JP4420472B2 - 薬物複合体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体内に投与した場合、生体内における水酸基を有する薬物の薬物複合体からの遊離速度が制御される薬物複合体に関するものである。更に本発明は、抗腫瘍剤として有用なタキサン類の、水溶性が非常に低いという欠点を改良し、同時にタキサン類の血中からの消失を遅延させ、且つ腫瘍組織への移行性を高めるための新規な多糖タキサン類複合体を提供する。
【0002】
【従来の技術】
パクリタキセル(商品名:タキソール、米国、ブリストルマイヤーズ・スクイブ社製)は大平洋沿岸諸国のイチイ科樹木タキサスブレビホリア(Taxus brevifolia)の樹皮から抽出された天然物質であり、動物モデルを用いた抗腫瘍活性試験において優れた抗腫瘍活性をもつことが示されている。そして最近の研究によれば、パクリタキセルの抗腫瘍活性における作用機序はチューブリンの異常重合や有糸分裂の阻害を含む特異な作用機序であると説明されている。近年、卵巣ガン、乳ガン、大腸ガンおよび肺ガンを含む研究に関して、有望な成果が示されている。又、ドセタキセル(商品名:タキソテール、米国/仏国、ローヌプーランローラー社製)と呼ばれるパクリタキセルの半合成同族体も、良好な抗腫瘍活性をもつことが見い出されている。
【0003】
パクリタキセルを代表とするタキサン類の一つの欠点は、その水溶性が非常に低いことである。特にパクリタキセルは投与時、その難溶性のために、非水系医薬溶解補助剤中で配合しなければならない。現在使用されている溶解補助剤の一つはクレモホールEL(米国、シグマ社製)であり、これは過敏症など、それ自身が人に望ましくない副作用を示すことがある。それ故に、多数のパクリタキセルの水溶性誘導体に関する研究が実施され、例えば、タキサン類のホスホノオキシメチルエーテル誘導体に関する技術(日本国特開平7−149779号)、塩基性条件下に置くことにより除去されるカルボナート型およびエステル型プロドラッグの技術(Nature,365,464-466(1993))が知られている。しかし、プロドラッグとしては、未だ十分な展開がなされていないのが現状である。
【0004】
薬物の有する種々の欠点をその分子構造を化学的に修飾することにより改善しようとする技術において、薬物と遊離基を結ぶ結合様式の選択は、プロドラッグの効果を左右する重要な因子となっている(ドラッグデリバリーシステム、瀬崎仁編、日本国、南江堂)。酵素反応を利用して、プロドラッグから薬物へ復元する場合、一般にはエステラーゼ、アミダーゼ、カルバミダーゼなど生体内に広く分布する酵素が結合様式選定のための判断材料とされることになる。従って、薬物が水酸基を持つ場合にはカルボン酸エステル、リン酸エステルやアシロキシメチルエーテル、カルボキシル基を持つ場合にはエステルやアミドの構造が結合様式として屡々選択される。
【0005】
ところで、一般に高分子物質は多様な性状、機能を有し、生体との間に示される相互作用も低分子物質とは大きく異なっていることから、低分子量の薬物を高分子物質に結合させて、その生体内の挙動や細胞との相互作用を制御しようとする試みが数多くなされている。この場合も薬物と高分子物質の間の結合様式の選択がプロドラッグの効果を左右する重要な因子となっている。一般に、薬物と遊離基との結合は、それぞれの有する官能基どうしを直接結合するものが多く、薬物と遊離基の間にスペーサーを介在させる例は少ない。
【0006】
そういった中で、多糖高分子であるカルボキシメチル化したデキストランを担体として用いる技術については、薬物としてその構造にアミノ基を有する薬物であるドキソルビシンを使用し、そのアミノ基にカルボキシメチル化したデキストラン等を導入し用いる例(国際出願公開第WO94/19376号)が知られている。なお、ドキソルビシンはその構造中にアミノ基を有しており、ペプチドをスペーサーとして用いることにより、担体のカルボキシメチルデキストランのカルボキシル基とスペーサー、および薬物の結合は全てアミド結合により成り立っている。従って、血中においてアミド結合は極めて安定であるために、血中で薬物複合体からの薬物遊離速度は極めて小さい。又、水酸基を有する薬物に関しての薬物遊離に関する記載は無い。
【0007】
又合成高分子を担体として用いる技術については、薬物としてドキソルビシンを使用し、そのアミノ基にペプチドを介してヒドロキシプロピルメタクリルアミド誘導体の重合生成物と結合し、高分子体(HPMA)を調製し用いる例(J.Contr.Rel.,10,51-63(1989),J.Contr.Rel.,19,331-346(1992),Eur.J.Cancer,31A(suppl 5),S193(1995))が知られている。この場合も、薬物とスペーサー、並びにスペーサーと担体の間の結合はいずれもアミド結合である。又、担体が合成高分子であるために、生体内において担体が全く分解されない(代謝されない)ことが予想される。その結果、このような合成高分子を担体として用いた薬物複合体を生体内に投与した場合、担体が異物として生体内に長期間滞留することにより、蓄積毒性や抗原性の問題が生じる危険性がある。そこで、生体内に蓄積せず、速やかに排泄されうる程度の担体分子量としなければならない等の配慮が必要となる。
【0008】
又、同様の重合法により製造される合成高分子を担体として用いる例としては、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド誘導体モノマーの共重合により高分子体(HPMA)を調製し、水酸基を有する薬物であるパクリタキセルを薬物としてその水酸基にペプチド等を介して結合し、用いる例(USP 5,362,831)が知られている。この場合においても、同様に担体が合成高分子であるために、生体内において担体が全く分解されないことが予想される。その結果、このような合成高分子を担体として用いた薬物複合体を生体内に投与した場合においても、担体が異物として生体内に長期間内滞留することにより、上記と同様、蓄積毒性や抗原性の問題が生じる危険性がある。そこで、生体内に蓄積せず、速やかに排泄されうる程度の担体分子量としなければならない等の配慮が必要となる。
【0009】
更に、合成高分子としてカルボキシル基を導入したポリエチレングリコール(以降PEG−COOHとする)を用いる例としては、薬物として水酸基を有する薬物であるパクリタキセルを用い、その水酸基に直接エステル結合を介してPEG−COOHを結合させる方法(Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,Vol.4,No.20,2465-2470(1994))が知られている。この場合、このPEG−COOHと結合させることによるプロドラッグ化によりパクリタキセルの水溶性は向上したが、緩衝液中では安定なものの特に血中においてこのエステル結合が速やかに分解されるために、高分子化修飾による薬物送達の目的には適さない。
この様に、担体と薬物を化学結合させて薬物送達を行う技術については、特にエステル結合により薬物と担体を結合する場合、生体内に存在するエステラーゼ等によるエステル結合切断の速度が極めて早いため、薬物複合体からの薬物遊離速度の制御という問題に関しては、まだ十分に解決されていないのが現状である。
【0010】
[発明の概要]
かかる状況下において、本発明者等は、薬物にスペーサーを導入し、薬物に導入されたスペーサーを担体に結合させることによって得られる薬物複合体からの薬物遊離速度が制御される薬物複合体を開発すべく鋭意研究を行った。
その結果、意外にも、本発明者等は、水酸基を有する薬物の水酸基に、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物であるスペーサーをエステル結合を介して導入し、薬物に導入されたスペーサーをカルボキシル基を有する担体にアミド結合を介して結合させた薬物複合体が、薬物複合体からの薬物遊離速度が制御されることを見い出した。
又、上記の薬物複合体において、スペーサーとして、特定の範囲のEs値を有する置換基Xをカルボキシル基に対するα位に有するスペーサーを選択することにより、薬物複合体からの薬物遊離速度が特に効果的に制御されることを見い出した。
【0011】
更に、タキサン類などの水に難溶性で水酸基を有する薬物の水酸基に、分子中にアミノ基とカルボキシル基を有する化合物であるスペーサーをエステル結合により導入し、薬物に導入されたスペーサーを担体であるカルボキシアルキルデキストランと結合させることにより調製した薬物複合体が、特に特定の範囲のEs値を有する置換基Xをカルボキシル基に対するα位に有するスペーサーを選択することにより、生体内における薬物複合体からの薬物遊離速度を制御しうるのみならず、薬物の水に対する溶解性を著しく高め、腫瘍組織などの標的組織への薬物の移行を高めることのできるのみならず、薬物遊離速度を制御して、薬物の効果発現の強さを制御しうることを見い出した。
更に又、薬物としてパクリタキセル等のタキサン類を使用した場合、タキサン類の2’位又は7位の水酸基にスペーサーをエステル結合により導入し、担体としてカルボキシアルキルデキストランを用いると、タキサン類の水に対する溶解性を著しく高め、更に血中消失速度を小さくし、腫瘍組織への薬物の移行を高め、薬効を増強することのできることを見い出した。
【0012】
更に、1級水酸基を有するステロイド、例えば、ベタメタゾン、プレドニゾロン等の1級水酸基に対し、担体として文献Chem.Pharm.Bull.42(10)2090-2096(1994)に報告されている様なカルボキシアルキル単糖もしくは酢酸、プロピオン酸といった脂肪族カルボン酸を直接エステル結合により導入し調製した化合物においては、薬物であるステロイドが生体内において極めて速やかに遊離してしまうが、ステロイドの1級水酸基に、アミノ酸のようなスペーサーを、エステル結合により導入し、カルボキシアルキル単糖あるいは脂肪族カルボン酸のような担体に結合させることにより調製した薬物複合体は、特に特定の範囲のEs値を有する置換基Xをカルボキシル基のα位に有するスペーサーを選択することにより、生体内における薬物複合体からの薬物遊離速度が制御されることを見い出した。
【0013】
又、水酸基を有する薬物の水酸基に、担体としてPEG−COOHを結合させる場合、従来の手法では、緩衝液中では薬物遊離の半減期が3時間以上と安定なものの、ラットおよびヒト血漿中における半減期が十分ではなく(J.Med.Chem.,39,1938−1940(1996))、速やかな薬物遊離が見られるのに対し、水酸基を有する薬物の一例であるパクリタキセルの水酸基にアミノ酸のようなスペーサーをエステル結合により導入し、その後スペーサーのアミノ基とPEGのカルボキシル基とアミド結合により結合させることにより調製した薬物複合体は、特に特定の範囲のEs値を有する置換基Xをカルボキシル基に対するα位に有するスペーサーを選択することにより、生体内における薬物複合体からの薬物遊離速度が制御されることを見い出した。
【0014】
本発明は、上記の諸知見に基づいて完成されたものである。
従って、本発明の一つの目的は、薬物複合体であって、該薬物複合体からの薬物遊離速度が確実に制御されて、薬物の標的組織への移行を高めたり、あるいは又薬物の薬効を増強することのできる薬物複合体を提供することにある。
本発明の他の一つの目的は、薬物としてタキサン類を用いる薬物複合体であって、水に難溶性のタキサン類の水溶性を著しく高めると共に、薬物複合体からのタキサン類の遊離速度が確実に制御されて、タキサン類の標的組織への移行を高めたり、あるいは又タキサン類の薬効を増強することのできる薬物複合体を提供することにある。
本発明の更に他の一つの目的は、上記の薬物複合体を含有してなる薬剤を提供することにある。
本発明の上記及び他の諸目的、諸特徴並びに諸利益は、添付の図面を参照しながら述べる次の詳細な説明及び請求の範囲の記載から明らかになる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
基本的には、本発明によれば、水酸基を有する薬物の薬物複合体であって、血中における薬物複合体からの薬物遊離速度が制御でき、
(A)少なくとも1つのカルボキシル基を有する糖類、少なくとも1つのカルボキシル基を有するポリエチレングリコール、少なくとも1つのカルボキシル基を有する直鎖状または分岐状C2〜C8脂肪族カルボン酸、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1つの担体;
(B)少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物よりなる少なくとも1つのスペーサー;及び
(C)水酸基を有する少なくとも1つの薬物
を包含してなり、
該薬物(C)の水酸基と該スペーサー(B)のカルボキシル基との間に形成されたエステル結合を介して、該少なくとも1つの薬物(C)が、該少なくとも1つのスペーサー(B)と結合することにより少なくとも1つの薬物−スペーサーブロックを形成し、該少なくとも1つの薬物−スペーサーブロックの該スペーサー(B)のアミノ基と、該担体(A)の少なくとも1つのカルボキシル基との間に形成されたアミド結合を介して、該少なくとも1つの薬物−スペーサーブロックが該少なくとも1つの担体(A)の少なくとも1つのカルボキシル基と結合している、薬物複合体が提供される。
【0016】
【課題を解決するための手段】
次に、本発明の理解を容易にするために、まず本発明の基本的諸特徴及び好ましい態様を列挙する。
1.下記(1)式で表わされるタキサン類の複合体であって、担体(A)とスペーサー(B)とは(A)のカルボキシル基と(B)のアミノ基との間に形成されたアミド結合を介して結合し、スペーサー(B)とタキサン類(C)は(B)のカルボキシル基と(C)の2’あるいは7位の水酸基との間に形成されたエステル結合を介して結合していることを特徴とする薬物複合体。
(A)−(B)−(C) (1)
(式中、(A)はカルボキシアルキルデキストラン、(B)はグリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンから選ばれるアミノ酸あるいはペプチドよりなるスペーサー、(C)はタキサン類を表わす。)
【0017】
2.前記タキサン類(C)が下記(2)式で表されるタキサン類であり、前記担体(A)が下記(3)式で表されるカルボキシアルキルデキストランであることを特徴とするタキサン類とカルボキシアルキルデキストランを含む前項1に記載の薬物複合体。
【化5】
(式中、R 1 はC 1 〜C 6 アルキル基、C 1 〜C 6 アルケニル基、C 2 〜C 6 アルキニル基、C 1 -C 6 直鎖状又は分岐状アルコキシ基又は置換又は無置換フェニル基であり;R 2 は水素、水酸基又はアセチルオキシ基であり;R 3 又はR 4 の一方が水素で他方が水酸基;あるいはR 3 とR 4 が一緒になってオキソ基を形成し;R 5 又はR 6 の一方が水素で他方が水酸基を表わす。)
【0018】
【化6】
(式中、R 7 、R 8 及びR 9 は、同一又は異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、−(CH 2 ) m −COOH基、−CH(CH 3 )−COOH基、−CH 2 CH(CH 3 )−COOH基又は−CH(CH 3 )CH 2 −COOH基を表わし、mは1〜4の整数を表わし、nは50<n<1000の整数を表わす。)
【0019】
3.前記タキサン類(C)がパクリタキセルであることを特徴とする前項1または2に記載の薬物複合体。
4.前記タキサン類(C)がドセタキセルであることを特徴とする前項1または2に記載の薬物複合体。
5.前項1〜4のいずれかに記載の薬物複合体を含有してなることを特徴とする抗腫瘍剤。
【0020】
6.薬物複合体として、
下記(1)式で表わされるタキサン類の複合体であって、担体(A)とスペーサー(B)とは(A)のカルボキシル基と(B)のアミノ基との間に形成されたアミド結合を介して結合し、スペーサー(B)とタキサン類(C)は(B)のカルボキシル基と(C)の2’あるいは7位の水酸基との間に形成されたエステル結合を介して結合していることを特徴とする薬物複合体
(A)−(B)−(C) (1)
(式中、(A)はカルボキシアルキルデキストラン、(B)はグリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンから選ばれるアミノ酸あるいはペプチドよりなるスペーサー、(C)はタキサン類を表わす。)を使用し、
スペーサー(B)のカルボキシル基に対するα位の置換基Xの、下記式(I)によって定義される酸加水分解における立体障害パラメータ(Es)値が−0.0〜−2.5であり、該立体障害パラメータ(Es)値に対応したアミノ酸またはペプチドを選択することにより薬物複合体からのタキサン類遊離速度を制御することを特徴とする薬物遊離速度調整方法。
Es=log(k X /k H ) (I)
[式中、k X は、次の反応式で表されるα位モノ置換酢酸エステルの酸加水分解反応における反応速度定数であり、
X−CH 2 COOR X +H 2 O→X−CH 2 COOH+R X OH
(Xは上に定義したとおりであり、R X は、C 1 〜C 18 のアルキル基又はC 1 〜C 18 のアリール基である)
k H は、次の反応式で表される、上記のα位モノ置換酢酸エステルに対応する酢酸エステルの酸加水分解反応における反応速度定数である。
CH 3 COOR y +H 2 O→CH 3 COOH+R y OH
(R y は、R X と同じである)]
【0021】
7.前記タキサン類(C)が下記(2)式で表されるタキサン類であり、前記担体(A)が下記(3)式で表されるカルボキシアルキルデキストランであることを特徴とするタキサン類とカルボキシアルキルデキストランを含む前項6に記載の薬物遊離速度調整方法。
【化7】
(式中、R 1 はC 1 〜C 6 アルキル基、C 1 〜C 6 アルケニル基、C 2 〜C 6 アルキニル基、C 1 -C 6 直鎖状又は分岐状アルコキシ基又は置換又は無置換フェニル基であり;R 2 は水素、水酸基又はアセチルオキシ基であり;R 3 又はR 4 の一方が水素で他方が水酸基;あるいはR 3 とR 4 が一緒になってオキソ基を形成し;R 5 又はR 6 の一方が水素で他方が水酸基を表わす。)
