JP2002030002A - 薬物複合体 - Google Patents

薬物複合体

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JP2002030002A
JP2002030002A JP2000215919A JP2000215919A JP2002030002A JP 2002030002 A JP2002030002 A JP 2002030002A JP 2000215919 A JP2000215919 A JP 2000215919A JP 2000215919 A JP2000215919 A JP 2000215919A JP 2002030002 A JP2002030002 A JP 2002030002A
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JP2000215919A
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Kazuhiro Inoue
和泓 井上
Hiroshi Suzaki
浩 洲崎
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Daiichi Pharmaceutical Co Ltd
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Daiichi Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 直接又はアミノ酸、2〜8アミノ酸オリ
ゴペプチド若しくはそれらのリンカー付加体からなるス
ペーサーを介して、ジカルボキシC1-3アルキルデキス
トランポリアルコールと医薬化合物の残基とが結合して
なる薬物複合体。 【効果】 本発明の薬効複合体を用いれば、薬物担持能
力が高く、薬物を標的部位に確実に到達させることがで
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医薬化合物を標的
部位に効率良く到達させることのできる薬物複合体及び
医薬化合物デリバリー用キャリヤーに関する。
【0002】
【従来の技術】抗腫瘍剤は、静脈内投与や経口投与など
の投与経路により全身的に投与された後、特定の腫瘍部
位に移行して癌細胞の増殖を阻害ないし抑制することに
より治療効果を発揮する。しかしながら、全身投与され
た抗腫瘍剤は、血中から肝臓・網内系臓器に速やかに取
り込まれたり、あるいは速やかに尿中排泄されるため
に、血中濃度が低下して腫瘍部位への移行が十分でない
場合がある。また、通常の抗腫瘍剤自体では腫瘍部位へ
の移行選択性(腫瘍選択性)が低いために、抗腫瘍剤が
全身の様々な細胞や組織に満遍なく分布してしまい、正
常な細胞や組織に対しても細胞毒として作用するので、
嘔吐、発熱、あるいは脱毛などの副作用を極めて高率に
発生させるという問題がある。従って、抗腫瘍剤を効率
的かつ選択的に腫瘍部位に移行させる手段の開発が求め
られている。
【0003】このような手段の一つとして、多糖高分子
に抗腫瘍剤を結合させて、抗腫瘍剤の血中からの消失を
遅延させ、かつ、癌組織への指向性を高める方法が提案
されている。例えば、EP0280474-A2には、デキストラン
の過ヨウ素酸酸化物に対してアミノマロン酸を結合さ
せ、これに白金系抗腫瘍剤を結合させた複合体が開示さ
れている。また、ACS symp. Ser., 709, 266-278(1998)
やBiol. Pharm. Bull.,22, 756-761(1999)には、ジカル
ボキシメチルデキストランに白金系抗腫瘍剤を結合させ
た錯体が開示されている。また、WO97/46260には、モノ
カルボキシアルキルデキストランポリアルコールと医薬
化合物とをペプチドを介して結合させた複合体が開示さ
れている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
従来の多糖高分子と抗腫瘍剤との複合体は、高分子部分
の生体内分解性、抗腫瘍剤の担持能力などの面で十分満
足できるものではない。従って、医薬化合物をより効率
的に標的部位に移行させることのできるキャリヤー及び
これを用いた薬物複合体の開発が望まれている。
【0005】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者は、生
体内分解性に優れたデキストランポリアルコールに着目
し、これにジカルボキシC1-3アルキル基を導入したジ
カルボキシC1-3アルキルデキストランポリアルコール
と医薬化合物とを直接又は特定のスペーサーを介して結
合させれば、薬物担持能力が高く、かつ生体内分解性が
良好で、標的部位への薬物到達性に優れるとともに、水
に対する溶解性が高いので特に注射剤として有用な薬物
複合体が得られることを見出した。また、デキストラン
ポリアルコールのジカルボキシアルキル化反応を水酸化
セシウムの存在下に行うとジカルボキシアルキル基が効
率良く導入されることも見出した。
【0006】すなわち、本発明は、ジカルボキシC1-3
アルキルデキストランポリアルコールと医薬化合物の残
基とが結合してなる薬物複合体を提供するものである。
