv、ガスの密度をρとすると、ベルヌーイの定理から下記の式1が導かれる。
上記式2から、開口面積Aが一定のオリフィス17における上流側、下流側の差圧(P1−P2)が一定であり、試料ガスの密度ρが一定であれば、オリフィス17を通過する体積流量Qは一定となる。
そして、オリフィス17を通過するガスが2成分以上の混合ガスである場合、その混合ガスの密度が混合比(一方の成分の濃度)によって変化するため、混合比の変化に伴って体積流量Qは変化する。すなわち、オリフィス17の上流側が大気圧、下流側が真空ポンプ20により一定の体積流量で吸引されている状態のとき、試料ガスの混合比が一定で、即ち混合ガスの密度が一定であれば、オリフィス17を通過する体積流量が一定となるため、放電管12内の圧力はある一定の値を示す。しかしながら、試料ガスがフィードアルゴンのように、2種類のガスの混合比が変化するような混合ガスの場合、その混合比によってオリフィス17を通過する体積流量Qが変化するため、放電管12内の圧力が変化する。
したがって、オリフィス17の上流側を一定圧力(例えば大気圧)としておけば、オリフィス17の下流側に位置する放電管12内の圧力を測定することにより、試料ガス中に%オーダーで存在する2種類のガスの混合比を算出することができる。このように、真空ポンプによってオリフィス17の下流側を一定の体積流量で吸引しながら、オリフィス17の上流側から一定圧力(大気圧)で混合ガスを導入するとともに、オリフィス17の下流側の圧力を測定することにより、流量計や流量調節器、圧力調節器等の機器を用いることなく、極めて簡単な機器構成で混合ガスにおける2種類のガスの混合比を容易に算出することができる。
以下、空気液化分離プラントの上部塔中段から抜き出されて粗アルゴン塔に送られるフィードアルゴンの一部を試料ガスとして使用し、該フィードアルゴン中の不純物窒素の濃度を測定する際の具体例を説明する。まず、フィードアルゴンの一部は、ガス導入経路16から装置内に供給され、大部分がベントライン16aから大気に放出されることによって大気圧となり、残部のフィードアルゴンが試料ガスとなって大気圧でオリフィス17を通り、真空ポンプ19により一定の体積流量で排気されている放電管12内に減圧状態、例えば0.5〜1.5kPaの圧力範囲で導入(吸入)される。
放電管12内を大気圧より低い減圧状態とすることにより、放電管12内での電子衝突等によりエネルギーを吸収して励起した窒素分子と、窒素分子より励起エネルギーの低い酸素分子との衝突確率が減少するため、下記式3で示すような反応を抑制することができ、窒素特有の輻射エネルギーの放出をより効率よく捕らえることができる(式中の*印は励起種を表す)。
N2*+ O2 → N2 + O2* ・・・(3)
放電電極13,14に印加する電圧及び周波数は適当に設定できるが、放電管12内の圧力が0.5〜1.5kPaの場合には、7000VACで20kHz程度に設定することにより、光検出器22が発光を捕らえやすく好ましい。放電管12内に流入した試料ガスは、放電電極13,14に印加された交流高電圧によって放電し、各ガスに特有の波長の光を発生する。放電で発生した光は、放電管12に設けられた石英窓12aから放射され、干渉フィルター21で測定対象となる不純物成分の窒素に特有の波長である337±2nmが選択され、干渉フィルター21を透過した光Aの発光強度が光検出器22によって電気信号(光強度信号B)に変換される。
光強度信号Bは、アンプ23で増幅されて光強度信号Cとなり、演算器24に入力される。演算器24は、アンプ23からの光強度信号Cを、圧力計20からの圧力信号Dにより補正して試料ガス中の窒素濃度を算出する。演算器24には、演算機能を有するパソコンを用いることが望しい。