【0022】
【化8】
(式中、R 7 、R 8 及びR 9 は、同一又は異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、−(CH 2 )m−COOH基、−CH(CH 3 )−COOH基、−CH 2 CH(CH 3 )−COOH基又は−CH(CH 3 )CH 2 −COOH基を表わし、mは1〜4の整数を表わし、nは50<n<1000の整数を表わす。)
【0023】
8.前記タキサン類(C)がパクリタキセルであることを特徴とする前項6または7に記載の薬物遊離速度調整方法。
9.前記タキサン類(C)がドセタキセルであることを特徴とする前項6または7に記載の薬物遊離速度調整方法。
【0024】
タキサン類の具体例としては、下記式(4)式で表わされるパクリタキセル(商品名:タキソール、米国、ブリストルマイヤーズ・スクイブ社製)、および下記式(5)式で表わされるドセタキセル(商品名:タキソテール、米国/仏国、ローヌプーラシローラー社製)を挙げることができる。更に、それらの誘導体も本発明によるタキサン類に含まれる。
【化9】
【化10】
【0025】
本発明におけるスペーサーは、分子中に少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物からなり、又、臓器内の酵素(例えばプロテアーゼ、ペプチダーゼ、エステラーゼ)による作用で、薬物又はその活性分子種が速やかに、場合によっては徐々に遊離するものでなければならない。そのようなスペーサーの例としては、蛋白質構成アミノ酸、蛋白質非構成アミノ酸、それらのアミノ酸がペプチド(アミド)結合により連結したペプチドが挙げられる。
本発明中において、蛋白質構成アミノ酸とは、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン等の、蛋白質の通常の構成成分であるアミノ酸を意味する。又蛋白質非構成アミノ酸とは、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、ピログルタミン酸、β−シクロヘキシルアラニン、β−アラニン、ε−アミノカプロン酸、γ−アミノ酪酸など、通常蛋白質の構成成分でないアミノ酸を意味する。
【0026】
本発明におけるスペーサーとして、そのカルボキシル基に対するα位に置換基Xを有する化合物が用いられる場合、本発明の薬物複合体からの薬物遊離速度は、置換基Xによる立体障害の大きさに大きな影響を受ける。従って、立体障害の大きさが特定の範囲にある置換基Xをカルボキシル基に対するα位に有するスペーサーを選択することにより、薬物複合体からの薬物遊離速度を制御することができる。
一般に、化学反応が起こる際、その反応中心に近接した置換基があると、その置換基が反応の進行にさまざまな影響を及ぼす。そのうちの一つが立体障害であり、反応中心に近接した嵩高い置換基Xの存在が、化学反応の進行が妨げる事を言う。立体障害は、反応中心に近接した嵩高い置換基Xが、試薬の反応中心への接近を妨げるために生じると考えられている。立体障害の大きさは、置換基Xの嵩高さに支配される。
【0027】
置換基の立体障害の大きさを数値化したものに、タフト等が定義したEs値が知られている[American Chemical Society Professional Reference Book,’Exploring QSAR’,C.Hansh A.Leoら著、S.R.Hell編集]。例えば、このEs値が特定の範囲にある置換基Xをカルボキシル基に対するα位に有するスペーサーを選択することにより、薬物複合体からの薬物遊離速度が効果的に制御される。以下、Es値について説明する。
様々な実験結果より、酸性条件下でのエステルの加水分解反応においては、置換基が反応の進行に対して及ぼす影響は立体障害だけと考えてよいことが知られており、この事を利用して置換基の立体障害を数値化したものがEs値である。
置換基XのEs値は、次の化学反応式
X−CH2COORX+H2O→X−CH2COOH+RXOH
(Xは上に定義した通りであり、RXは、C1〜C18のアルキル基又はC6〜C18のアリール基である)
で表わされる、酢酸のメチル基の水素原子1つを置換基Xで置換したα位モノ置換酢酸から誘導されるα位モノ置換酢酸エステルを酸性条件下で加水分解する際の反応速度定数kXと、次の化学反応式
CH3COORy+H2O→CH3COOH+RyOH
(RyはRXと同じである)
で表わされる、上記のα位モノ置換酢酸エステルに対応する酢酸エステルを酸性条件下で加水分解する際の反応速度定数kHから、下記式(1)で求められる。
Es=log(kX/kH) (1)
置換基Xの立体障害により、反応速度は低下し、その結果kX<kHとなるので、Es値は通常負となる。
【0028】
実際にEs値を求める場合には、上記の二つの反応速度定数kXがkHを求め、上記の式により算出する。実測に基づくEs値の具体的な例が、上記の成書American Chemical Society Professional Reference Book,’Exploring QSAR’p.81 Table 3-3に記載されている。次にその一部を示す。
置換基Xの種類 Es値
H 0(基準)
CH3 −1.24
CH2C6H5 −1.61
CH2CH(CH3)2 −2.17
CH(CH3)CH2CH3 −2.37
【0029】
本発明のスペーサーとして蛋白質構成アミノ酸を用いる場合、上記の置換基をカルボキシル基に対するα位に有するアミノ酸はそれぞれGly、Ala、Phe、Leu、Ileである。このうち例えば、Gly、Ala、Leu、Ileについて、カルボキシル基に対するα位の置換基のEs値が大きい順に並べると、Ile>Leu>Ala>Glyであり、この順序で置換基の立体障害は小さくなってゆくことになる。そして、この置換基の立体障害の大きさと、本発明の薬物複合体からの薬物遊離速度には相関が見られる。
例えば、スペーサーが蛋白質構成アミノ酸であるGly、Ala、Leu又はIleであり、薬物がパクリタキセルであり、担体がカルボキシメチルデキストランからなる薬物複合体の場合、スペーサーとして用いた蛋白質構成アミノ酸を生体内における薬物複合体からの薬物遊離速度の大きい順に並べると、Gly>Ala>Leu>Ileであり、スペーサーがGly又はPheで、それ以外は前記と同じである薬物複合体の場合、GlyとPheを薬物複合体からの薬物遊離速度の大きい順に並べるとGly>Pheであった。従って、スペーサーのカルボキシル基に対するα位の置換基のEs値、すなわち、立体障害の大きさと薬物遊離速度の間に相関が見られた。
【0030】
例えば、スペーサーが蛋白質構成アミノ酸であるGly、Ala、Leu又はIleであり、薬物がデキサメタゾンであり、担体がプロピオン酸からなる薬物複合体の場合、スペーサーとして用いた蛋白質構成アミノ酸を生体内における薬物複合体からの薬物遊離速度の大きい順にGly>Ala>Leu>Ileであった。従って、スペーサーのカルボキシル基に対するα位の置換基のEs値、すなわち、立体障害の大きさと薬物遊離速度の間に相関が見られた。
更に、スペーサーがペプチドGly−Phe又はPhe−Glyであり薬物がパクリタキセルであり、担体がカルボキシメチルデキストランからなる薬物複合体の場合、スペーサーとして用いたペプチドを生体内における薬物複合体からの薬物遊離速度の大きい順に並べるとPhe−Gly>Gly−Pheであった。従って薬物遊離速度は薬物に直接結合するアミノ酸のカルボキシル基に対するα位の置換基のEs値、すなわち、立体障害の大きさと薬物遊離速度の間に相関が見られた。
【0031】
従って、スペーサーがペプチド等であっても、薬物遊離速度を制御するためには、薬物の水酸基に直接結合するスペーサーのカルボキシル基に対するα位の置換基の立体障害の大きさが重要である。
本発明における担体は、少なくとも1つのカルボキシル基を有する糖類、少なくとも1つのカルボキシル基を有するポリエチレングリコール、少なくとも1つのカルボキシル基を有する直鎖状又は分岐状C2〜C8脂肪族カルボン酸、及びそれらの誘導体よりなる群から選ばれる。
本発明における少なくとも1つのカルボキシル基を有する糖類又はその誘導体は、少なくとも1つのカルボキシル基を有する限り特に限定されないが、特にカルボキシアルキルデキストランが好ましい。
【0032】
本発明におけるカルボキシアルキルデキストランは、デキストランの一部もしくは全部の水酸基の水素原子がカルボキシアルキル基で置換された構造を有し、下記式(3)を主構成単位として構成されるものであり、又、分枝を含んでいてもよい。
【化11】
(式中、R7、R8およびR9は同一であっても異なっていてもよく、各々独立に水素原子、あるいは−(CH2)m−COOH基、−CH(CH3)−COOH基、−CH2CH(CH3)−COOH基又は、−CH(CH3)CH2−COOH基からなる群より選ばれるカルボキシアルキル基であり、mは1〜4の整数であり;nは50〜1000の整数であり、カルボキシアルキル基の数のnに対する比は0.1〜2.0である。)
【0033】
カルボキシアルキル基の好ましい例としては、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシn−プロピル基、カルボキシイソプロピル基、カルボキシn−ブチル基などが挙げられる。
上記において、カルボキシアルキル基の導入の程度は、糖残基一つあたりのカルボキシアルキル基の数(ペプチドが更にこれらに導入されたカルボキシアルキル基の数も含む)として定義される「置換度」によって表わすことができる。すなわち、カルボキシアルキル化したデキストランにおける置換度=(分子中のカルボキシアルキル基の総数)/(分子中の糖残基の総数)、と表わすことができる。なお、以下この置換度を、カルボキシアルキル基がカルボキシメチル基である場合には「カルボキシメチル化度」と、言うことがある。カルボキシアルキルデキストランの場合、全ての水酸基が置換された場合には置換度は3である。本発明によれば、その置換度は、0.1以上が好ましく、体内動態の面から、更に好ましくは、0.1〜2.0である。
【0034】
本発明において担体として好ましく用いられるカルボキシアルキルデキストランは、デキストランの水酸基にカルボキシアルキル基を導入することによって得ることができる。例えば、デキストランをアルカリ(例えば溶媒として水を用いる場合には重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア水、水酸化ナトリウム等、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシド等を用いる場合にはピリジン又はトリエチルアミン等)の存在下で溶解し、モノクロロ酢酸を加え氷冷〜室温の温度下で、数分〜数日間かけて反応させた後、反応液のpHを酢酸などの酸を加えることにより8に調整し、エタノール中に滴下することにより、カルボキシメチルデキストランを析出沈殿として得ることができる。この場合、反応溶媒、反応時間、反応温度ならびにモノクロロ酢酸およびアルカリの添加量を変化させることにより「置換度」を調節することができる。
【0035】
本発明におけるカルボキシル基を有するポリエチレングリコールおよびその誘導体は、分子量が1000〜40000の範囲にあるものが、好ましい。
本発明におけるスペーサーを薬物に導入する場合について以下に述べる。ここでスペーサーの薬物への導入は、スペーサーのカルボキシル基と、薬物の水酸基とをエステル結合を介することによって行う。なお、薬物とスペーサーとを反応させる場合、合成過程における薬物活性の低下や、担体が高分子の場合担体の架橋、凝集を防ぐために、反応条件はできるだけ穏和な条件であることが望ましく、こうした観点から、ペプチド合成に用いられている方法を採用することが望ましい。
【0036】
薬物の水酸基にスペーサーを導入する場合、この反応は、通常の有機合成反応に用いられる塩化メチレン、N,N’−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン等の溶媒を、薬物その他の反応物を溶解させるに足る量を用い、場合によって適当な縮合剤、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、塩酸1−エチル−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン等を薬物に対して等モル量用いることによって、さらに必要に応じて、N,N−ジメチルアミノピリジンを薬物に対して等モル量あるいは触媒量を添加することにより、室温あるいは必要に応じて加熱下、必要に応じてアルゴン、ヘリウム等の乾燥不活性ガス雰囲気下、常圧にて、数時間から数日間反応させることにより、薬物の水酸基にスペーサーの導入を行うことが出来る。さらに、副反応を起こす恐れのあるスペーサーのアミノ基は、Fmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基)、Trt(トリフェニルメチル基)(トリチル基))、Z(ベンジルオキシカルボニル基)等のペプチド合成に用いられる保護基で、カルボキシル基は、ベンジルエステル、第三ブチルエステルあるいはフェナシルエステル等のペプチド合成に用いられる保護基で、さらに水酸基はベンジルエーテル、第三ブチルエーテル等のペプチド合成に用いられる保護基を用いて保護しておくことが望ましい。
【0037】
次に、薬物に導入されたスペーサーを担体に導入する場合について以下に述べる。
スペーサーのアミノ基に導入された保護基をペプチド合成に用いられる手法、例えば、Z基を用いた場合はパラジウム存在下、水素添加すること等により脱保護し、Fmoc基を用いた場合は、ピペリジン等で処理することにより、Trt基を用いた場合には、酢酸等で処理することにより、脱保護する。
その後薬物に導入されたスペーサーを、スペーサーのアミノ基を用いて、カルボキシル基を有する担体に結合させる場合、この反応は、一般的な有機合成反応に用いる塩化メチレン、N,N’−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン等の溶媒を用いても良いし、特に担体が水溶性である場合には、水とN,N’−ジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシド等の親水性の有機溶媒との混合溶媒を必要量用い、場合によって適当な縮合剤、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、塩酸1−エチル−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン等を必要量用いることによって、室温もしくは4℃、常圧下で数時間から数日間の反応時間により行うことができる。又、薬物の導入量は、担体に対する薬物に導入されたスペーサーの量を変えることにより、あるいは反応時間を変えることにより、又あるいは用いる縮合剤の量を変えることにより制御できる。
【0038】
本発明において、カルボキシル基を有する担体と水酸基を有する薬物とを結合するためのスペーサーとしては、その末端にアミノ基を有し、他端にカルボキシル基を有している物であればよく、その一例である、ペプチドについて以下に示す。
本発明において用いられるスペーサーとしてのペプチドは、薬物放出特性を考慮して、又その合成工程の煩雑さを考慮するとアミノ酸の数が6以下であるペプチドがより好ましく、更に好ましくは4以下である。又、「アミノ酸を含んでなるペプチド」とは、このペプチドがアミノ酸のみからなる場合に加えて、ペプチドの一部にアミノ酸以外の化合物を含む場合も包含する。例えば、コハク酸のような二塩基カルボン酸がペプチドの中に又は末端に存在していてもよい。又、このペプチドを構成するアミノ酸は、蛋白質構成アミノ酸をはじめとするα−アミノ酸の他に、β−アラニン、ε−アミノカプロン酸、γ−アミノ酪酸などのα−アミノ酸以外のアミノ酸であってもよい。又、ペプチドの結合方法は、担体のカルボキシル基とペプチドのN末端におけるアミノ基とのアミド結合によって結合しているのが通常であるが、二つのアミノ基を有するアミノ酸のうちの一方のアミノ基(例えば、ペプチド中にリジンが存在する場合にはそのε−アミノ基)を担体のカルボキシル基と結合させ、他のアミノ基にペプチドのC末端を結合させることによってペプチドの結合方向を逆転させ、更にそのペプチドのN末端にカルボキシル基を二つ有するアミノ酸、例えばグルタミン酸の一方のカルボキシル基を結合させ、他の一方のカルボキシル基に薬物を結合させてもよい。
ペプチドを構成するアミノ酸の種類については特に限定されないが、臓器内での酵素(例えばプロテアーゼ、ペプチダーゼ、エステラーゼ)による作用で、薬物が速やかに、場合によっては徐々に遊離されるものでなくてはならない。ペプチドを構成するアミノ酸は中性アミノ酸、塩基性アミノ酸および酸性アミノ酸のいずれであってもよい。本発明の好ましい態様によれば、−Phe−Gly−および鎖中にこの配列を含むペプチド等が挙げられる。これらのペプチドのN末端側のアミノ基が、アミド結合によって、担体のカルボキシル基と結合する。
【0039】
次に、ペプチドをタキサン類に導入する場合について以下に述べる。ここでペプチドへのタキサン類の導入は、ペプチドのC末端と、タキサン類の2’位又は7位の水酸基とをエステル結合を介して結合させることによって行う。
タキサン類の2’位の水酸基にペプチドを導入する場合には、適当な縮合剤、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、塩酸1−エチル−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン等を用いることによって直接2’位にペプチドを導入することが出来る。なお、タキサン類とペプチドとを反応させる場合、ペプチドの副反応を起こす恐れのあるN末端および側鎖官能基をFmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基)、Trt(トリフェニルメチル基(トリチル基))、Z(ベンジルオキシカルボニル基)等のペプチド合成に用いられる保護基で保護しておくことが望ましい。
