JP2006193728A - 含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法に関する。
高分子の分子構造にフッ素原子を導入することにより、耐熱性、耐候性、電気特性、摺動性、耐薬品性、撥水・撥油性や機械特性が既存の炭化水素系プラスチックスよりも向上することが知られており、これまでにポリテトラフルオロエチレンやポリフッ化ビニリデンに代表されるように様々なフッ素樹脂が上市されている。ただし、現在は非常に価格が高価であることや樹脂の成形性が低いために、使用範囲が限られている状態である。
ところで、(メタ)アクリル酸エステル系重合体は非常に安価な汎用性樹脂であり、これを原料として用いて、特定の官能基を導入することにより新規な樹脂が得られることが既に提案されている。例えば、(メタ)アクリル酸エステル系重合体に一級アミンを反応させてイミド化する技術が開示されており(例えば、特許文献1参照)、(メタ)アクリル酸エステル系重合体の耐熱性を改善するとの記載がある。
一方、(メタ)アクリル酸エステル系重合体にフッ素原子を導入する方法としては二通りあり、フッ素原子で置換した(メタ)アクリル単量体を重合する方法(例えば、特許文献2、3参照)のようなモノマーから製造する方法と、(メタ)アクリル酸系重合体又は(メタ)アクリル酸エステル系重合体をフッ素原子含有アミンと反応させる方法(例えば、特許文献4、5参照)のような既存の高分子を利用する方法が提案されているが、前者の方法によれば特殊な重合設備が必要であり、後者の方法によれば高価でかつ毒性が高いフッ素原子含有アミンを使用するという問題がある。
特開平6−240017号公報
特公昭55−23567号公報
特開平11−255829号公報
特開平7−118339号公報
特開平3−243609号公報
本発明は、前記の問題に鑑み、特殊な重合設備を使用せずに、安価に含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体を温和な条件で収率良く製造する方法を提供せんとするものである。
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意研究の結果、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸−t−ブチルエステル基から選ばれる1以上の基を含有する(メタ)アクリル系重合体とフッ素原子含有アルコールを反応させることにより、含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体を安価に製造する方法を見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸−t−ブチルエステル基から選ばれる1以上の基を含有する(メタ)アクリル系重合体に、下記一般式1で表されるフッ素原子含有アルコール
カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸−t−ブチルエステル基から選ばれる1以上の基が、(メタ)アクリル酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸−t−ブチルから選ばれる1以上のモノマーに由来する基である前記含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法(請求項2)、
前記(メタ)アクリル系重合体が、更にメタクリル酸メチルから誘導される構造を有していることを特徴とする前記含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法(請求項3)、
前記(メタ)アクリル系重合体を、少なくとも(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル酸−t−ブチルモノマーを含む組成物を共重合した後に、t−ブチル基を脱離させることにより得る前記含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法(請求項4)、
少なくとも(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル酸−t−ブチルモノマーを含む組成物を共重合して得られる(メタ)アクリル系重合体に、一般式1で表されるフッ素原子含有アルコールを反応させることを特徴とする前記含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法(請求項5)、に関する。
本発明によれば、簡易にかつ安価に含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体を製造することができる。
本発明は、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸−t−ブチルエステル基から選ばれる1以上の基を含有する(メタ)アクリル系重合体に、下記一般式1で表されるフッ素原子含有アルコール