次に、前記演算器24で正確な窒素濃度を算出するための手順を説明する。まず、あらかじめ適当な混合比のアルゴン/酸素混合ガスに適当量の窒素を添加した校正用混合ガスを複数使用して窒素濃度の測定を行い、圧力計20の圧力測定値と光検出器22の発光強度との関係から得られる窒素検量線を各々作成し、各圧力測定値に対する窒素検量線の勾配と切片との関係を求めておく。
そして、実際の試料ガス中の窒素を定量する場合には、圧力計20により測定した圧力測定値に応じて、前述のようにしてあらかじめ求めておいた圧力値と窒素検量線の勾配と切片との関係から該試料ガスにおける窒素検量線の勾配及び切片を決定し、光検出器22から得られた光強度信号からフィードアルゴン中の窒素濃度を算出する。この場合、試料ガスにおけるアルゴン濃度と窒素検量線の勾配値及び切片値との関係は正の一次関数で示されることから、二つの圧力値に対して窒素検量線を作成して校正しておけばよい。
アルゴンが5〜20%で残部が酸素の混合ガス中に0〜4500ppmの窒素を含む試料ガスを図1に示す構成の実験装置に供給し、337±2nmの発光強度を測定した。放電電圧は7000VAC、印加周波数は20kHzとし、放電管内圧力が約1.3kPaになるようにオリフィス径を調整した(オリフィス上流側は大気圧)。光検出器22には光電子増倍管を使用し、その印加電圧は550Vとした。得られた結果を図2及び図3に示す。この結果から、試料ガス中のアルゴン濃度の増加に伴って窒素検量線の勾配及び切片がそれぞれ増加していることがわかる(酸素濃度の低下と共に窒素検量線の勾配と切片が増加している)。
さらに、アルゴン5%、酸素95%で窒素を含まない混合ガスを供給したときの圧力値と光電子増倍管の出力値との関係を図4に示す。なお、このときの光電子増倍管への印加電圧は577Vとした。この結果から、放電管内の圧力の増加と共に光電子増倍管の出力が減少することがわかる。
前記図2に示した窒素濃度と出力との関係は、アルゴン濃度の変化の他に、アルゴン濃度(アルゴン/酸素濃度比)の変化に由来する放電管内の圧力変化も包括した結果である。したがって、図1に示す装置において、アルゴン/酸素濃度比(アルゴン濃度)を測定することができれば、放電管内の圧力を一定にすることは不要であることがわかる。
また、図3に示したように、アルゴン濃度と窒素検量線の勾配及び切片との関係は正の一次関数で示されるから、99.5%以上がアルゴンと酸素との混合物である試料ガスの場合は、アルゴン又は酸素の濃度によって窒素検量線の勾配及び切片を補正することにより、発光強度から正確な窒素濃度を求めることが可能となる。
次に、図5に示す実験装置を使用し、圧力を測定することによって酸素/アルゴン混合ガス中のアルゴン濃度を算出する実験を行った。酸素供給経路31に設けたマスフローコントローラー32で純酸素の流量を、アルゴン供給経路33に設けたマスフローコントローラー34で純アルゴンの流量を、それぞれ調節することによってアルゴン濃度を変化させた酸素/アルゴン混合ガスを製造し、その大部分をベントライン35から排出することによってオリフィス36の上流側を大気圧とした。アルゴン濃度を6%に設定した混合ガスを供給しながらオリフィス36の下流側を真空ポンプ37で一定の体積流量で排気し、そのときの圧力計38の測定値が0.93kPa(7Torr)になるようにオリフィス36の径を調節した。
その後、アルゴン濃度を変化させたときの圧力計38の測定値を演算器39に読み取った。その結果を図6に示す。図6から明らかなように、アルゴン濃度の増加と共に圧力は減少し、アルゴン濃度と圧力測定値とが負の一次関数で示されることがわかる。