タキサン類の7位の水酸基にペプチドを導入する場合には、まず2’位の水酸基を、例えばペプチド合成でよく用いられる、Zの様な適当な保護基を用いて保護し、次いで、7位の水酸基に目的とするペプチドを上述の方法と同様の方法で導入する。保護ペプチドを導入後、例えば、水素添加、弱酸、弱塩基といったタキサン類が分解しない様な反応条件で、保護基を除去することが望ましい。
【0040】
つぎに、タキサン類の2’位又は7位の水酸基に導入されたペプチドをカルボキシアルキルデキストランに結合させる場合、この反応は、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドといった極性溶媒と水との混合溶媒を用い、場合によって適当な縮合剤、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、塩酸1−エチル−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロフォスフェート(HATU)等を用いることによって行うことができる。
本発明の、薬物が水酸基を有し、スペーサーがアミノ基とカルボキシル基を有し、担体がカルボキシル基を有する薬物複合体について、薬物導入率、投与方法を述べる。
担体への薬物導入率は、薬物の種類によって適宜選択されるが、担体の好ましい生体内動態を薬物複合体に反映させるために、一般的には、薬物複合体に対して、1〜30重量%が好ましく、1〜15重量%が特に好ましい。
この様にして得た複合体は、元の薬物と同様の方法で使用することが出来る。
【0041】
本発明の薬物複合体の投与用量、形態、スケジュールは特に制約を受けるものではなく、又用いる特定の薬物複合体によって変動することがありうる。本発明の薬物複合体は、どの様な適宜な投与経路によって投与されてもよいが、好ましくは、非経口投与であり、その投与量は、製剤の組成、投与の経路及び部位、宿主及び治療する疾患の種類によって変化しうる。更に、年齢、体重、性別、食事及び患者の体調などを含む薬剤の作用を変化させる多くの要素が、投与量設定の場合には考慮されねばならない。
本発明の一例である、薬物がパクリタキセルであり、スペーサーがアミノ酸又はペプチドであり、担体がカルボキシアルキルデキストランである薬物複合体について、薬物導入率、溶解度、投与方法を述べる。
【0042】
カルボキシアルキルデキストランへのパクリタキセルの導入率は、担体であるカルボキシアルキルデキストランの好ましい生体内動態を薬物複合体に反映させるために、一般的には、薬物複合体に対して、1〜30重量%が好ましく、1〜10重量%が特に好ましい。
この様にして得たカルボキシアルキルデキストラン、スペーサー、及びパクリタキセルとからなる複合体は、パクリタキセルに比べて極めて優れた水溶性を示した。すなわち、パクリタキセルの溶解度は<0.004mg/mlであると報告されているが(Nature,365,464−466(1993))、本複合体の溶解度をパクリタキセルの溶解度に換算すると1.6mg/ml以上である。従って、抗腫瘍効果の評価実験を実施する場合、本複合体を溶解する際に、溶解補助剤は不要であり、直接生理食塩水に溶解し、静脈内投与することが可能である。
【0043】
本発明の薬物複合体は、元の薬物の場合と同様な方法で使用することが出来る。本発明の薬物複合体の投与用量、形態、スケジュールは特に制約を受けるものではなく、又用いる特定の薬物複合体によって変動することがありうる。本発明の薬物複合体は、どのような適宜な投与経路によって投与されてもよいが、好ましくは、非経口投与であり、その投与用量は、薬物がパクリタキセルの場合、一般には成人一日当り、パクリタキセルの量に換算して約20〜約1000mg/m2体表面積程度である。使用する実際の用量は製剤の組成、投与の経路及び部位、宿主及び治療する腫瘍の種類によって変化しうる。更に、年齢、体重、性別、食事及び患者の体調などを含む薬剤の作用を変化させる多くの要素が、投与量設定の場合には考慮されねばならない。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下に実施例、参考例及び実験例により本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
又、実施例中の化合物番号は後述する合成過程を示すスキーム中に示された番号である。
更に以下の実験例において、多糖誘導体のカルボキシメチル化度は、アルカリ滴定によって求めた。又、薬物の導入量(重量%)は、薬物の吸光度分析(254nm)から求めた。更にゲル濾過法は以下の条件によって行った(カラム:日本国、東ソー株式会社製TSKGel G4000PWXL、溶離液:0.1M NaCl、流速:0.8ml/min、カラム温度:40℃、試料注入量:約50μg)。高分解能質量スペクトル(以降単にHRMSとする)はマトリックスとしてグリセリン又はグリセリンと3−ニトロベンジルアルコールの混合物を用い、高速原子衝撃質量分析法(FAB−MS)により、日本国、日本電子株式会社製JMSHX−110型質量分析装置を用いて測定した。
以下の参考例および実施例では次の略号を使用する。DMF:N,N−ジメチルホルムアミド、Trt:トリフェニルメチル基(トリチル基)、Z:ベンジルオキシカルボニル基、Fmoc:9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、PEG:ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル分子量5,000、tBuOK:Potassium t-butoxide,DMSO−d6:重水素化ジメチルスルホキシド
【0045】
【実施例】
実施例1
(工程1)カルボキシメチル化デキストランナトリウム塩(1)の製造
精製水200mlに氷冷下、水酸化ナトリウム(40g)を加え、ついでデキストラン(仏国、エクストラシンテーゼ社製:T110、10g)を加え溶解した。この溶液に対し、室温下、モノクロロ酢酸(50g)を加え、20時間反応させた。この反応液のpHを酢酸を用いて8に調整し、メタノール(1.51)に注加し、生じた沈殿を集め、精製水(200ml)に溶解した。透析膜(分子量カットオフ12,000−14,000、米国、スペクトラム社製)を用い、この水溶液を精製水に対して4℃で2日間透析した。この内液をメンブランフィルター(0.22μm)にて濾過した後、凍結乾燥した。表記化合物(1)(11.5g)を得た。この物質の糖残基当たりのカルボキシメチル化度は0.6であった。又本化合物のゲル濾過溶出パターン(検出:214nmにおける紫外吸光度および屈折率)は、それぞれ図1および図2に示されるとおりである。本化合物の、プルランを標準とするゲル濾過法による分子量は、約15万であった。
【0046】
(工程2)2’−Gly−パクリタキセル(2)の製造
Fmoc−Gly(178mg、0.6mmol)および、ジメチルアミノピリジン(73mg、0.6mmol)およびパクリタキセル(インド国、DABUR社製、427mg、0.5mmol)を塩化メチレン(20ml)に溶解した。次いで、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(76mg、0.6mmol)を加え室温で終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/アセトニトリル=70/30)で精製し、2’−Fmoc−Gly−パクリタキセル(499mg)を得た。この化合物(420mg)をN,N−ジメチルホルムアミド(10ml)に溶解し、室温下ピペリジン(2ml)を加え、5分間撹拌し、溶媒を留去して、脱Fmoc化し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×50cm、溶離液:アセトニトリル/塩化メチレン=80/20)で精製し、標記化合物(2)(141mg)を得た。
【0047】
1H−NMR(DMSO−d6):δ1.01(s,3H,Me−17)1.05(s,3H,Me−16)1.52(dd,1H,J=14.6,9.2Hz,H−14b)1.51(s,3H,Me−19)1.65(t,1H,J=11.6Hz,H−6b)1.81(dd,1H,J=15.5,9.6Hz,H−14a)1.86(s,3H,Me−18)2.11(s,3H,Ac−10)2.23(s,3H,Ac−4)2.32(m,1H,H−6a)3.58(d,1H,J=7.0Hz,H−3)3.96〜4.07(m,3H,GlyCH2,H−20)4.10(dd,1H,J=6.7,10.7,H−7)4.63(s,1H,OH−1)4.90(brs,1H,OH−7)4.91(dd,1H,J=4.9Hz,H−5)5.43(d,1H,J=7.0,H−2)5.46(d,1H,J=8.2Hz,H−2’)5.58(t,1H,J=8.4Hz,H−3’)5.87(t,1H,J=8.6Hz,H−13)6.30(s,1H,H−10)7.19〜8.00(aromatic,15H)8.40(brs,2H,GlyNH2)9.25(d,1H,J=8.6Hz,CONH−3’)
HRMS:m/z 911.3604(M+H)+:C49H55O15N2としての計算値 911.3602
【0048】
(工程3)カルボキシメチル化デキストラン−2’−Gly−パクリタキセル(3)の製造
工程1で得た、カルボキシメチル化デキストランナトリウム塩(1)(100mg)を水2mlに溶解し、氷冷下、この溶液にN,N−ジメチルホルムアミド2mlを加えた。この溶液に工程2で得た、2’−Gly−パクリタキセル(2)(30mg)を溶解した水:N,N−ジメチルホルムアミド(1:1)混合液(0.5ml)および1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(100mg)を溶解したN,N−ジメチルホルムアミド(0.5ml)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液をエタノール(100ml)に注加し、生じた沈殿を集め、精製水(10ml)に溶解した。この水溶液をエタノール(100ml)に注加し、生じた沈殿をアセトンおよびエーテルで洗浄し、白色非晶質の標記化合物(3)(105mg)を得た。
本複合体の薬物の導入量は、254nmにおける紫外吸光度および複合体の総重量から算出したところ、3.7%(重量%)であった。本複合体のゲル濾過溶出パターン(検出:227nmにおける紫外吸光度)と紫外部吸光スペクトルはそれぞれ図3、図4に示されるとおりである。
【0049】
(工程4)プロパノイル−2’−Gly−パクリタキセル(4)の製造
プロピオン酸(7.4mg,0.1mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド2mlに溶解し、この溶液に工程2で得た、2’−Gly−パクリタキセル(2)(45mg,0.05mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(12mg、0.1mmol)およびN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(12.6mg、0.1mmol)を加え、室温下で終夜撹拌し、反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9365,Silica gel 60,200-400 mesh,溶離液:塩化メチレン/アセトニトリル=70/30)で精製し、標記化合物(4)(30mg)を得た。
【0050】
1H−NMR(DMSO−d6):δ1.01(s,3H,Me−17)1.05(s,3H,Me−16)1.06(t,3H,J=7.5Hz,Me−Pr)1.52(dd,1H,J=14.6,9.2Hz,H−14b)1.51(s,3H,Me−19)1.65(t,1H,J=11.6Hz,H−6b)1.81(dd,1H,J=15.5,9.6Hz,H−14a)1.86(s,3H,Me−18)2.11(s,3H,Ac−10)2.23(s,3H,Ac−4)2.32(m,1H,H−6a)2.40(q,2H,J=7.5Hz,CH2−Pr)3.58(d,1H,J=7.0Hz,H−3)3.96−4.07(m,3H,GlyCH2,H−20)4.10(dd,1H,J=6.7,10.7,H−7)4.63(s,1H,OH−1)4.90(brs,1H,OH−7)4.91(dd,1H,J=4.9Hz,H−5)5.43(d,1H,J=7.0,H−2)5.46(d,1H,J=8.2Hz,H−2’)5.58(t,1H,J=8.4Hz,H−3’)5.87(t,1H,J=8.6Hz,H−13)6.30(s,1H,H−10)7.19−8.00(aromatic,15H)8.40(brs,2H,GlyNH2)9.25(d,1H,J=8.6Hz,CONH−3’)
【0051】
(工程5)PEG−2’−Gly−パクリタキセル(5)の製造
PEG(Poly(ethylene glycol)methyl ether,Mw=5,000,米国、Aldrich社製)をもとに、モノブロモ酢酸エチルおよびtBuOKを用い、文献Journal of Controlled Release,10,145-154(1989)およびPolymer Bulletin,18,487-493(1987)に従い、カルボキシメチル化PEG(CM−PEG)を調製した。CM−PEG(500mg,0.1mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド5mlに溶解し、この溶液に工程2で得た、2’−Gly−パクリタキセル(2)(45mg,0.05mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(12mg,0.1mmol)およびN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(12.6mg、0.1mmol)を加え、室温下で終夜撹拌し、反応溶媒を留去した後、2−プロパノールに加熱溶解し、再結晶を行った。生成した析出物を冷却した2−プロパノール、及びエーテルにて洗浄した後、減圧下乾燥し、標記化合物(5)(150mg)を得た。本複合体の紫外部吸光スペクトルは図5に示されるとおりである。
【0052】
実施例2
(工程1)2’−Ala−パクリタキセル(6)の製造
Z−Ala(145mg、0.65mmol)および、ジメチルアミノピリジン(79mg,0.65mmol)およびパクリタキセル(インド国、DABUR社製、427mg、0.5mmol)を塩化メチレン(20ml)に溶解した。次いで、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(82mg、0.65mmol)を加え室温で終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/アセトニトリル=70/30)で精製し、2’−Z−Ala−パクリタキセル(431mg)を得た。この化合物(400mg)をジオキサン(20ml)に溶解しパラジウム−炭素触媒(200mg)を加え、水素雰囲気下、4時間撹拌し、触媒を濾去した後、減圧下溶媒を留去し、残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:2.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/メタノール/アセトニトリル=95/5/5)で精製し、標記化合物(6)(231mg)を得た。
【0053】
1H−NMR(DMSO−d6):δ1.01(s,3H,Me−17)1.03(s,3H,Me−16)1.14(s,3H,Me−Ala)1.51(s,3H,Me−19)1.61(dd,1H,J=15.6,9.2Hz,H−14b)1.64(t,1H,J=12.8Hz,H−6b)1.81(s,3H,Me−18)1.88(dd,1H,J=15.3,9.5Hz,H−14a)2.11(s,3H,Ac−10)2.27(s,3H,Ac−4)2.33(m,1H,H−6a)3.52(q,1H,J=7.0Hz,H−Ala)3.60(d,1H,J=7.3Hz,H−3)4.02(d,1H,J=15.0Hz,H−20)4.03(d,1H,J=15.0Hz,H−20)4.12(ddd,1H,J=6.6,6.6,17.4Hz,H−7)4.66(s,1H,OH−1)4.91(d,1H,J=6.6,OH−7)4.92(dd,1H,J=9.8Hz,H−5)5.35(d,1H,J=8.6,H−2’)5.43(d,1H,J=7.0Hz,H−2)5.64(t,1H,J=8.6Hz,H−3’)5.87(t,1H,J=9.2Hz,H−13)6.30(s,1H,H−10)7.20〜8.00(aromatic,15H)9.17(d,1H,J=8.9Hz,CONH−3’)
HRMS:m/z 925.3797(M+H)+:C50H57O15N2としての計算値 925.3759
【0054】
(工程2)カルボキシメチル化デキストラン−2’−Ala−パクリタキセル(7)の製造
実施例1で得た、カルボキシメチル化デキストランナトリウム塩(1)(100mg)を水2mlに溶解し、氷冷下、この溶液にN,N−ジメチルホルムアミド2mlを加えた。この溶液に工程1で得た、2’−Ala−パクリタキセル(6)(30mg)を溶解した水:N,N−ジメチルホルムアミド(1:1)混合液(0.5ml)および1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(100mg)を溶解したN,N−ジメチルホルムアミド(0.5ml)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液をエタノール(100ml)に注加し、生じた沈殿を集め、精製水(10ml)に溶解した。この水溶液をエタノール(100ml)に注加し、生じた沈殿をアセトンおよびエーテルで洗浄し、白色非晶質の標記化合物(7)(105mg)を得た。
本複合体の薬物の導入量は、254nmにおける紫外吸光度および複合体の総重量から算出したところ、1.7%(重量%)であった。本複合体のゲル濾過溶出パターン(検出:227nmにおける紫外吸光度)と紫外部吸光スペクトルはそれぞれ図6、図7に示されるとおりである。
【0055】
(工程3)プロパノイル−2’−Ala−パクリタキセル(8)の製造