また、本発明は、ジカルボキシC1-3アルキルデキスト
ランポリアルコールと医薬化合物の残基とが1個のアミ
ノ酸からなるスペーサー又はペプチド結合した2〜8個
のアミノ酸からなるスペーサーを介して結合してなる薬
物複合体を提供するものである。また、本発明は、ジカ
ルボキシC1-3アルキルデキストランポリアルコールと
医薬化合物の残基とがリンカーを付加した1個のアミノ
酸からなるスペーサー又はリンカーを付加したペプチド
結合した2〜8個のアミノ酸からなるスペーサーを介し
て結合してなる薬物複合体を提供するものである。ま
た、本発明は、ジカルボキシC1-3アルキルデキストラ
ンポリアルコールを含有する医薬化合物デリバリー用キ
ャリヤーを提供するものである。さらに本発明は、上記
薬物複合体製造のためのジカルボキシC1-3アルキルデ
キストランポリアルコールの使用を提供するものであ
る。さらにまた、本発明はハロゲン化C1-3アルキルジ
カルボン酸又はそのエステルとデキストランポリアルコ
ールとを水酸化セシウムの存在下に反応させることを特
徴とするジカルボキシC1-3アルキルデキストランポリ
アルコールの製造法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の医薬化合物デリバリー用
キャリヤーは、ジカルボキシC1-3アルキルデキストラ
ンポリアルコールである。当該ジカルボキシC1-3アル
キルデキストランポリアルコールは、デキストランポリ
アルコールのヒドロキシ基にジカルボキシC1-3アルキ
ル基が導入された化合物である。そして、ジカルボキシ
1-3アルキルデキストランポリアルコールを構成する
デキストランポリアルコールは、実質的に完全にポリア
ルコール化可能な条件下においてデキストランを処理し
て得られたデキストランポリアルコールであることが好
ましい。例えば、デキストランに大過剰の過ヨウ素酸ナ
トリウムと水素化ホウ素ナトリウムとを順次作用させて
デキストランを実質的に完全にポリアルコール化したデ
キストランポリアルコールを出発原料として用いるのが
好ましい。もっとも、デキストランのポリアルコール化
の方法は上記のものに限定されることはなく、当業者に
利用可能なものであればいかなる方法を採用してもよ
い。
【0008】デキストランの種類は特に限定されず、α
−D−1,6−結合を任意の割合で含んでいてもよい。
例えば、α−D−1,6−結合の割合が85%以上、9
0%以上、又は95%以上のデキストランなどを用いる
ことができる。デキストランの分子量は特に限定されな
いが、例えば10,000程度〜2,000,000程
度のもの、好ましくは50,000程度〜800,00
0程度のものを用いることができる。
【0009】ジカルボキシC1-3アルキル基としては、
ジカルボキシメチル基、1,2−ジカルボキシエチル
基、1,1−ジカルボキシエチル基、1,3−ジカルボ
キシプロピル基等が挙げられるが、ジカルボキシメチル
基が特に好ましい。
【0010】ジカルボキシC1-3アルキルデキストラン
ポリアルコールは、例えばデキストランポリアルコール
にハロゲン化C1-3アルキルジカルボン酸又はそのエス
テルを反応させることにより得られる。ここで用いられ
るハロゲン化C1-3アルキルジカルボン酸又はそのエス
テルとしては、ジエチルブロモマロネートのハロゲン化
マロン酸又はそのエステル、ブロモコハク酸等が挙げら
れる。このとき塩基の存在下に反応を行うのが好まし
く、当該塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ム、水酸化セシウム等の水酸化アルカリを用いることも
できる。水酸化セシウムを用いるとジカルボキシC1-3
アルキル基の導入効率が特に向上する。
【0011】ジカルボキシC1-3アルキル化反応は、例
えば、デキストランポリアルコールを反応に関与しない
不活性溶媒(例えば、水、N,N−ジメチルホルムアミ
ド、ジメチルスルホキシド等)に溶解し、塩基(例え
ば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化セシウ
ム等)の存在下にハロゲン化C1-3アルキルジカルボン
酸又はそのエステルを添加し、氷冷下ないし100℃程
度の温度範囲で数分ないし数日間反応させればよい。
【0012】ジカルボキシC1-3アルキル基の導入の程
度は、例えば、ジカルボキシC1-3アルキル化の反応温
度や試薬として用いるハロゲン化C1-3アルキルジカル
ボン酸又はそのエステルの量を適宜選択することにより
容易に調節可能である。デキストランポリアルコールの
水酸基に対するジカルボキシC1-3アルキル化の程度は
特に限定されないが、例えば、構成糖残基あたり0.0
1〜2.0の範囲、好ましくは、0.1〜0.5の範囲
である。なお、ジカルボキシC1-3アルキル化度は、滴
定法により糖残基あたりのカルボン酸の置換を求めた
後、ジカルボキシC 1-3アルキル基1残基あたりカルボ
ン酸が2残基存在することから、得られたカルボン酸の
置換度の1/2を糖残基あたりのジカルボキシC1-3
ルキル化度とした。ジカルボキシC1-3アルキルデキス
トランポリアルコールの分子量は、プルランを標準とし
てゲル濾過法で測定した場合に5,000〜500,0
