JP2006182637A - フィールドエミッションディスプレイ用結晶化ガラススペーサーおよびその製造方法、ならびにフィールドエミッションディスプレイ - Google Patents

フィールドエミッションディスプレイ用結晶化ガラススペーサーおよびその製造方法、ならびにフィールドエミッションディスプレイ Download PDF

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Abstract

【課題】電界印加による帯電が発生しにくく、また破壊靭性が高く欠けやクラックが発生しにくいフィールドエミッションディスプレイ用結晶化ガラススペーサーの提供。
【解決手段】SiO−TiO系ガラスに、水素中または水素および窒素混合雰囲気中で600〜900℃で還元結晶化熱処理を施すことにより、モル百分率表示で本質的に、SiO:20〜50%、TiO:25〜45%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO:20〜50%、B+Al:0〜10%、およびZrO:0〜10%を含有し、主結晶として、BaTi16系結晶(X=0.8〜1.5)、BaTiSi系結晶およびTiO系結晶のうち少なくとも1つの結晶を含むことを特徴とするFED用結晶化ガラススペーサーを提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、破壊の進行に対する抵抗力、すなわち破壊靱性が高く、かつ適度な表面抵抗率をもつ結晶化ガラススペーサーおよびその製造方法、ならびにフィールドエミッションディスプレイ(電界放出型ディスプレイ。以下、FEDという。)に関する。
FEDは、極微小な電子銃(冷陰極素子)を画素ごとに多数配置し、陰極線管(Cathode Ray Tube。以下、CRTという)と同様に、電子銃から蛍光体へ電子線を放出して画像を形成する画像表示装置である。
電子銃を画素ごとに独立して駆動するFEDは、CRTと異なり電子ビームを広角度で走査する必要がないので、CRTよりはるかに奥行きが薄く、かつ平坦な画像表示面を形成できる(たとえば、特許文献1参照)。特に、CRTでは実現困難な対角径約1000mm(約40インチ)以上の大画面フラットパネルディスプレイとして期待されている。
FEDにおいては、蛍光体を有するアノードパネルと、電子を放出するエミッタを有するエミッタパネルとが複数のスペーサーを介して対向しており、アノードパネルとエミッタパネルの周囲はガラスペースト(フリットペースト)等の封着剤を用いて封着されている。
FEDの内部空間、すなわち対向するアノードパネルとエミッタパネルの間の空間は典型的には10−3〜10−5Paの高真空状態であり、エミッタパネルのエミッタから前記空間中に放出された電子はアノードパネルの蛍光体に衝突して電子線励起発光を起こす。その結果、画素が発色し、画像が形成される。
対向するアノードパネルとエミッタパネルとの距離は典型的には1〜2mmであり、その距離を大気圧と前記内部空間圧力(たとえば10−3〜10−5Pa)との圧力差にかかわらず保持するために、前述の通り複数のスペーサーがアノードパネルとエミッタパネルの間に介在している。
このようなスペーサーには精密な寸法精度が要求されることから、ガラススペーサーを用いる場合には、適度な精度を有する予備成形体をガラス軟化点付近の温度に加熱して延伸成形する製造方法が提案されている(たとえば特許文献2参照)。この製造方法は、リドロー成形法とも呼ばれ、大量のスペーサーを連続的に成形できる利点を有している。
そのうえ、FEDの高精細化が進むにつれ、スペーサーの設置空間が狭くなるため、より薄いスペーサーが望まれることから、リドロー成形法で製造できるガラス材料がより有利となる。
ガラススペーサーについては、可動イオンの偏在を防止するために、アルカリ金属を含有しない組成が適していることが開示されている(特許文献3参照)。また、エミッタから放出された電子による帯電を防止するために、FeやVの元素からなる遷移金属酸化物をガラス中に含ませることにより適度な電子伝導性を持たせたスペーサーが開示されている(特許文献4参照)。
特開平7−230776号公報 特開2000−203857号公報 特開2002−104839号公報 特表2003−526187号公報