また、前記式2で算出したオリフィス36を通過する体積流量の理論値を図7に示す。図7から、オリフィス36を通過する体積流量は、アルゴン濃度に対して一次の負の比例関係にあることがわかる。したがって、オリフィス36の下流側を一定の体積流量で吸引した場合、アルゴン濃度の上昇に伴ってオリフィス36を通過する混合ガス量が減少することから、オリフィス36の下流側の圧力が減少する。すなわち、図6に示した結果と一致する。さらに、圧力計として使用した一般的なキャパシタンスマノメータは、サブ%程度の感度を有しており、窒素検量線を補正するには十分な分解能があることも判明した。
これらの結果から、一定の体積流量で排気されている放電管内の圧力の変化に応じて発光強度から得られる濃度測定値を補正することにより、2種類のガスを主成分とした混合ガス中に含まれる不純物の濃度を正確に算出できることがわかる。
11…恒温槽、12…放電管、13…内部放電電極、14…外部放電電極、15…交流高電圧電源、16…ガス導入経路、16a…ベントライン、17…オリフィス、18…ガス導出経路、19…真空ポンプ、20…圧力計、21…干渉フィルター、22…光検出器、23…アンプ、24…演算器、25…検出器用高圧電源、31…酸素供給経路、32…マスフローコントローラー、33…アルゴン供給経路、34…マスフローコントローラー、35…ベントライン、36…オリフィス、37…真空ポンプ、38…圧力計、39…演算器
Claims (5)
- 2種類のガスを主成分とした混合ガス中に含まれる不純物の濃度を、放電により生じた前記不純物に特有の光の発光強度に基づいて測定する混合ガス中の不純物の分析方法において、誘電体で覆われた電極に交流電圧を印加した放電管内を一定の体積流量で排気しながら前記混合ガスを大気圧より低い圧力で導入し、該放電管内での放電により生じた光から前記混合ガス中に含まれる不純物に特有の光を抽出して発光強度を検出するとともに、前記放電管内の圧力を測定し、測定した圧力に応じて前記検出した発光強度を補正して正確な不純物濃度を算出することを特徴とする混合ガス中の不純物の分析方法。
- 前記不純物濃度の算出は、あらかじめ作成した不純物濃度と発光強度との関係を表す検量線の勾配及び切片と、前記測定した圧力に基づいて算出される混合ガスの濃度との関係を示す一次関数式を用いて行うことを特徴とする請求項1記載の混合ガス中の不純物の分析方法。
- 前記混合ガスが酸素とアルゴンとを主成分とする混合ガスであり、前記不純物が窒素、水分、メタン、二酸化炭素、一酸化炭素又は水素のいずれか一種であることを特徴とする請求項1又は2記載の混合ガス中の不純物の分析方法。
- 2種類のガスを主成分とした混合ガス中に含まれる不純物の濃度を、放電により生じた前記不純物に特有の光の発光強度に基づいて測定する混合ガス中の不純物の分析装置において、誘電体で形成された放電管と、該放電管に設けられて誘電体で覆われた放電電極と、該放電電極に交流高電圧を印加する交流高電圧電源と、前記混合ガスを放電管内に導入する経路に設けられた流量制御手段と、放電管内のガスを一定の体積流量で排気する排気手段と、放電管内での放電によって生じた光から前記不純物に特有の光の波長を抽出する光抽出手段と、該光抽出手段で抽出した光の発光強度を測定する光検出器と、放電管内の圧力を測定する圧力測定手段と、前記光検出器からの光強度信号を前記圧力測定手段からの圧力信号により補正して混合ガス中の不純物濃度を算出する演算器とを備えていることを特徴とする混合ガス中の不純物の分析装置。
- 前記混合ガスが酸素とアルゴンとを主成分とする混合ガスであり、前記不純物が窒素、水分、メタン、二酸化炭素、一酸化炭素又は水素のいずれか一種であることを特徴とする請求項4記載の混合ガス中の不純物の分析装置。
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