JP2013025844A - 磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法および磁気記録媒体用ガラス基板 - Google Patents

磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法および磁気記録媒体用ガラス基板 Download PDF

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Abstract

【課題】主平面の研磨工程での研磨パッドの目詰まりを抑制して、ドレス処理の頻度を低減するとともに研磨速度を安定させ、主平面の平滑性に優れ、異なるロットのガラス基板間の板厚のばらつきが小さい磁気記録媒体用ガラス基板を得るための製造方法を提供する。
【解決手段】この磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法は、形状付与工程と、主平面研磨工程と、洗浄工程とを備え、前記主平面研磨工程は、前記ガラス基板の主平面を両面で5μm以上の研磨量で研磨する粗研磨工程を有する。そして、前記粗研磨工程では、気泡を含有し、研磨面に開口する前記気泡の平均直径が80〜300μmであり、かつ1.1〜2.5%の圧縮率を有する研磨パッドと、砥粒を含有する研磨液を用いて主平面を研磨することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法、および磁気記録媒体用ガラス基板に関する。
近年、磁気記録媒体、特に磁気ディスク装置においては、急激な高記録密度化が進んでいる。磁気ディスク装置では、高速回転する記録媒体(ディスク)上にヘッドを僅かに浮上させて走査することによって、ランダムアクセスを実現しており、高記録密度と高速アクセスを両立させるために、磁気ディスクとヘッドとの間隔(ヘッド浮上量)を小さくすること、および磁気ディスクの回転数を上げることが求められる。磁気ディスクの基材は、従来アルミニウム(Al)にニッケル−リン(Ni−P)メッキを施した基板が主流であったが、高剛性で高速回転させても変形しにくく、表面の平滑性が高いガラス基板が使われるようになってきている。
そして、磁気ディスク装置における高記録密度化に伴い、磁気記録媒体用ガラス基板への要求特性は年々厳しくなっている。特に、高記録密度を達成するために、ガラス基板の表面の異物や欠陥を低減して平滑性を向上させることは重要である。
一般に、磁気記録媒体用ガラス基板を製造するには、板状ガラス等の原材から円盤形状の素板を切り出し、中央部に円形の貫通孔を形成した後、貫通孔の内壁を構成する内周側面の角部分と、外周を構成する外周側面の角部分との面取り加工を行い、次いでガラス基板の内周および外周の側面と面取り部の研磨(端面研磨)を行う。さらに、対向する1対の主平面を研削してガラス基板の板厚と平坦度を所望のものとし、両主平面を研磨した後、洗浄工程等を経て磁気記録媒体用ガラス基板を得る。
このような磁気記録媒体用ガラス基板の製造において、主平面の平滑化を行うために、従来から、発泡ウレタン樹脂パッドと酸化セリウム等の砥粒を含む研磨液を使用して、ガラス基板の主平面を研磨することが行われている。
そして、主平面を研磨する方法として、ウレタン樹脂等の発泡体(発泡樹脂)からなり研磨材である酸化セリウムやコロイダルシリカ、酸化ジルコニウム、ジルコン等を20〜33重量%含有する研磨パッドを使用し、砥粒を含有する研磨液(スラリー)を供給しながら、ガラス基板と前記研磨パッドとを相対的に移動させて研磨する方法が提示されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、粗研磨後の結晶化ガラス基板を精研磨(仕上げ研磨)する方法として、所定の範囲の圧縮弾性率、密度および硬度を有する高密度、高硬度の研磨パッドと、平均粒径が0.8〜1μmの酸化セリウムの遊離砥粒を用いて、ガラス基板の主平面を研磨する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、これらの研磨方法においては、研磨を継続するにしたがって、研磨液に含有される砥粒が、研磨パッドの研磨面に開口する気泡に入り込んで気泡内部を埋め尽くし、研磨パッドの目詰まりと呼ばれる現象が生じる。その結果、被研磨物であるガラス基板が研磨パッドの研磨面を上滑りして、研磨が十分に行われなくなる。また、被研磨物と研磨パッドとの間への研磨液の供給が不十分となるため、研磨速度が低下する。
このような研磨パッドの目詰まりによる研磨速度の低下を防止するため、研磨パッドの表面(研磨面)を削り、新たな研磨面を露出させるドレス処理が頻繁に行われているが、ドレス処理は研磨を中断して行なわれるため、作業効率が低下し生産性の低下が生じる。また、ドレス処理によって研磨パッドの磨耗が早くなるため、研磨パッドの使用寿命が短くなるなど、生産性やコスト面で多くの問題があった。
さらに、ドレス処理を行っても研磨パッドの目詰まりは再度発生するため、研磨速度の低下は避けられず、研磨量を経時的に一定にすることが難しかった。そのため、磁気記録媒体用ガラス基板の製造において、研磨ロットの異なるガラス基板間の板厚のばらつきが大きくなるという問題があった。