含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得るために使用する(メタ)アクリル系重合体は、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸−t−ブチルエステル基から選ばれる1以上の基を含有していれば各種構造のものが使用可能であるが、更に(メタ)アクリル酸エステル構造を含んで構成されていることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル構造を与えるモノマーとしては、特に限定はなく各種のものを用いることができる。例示するならば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、クロトン酸メチル、ケイ皮酸メチル、等が挙げられ、単独重合体でもそれらの共重合体でもよく、またこれらに限定されるものではない。これら(メタ)アクリル酸エステル系モノマーのうち、コストから考えるとメタクリル酸メチルが好ましい。
また、スチレンやα−メチルスチレンなどの、(メタ)アクリル酸エステル構造を与えるモノマーと共重合可能な単量体が、共重合されていても構わない。
一方、(メタ)アクリル系重合体中のカルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸−t−ブチルエステル基から選ばれる1以上の基は、各種方法で導入することが可能であるが、この構造を与えるモノマー原料を用いて導入する場合、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、4−ビニル安息香酸、3−ビニル安息香酸、2−ビニル安息香酸、カルボン酸−t−ブチルエステル等が使用可能であり、中でも、フッ素原子含有アルコールとの反応性が高いという点で、(メタ)アクリル酸、無水グルタル酸または無水マレイン酸等のカルボン酸無水物基を含有するモノマーが好ましい。
(メタ)アクリル系重合体中のカルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸−t−ブチルエステル基の含有率は特に限定されないが、耐熱性が高くなり加工性が困難になったり、得られた重合体の親水性が高くなり耐水性が悪くなるために、5〜50モル%が好ましく、10〜30モル%が最も好ましい(尚、2つのカルボキシル基から形成されるカルボン酸無水物基は2単位として計算する)。
即ち、本発明の(メタ)アクリル系重合体は、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸−t−ブチルエステル基から選ばれる1以上の基を与えるモノマーと、(メタ)アクリル酸エステル構造を与えるモノマー、および必要に応じて、他のモノマーを共重合することにより好適に得ることが出来る。重合方法としては、特に限定されず公知の方法、すなわち、乳化重合、マイクロサスペンション重合、溶液重合、懸濁重合、塊状重合、等を利用できる。乳化重合、マイクロサスペンジョン重合、懸濁重合では、水を媒体として使用するので、重合中の発熱の制御が容易、有害な有機溶剤を使用する必要がない等のメリットがあり、好ましい。
水を媒体とした重合法を使用する場合、アクリル酸等の親水性モノマーを使用すると、モノマーの親水性が高いために、水を媒体とした系中で重合体粒子の凝集が起こるために安定した重合が不可能となることから、重合体中に高い比率でカルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基を導入することは難しい。カルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基を高含有率で導入したい場合は、例えば化学的に保護されたカルボキシル基を有するモノマーと(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを共重合した後に、保護基を脱離させる方法を用いることができる(また場合によっては、フッ素原子含有アルコールにより直接置換させることも可能である)。そのような保護基としては各種のものを用いることができるが、特にt−ブチル基が、入手性、および、脱離の容易性から好ましい。t−ブチル基を保護基とするカルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸−t−ブチル等を好適に使用することができるが、カルボン酸−t−ブチル基を有し、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと共重合可能なモノマーであれば特に限定されず使用することができる。
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとt−ブチルエステルモノマーの共重合体は、乳化重合、マイクロサスペンジョン重合、懸濁重合などにより製造することができるが、これらに限定されるものではない。
t−ブチル基を脱離する方法としては、共重合体を単純に加熱する方法、酸触媒を使用する方法等が挙げられる。加熱のみにより脱離を進行させる場合は、加熱温度は200〜280℃の範囲が好ましい。200℃未満の場合はt−ブチル基の脱離が十分ではなく、280℃を超えると共重合体の分解が生じ易くなるため好ましくない。
酸触媒を使用する場合は、p−トルエンスルホン酸、四塩化チタン、チタンテトライソプロピルオキシド、塩化アルミニウムなどが使用できるが、これらに限定されるものではない。触媒を用いる場合は、加熱温度をより低くすることができ、共重合体の熱分解を抑制しやすく好ましい。
