JP2006193627A - 薬物複合体および薬物送達用担体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、下記式(I)、(II)および(III)で表される構造単位を含みポリエチレングリコール(PEG)換算重量平均分子量が1,000〜200,000であることを特徴とするポリエーテルを用いた薬物送達用担体及びこれを用いた薬物複合体を提供する。
【化1】
【化2】
【化3】
(式中、R1は水素、ナトリウムまたは薬理作用を有する基を示し、同一の共重合体内でR1は同一であっても異なっていても良い。各構造単位のモル比は、(I)/((I)+(II)+(III))=0.001〜0.5の範囲であり、単位(I)(II)(III)のモル%はそれぞれ(I)=0.01〜99.98、(II)=0.01〜99.98、(III)=0.01〜99.98モル%である。)
【選択図】 なし
Description
また、通常の抗腫瘍剤単独では、腫瘍部位への移行選択性(腫瘍選択性)が低いために、抗腫瘍剤が全身の様々な細胞や組織に満遍なく分布してしまい、正常な細胞や組織に対しても細胞毒として作用し、嘔吐、発熱、あるいは脱毛などの副作用を極めて高率に発生させるという問題が指摘されている。そこで、これまで抗腫瘍剤を効率的かつ選択的に腫瘍部位に移行させる技術の開発が求められてきた。
このような技術の一つとして、例えば、多糖の様な水溶性高分子に抗腫瘍剤を結合させて、抗腫瘍剤の血中からの消失を遅延させ、かつ、癌組織への指向性を高める方法が提案されている。例えば、種々の多糖に対してアドリアマイシンを結合させた複合体が開示されている例がある(特許文献1)。また、カルボキシメチルデキストランを含む種々の多糖誘導体にアンスラサイクリン系抗腫瘍剤を結合させた錯体が開示されている例もある(非特許文献1)。さらに、カルボキシアルキルデキストランポリアルコールに対してペプチドを介して薬物を結合させた複合体が開示されている例がある(特許文献2)。これらの天然由来の多糖は水酸基等の官能基を有し薬物担持能力に優れるものの、天然物であることから均一な品質のものを容易に得られないといった問題点がある。
一方、合成高分子を薬物送達用担体として用いた例としては、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)にリンカーを介し血管新生阻害剤(TNP−470)を結合させた例が報告されている(非特許文献2)。また、ポリエチレングリコール(PEG)にパクリタキセルを結合させた複合体が開示されている例がある(非特許文献3)。しかし、このような合成高分子は生体内において分解されることなく蓄積されるという問題点がある。
(1)式(I)、(II)および(III)で表される構造単位を含みポリエチレングリコール(PEG)換算重量平均分子量が1,000〜200,000であることを特徴とするポリエーテル。
(2)さらに、PEG換算重量平均分子量/PEG換算数平均分子量(Mw/Mn)が1.2〜2.5である上記(1)に記載のポリエーテル。
(3)薬理作用を有する基がリンカーと結合した基である上記(1)又は(2)に記載のポリエーテル。
(4)リンカーがアミノ酸もしくはペプチドである上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリエーテル。
(5)リンカーがGly,Ala,Leu,Ile,Phe,Gly−Gly,Ala−GLy,Gly−Ala,Leu−Gly,Gly−Leu,Ile−Gly,Gly−Ile,Phe−Gly,Gly−Phe,Gly−Gly−Gly,Gly−Phe−Gly,Phe−Gly−Gly,Gly−Gly−Phe,Gly−Gly−Phe−Glyから選択される上記(4)に記載のポリエーテル。
(6)薬理作用を有する基が分子中にアミノ基、カルボキシル基、または水酸基を有する上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリエーテル。
(7)薬理作用を有する基が抗腫瘍剤、抗炎症剤、酵素阻害剤、免疫抑制剤、免疫賦活剤、核酸または抗リウマチ剤である上記(1)〜(6)のいずれかに記載のポリエーテル。
(8)抗腫瘍剤がタキサン系抗腫瘍剤、アンスラサイクリン系抗腫瘍剤、白金系抗腫瘍剤、カンプトテシン、フッ化ピリミジン系代謝拮抗剤、ビンカアルカロイド系抗腫瘍剤、葉酸拮抗剤およびその誘導体から選択される上記(1)〜(7)のいずれかに記載のポリエーテル。
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載のポリエーテルを含む薬物送達製剤。
(10)上記(1)におけるR1が水素又はナトリウムである生体内組織への薬物送達用担体。
(11)上記(1)におけるR1が水素あるいはナトリウムである薬剤、ペプチド、核酸および/又は蛋白を固定化するための担体。
(12)上記(1)〜(8)のいずれかに記載のポリエーテルを静脈内より生体内に投与することによる治療方法。
(13)上記(1)〜(8)のいずれかに記載のポリエーテルを疾患部位に投与することによる治療方法。
(14)上記(1)〜(8)のいずれかに記載のポリエーテルを架橋してなる構造体を疾患部位に投与することによる治療方法。
(15)薬物送達製剤の製造における上記(1)〜(8)のいずれかに記載のポリエーテルの使用。
(2)また、薬物担持能力が高く、標的部位への薬物到達性に優れるだけでなく、水に対する溶解性が高く、特に注射剤として有用である。
(3)さらに、本発明の薬物送達用担体は、特に医療行為のために用いられる生体に対する安全性の高い、ポリエーテルを用いている。従って、生体との相互作用が極めて少なく、生体組織に認識されにくいために肝臓、脾臓、骨髄といった代謝臓器、副作用発現臓器に分布することが少なく、臓器障害や細胞毒性を引き起こす可能性が低減され、標的とする臓器に集積することが可能となる。
更に、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等もモノマー原料として用いることができる。例えば、モノマー原料としてエピクロルヒドリンを用いた場合、重合が終了した後、クロロメチル基を、例えば、ジエチレングリコールメチルエーテル溶媒中で酢酸カリウムと100〜150℃で加熱下に反応させ,アセトキシメチル基に変換し、その後、室温下で水酸化ナトリウム水溶液等によりアセチルオキシ基を加水分解することで水酸基を有する本発明のポリエーテルを製造することができる。
以上の事実を元に、本発明のポリエーテルを、例えば医薬化合物送達複合体および医薬化合物送達用担体として用いる場合には、最適な分子量を選択し、かつ側鎖水酸基を使用目的に応じて最適な量だけ導入することが可能である。
抗腫瘍剤としては、タキサン系抗腫瘍剤、アンスラサイクリン系抗腫瘍剤、白金系抗腫瘍剤、カンプトテシン、フッ化ピリミジン系代謝拮抗剤、ビンカアルカロイド系抗腫瘍剤、葉酸拮抗剤等の抗腫瘍剤およびその誘導体が挙げられる。
ここで、白金系抗腫瘍剤としては、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンが好ましい。カンプトテシン誘導体としては、イリノテカンなどが挙げられる。タキサン誘導体としてはタキソール、タキソテールなどが挙げられる。フッ化ピリミジン系代謝拮抗剤としては、5−フルオロウラシルなどが挙げられる。ビンカアルカロイド系抗腫瘍剤としては、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ナベルビン等が挙げられる。葉酸拮抗剤としては、メトトレキセート等が挙げられる。これらのうち、白金系抗腫瘍剤、特にシスプラチン、カルボプラチン又はオキサリプラチンが好ましい。また抗炎症剤としては、コハク酸ヒドロコルチゾン、コハク酸プレドニゾロンなどのステロイド系抗炎症剤;メフェナム酸、フルフェナム酸、ジクロフェナク、イブプロフェン、チノリジンなどの非ステロイド系抗炎症剤が挙げられる。
また本実施例におけるGPCの条件は、以下のとおりである。
カラム:G4000PWXL(東ソー社製)
移動相:20%アセトニトリルin 50mM塩化リチウム
流速:0.8ml/min
カラム温度:40℃
ポンプ:L−6200(日立製作所製)
検出器:L−3300(RI:示差屈折計、日立製作所製)
化合物の分子量および分子量分布を算出するための検量線は、スタンダードポリエチレンオキサイド(TOSOH製、重量平均分子量が2.4×104,5.00×104,10.7×104,14.0×104)を用いて作成した。