プロピオン酸(7.4mg,0.1mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド2mlに溶解し、この溶液に工程1で得た、2’−Ala−パクリタキセル(6)(45mg,0.05mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(12mg、0.1mmol)およびN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(12.6mg、0.1mmol)を加え、室温下で終夜撹拌し、反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,溶離液:塩化メチレン/アセトニトリル=70/30)で精製し、標記化合物(8)(32mg)を得た。
【0056】
1H−NMR(DMSO−d6):δ1.01(s,3H,Me−17)1.03(s,3H,Me−16)1.06(t,3H,J=7.5Hz,Me−Pr)1.14(s,3H,Me−Ala)1.51(s,3H,Me−19)1.61(dd,1H,J=15.6,9.2Hz,H−14b)1.64(t,1H,J=12.8Hz,H−6b)1.81(s,3H,Me−18)1.88(dd,1H,J=15.3,9.5Hz,H−14a)2.11(s,3H,Ac−10)2.27(s,3H,Ac−4)2.33(m,1H,H−6a)2.40(q,2H,J=7.5Hz,CH2−Pr)3.52(q,1H,J=7.0Hz,H−Ala)3.60(d,1H,J=7.3Hz,H−3)4.02(d,1H,J=15.0Hz,H−20)4.03(d,1H,J=15.0Hz,H−20)4.12(ddd,1H,J=6.6,6.6,17.4Hz,H−7)4.66(s,1H,OH−1)4.91(d,1H,J=6.6,OH−7)4.92(dd,1H,J=9.8Hz,H−5)5.35(d,1H,J=8.6,H−2’)5.43(d,1H,J=7.0Hz,H−2)5.64(t,1H,J=8.6Hz,H−3’)5.87(t,1H,J=9.2Hz,H−13)6.30(s,1H,H−10)7.20−8.00(aromatic,15H)9.17(d,1H,J=8.9Hz,CONH−3’)
【0057】
(工程4)PEG−2’−Ala−パクリタキセル(9)の製造
実施例1工程5で得た、CM−PEG(500mg,0.1mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド5mlに溶解し、この溶液に工程1で得た、2’−Ala−パクリタキセル(6)(45mg,0.05mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(12mg、0.1mmol)およびN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(12.6mg、0.1mmol)を加え、室温下で終夜撹拌し、反応溶媒を留去した後、2−プロパノールに加熱溶解し、再結晶を行った。生成した析出物を冷却した2−プロパノール、及びエーテルにて洗浄した後、減圧下乾燥し、標記化合物(9)(160mg)を得た。本複合体の紫外部吸光スペクトルは図8に示されるとおりである。
【0058】
実施例3
(工程1)2’−Leu−パクリタキセル(10)の製造
Z−Leu(172mg、0.65mmol)および、ジメチルアミノピリジン(79mg、0.65mmol)およびパクリタキセル(インド国、DABUR社製、427mg、0.5mmol)を塩化メチレン(20ml)に溶解した。次いで、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(82mg、0.65mmol)を加え室温で終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Sillca gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/アセトニトリル=70/30)で精製し、2’−Z−Leu−パクリタキセル(454mg)を得た。この化合物(400mg)をジオキサン(20ml)に溶解しパラジウム−炭素触媒(200mg)を加え、水素雰囲気下、4時間撹拌し、触媒を濾去した後、減圧下溶媒を留去し、残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/メタノール/アセトニトリル=95/5/5)で精製し、標記化合物(10)(289mg)を得た。
【0059】
1H−NMR(DMSO−d6):δ0.66(d,3H,Me−Leu)0.70(d,3H,Me−Leu)1.01(s,3H,Me−17)1.03(s,3H,Me−16)1.26(ddd,1H,J=6.4,8.5,13.4Hz,H−Leu)1.36(ddd,1H,J=5.8,7.6,13.4Hz,H−Leu)1.51(s,3H,Me−19)1.56(dd,1H,J=15.3,9.0Hz,H−14b)1.64(m,1H,H−6b)1.67(m,1H,H−Leu)1.79(s,3H,Me−18)1.84(dd,1H,J=15.3,9.5Hz,H−14a)2.10(s,3H,Ac−10)2.25(s,3H,Ac−4)2.33(ddd,1H,J=14.7,9.5,6.4Hz,H−6a)3.38(dd,1H,J=8.6,5.8Hz,H−Leu)3.59(d,1H,J=7.0Hz,H−3)4.01(d,1H,J=16.8Hz,H−20)4.03(d,1H,J=16.8Hz,H−20)4.12(ddd,1H,J=6.9,6.9,11.0Hz,H−7)4.64(s,1H,OH−1)4.90(d,1H,J=7.0,OH−7)4.92(d,1H,J=10.1Hz,H−5)5.34(d,1H,J=9.2,H−2’)5.42(d,1H,J=7.0Hz,H−2)5.62(t,1H,J=9.0Hz,H−3’)5.86(t,1H,J=9.2Hz,H−13)6.30(s,1H,H−10)7.20〜8.00(aromatic,15H)9.16(d,1H,J=8.9Hz,CONH−3’)
HRMS:m/z 967.4321(M+H)+:C53H63O15N2としての計算値 967.4228
【0060】
(工程2)カルボキシメチル化デキストラン−2’−Leu−パクリタキセル(11)の製造
実施例1で得た、カルボキシメチル化デキストランナトリウム塩(1)(100mg)を水2mlに溶解し、氷冷下、この溶液にN,N−ジメチルホルムアミド2mlを加えた。この溶液に工程2で得た、2’−Leu−パクリタキセル(10)(30mg)を溶解した水:N,N−ジメチルホルムアミド(1:1)混合液(0.5ml)および1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(100mg)を溶解したN,N−ジメチルホルムアミド(0.5ml)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液をエタノール(100ml)に注加し、生じた沈殿を集め、精製水(10ml)に溶解した。この水溶液をエタノール(100ml)に注加し、生じた沈殿をアセトンおよびエーテルで洗浄し、白色非晶質の標記化合物(11)(106mg)を得た。
本複合体の薬物の導入量は、254nmにおける紫外吸光度および複合体の総重量から算出したところ、1.7%(重量%)であった。本複合体のゲル濾過溶出パターン(検出:227nmにおける紫外吸光度)と紫外部吸光スペクトルはそれぞれ図9、図10に示されるとおりである。
【0061】
(工程3)プロパノイル−2’−Leu−パクリタキセル(12)の製造
プロピオン酸(7.4mg,0.1mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド2mlに溶解し、この溶液に工程1で得た、2’−Leu−パクリタキセル(10)(45mg,0.05mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(12mg,0.1mmol)およびN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(12.6mg,0.1mmol)を加え、室温下で終夜撹拌し、反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,溶離液:塩化メチレン/アセトニトリル=70/30)で精製し、標記化合物(12)(34mg)を得た。
【0062】
1H−NMR(DMSO−d6):δ0.66(d,3H,Me−Leu)0.70(d,3H,Me−Leu)1.01(s,3H,Me−17)1.03(s,3H,Me−16)1.06(t,3H,J=7.5Hz,Me−Pr)1.26(ddd,1H,J=6.4,8.5,13.4Hz,H−Leu)1.36(ddd,1H,J=5.8,7.6,13.4Hz,H−Leu)1.51(s,3H,Me−19)1.56(dd,1H,J=15.3,9.0Hz,H−14b)1.64(m,1H,H−6b)1.67(m,1H,H−Leu)1.79(s,3H,Me−18)1.84(dd,1H,J=15.3,9.5Hz,H−14a)2.10(s,3H,Ac−10)2.25(s,3H,Ac−4)2.33(ddd,1H,J=14.7,9.5,6.4Hz,H−6a)2.40(q,2H,J=7.5Hz,CH2−Pr)3.38(dd,1H,J=8.6,5.8Hz,H−Leu)3.59(d,1H,J=7.0Hz,H−3)4.01(d,1H,J=16.8Hz,H−20)4.03(d,1H,J=16.8Hz,H−20)4.12(ddd,1H,J=6.9,6.9,11.0Hz,H−7)4.64(s,1H,OH−1)4.90(d,1H,J=7.0,OH−7)4.92(d,1H,J=10.1Hz,H−5)5.34(d,1H,J=9.2,H−2’)5.42(d,1H,J=7.0Hz,H−2)5.62(t,1H,J=9.0Hz,H−3’)5.86(t,1H,J=9.2Hz,H−13)6.30(s,1H,H−10)7.20−8.00(aromatic,15H)9.16(d,1H,J=8.9Hz,CONH−3’)
【0063】
(工程4)PEG−2’−Leu−パクリタキセル(13)の製造
実施例1工程5で得た、CM−PEG(500mg,0.1mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド5mlに溶解し、この溶液に工程1で得た、2’−Leu−パクリタキセル(10)(45mg,0.05mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(12mg、0.1mmol)およびN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(12.6mg,0.1mmol)を加え、室温下で終夜撹拌し、反応溶媒を留去した後、2−プロパノールに加熱溶解し、再結晶を行った。生成した析出物を冷却した2−プロパノール、及びエーテルにて洗浄した後、減圧下乾燥し、標記化合物(13)(145mg)を得た。本複合体の紫外部吸光スペクトルは図11に示されるとおりである。
【0064】
実施例4
(工程1)2’−Ile−パクリタキセル(14)の製造
Fmoc−Ile(212mg,0.6mmol)および、ジメチルアミノピリジン(73mg、0.6mmol)およびパクリタキセル(インド国、DABUR社製、427mg、0.5mmol)を塩化メチレン(20ml)に溶解した。次いで、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(76mg、0.6mmol)を加え室温で終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマト・グラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:2.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/アセトニトリル=70/30)で精製し、2’−Fmoc−Ile−パクリタキセル(552mg)を得た。この化合物(470mg)をDMF(10ml)に溶解し、室温下ピペリジン(2ml)を加え、5分間撹拌した後、減圧下溶媒を留去し、残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/メタノール/アセトニトリル=95/5/5)で精製し、標記化合物(14)(353mg)を得た。
【0065】
1H−NMR(DMSO−d6):δ0.62(t,3H,J=7.5Hz,Me−Ile)0.81(d,3H,J=6.7Hz,Me−Ile)1.01(s,3H,Me−17)1.03(s,3H,Me−16)1.07(ddd,1H,J=14.4,7.3,4.9Hz,H−Ile)1.32(ddd,1H,J=13.4,7.6,4.6Hz,H−Ile)1.51(s,3H,Me−19)1.56(dd,1H,J=15.3,9.2Hz,H−14b)1.56−1.61(m,1H,H−Ile)1.64(dd,1H,J=13.7,3.1Hz,H−6b)1.79(s,3H,Me−18)1.87(dd,1H,J=15.3,9.8Hz,H−14a)2.10(s,3H,Ac−10)2.29(s,3H,Ac−4)2.33(ddd,1H,J=14.4,9.6,6.4Hz,H−6a)3.60(d,1H,J=7.3Hz,H−3)3.60−3.67(m,1H,H−Ile)4.02(d,1H,J=16.6Hz,H−20)4.03(d,1H,J=16.6Hz,H−20)4.12(ddd,1H,J=10.8,6.7,6.7Hz,H−7)4.64(s,1H,OH−1)4.90(d,1H,J=7.0,OH−7)4.92(d,1H,J=9.8Hz,H−5)5.37(d,1H,J=8.9Hz,H−2’)5.43(d,1H,J=7.3Hz,H−2)5.64(t,1H,J=8.7Hz,H−3’)5.85(dt,1H,J=0.9,9.2Hz,H−13)6.30(s,1H,H−107.20〜8.00(aromatic,15H)9.15(d,1H,J=9.2Hz,CONH−3’)
HRMS:m/z 967.4234(M+H)+:C53H63O15N2としての計算値 967.4228
【0066】
(工程2)カルボキシメチル化デキストラン−2’−Ile−パクリタキセル(15)の製造
実施例1で得た、カルボキシメチル化デキストランナトリウム塩(1)(100mg)を水2mlに溶解し、氷冷下、この溶液にN,N−ジメチルホルムアミド2mlを加えた。この溶液に工程2で得た、2’−Ile−パクリタキセル(14)(30mg)を溶解した水:N,N−ジメチルホルムアミド(1:1)混合液(0.5ml)および1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(100mg)を溶解したN,N−ジメチルホルムアミド(0.5ml)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液をエタノール(100ml)に注加し、生じた沈殿を集め、精製水(10ml)に溶解した。この水溶液をエタノール(100ml)に注加し、生じた沈殿をアセトンおよびエーテルで洗浄し、白色非晶質の標記化合物(15)(105mg)を得た。
本複合体の薬物の導入量は、254nmにおける紫外吸光度および複合体の総重量から算出したところ、1.6%(重量%)であった。本複合体のゲル濾過溶出パターン(検出:227nmにおける紫外吸光度)と紫外部吸光スペクトルはそれぞれ図12、図13に示されるとおりである。
【0067】
(工程3)プロパノイル−2’−Ile−パクリタキセル(16)の製造
プロピオン酸(7.4mg、0.1mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド2mlに溶解し、この溶液に工程1で得た、2’−Ile−パクリタキセル(14)(45mg,0.05mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(12mg、0.1mmol)およびN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(12.6mg,0.1mmol)を加え、室温下で終夜撹拌し、反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,溶離液:塩化メチレン/アセトニトリル=70/30)で精製し、標記化合物(16)(28mg)を得た。
【0068】
1H−NMR(DMSO−d6):δ0.62(t,3H,J=7.5Hz,Me−Ile)0.81(d,3H,J=6.7Hz,Me−Ile)1.01(s,3H,Me−17)1.03(s,3H,Me−16)1.06(t,3H,J=7.5Hz,Me−Pr)1.07(ddd,1H,J=14.4,7.3,4.9Hz,H−Ile)1.32(ddd,1H,J=13.4,7.6,4.6Hz,H−Ile)1.51(s,3H,Me−19)1.56(dd,1H,J=15.3,9.2Hz,H−14b)1.56−1.61(m,1H,H−Ile)1.64(dd,1H,J=13.7,3.1Hz,H−6b)1.79(s,3H,Me−18)1.87(dd,1H,J=15.3,9.8Hz,H−14a)2.10(s,3H,Ac−10)2.29(s,3H,Ac−4)2.33(ddd,1H,J=14.4,9.6,6.4Hz,H−6a)2.40(q,2H,J=7.5Hz,CH2−Pr)3.60(d,1H,J=7.3Hz,H−3)3.60−3.67(m,1H,H−Ile)4.02(d,1H,J=16.6Hz,H−20)4.03(d,1H,J=16.6Hz,H−20)4.12(ddd,1H,J=10.8,6.7,6.7Hz,H−7)4.64(s,1H,OH−1)4.90(d,1H,J=7.0,OH−7)4.92(d,1H,J=9.8Hz,H−5)5.37(d,1H,J=8.9Hz,H−2’)5.43(d,1H,J=7.3Hz,H−2)5.64(t,1H,J=8.7Hz,H−3’)5.85(dt,1H,J=0.9,9.2Hz,H−13)6.30(s,1H,H−10)7.20−8.00(aromatic,15H)9.15(d,1H,J=9.2Hz,CONH−3’)
【0069】
(工程4)PEG−2’−Ile−パクリタキセル(17)の製造