なお、本明細書において、研磨パッドの「気泡」とは、研磨パッドを構成する発泡樹脂中に形成された気泡をいい、「研磨ロット」または「ロット」とは、同一研磨装置により一度に研磨加工される複数枚のガラス基板の集合をいう。
特開2007−250166号公報 特開2009−123327号公報
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、磁気記録媒体用ガラス基板の製造において、主平面の研磨工程での研磨パッドの目詰まりを抑制して、ドレス処理の頻度を低減するとともに研磨速度を安定させ、主平面の平滑性に優れ、異なるロットのガラス基板の間の板厚のばらつきが小さい磁気記録媒体用ガラス基板を得るための方法を提供することを目的とする。
本発明の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法は、ガラス素板を中央部に円孔を有する円盤形状のガラス基板に加工する形状付与工程と、前記ガラス基板の主平面を研磨する主平面研磨工程と、前記ガラス基板の洗浄工程とを備える磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法において、前記主平面研磨工程は、前記ガラス基板の主平面を両面で5μm以上の研磨量で研磨する粗研磨工程を有し、前記粗研磨工程は、内部に気泡を含有し、研磨面に開口する前記気泡の平均直径が80〜300μmであり、かつ1.1〜2.5%の圧縮率を有する研磨パッドと、砥粒を含有する研磨液を用いて前記ガラス基板の主平面を研磨する工程であることを特徴とする。
本発明の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法では、前記研磨パッドの研磨面において、該研磨面に開口する気泡の面積率が55〜90%であることが好ましい。また、前記研磨パッドの前記気泡の含有率は、35〜70体積%であることが好ましい。さらに、前記研磨パッドは、80〜95のショアA硬度を有することが好ましい。また、前記研磨パッドは、25〜60のショアD硬度を有することが好ましい。
またさらに、前記研磨パッドは、金属酸化物の粒子を含有することができる。そして、前記金属酸化物の粒子は、前記研磨液に含有される前記砥粒の平均粒子径と同等あるいはそれ以下の平均粒子径を有することが好ましい。
本発明の磁気記録媒体用ガラス基板は、前記本発明の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法によって製造されたガラス基板であって、ロットの異なるガラス基板の板厚の偏差が5μm以下であることを特徴とする。
本発明の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法によれば、研磨量が多く研磨速度の変動が大きい主平面の一次研磨工程(粗研磨工程)において、研磨パッドの目詰まりを抑制して、ドレス処理の頻度を低減し、かつ研磨速度を経時的に安定させることができる。そして、ドレス処理の頻度の低減により、装置の稼働率を上げて生産性を向上させるとともに、研磨パッドを長寿命化することでコストを削減することができる。また、研磨速度の安定化により、ロットの異なるガラス基板の間の板厚のばらつきを低減し、板厚偏差が小さく平滑性が高い主平面を有する磁気記録媒体用ガラス基板を得ることができる。
本発明により製造される磁気記録媒体用ガラス基板の断面斜視図である。 本発明の主平面研磨工程に使用される両面研磨装置を示す一部断面斜視図である。 研磨後のガラス基板の端部形状(ダブオフ)を説明するための図である。 研磨後のガラス基板のダブオフの測定領域を示す断面図である。 本発明の実施例および比較例で使用される研磨パッドの研磨面を光学顕微鏡で撮影した画像を示し、(a)は例1の研磨パッドの研磨面の光学顕微鏡画像を2値化処理して得た2値化処理画像を示し、(b)は例3の研磨パッドの研磨面の光学顕微鏡画像を2値化処理して得た2値化処理画像を示す。
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下に記載される実施形態に限定されない。
まず、本発明により製造される磁気記録媒体用ガラス基板の一例を、図1に示す。図1に示す磁気記録媒体用ガラス基板10は、中央部に円形の貫通孔である円孔11を有し、円孔11の内壁面である内周側面101と外周側面102、および対向する上下1対の主平面103からなる円盤形状を有している。そして、内周側面101と両主平面103との交差部、および外周側面102と両主平面103との交差部に、それぞれ面取り部104(内周面取り部および外周面取り部)が形成されている。
<磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法>
本発明の実施形態に係る製造方法は、前記した磁気記録媒体用ガラス基板を製造する方法であり、以下の各工程を有する。
(1)形状付与工程
(2)主平面研削(ラッピング)工程
(3)端面研磨工程
(4)主平面研磨工程
(5)洗浄工程