アルゴン雰囲気下、耐圧反応容器にt−ブチルグリシジルエーテル33ml、エチレンオキサイド85ml、カリウムt−ブトキシド1Mテトラヒドロフラン溶液1mlおよびトリイソブチルアルミニウム1Mヘキサン溶液10ml、および溶媒としてヘキサン300mlを加え、25℃で24時間反応を行った。反応終了後、反応生成物を回収し、減圧下で溶媒を除去することによって目的とする共重合体(1)62gを白色固体として得た。
得られた共重合体のPEG換算分子量をGPCにより測定した結果は、53,000であった。GPCの結果を図1に示す。更に 1H−NMR分析によると、テトラメチルシランを標準とする重水素化メタノール溶媒中での測定により、δ1.20にt−ブチル基に由来する単線ピークが観測され、さらにδ3.40〜3.82に主にポリエチレングリコールに由来するピークが見られた。 1H−NMR分析によるt−ブチル基の導入率は、モル比で3.9%(y=0.039)であった。
室温下、上記共重合体20gに、4N−塩化水素1,4−ジオキサン溶液200mlを加えて室温下で24時間反応させた。反応終了後、反応溶媒を減圧下で留去し、米国スペクトラポア社製透析膜(Spectra/Por2、分子量分画12,000−14,000)を用い、精製水を外液とした2日間の透析を行った。次いで、ミリポア社製メンブランフィルター(DURAPORE、0.22μm)を用いたろ過後、凍結乾燥の工程を経て、白色非晶質の目的とする共重合体(2)16.6gを得た。
1H−NMR分析によると、テトラメチルシランを標準とする重水素化メタノール溶媒中での測定により、δ1.20に存在したt−ブチル基に由来する単線ピークが消失し、t−ブチル基が除去されたことが確認された。得られた共重合体のPEG換算分子量をGPCにより測定した結果は、61,000であり、Mw/Mn=1.54であった。GPCの結果を図2に示す。
アルゴン雰囲気下、耐圧反応容器にt−ブチルグリシジルエーテル42ml、エチレンオキサイド85ml、カリウム2−メチル−2−ブトキシド1Mテトラヒドロフラン溶液1.1mlおよびトリイソブチルアルミニウム1Mヘキサン溶液11.1ml、および溶媒としてヘキサン300mlを加え、25℃で24時間反応を行った。反応終了後、反応生成物を回収し、減圧下で溶媒を除去することにより、目的とする共重合体(3)55gを白色固体として得た。
得られた共重合体のPEG換算分子量をGPCにより測定した結果は、40,000であった。GPCの結果を図3に示す。更に 1H−NMR分析によると、テトラメチルシランを標準とする重水素化メタノール溶媒中での測定により、δ1.22にt−ブチル基に由来する単線ピークが観測され、さらにδ3.42〜3.82に主にポリエチレングリコールに由来するピークが見られた。 1H−NMR分析によるt−ブチル基の導入率は、モル比で5.7%(y=0.057)であった。
室温下、上記共重合体20.8gに、4N−塩化水素1,4−ジオキサン溶液200mlを加えて室温下で24時間反応させた。反応終了後、反応溶媒を減圧下で留去し、米国スペクトラポア社製透析膜(Spectra/Por2、分子量分画12,000−14,000)を用い精製水を外液とした2日間の透析を行い、次いで、ミリポア社製メンブランフィルター(DURAPORE, 0.22μm)を用いたろ過後、凍結乾燥の工程を経て、白色非晶質の目的とする共重合体(4)15.1gを得た。
1H−NMR分析によると、テトラメチルシランを標準とする重水素化メタノール溶媒中での測定により、δ1.22に存在したt−ブチル基に由来する単線ピークが消失し、t−ブチル基が除去されたことが確認された。得られた共重合体のPEG換算分子量をGPCにより測定した結果は、44,000であり、Mw/Mn=1.70であった。GPCの結果を図4に示す。
毒性評価
上記実施例1中の化合物(2)に関し生理食塩水を投与溶媒として、更に生理食塩水を比較対照として、化合物(2)投与量1000mg/kg、300mg/kgについて、投与液量25ml/kgの条件で6週齢BALB/c雌性マウス(各群n=5、日本エスエルシー(株)から購入)の尾静脈より実験開始日から0日目、3日目、6日目の3回にわたり間歇投与を行った。
体重減少を指標として評価を実施した。実験開始日におけるマウスの体重を100%とした場合の体重変化を評価し、10%の体重減少が起きた場合に毒性有りと判断した。
評価結果を図5に示す。生理食塩水にて溶解した化合物(2)の各濃度投与群および比較対照の生理食塩水を25ml/kgの投与液量で、3日に1回、計3回に渡り静脈内間歇投与した。投与後の10%以上の体重減少は見られず、体重に関しいずれの投与群においても同一日測定日における優位差は見られず、毒性無しと判断された。図中の各ポイントは平均体重±標準偏差(SD)を示す。図中の上向き矢印は投与日であることを示す。
以下の実施例では次の略号を使用する。
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド、Trt:トリフェニルメチル基(トリチル基)、Z:ベンジルオキシカルボニル基、Fmoc:9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、DMAP:N,N−ジメチルアミノピリジン、WSCD・HCl:水溶性カルボジイミド塩酸塩、DIPC:N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、tBuOK: Potassium t-butoxide,DMSO−d6:重水素化ジメチルスルホキシド
カルボキシメチル化ポリエーテル(5)の製造
トルエン(50ml)に実施例1で得られた共重合体(化合物番号(2);3g)を溶解し、t−ブチルアルコール(10ml)に溶解したカリウムt−ブトキシド(1.8g)、次いで18−クラウン−6エーテル(50mg)および臭素化酢酸エチル(1.8ml)を加え70℃で7時間反応させた。反応溶媒を減圧下で留去し、反応液に1N水酸化ナトリウム水溶液を20ml加え室温下5時間反応させた。この反応液を透析膜(分子量カットオフ12,000−14,000、米国、スペクトラム社製)を用い、精製水に対して4℃で2日間透析した。この内液をメンブランフィルター(0.22μm)にて濾過した後、凍結乾燥し、表記化合物(5)(3.0g)を得た。TSP (3-(Trimethylsilyl)propanoic-2,2,3,3-d4 acid, sodium salt)を標準とする重水溶媒における1H−NMR分析によるカルボキシル基の導入率は、モル比で3.5%であった。得られた共重合体の重量平均分子量をGPCにより測定した結果は、65,000であった。
(工程1)
米国、ハウザー社製のパクリタキセルを原料として、パクリタキセルの2’位水酸基にアミノ酸リンカーを導入し2’−Gly−paclitaxel塩酸塩(6)を調製した。
1H−NMRおよびHRMS(high-resolution mass spectrometry)により構造確認した。すなわち、Fmoc−Gly(178mg、0.6mmol)および、ジメチルアミノピリジン(73mg、0.6mmol)およびパクリタキセル(米国、HAUSER社製、427mg、0.5mmol)を塩化メチレン(20ml)に溶解した。次いで、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(76mg、0.6mmol)を加え、室温で終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製 Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/アセトニトリル=70/30)で精製し、2’−Fmoc−Gly−パクリタキセル(489mg)を得た。
この化合物(420mg)をN,N−ジメチルホルムアミド(10ml)に溶解し、室温下ピペリジン(2ml)を加え、5分間撹拌し、溶媒を留去して、脱Fmoc化し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製 Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×50cm、溶離液:アセトニトリル/塩化メチレン=80/20)で精製し、標記化合物(6)(145mg)を得た。テトラメチルシランを標準とするDMSO-d6溶媒におけるNMRデータを下記に示す。
