JP2006196144A - 磁気ディスク用ガラス基板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】所望の機械的強度を有し、かつ発塵量の少ない高品質の磁気ディスク用ガラス基板を提供する。
【解決手段】中心部に円形孔2を有するドーナツ状ガラス基板1であって、該ガラス基板の内周端面が曲率半径の異なる多数のピット5が隣接してなるエッチング面であり、該エッチング面のピットのうち曲率半径rが0.5μm以下のピットの存在率が5%以下であることを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板であり、中心部に円形孔を有するドーナツ状ガラス基板の内周端面を表面粗さRaが1.0μm以下になるように仕上げ研磨し、次いで該仕上げ研磨面を2.5μm以上エッチング処理することにより製造できる。
【選択図】図1
【解決手段】中心部に円形孔2を有するドーナツ状ガラス基板1であって、該ガラス基板の内周端面が曲率半径の異なる多数のピット5が隣接してなるエッチング面であり、該エッチング面のピットのうち曲率半径rが0.5μm以下のピットの存在率が5%以下であることを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板であり、中心部に円形孔を有するドーナツ状ガラス基板の内周端面を表面粗さRaが1.0μm以下になるように仕上げ研磨し、次いで該仕上げ研磨面を2.5μm以上エッチング処理することにより製造できる。
【選択図】図1
Description
本発明は、エッチング処理した内周端面を有する磁気ディスク用ガラス基板に関する。
磁気ディスク記憶装置等に使用されるドーナツ状の基板としては、従来、主としてアルミニウム合金基板が使用されてきたが、高密度記録化の要請にともない、アルミニウム合金基板に比較して素材そのものが硬く、かつ平坦性、平滑性に優れたガラス基板が主に使用されている。しかし、脆性材料であるガラスからなるドーナツ状ガラス基板(以下、単にガラス基板ともいう)は、取り扱い時または使用時に破損する場合があり、問題の一つとされている。
ドーナツ状ガラス基板の機械的強度を支配する因子の一つは、磁気ディスク使用中にその高速回転により最大引張応力が発生するガラス基板内周端面に存在する傷とされている。そこで、従来はガラス基板の内周端面および外周端面(以下、これらを合わせて内外周端面という)の傷の深さを低減し機械的強度をより大きくするために、#500メッシュよりも細かい砥粒による内外周端面の仕上げ加工を行っているが、それでも内外周端面に微細な傷がかなり残存している。そして、このような傷の存在により内外周端面は平滑性が悪くなるためにパーティクルを発生しやすくなる、すなわち発塵しやすくなる。特に、磁気ディスクを保持する内周端面は発塵しやすい。
ガラス基板の内外周端面から発生するパーティクルは、そのほとんどが端面のガラスの一部が分離して生じる、平均粒径が、例えば0.1〜3.0μm程度のガラス微粒子や端面に付着している不純物で、磁気ディスクの製造工程や使用中に異物となって、磁気ディスクの不良品化と品質低下を招致する。特に、近年のように高密度記録化される磁気ディスク記憶装置では、このガラス基板の内外周端面からの発塵が機械的強度とともに大きな問題となっており、その対策が強く求められている。
特許文献1には、ガラス基板をフッ酸、フツ硫酸等のエッチング液によりエッチング処理し、ガラス基板の強度を支配する特に内周端面の面粗さを改善する方法が開示されている。この方法でガラス基板の端面をエッチング処理することによって、端面に残存する傷をエッチングで矯正もしくは取り除いて面粗さを改善し、これによりガラス基板の機械的強度を向上させることができる。
しかしながら、特許文献1のエッチング方法は、このようにガラス基板の強度の向上は図れるものの、発塵の防止は充分でなく、しばしば許容範囲を超える発塵によって歩留まりが低下するという問題があった。すなわち、ガラス基板の機械的強度の向上はできても、発塵の問題は依然として未解決で生産性に大きな影響を与えていた。