実施例1工程5で得た、CM−PEG(500mg,0.1mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド5mlに溶解し、この溶液に工程1で得た、2’−Ile−パクリタキセル(14)(45mg,0.05mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(12mg、0.1mmol)およびN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(12.6mg、0.1mmol)を加え、室温下で終夜撹拌し、反応溶媒を留去した後、2−プロパノールに加熱溶解し、再結晶を行った。生成した析出物を冷却した2−プロパノール、及びエーテルにて洗浄した後、減圧下乾燥し、標記化合物(17)(125mg)を得た。本複合体の紫外部吸光スペクトルは図14に示されるとおりである。
【0070】
実施例5
(工程1)2’−Phe−パクリタキセル(18)の製造
Z−Phe(194mg、0.65mmol)および、ジメチルアミノピリジン(79mg、0.65mmol)およびパクリタキセル(インド国、DABUR社製、427mg、0.5mmol)を塩化メチレン(20ml)に溶解した。
次いで、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(82mg、0.65mmol)を加え室温で終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/アセトニトリル=70/30)で精製し、2’−Z−Phe−パクリタキセル(428mg)を得た。この化合物(400mg)をジオキサン(20ml)に溶解しパラジウム−炭素触媒(200mg)を加え、水素雰囲気下、4時間撹拌し、触媒を濾去した後、減圧下溶媒を留去し、残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/メタノール/アセトニトリル=95/5/5)で精製し、標記化合物(18)(269mg)を得た。
【0071】
1H−NMR(DMSO−d6):δ1.02(s,3H,Me−17)1.05(s,3H,Me−16)1.52(s,3H,Me−19)1.64(dd,1H,J=15.6,9.2Hz,H−14b)1.66(dd,1H,J=14.4,11.3Hz,H−6b)1.85(s,3H,Me−18)1.93(dd,1H,J=15.3,9.5Hz,H−14a)2.11(s,3H,Ac−10)2.30(s,3H,Ac−4)2.32(ddd,1H,J=14.7,9.6,6.6Hz,H−6a)2.99(dd,1H,14.5,6.9Hz,PheCH2)3.13(dd,1H,14.4,5.2Hz,PheCH2)3.61(d,1H,J=7.3Hz,H−3)4.10(dd,1H,J=11.0,6.7Hz,H−7)4.52(t,1H,J=5.8Hz,PheCH)4.68(s,1H,OH−1)4.89(d,1H,J=7.0,OH−7)4.92(d,1H,J=9.8Hz,H−5)5.47(d,1H,J=7.3Hz,H−2’)5.50(d,1H,J=7.3Hz,H−2)5.78(t,1H,J=8.2Hz,H−3’)5.94(t,1H,J=8.9Hz,H−13)6.30(s,1H,H−10)7.00〜8.10(m,20H,aromatic)8.49(brs,2H,NH2)9.26(d,1H,J=8.9Hz,CONH−3’)
HRMS:m/z 1001.4076(M+H)+:C56H61O15N2としての計算値 1001.4072
【0072】
(工程2)カルボキシメチル化デキストラン−2’−Phe−パクリタキセル(19)の製造
実施例1で得た、カルボキシメチル化デキストランナトリウム塩(1)(100mg)を水2mlに溶解し、氷冷下、この溶液にN,N−ジメチルホルムアミド2mlを加えた。この溶液に工程1で得た、2’−Phe−パクリタキセル(18)(30mg)を溶解した水:N,N−ジメチルホルムアミド(1:1)混合液(0.5ml)および1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(100mg)を溶解したN,N−ジメチルホルムアミド(0.5ml)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液をエタノール(100ml)に注加し、生じた沈殿を集め、精製水(10ml)に溶解した。この水溶液をエタノール(100ml)に注加し、生じた沈殿をアセトンおよびエーテルで洗浄し、白色非晶質の標記化合物(19)(106mg)を得た。
本複合体の薬物の導入量は、254nmにおける紫外吸光度および複合体の総重量から算出したところ、4.7%(重量%)であった。本複合体のゲル濾過溶出パターン(検出:227nmにおける紫外吸光度)と紫外部吸光スペクトルはそれぞれ図15、図16に示されるとおりである。
【0073】
実施例6
(工程1)2’−Phe−Gly−パクリタキセル塩酸塩(20)の製造
実施例6、(工程1)を参考に、Gly−Phe(日本国、ペプチド研究所製、1.1g、5mmol)をH2O(2ml)、2−プロパノール(2ml)およびジエチルアミン(1.5ml)の混合溶液に溶かし、この反応液にトリチルクロライド(1.8g、6.5mmol)を徐々に加え、1時間撹拌する。反応液にH2Oを加え、生じた沈殿を水で洗浄した。次に、沈澱に酢酸5mlを加えて酸性にした後、溶媒を減圧下留去することによりTrt−Gly−Phe1.5gを得た。
得られたTrt−Phe−Gly(604mg、1.3mmol)および、ジメチルアミノピリジン(158mg、1.3mmol)およびパクリタキセル(インド国、DABUR社製、853mg、1.0mmol)を塩化メチレン(20ml)に溶解した。次いで、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(164mg、1.3mmol)を加え室温下終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/アセトニトリル=80/20)で精製し、2’−Trt−Phe−Gly−パクリタキセル(983mg)を得た。この化合物(800mg)を90%酢酸(10ml)で処理して脱N−トリチル化し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/メタノール/アセトニトリル=95/5/5)で精製し、次に塩酸塩へ変換して標記化合物(20)(490mg)を得た。
【0074】
1H−NMR(DMSO−d6);δ1.01(s,3H,Me−17)1.03(s,3H,Me−16)1.42(dd,1H,J=15.5,9.1Hz,H−14b)1.50(s,3H,Me−19)1.63(t,1H,J=12.2Hz,H−6b)1.75(dd,1H,J=12.3,9.5Hz,H−14a)1.81(s,3H,Me−18)2.12(s,3H,Ac−10)2.23(s,3H,Ac−4)2.29(ddd,1H,J=14.4,9.2,7.0Hz,H−6a)2.90(dd,1H,14.2,7.8Hz,PheCH2)3.08(dd,1H,14.4,5.2Hz,PheCH2)3.56(d,1H,J=7.0Hz,H−3)4.05−4.10(m,2H,H−7,PheCH)4.15(dd,1H,J=18.0,5.8Hz,Gly)4.61(brs,1H,OH−1)4.90(brs,1H,OH−7)4.90(d,1H,J=5.3Hz,H−5)5.38(d,1H,J=8.9Hz,H−2’)5.41(d,1H,J=7.0Hz,H−2)5.53(t,1H,J=8.6Hz,H−3’)5.83(t,1H,J=8.8Hz,H−13)6.29(s,1H,H−10)7.16〜8.00(m,20H,aromatic)8.15(brs,2H,NH2)9.02(t,1H,J=5.8Hz,Gly−NH)9.29(d,1H,J=8.9Hz,CONH−3’)
HRMS:m/z 1058.4241(M+H)+:C58H64O16N3としての計算値 1058.4287
【0075】
(工程2)カルボキシメチル化デキストラン−2’−Phe−Gly−パクリタキセル(21)の製造
実施例1で得た、カルボキシメチル化デキストランナトリウム塩(1)(100mg)を水2mlに溶解し、氷冷下、この溶液にN,N−ジメチルホルムアミド2mlを加えた。この溶液に工程1で得た、2’−Phe−Gly−パクリタキセル(20)(22mg)を溶解した水:N,N−ジメチルホルムアミド(1:1)混合液(0.5ml)および1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(100mg)を溶解したN,N−ジメチルホルムアミド(0.5ml)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液をエタノール(100ml)に注加し、生じた沈殿を集め、精製水(10ml)に溶解した。この水溶液をエタノール(100ml)に注加し、生じた沈殿をアセトンおよびエーテルで洗浄し、白色非晶質の標記化合物(21)(108mg)を得た。本複合体の薬物の導入量は、254nmにおける紫外吸光度および複合体の総重量から算出したところ、3.3%(重量%)であった。本複合体のゲル濾過溶出パターン(検出:227nmにおける紫外吸光度)と紫外部吸光スペクトルはそれぞれ図17、図18に示されるとおりである。
【0076】
実施例7
(工程1)2’−Gly−Phe−パクリタキセル塩酸塩(22)の製造
実施例6、(工程1)を参考に、Gly−Phe(日本国、ペプチド研究所製、1.1g、5mmol)をH2O(2ml)、2−プロパノール(2ml)およびジエチルアミン(1.5ml)の混合溶液に溶かし、この反応液にトリチルクロライド(1.8g、6.5mmol)を徐々に加え、1時間撹拌する。反応液にH2Oを加え、生じた沈殿を水で洗浄した。次に、沈澱に酢酸5mlを加えて酸性にした後、溶媒を減圧下留去することによりTrt−Gly−Phe1.5gを得た。
得られたTrt−Gly−Phe(604mg、1.3mmol)および、ジメチルアミノピリジン(158mg、1.3mmol)およびパクリタキセル(インド国、DABUR社製、853mg、1.0mmol)を塩化メチレン(20ml)に溶解した。次いで、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(164mg、1.3mmol)を加え室温下終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/アセトニトリル=80/20)で精製し、2’−Trt−Gly−Phe−パクリタキセル(968mg)を得た。この化合物(800mg)を90%酢酸(10ml)で処理して脱N−トリチル化し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/メタノール/アセトニトリル=95/5/5)で精製し、次に塩酸塩へ変換して標記化合物(22)(520mg)を得た。
【0077】
1H−NMR(DMSO−d6):δ1.02(s,3H,Me−17)1.05(s,3H,Me−16)1.52(s,3H,Me−19)1.66(dd,1H,J=15.0,9.5Hz,H−14b)1.66(t,1H,J=10.7Hz,H−6b)1.82(s,3H,Me−18)1.94(dd,1H,J=15.2,9.7Hz,H−14a)2.11(s,3H,Ac−10)2.30(br,1H,H−6a)2.33(s,3H,Ac−4)2.76(dd,1H,14.1,9.5Hz,PheCH2)2.97(dd,1H,14.0,3.6Hz,PheCH2)3.46(d,1H,J=16.2,Gly)3.51(d,1H,J=16.5,Gly)3.61(d,1H,J=7.3Hz,H−3)4.03(d,1H,J=8.9Hz,H−20)4.05(d,1H,J=8.9Hz,H−20)4.10(dd,1H,J=10.5,6.9Hz,H−7)4.71(brs,1H,OH−1)4.79(ddd,1H,J=9.0,9.0,3.7Hz,PheCH)4.92(brs,1H,OH−7)4.93(d,1H,J=10.4Hz,H−5)5.40(d,1H,J=7.6Hz,H−2’)5.44(d,1H,J=7.3Hz,H−2)5.79(dd,1H,J=8.6,7.9Hz,H−3’)5.93(t,1H,J=8.9Hz,H−13)6.29(s,1H,H−10)6.97〜8.02(m,20H,aromatic)7.97(brs,2H,GlyNH2)8.88(d,1H,J=8.2Hz,Phe−NH)9.30(d,1H,J=9.2Hz,CONH−3’)
HRMS:m/z 1058.4333(M+H)+:C58H64O16N3としての計算値 1058.4287
【0078】
(工程2)カルボキシメチル化デキストラン−2’−Gly−Phe−パクリタキセル(23)の製造
実施例1で得た、カルボキシメチル化デキストランナトリウム塩(1)(100mg)を水2mlに溶解し、氷冷下、この溶液にN,N−ジメチルホルムアミド2mlを加えた。この溶液に工程1で得た、2’−Gly−Phe−パクリタキセル(22)(15mg)を溶解した水:N,N−ジメチルホルムアミド(1:1)混合液(0.5ml)および1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(100mg)を溶解したN,N−ジメチルホルムアミド(0.5ml)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液をエタノール(100ml)に注加し、生じた沈殿を集め、精製水(10ml)に溶解した。この水溶液をエタノール(100ml)に注加し、生じた沈殿をアセトンおよびエーテルで洗浄し、白色非晶質の標記化合物(23)(101mg)を得た。
本複合体の薬物の導入量は、254nmにおける紫外吸光度および複合体の総重量から算出したところ、4.7%(重量%)であった。本複合体のゲル濾過溶出パターン(検出:227nmにおける紫外吸光度)と紫外部吸光スペクトルはそれぞれ図19、図20に示されるとおりである。
【0079】
実施例8
(1)21−プロパノイルイソロイシル−デキサメタゾン(24)の製造
Z−Ile(172mg、0.65mmol)および、ジメチルアミノピリジン(79mg、0.65mmol)およびデキサメタゾン(日本国、和光純薬社製、196mg、0.5mmol)をDMF(20ml)に溶解した。次いで、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(82mg,0.65mmol)を加え室温で終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,溶離液:クロロホルム/酢酸エチル=50/30)で精製し、21−Z−Ile−デキサメタゾン(62mg)を得た。この化合物(50mg)をジオキサン(20ml)に溶解しパラジウム−炭素触媒(50mg)を加え、水素雰囲気下、4時間撹拌し、触媒を濾去した後、減圧下溶媒を留去し、残査をDMFに溶解し、4−ジメチルアミノピリジン(61mg、0.5mmol)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(63mg、0.5mmol)およびプロピオン酸(37mg,0.5mmol)を加え室温下で終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,クロロホルム/酢酸エチル=50/25)で精製し、標記化合物(24)(50mg)を得た。
【0080】
1H−NMR(DMSO−d6):δ0.63(s,3H,J=7.5Hz)0.76(d,3H,7.5Hz)0.82(d,3H,J=6.7Hz)0.87(s,3H)1.07(m,2H)1.10(t,3H,J=7.5Hz)1.30−1.50(m,3H)1.49(s,3H)1.55−1.62(m,2H)1.78(m,1H)2.11(m,2H)2.32(m,2H)2.35(q,2H,J=7.5Hz)2.60(m,1H)2.9A(m,1H)3.60−3.68(m,1H)4.16(m,1H)4.68(m,1H)4.68(d,1H,J=17.2Hz)5.01(d,1H,J=17.2Hz)5.16(brs,1H)6.01(s,1H)6.23(d,1H,J=10.2Hz)7.30(d,1H,J=10.2Hz)9.00(d,1H,J=7.0Hz)
【0081】
(2)PEG−イソロイシル−21−デキサメタゾン(25)の製造
Z−Ile(172mg、0.65mmol)および、ジメチルアミノピリジン(79mg、0.65mmol)およびデキサメタゾン(日本国、和光純薬社製、196mg,0.5mmol)をDMF(20ml)に溶解した。次いで、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(82mg,0.65mmol)を加え室温で終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,溶離液:クロロホルム/酢酸エチル=50/30)で精製し、21−Z−Ile−エキサメタゾン(65mg)を得た。この化合物(50mg)をジオキサン(20ml)に溶解しパラジウム−炭素触媒(50mg)を加え、水素雰囲気下、4時間撹拌し、触媒を濾去した後、減圧下溶媒を留去し、残査をDMFに溶解し、4−ジメチルアミノピリジン(61mg、0.5mmol)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(63mg、0.5mmol)および実施例1工程5で得た、CM−PEG(2500mg,0.5mmol)を加え室温下で終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、2−プロパノール、及びエーテルにて洗浄した後、減圧下乾燥し、標記化合物(25)(1000mg)を得た。本複合体の紫外部吸光スペクトルは図21に示されるとおりである。
【0082】
(3)21−プロパノイルグリシル−デキサメタゾン(26)の製造