00程度、好ましくは50,000〜500,000程
度、より好ましくは200,000〜500,000程
度である。
【0013】当該医薬化合物デリバリー用キャリヤーに
直接又は前記のスペーサー(単にスペーサーというとき
は、リンカーを付加したスペーサーを含む)を介して結
合させ得る医薬化合物としては、カルボキシル基又は当
該スペーサーに反応し得る官能基を有する医薬化合物で
あれば特に制限されないが、例えば金属原子、アミノ
基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カ
ルボキサミド基、ウレタン基等を有する医薬化合物が好
ましい。当該医薬化合物としては、抗腫瘍剤、抗炎症剤
等が挙げられる。抗腫瘍剤としては、白金系抗腫瘍剤、
カンプトテシン誘導体、アンスラサイクリン系抗腫瘍
剤、タキサン系抗腫瘍剤、フッ化ピリミジン系代謝拮抗
剤、ビンカアルカロイド系抗腫瘍剤、葉酸拮抗剤等が挙
げられる。ここで白金系抗腫瘍剤としてはシスプラチ
ン、カルボプラチン、オキサリプラチンが好ましい。カ
ンプトテシン誘導体としては(特開平6−87746号
公報に記載された抗腫瘍剤、好ましくは(1S,9S)
−1−アミノ−9−エチル−5−フルオロ−2,3−ジ
ヒドロ−9−ハイドロキシ−4−メチル−1H,12H
−ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インド
リジノ[1,2−b]キノリン−10,13(9H,1
5H)−ジオン等)などが挙げられる。タキサン誘導体
としてはタキソール、タキソテールなどが挙げられる。
フッ化ピリミジン系代謝拮抗剤としては5−フルオロウ
ラシルなどが挙げられる。ビンカアルカロイド系抗腫瘍
剤としてはビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシ
ン、ナベルビン等が挙げられる。葉酸拮抗剤としてはメ
トトレキセート等が挙げられる。これらのうち、白金系
抗腫瘍剤、特にシスプラチン、カルボプラチン又はオキ
サリプラチンが好ましい。また抗炎症剤としては、コハ
ク酸ヒドロコルチゾン、コハク酸プレドニゾロンなどの
ステロイド系抗炎症剤;メフェナム酸、フルフェナム
酸、ジクロフェナク、イブプロフェン、チノリジンなど
の非ステロイド系抗炎症剤が挙げられる。
【0014】本明細書において医薬化合物の残基とは、
キャリヤーと直接又はスペーサーを介して医薬化合物残
基との結合が医薬化合物中の反応性官能基とキャリヤー
のカルボキシル基又はスペーサー中の反応性官能基との
反応(例えば脱水縮合など)により形成されたと仮定し
た場合において、結合後の化合物中に存在する医薬化合
物に由来する部分構造を意味している。例えば、医薬化
合物がD−NH2,D−COOH,D−COOR,D−
OH,D−SH,D−CONH2,D−NH−COOR
(Dは医薬化合物の主構造、Rは低級アルキル基等)で
表される場合、医薬化合物の残基はそれぞれD−NH−
(D−NH−CO−Qなど)、D−CO−(D−CO−
NH−Q,D−CO−O−Q,D−CO−S−Qな
ど)、D−CO−(D−CO−NH−Q,D−CO−O
−Q,D−CO−S−Qなど)、D−O−(D−O−C
O−Q,D−O−Qなど)、D−S−(D−S−CO−
Q,D−S−Qなど)、D−CONH−(D−CO−N
H−CO−Qなど)、D−NH−CO−(D−NH−C
O−O−Q,D−NH−CO−NH−Qなど)で表され
る(カッコ内はキャリヤー又はスペーサーと医薬化合物
残基との結合を示し、Qはキャリヤー又はスペーサーか
ら反応性官能基を除いた残りの部分構造を示す)。医薬
化合物の残基は、スペーサーのN末端アミノ基又はC末
端カルボキシル基のほか、スペーサーを構成するアミノ
酸に存在する反応性官能基に結合していてもよい。
【0015】前記医薬化合物デリバリー用キャリヤーと
医薬化合物とを直接結合させて本発明の薬物複合体を製
造するには、例えばこれらを錯体形成配位結合、エステ
ル結合、チオエステル結合、酸アミド結合、酸無水物形
成などの手段で結合させることにより製造される。例え
ば錯体形成反応の場合には、通常水溶液中で反応させれ
ばよい。エステル結合形成反応の場合には、種々のカル
ボジイミド類などの種々の脱水縮合剤の存在下に行い、
その際必要に応じてジメチルアミノピリジンなどの活性
剤を加えるとよい。また酸アミド結合形成反応の場合に
は、種々のカルボジイミド類などの種々の脱水縮合剤の
存在下に行えばよい。このような直接結合した薬物複合
体のうち、ジカルボキシメチルデキストランポリアルコ
ールと白金系抗腫瘍剤が直接配位結合した薬物複合体が
特に好ましい。
【0016】前記医薬化合物デリバリー用キャリヤーと
医薬化合物とを結合させるためのスペーサーとしては、
1個のアミノ酸からなるスペーサー、ペプチド結合した
2〜8個のアミノ酸からなるスペーサー、リンカーを付
加した1個のアミノ酸からなるスペーサー、リンカーを
付加したペプチド結合した2〜8個のアミノ酸からなる
スペーサーが挙げられる。これらアミノ酸又はオリゴペ
プチドに付加されるリンカーとしては例えばWO99/
61061記載のパラアミノベンジルオキシカルボニル
リンカー、特願2000−79655号記載の置換又は