1H−NMR(DMSO−d6):δ1.01(s,3H,Me−17)1.05(s,3H,Me−16)1.52(dd,1H,J=14.6,9.2Hz,H−14b)1.51(s,3H,Me−19)1.65(t,1H,J=11.6Hz,H−6b)1.81(dd,1H,J=15.5,9.6Hz,H−14a)1.86(s,3H,Me−18)2.11(s,3H,Ac−10)2.23(s,3H,Ac−4)2.32(m,1H,H−6a)3.58(d,1H,J=7.0Hz,H−3)3.96〜4.07(m,3H,GlyCH2,H−20)4.10(dd,1H,J=6.7,10.7,H−7)4.63(s,1H,OH−1)4.90(brs,1H,OH−7)4.91(dd,1H,J=4.9Hz,H−5)5.43(d,1H,J=7.0,H−2)5.46(d,1H,J=8.2Hz,H−2’)5.58(t,1H,J=8.4Hz,H−3’)5.87(t,1H,J=8.6Hz,H−13)6.30(s,1H,H−10)7.19〜8.00(aromatic,15H)8.40(brs,2H,GlyNH2)9.25(d,1H,J=8.6Hz,CONH−3’)
HRMS:m/z 911.3604(M+H)+:C49H55O15N2としての計算値 911.3602
(工程2)
カルボキシメチル化ポリエーテル−2’−Gly−パクリタキセル(7)の製造
実施例4で得た、カルボキシメチル化ポリエーテル(5)(100mg)を水2mlに溶解し、氷冷下、この溶液にDMF2mlを加えた。この溶液に本実施例(工程1)で得た、2’−Gly−パクリタキセル(6)(30mg)を溶解した水:DMF(1:1)混合液(0.5ml)およびWSC・HCl(100mg)を溶解したDMF(0.5ml)を加え、室温で2時間撹拌した。この反応液を透析膜(分子量カットオフ12,000−14,000、米国、スペクトラム社製)を用い、精製水に対して4℃で2日間透析した。この内液をメンブランフィルター(0.22μm)にて濾過した後、凍結乾燥し、表記化合物(7)(87mg)を得た。本複合体の薬物の導入量は、254nmにおける紫外吸光度および複合体の総重量から算出したところ、4.1%(重量%)であった。
(工程1)
2’−Ala−パクリタキセル(8)の製造
Z−Ala(145mg、0.65mmol)および、DMAP(79mg,0.65mmol)およびパクリタキセル(427mg、0.5mmol)を塩化メチレン(20ml)に溶解した。次いで、DIPC(82mg、0.65mmol)を加え室温で終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:Merck社製 Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/アセトニトリル=70/30)で精製し、2’−Z−Ala−パクリタキセル(435mg)を得た。この化合物(400mg)をジオキサン(20ml)に溶解しパラジウム−炭素触媒(200mg)を加え、水素雰囲気下、4時間撹拌し、触媒を濾去した後、減圧下で溶媒を留去し、残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:Merck社製 Art No.9385,Silica gel 60,200-400mesh,カラム:2.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/メタノール/アセトニトリル=95/5/5)で精製し、標記化合物(8)(221mg)を得た。テトラメチルシランを標準とするDMSO-d6溶媒におけるNMRデータを下記に示す。
1H−NMR(DMSO−d6):δ1.01(s,3H,Me−17)1.03(s,3H,Me−16)1.14(s,3H,Me−Ala)1.51(s,3H,Me−19)1.61(dd,1H,J=15.6,9.2Hz,H−14b)1.64(t,1H,J=12.8Hz,H−6b)1.81(s,3H,Me−18)1.88(dd,1H,J=15.3, 9.5Hz,H−14a)2.11(s,3H,Ac−10)2.27(s,3H,Ac−4)2.33(m,1H,H−6a)3.52(q,1H,J=7.0Hz,H−Ala)3.60(d,1H,J=7.3Hz,H−3)4.02(d,1H,J=15.0Hz,H−20)4.03(d,1H,J=15.0Hz,H−20)4.12(ddd,1H,J=6.6,6.6,17.4Hz,H−7)4.66(s,1H,OH−1)4.91(d,1H,J=6.6,OH−7)4.92(dd,1H,J=9.8Hz,H−5)5.35(d,1H,J=8.6,H−2’)5.43(d,1H,J=7.0Hz,H−2)5.64(t,1H,J=8.6Hz,H−3’)5.87(t,1H,J=9.2Hz,H−13)6.30(s,1H,H−10)7.20〜8.00(aromatic,15H)9.17(d,1H,J=8.9Hz,CONH−3’)
HRMS:m/z 925.3797(M+H)+:C50H57O15N2としての計算値 925.3759
(工程2)
カルボキシメチル化ポリエーテル−2’−Ala−パクリタキセル(9)の製造
実施例4で得た、カルボキシメチル化ポリエーテル(5)(100mg)に対し、本実施例6(工程1)で得た、2’−Ala−パクリタキセル(8)(30mg)を用いた以外は実施例5(工程2)と同様に行い、標記化合物(9)(93mg)を得た。本複合体の薬物の導入量は、254nmにおける紫外吸光度および複合体の総重量から算出したところ、2.2%(重量%)であった。
(工程1)2’−Leu−パクリタキセル(10)の製造
Z−Leu(172mg、0.65mmol)を用いた以外は実施例6(工程1)と同様に行い2’−Z−Leu−パクリタキセル(450mg)を得た。この化合物(400mg)をジオキサン(20ml)に溶解しパラジウム−炭素触媒(200mg)を加え、水素雰囲気下、4時間撹拌し、触媒を濾去した後、減圧下溶媒を留去し、残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製 Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/メタノール/アセトニトリル=95/5/5)で精製し、標記化合物(10)(282mg)を得た。テトラメチルシランを標準とするDMSO-d6溶媒におけるNMRデータを下記に示す。
1H−NMR(DMSO−d6):δ0.66(d,3H,Me−Leu)0.70(d,3H,Me−Leu)1.01(s,3H,Me−17)1.03(s,3H,Me−16)1.26(ddd,1H,J=6.4,8.5,13.4Hz,H−Leu)1.36(ddd,1H,J=5.8,7.6,13.4Hz,H−Leu)1.51(s,3H,Me−19)1.56(dd,1H,J=15.3,9.0Hz,H−14b)1.64(m,1H,H−6b)1.67(m,1H,H−Leu)1.79(s,3H,Me−18)1.84(dd,1H,J=15.3,9.5Hz,H−14a)2.10(s,3H,Ac−10)2.25(s,3H,Ac−4)2.33(ddd,1H,J=14.7,9.5,6.4Hz,H−6a)3.38(dd,1H,J=8.6,5.8Hz,H−Leu)3.59(d,1H,J=7.0Hz,H−3)4.01(d,1H,J=16.8Hz,H−20)4.03(d,1H,J=16.8Hz,H−20)4.12(ddd,1H,J=6.9,6.9,11.0Hz,H−7)4.64(s,1H,OH−1)4.90(d,1H,J=7.0,OH−7)4.92(d,1H,J=10.1Hz,H−5)5.34(d,1H,J=9.2,H−2’)5.42(d,1H,J=7.0Hz,H−2)5.62(t,1H,J=9.0Hz,H−3’)5.86(t,1H,J=9.2Hz,H−13)6.30(s,1H,H−10)7.20〜8.00(aromatic,15H)9.16(d,1H,J=8.9Hz,CONH−3’)
HRMS:m/z 967.4321(M+H)+:C53H63O15N2としての計算値 967.4228
(工程2)
カルボキシメチル化ポリエーテル−2’−Leu−パクリタキセル(11)の製造
実施例4で得た、カルボキシメチル化ポリエーテル(5)(100mg)に対し、本実施例7(工程1)で得た、2’−Leu−パクリタキセル(10)(30mg)を用いた以外は実施例6(工程1)と同様に行い、標記化合物(11)(92mg)を得た。本複合体の薬物の導入量は、254nmにおける紫外吸光度および複合体の総重量から算出したところ、4.1%(重量%)であった。