このような磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法において、各工程間にガラス基板の洗浄(工程間洗浄)やガラス基板表面のエッチング(工程間エッチング)を実施してもよい。また、磁気記録媒体用ガラス基板に高い機械的強度が求められる場合、ガラス基板の表層に強化層を形成する強化工程(例えば、化学強化工程)を、主平面研磨工程前または主平面研磨工程後、あるいは主平面研磨工程の間(一次研磨と二次研磨との間、または二次研磨と三次研磨との間)に実施してもよい。
以下、各工程について説明する。
(1)形状付与工程
ガラス素板を、中央部に円孔を有する円盤形状に加工した後、内周側面と外周側面を所定の幅および角度で面取り加工する。素板を構成するガラスは、アモルファスガラスでも結晶化ガラスでもよい。また、ガラス素板は、フロート法で成形されたものでも、フュージョン法、ダウンドロー法またはプレス成形法で成形されたものでもよい。
(2)主平面研削工程
形状付与工程で形状が付与されたガラス基板の上下両主平面を、研削加工し、ガラス基板の平坦度や板厚を調整する。研削は、遊離砥粒を用いて研削する遊離砥粒研削、または固定砥粒工具を用いて研削する固定砥粒研削により行う。
(3)端面研磨工程
ガラス基板の面取り加工等の際に生じたキズ等を除去し平滑にするために、内周端面(内周側面および内周面取り部)と外周端面(外周側面および外周面取り部)の研磨を行う。端面研磨は、主平面研削工程の前に行っても後に行ってもよい。端面研磨工程では、例えば、ガラス基板の複数枚を積層してガラス基板積層体を形成し、砥粒を含有する研磨液と研磨ブラシを用いて内周端面と外周端面を研磨する。内周端面の研磨と外周端面の研磨を同時に行うことも、別々に行うこともできる。また、内周端面の研磨または外周端面の研磨のうち一方のみを実施してもよい。内周端面の研磨と外周端面の研磨を別々に行う場合、行う順序は特に限定されず、どちらの研磨を先に行ってもよい。砥粒として、酸化セリウム粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、ジルコン粒子、炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子、ダイヤモンド粒子等を含む研磨液を使用することができる。
(4)主平面研磨工程
ガラス基板の形状付与や面取り加工、主平面の研削等の際に生じたキズ等の欠陥を除去し、凹凸を平滑化して鏡面にするために、ガラス基板の上下両主平面の研磨を行う。主平面の研磨工程は、砥粒を含有する研磨液と研磨パッドとを使用し、両面で5μm以上の研磨量で研磨を行う一次研磨工程(粗研磨工程)を有する。一次研磨のみを行ってもよいが、一次研磨を行った後、より粒子径の小さい砥粒を使用して二次研磨を行ってもよい。また、二次研磨の後にさらに粒子径の小さい砥粒を使用して、両面で5μm未満の研磨量で三次研磨(仕上げ研磨)を行ってもよい。
一次研磨工程(粗研磨工程)については、後述する。二次研磨工程および三次研磨工程においては、一次研磨工程に比べて粒子径の小さい砥粒を含有する研磨液と軟質発泡樹脂製等の研磨パッドとを使用し、両面研磨装置により上下両主平面の研磨を行うことが好ましい。砥粒としては、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、ジルコン粒子、酸化セリウム粒子等を使用できる。
(5)洗浄工程
ガラス基板を精密洗浄した後乾燥し、磁気記録媒体用ガラス基板を得る。なお、こうして製造された磁気記録媒体用ガラス基板の上に磁性層等の薄膜を形成し、磁気ディスクを製造する。
本発明は、前記(4)主平面研磨工程の一次研磨工程(粗研磨工程)に係るものである。以下、本発明の実施形態における主平面の粗研磨工程(4A)について、説明する。
(4A)主平面の粗研磨工程
主平面の粗研磨工程(4A)では、ガラス基板を上下に対向配置された一対の研磨パッド間に配置し、上下両主平面に上側の研磨パッドの研磨面と下側の研磨パッドの研磨面をガラス基板の主平面にそれぞれ押し付けた状態で、これらの研磨面とガラス基板の主平面との間に砥粒を含有する研磨液を供給し、前記上側の研磨パッドおよび下側の研磨パッドと前記ガラス基板とを相対的に摺動させることにより、前記ガラス基板の主平面を研磨する。なお、研磨パッドの研磨面は、研磨対象物であるガラス基板に接する面をいう。(4A)主平面の粗研磨工程(4A)における研磨量は、ガラス基板の両面で5μm以上であるが、10μm以上が好ましく、20μm以上がさらに好ましい。研磨装置の機能から、研磨量は両面でほぼ同量になるので、片面の研磨量は前記両面の研磨量の1/2であることが好ましい。
研磨液に含有される砥粒としては、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、ジルコン粒子、酸化セリウム粒子等を使用できる。砥粒の平均粒子径は、0.3μm〜2.0μmとすることが好ましい。なお、本明細書において、平均粒子径は、粒度分布の累積50%点の粒子直径であるd50を示す。ここで、粒子直径は、レーザー回折・散乱式等の粒度分布測定機、または動的光散乱方式の粒度分布測定機を使用して測定した値である。砥粒の平均粒子径は、0.8〜1.5μmとすることがより好ましい。