無置換のアミノメチレンリンカーが挙げられる。
【0017】より具体的には、スペーサーは、1個のア
ミノ酸の残基(アミノ酸のアミノ基及びカルボキシル基
からそれぞれ1個の水素原子及び1個の水酸基を除いた
残基を意味する)、又はペプチド結合した2ないし8個
のアミノ酸からなるオリゴペプチドの残基(N末端のア
ミノ基及びC末端のカルボキシル基からそれぞれ1個の
水素原子及び1個の水酸基を除いた残基を意味する)の
形態を有している。好ましいスペーサーは2〜6個のア
ミノ酸からなるオリゴペプチドの残基又はリンカーが付
加した2〜6個のアミノ酸からなるオリゴペプチドの残
基である。
【0018】スペーサーを構成するアミノ酸の種類は特
に限定されないが、例えば、L−又はD−アミノ酸、好
ましくはL−アミノ酸を用いることができ、α−アミノ
酸のほか、β−アラニン、ε−アミノカプロン酸、γ−
アミノ酪酸などを用いてもよい。このようなα−アミノ
酸以外のアミノ酸は、キャリヤーに近接した位置に配置
されることが好ましい。スペーサーの結合方向は特に限
定されないが、一般的には、ジカルボキシC1-3アルキ
ルデキストランポリアルコールのカルボキシル基にスペ
ーサーのN末端を酸アミド結合によって結合し、医薬化
合物のアミノ基にスペーサーのC末端を結合することが
できる。また、例えば、ペプチドスペーサーの構成単位
としてリジン残基を含めておき、リジン残基のα−アミ
ノ基及びε−アミノ基をそれぞれ他のアミノ酸のカルボ
キシル基と酸アミド結合させると、ペプチドスペーサー
の両末端がN末端になるので、医薬化合物のカルボキシ
ル基を結合することが可能になる。さらに、スペーサー
中に1個又は2個以上のジアミン化合物又はジカルボン
酸化合物の残基(例えばエチレンジアミンなどのジアミ
ンの残基やコハク酸などのジカルボン酸の残基)を構成
単位として含めておき、それぞれ両末端がN末端のスペ
ーサー及び両末端がC末端のスペーサーを利用してもよ
い。
【0019】スペーサーのアミノ酸配列は特に限定され
ないが、例えば、スペーサーが−X−Z−で表されるジ
ペプチドの残基(Xは疎水性アミノ酸の残基を示し、Z
は親水性アミノ酸の残基を示し、−X−Z−は疎水性ア
ミノ酸(X)と親水性アミノ酸(Z)とがそれぞれN末
端側及びC末端側となってペプチド結合したジペプチド
のN末端のアミノ基及びC末端のカルボキシル基からそ
れぞれ1個の水素原子及び1個の水酸基を除いた残基を
意味する)であるか、又は該ジペプチドの残基を部分ペ
プチド配列として含むスペーサーを好適に用いることが
できる。疎水性アミノ酸としては、例えば、フェニルア
ラニン、チロシン、ロイシンなどを用いることができ、
親水性アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン
などを用いることができる。スペーサーがこのようなジ
ペプチド残基の繰り返し配列(例えば−X−Z−X−Z
−,−X−Z−X−Z−X−Z−など)を有していても
よい。このようなジペプチド構造を含むスペーサーを用
いると、スペーサーがペプチダーゼが豊富であると考え
られる腫瘍部位や炎症部位で加水分解され、当該部位に
おいて医薬化合物が高濃度に遊離する。上記ジペプチド
を含むスペーサーと医薬化合物とが結合して形成される
部分構造は本発明の薬物複合体の好ましい部分構造であ
る。医薬化合物の残基として、例えば、濃度依存型の抗
腫瘍剤(例えば、ドキソルビシン)などを用いる場合に
は、−X−Z−で示される上記のジペプチド残基からな
るスペーサー又は該ジペプチド残基を部分ペプチド配列
として含むスペーサーを用いることが特に好ましい。ま
た、医薬化合物の残基として、一定の濃度以上で作用時
間の持続を必要とする時間依存型の抗腫瘍剤を用いる場
合にも、上記のスペーサーを用いることによって高い抗
腫瘍効果を達成できる場合があり、例えば、特開平6−
87746号公報に記載された抗腫瘍剤、好ましくは前
記の抗腫瘍剤が挙げられる。一般的には、上記のスペー
サーに限定されることなく、抗腫瘍剤の作用機作、体内
動態や毒性発現の特徴、体内での抗腫瘍剤の遊離性など
の観点から好ましいスペーサーを選択する必要がある。
選択し得るスペーサーとしては国際公開WO97/46
260記載のものなどが挙げられる。
【0020】スペーサーを介して結合する薬物複合体に
関しては、ジカルボキシC1-3アルキルデキストランポ
リアルコールのカルボキシル基に対して、医薬化合物の
残基と結合させたスペーサーを結合することにより本発
明の薬物複合体を製造することができる。スペーサーと
ジカルボキシC1-3アルキルデキストランポリアルコー
ルのカルボキシル基との結合は、一般的には、スペーサ
ーのN末端アミノ基とジカルボキシC1-3アルキルデキ
ストランポリアルコールのカルボキシル基とを酸アミド
結合により結合させることにより形成できる。もっと
も、スペーサーとジカルボキシC1-3アルキルデキスト
ランポリアルコールのカルボキシル基との結合は上記の
ものに限定されることはなく、他の化学結合や1又は2
以上のスペーサーを利用した結合であってもよい。例え
ば、スペーサーのC末端カルボキシル基とジカルボキシ
1-3アルキルデキストランポリアルコールのカルボキ