酸触媒を使用する場合は、p−トルエンスルホン酸、四塩化チタン、チタンテトライソプロピルオキシド、塩化アルミニウムなどが使用できるが、これらに限定されるものではない。触媒を用いる場合は、加熱温度をより低くすることができ、共重合体の熱分解を抑制しやすく好ましい。
また、t−ブチル基の脱離の際に、高温に加熱すると、生成したカルボキシル基どうしが縮合してカルボン酸無水物基が部分的に生成しやすい。そのようなカルボン酸無水物基は非常に反応性が高く、フッ素原子含有アルコールとの反応が容易になるというメリットがあるが、フッ素原子含有アルコールとの反応後、カルボキシル基が重合体に残存する可能性が高いため、耐水性が悪くなる可能性がある。
本発明の下記一般式1で表されるフッ素原子含有アルコール
ここで言うフルオロアルキル基としては、例えば、CF3(CF2)b(bは0〜14の整数)やCF2H(CHF)c(CF2)d(c,dはそれぞれ0以上の整数で、c+d=0〜14)で表される直鎖構造のもの、(CF3)3Cのような分岐構造のもの等が挙げられる。
また、ここで言うフルオロアルキルエーテル基とは、例えば、CF3O(CF2)eO(CF2)f(e+f=1〜14の整数で、eは1以上の整数)やCF2HO(CHF)gO(CF2)h(g+h=1〜14の整数で、gは1以上の整数)のように表される直鎖構造のものや、(CF3)3CO(CF2)j(jは0〜10の整数)のように表される分岐構造のものが挙げられる。
また、下記一般式1で表されるフッ素原子含有アルコール
フッ素原子含有アルコールとしては例えば、2,2,2−トリフルオロ−1−エタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、7,7,8,8,8−ペンタフルオロ−1−オクタノール、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブタノール、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノール、4,4,5,5,6,6,7,7,7−ノナフルオロ−1−ヘプタノール、7,7,8,8,9,9,10,10,10−デカノール、2−パーフルオロプロポキシ−2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、2−(パーフルオロヘキシル)エタノール、2−(パーフルオロヘキシル)プロパノール、6−(パーフルオロヘキシル)ヘキサノール、2−(パーフルオロオクチル)エタノール、3−(パーフルオロオクチル)プロパノール、6−(パーフルオロオクチル)ヘキサノール、2−(パーフルオロデシル)エタノール、1H,1H−2,5−ジ(トリフルオロメチル)−3,6−ジオキサウンデカフルオロノナノール、6−(パーフルオロ−1−メチルエチル)−ヘキサノール、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−エタノール、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−エタノール、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−エタノール、1H,1H,3H−テトラフルオロプロパノール、1H,1H,5H−オクタフルオロペンタノール、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプタノール、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノナノール、2H−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブタノール、2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロパノール等を例示できる。
フッ素原子含有アルコールの導入量は特に制限はないが、(メタ)アクリル系重合体100モル%に対しモノマー単位で0.01〜50モル%が好ましく、0.02〜30モル%が最も好ましい。50モル%を超えると側鎖が長くなって樹脂の耐熱性が低下し、また0.01モル%未満ではフッ素原子を導入することによる耐候性、電気特性、摺動性、耐薬品性、撥水・撥油性などが不十分となる。
またフッ素原子含有アルコールの導入量は、カルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基を含有する(メタ)アクリル系重合体のカルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基の含有量に関係なく決めることができる。すなわち、カルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基の全ての部分にフッ素原子含有アルコールを反応させても良いし、そのうちの一部に反応させても良い。
カルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基を含有する(メタ)アクリル系重合体に対し、フッ素原子含有アルコールを導入する方法としては、特に限定されないが、酸触媒、例えば、塩化水素、硫化水素、硫酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸などのプロトン酸、スズ系化合物、亜鉛系化合物、イッテルビウム系化合物、チタン系化合物、バナジウム系化合物、ジルコニウム系化合物、ハフニウム系化合物、スカンジウム系化合物、マンガン系化合物、ニッケル系化合物、サマリウム系化合物、カドミウム系化合物、コバルト系化合物、アルミニウム系化合物、インジウム系化合物、ランタン系化合物等の電子対受容可能な金属化合物などのルイス酸の存在下に加熱する方法が挙げられる。これら触媒は単独で使用しても、2種類以上を混合して使用してもかまわない。
この他、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水剤を使用することも可能である。また、カルボキシル基を、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン等の存在化下に、一旦、酸塩化物とした後、上記のフッ素原子含有アルコールと反応させてもよい。
また、(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル酸−t−ブチルモノマーを共重合して得られる重合体に、酸触媒、例えば、塩化水素、硫化水素、硫酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸などのプロトン酸、スズ系化合物、亜鉛系化合物、イッテルビウム系化合物、チタン系化合物、バナジウム系化合物、ジルコニウム系化合物、ハフニウム系化合物、スカンジウム系化合物、マンガン系化合物、ニッケル系化合物、サマリウム系化合物、カドミウム系化合物、コバルト系化合物、アルミニウム系化合物、インジウム系化合物、ランタン系化合物等の電子対受容可能な金属化合物の存在下で、フッ素原子含有アルコールを反応させることも可能である。
以上のように、カルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基を含有する(メタ)アクリル系重合体もしくは(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル酸−t−ブチルモノマーを共重合して得られる重合体に含フッ素アルコールを反応させることにより得られる含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、耐溶剤性と撥水性、撥油性、耐熱性に優れることが期待される。
本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例で測定した物性の各測定方法は次の通りである。
(1)反応率の測定
反応生成物を1H−NMR(Varian Gemini−300MHz)により、3.5〜3.7ppm付近に検出されるポリメチルメタクリレートのOCH3基の積分値を3で割った値を(D)、4.1〜4.4ppm付近に検出される反応生成物である含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体のエステル基のC(=O)OCH2−の積分値を2で割った値を(E)とし、反応率は(E)/{(D)+(E)}として算出した。
反応生成物を1H−NMR(Varian Gemini−300MHz)により、3.5〜3.7ppm付近に検出されるポリメチルメタクリレートのOCH3基の積分値を3で割った値を(D)、4.1〜4.4ppm付近に検出される反応生成物である含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体のエステル基のC(=O)OCH2−の積分値を2で割った値を(E)とし、反応率は(E)/{(D)+(E)}として算出した。
(2)フッ素含有率の測定
反応生成物中のフッ素含有量は、酸素フラスコ燃焼法により反応生成物を分解した後、イオンクロマトグラフ(ダイオネクス製DX−500)、カラムとしてIonPac AG12AとAS12A(4mmφ×250mm)、溶離液として0.3mMのNaHCO3+2.7mMのNa2CO3、溶離液流量を1.2mL/min、電気伝導度検出器にて検出し、フッ素イオン標準液(関東化学製)により作成した検量線から計算した。
反応生成物中のフッ素含有量は、酸素フラスコ燃焼法により反応生成物を分解した後、イオンクロマトグラフ(ダイオネクス製DX−500)、カラムとしてIonPac AG12AとAS12A(4mmφ×250mm)、溶離液として0.3mMのNaHCO3+2.7mMのNa2CO3、溶離液流量を1.2mL/min、電気伝導度検出器にて検出し、フッ素イオン標準液(関東化学製)により作成した検量線から計算した。
(3)ガラス転移温度(Tg)
生成物10mgを用いて、示差走査熱量計(DSC、(株)島津製作所製DSC−50型)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minで測定し、中点法により決定した。
生成物10mgを用いて、示差走査熱量計(DSC、(株)島津製作所製DSC−50型)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minで測定し、中点法により決定した。
(実施例1)