(工程1)
2’−Ile−パクリタキセル(12)の製造
Fmoc−Ile(212mg,0.6mmol)および、DMAP(73mg、0.6mmol)およびパクリタキセル(427mg、0.5mmol)を塩化メチレン(20ml)に溶解した。次いで、DIPC(76mg、0.6mmol)を加え室温で終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマト・グラフィー(シリカゲル:Merck社製 Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:2.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/アセトニトリル=70/30)で精製し、2’−Fmoc−Ile−パクリタキセル(553mg)を得た。この化合物(470mg)をDMF(10ml)に溶解し、室温下ピペリジン(2ml)を加え、5分間撹拌した後、減圧下溶媒を留去し、残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/メタノール/アセトニトリル=95/5/5)で精製し、標記化合物(12)(355mg)を得た。テトラメチルシランを標準とするDMSO-d6溶媒におけるNMRデータを下記に示す。
1H−NMR(DMSO−d6):δ0.62(t,3H,J=7.5Hz,Me−Ile)0.81 (d,3H,J=6.7Hz,Me−Ile)1.01(s,3H,Me−17)1.03 (s,3H,Me−16)1.07(ddd,1H,J=14.4,7.3,4.9Hz,H−Ile)1.32(ddd,1H,J=13.4,7.6,4.6Hz,H−Ile)1.51(s,3H,Me−19)1.56(dd,1H,J=15.3,9.2Hz,H−14b)1.56−1.61(m,1H,H−Ile)1.64(dd,1H,J=13.7,3.1Hz,H−6b)1.79(s,3H,Me−18)1.87(dd,1H,J=15.3,9.8Hz,H−14a)2.10(s,3H,Ac−10)2.29(s,3H,Ac−4)2.33(ddd,1H,J=14.4,9.6,6.4Hz,H−6a)3.60(d,1H,J=7.3Hz,H−3)3.60−3.67(m,1H,H−Ile)4.02(d,1H,J=16.6Hz,H−20)4.03(d,1H,J=16.6Hz,H−20)4.12(ddd,1H,J=10.8,6.7,6.7Hz,H−7)4.64(s,1H,OH−1)4.90(d,1H,J=7.0,OH−7)4.92(d,1H,J=9.8Hz,H−5)5.37(d,1H,J=8.9Hz,H−2’)5.43(d,1H,J=7.3Hz,H−2)5.64(t,1H,J=8.7Hz,H−3’)5.85(dt,1H,J=0.9,9.2Hz,H−13)6.30(s,1H,H−10)7.20〜8.00(aromatic,15H)9.15(d,1H,J=9.2Hz,CONH−3’)
HRMS:m/z 967.4234(M+H)+:C53H63O15N2としての計算値 967.4228
(工程2)
カルボキシメチル化ポリエーテル−2’−Ile−パクリタキセル(13)の製造
実施例4で得た、カルボキシメチル化ポリエーテル(5)(100mg)に対し、本実施例8(工程1)で得た、2’−Ile−パクリタキセル(12)(30mg)を用いた以外は実施例5(工程2)と同様に行い、標記化合物(13)(92mg)を得た。本複合体の薬物の導入量は、254nmにおける紫外吸光度および複合体の総重量から算出したところ、1.8%(重量%)であった。
(工程1)
2’−Phe−Gly−パクリタキセル塩酸塩(14)の製造
Phe−Gly(日本国、ペプチド研究所製、1.1g、5mmol)を水(2ml)、2−プロパノール(2ml)およびジエチルアミン(1.5ml)の混合溶液に溶かし、この反応液にトリチルクロライド(1.8g、6.5mmol)を徐々に加え、1時間撹拌した。反応液に水を加え、生じた沈殿を水で洗浄した。次に、沈殿に酢酸5mlを加えて酸性にした後、溶媒を減圧下留去することによりTrt−Phe−Gly1.4gを得た。得られたTrt−Phe−Gly(604mg、1.3mmol)および、DMAP(158mg、1.3mmol)およびパクリタキセル(853mg、1.0mmol)を塩化メチレン(20ml)に溶解した。次いで、DIPC(164mg、1.3mmol)を加え室温下終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製 Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/アセトニトリル=80/20)で精製し、2’−Trt−Phe−Gly−パクリタキセル(990mg)を得た。この化合物(800mg)を90%酢酸(10ml)で処理して脱N−トリチル化し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/メタノール/アセトニトリル=95/5/5)で精製し、次に酢酸塩をイオン交換樹脂により塩酸塩へ変換して標記化合物(14)(455mg)を得た。テトラメチルシランを標準とするDMSO-d6溶媒におけるNMRデータを下記に示す。
1H−NMR(DMSO−d6);δ1.01(s,3H,Me−17)1.03(s,3H,Me−16)1.42(dd,1H,J=15.5,9.1Hz,H−14b)1.50(s,3H,Me−19)1.63(t,1H,J=12.2Hz,H−6b)1.75(dd,1H,J=12.3,9.5Hz,H−14a)1.81(s,3H,Me−18)2.12(s,3H,Ac−10)2.23(s,3H,Ac−4)2.29(ddd,1H,J=14.4,9.2,7.0Hz,H−6a)2.90(dd,1H,14.2,7.8Hz,PheCH2)3.08(dd,1H,14.4,5.2Hz,PheCH2)3.56(d,1H,J=7.0Hz,H−3)4.05−4.10(m,2H,H−7,PheCH)4.15(dd,1H,J=18.0,5.8Hz,Gly)4.61(brs,1H,OH−1)4.90(brs,1H,OH−7)4.90(d,1H,J=5.3Hz,H−5)5.38(d,1H,J=8.9Hz,H−2’) 5.41(d,1H,J=7.0Hz,H−2)5.53(t,1H,J=8.6Hz,H−3’)5.83(t,1H,J=8.8Hz,H−13)6.29(s,1H,H−10)7.16〜8.00(m,20H,aromatic)8.15(brs,2H,NH2)9.02(t,1H,J=5.8Hz,Gly−NH)9.29(d,1H,J=8.9Hz,CONH−3’)
HRMS:m/z 1058.4241(M+H)+:C58H64O16N3としての計算値 1058.4287
(工程2)
カルボキシメチル化ポリエーテル−2’−Phe−Gly−パクリタキセル(15)の製造
実施例4で得た、カルボキシメチル化ポリエーテル(5)(100mg)を水2mlに溶解し、氷冷下、この溶液にDMF2mlを加えた。この溶液に本実施例137(工程1)で得た、2’−Phe−Gly−パクリタキセル(14)(22mg)を溶解した水:DMF(1:1)混合液(0.5ml)およびWSC・HCl(100mg)を溶解したDMF(0.5ml)を加え、室温で2時間撹拌した。この反応液を透析膜(分子量カットオフ12,000−14,000、米国、スペクトラム社製)を用い、精製水に対して4℃で2日間透析した。この内液をメンブランフィルター(0.22μm)にて濾過した後、凍結乾燥し、表記化合物(15)(82mg)を得た。本複合体の薬物の導入量は、254nmにおける紫外吸光度および複合体の総重量から算出したところ、3.1%(重量%)であった。
Trt−Gly−Gly−Phe−Gly(16)の製造
(1)Phe−Gly−OBn(17)の合成
Phe−Gly・H2O(日本国、国産化学社製、25g、104mmol)をパラトルニンスルホン酸1水和物(19.8g、104mmol)、ベンジルアルコール(25ml)およびトルエン(200ml)混合液に溶かし、Dean-Stark装置により5時間加熱環流する。反応後、溶媒を留去し、ジエチルエーテルを加えると標記化合物であるPhe−Gly−OBn(17)のパラトルエンスルホン酸塩(34g)が得られた。
(2)Trt−Gly−Gly(18)の合成