シル基とにより酸無水物を形成させてもよく、また、エ
チレンジアミン等のジアミン化合物をスペーサーとして
用いてそれぞれのカルボキシル基をジアミンの各アミノ
基に酸アミド結合させてもよい。スペーサーのN末端ア
ミノ基とジカルボキシC1-3アルキルデキストランポリ
アルコールのカルボキシル基とを酸アミド結合により結
合させる場合には、ペプチド類の合成に用いる通常の脱
水縮合剤、例えば、N,N′−ジシクロヘキシルカルボ
ジイミド(DCC)のようなN,N′−ジシクロアルキ
ルカルボジイミド類、1−エチル−3−(3−ジメチル
アミノプロピル)カルボジイミド(EDAPC)等のカ
ルボジイミド誘導体、1−ヒドロキシベンゾトリアゾー
ル(HOBT)のようなベンゾトリアゾール誘導体のほ
か、1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−
ジヒドロキシキノリン(EEDQ)などを用いることが
できる。また、活性エステル法や酸ハライド法などによ
り反応を行ってもよい。
【0021】ジカルボキシC1-3アルキルデキストラン
ポリアルコールに導入する医薬化合物残基の量は特に限
定されないが、医薬化合物残基の物理化学的性質、並び
に本発明の薬物複合体の体内動態、薬効、及び毒性など
の観点から適宜選択すべきである。一般的には、0.1
〜30重量%、好ましくは1〜15重量%、さらに好ま
しくは3〜10重量%、特に好ましくは5〜6重量%程
度の範囲を選択することができる。ジカルボキシC1-3
アルキルデキストランポリアルコールに導入された医薬
化合物残基の割合は、例えば、吸光度分析などにより容
易に決定することが可能である。
【0022】本発明の薬物複合体は、医薬化合物の残基
の種類(例えば、抗腫瘍剤又は抗炎症剤などの医薬化合
物の残基)に応じて、所望の医薬活性を腫瘍部位や炎症
部位などの局所において特異的に発現させることがで
き、かつ、医薬化合物自体の有する毒性を低減できると
いう特徴を有する。本発明の薬物複合体のジカルボキシ
1-3アルキルデキストランポリアルコール部分は極め
て優れた血中滞留性及び腫瘍・炎症部位への集積性を有
するので薬物送達のキャリヤーとして有用であり、本発
明の薬物複合体は腫瘍選択性及び炎症部位選択性を有し
ている。また、キャリヤーがジカルボキシC1-3アルキ
ル基を有するため、糖残基あたりの医薬化合物の担持能
力が向上している。さらに、本発明の薬物複合体は、水
に対する溶解性が向上していることから、注射剤として
用いる場合に特に有用である。特に本発明の薬物複合体
は、モノカルボキシメチルデキストランポリアルコール
をキャリヤーとして用いた場合に比べて、糖残基あたり
の医薬化合物の担持能力が優れており、さらに白金錯体
のような2座配位子化合物を結合させた場合の水溶性の
向上は顕著である。また、本発明の薬物複合体は、ジカ
ルボキシメチルデキストランをキャリヤーとして用いた
白金系抗腫瘍剤の複合体に比べて、リン酸緩衝液中での
白金錯体の遊離速度が遅く、この複合体よりもEPR効
果(enhanced permeability and retention effect:Ma
tsumura Y., Maeda H.:Cancer Res. 46:6367-6392, 1
986)が優れている。
【0023】本発明の薬物複合体を含む医薬は、通常、
凍結乾燥品などの形態でバイアル等に充填することがで
き、用時溶解型の注射用又は点滴用製剤等の非経口投与
用製剤として臨床に提供されるが、本発明の医薬の製剤
形態は上記態様に限定されることはない。上記製剤の製
造には、例えば、溶解補助剤、pH調整剤、安定化剤な
ど当業界で利用可能な製剤用添加物を用いることができ
る。本発明の医薬の投与量は特に限定されないが、通常
は、医薬化合物残基を構成する医薬化合物の投与量、本
発明の薬物複合体中に導入された医薬化合物の残基の
量、患者の状態や疾患の種類などを勘案して決定すべき
である。例えば、シスプラチンが約5重量%程度の割合
で導入された本発明の薬物複合体を非経口投与する場合
には、一般にシスプラチンとして2〜200mg/m2投与
するのが好ましい。
【0024】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に
説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定される
ことはない。
【0025】実施例1 ジカルボキシメチルデキストランポリアルコール−シス
−ジ(1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金錯体[DCM-
Dex-PA-Pt(Dach)]の合成:デキストランT500(50
g,ファルマシア社製, 分子量500K)を0.1M酢酸
緩衝液(pH5.5,5000mL)に溶解し、4℃に冷
却した。過ヨウ素酸ナトリウム(165.0g)を水
(5000mL)に溶解した溶液を加えた。遮光しながら
4℃で10日間攪拌した後、エチレングリコール(3
5.0mL)を加え、一晩攪拌した。反応液を8M水酸化
ナトリウム水溶液を用いてpH6.5に調整した。水素
化ホウ素ナトリウム(70g)を水(2000mL)に溶
解した溶液を加えた後、一晩攪拌した。酢酸でpH5.