主平面の粗研磨工程(4A)に使用される研磨装置の一例を、図2に示す。この研磨装置20は、上下に対向して配置された上定盤201と下定盤202、およびこれらの間に配設されたキャリア30を有する両面研磨装置である。キャリア30は、その保持部に複数枚のガラス基板10を保持している。上定盤201と下定盤202のガラス基板10と向き合う面には、上下一対の研磨パッド40、50がそれぞれ装着されている。ガラス基板10は、キャリア30の保持部に保持された状態で、上側の研磨パッド40の研磨面と下側の研磨パッド50の研磨面との間に狭持されている。
上側および下側の研磨パッド40、50の研磨面をそれぞれガラス基板10の上下両主平面に押し付けた状態で、ガラス基板10の両主平面に研磨液を供給するとともに、サンギア203とインターナルギア204をそれぞれ所定の回転比で回転駆動することで、キャリア30を自転させながらサンギア203の周りを公転移動させる。そして、上定盤201と下定盤202をそれぞれ所定の回転数で回転させることで、ガラス基板10の両主平面を同時に研磨する。上側研磨パッド40の研磨面および下側研磨パッド50の研磨面を、ドレス治具により所定の平坦度と表面粗さにドレス処理してから、研磨を行う。
なお、本明細書において、このような研磨装置を用いて一度に研磨加工される複数枚のガラス基板を、「同一ロットのガラス基板」という。そして、同一ロットではないガラス基板同士の関係を、「異なるロットのガラス基板」、または「ロットの異なるガラス基板」という。同一ロットのガラス基板の枚数は、両面研磨装置20の型式により決められる。例えば、外径65mmの磁気記録媒体用ガラス基板10を研磨加工する場合、22B型両面研磨装置において同時に研磨加工する1ロットのガラス基板の枚数は150〜222枚、16B型両面研磨装置の1ロットのガラス基板の枚数は90枚〜115枚、9B型両面研磨装置の1ロットのガラス基板の枚数は20枚〜30枚が一般的である。
本発明の実施形態の主平面粗研磨工程(4A)においては、前記一対の研磨パッドのうちの少なくとも下側の研磨パッド50、好ましくは上下両側の研磨パッド40、50が、発泡ウレタン樹脂のような気泡を含有する発泡樹脂からなり、1.1〜2.5(%)の圧縮率を有する。また、この研磨パッドの研磨面に開口する気泡(以下、開口気泡と示す。)の平均直径は80〜300μmとなっている。
このように、主平面の粗研磨工程(4A)において、少なくとも下側好ましくは上下両側の研磨パッドの圧縮率、および開口気泡の平均直径を前記範囲とすることにより、研磨パッドの目詰まりを防止することができるうえに、研磨後のガラス基板の端部形状を良好なものとすることができる。
すなわち、研磨パッドの開口気泡の平均直径を、従来のものより大きく80〜300μmとし、後述するように前記開口気泡の面積率を所定の範囲とすることで、主面研磨中に研磨パッドの開口気泡が砥粒により埋めつくされて、目詰まりが生じることを防止することができる。そして、目詰まりの防止により、研磨速度の低下が抑制され安定した研磨速度が維持されるため、ドレス処理の頻度を大幅に低減できる。また、こうしてドレス処理の頻度が低減される結果、研磨パッドの使用寿命が例えば従来の2倍以上に延びるうえに、研磨装置の稼働率が例えば10%程度向上する。
さらに、研磨速度が安定化するため、研磨量も安定し、異なるロットのガラス基板の間の板厚のばらつきが、従来の1/2程度に低減される。
研磨パッドの開口気泡の平均直径は、以下に示すようにして求めることができる。すなわち、研磨パッドの研磨面を光学顕微鏡で撮影し、撮影した画像を基にして開口気泡の直径(真円でない場合は最大径)を計測する。そして、同一研磨面について、複数の開口気泡の直径を計測した計測値について平均値を算出する。研磨パッドの開口気泡の平均直径が80μm未満の場合には、研磨パッドの目詰まりを十分に防止することができないため、研磨速度の低下を抑制する、およびドレス処理頻度を低減する、などの上記効果を十分に上げることができない。開口気泡の平均直径が300μmを超える場合には、研磨パッドの研磨面の凹凸が大きくなり、該凹凸がガラス基板の被研磨面に転写されるため、ガラス基板の主平面の微小うねりが大きくなり好ましくない。
開口気泡の平均直径は、80μm〜250μmが好ましく、100μm〜250μmがさらに好ましく、100μm〜200μmが特に好ましい。
またこの研磨パッドは、1.1〜2.5(%)の圧縮率を有する。研磨パッドの圧縮率は、1.1〜2.0(%)が好ましく、1.3〜2.0(%)がさらに好ましい。
研磨パッドの圧縮率(%)は、JIS L1021−6に記載の評価手順を基に、以下の方法で測定することができる。すなわち、縦10cm×横10cmで厚さ約2mmのシート状の試料(試料の厚さが2mmに満たない場合は、複数枚の試料を重ね合わせる)に、標準圧力(9.8kPa(100g/cm))をかけて30秒間加圧し、そのときの試料の厚さ(t)を測定する。次に、一定圧力(109.8kPa(1120g/cm))をかけ、その状態で300秒間(5分間)保持し、5分後の試料の厚さ(t)を測定する。試料の圧縮率(%)は、以下の計算式で算出される。
圧縮率(%)={(t−t)/t}×100