Gly−Gly(日本国、ペプチド研究所製、6.6g、50mmol)をH2O(20ml)、2−プロパノール(40ml)およびジエチルアミン(15ml)の混合溶液に溶かし、この反応液にトリチルクロライド(18.1g、65mmol)を徐々に加え、1時間撹拌する。反応液にH2Oを加え、生じた沈殿を水で洗浄した。次に、沈澱に酢酸5mlを加えて酸性にした後、溶媒を減圧下で留去することにより標記化合物(18)13.3gを得た。
(3)Trt−Gly−Gly−Phe−Gly−OBn(19)の合成
乾燥DMF(10ml)に、Trt−Gly−Gly(18)(1.54g)、N−ヒドロキシコハク酸イミド(0.52g)およびDCC(0.93g)を加え、4℃で3時間反応する。反応溶液にPhe−Gly−OBn(17)のパラトルエンスルホン酸塩(2.0g)およびN−メチルモルホリン(0.41g)を溶かしたDMF溶液(DMF10ml)を加え、4℃で15時間反応する。沈殿物を除き、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製 Art No.9365,Silica gel 60,200-400mesh,溶離液:クロロホルム/メタノール=20/1)で精製することにより、標記生成物(19)(1.6g)を得た。
(4)Trt−Gly−Gly−Phe−Gly(16)の合成
化合物(19)Trt−Gly−Gly−Phe−Gly−OBn(1.3g)をDMF(20ml)に溶かし、10%パラジウム−炭素(0.5g)および1,4−シクロヘキサジエン(0.4g)を加え、室温下30分反応する。反応液をろ過し、触媒を除き、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製 Art No.9365,Silica gel60,200-400 mesh,溶離液:クロロホルム/メタノール=7/1)で精製することにより、標記化合物(16)(1.1g)を得た。
Anal.Calcd for: C34H34N4O5:C,70.57;H,5.92;N,9.68 Found: C,70.03;H,6.07;N,9.67
アミノ酸分析:Phe(1)1.00,Gly(3)2.91
加水分解条件:6NHCl、110℃、22hrs
2’−Gly−Gly−Phe−Gly−パクリタキセル塩酸塩(20)の製造
実施例10で得た(16)Trt−Gly−Gly−Phe−Gly(739mg、1.3mmol)および、DMAP(158mg、1.3mmol)およびパクリタキセル(853mg、1.0mmol)を塩化メチレン(20ml)に溶解した。次いで、DIPC(164mg、1.3mmol)を加え室温下4時間撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製 Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×50cm、溶離液:塩化メチレン/メタノール/アセトニトリル=95/5/30)で精製し、2’−Nα−Trt−Gly−Gly−Phe−Gly−パクリタキセル(21)(1250mg)を得た。
HRMS:m/z 1414.5763(M+H)+:C81H84O18N5としての計算値 1414.5811
この化合物(21)(1100mg)を75%酢酸(10ml)で処理して脱N−トリチル化し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製 Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×50cm、溶離液:塩化メチレン/メタノール/アセトニトリル=85/15/5)で精製し、次に陰イオン交換樹脂により塩酸塩へ変換して表記化合物(20)(533mg)を得た。テトラメチルシランを標準とするDMSO-d6溶媒におけるNMRデータを下記に示す。
1H−NMR(DMSO−d6):δ1.00(s,3H,Me−17)1.03(s,3H,Me−16)1.42(dd,1H,J=15.4,9.2Hz,H−14b)1.49(s,3H,Me−19)1.63(brt,1H,J=12.1Hz,H−6b)1.74(dd,1H,J=15.4, 9.2Hz,H−14a)1.80(s,3H,Me−18)2.11(s,3H,Ac−10)2.23(s,3H,Ac−4)2.30(m,1H,H6a)2.72(dd,1H,J=13.9,10.2Hz,PheCH2Hb)3.02(dd,1H,J=13.9,3.8Hz,PheCH2CHa)3.52(brs,2H,GlyCH2)3.56(d,1H,J=7.2Hz,H−3)3.66(dd,1H,16.9,5.4Hz,GlyCH2b)3.84(dd,1H,16.9,5.4Hz,GlyCH2a)4.01(dd,2H,J=14.5,8.4Hz,H−20a,H−20b)4.01(2H,GlyCH2)4.09(m,1H,H−7)4.55(ddd,1H,J=10.2,8.5,3.8Hz,PheCH2CH)4.61(s,1H,OH−1)4.89(dd,1H,J=8.9,1.3Hz,H−5)4.92(brs,1H,OH−7)5.41(d,1H,J=7.2,H−2)5.43(d,1H,J=6.3Hz,H−2’)5.51(t,1H,J=8.5Hz,H−3’)5.83(t,1H,J=9.2Hz,H−13)6.29(s,1H,H−10)7.10〜8.00(aromatic,20H)8.33(d,1H,PheCONH)8.51(t,1H,J=5.5Hz,GlyCONH)8.69(t,1H,J=6.0Hz,GlyCONH)9.34(d,1H,J=8.5Hz,CONH−3’)
HRMS:m/z 1172.4711(M+H)+:C62H70O18N5としての計算値 1172.4716
Anal.Calcd for: C62H69O18N5・HCl・2.5H2O:C,59.40;H,6.03;N,5.59.
Found: C,59.55;H,6.04;N,5.60
カルボキシメチル化ポリエーテル−2’−Gly−Gly−Phe−Gly−パクリタキセル(22)の製造
実施例4で得た、カルボキシメチル化ポリエーテル(5)(1.0g)を水20mlに溶解し、氷冷下、この溶液にDMF20mlを加えた。この溶液に実施例11で得た、2’−Gly−Gly−Phe−Gly−パクリタキセル(20)(200mg)を溶解した水:DMF(1:1)混合液(8ml)およびWSC・HCl(1.0g)を溶解したDMF5mlを加え、室温で6時間撹拌した。この反応液を透析膜(分子量カットオフ12,000−14,000、米国、スペクトラム社製)を用い、精製水に対して4℃で2日間透析した。この内液をメンブランフィルター(0.22μm)にて濾過した後、凍結乾燥し、表記化合物(22)(953mg)を得た。本複合体の薬物の導入量は、254nmにおける紫外吸光度および複合体の総重量から算出したところ、4.4%(重量%)であった。
20−Gly−カンプトテシン塩酸塩(23)の製造
(工程1)
BOC−Gly(263mg、1.5mmol)および、ジメチルアミノピリジン(122mg、1.0mmol)および(S)−(+)−Camptothesin(日本国、東京化成、174mg、0.5mmol)を塩化メチレン(20ml)に溶解した。次いで、DIPC(189mg、1.5mmol)を加え室温で3.5時間撹拌した。反応溶液を0.1N塩酸および飽和食塩水で洗浄しその後、溶媒を減圧下で留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製 Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/アセトニトリル=70/30)で精製し、20−BOCGly−カンプトテシン(24)(315mg)を得た。
(工程2)
化合物(24)(300mg)を塩化メチレン(5ml)に溶解し、室温下トリフルオロ酢酸(TFA;2ml)を加え、5分間撹拌し、ついで溶媒を留去した。脱BOC化した化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製 Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×50cm、溶離液:アセトニトリル/メタノール/塩化メチレン=10/10/90)で精製し、その後陰イオン交換樹脂で処理することで、標記化合物(23)(214mg)を得た。テトラメチルシランを標準とするDMSO-d6溶媒におけるNMRデータを下記に示す。
1H−NMR(DMSO−d6):δ0.97(s,3H)2.20(m,2H)4.08,4.34(dd,2H)5.32(s,2H)5.56(s,2H)7.32(s,1H)7.73(t,1H)7.88(t,1H)8.15(d,1H)8.17(d,1H)8.56(brs,2H)8.72(s,1H)