5に調整して4℃で1時間攪拌した後、8M水酸化ナト
リウム水溶液を用いてpH7.5に調整した。得られた
水溶液をバイオマックス−50膜を用いて限外濾過法に
よる脱塩を行った。膜を通過しない残留溶液を凍結乾燥
して、デキストランポリアルコール(20.2g)を得
た。この物質のピークトップ分子量(ゲル濾過、プルラ
ン標準)は、180Kであった。このデキストランポリ
アルコール(500mg)を、水酸化セシウム(11.5
9g)を水(10mL)に溶かして得られる水溶液に加
え、室温で溶解させた。
【0026】水酸化セシウム(14.03g)を水(1
0mL)、メタノール(10mL)の混合液に溶解した後、
氷冷した。ジエチルブロモマロネート(7.13mL)を
加え、氷冷しながら5時間反応させた。濃縮した後、上
で得られたデキストランポリアルコールの水溶液に、氷
冷下で加え、室温で一晩反応させた。この反応液を酢酸
でpHを8に調整した。0.1M食塩水を用い、ナトリ
ウムイオン濃度を一定に保ちながら、バイオマックス−
50膜を用いた限外濾過を行った。さらに、純水を用い
て限外濾過法による脱塩を行い、膜を通過しない残留溶
液を凍結乾燥してジカルボキシメチルデキストランポリ
アルコールのナトリウム塩(400mg)を得た。この物
質の分子量(ゲル濾過、プルラン標準)は327Kであ
り、ジカルボキシメチル化度は0.2であった。
【0027】シス−ジ(1,2−ジアミノシクロヘキサ
ン)ジクロロプラチナ[PtCl2(Dach)](226mg)に水
130mLを加えて、60℃で2時間加熱した。硝酸銀
(202mg)を水(0.5mL)に溶かした水溶液を加え
てさらに60℃で19時間加熱した。反応液を遠心分離
(3000rpm、10分)した後、上清をミリポアフィ
ルター(0.22μm)で濾過して、Pt(NO3)2(Dach)の
水溶液を得た。原子吸光法により定量したところ、白金
としての濃度は0.81mg/mLであった。
【0028】上で得られたジカルボキシメチルデキスト
ランポリアルコールのナトリウム塩(81mg)を水(4
mL)に溶解し、上で得られたPt(NO3)2(Dach)の水溶液
(6mL)を加えた。0.1N水酸化ナトリウム水溶液で
pH7.0に調整した後、40℃で4時間反応させた。
反応液を、PD−10カラム(アマシャム ファルマシ
ア社製)で精製した。高分子を含む画分をミリポアフィ
ルター(0.22μm)で濾過した後、凍結乾燥して標
記化合物(61mg)を得た。本化合物の白金含量を原子
吸光法により定量したところ6.6%(W/W)であっ
た。本化合物をゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)
(カラム:東ソーTSK Gel PW-6000XL、溶媒:20%ア
セトニトリル含有0.1M酢酸緩衝液(pH5.0)、
流速:1.0mL/min)で分析した結果を図1に示す。
【0029】実施例2 ジカルボキシメチルデキストランポリアルコール−シス
−ジアミノ白金錯体[DCM-Dex-PA-Pt(NH3)2]の合成 シスプラチン、すなわちPtCl2(NH3)2(600mg)に水
120mLを加えて、60℃で2時間加熱した。硝酸銀
(680mg)を水(1mL)に溶かした水溶液を加えてさ
らに60℃で5時間加熱した。反応液を遠心分離(30
00rpm、10分)した後、上清をミリポアフィルター
(0.22μm)で濾過して、Pt(NO3)2(NH3)2の水溶液
を得た。原子吸光法により定量したところ白金としての
濃度は2.45mg/mLであった。
【0030】実施例1で用いたジカルボキシメチルデキ
ストランポリアルコールのナトリウム塩(116mg)を
水(8mL)に溶解し、上で得られたPt(NO3)2(NH3)2の水
溶液(2mL)を加えた。0.1N水酸化ナトリウム水溶
液でpH7.0に調整した後、40℃で4時間反応させ
た。反応液を、PD−10カラム(アマシャム ファル
マシア社製)で精製した。高分子を含む画分をミリポア
フィルター(0.22μm)で濾過した後、凍結乾燥し
て標記化合物(56mg)を得た。本化合物の白金含量を
原子吸光法により定量したところ4.5%(W/W)であ
った。本化合物をGPC(カラム:東ソーTSK Gel PW-6
000XL、溶媒:20%アセトニトリル含有0.1M酢酸
緩衝液(pH5.0)、流速:1.0mL/min)で分析
した結果を図2に示す。
【0031】実施例3 ジカルボキシメチルデキストランポリアルコール-Gly-G
ly-Phe-Gly-NH-A'の合成 なお、「A-NH- 」は、特開平6-87746 号公報の請求項2
に記載された医薬化合物などのようにラクトン環を有す
る医薬化合物において、ラクトン環が閉環した医薬化合
物を A-NH2で表した場合の医薬化合物残基を表し、その
一例は、上記のスキーム中にA-NH- で示した基(ラクト
ン環を形成したもの)である。また、A'-NH-は、A-NH-
で表される医薬化合物残基中のラクトン環が閉環型若し
くは開環型のいずれか又はそれらの混合形態であること
を示す。WO9746260に記載のGly-Gly-Phe-Gly-NH-Aを水
とメタノールの混合溶媒に溶解する。この溶液を、ジカ
ルボキシメチルデキストランポリアルコ−ルのナトリウ