研磨パッドの圧縮率は、研磨パッドを構成する発泡樹脂の発泡率を制御するかあるいは樹脂の重合度を制御する、あるいは樹脂に含有される後述する金属酸化物の粒子の量を制御することで、調整することができる。研磨パッドの圧縮率が1.1(%)未満の場合には、前記した開口気泡の平均直径および後述する開口気泡の面積率を、所定の範囲にすることが難しく、したがって研磨パッドの目詰まりを十分に防止することができなくなり、研磨速度の安定性が低下し、ドレス処理の頻度が上がる。また、パッドの変形量が小さいため、異物が混入した場合に、被研磨面であるガラス基板の主平面にキズが生じ易くなるおそれがある。また、圧縮率が2.5(%)を超える場合には、研磨後のガラス基板の端部形状(ダブオフ)が悪化するおそれがある。
磁気記録媒体用ガラス基板の端部形状について、以下に記載する。一般に、端部の好ましくない形状として、端部が主平面の他の部分よりも突出した状態となる「端部の盛り上がり(スキージャンプ)」と、端部が主平面の他の部分よりも相対的に多く削られた状態となる「端部のだれ(ロールオフ)」とがある。
そして、端部形状の評価は、例えば、ダブオフ(DubOff)の測定によって行うことができる。ダブオフは、図3に示すように、ガラス基板10をある半径方向で切断した場合の断面をみたとき、主平面103の任意の2点R1、R2を結んだ直線を基準線とし、その範囲内における基準線から正方向の隆起、負方向の沈降それぞれの最大距離を測定するものである。図3(a)は、直線R1−R2に対して主平面103の輪郭線の極部が負方向にある場合(スキージャンプ)の沈降量dを示し、図3(b)は、直線R1−R2に対して主平面の輪郭線の極部が正方向にある場合(ロールオフ)の隆起量uを示している。測定する際には、正方向と負方向の絶対値の大きい方をダブオフ値とする。
磁気記録媒体用ガラス基板のダブオフ値は小さいほど好ましい。ダブオフ値が小さいほど、磁気ヘッドをガラス基板の端部まで通過させたとき、磁気ヘッドの浮上姿勢が乱されることがなく、磁気ディスクへの記録再生を安定して行うことができる。磁気記録媒体用ガラス基板のダブオフ値は、30nm以下が好ましく、25nm以下がさらに好ましく、15nm以下が特に好ましい。なお、本明細書において、ダブオフ値は走査型白色干渉計を用いて測定することができる。
また、研磨パッドにおいては、研磨面に開口した前記開口気泡の面積が研磨面全体に対して占める割合(以下、開口気泡の面積率と示す。)が55〜90%であることが好ましい。
研磨パッドの開口気泡の面積率は、以下に示すようにして算出することができる。すなわち、研磨パッドの研磨面を光学顕微鏡写真で撮影し、その画像を基にして撮影画像における開口気泡の面積を求め、撮影画像全体の面積で除することで開口気泡の面積率を算出する。
研磨パッドの開口気泡の面積率が55%未満の場合には、研磨パッドの目詰まりを十分に防止することが難しい。開口気泡の面積率が90%を超える場合には、研磨後のガラス基板の端部形状(ダブオフ)が悪化し、ダブオフ値が大きくなる。研磨面の開口気泡の面積率は60〜90%がより好ましく、65〜90%がさらに好ましい。
さらに、本発明の実施形態において、主平面の粗研磨工程(4A)で使用される研磨パッドに含有される気泡の含有率は、35〜70体積%であることが好ましい。気泡の含有率を35〜70体積%とすることで、研磨パッドの目詰まりを抑制することができ、かつ研磨後のガラス基板の端部形状(ダブオフ)の悪化を防止することができる。気泡の含有率は、35〜65体積%がより好ましく、40〜65体積%がさらに好ましく、45〜65体積%が特に好ましい。
研磨パッド中の気泡の含有率は、研磨に使用される領域である研磨面からの深さが1〜1000μmの領域で、35〜70体積%であればよく、この領域より下側の領域ではそれより気泡の含有率が低くても高くてもよい。しかし、ドレス処理を重ねながら、長期間に亘って目詰まりを生じることなく良好な研磨効果を発揮できるように、研磨パッドの厚さ全体に亘って35〜70体積%の気泡含有率を有することが好ましい。
気泡の含有率は、気泡を含有する研磨パッドの密度の測定値と、ウレタン等の樹脂の密度、および研磨パッドに含有される無機酸化物の密度から、以下の式を用いて算出することができる。
気泡の含有率(体積%)
=(1−(気泡を含有する研磨パッドの密度/研磨パッドのバルクの密度))×100
ここで、研磨パッドのバルク(パッドバルク)は、気泡を含有しないパッド材料を表す。研磨パッドが無機酸化物を含有しない場合、パッドバルクの密度は、ウレタン等の樹脂の密度を表す。研磨パッドが無機酸化物を含有する場合、パッドバルクは、研磨パッドを構成する主材料であるウレタン等の樹脂と、その中に含有された無機酸化物(例えば、酸化セリウム(セリア)粒子)を合わせた材料全体を示す。そして、パッドバルク密度は、以下の式で表される。
・パッドバルク密度=
1/(セリアの質量含有率/セリアの密度+ウレタンの質量含有率/ウレタンの密度)
なお、研磨パッドの密度の測定方法は以下の通りである。すなわち、シート状の試料の幅および長さを、ノギスで測定し、厚さをショッパー型厚さ測定器で測定する。次いで、この試料の重量(質量)を天秤で計量する。以下の計算式により、密度を算出する。
密度=(試料の質量)/(試料の幅×試料の長さ×試料の厚さ)