耐圧10MPaの50mLのオートクレーブ(耐圧硝子工業製)に、メタクリル酸およびメタクリル酸メチルをモノマーとし、トルエンを溶媒、アゾビスイソブチロニトリルを開始剤、t−ドデシルメルカプタンを連鎖移動剤として用いる溶液重合により得られたメタクリル酸モノマー単位を20モル%含有するメタクリル酸/メタクリル酸メチル重合体1.0g、フッ素原子含有アルコールである3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノールを2.64g、非反応性溶剤としてクロロベンゼンを10ml、ルイス酸触媒としてバナジル(IV)トリフレート(VO(SO3CF3)2)を365mg入れ、反応温度220℃、反応時間9時間にて反応させた。放冷後、反応混合物を塩化メチレンにて4倍に希釈した溶液をメタノールに滴下して再沈澱させ、濾過/乾燥して生成物を回収した。得られた含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の反応率は35%と算出され、フッ素含有率は36wt%、ガラス転位温度は70℃であった。
耐圧10MPaの50mLのオートクレーブ(耐圧硝子工業製)に、メタクリル酸およびメタクリル酸メチルをモノマーとし、トルエンを溶媒、アゾビスイソブチロニトリルを開始剤、t−ドデシルメルカプタンを連鎖移動剤として用いる溶液重合により得られたメタクリル酸モノマー単位を20モル%含有するメタクリル酸/メタクリル酸メチル重合体1.0g、フッ素原子含有アルコールである3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノールを2.64g、非反応性溶剤としてクロロベンゼンを10ml、ルイス酸触媒としてバナジル(IV)トリフレート(VO(SO3CF3)2)を365mg入れ、反応温度220℃、反応時間9時間にて反応させた。放冷後、反応混合物を塩化メチレンにて4倍に希釈した溶液をメタノールに滴下して再沈澱させ、濾過/乾燥して生成物を回収した。得られた含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の反応率は35%と算出され、フッ素含有率は36wt%、ガラス転位温度は70℃であった。
(実施例2)
メタクリル酸−t−ブチルエステルおよびメタクリル酸メチルをモノマーとし、水を溶媒、過硫酸カリウムを開始剤、t−ドデシルメルカプタンを連鎖移動剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを乳化剤として用いる乳化重合により得られたメタクリル系モノマーとメタクリル酸−t−ブチルモノマーを共重合して得られる重合体を、トルエンに溶解し、p−トルエンスルホン酸存在下で100℃の加熱によりt−ブチル基を脱離させた。この生成物であるメタクリル酸モノマー単位を20モル%含有するメタクリル酸/メタクリル酸メチル重合体1.0gを用いて、実施例1と同様に行った。得られた含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の反応率は36%と算出され、フッ素含有率は36wt%、ガラス転位温度は69℃であった。
メタクリル酸−t−ブチルエステルおよびメタクリル酸メチルをモノマーとし、水を溶媒、過硫酸カリウムを開始剤、t−ドデシルメルカプタンを連鎖移動剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを乳化剤として用いる乳化重合により得られたメタクリル系モノマーとメタクリル酸−t−ブチルモノマーを共重合して得られる重合体を、トルエンに溶解し、p−トルエンスルホン酸存在下で100℃の加熱によりt−ブチル基を脱離させた。この生成物であるメタクリル酸モノマー単位を20モル%含有するメタクリル酸/メタクリル酸メチル重合体1.0gを用いて、実施例1と同様に行った。得られた含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の反応率は36%と算出され、フッ素含有率は36wt%、ガラス転位温度は69℃であった。
(実施例3)
メタクリル酸−t−ブチルエステルおよびメタクリル酸メチルをモノマーとし、水を溶媒、過硫酸カリウムを開始剤、t−ドデシルメルカプタンを連鎖移動剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを乳化剤として用いる乳化重合により、メタクリル酸−t−ブチルモノマー単位を20モル%含有するメタクリル酸メチル/メタクリル酸−t−ブチル共重合体を得た。得られた共重合体1.0gを、トルエンに溶解し、フッ素原子含有アルコールである3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノールを2.64gを加え、触媒の添加なしに250℃の加熱によりt−ブチル基の脱離と同時にフッ素原子含有アルコールと3時間反応させた。放冷後、反応混合物を塩化メチレンにて4倍に希釈した溶液をメタノールに滴下して再沈澱させ、濾過/乾燥して生成物を回収した。得られた含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の反応率は15%と算出され、フッ素含有率は12wt%、ガラス転位温度は90℃であった。