また、特許文献2にはこのようにエッチング処理したガラス基板の強度を更に向上させるために、エッチングされた内周端面を例えばポリシラザンを含む被覆組成物を硬化させた保護膜で被覆することが記載されている。このように内周端面に被覆された保護膜は、端面に残存する傷を矯正して強度を向上させるのと同時に発塵の防止にも役立つ。しかしながら、この方法では内周端面のエッチング処理と保護膜被覆の二工程が必要となるために、保護膜被覆の負担とガラス基板の製造工程が煩雑になることとにより、製造コストが非常に高くなり実用性の面で問題があった。
本発明は、磁気ディスク用ガラス基板における上記問題に鑑みて、ドーナツ状ガラス基板の内周端面をエッチング処理するだけで、内周端面の機械的強度の向上と発塵の防止が同時に得られる磁気ディスク用ガラス基板を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく磁気ディスク用ガラス基板の内周端面のエッチング面について鋭意検討した結果、該エッチング面は曲率半径の異なる多数のくぼみ(以下、ピットという。)が隣接しており、曲率半径の小さいピットの割合が大きいとき発塵が多く発生すること、および該エッチング面の性状を改善することによって機械的強度の向上と発塵の防止が同時に得られることを見出し、保護膜で被覆することを必ずしも必要とはせずエッチング処理だけで、低コストで高品質の磁気ディスク用ガラス基板を得ることができるに至った。
すなわち、本発明は、中央に円形孔を有するドーナツ状ガラス基板であって、該ガラス基板の少なくとも内周端面が曲率半径の異なる多数のピットが隣接してなるエッチング面であり、該エッチング面のピットのうち曲率半径rが0.5μm以下のピットの存在率が5%以下であることを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板を提供する。
上記の磁気ディスク用ガラス基板において、前記エッチング面のピットのうち曲率半径rが1.0μm以下のピットの存在率が20%以下であることが好ましい。また、前記エッチング面のピットのうち曲率半径rが3.0μm以下のピットの存在率が85%以下であることが好ましい。更に外周端面も内周端面と同様なエッチング面を有していてもよい。
また、本発明は、上記磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、中央に円形孔を有するドーナツ状ガラス基板の内周端面を表面粗さRaが1.0μm以下になるように仕上げ研磨し、次いで該仕上げ研磨面を2.5μm以上エッチング処理することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法を提供する。
また、アルカリ金属酸化物含有量が合計で6〜12質量%であるガラスからなり中心部に円形孔を有するドーナツ状ガラス基板の内周端面を表面粗さRaが1.0μm以下になるように仕上げ研磨し、次いで該仕上げ研磨面を2.5〜25μmエッチング処理することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法を提供する。
本発明によれば、中心部に円形孔を有するドーナツ状ガラス基板の少なくとも内周端面を、曲率半径の異なる多数のピットが隣接してなるエッチング面で形成し、該エッチング面のピットのうち曲率半径rが0.5μm以下のピットの存在率を5%以下にすることにより、前記ガラス基板の機械的強度の向上と端面からの発塵をより防止できる。そして、前記エッチング面のピットのうち曲率半径rが1.0μm以下のピットの存在率を20%以下にし、更には前記エッチング面のピットのうち曲率半径rが3.0μmのピットの存在率を85%以下にすることにより、端面からの発塵をより一層防止できる。更に外周端面も内周端面と同様なエッチング面にすることにより、外周端面からの発塵をも防止できる効果が得られる。
また、本発明によれば、中心部に円形孔を有するドーナツ状ガラス基板の内周端面を表面粗さRaが1.0μm以下になるように仕上げ研磨し、次いで該仕上げ研磨面を2.5μm以上エッチング処理することにより、発塵が抑制できる高品質の磁気ディスク用ガラス基板を低コストで製造することが可能になる。
本発明におけるドーナツ状ガラス基板は、ドーナツ状、すなわち所定の径の円盤の中心部に円盤の中心と実質的に同じ中心を有する円形孔を有する形状のガラス基板で、内周端面、外周端面および表裏の主表面を有する円盤状のガラス基板である。以下の説明でガラス基板というときはこのドーナツ状ガラス基板を指す。