さらに、この研磨パッドは、80〜95のショアA硬度を有することが好ましい。また、25〜60のショアD硬度を有することが好ましい。ショアA硬度のさらに好ましい範囲は80〜90であり、特に好ましい範囲は82〜88である。ショアD硬度のより好ましい範囲は25〜50であり、さらに好ましい範囲は28〜55であり、特に好ましい範囲は30〜45である。ショアA硬度は、JIS K6253に拠り、ショアA型硬度計(タイプAデュロメータ)により測定する。また、ショアD硬度は、JIS K6253に拠り、タイプDデュロメータにより測定する。
研磨パッドのショアA硬度が80未満である場合には、研磨後の端部形状が悪化し、ダブオフ値が大きくなる。研磨パッドのショアD硬度が60を超える場合には、被研磨面であるガラス基板の主平面にキズが付きやすくなる。
研磨パッドを硬くすることで、主平面の端部形状の悪化(端部の盛り上がりやだれ)を防止することができるが、硬い研磨パッドを使用すると主平面のキズ等の欠陥が増加し、平滑度が低下する問題がある。研磨パッドの硬度を前記範囲とすることで、磁気記録媒体用ガラス基板の端部形状(ダブオフ)の悪化を抑制し、かつキズ等の欠陥の発生を防止することができる。
さらに、本発明の実施形態の(4A)主平面粗研磨工程に使用される研磨パッドは、金属酸化物の粒子を含有することができる。金属酸化物の粒子としては、酸化セリウム(セリア)粒子、酸化ジルコニウム(ジルコニア)粒子、ジルコン粒子、酸化ケイ素(シリカ)粒子、酸化アルミニウム(アルミナ)粒子等を挙げることができる。これらの金属酸化物の粒子によりパッドを所望の硬さと圧縮率に調整できる。またパッドに適度な脆性を与えることで、研磨中に劣化したパッド表面が削られていき、研磨速度をより安定させることができる。
前記金属酸化物粒子の平均粒子径は、0.3〜2.0μmの範囲で、研磨液に含有される砥粒の平均粒子径と同等か、あるいはそれ以下とすることが好ましい。これにより研磨パッドの研磨力を向上させることができ、ガラス基板の端部形状の悪化を防止することができる。この金属酸化物粒子の平均粒子径が、研磨液に含有される砥粒の平均粒子径より大きい場合には、研磨の際に主平面にキズ等の欠陥が生じやすい。
このような金属酸化物粒子の含有量は、研磨パッド全体の5〜35質量%とすることが好ましく、より好ましくは15〜25質量%とする。5質量%未満の場合には、金属酸化物粒子の含有による前記効果を得ることが難しい。含有量が35質量%を超えると、研磨パッドが脆くなり好ましくない。
<磁気記録媒体用ガラス基板>
本発明の磁気記録媒体用ガラス基板は、ガラス素板に対して、前記(1)形状付与工程、(2)主平面研削工程、(3)端面研磨工程、(4)主平面研磨工程、(5)洗浄工程の各工程を行うことにより得られるものであり、図1に示す形状を有する。この磁気記録媒体用ガラス基板は、前記した主平面の粗研磨工程(4A)において、研磨パッドの目詰まりが防止されることで安定した高い研磨速度が維持されるため、ロットの異なるガラス基板の間の板厚のばらつきが小さくなっている。具体的には、異なるロットで製造されたガラス基板の間の板厚の偏差(以下、板厚偏差と示す。)が5μm以下となっている。
なお、ガラス基板の板厚は、レーザー変位計を用いて以下に示すようにして測定する。すなわち、研磨後のガラス基板主平面の所定の領域(記録再生領域の中間部)において、中心角が異なる複数の位置でガラス基板の板厚を測定し、その平均値をガラス基板の板厚とする。なお、中心角とは、ガラス基板の中心から外周側面に向って引いた1本の線を基準線とし、この基準線上を中心角0°として時計回りに進めた角度である。
そして、所定数のロット(例えば50ロット)について、各ロットで製造されたガラス基板の板厚の偏差を求め、板厚偏差とする。
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。以下の例において、例1および例2は、本発明の実施例であり、例3および例4は比較例である。本発明は実施例に限定されるものではない。
砥粒の平均粒子径は、以下の装置により測定された値である。また、研磨パッドの特性である密度、圧縮率、硬度(ショアA硬度およびショアD硬度)、開口気泡の平均直径、開口気泡の面積率、気泡の含有率、ならびに研磨特性である研磨速度、ドレス頻度、研磨パッドの寿命、研磨後のガラス基板のダブオフ値、および各ロットのガラス基板の板厚偏差は、それぞれ下記の方法により測定し評価した。
[砥粒の平均粒子径]
砥粒の平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定機(日機装社製:マイクロトラックMT3200II)を使用して測定した。
<研磨パッド特性>
研磨パッドから小片を切り出し、これを研磨パッドの試料として測定を行った。
[密度(g/cm)]
研磨パッドの試料の幅と長さをノギスで測定し、厚さをショッパー型厚さ測定器で測定した。また、試料の質量を天秤で計量した。そして、以下の計算式により、研磨パッドの密度を算出した。
・研磨パッドの密度=試料の質量/(試料の幅×試料の長さ×試料の厚さ)
[圧縮率(%)]
縦10cm×横10cmで厚さ約2mmの試料に、標準圧力(9.8kPa(100g/cm))をかけて30秒間加圧し、そのときの試料の厚さ(t)を測定した。次に、一定圧力(109.8kPa(1120g/cm))をかけ、その状態で300秒間(5分間)保持し、5分後の試料の厚さ(t)を測定した。そして、以下の計算式で試料の圧縮率(%)を算出した。