メタクリル酸−t−ブチルエステルおよびメタクリル酸メチルをモノマーとし、水を溶媒、過硫酸カリウムを開始剤、t−ドデシルメルカプタンを連鎖移動剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを乳化剤として用いる乳化重合により、メタクリル酸−t−ブチルモノマー単位を20モル%含有するメタクリル酸メチル/メタクリル酸−t−ブチル共重合体を得た。得られた共重合体1.0gを、トルエンに溶解し、フッ素原子含有アルコールである3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノールを2.64gを加え、触媒の添加なしに250℃の加熱によりt−ブチル基の脱離と同時にフッ素原子含有アルコールと3時間反応させた。放冷後、反応混合物を塩化メチレンにて4倍に希釈した溶液をメタノールに滴下して再沈澱させ、濾過/乾燥して生成物を回収した。得られた含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の反応率は15%と算出され、フッ素含有率は12wt%、ガラス転位温度は90℃であった。
(実施例4)
メタクリル酸−t−ブチルエステルおよびメタクリル酸メチルをモノマーとし、水を溶媒、過硫酸カリウムを開始剤、t−ドデシルメルカプタンを連鎖移動剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを乳化剤として用いる乳化重合により、メタクリル酸−t−ブチルモノマー単位を20モル%含有するメタクリル酸メチル/メタクリル酸−t−ブチル共重合体を得た。得られた共重合体1.0gを、トルエンに溶解し、p−トルエンスルホン酸0.86g、フッ素原子含有アルコールである3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノールを2.64gを加え、100℃の加熱によりt−ブチル基の脱離と同時にフッ素原子含有アルコールと9時間反応させた。放冷後、反応混合物を塩化メチレンにて4倍に希釈した溶液をメタノールに滴下して再沈澱させ、濾過/乾燥して生成物を回収した。得られた含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の反応率は2.5%と算出され、フッ素含有率は1.2wt%、ガラス転位温度は130℃であった。
メタクリル酸−t−ブチルエステルおよびメタクリル酸メチルをモノマーとし、水を溶媒、過硫酸カリウムを開始剤、t−ドデシルメルカプタンを連鎖移動剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを乳化剤として用いる乳化重合により、メタクリル酸−t−ブチルモノマー単位を20モル%含有するメタクリル酸メチル/メタクリル酸−t−ブチル共重合体を得た。得られた共重合体1.0gを、トルエンに溶解し、p−トルエンスルホン酸0.86g、フッ素原子含有アルコールである3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノールを2.64gを加え、100℃の加熱によりt−ブチル基の脱離と同時にフッ素原子含有アルコールと9時間反応させた。放冷後、反応混合物を塩化メチレンにて4倍に希釈した溶液をメタノールに滴下して再沈澱させ、濾過/乾燥して生成物を回収した。得られた含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の反応率は2.5%と算出され、フッ素含有率は1.2wt%、ガラス転位温度は130℃であった。
(実施例5)
(メタ)アクリル系重合体としてメチルメタクリル酸−スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂(デグサ製PLEXIGLAS−HW55)1gを、トルエンに溶解し、フッ素原子含有アルコールである3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノールを2.64gを加え、触媒の添加なしに250℃の加熱により3時間反応させた。放冷後、反応混合物を塩化メチレンにて4倍に希釈した溶液をメタノールに滴下して再沈澱させ、濾過/乾燥して生成物を回収した。得られた含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の反応率は13%と算出され、フッ素含有率は10wt%、ガラス転位温度は93℃であった。
(メタ)アクリル系重合体としてメチルメタクリル酸−スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂(デグサ製PLEXIGLAS−HW55)1gを、トルエンに溶解し、フッ素原子含有アルコールである3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノールを2.64gを加え、触媒の添加なしに250℃の加熱により3時間反応させた。放冷後、反応混合物を塩化メチレンにて4倍に希釈した溶液をメタノールに滴下して再沈澱させ、濾過/乾燥して生成物を回収した。得られた含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の反応率は13%と算出され、フッ素含有率は10wt%、ガラス転位温度は93℃であった。
(比較例1)
実施例1でメタクリル酸モノマー単位を20モル%含有するメタクリル酸/メタクリル酸メチル重合体の代わりに市販のポリメタクリル酸メチル(住友化学製スミペックスLG)1.0gを用いた以外は実施例1と同様に実施した。得られた含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の反応率は20%と算出され、フッ素含有率は23wt%、ガラス転位温度は79℃であった。