Z−Gly(135mg、0.65mmol)および、ジメチルアミノピリジン(79mg、0.65mmol)およびデキサメタゾン(日本国、和光純薬社製、196mg、0.5mmol)をDMF(20ml)に溶解した。次いで、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(82mg、0.65mmol)を加え室温で終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,溶離液:クロロホルム/メタノール=15/1)で精製し、21−Z−Gly−デキサメタゾン(68mg)を得た。この化合物(50mg)をジオキサン(20ml)に溶解しパラジウム−炭素触媒(50mg)を加え、水素雰囲気下、4時間撹拌し、触媒を濾去した後、減圧下溶媒を留去し、残査をDMFに溶解し、4−ジメチルアミノピリジン(61mg、0.5mmol)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(63mg、0.5mmol)およびおよびプロピオン酸(37mg,0.5mmol)を加え室温下で終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,溶離液:クロロホルム/メタノール=17/1)で精製し、表記化合物(26)(30mg)を得た。
【0083】
1H−NMR(DMSO−d6):δ0.74(d,3H,7.5Hz)0.88(d,3H)1.04(t,3H,J=7.5Hz)1.07(m,2H)1.30−1.50(m,3H)1.52(s,3H)1.60(m,2H)1.78(m,1H)2.14(m,2H)2.32(m,2H)2.37(q,2H,J=7.5Hz)2.62(m,1H)2.94(m,1H)3.96−4.06(m,2H)4.16(m,1H)4.68(m,1H)4.82(d,1H,J=17.4Hz)4.98(brs,1H)5.03(d,1H,J=17.4Hz)6.02(s,1H)6.24(dd,1H,J=10.3,1.7Hz)7.29(d,1H,J=10.2Hz)9.02(d,2H,J=7.0Hz)
【0084】
(4)PEG−グリシル−21−デキサメタゾン(27)の製造
Z−Gly(135mg、0.65mmol)および、ジメチルアミノピリジン(79mg、0.65mmol)およびデキサメタゾン(日本国、和光純薬社製、196mg、0.5mmol)をDMF(20ml)に溶解した。次いで、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(82mg、0.65mmol)を加え室温で終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,溶離液:クロロホルム/メタノール=15/1)で精製し、21−Z−Gly−デキサメタゾン(65mg)を得た。この化合物(50mg)をジオキサン(20ml)に溶解しパラジウム−炭素触媒(50mg)を加え、水素雰囲気下、4時間撹拌し、触媒を濾去した後、減圧下溶媒を留去し、残査をDMFに溶解し、4−ジメチルアミノピリジン(61mg、0.5mmol)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(63mg、0.5mmol)および実施例1工程5で得た、CM−PEG(2500mg,0.5mmol)を加え室温下で終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、2−プロパノール、及びエーテルにて洗浄した後、減圧下乾燥し、標記化合物(27)(700mg)を得た。本複合体の紫外部吸光スペクトルは図22に示されるとおりである。
【0085】
(5)21−プロパノイルアラニル−デキサメタゾン(28)の製造
Z−Ala(145mg、0.65mmol)および、ジメチルアミノピリジン(79mg、0.65mmol)およびデキサメタゾン(日本国、和光純薬社製、196mg、0.5mmol)をDMF(20ml)に溶解した。次いで、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(82mg,0.65mmol)を加え室温で終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,溶離液:クロロホルム/メタノール=20/1)で精製し、21−Z−Ala−デキサメタゾン(70mg)を得た。この化合物(50mg)をジオキサン(20ml)に溶解しパラジウム−炭素触媒(50mg)を加え、水素雰囲気下、4時間撹拌し、触媒を濾去した後、減圧下溶媒を留去し、残査をDMFに溶解し、4−ジメチルアミノピリジン(61mg、0.5mmol)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(63mg、0.5mmol)およびプロピオン酸(37mg,0.5mmol)を加え室温下で終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,溶離液:クロロホルム/メタノール=40/3)で精製し、標記化合物(28)(55mg)を得た。
【0086】
1H−NMR(DMSO−d6):δ0.76(d,3H,7.5Hz)0.89(d,3H)1.06(t,3H,J=7.5Hz)1.07(m,2H)1.14(s,3H)1.30−1.50(m,3H)1.50(s,3H)1.60(m,2H)1.78(m,1H)2.14(m,2H)2.32(m,2H)2.40(q,2H,J=7.5Hz)2.60(m,1H)2.94(m,1H)3.50(q,1H,J=7.0Hz)4.16(m,1H)4.68(m,1H)4.78(d,1H,J=17.0Hz)4.98(brs,1H)5.02(d,1H,J=17.0Hz)6.02(s,1H)6.24(dd,1H,J=10.3,1.7Hz)7.29(d,1H,J=10.2Hz)8.84(d,2H,J=7.0Hz)
【0087】
(6)PEG−アラニル−21−デキサメタゾン(29)の製造
Z−Ala(145mg、0.65mmol)および、ジメチルアミノピリジン(79mg、0.65mmol)およびデキサメタゾン(日本国、和光純薬社製、196mg、0.5mmol)をDMF(20ml)に溶解した。次いで、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(82mg、0.65mmol)を加え室温で終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,溶離液:クロロホルム/メタノール=20/1)で精製し、21−Z−Ala−デキサメタゾン(68mg)を得た。この化合物(50mg)をジオキサン(20ml)に溶解しパラジウム−炭素触媒(50mg)を加え、水素雰囲気下、4時間撹拌し、触媒を濾去した後、減圧下溶媒を留去し、残査をDMFに溶解し、4−ジメチルアミノピリジン(61mg、0.5mmol)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(63mg、0.5mmol)および実施例1工程5で得た、CM−PEG(2500mg,0.5mmol)を加え室温下で終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、2−プロパノール、及びエーテルにて洗浄した後、減圧下乾燥し、標記化合物(29)(1400mg)を得た。本複合体の紫外部吸光スペクトルは図23に示されるとおりである。
【0088】
(7)21−プロパノイル−デキサメタゾン(30)の製造
プロピオン酸(48mg,0.65mmol)および、ジメチルアミノピリジン(79mg、0.65mmol)およびデキサメタゾン(日本国、和光純薬社製、196mg、0.5mmol)をDMF(20ml)に溶解した。次いで、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(82mg、0.65mmol)を加え室温で終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,溶離液:クロロホルム/メタノール=7/1)で精製し、表記化合物(30)(50mg)を得た。
1H−NMR(DMSO−d6):δ0.79(d,3H,7.2Hz)0.89(d,3H)1.07(t,3H,J=7.5Hz)1.07(m,1H)1.30−1.50(m,3H)1.49(s,3H)1.60(m,2H)1.78(m,1H)2.14(m,2H)2.32(m,2H)2.37(q,2H,J=7.5Hz)2.62(m,1H)2.94(m,1H)4.14(m,1H)4.80(d,1H,J=17.4Hz)5.03(d,1H,J=17.4Hz)5.16(brs,1H)5.40(m,1H)6.01(s,1H)6.23(d,1H,J=9.9Hz)7.30(d,1H,J=10.2Hz)
【0089】
(8)PEG−21−デキサメタゾン(31)の製造
実施例1工程5で得た、CM−PEG(2,500mg,0.5mmol)および、ジメチルアミノピリジン(79mg、0.65mmol)およびデキサメタゾン(日本国、和光純薬社製、196mg、0.5mmol)をDMF(20ml)に溶解した。次いで、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(82mg、0.65mmol)を加え室温で終夜撹拌した。反応溶媒を留去し、2−プロパノール、及びエーテルにて洗浄した後、減圧下乾燥し、標記化合物(31)(1,000mg)を得た。本複合体の紫外部吸光スペクトルは図24に示されるとおりである。
【0090】
参考例1
Trt−Gly−Gly−Phe−Glyの製造
(1)Phe−Gly−OBnの合成
Phe−Gly・H2O(日本国、国産化学社製、25g、104mmol)をパラトルニンスルホン酸1水和物(19.8g、104mmol)、ベンジルアルコール(25ml)およびトルエン(200ml)混合液に溶かし、Dean-Stark装置により5時間加熱環流する。反応後、溶媒を留去し、ジエチルエーテルを加えると標記化合物であるPhe−Gly−OBnのパラトルエンスルホン酸塩(40g)が得られた。
【0091】
(2)Trt−Gly−Glyの合成
実施例6、(工程1)を参考に、Gly−Gly(日本国、ペプチド研究所製、6.6g、50mmol)をH2O(20ml)、2−プロパノール(40ml)およびジエチルアミン(15ml)の混合溶液に溶かし、この反応液にトリチルクロライド(18.1g、65mmol)を徐々に加え、1時間撹拌する。反応液にH2Oを加え、生じた沈殿を水で洗浄した。次に、沈澱に酢酸5mlを加えて酸性にした後、溶媒を減圧下留去することにより標記化合物13.1gを得た。
【0092】
(3)Trt−Gly−Gly−Phe−Gly−OBnの合成
乾燥DMF(10ml)に、Trt−Gly−Gly(1.54g)、N−ヒドロキシコハク酸イミド(0.52g)およびDCC(0.93g)を加え、4℃で3時間反応する。反応溶液に(1)で合成したPhe−Gly−OBnのパラトルエンスルホン酸塩(2.0g)およびN−メチルモルホリン(0.41g)を溶かしたDMF溶液(DMF10ml)を加え、4℃で15時間反応する。沈殿物を除き、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9365,Silica gel 60,200-400 mesh,溶離液:クロロホルム/メタノール−20/1)で精製することにより、標記生成物(1.5g)を得た。
【0093】
(4)Trt−Gly−Gly−Phe−Glyの合成
化合物(3)Trt−Gly−Gly−Phe−Gly−OBn(1.3g)をDMF(20ml)に溶かし、10%パラジウム−炭素(0.5g)および1,4−シクロヘキサジエン(0.4g)を加え、室温下30分反応する。反応液をろ過し、触媒を除き、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9365,Silica gel 60,200-400 mesh,溶離液:クロロホルム/メタノール=7/1)で精製することにより、標記化合物(1.0g)を得た。
Anal.Calcd for:C34H34N4O5:
C,70.57;H,5.92;N,9.68
Found:C,70.03;H,6.07;N,9.67
アミノ酸分析:
Phe(1)1.00,Gly(3)2.91
加水分解条件:6NHCl、110℃、22hrs
【0094】
参考例2
Z−Gly−Gly−Pheの製造
BOC−Phe(日本国、ペプチド研究所製、10.6g)を酢酸エチル(100ml)に溶かし、氷冷下、臭化フェナシル(Phenacyl bromide,10.0g)およびトリエチルアミン(5.1g)を加え撹拌する、反応温度を室温に上げ、終夜撹拌の後に反応溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル(50ml)に溶かし、飽和重曹水ついで飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して、BOC−Phe−フェナシルエステル(13.4g)を得た。次に、BOC−Phe−フェナシルエステル(1.9g)にトリフルオロ酢酸(TFA、5ml)を加え、10分間撹拌し、減圧下TFAを留去した。この残渣に対し、DMF(20ml)、N−メチルモルホリン(0.61g)、DCC(1.24g)、HOBT(0.81g)およびBOC−Gly(日本国、ペプチド研究所製、1.05g)を加え、室温下、終夜撹拌する。反応液を減圧濃縮し、残渣を酢酸エチル(50ml)に溶かし、氷冷した0.1N塩酸水溶液、飽和食塩水、飽和重曹水ついで飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して、BOC−Gly−Phe−フェナシルエステル(1.5g)を得た。次に、BOC−Gly−Phe−フェナシルエステル(1.6g)にトリフルオロ酢酸(TFA、5ml)を加え、10分間撹拌し、減圧下TFAを留去した。
【0095】
この残渣に対し、DMF(20ml)、N−メチルモルホリン(0.40g)、DCC(0.83g)、HOBT(0.54g)およびZ−Gly(国産化学、0.84g)を加え、室温下、終夜撹拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣を酢酸エチル(50ml)に溶かし、氷冷した0.1N塩酸水溶液、飽和食塩水、飽和重曹水ついで飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して、Z−Gly−Gly−Phe−フェナシルエステル(1.1g)を得た。次に、Z−Gly−Gly−Phe−フェナシルエステル(1.1g)を90%酢酸水溶液(30ml)に溶かし、亜鉛末4gを加え室温下、5時間撹拌した。ろ過後、溶媒を留去し、残渣を酢酸エチル(30ml)に溶かし、10%クエン酸で洗浄した後、飽和食塩水で洗浄し、さらに硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して標記Z−Gly−Gly−Phe(0.62g)を得た。
【0096】
実施例9
(工程1)2’−Gly−Gly−Phe−Gly−パクリタキセル塩酸塩(32)の製造
参考例1で得たTrt−Gly−Gly−Phe−Gly(739mg、1.3mmol)および、ジメチルアミノピリジン(158mg、1.3mmol)およびパクリタキセル(インド国、DABUR社製、853mg、1.0mmol)を塩化メチレン(20ml)に溶解した。次いで、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(164mg、1.3mmol)を加え室温下4時間撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×50cm、溶離液:塩化メチレン/メタノール/アセトニトリル=95/5/30)で精製し、2’−Nα−Trt−Gly−Gly−Phe−Gly−パクリタキセル(1246mg)を得た。
HRMS:m/z 1414.5763(M+H)+:C81H84O18N5としての計算値 1414.5811
この化合物(1100mg)を75%酢酸(10ml)で処理して脱N−トリチル化し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×50cm、溶離液:塩化メチレン/メタノール/アセトニトリル=85/15/5)で精製し、次に塩酸塩へ変換して表記化合物(32)(530mg)を得た。
【0097】
1H−NMR(DMSO−d6):δ1.00(s,3H,Me−17)1.03(s,3H,Me−16)1.42(dd,1H,J=15.4,9.2Hz,H−14b)1.49(s,3H,Me−19)1.63(brt,1H,J=12.1Hz,H−6b)1.74(dd,1H,J=15.4,9.2Hz,H−14a)1.80(s,3H,Me−18)2.11(s,3H,Ac−10)2.23(s,3H,Ac−4)2.30(m,1H,H6a)2.72(dd,1H,J=13.9,10.2Hz,PheCH2Hb)3.02(dd,1H,J=13.9,3.8Hz,PheCH2CHa)3.52(brs,2H,GlyCH2)3.56(d,1H,J=7.2Hz,H−3)3.66(dd,1H,16.9,5.4Hz,GlyCH2b)3.84(dd,1H,16.9,5.4Hz,GlyCH2a)4.01(dd,2H,J=14.5,8.4Hz,H−20a,H−20b)4.01(2H,GlyCH2)4.09(m,1H,H−7)4.55(ddd,1H,J=10.2,8.5,3.8Hz,PheCH2CH)4.61(s,1H,OH−1)4.89(dd,1H,J=8.9,1.3Hz,H−5)4.92(brs,1H,OH−7)5.41(d,1H,J=7.2,H−2)5.43(d,1H,J=6.3Hz,H−2’)5.51(t,1H,J=8.5Hz,H−3’)5.83(t,1H,J=9.2Hz,H−13)6.29(s,1H,H−10)7.10〜8.00(aromatic,20H)8.33(d,1H,PheCONH)8.51(t,1H,J=5.5Hz,GlyCONH)8.69(t,1H,J=6.0Hz,GlyCONH)9.34(d,1H,J=8.5Hz,CONH−3’)
HRMS:m/z 1172.4711(M+H)+:C62H70O18N5としての計算値 1172.4716
Anal.Calcd for:C62H69O18N5・HCl・2.5H2O:C,59.40;H,6.03;N,5.59.