・研磨パッドの圧縮率(%)={(t−t)/t}×100
[ショアA硬度]
研磨パッド試料のショアA硬度をショアA型硬度計により測定した。
[ショアD硬度]
研磨パッド試料のショアD硬度をショアD型硬度計により測定した。
[開口気泡の平均直径]
研磨パッド試料の研磨面を、レーザー顕微鏡(Olympus社製:LEXT OLS3500)を用い、レーザー顕微鏡のモードで対物5倍、ズーム10倍で撮影した。そして、撮影した画像を基にして、開口気泡の直径(真円でない場合は最大径)を計測した。開口気泡の平均直径は、開口気泡20個の直径を計測し、それらを平均して求めた。
[開口気泡の面積率]
撮影した前記画像を2値化処理して得た2値化処理画像を基にして、開口気泡の面積が研磨面全体に占める割合を求めた。なお、面積率算出の基となる研磨面の2値化処理画像は、しきい値等の画像処理条件によって若干変わることもある。
[気泡の含有率]
研磨パッド試料のおける気泡の含有率を、以下の式により算出した。
・気泡の含有率(体積%)
=(1−(気泡を含有する研磨パッドの密度/研磨パッドのバルクの密度))×100
・パッドバルク密度=
1/(セリアの質量含有率/セリアの密度+ウレタンの質量含有率/ウレタンの密度)
なお、セリアの密度は6.7g/cm、ウレタンの密度は1.05g/cmとする。また、研磨パッドに含有された研磨材である酸化セリウム(セリア)粒子の含有率は、後述するように25質量%であり、ウレタン樹脂の含有率は75質量%であった。これらの値と、前記方法で測定された研磨パッド試料の密度の値を用い、前記式により気泡の含有率を算出した。
<研磨特性の評価>
[研磨速度(両面)]
主平面粗研磨工程の前後のガラス基板の板厚を、マイクロメータを用いて測定した。そして、研磨前後の板厚差から両面の研磨量を算出した。この両面の研磨量を研磨に要した時間で除して、両面における研磨速度とした。
[ドレス頻度]
研磨速度の低下率(%)が40%以上になるまでのロット数を求めた。そして、このロット数(n)ごとに1回ドレス処理を行うものとし、ドレス頻度を1回/nロットとした。
[研磨パッドの寿命]
研磨パッドの表面に形成されている溝の一部がなくなると、研磨パッドを交換する。したがって、研磨パッドの溝がなくなるまでの時間を計測し、研磨パッドの寿命とした。
[ガラス基板のダブオフ値]
研磨後のガラス基板の端部形状(ダブオフ)を、走査型白色干渉計(Zygo社製:Zygo New View 5032)を用いて測定した。測定領域は、図4に示すように、ガラス基板10の主平面103と外周面取り部104との交点106から0.85〜2.45mmの領域(幅D)とし、測定点数は両面の2箇所の位置で測定し、平均したものをダブオフ値とした。また、こうして測定されたダブオフ値が、25nm以下の場合は端部形状が良好である(○)と評価し、25nmを超える場合は、端部形状が不良である(×)と評価した。
[ガラス基板の板厚偏差]
研磨後のガラス基板の板厚は、レーザー変位計(キーエンス社製、レーザーヘッドはLK−G15/アンプLK−G3000V)を用い、ガラス基板の中心部から20mmの領域で、中心角が0°、90°、180°、270°である計4箇所の位置で測定した。このように同一ガラス基板の面内の4箇所の位置で測定した板厚の平均値を、そのガラス基板の板厚とした。そして、50ロットについて、各ロットで製造されたガラス基板の板厚を求め、それらの偏差を求めた。
[例1〜4]
フロート法で成形されたSiOを主成分とするガラス素板を、外径65mm、内径20mm、板厚0.635mmの磁気記録媒体用ガラス基板が得られるように、中央部に円孔を有する円盤形状に加工した。この中央部に円孔を有する円盤状ガラス基板の内周側面と外周側面を、面取り幅0.15mm、面取り角度45°の磁気記録媒体用ガラス基板が得られるように面取り加工した。
次いで、内周端面(内周側面と内周面取り部)を研磨ブラシと研磨液を用いて研磨し、面取り加工等により内周端面に生じたキズ等を除去し、鏡面となるように研磨した。その後、外周端面(外周側面と外周面取り部)を研磨ブラシと研磨液を用いて研磨し、面取り加工等により外周端面に生じたキズ等を除去し、鏡面となるように研磨した。
次いで、端面研磨後のガラス基板の上下両主平面を、砥粒(平均粒径が1.3μmの酸化セリウム粒子)を含有する研磨液と研磨パッドとを用い、両面研磨装置(スピードファム社製:DSM22B−6PV−4MH)により、両面で35μmの研磨量で一次研磨(粗研磨)した。
研磨パッドとしては、酸化セリウム(セリア)粒子を25質量%の割合で含有し、研磨面に開口気泡を有する発泡ウレタン樹脂製のパッドを使用した。例1〜例4で使用した研磨パッドの密度、圧縮率、硬度(ショアA硬度およびショアD硬度)、開口気泡の平均直径、開口気泡の面積率、気泡の含有率を、表1に示す。また、この研磨工程における研磨速度、ドレス頻度、研磨パッドの寿命も表1に示す。なお、例4においては、1ロット研磨後のダブオフ値が25nmが超え、端部形状が不良であったので、それ以上の研磨を行わなかった。