このドーナツ状ガラス基板は寸法に特に限定はないが、例えばその寸法はmm表示で、(a)内径7.0、外径27.1、板厚0.38、(b)内径12.0、外径48.0、板厚0.55、(c)内径25.0、外径84.0、板厚1.0、(d)内径12.0、外径48.0、板厚0.5、または(e)内径25.0、外径95.0、板厚0.8、等である。
本発明のドーナツ状ガラス基板に用いることができるガラスの種類としては、耐候性向上のためには以下のような特性を有するガラスが好ましい。しかし、これに限定されない。
耐水性:80℃の水にガラスを24時間浸漬したときの、ガラスからの成分溶出に伴うガラスの減量(溶出量)が0.02mg/cm2以下のもの。
耐酸性:80℃の0.1規定塩酸水溶液にガラスを24時間浸漬したときの、ガラスからの成分溶出に伴うガラスの減量(溶出量)が0.06mg/cm2以下のもの。
耐アルカリ性:80℃の0.1規定水酸化ナトリウム水溶液にガラスを24時間浸漬したときの、ガラスからの成分溶出に伴うガラスの減量(溶出量)が1mg/cm2以下、より好ましくは0.18mg/cm2以下のもの。
耐水性:80℃の水にガラスを24時間浸漬したときの、ガラスからの成分溶出に伴うガラスの減量(溶出量)が0.02mg/cm2以下のもの。
耐酸性:80℃の0.1規定塩酸水溶液にガラスを24時間浸漬したときの、ガラスからの成分溶出に伴うガラスの減量(溶出量)が0.06mg/cm2以下のもの。
耐アルカリ性:80℃の0.1規定水酸化ナトリウム水溶液にガラスを24時間浸漬したときの、ガラスからの成分溶出に伴うガラスの減量(溶出量)が1mg/cm2以下、より好ましくは0.18mg/cm2以下のもの。
また、本発明のガラス基板に用いることができるガラスとしては、磁気ディスク基板の特性や物性を有している、アルカリ金属酸化物含有量が合計で1〜20質量%のガラス(例えばアルカリ金属酸化物含有量が約13質量%であるソーダライムシリカガラス)、アルミナシリケートガラス、無アルカリガラス、結晶化ガラス等を挙げることができる。アルカリ金属酸化物を含有するガラスである場合、その含有量の合計は6〜12質量%が典型的である。
本発明のガラス基板に用いられるガラスの脆さ指標値(B)は5500m−1/2以上であることが好ましい。より好ましくは7000m−1/2以上である。
脆さ指標値は、ガラスにビッカース圧子を押し込んだときにガラス表面に残る圧子の痕の大きさと痕の四隅から発生するクラックの長さとの関係から脆さを定量的に評価するためのものである。すなわち、Pをビッカース圧子の押し込み荷重、aおよびcをそれぞれビッカース圧痕の対角長および四隅から発生するクラックの長さ(圧子の痕を含む対称な2つのクラックの全長)として、次式を用いて算出されるBが脆さ指標値である(特開平10−152338号公報第4頁参照)。
c/a=0.0056×B2/3×P1/6
c/a=0.0056×B2/3×P1/6
本発明は、ドーナツ状ガラス基板の少なくとも内周端面を、曲率半径が異なる多数のピットが隣接してなるエッチング面で形成し、該エッチング面のピットのうち曲率半径rが0.5μm以下のピットの存在率を5%以下にすることを特徴とする。以下、これについて図面を参照して具体的に説明する。
図1は本発明に係わるドーナツ状ガラス基板1の斜視図であり、該ガラス基板は前記したように中心部に円盤の中心と実質的に同心の円形孔2を有する円盤状のガラス基板で、その内周および外周にそれぞれ内周端面3および外周端面4を有している。ガラス基板の厚さは限定されないが、通常0.38〜1.1mm程度である。前記内周端面3および外周端面4は、#500メッシュアンダーのダイヤモンド砥粒を用いて仕上げ研磨を行い、その後少なくとも内周端面はエッチング処理される。仕上げ研磨面をエッチング処理すると、微細な凹凸面がエッチングされて凹部が形成される。これらの凹部は、エッチングを継続することにより次第に球面化して球面または球面に近いピット形状となり、一定以上の厚さエッチングした暁には隣り合うピットとピットとが隣接して一つの面を形成する。
このようにして得られたピットの大きさは種々で、種々の曲率半径を有している。即ち、内周端面2は曲率半径が実質的に異なる多数のピットが隣接してなるエッチング面で形成される。
このようにして得られたピットの大きさは種々で、種々の曲率半径を有している。即ち、内周端面2は曲率半径が実質的に異なる多数のピットが隣接してなるエッチング面で形成される。