13C−NMR(DMSO−d6):7.53,30.18,38.6−40.2,50.10,66.29,77.42,95.51,118.78,127.63,127.82,128.45,128.66,129.49,130.43,131.58,144.72,145.97,147.77,152.13,156.39,166.77
カルボキシメチル化ポリエーテル−20−Gly−カンプトテシン(25)の製造
実施例4で得た、カルボキシメチル化ポリエーテル(5)(1.0g)を水20mlに溶解し、氷冷下、この溶液にDMF20mlを加えた。この溶液に実施例13で得た、20−Gly−カンプトテシン塩酸塩(23)(200mg)を溶解した水:DMF(1:1)混合液(8ml)およびWSC・HCl(1.0g)を溶解したDMF5mlを加え、室温で6時間撹拌した。この反応液を透析膜(分子量カットオフ12,000−14,000、米国、スペクトラム社製)を用い、精製水に対して4℃で2日間透析した。この内液をメンブランフィルター(0.22μm)にて濾過した後、凍結乾燥し、表記化合物(25)(953mg)を得た。本複合体の薬物の導入量は、254nmにおける紫外吸光度および複合体の総重量から算出したところ、3.6%(重量%)であった。
20−GlyGlyPheGly−カンプトテシン塩酸塩(26)の製造
(工程1)
実施例10で得られた(16)Trt−GlyGlyPheGly(1736mg、3mmol)および、ジメチルアミノピリジン(244mg、2mmol)および(S)−(+)−Camptothesin(348mg、1mmol)を塩化メチレン(100ml)に溶解した。次いで、DIPC(378mg、3mmol)を加え室温で終夜撹拌した。反応溶液を0.1N塩酸および飽和食塩水で洗浄しその後、溶媒を減圧下で留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製 Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/アセトニトリル=70/30)で精製し、20−20−TrtGlyGlyPheGly−カンプトテシン(27)(754mg)を得た。
(工程2)
化合物(27)(700mg)を75%酢酸(8ml)に溶解し、20分間撹拌し、ついで溶媒を留去した。脱Trt化した化合物を陰イオン交換樹脂(バイオラッド社AG1−X8)により酢酸塩を塩酸塩に変換し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製 Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×50cm、溶離液:メタノール/塩化メチレン=15/85)で精製し、標記化合物(26)(535mg)を得た。テトラメチルシランを標準とするDMSO-d6溶媒におけるNMRデータを下記に示す。
1H−NMR(DMSO−d6):δ0.93(t,3H)2.32(m,2H)2.77,3.06(dd,dd,2H)3.27(s,2H)3.61,3.76(d,d,2H)4.11,4.21(dd,dd,2H)4.55(m,1H)5.27(s,2H)5.51(s,2H)7.15(m,1H)7.19(s,1H)7.22(m,4H)7.71(t,1H)7.87(t,1H)8.12(d,1H)8.17(d,1H)8.23(brs,1H)8.31(d,1H)8.68(s,1H)8.68(brs,2H)
13C−NMR(DMSO−d6):7.52,30.42,37.43,40.41,41.64,42.21,50.08,53.96,66.28,76.27,95.20,118.87,126.20,127.59,127.80,128.01,128.39,128.79,129.06,129.50,130.37,131.49,137.82,145.11,145.87,147.72,152.12,156.41,167.00,168.35,168.84,171.68
カルボキシメチル化ポリエーテル−20−GlyGlyPheGly−カンプトテシン(28)の製造
実施例4で得た、カルボキシメチル化ポリエーテル(5)(1.0g)を水20mlに溶解し、氷冷下、この溶液にDMF20mlを加えた。この溶液に実施例15で得た、20−GlyGlyPheGly−カンプトテシン塩酸塩(26)(200mg)を溶解した水:DMF(1:1)混合液(8ml)およびWSC・HCl(1.0g)を溶解したDMF5mlを加え、室温で6時間撹拌した。この反応液を透析膜(分子量カットオフ12,000−14,000、米国、スペクトラム社製)を用い、精製水に対して4℃で2日間透析した。この内液をメンブランフィルター(0.22μm)にて濾過した後、凍結乾燥し、表記化合物(28)(1.1g)を得た。本複合体の薬物の導入量は、254nmにおける紫外吸光度および複合体の総重量から算出したところ、4.6%(重量%)であった。
21−Ala−デキサメタゾン塩酸塩(29)の製造
(工程1)
BOC−Ala(568mg、3mmol)および、ジメチルアミノピリジン(244mg、2mmol)およびデキサメタゾン(392mg、1mmol)を塩化メチレン(30ml)に溶解した。次いで、DIPC(252mg、2mmol)を加え室温で0.5時間撹拌した。反応溶液を0.1N塩酸および飽和食塩水で洗浄しその後、溶媒を減圧下留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製 Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/アセトニトリル=80/20)で精製し、21−BOC−Ala−デキサメタゾン(30)(553mg)を得た。
(工程2)
化合物(30)(500mg)を塩化メチレン(10ml)に溶解し、室温下トリフルオロ酢酸(TFA;1ml)を加え、2時間撹拌し、ついで溶媒を留去した。脱BOC化した化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製 Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×50cm、溶離液:アセトニトリル/メタノール/塩化メチレン=5/15/85)で精製し、その後陰イオン交換樹脂で処理することで、標記化合物(29)(412mg)を得た。テトラメチルシランを標準とするDMSO-d6溶媒におけるNMRデータを下記に示す。
1H−NMR(DMSO−d6):δ0.80(d,3H)0.90(s,3H)1.09(s,1H)1.33−1.79(m,4H)1.49(s,3H)1.50(d,3H)2.08−2.91(m,6H)3.35(brs,1H)4.17(m,1H)4.24(q,1H)4.95(d,1H)5.20(d,1H)5.27(s,1H)5.53(d,1H)6.01(s,1H)6.23(dd,1H)7.33(d,1H)8.46(brs,1H)
13C−NMR(DMSO−d6):15.20,16.09,16.29,23.08,27.41,30.41,32.05,33.70,35.61,35.83,43.42,47.80,48.05,48.25,69.38,70.41,90.61,101.42,124.19,129.03,152.94,167.17,169.98,185.41,204.30
カルボキシメチル化ポリエーテル−21−Ala−デキサメタゾン(31)の製造
実施例4で得た、カルボキシメチル化ポリエーテル(5)(1g)を水20mlに溶解し、氷冷下、この溶液にDMF20mlを加えた。この溶液に実施例16で得た、21−Ala−デキサメタゾン塩酸塩(29)(200mg)を溶解した水:DMF(1:1)混合液(8ml)およびWSC・HCl(1.0g)を溶解したDMF5mlを加え、室温で6時間撹拌した。この反応液を透析膜(分子量カットオフ12,000−14,000、米国、スペクトラム社製)を用い、精製水に対して4℃で2日間透析した。この内液をメンブランフィルター(0.22μm)にて濾過した後、凍結乾燥し、表記化合物(31)(0.97g)を得た。本複合体の薬物の導入量は、240nmにおける紫外吸光度および複合体の総重量から算出したところ、3.6%(重量%)であった。
21−Leu−デキサメタゾン塩酸塩(32)の製造
(工程1)