さらに、本発明の実施例である例1で使用される研磨パッドの研磨前の研磨面の2値化処理画像を図5(a)に、比較例である例3で使用した研磨パッドの研磨前の研磨面の2値化処理画像を(b)にそれぞれ示す。なお、これらの画像は、研磨パッドの研磨面を、レーザー顕微鏡(Olympus社製:LEXT OLS3500)を用い対物5倍、ズーム10倍で撮影した画像を2値化処理して得られた画像である。
次に、こうして一次研磨(粗研磨)を行ったガラス基板を、洗剤を用いて洗浄した後乾燥した。洗浄乾燥後のガラス基板において、ダブオフ値を前記したように測定した。また、50ロットについて、各ロットで製造されたガラス基板の板厚の偏差を求めた。これらの測定結果を表1に示す。
Figure 2013025844
表1からわかるように、本発明の実施例である例1および例2においては、主平面の一次研磨工程(粗研磨工程)で、開口気泡の平均直径が80〜300μmで圧縮率が1.1〜2.5%の研磨パッドを使用して研磨を行っているので、研磨パッドの目詰まりが抑制され、安定した高い研磨速度が維持されている。そして、例1および例2においては、ドレス処理の頻度が後述する例3のドレス頻度に対して1/5以下に低減され、研磨パッドの使用寿命が大幅に延長されている。また、ダブオフ値が21nm、15nmと小さく端部形状が良好であり、かつ異なるロットのガラス基板間の板厚偏差が小さい磁気記録媒体用ガラス基板が得られていることがわかる。
これに対して、比較例である例3においては、主平面の一次研磨(粗研磨)で、開口気泡の平均直径が80μm未満の研磨パッドを使用して研磨を行っているので、研磨パッドの目詰まりが生じ、研磨速度が低くなっている。また、ドレス処理の頻度が高くなっており、研磨パッドの使用寿命も短くなっている。そして、研磨後のガラス基板は、ダブオフ値が小さく端部形状は良好であるが、板厚偏差が大きく、異なるロットのガラス基板の間の板厚のばらつきが大きくなっている。
また、例4においては、主平面の一次研磨(粗研磨)で、圧縮率が大きい研磨パッドを使用して研磨を行っているので、研磨後のガラス基板は、ダブオフ値が大きく端部形状が悪いことがわかる。
本発明によれば、主平面の一次研磨工程(粗研磨工程)において、研磨パッドの目詰まりを抑制してドレス処理の頻度を低減し、かつ研磨速度を経時的に安定させることができる。そして、研磨装置の稼働率を上げて生産性を向上させるとともに、コストを削減することができる。また、研磨速度の安定化により、ロットの異なるガラス基板間の板厚のばらつきを低減し、板厚偏差が小さく平滑性が高い主平面を有する磁気記録媒体用ガラス基板を得ることができる。
10…磁気記録媒体用ガラス基板、11…円孔、101…内周側面、102…外周側面、103…主平面、104…面取り部、20…両面研削装置、30……キャリア、40……上側の研磨パッド、50……下側の研磨パッド。

Claims (8)

  1. ガラス素板を中央部に円孔を有する円盤形状のガラス基板に加工する形状付与工程と、
    前記ガラス基板の主平面を研磨する主平面研磨工程と、
    前記ガラス基板の洗浄工程と
    を備える磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法において、
    前記主平面研磨工程は、前記ガラス基板の主平面を両面で5μm以上の研磨量で研磨する粗研磨工程を有し、
    前記粗研磨工程は、内部に気泡を含有し、研磨面に開口する前記気泡の平均直径が80〜300μmであり、かつ1.1〜2.5%の圧縮率を有する研磨パッドと、砥粒を含有する研磨液を用いて前記ガラス基板の主平面を研磨する工程であることを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  2. 前記研磨パッドの研磨面において、該研磨面に開口する気泡の面積率が55〜90%である請求項1に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  3. 前記研磨パッドの前記気泡の含有率が35〜70体積%である請求項1または2に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  4. 前記研磨パッドは、80〜95のショアA硬度を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  5. 前記研磨パッドは、25〜60のショアD硬度を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  6. 前記研磨パッドは、金属酸化物の粒子を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  7. 前記金属酸化物の粒子は、前記研磨液に含有される前記砥粒の平均粒子径と同等あるいはそれ以下の平均粒子径を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法により製造されたガラス基板であって、ロットの異なるガラス基板の板厚の偏差が5μm以下である磁気記録媒体用ガラス基板。
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