ム塩を水とメタノールの混合溶媒に溶かした溶液に加え
る。1-ヒドロキシベンゾトリアゾール( Gly-Gly-Phe-G
ly-NH-Aの1.2当量) 、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノ
プロピル)-カルボジイミド塩酸塩( Gly-Gly-Phe-Gly-N
H-Aの1.2当量)を加え、0.1規定水酸化ナトリウム水溶
液でpHを7.0に調整する。室温で2時間撹拌し、1-エチ
ル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸
塩( Gly-Gly-Phe-Gly-NH-Aの0.6当量)を加え、0.1規
定塩酸でpHを7.0に調整する。室温で2時間撹拌し、1-エ
チル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩
酸塩(Gly-Gly-Phe-Gly-NH-Aの0.6当量)を加え、0.1規
定塩酸でpHを7.0に調整する。室温で一晩反応させ、反
応液を0.1規定水酸化ナトリウム水溶液でpHを9.0に調整
する。バイオマックス-50膜を用いた限外濾過法により
脱塩する。膜を通過しない残留溶液をミリポアフィルタ
ー(0.22μm)で濾過し、凍結乾燥して、標記化合物をア
モルファスとして得る。
【0032】実施例4 ジカルボキシメチルデキストランポリアルコール-Gly-G
ly-Phe-Gly-PABC(PABC= p-アミノベンジルオキシカルボ
ニル)-NH-A'の合成 WO9961061に記載のGly-Gly-Phe-Gly-PABC-NH-Aを水とメ
タノールの混合溶媒に溶解する。この溶液を、ジカルボ
キシメチルデキストランポリアルコ−ルのナトリウム塩
を水とメタノールの混合溶媒に溶かした溶液に加える。
1-ヒドロキシベンゾトリアゾール( Gly-Gly-Phe-Gly-
PABC-NH-Aの1.2当量) 、1-エチル-3-(3-ジメチルアミ
ノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩( Gly-Gly-Phe-Gly
-PABC-NH-Aの1.2当量)を加え、0.1規定水酸化ナトリウ
ム水溶液でpHを7.0に調整する。室温で2時間撹拌し、1
-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミ
ド塩酸塩( Gly-Gly-Phe-Gly-PABC-NH-Aの0.6当量)を
加え、0.1規定塩酸でpHを7.0に調整する。室温で2時間
撹拌し、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カル
ボジイミド塩酸塩( Gly-Gly-Phe-Gly-PABC-NH-Aの0.6
当量)を加え、0.1規定塩酸でpHを7.0に調整する。室温
で一晩反応させ、反応液を0.1規定水酸化ナトリウム水
溶液でpHを9.0に調整する。バイオマックス-50膜を用い
た限外濾過法により脱塩する。膜を通過しない残留溶液
をミリポアフィルター(0.22μm)で濾過し、凍結乾燥し
て、標記化合物をアモルファスとして得る。
【0033】比較例1 比較化合物カルボキシメチルデキストランポリアルコー
ル−シス−ジ(1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金
錯体[CM-Dex-PA-Pt(Dach)]の合成 カルボキシメチルデキストランポリアルコールのナトリ
ウム塩(カルボキシメチル化度0.4、分子量(ゲル濾
過、プルラン標準)298K、116mg)を水(2mL)
に溶解し、それに実施例1で用いたPt(NO3)2(Dach)の水
溶液(10mL)を加えた。0.1N水酸化ナトリウム水
溶液でpH7.0に調整した後、40℃で19時間反応
させた。反応液を、PD−10カラム(アマシャム フ
ァルマシア社製)で精製した。高分子を含む画分をミリ
ポアフィルター(0.22μm)で濾過した後、凍結乾
燥して標記化合物(90mg)を得た。本化合物の白金含
量を原子吸光法により定量したところ5.4%(W/W)
であった。
【0034】比較例2 比較化合物カルボキシメチルデキストランポリアルコー
ル−シス−ジアミノ白金錯体[CM-Dex-PA-Pt(NH3)2]の合
成 比較例1で用いたカルボキシメチルデキストランポリア
ルコールのナトリウム塩(100mg)を水(8mL)に溶
解し、それに実施例2で用いたPt(NO3)2(NH3)2の水溶液
(3mL)を加えた。0.1N水酸化ナトリウム水溶液で
pH7.0に調整した後、40℃で24時間反応させ
た。反応液を、PD−10カラム(アマシャム ファル
マシア社製)で精製した。高分子を含む画分をミリポア
フィルター(0.22μm)で濾過した後、凍結乾燥し
て標記化合物(70mg)を得た。本化合物の白金含量を
原子吸光法により定量したところ6.1%(W/W)であ
った。
【0035】試験例1 低分子白金遊離試験(0.1MNaCl含有0.1Mリン酸
緩衝液中(pH7.4)) 実施例1で得られたDCM-Dex-PA-Pt(Dach)、実施例2で
得られたDCM-Dex-PA-Pt(NH3)2をそれぞれ白金として、
0.05mg/mLになるように0.1MNaCl含有0.1M