図2は、内周端面2の該エッチング面の走査型電子顕微鏡写真であり、図3は該走査型電子顕微鏡写真の一部の断面を模式的に表わした拡大断面図である。図3から明らかのように、内周端面は曲率半径rが異なる多数のピット5が隣接しているエッチング面からなっている。ピット5は仕上げ研磨面の微細の凹凸がエッチングされて形成されるため、ピット5の形状および曲率半径rはこのエッチング量によって変わる。具体的には、エッチングが進むにつれて、仕上げ研磨面のより微細な凹凸は消失し、その形状が徐々に整えられてピット5が形成される。そして、一定以上エッチングされると、ピット5の曲率半径rが安定するとともに、隣り合うピット同士が連接し、図2および図3のようなエッチング面となる。
上記において、所望の曲率半径rのピット5を得るのにエッチング量が重要である。しかし、ピット5の曲率半径rはエッチング処理に先がけて実施する仕上げ研磨面の表面粗さによっても変わる。仕上げ研磨の程度が十分でなくその研磨面が大きい表面粗さ(Ra)を有しているような場合には、規定された寸法精度の内径が得れなくなるばかりでなく、エッチング処理してもより平滑な内周端面を得ることが困難となり、所望の機械的強度が得られなくなるおそれがある。そのため、仕上げ研磨した内周端面の表面粗さ(Ra)は、後述するように1.0μm以下であることが好ましい。表面粗さ(Ra)が1.0μm以下になるように仕上げ研磨された内周端面を所定量エッチングすると、曲率半径の小さなピットの存在を低減させることができ、具体的には0.5μm以下の曲率半径のピットの存在率をほぼ5%以下にすることができる。
本発明において、内周端面3のエッチング面が所望の機械的強度と発塵防止性を有するためには、曲率半径rの小さいピットをできるだけ少なくすることが好ましい。具体的には曲率半径rが0.5μm以下のピットの存在率を5%以下、好ましくは3%以下にする。ここで、0.5μm以下のピットに着目したのは、0.5μm以下の細かいピットが特に発塵しやすいことによる。つまり、細かいピットの隣接界部は尖鋭に突出するために欠けてガラスの粉粒となって発塵し、また細かいピット内に付着した異物は洗浄しても取り除きにくく、その後に発塵するおそれがあるからである。そこで、本発明は発塵しやすい0.5μm以下のピットの割合を5%以下にし、発塵防止を達成するものである。0.5μm以下のピットの割合が5%超になると、前記の理由により発塵が増加しやすくなり、磁気ディスクの品質の低下と生産歩留の低下を招くので好ましくない。
更に、本発明におけるガラス基板は上記エッチング面のピットのうち曲率半径rが0.5μm以下のピットの存在率が5%以下で、かつ曲率半径が1.0μm以下のピットの存在率が20%以下であることが好ましく、該存在率が18%以下であるとより好ましい。曲率半径rが0.5μm以下のピットの存在率が5%以下であっても、曲率半径が1.0μm以下のピットの占める割合が20%を超えると、上記と同じ理由により発塵防止効果が低下するおそれが生じる。そして、更に曲率半径rが3.0μm以下のピットの存在率を85%以下にすると、発塵効果をより一層向上させることができるので好ましい。本発明において、このようにエッチング面の内周端面を有するガラス基板は、所望の機械的強度をも有している。
本発明は、特に発塵しやすい内周端面を上記したエッチング面で形成するが、外周端面も同じようにエッチング処理し、該内周端面と同一または実質的に同一のエッチング面で形成してもよい。このように外周端面をもエッチング面で形成すると、外周端面からの発塵量を減少させ、ガラス基板の全発塵量を減少させることが可能になる。そして、内周端面と同時に外周端面のエッチング処理もできるので、この場合通常は内外周端面に実質的に同一のエッチング面が形成される。
本発明において、ピットの曲率半径rは次の手順方法(以下、本曲率半径測定方法とする)によって測定される。
(1)エッチング面を、VIOLET LASER(VK−9500)装置(KEYENCE社製)を用いて撮影する。
(2)次いで回帰処理によって平面補正を行った後、メディアンフィルタを用いてスムージング処理を施しノイズ除去を行う。
(3)ピットの平均的な大きさ(径)を想定し、径の大きさをサーチエリアサイズとしてピットを特定し、該ピットの中で一番低いところを頂点(窪み底)とする。
(4)上記の方法で頂点を求めたあと、頂点周辺の局部的高さ情報を元にして、最小二乗法により曲率を求め、得られた曲率から曲率半径rを求める。