BOC−Leu・H2O(747mg、3mmol)および、ジメチルアミノピリジン(244mg、2mmol)およびデキサメタゾン(392mg、1mmol)を塩化メチレン(30ml)に溶解した。次いで、DIPC(252mg、2mmol)を加え室温で13時間撹拌した。反応溶液を0.1N塩酸および飽和食塩水で洗浄しその後、溶媒を減圧下留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製 Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/アセトニトリル=80/20)で精製し、20−BOC−Leu−デキサメタゾン(33)(606mg)を得た。
(工程2)
化合物(33)(500mg)を塩化メチレン(5ml)に溶解し、室温下トリフルオロ酢酸(TFA;1ml)を加え、2時間撹拌し、ついで溶媒を留去した。脱BOC化した化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製 Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×50cm、溶離液:アセトニトリル/メタノール/塩化メチレン=5/15/85)で精製し、その後陰イオン交換樹脂で処理することで、標記化合物(32)(515mg)を得た。テトラメチルシランを標準とするDMSO-d6溶媒におけるNMRデータを下記に示す。
1H−NMR(DMSO−d6):δ0.79(d,3H)0.88(d,3H)0.89(s、3H)0.92(d,3H)1.08(m,1H)1.34−1.81(m,6H)1.49(s,3H)1.86(m,1H)2.12−2.88(m,6H)3.35(s,2H)3.44(q,1H)4.16(m,1H)4.85(d,1H)5.02(d,1H)5.17(s,1H)5.47(d,1H)6.01(s,1H)6.23(dd,1H)7.31(d,1H)
13C−NMR(DMSO−d6):15.27,16.30,21.87,23.11,23.15,24.15,27.46,30.50,32.13,33.79,35.52,35.79,43.46,43.56,48.15,48.16,52.16,68.21,70.62,90.67,101.47,124.24,129.06,153.04,167.27,175.47,185.48,204.90
カルボキシメチル化ポリエーテル−21−Leu−デキサメタゾン(34)の製造
実施例4で得た、カルボキシメチル化ポリエーテル(5)(1g)を水20mlに溶解し、氷冷下、この溶液にDMF20mlを加えた。この溶液に実施例18で得た、21−Leu−デキサメタゾン塩酸塩(32)(200mg)を溶解した水:DMF(1:1)混合液(8ml)およびWSC・HCl(1.0g)を溶解したDMF5mlを加え、室温で6時間撹拌した。この反応液を透析膜(分子量カットオフ12,000−14,000、米国、スペクトラム社製)を用い、精製水に対して4℃で2日間透析した。この内液をメンブランフィルター(0.22μm)にて濾過した後、凍結乾燥し、表記化合物(34)(1.1g)を得た。本複合体の薬物の導入量は、240nmにおける紫外吸光度および複合体の総重量から算出したところ、4.1%(重量%)であった。
21−Ile−デキサメタゾン塩酸塩(35)の製造
(工程1)
BOC−Ile(1040mg、4.5mmol)および、ジメチルアミノピリジン(366mg、3mmol)およびデキサメタゾン(588mg、1.5mmol)を塩化メチレン(30ml)に溶解した。次いで、DIPC(378mg、3mmol)を加え室温で14時間撹拌した。反応溶液を0.1N塩酸および飽和食塩水で洗浄しその後、溶媒を減圧下留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製 Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/アセトニトリル=80/20)で精製し、20−BOC−Ile−デキサメタゾン(36)(622mg)を得た。
(工程2)
化合物(36)(600mg)を塩化メチレン(5ml)に溶解し、室温下トリフルオロ酢酸(TFA;1ml)を加え、2時間撹拌し、ついで溶媒を留去した。脱BOC化した化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製 Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×50cm、溶離液:アセトニトリル/メタノール/塩化メチレン=5/15/85)で精製し、その後陰イオン交換樹脂で処理することで、標記化合物(35)(584mg)を得た。テトラメチルシランを標準とするDMSO-d6溶媒におけるNMRデータを下記に示す。
1H−NMR(DMSO−d6):δ0.80(d,3H)0.90(s,3H)0.93(t,3H)1.03(d,3H)1.08(m,1H)1.33−1.86(m,6H)1.49(s,3H)1.50(d,1H)2.13−2.91(m,6H)4.11(d,1H)4.16(m,1H)4.99(d,1H)5.17(d,1H)5.26(s,1H)5.55(d,1H)6.01(s,1H)6.23(dd,1H)7.34(d,1H)8.44(s,1H)
13C−NMR(DMSO−d6):11.69,13.69,15.21,16.21,23.09,25.02,27.44,30.45,32.08,33.72,35.81,35.61,36.34,43.44,48.08,48.22,56.15,69.54,70.41,90.72,101.46,124.19,129.00,152.96,167.18,168.66,185.41,204.40
カルボキシメチル化ポリエーテル−21−Ile−デキサメタゾン(37)の製造
実施例4で得た、カルボキシメチル化ポリエーテル(5)(1g)を水20mlに溶解し、氷冷下、この溶液にDMF20mlを加えた。この溶液に実施例20で得た、21−Ile−デキサメタゾン塩酸塩(35)(200mg)を溶解した水:DMF(1:1)混合液(8ml)およびWSC・HCl(1.0g)を溶解したDMF5mlを加え、室温で6時間撹拌した。この反応液を透析膜(分子量カットオフ12,000−14,000、米国、スペクトラム社製)を用い、精製水に対して4℃で2日間透析した。この内液をメンブランフィルター(0.22μm)にて濾過した後、凍結乾燥し、表記化合物(37)(0.97g)を得た。本複合体の薬物の導入量は、240nmにおける紫外吸光度および複合体の総重量から算出したところ、3.1%(重量%)であった。
化合物(7)、(9)、(11)、(13)、(15)および(22)の生理食塩水に対する溶解度
化合物(7)、(9)、(11)、(13)、(15)および(22)をそれぞれ10mg量り取り、0.1mlの生理食塩水に加えたところ、加えた化合物はそれぞれ完全に溶解した。パクリタキセル換算では、化合物(7)は4.1mg/ml(生理食塩水)の溶解度であった。同様に(9)は2.2mg/ml(生理食塩水)の溶解度、(11)は4.1mg/ml(生理食塩水)の溶解度、(13)は1.8mg/ml(生理食塩水)の溶解度、(15)は3.1mg/ml(生理食塩水)の溶解度、(22)は4.4mg/ml(生理食塩水)の溶解度であった。
更に、パクリタキセル(米国、HAUSER社製)1mgは、10mlの生理食塩水に溶解しなかった。
マウスおよびヒト血漿中における、化合物(7)、(9)、(11)および(13)からのパクリタキセル遊離評価実験
実施例5で得た化合物(7)、実施例6で得た化合物(9)、実施例7で得た化合物(11)および実施例8で得た化合物(13)をそれぞれ生理食塩水に溶解し、パクリタキセルに換算した濃度が125μg/mlとなるよう調製した。これらの溶液20μlをマウスおよびヒト血漿200μlにそれぞれ添加し、37℃における薬物複合体からのパクリタキセル遊離量を測定した。薬学雑誌,114,351−355(1994)記載の方法に従い、血漿中からのパクリタキセル回収を行い、HPLCにより、化合物(7)、(9)、(11)および(13)から血漿中に遊離したパクリタキセル量を評価した。図6および図7には、パクリタキセル遊離の経時変化を示した。その結果、薬物複合体からのパクリタキセルの遊離速度はマウスおよびヒト血漿で同じ傾向が見られた。その順序は、遊離速度の大きい順に化合物(7)>(9)>(11)>(13)であり、これはリンカーであるアミノ酸の立体障害の大きさと相関が見られた。
抗腫瘍効果の評価実験(1)