Found:C,59.55;H,6.04;N,5.60
【0098】
(工程2)カルボキシメチル化デキストラン−2’−Gly−Gly−Phe−Gly−パクリタキセル(33)の製造
実施例1(工程1)で得た、カルボキシメチル化デキストランナトリウム塩(1)(1.0g)を水20mlに溶解し、氷冷下、この溶液にN,N−ジメチルホルムアミド20mlを加えた。この溶液に実施例9(工程1)で得た、2’−Gly−Gly−Phe−Gly−パクリタキセル(32)(200mg)を溶解した水:N,N−ジメチルホルムアミド(1:1)混合液(8ml)および1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(1.0g)を溶解したN,N−ジメチルホルムアミド5mlを加え、室温で6時間撹拌した。反応液をエタノール(11)に注加し、生じた沈殿を集め、精製水(100ml)に溶解した。この水溶液をエタノール(11)に注加し、生じた沈殿をアセトンおよびエーテルで洗浄し、白色非晶質の標記化合物(33)(1050mg)を得た。
本複合体の薬物の導入量は、254nmにおける可視吸光度および複合体の総重量から算出したところ、3.7%(重量%)であった。本複合体の紫外部吸光スペクトルとゲル濾過溶出パターン(検出:220nmにおける紫外吸光度)はそれぞれ図25、26に示されるとおりである。
【0099】
実施例10
(工程1)7−Gly−Gly−Phe−Gly−パクリタキセル(34)の製造
パクリタキセル(インド国、DABUR社製、427mg、0.5mmol)を塩化メチレンに溶解し、ジイソプロピルエチルアミン(129mg、1.0mmol)および氷冷下ベンジルオキシカルボニルクロリド(170mg、1.0mml)を加え、室温下一晩撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:2.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/アセトニトリル=80/20)で精製し、2’−Z−パクリタキセル(423mg)を得た。
【0100】
2’−Z−パクリタキセル(270mg、0.27mmol)を塩化メチレンに溶解し、Z−グリシン(85mg、0.41mmol)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(84mg、0.41mmol)およびジメチルアミノピリジン(50.1mg、0.41mmol)を加え室温下3日間撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×50cm、溶離液:塩化メチレン/アセトニトリル=80/20)で精製し、2’−Z−7−Z−Gly−パクリタキセル(300mg)を得た。
2’−Z−7−Z−Gly−パクリタキセル(200mg、0.16mmol)を酢酸エチル100mlに溶解し、パラジウム−炭素を加え、撹拌下に水素ガスを通した。反応終了後、触媒を濾去し、反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×50cm、溶離液:塩化メチレン/アセトニトリル=50/50)で精製し、7−Gly−パクリタキセル(87mg)を得た。
【0101】
7−Gly−パクリタキセル(70mg、0.09mmol)をN,N’−ジメチルホルムアミド(20ml)に溶解し、参考例2で得たZ−Gly−Gly−Phe(58mg、0.13mmol)、水溶性カルボジイミド(26mg、0.13mmol)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(18mg、0.13mmol)を加え、室温下3日間撹拌した。反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×50cm)溶離液:塩化メチレン/メタノール/アセトニトリル=85/15/5)で精製し、7−Z−Gly−Gly−Phe−Gly−パクリタキセル(94mg)を得た。
7−Z−Gly−Gly−Phe−Gly−パクリタキセル(80mg,0.06mmol)をメタノール20mlに溶解し、パラジウム−炭素を加え、撹拌下に水素ガスを通した。反応終了後、触媒を濾去し、反応溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:独国Merck社製Art No.9385,Silica gel 60,200-400 mesh,カラム:4.0×30cm、溶離液:塩化メチレン/メタノール/アセトニトリル=95/5/30)で精製し、表記化合物(34)(50mg)を得た。
【0102】
1H−NMR(DMSO−d6):δ0.99(s,3H,Me−17)1.05(s,3H,Me−16)1.67(s,3H,Me−19)1.68(m,1H,H6b)1.75(s,3H,Me−18)1.79(dd,1H,J=15.3,8.9Hz,H−14b)1.90(dd,1H,J=15.3,8.9Hz,H−14a)2.15(s,3H,Ac−10)2.26(s,3H,Ac−4)2.42(m,1H,H6a)2.74(dd,1H,J=13.9,10.5Hz,PheCH2CHb)3.05(dd,1H,J=13.9,3.8Hz,PheCH2CHa)3.54(brs,2H,GlyCH2)3.66(dd,1H,J=16.8,5.3Hz,GlyCH2b)3.69(dd,1H,J=16.8,5.3Hz,GlyCH2a)3.72(d,1H,J=6.8Hz,H−3)3.80(dd,1H,J=16.8,5.8Hz,GlyCH2b)3.85(dd,1H,J=16.8,5.8Hz,GlyCH2a)4.06(s,2H,H−20)4.57(ddd,1H,J=10.5,8.9,3.8Hz,PheCH2CH)4.62(brt,1H,J=7.0Hz,H−2’)4.85(s,1H,OH−1)4.99(d,1H,J=9.8Hz,H−5)5.42(t,1H,J=8.1Hz,H−3’)5.43(d,1H,J=6.8Hz,H−2)5.47(dd,2H,J=10.4,7.6Hz,H−7)5.91(t,1H,J=8.5Hz,H−13)6.23(d,1H,OH−2’)7.00〜8.00(aromatic,20H)8.05(brs,1H,NH2)8.30(d,1H,J=8.9Hz,PheCONH)8.47(t,1H,J=5.6Hz,GlyCONH)8.56(t,1H,J=5.5Hz,GlyCONH)9.00(d,1H,J=8.5Hz,CONH−3’)
【0103】
(工程2)カルボキシメチル化デキストラン−7−Gly−Gly−Phe−Gly−パクリタキセル(35)の製造
実施例1(工程1)で得たカルボキシメチル化デキストランナトリウム塩(1)(1.0g)を水20mlに溶解し、氷冷下、この溶液にN,N−ジメチルホルムアミド20mlを加えた。この溶液に実施例10(工程1)で得た7−Gly−Gly−Phe−Gly−パクリタキセル(34)(180mg)を溶解した水:N,N−ジメチルホルムアミド(1:1)混合液(8ml)および1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(1.0g)を溶解したN,N−ジメチルホルムアミド5mlを加えた。室温で6時間撹拌した。反応液をエタノール(11)に注加し、生じた沈殿を集め、精製水(100ml)に溶解した。この水溶液をエタノール(11)に注加し、生じた沈殿をアセトンおよびエーテルで洗浄し、白色非晶質の表記化合物(35)(1,050mg)を得た。
本複合体の薬物の導入量率は、254nmにおける可視吸光度および複合体の総重量から算出したところ、7.4%(重量%)であった。本複合体の紫外部吸光スペクトルとゲル濾過溶出パターン(検出:220nmにおける紫外吸光度)はそれぞれ図27、28に示されるとおりである。
【0104】
実験例1
化合物(3)および(15)の生理食塩水に対する溶解度実施例1で得た化合物(3)50mgを、0.5mlの生理食塩水に溶解したところ、完全に溶解した。これは、パクリタキセル37mgが10mlの生理食塩水に溶解したことになる。パクリタキセル換算では、3.7mg/ml(生理食塩水)の溶解度となる。
実施例4で得た化合物(15)50mgを、0.5mlの生理食塩水に溶解したところ、完全に溶解した。これは、パクリタキセル16mgが10mlの生理食塩水に溶解したことになる。パクリタキセル換算では、1.6mg/ml(生理食塩水)の溶解度となる。
更に、パクリタキセル(インド国、DABUR社製)1mgは、10mlの生理食塩水に溶解しなかった。
【0105】
実験例2
マウスおよびヒト血漿中における、化合物(3)、(7)、(11)および(15)からのパクリタキセル遊離評価実験実施例1で得た化合物(3)、実施例2で得た化合物(5)、実施例3で得た化合物(11)および実施例4で得た化合物(15)をそれぞれ生理食塩水に溶解し、パクリタキセルに換算した濃度が125μg/mlとなるよう調製した。これらの溶液20μlをマウスおよびヒト血漿200μlにそれぞれ添加し、37℃における薬物複合体からのパクリタキセル遊離量を測定した。
薬学雑誌,114,351−355(1994)記載の方法に従い、血漿中からのパクリタキセル回収を行い、HPLCにより、化合物(3)、(7)、(11)および(15)から血漿中に遊離したパクリタキセル量を評価した。図29および図30には、パクリタキセル遊離の経時変化を示した。その結果、薬物複合体からのパクリタキセルの遊離速度はマウスおよびヒト血漿で同じ傾向が見られた。その順序は、遊離速度の大きい順に化合物(3)>(7)>(11)>(15)であり、これはスペーサーであるアミノ酸の立体障害の大きさと相関が見られた。
【0106】
実験例3
抗腫瘍効果の評価実験(1)
B16マウス黒色腫細胞5×106個を、C57BL/6系の雌性マウス(6週齢)の鼠径部皮下に移植し、8日後に、被検化合物として実施例1で得た化合物(3)、実施例2で得た化合物(7)および実施例4で得た化合物(15)を生理食塩水に溶解した被検液、およびパクリタキセルをエタノール−クレモホールEL(米国、シグマ社製)−生理食塩水に溶解した被検液を、一群7匹として尾静脈内に投与した。投与量はパクリタキセル換算で50mg/kgとした。無処置群は、生理食塩水を一群13匹として投与した。被検液投与後6日目に、マウスの腫瘍体積を測定することにより、抗腫瘍効果を判定した。無処置群の腫瘍体積を100としたときの、被検化合物投与群の平均腫瘍体積を表わした。腫瘍体積Vは、腫瘍を外部から計測し、長径a(mm)および短径b(mm)とするとき、下式により求めた。
【数1】
被検液投与後6日目の、投与量と腫瘍体積との関係は、図31に示される通りであった。本発明による化合物(3)の50mg/kg投与群の抗腫瘍効果は、パクリタキセルの50mg/kg投与群の抗腫瘍効果と比較して、有意に優れていた。化合物(7)は、パクリタキセルに比べて抗腫瘍効果が優れていた。又、化合物(15)は、パクリタキセルに比べて抗腫瘍効果が弱かった。パクリタキセル複合体の抗腫瘍効果については、効果の優れる順に(3)>(7)>(15)であり、実験例2における薬物遊離速度と相関が見られた。
【0107】
実験例4
マウスおよびヒト血漿中における、化合物(3)および(19)、(21)および(23)からのパクリタキセル遊離評価実験
実施例1で得た化合物(3)、実施例5で得た化合物(19)、実施例6で得た化合物(21)および実施例7で得た化合物(23)をそれぞれ生理食塩水に溶解し、パクリタキセルに換算した濃度が125μg/mlとなるよう調製した。これらの溶液20μlをマウスおよびヒト血漿200μlにそれぞれ添加し、37℃における薬物複合体からのパクリタキセル遊離量を測定した。
薬学雑誌,114,351−355(1994)記載の方法に従い、血漿中からのパクリタキセル回収を行い、HPLCにより、化合物(3)および(19)、(21)および(23)から血漿中に遊離したパクリタキセル量を評価した。図32および図33には、パクリタキセル遊離の経時変化を示した。
その結果、薬物複合体からのパクリタキセルの遊離速度はマウス血漿では、その順序は、遊離速度の大きい順に化合物(3)>(19)であり、これはスペーサーであるアミノ酸の立体障害の大きさと相関が見られた。更に、マウスおよびヒト血漿中における薬物複合体からの薬物遊離速度とスペーサーであるペプチドとの関係は、速度の大きい順に(21)>(23)の関係であり、薬物遊離速度は薬物に直接結合するアミノ酸の立体障害の大きさと相関が見られた。
【0108】
実験例5
化合物(5)および(17)の生理食塩水に対する溶解度実施例1で得た化合物(5)25mgを、1mlの生理食塩水に溶解したところ、完全に溶解した。これは、パクリタキセル36mgが10mlの生理食塩水に溶解したことになる。パクリタキセル換算では、3.6mg/ml(生理食塩水)の溶解度となる。
実施例4で得た化合物(17)20mgを、1mlの生理食塩水に溶解したところ、完全に溶解した。これは、パクリタキセル28mgが10mlの生理食塩水に溶解したことになる。パクリタキセル換算では、2.8mg/ml(生理食塩水)の溶解度となる。更に、パクリタキセル(インド国、DABUR社製)1mgは、10mlの生理食塩水に溶解しなかった。
【0109】
実験例6
マウスおよびヒト血漿中における、化合物(5)、(9)、(13)および(17)からのパクリタキセル遊離評価実験実施例1で得た化合物(5)、実施例2で得た化合物(9)、実施例3で得た化合物(13)および実施例4で得た化合物(17)を生理食塩水に溶解し、パクリタキセルに換算した濃度が250μg/mlとなるよう調製した。これらの溶液20μlをマウスおよびヒト血漿200μlにそれぞれ添加し、37℃における薬物複合体からのパクリタキセル遊離量を測定した。
薬学雑誌,114,351−355(1994)記載の方法に従い、血漿中からのパクリタキセル回収を行い、HPLCにより、化合物(5)、(9)、(13)および(17)から血漿中に遊離したパクリタキセル量を評価した。図34および図35には、パクリタキセル遊離の経時変化を示した。その結果、薬物複合体からのパクリタキセルの遊離速度はマウスおよびヒト血漿で同じ傾向が見られた。その順序は、遊離速度の大きい順に化合物(5)>(9)>(13)>(17)であり、これはスペーサーであるアミノ酸の立体障害の大きさと相関が見られた。
【0110】
実験例7