(1)エッチング面を、VIOLET LASER(VK−9500)装置(KEYENCE社製)を用いて撮影する。
(2)次いで回帰処理によって平面補正を行った後、メディアンフィルタを用いてスムージング処理を施しノイズ除去を行う。
(3)ピットの平均的な大きさ(径)を想定し、径の大きさをサーチエリアサイズとしてピットを特定し、該ピットの中で一番低いところを頂点(窪み底)とする。
(4)上記の方法で頂点を求めたあと、頂点周辺の局部的高さ情報を元にして、最小二乗法により曲率を求め、得られた曲率から曲率半径rを求める。
そして、所定の曲率半径rを有するピットの存在率は、エッチング面から任意に選択した一定寸法面積(単位面積:1×10−4cm2)におけるピットの個数と該ピットの曲率半径rを上記方法で測定することにより求めることができる。
本発明に係わる磁気ディスク用ガラス基板は、典型的には、中心部に円形孔を有するドーナツ状ガラス基板の内周端面を表面粗さ(Ra)が1.0μm以下になるように仕上げ研磨し、次いで該仕上げ研磨面を2.5μm以上エッチング処理して製造される。例えば、ガラス基板の内周端面をエッチング処理する場合には、前記したように先ず該内周端面を表面(Ra)が1.0μm以下、より好ましくは0.7μm以下になるように仕上げ研磨する。該仕上げ研磨は、例えば#200〜1000メッシュの砥粒を用いて機械的な仕上げ研磨を施すことにより適宜実施できる。上記表面粗さ(Ra)が1.0μm超であると、2.5μm以上の厚さエッチングしても、所望の平滑なエッチング面を得ることが困難となり、内周端面の機械的強度が損なわれるおそれがある。また、被エッチング面が表面粗さ(Ra)1.0μm以下にラップ研磨されていると、深い研磨傷が残存しないのでエッチング処理の管理がしやすくかつピットのばらつきが小さい良好のエッチング面を得ることが可能になる。
更に、本発明では機械的に仕上げ研磨した研磨面を2.5μm以上、好ましくは5.0μm以上エッチング処理する。エッチング量が2.5μm未満であると、ピットが連続して隣接するエッチング面を得ること、曲率半径rが0.5μm以下のピットの存在率を5%以下にすること、および仕上げ研磨で生成した傷を十分に除去することが困難になるおそれが生じる。前記仕上げ研磨のばらつきやこれらの点を考慮すると、エッチング量は5.0μm以上が好ましい。
上記エッチング処理は、一般的に実施されているガラスのエッチング方法であるところの、エッチング液を用いたウェットエッチング方法、エッチングガスを用いたドライエッチング方法等で行うことができる。なかでも、フッ酸液、フツ硫酸液、フツ硝酸液、ケイフッ化水素酸などのエッチング液を用いたウェットエッチング方法が好しく使用でき、特にフツ硫酸液またはフツ硝酸液を用いた方法が好適である。
なお、ガラス基板の外周端面も内周端面と同様のエッチング面にしたい場合には、上記した内周端面の場合と実質的に同様にして実現できる。
本発明のガラス基板はエッチング面たる内周端面がポリシラザンを含む被覆組成物等を硬化させた保護膜で被覆されていてもよい。
また、本発明のガラス基板の製造方法においては、ガラス基板の内周端面をエッチング処理後その内周端面にポリシラザンを含む被覆組成物等を塗布して硬化させてもよい。
酸化物換算の質量%で表示した組成が、SiO2:66%、Al2O3:5%、Fe2O3:0.04%、Na2O:5%、K2O:5%、MgO:3%、CaO:6%、BaO:4%、SrO:5%、ZrO2:2%であるガラス板から、外径65mm、内径20mm、厚さ0.9mmのドーナツ状ガラス基板を作製した。なお、このガラス板の脆さ指標値は7800m−1/2である。
次いで、該ドーナツ状ガラス基板の表裏面および内外周端面を#500メッシュアンダーのダイヤモンド砥粒を用いて仕上げ研磨を行った後、このドーナツ状ガラス基板の表裏の主表面を平均粒径9μmのアルミナ砥粒を用いてラップ研磨し、表面粗さ(Ra)が0.5μmの該ドーナツ状ガラス基板を得た。
(実施例1)
上記ドーナツ状ガラス基板をフッ酸と硫酸をそれぞれ5%含むフツ硫酸液に浸漬し、その浸漬時間を変えることによりエッチング量を0μm(非エッチング)、2.5μm、5.0μm、12.5μm、25.0μmに変えて、該ドーナツ状ガラス基板の表裏面および内外周端面をエッチング処理し、5種類のドーナツ状ガラス基板を作製した。