B16マウス黒色腫細胞5×106個を、C57BL/6系の雌性マウス(6週齢)の鼠径部皮下に移植し、8日後に、被検化合物として実施例12で得た化合物(22)を生理食塩水に溶解した被検液、およびパクリタキセルをエタノール−クレモホールEL(米国、シグマ社製)−生理食塩水に溶解した被検液を、一群7匹として尾静脈内に投与した。投与量はパクリタキセル換算で20および50mg/kgとした。無処置群は、生理食塩水を一群13匹として投与した。被検液投与後6日目に、マウスの腫瘍体積を測定することにより、抗腫瘍効果を判定した。
無処置群の腫瘍体積を100としたときの、被検化合物投与群の平均腫瘍体積を表わした。腫瘍体積Vは、腫瘍を外部から計測し、長径a(mm)および短径b(mm)とするとき、下式(1)により求めた。
抗腫瘍効果の評価実験(2)
Colon26腫瘍細胞4%懸濁液を、Balb/C系の雌性マウス(6週齢)の側腹部皮下に移植し、被検化合物として実施例12で得た化合物(22)を生理食塩水に溶解した被検液、およびパクリタキセルをエタノール−クレモホールEL(米国、シグマ社製)−生理食塩水に溶解した被検液を、一群3匹として尾静脈内に投与した。投与量はパクリタキセル換算で50mg/kgとした。無処置群は、一群5匹とした。細胞移植後2日目に、第1回被検液を投与し、その後4日毎に計7回、被検液を尾静脈内に投与した。マウスの腫瘍体積を測定することにより、抗腫瘍効果を判定した。無処置群および被検液投与群の平均腫瘍体積の経時変化を示した。腫瘍体積Vは、腫瘍を外部から計測し、長径a(mm)および短径b(mm)とするとき、前記式(1)により求めた。
被検液投与後の、腫瘍体積の経時変化は、図9に示される通りであった。本発明による薬物複合体(22)の50mg/kg投与群の抗腫瘍効果は、パクリタキセルの50mg/kg投与群の抗腫瘍効果と比較して、有意に優れていた。
抗腫瘍効果の評価実験(3)
Colon26腫瘍細胞4%懸濁液を、Balb/C系の雌性マウス(6週齢)の側腹部皮下に移植し、被検化合物として実施例5で得た化合物(7)、実施例6で得た化合物(9)、実施例7で得た化合物(11)、実施例8で得た化合物(13)を生理食塩水に溶解した被検液、およびパクリタキセルをエタノール−クレモホールEL(米国、シグマ社製)−生理食塩水に溶解した被検液を、一群5匹として尾静脈内に投与した。投与量はパクリタキセル換算で50mg/kgとした。無処置群は、一群9匹とした。細胞移植後2日目に、第1回被検液を投与し、その後7日毎に、被検液を尾静脈内に合計4回投与した。マウスの腫瘍体積を測定することにより、抗腫瘍効果を判定した。無処置群および被検液投与群の平均腫瘍体積の経時変化を示した。腫瘍体積Vは、腫瘍を外部から計測し、長径a(mm)および短径b(mm)とするとき、前記式(1)により求めた。
被検液投与後の、腫瘍体積の経時変化は、図10に示される通りであった。本発明による薬物複合体(7)および(9)の50mg/kg投与群の抗腫瘍効果は、パクリタキセルの50mg/kg投与群の抗腫瘍効果と比較して、有意に優れていた。抗腫瘍効果の強さは[化合物(7)および(9)>(11)>(13)およびパクリタキセル]の順序であった。
化合物(25)、(28)、(31)、(34)および(37)の生理食塩水に対する溶解度
化合物(25)、(28)、(31)、(34)および(37)をそれぞれ10mg量り取り、0.1mlの生理食塩水に加えた、加えた化合物はそれぞれ完全に溶解した。カンプトテシン換算で化合物(25)は3.6mg/ml(生理食塩水)の溶解度であった。同様に(28)はカンプトテシン換算で4.6mg/ml(生理食塩水)の溶解度、(31)はデキサメタゾン換算で3.6mg/ml(生理食塩水)の溶解度、(34)は同様にデキサメタゾン換算で4.1mg/ml(生理食塩水)の溶解度、(37)は同様にデキサメタゾン換算で3.1mg/ml(生理食塩水)の溶解度であった。
マウス血漿中における、化合物(31)、(34)および(37)からのデキサメタゾン遊離評価実験
実施例18で得た化合物(31)、実施例20で得た化合物(34)および実施例22で得た化合物(37)をそれぞれ生理食塩水に溶解し、デキサメタゾン換算で80μg/mlとなるよう調製した。これらの溶液50μlをマウス血漿250μlにそれぞれ添加し、37℃におけるそれぞれの薬物複合体からのデキサメタゾン遊離量を測定した。血漿中のデキサメタゾン回収並びに定量は次のようにして行った。すなわち、血漿サンプル250μlに対し、250μlリン酸緩衝液(pH7.4)を加え、さらに内部標準として酢酸ヒドロコルチゾンを含むアセトニトリル−メタノール溶液(CH3CN/MeOH=4/1、酢酸ヒドロコルチゾン濃度=10ng/ml)を3ml加えた後遠心し、(3000rpm、10分、4℃)得られた上清700μlに、蒸留水700μlを加え、メンブランフィルター(0.4μm)にてろ過した後、HPLCにて定量した。
HPLCの条件
カラム:Asahipak HIKARISIL C18(4.6×150mm) 流速:1.0ml/min
カラム温度:25℃
検出波長:240nm
移動相:Linear gradient
0min:20%アセトニトリル水溶液(20%CH3CN/H2O)
20min:50%アセトニトリル水溶液(50%CH3CN/H2O)
図11にマウス血漿中からのデキサメタゾン遊離の経時変化を示した。薬物複合体からのデキサメタゾンの遊離速度の順序は、遊離速度の大きい順に化合物(31)>(34)>(37)であり、これはリンカーであるアミノ酸の立体障害の大きさと相関が見られた。
また、該ポリエーテルにアミノ酸やペプチドなどのリンカーを介して薬理活性を有する化合物を結合させて薬物複合体として用いた場合、これを生体内に投与した際に、生体組織に認識されずに薬物を標的組織に送達することが可能になる。薬物複合体は、優れた薬物遊離速度の制御が可能であり、しかも結合前の薬物に比べ生理食塩水に対する溶解性が極めて向上し、溶解補助剤無しでの静脈内投与を可能とする効果を発揮する。
Claims (15)
- さらに、PEG換算重量平均分子量/PEG換算数平均分子量(Mw/Mn)が1.2〜2.5である請求項1に記載のポリエーテル。
- 薬理作用を有する基がリンカーと結合した基である請求項1又は2に記載のポリエーテル。
- リンカーがアミノ酸もしくはペプチドである請求項1〜3のいずれかに記載のポリエーテル。
- リンカーがGly,Ala,Leu,Ile,Phe,Gly−Gly,Ala−GLy,Gly−Ala,Leu−Gly,Gly−Leu,Ile−Gly,Gly−Ile,Phe−Gly,Gly−Phe,Gly−Gly−Gly,Gly−Phe−Gly,Phe−Gly−Gly,Gly−Gly−Phe,Gly−Gly−Phe−Glyから選択される請求項4に記載のポリエーテル。
- 薬理作用を有する基が分子中にアミノ基、カルボキシル基、または水酸基を有する請求項1〜5のいずれかに記載のポリエーテル。
- 薬理作用を有する基が抗腫瘍剤、抗炎症剤、酵素阻害剤、免疫抑制剤、免疫賦活剤、核酸または抗リウマチ剤である請求項1〜6のいずれかに記載のポリエーテル。
- 抗腫瘍剤がタキサン系抗腫瘍剤、アンスラサイクリン系抗腫瘍剤、白金系抗腫瘍剤、カンプトテシン、フッ化ピリミジン系代謝拮抗剤、ビンカアルカロイド系抗腫瘍剤、葉酸拮抗剤およびその誘導体から選択される請求項1〜7のいずれかに記載のポリエーテル。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のポリエーテルを含む薬物送達製剤。
- 請求項1におけるR1が水素又はナトリウムである生体内組織への薬物送達用担体。
- 請求項1におけるR1が水素あるいはナトリウムである薬剤、ペプチド、核酸および/又は蛋白を固定化するための担体。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のポリエーテルを静脈内より生体内に投与することによる治療方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のポリエーテルを疾患部位に投与することによる治療方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のポリエーテルを架橋してなる構造体を疾患部位に投与することによる治療方法。
- 薬物送達製剤の製造における請求項1〜8のいずれかに記載のポリエーテルの使用。
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