リン酸緩衝液(pH7.4)に溶解した。37℃でイン
キュベーションした後、反応液をPD−10カラム(ア
マシャム ファルマシア社製)で分画した。高分子画分
と低分子画分の白金含量をそれぞれを原子吸光法により
定量した結果から求めた低分子白金の遊離量(%)は下
記表1の通りである。
【0036】
【表1】
【0037】表1の結果より、本発明の薬物複合体は、
担持した医薬化合物を長時間に渡って徐々に放出するこ
とがわかる。白金錯体は、蛋白質、アミノ酸等のアミノ
基に白金が転移するとともに全身に分布してしまうため
薬効の低下、副作用を生じるという問題がある。これに
対し、このように緩衝液中で徐々に白金を放出する本発
明の薬物複合体は腫瘍部位に到達するまで、十分に有効
成分である白金錯体を担持し、腫瘍部位で有効に作用さ
せることができる。
【0038】
【発明の効果】本発明の薬効複合体を用いれば、薬物担
持能力が高く、薬物を標的部位に確実に到達させること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の化合物のGPCチャートを示す図で
ある。
【図2】実施例2の化合物のGPCチャートを示す図で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 33/24 A61K 33/24 45/00 45/00 A61P 29/00 A61P 29/00 35/00 35/00 C08B 37/02 C08B 37/02 Fターム(参考) 4C076 BB01 BB11 CC04 CC27 DD51 EE38 FF02 FF32 FF65 4C084 AA17 NA13 ZB112 ZB262 4C086 AA01 AA02 BA12 CB22 EA10 MA01 MA05 NA10 NA13 ZB11 ZB26 ZC75 4C090 AA05 AA09 BA12 BB02 BB12 BB32 BB36 BB92 CA28 CA36 DA10 DA22 4C206 AA01 AA02 JB16 JB17 MA01 MA05 NA13 ZB11 ZB26

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ジカルボキシC1-3アルキルデキストラン
    ポリアルコールと医薬化合物の残基とが結合してなる薬
    物複合体。
  2. 【請求項2】ジカルボキシC1-3アルキルデキストラン
    ポリアルコールと医薬化合物の残基とが1個のアミノ酸
    からなるスペーサー又はペプチド結合した2〜8個のア
    ミノ酸からなるスペーサーを介して結合してなる薬物複
    合体。
  3. 【請求項3】ジカルボキシC1-3アルキルデキストラン
    ポリアルコールと医薬化合物の残基とがリンカーを付加
    した1個のアミノ酸からなるスペーサー又はリンカーを
    付加したペプチド結合した2〜8個のアミノ酸からなる
    スペーサーを介して結合してなる薬物複合体。
  4. 【請求項4】医薬化合物が、抗腫瘍剤又は抗炎症剤であ
    る請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬物複合体。
  5. 【請求項5】医薬化合物が、白金系抗腫瘍剤、カンプト
    テシン誘導体、アンスラサイクリン系抗腫瘍剤、タキサ
    ン系抗腫瘍剤、フッ化ピリミジン系代謝拮抗剤、ビンカ
    アルカロイド系抗腫瘍剤及び葉酸拮抗剤から選ばれる化
    合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬物複
    合体。
  6. 【請求項6】医薬化合物がシスプラチン、カルボプラチ
    ン又はオキサリプラチンである請求項1〜5のいずれか
    1項に記載の薬物複合体。
  7. 【請求項7】ジカルボキシC1-3アルキルデキストラン
    ポリアルコールが、ジカルボキシメチルデキストランポ
    リアルコールである請求項1〜6のいずれか1項に記載
    の薬物複合体。
  8. 【請求項8】ジカルボキシメチルデキストランポリアル
    コールと白金系抗腫瘍剤とが配位結合してなる薬物複合
    体。
  9. 【請求項9】ジカルボキシC1-3アルキルデキストラン
    ポリアルコールを含有する医薬化合物デリバリー用キャ
    リヤー。
  10. 【請求項10】請求項1〜7に記載の薬物複合体製造の
    ためのジカルボキシC1- 3アルキルデキストランポリア
    ルコールの使用。
  11. 【請求項11】ハロゲン化C1-3アルキルジカルボン酸
    又はそのエステルとデキストランポリアルコールを水酸
    化セシウムの存在下に反応させることを特徴とするジカ
    ルボキシC1-3アルキルデキストランポリアルコールの
    製造法。
  12. 【請求項12】ハロゲン化マロン酸又はそのエステルと
    デキストランポリアルコールを水酸化セシウム存在下に
    反応させることを特徴とするジカルボキシメチルデキス
    トランポリアルコールの製造法。
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