マウスおよびヒト血漿中における、化合物(24)、(26)、(28)および(30)からのデキサメタゾン遊離評価実験実施例8で得た化合物(24)、(26)、(28)および(30)を生理食塩水に溶解し、デキサメタゾン換算で80μg/mlとなるよう調製した。これらの溶液50μlをマウスおよびヒト血漿250μlにそれぞれ添加し、37℃、5分におけるそれぞれの薬物複合体からのデキサメタゾン遊離量をそれぞれ測定した。
血漿中のデキサメタゾン回収並びに定量は次のようにして行った。すなわち、血漿サンプル250μlに対し、250μlリン酸緩衝液(pH7.4)を加え、さらに内部標準として酢酸ヒドロコルチゾンを含むアセトニトリル−メタノール溶液(CH3CN/MeOH=4/1、酢酸ヒドロコルチゾン濃度=10ng/ml)を3ml加えた後遠心し、(3000rpm、10分、4℃)得られた上清700μlに、蒸留水700μlを加え、メンブランフィルター(0.2μm)にてろ過した後、HPLCにて定量した。
【0111】
HPLCの条件
カラム:Asahipak HIKARISIL C18(4.6×150mm)
流速:1.0ml/min
カラム温度:室温
検出波長:254nm
移動相:Linear gradient
0min:20%アセトニトリル水溶液(20%CH3CN/H2O)
20min:50%アセトニトリル水溶液(50%CH3CN/H2O)
その結果、薬物複合体からのデキサメタゾンの遊離速度はマウスおよびヒト血漿で同じ傾向が見られた。その順序は、遊離速度の大きい順に化合物(30)>(26)>(28)>(24)であり、これはスペーサーであるアミノ酸の立体障害の大きさと相関が見られた。即ち、(30)では極めて速やかに98%以上のデキサメタゾン遊離が見られたが、(26)では約95%のデキサメタゾン遊離が見られ、(28)では約70%のデキサメタゾン遊離が見られ、(24)では10%以下のデキサメタゾンの遊離が見られた。
【0112】
実験例8
化合物(33)および(35)の生理食塩水に対する溶解度実施例9で得た化合物(33)1gを、10mlの生理食塩水に溶解したところ、完全に溶解した。これは、パクリタキセル37mgが10mlの生理食塩水に溶解したことになる。パクリタキセル換算では、3.7mg/ml(生理食塩水)の溶解度となる。
実施例10で得た化合物(35)1gを、10mlの生理食塩水に溶解したところ、完全に溶解した。これは、パクリタキセル74mgが10mlの生理食塩水に溶解したことになる。パクリタキセル換算では、7.4mg/ml(生理食塩水)の溶解度となる。
更に、パクリタキセル(インド国、DABUR社製)1mgは、10mlの生理食塩水に溶解しなかった。
【0113】
実験例9
B16担癌マウス血漿中における、化合物(33)および(35)からのパクリタキセル遊離評価実験実施例9で得た化合物(33)又は実施例10で得た化合物(35)を生理食塩水に溶解し、パクリタキセルに換算した濃度が250μg/mlとなるよう調製した。これらの溶液20μlをB16担癌マウス血漿200μlにそれぞれ添加し、37℃における薬物複合体からのパクリタキセル遊離量を測定した。
薬学雑誌,114,351−355(1994)記載の方法に従い、血漿中からのパクリタキセル回収を行い、HPLCにより、化合物(33)又は(35)から血漿中に遊離したパクリタキセル量を評価した。図36には、パクリタキセル遊離の経時変化を示した。
その結果化合物(33)は、8〜24時間の間に遊離パクリタキセル濃度が最大となった。又、化合物(35)は、化合物(33)に比べパクリタキセルを穏やかに遊離した。
【0114】
実験例10
抗腫瘍効果の評価実験(2)
B16マウス黒色腫細胞5×106個を、C57BL/6系の雌性マウス(6週齢)の鼠径部皮下に移植し、8日後に、被検化合物として実施例9で得た化合物(33)を生理食塩水に溶解した被検液、およびパクリタキセルをエタノール−クレモホールEL(米国、シグマ社製)−生理食塩水に溶解した被検液を、一群7匹として尾静脈内に投与した。投与量はパクリタキセル換算で20および50mg/kgとした。無処置群は、生理食塩水を一群13匹として投与した。
被検液投与後6日目に、マウスの腫瘍体積を測定することにより、抗腫瘍効果を判定した。無処置群の腫瘍体積を100としたときの、被検化合物投与群の平均腫瘍体積を表わした。腫瘍体積Vは、腫瘍を外部から計測し、長径a(mm)および短径b(mm)とするとき、下式により求めた。
【数2】
被検液投与後6日目の、投与量と腫瘍体積との関係は、図37に示される通りであった。本発明による薬物複合体(33)の50mg/kg投与群の抗腫瘍効果は、パクリタキセルの50mg/kg投与群の抗腫瘍効果と比較して、有意に優れていた。
【0115】
実験例11
抗腫瘍効果の評価実験(3)
Colon26腫瘍細胞4%懸濁液を、Balb/C系の雌性マウス(6週齢)の側腹部皮下に移植し、被検化合物として実施例9で得た化合物(33)を生理食塩水に溶解した被検液、およびパクリタキセルをエタノール−クレモホールEL(米国、シグマ社製)−生理食塩水に溶解した被検液を、一群3匹として尾静脈内に投与した。投与量はパクリタキセル換算で50mg/kgとした。無処置群は、一群5匹とした。
細胞移植後2日目に、第1回被検液を投与し、その後4日毎に、被検液を尾静脈内に投与した。マウスの腫瘍体積を測定することにより、抗腫瘍効果を判定した。無処置群および被検液投与群の平均腫瘍体積の経時変化を示した。腫瘍体積Vは、腫瘍を外部から計測し、長径a(mm)および短径b(mm)とするとき、下式により求めた。
【数3】
被検液投与後の、腫瘍体積の経時変化は、図38に示される通りであった。本発明による薬物複合体(33)の50mg/kg投与群の抗腫瘍効果は、パクリタキセルの50mg/kg投与群の抗腫瘍効果と比較して、有意に優れていた。
【0116】
【発明の効果】
本発明は、薬物複合体であって、該薬物複合体からの薬物遊離速度が確実に制御されて、薬物の標的組織への移行を高めたり、あるいは又薬物の薬効を増強することができるので、医薬の分野でその価値は極めて高い。
例えば、薬物がタキサン類であり、スペーサーがアミノ酸であり、薬物単体がカルボキシアルキルデキストランである薬物複合体は、優れた薬物遊離速度の制御が可能であり、しかも薬物のタキサン類に比べ生理食塩水に対する溶解性が極めて向上し、溶解補助剤無しでの静脈内投与を可能とするなど、種々の有利な効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1で得たカルボキシメチル化デキストランナトリウム塩(1)のゲル濾過溶出パターン(検出:214nmにおける紫外吸光度)を表わす。
【図2】図2は、実施例1で得たカルボキシメチル化デキストランナトリウム塩(1)のゲル濾過溶出パターン(検出:屈折率)を表わす。
【図3】図3は、実施例1で得たカルボキシメチル化デキストラン−2’−Gly−パクリタキセル(3)のゲル濾過溶出パターン(検出:227nmにおける紫外吸光度)を表わす。
【図4】図4は、実施例1で得たカルボキシメチル化デキストラン−2’−Gly−パクリタキセル(3)の紫外部吸光スペクトルを表わす。(濃度:672μg/ml、溶媒:水)
【図5】図5は、実施例1で得たPEG−2’−Gly−パクリタキセル(5)の紫外部吸光スペクトルを表わす。(濃度:205μg/ml、溶媒:水)
【図6】図6は、実施例2で得たカルボキシメチル化デキストラン−2’−Ala−パクリタキセル(7)のゲル濾過溶出パターン(検出:227nmにおける紫外吸光度)を表わす。
【図7】図7は、実施例2で得たカルボキシメチル化デキストラン−2’−Ala−パクリタキセル(7)の紫外部吸光スペクトルを表わす。(濃度:698μg/ml、溶媒:水)
【図8】図8は、実施例2で得たPEG−2’−Ala−パクリタキセル(9)の紫外部吸光スペクトルを表わす。(濃度:204μg/ml、溶媒:水)
【図9】図9は、実施例3で得たカルボキシメチル化デキストラン−2’−Leu−パクリタキセル(11)のゲル濾過溶出パターン(検出:227nmにおける紫外吸光度)を表わす。
【図10】図10は、実施例3で得たカルボキシメチル化デキストラン−2’−Leu−パクリタキセル(11)の紫外部吸光スペクトルを表わす。(濃度:644μg/ml、溶媒:水)
【図11】図11は、実施例3で得たPEG−2’−Leu−パクリタキセル(13)の紫外部吸光スペクトルを表わす。(濃度:209μg/ml、溶媒:水)
【図12】図12は、実施例4で得たカルボキシメチル化デキストラン−2’−Ile−パクリタキセル(15)のゲル濾過溶出パターン(検出:227nmにおける紫外吸光度)を表わす。
【図13】図13は、実施例4で得たカルボキシメチル化デキストラン−2’−Ile−パクリタキセル(15)の紫外部吸光スペクトルを表わす。(濃度:628μg/ml、溶媒:水)
【図14】図14は、実施例4で得たPEG−2’−Ile−パクリタキセル(17)の紫外・可視部吸光スペクトルを表わす。(濃度:214μg/ml、溶媒:水)
【図15】図15は、実施例5で得たカルボキシメチル化デキストラン−2’−Phe−パクリタキセル(19)のゲル濾過溶出パターン(検出:227nmにおける紫外吸光度)を表わす。
【図16】図16は、実施例5で得たカルボキシメチル化デキストラン−2’−Phe−パクリタキセル(19)の紫外部吸光スペクトルを表わす。(濃度:814μg/ml、溶媒:水)
【図17】図17は、実施例6で得たカルボキシメチル化デキストラン−2’−Phe−Gly−パクリタキセル(21)のゲル濾過溶出パターン(検出:227nmにおける紫外吸光度)を表わす。
【図18】図18は、実施例6で得たカルボキシメチル化デキストラン−2’−Phe−Gly−パクリタキセル(21)の紫外部吸光スペクトルを表わす。(濃度:940pg/ml、溶媒:水)
【図19】図19は、実施例7で得たカルボキシメチル化デキストラン−2’−Gly−Phe−パクリタキセル(23)のゲル濾過溶出パターン(検出:227nmにおける紫外吸光度)を表わす。
【図20】図20は、実施例7で得たカルボキシメチル化デキストラン−2’−Gly−Phe−パクリタキセル(23)の紫外部吸光スペクトルを表わす。(濃度:854μg/ml、溶媒:水)
【図21】図21は、実施例8で得たPEG−イソロイシル−21−デキサメタゾン(25)の紫外部吸光スペクトルを表わす。(濃度:245μg/ml、溶媒:水)
【図22】図22は、実施例8で得たPEG−グリシル−21−デキサメタゾン(27)の紫外部吸光スペクトルを表わす。(濃度:201μg/ml、溶媒:水)
【図23】図23は、実施例8で得たPEG−アラニル−21−デキサメタゾン(29)の紫外部吸光スペクトルを表わす。(濃度:163μg/ml、溶媒:水)
【図24】図24は、実施例8で得たPEG−21−デキサメタゾン(31)の紫外部吸光スペクトルを表わす。(濃度:227μg/ml、溶媒:水)
【図25】図25は、実施例9で得たカルボキシメチル化デキストラン−2’−Gly−Gly−Phe−Gly−パクリタキセル(33)の紫外部吸光スペクトルを表わす。(濃度:700μg/ml、溶媒:水)
【図26】図26は、実施例9で得たカルボキシメチル化デキストラン−2’−Gly−Gly−Phe−Gly−パクリタキセル(33)のゲル濾過溶出パターン(検出:220nmにおける紫外吸光度)を表わす。
【図27】図27は、実施例10で得たカルボキシメチル化デキストラン−7−Gly−Gly−Phe−Gly−パクリタキセル(35)の紫外部吸光スペクトルを表わす。(濃度:428μg/ml、溶媒:水)
【図28】図28は、実施例10で得たカルボキシメチル化デキストラン−7−Gly−Gly−Phe−Gly−パクリタキセル(35)のゲル濾過溶出パターン(検出:220nmにおける紫外吸光度)を表わす。
【図29】図29は、実験例2における、37℃のマウス血漿中における化合物(3)、(7)、(11)および(15)からのパクリタキセル遊離の経時変化を示すグラフである。
【図30】図30は、実験例2における、37℃のヒト血漿中における化合物(3)、(7)、(11)および(15)からのパクリタキセル遊離の経時変化を示すグラフである。
【図31】図31は、実験例3における、化合物(3)(7)および(15)の担癌マウスにおける抗腫瘍効果を示すグラフである。
【図32】図32は、実験例4における、37℃のマウス血漿中における化合物(3)および(19)、(21)および(23)からのパクリタキセル遊離の経時変化を示すグラフである。
【図33】図33は、実験例4における、37℃のヒト血漿中における化合物(21)および(23)からのパクリタキセル遊離の経時変化を示すグラフである。
【図34】図34は、実験例6における、37℃のマウス血漿中における化合物(5)、(9)、(13)および(17)からの薬物遊離の経時変化を示すグラフである。
【図35】図35は、実験例6における、37℃のヒト血漿中における化合物(5)、(9)、(13)および(17)からの薬物遊離の経時変化を示すグラフである。
【図36】図36は、実験例9における、37℃のマウス血漿中における化合物(33)および(35)からの薬物遊離の経時変化を示すグラフである。
【図37】図37は、実験例10における評価結果、被検化合物の静脈内投与後6日目の被検液投与量と平均腫瘍体積との関係を示すグラフである。
【図38】図38は、実験例11における評価結果、無処置群および被検液投与群の平均腫瘍体積の経時変化を示すグラフである。
Claims (5)
- 下記(1)式で表わされるタキサン類の複合体であって、担体(A)とスペーサー(B)とは(A)のカルボキシル基と(B)のアミノ基との間に形成されたアミド結合を介して結合し、スペーサー(B)とタキサン類(C)は(B)のカルボキシル基と(C)の2’位の水酸基との間に形成されたエステル結合を介して結合していることを特徴とする薬物複合体。
(A)−(B)−(C) (1)
(式中、(A)はカルボキシルアルキルデキストラン、(B)はグリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、及びフェニルアラニンからなる群から選ばれるアミノ酸あるいはグリシン及びフェニルアラニンからなるペプチドよりなるスペーサー、(C)は下記式(2)で表されるタキサン類を表わす。)
- 前記タキサン類(C)が、パクリタキセルであることを特徴とする請求項1または2に記載の薬物複合体。
- 前記タキサン類(C)が、ドセタキセルであることを特徴とする請求項1または2に記載の薬物複合体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の薬物複合体を含有してなることを特徴とする抗腫瘍剤。
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