実施例1でメタクリル酸モノマー単位を20モル%含有するメタクリル酸/メタクリル酸メチル重合体の代わりに市販のポリメタクリル酸メチル(住友化学製スミペックスLG)1.0gを用いた以外は実施例1と同様に実施した。得られた含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の反応率は20%と算出され、フッ素含有率は23wt%、ガラス転位温度は79℃であった。
(比較例2)
実施例3でメタクリル酸−t−ブチルエステルを20モル%含有するメタクリル酸メチル/メタクリル酸−t−ブチル共重合体の代わりに市販のポリメタクリル酸メチル(住友化学製スミペックスLG)1.0gを用いた以外は実施例3と同様に実施した。その結果、反応は全く進行しなかった。
実施例3でメタクリル酸−t−ブチルエステルを20モル%含有するメタクリル酸メチル/メタクリル酸−t−ブチル共重合体の代わりに市販のポリメタクリル酸メチル(住友化学製スミペックスLG)1.0gを用いた以外は実施例3と同様に実施した。その結果、反応は全く進行しなかった。
(比較例3)
実施例4でメタクリル酸−t−ブチルエステルを20モル%含有するメタクリル酸メチル/メタクリル酸−t−ブチル共重合体の代わりに市販のポリメタクリル酸メチル(住友化学製スミペックスLG)1.0gを用いた以外は実施例3と同様に実施した。その結果、反応は全く進行しなかった。
実施例4でメタクリル酸−t−ブチルエステルを20モル%含有するメタクリル酸メチル/メタクリル酸−t−ブチル共重合体の代わりに市販のポリメタクリル酸メチル(住友化学製スミペックスLG)1.0gを用いた以外は実施例3と同様に実施した。その結果、反応は全く進行しなかった。
以上の実施例1〜5及び比較例1〜3で得られた含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の反応率、フッ素含有率及びガラス転位温度を下記表1に示す。
表1から明らかなように、本発明により、(メタ)アクリル系重合体とフッ素原子含有アルコールを反応させることにより、特殊な重合設備を使用せずに、安価に含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体を製造することができる。その中でも、表1の実施例1と比較例1、実施例3と比較例2、実施例4と比較例3の比較、更には実施例2から明らかなように、(メタ)アクリル系重合体として、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸−t−ブチルエステル基から選ばれる1以上の基を含有する(メタ)アクリル系重合体を使用することにより、温和な条件においてもより収率良く含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体を製造することができる。
Claims (5)
- カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸−t−ブチルエステル基から選ばれる1以上の基が、(メタ)アクリル酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸−t−ブチルから選ばれる1以上のモノマーに由来する基である請求項1記載の含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法。
- 前記(メタ)アクリル系重合体が、更にメタクリル酸メチルから誘導される構造を有していることを特徴とする請求項1または2記載の含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法。
- 前記(メタ)アクリル系重合体を、少なくとも(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル酸−t−ブチルモノマーを含む組成物を共重合した後に、t−ブチル基を脱離させることにより得る請求項1から3のいずれか1項に記載の含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法。
- 少なくとも(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル酸−t−ブチルモノマーを含む組成物を共重合して得られる(メタ)アクリル系重合体に、前記一般式1で表されるフッ素原子含有アルコールを反応させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008003592A (ja) * | 2006-06-21 | 2008-01-10 | Internatl Business Mach Corp <Ibm> | 193nm波長光の上面反射防止ドライコーティング塗布のための無水マレイン酸ポリマーのフッ素化半エステル |
-
2005
- 2005-12-14 JP JP2005359796A patent/JP2006193728A/ja active Pending
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