上記ドーナツ状ガラス基板をフッ酸と硫酸をそれぞれ5%含むフツ硫酸液に浸漬し、その浸漬時間を変えることによりエッチング量を0μm(非エッチング)、2.5μm、5.0μm、12.5μm、25.0μmに変えて、該ドーナツ状ガラス基板の表裏面および内外周端面をエッチング処理し、5種類のドーナツ状ガラス基板を作製した。
次いで、エッチング処理された5種類の各ドーナツ状ガラス基板について、その内周端面のエッチング面をVIOLET LASER(VK−9500)装置(KEYENCE社製)を用いて撮影し、前記した本曲率半径測定方法によって該エッチング面を形成するピットの曲率半径rを測定し、r最大値、r最小値、r平均値、およびrの範囲毎のピット個数とその存在率(%)とを求めた。その結果を表1に示す。なお、表1において、rの範囲毎のピット個数はエッチング面の1×10−4cm2当たりの数値である。
表1からエッチング量が増加するに従って曲率半径rの小さいピットの個数が減少し、エッチング量を2.5μm以上にすると、発塵しやすい曲率半径rの小さい例えば5μm以下のピットの個数が著しく減少することが分かる。
(実施例2)
実施例1の各ドーナツ状ガラス基板について、次の方法によって発塵量を測定した。なお、表1における曲率半径rが0〜5μm未満のピットについては、更に細分類化してその存在率を示した。その結果を表2に示す。なお、表2においてrは(μm)、存在率は(%)である。
実施例1の各ドーナツ状ガラス基板について、次の方法によって発塵量を測定した。なお、表1における曲率半径rが0〜5μm未満のピットについては、更に細分類化してその存在率を示した。その結果を表2に示す。なお、表2においてrは(μm)、存在率は(%)である。
(発塵量の測定方法)
図4の超音波洗浄機6(プランソン社製:出力120W、周波数47kHz)と液中パーティクルカウンター10を用いて、次の手順で液中のドーナツ状ガラス基板6に超音波を印加し、それにより発生するパーティクルの量(発塵量)を液中パーティクルカウンター10にて測定し、ドーナツ状ガラス基板6の発塵量とする。
図4の超音波洗浄機6(プランソン社製:出力120W、周波数47kHz)と液中パーティクルカウンター10を用いて、次の手順で液中のドーナツ状ガラス基板6に超音波を印加し、それにより発生するパーティクルの量(発塵量)を液中パーティクルカウンター10にて測定し、ドーナツ状ガラス基板6の発塵量とする。
(1)超純水のパーティクル量測定
ビーカー8に200mlの超純水9を入れ、液中パーティクルカウンター10にて超純水中の1ml当たりパーティクル量(A)を測定する。
(2)次いで、上記ビーカー8にドーナツ状ガラス基板6を入れ、水を入れた超音波洗浄機7に上記ビーカー8を入れて超音波を1分間印加した後、超音波洗浄機7からビーカー8を取り出し、液中パーティクルカウンター10にてビーカー中の水の1ml当たりパーティクル量(B)を測定する。
(3)ドーナツ状ガラス基板6の発塵量(個/1枚)=[(B)−(A)]×200により、ドーナツ状ガラス基板6の発塵量(C)を算定する。
ビーカー8に200mlの超純水9を入れ、液中パーティクルカウンター10にて超純水中の1ml当たりパーティクル量(A)を測定する。
(2)次いで、上記ビーカー8にドーナツ状ガラス基板6を入れ、水を入れた超音波洗浄機7に上記ビーカー8を入れて超音波を1分間印加した後、超音波洗浄機7からビーカー8を取り出し、液中パーティクルカウンター10にてビーカー中の水の1ml当たりパーティクル量(B)を測定する。
(3)ドーナツ状ガラス基板6の発塵量(個/1枚)=[(B)−(A)]×200により、ドーナツ状ガラス基板6の発塵量(C)を算定する。
表2からエッチング量が多くなるに従って発塵量は減少し、エッチング処理を行わないドーナツ状ガラス基板では、rが0.5μm以下のピットの存在率が9.7%で、その発塵量は13161個であったが、エッチング量が2.5μmのドーナツ状ガラス基板では、rが0.5μm以下のピットの存在率が2.2%、rが1μm以下のピットの存在率が17.7%となり、その発塵量は約1900個に減少することが分かる。表2の発塵量はドーナツ状ガラス基板6全体の発塵量であるが、このような発塵防止効果は同様にエッチング処理したドーナツ状ガラス基板の内周端面の発塵量をそのエッチング面の面積比によって表2の発塵量から算定できる。
(実施例3)
前記ガラス板から外径65mm、内径20mm、厚さ0.635mmのドーナツ状ガラス基板を作製した。
前記ガラス板から外径65mm、内径20mm、厚さ0.635mmのドーナツ状ガラス基板を作製した。
上記ガラス基板をフッ酸と硫酸をそれぞれ5%含むフツ硫酸液に浸漬し、その浸漬時間を変えることによりエッチング量を0μm(非エッチング)、4μm、12μm、17.5μm、25μm、35μmに変えて、該ガラス基板の表裏面および内外周端面をエッチング処理し、6種類のガラス基板を作製した。
この6種類のガラス基板について押し込み破壊強度試験を行い機械的強度(単位:kgf)を測定した。結果をエッチング量(単位:μm)と対応させて表3に示す。
本発明によれば、所望の機械的強度を有し、かつ発塵量の少ない高品質の磁気ディスク用ガラス基板を得ることができる。
1:ドーナツ状ガラス基板
2:円形孔
3:内周端面
4:外周端面
5:ピット
6:ドーナツ状ガラス基板
7:超音波洗浄機
8:ビーカー
9:超純水
10:パーティクルカウンター
2:円形孔
3:内周端面
4:外周端面
5:ピット
6:ドーナツ状ガラス基板
7:超音波洗浄機
8:ビーカー
9:超純水
10:パーティクルカウンター
Claims (9)
- 中心部に円形孔を有するドーナツ状ガラス基板であって、該ガラス基板の内周端面が曲率半径の異なる多数のピットが隣接してなるエッチング面であり、該エッチング面のピットのうち曲率半径rが0.5μm以下のピットの存在率が5%以下であることを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板。
- 前記エッチング面のピットのうち曲率半径rが1.0μm以下のピットの存在率が20%以下である請求項1に記載の磁気ディスク用ガラス基板。
- 前記エッチング面のピットのうち曲率半径rが3.0μm以下のピットの存在率が85%以下である請求項1または2に記載の磁気ディスク用ガラス基板。
- 前記ドーナツ状ガラス基板のガラスのアルカリ金属酸化物含有量が合計で6〜12質量%である請求項1、2または3に記載の磁気ディスク用ガラス基板。
- 前記ドーナツ状ガラス基板のガラスの脆さ指標値が5500m−1/2以上である請求項1〜4のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板であって、内周端面が保護膜によって被覆されている磁気ディスク用ガラス基板。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、前記ドーナツ状ガラス基板の内周端面を表面粗さRaが1.0μm以下になるように仕上げ研磨し、次いで該仕上げ研磨面を2.5μm以上エッチング処理することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- アルカリ金属酸化物含有量が合計で6〜12質量%であるガラスからなり中心部に円形孔を有するドーナツ状ガラス基板の内周端面を表面粗さRaが1.0μm以下になるように仕上げ研磨し、次いで該仕上げ研磨面を2.5〜25μmエッチング処理することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- フツ硫酸液またはフツ硝酸液を用いて前記エッチング処理することを特徴とする請求項7または8に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
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JP2007102842A (ja) * | 2005-09-30 | 2007-04-19 | Hoya Corp | 磁気記録媒体用ガラス基板および磁気ディスクの製造方法 |
JP2009064514A (ja) * | 2007-09-06 | 2009-03-26 | Fuji Electric Device Technology Co Ltd | ガラス基板およびその製造方法、ならびに当該ガラス基板を用いた磁気ディスク |
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-
2005
- 2005-10-03 JP JP2005290509A patent/JP2006196144A/ja active Pending
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