しかしながら、このようなガラススペーサーを使用した場合、低い破壊靭性のゆえ、FEDのパネル組立工程等において、ガラススペーサーの取り扱いの際やパネルへの接着の際にガラススペーサーの一部にクラックや欠けが起こり、歩留りを低下させる問題があった。さらに、前述したようにFEDの高精細化のためにスペーサーが薄くなると、クラックや欠けが起こる確率が増えることも十分予想される。
本発明は、ガラススペーサーと同様に、適度な電子伝導性を有しつつ、スペーサーの欠けやクラックを抑止する破壊靭性が高い結晶化ガラススペーサー、およびその製造方法、ならびに前記結晶化ガラススペーサーを用いたFEDの提供を目的とする。
本発明者は、前述の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、SiO−TiO系ガラスを水素ガス雰囲気中、または水素ガスおよび窒素ガスの混合雰囲気中において適度な条件で還元および結晶化のための熱処理(以下、還元結晶化熱処理という)を施すことによって、ガラス中の一部のTiイオンの価数変化によりFED用のスペーサーに適した所望の抵抗を有しつつ、ガラス中にTiを含む結晶が析出し破壊靱性値が高くなることを見出した。
その結果として、本発明は、下記酸化物基準のモル百分率表示で本質的に、SiO:20〜50%、TiO:25〜45%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO:20〜50%、B+Al:0〜10%、およびZrO:0〜10%を含有し、主結晶として、BaTi16系結晶(X=0.8〜1.5)、BaTiSi系結晶およびTiO系結晶のうち少なくとも1つの結晶を含むことを特徴とするフィールドエミッションディスプレイ用結晶化ガラススペーサーを提供する。なお、本発明において単にスペーサーと記載する場合は、フィールドエミッションディスプレイ用結晶化ガラススペーサーを意味するものとする。
前記のスペーサーは、破壊靭性値が0.7MPa・m1/2以上であることが好ましい。また、20℃における表面抵抗率が10〜1012Ωであることが好ましい。そして、さらに前記のスペーサーは、50〜350℃における平均線膨張係数が、60×10−7〜110×10−7/℃であることが好ましい。
また、本発明は、前記スペーサーの製造方法として、下記酸化物基準のモル百分率表示で本質的に、SiO:20〜50%、TiO:25〜45%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO:20〜50%、B+Al:0〜10%、およびZrO:0〜10%を含有するガラスを水素中、水素および窒素の混合雰囲気中、または水素および不活性ガスの混合雰囲気中において600〜900℃で熱処理する工程、すなわち還元結晶化熱処理する工程を有することを特徴とする製造方法を提供する。
さらに本発明は、前述のスペーサーを用いたフィールドエミッションディスプレイを提供する。
SiO−TiO系ガラスに本発明の製造方法における還元結晶化熱処理を施すことによって、表面抵抗率が小さく破壊靱性値が高い、FED用途として好適な結晶化ガラススペーサーを効率的に得られる。該スペーサーは、帯電が起こりにくいため画像の乱れが生じにくく、高画質のFEDが得られる。さらに、前記スペーサーは、FEDパネルの組立工程等において欠けやクラックの生じる確率が減少するので、歩留り向上に貢献できる。
<スペーサーのガラス組成>
以下、本発明のスペーサー(フィールドエミッションディスプレイ用結晶化ガラススペーサー)の原ガラスの組成について説明するが、実質的に結晶化ガラススペーサーの組成も原ガラスの組成と変わらない。なお、特に断りがない場合は、%との表記はモル%を意味する。
SiOはガラスの骨格を形成し、ガラスの安定性および化学耐久性を向上させる成分であり、必須である。BaTiSi系結晶の構成成分でもある。その含有率は20〜50%である。SiOの含有率が20%未満ではガラスの安定性または化学耐久性が低下する。好ましくは25%以上である。またSiOの含有率が50%を超えると、TiOの含有率を少なくせざるを得ず、還元結晶化熱処理を行っても所望の表面抵抗率まで低下しない。
TiOは還元結晶化熱処理により、電子伝導性を有し表面抵抗率を低下させる成分であり必須成分である。また、主結晶であるBaTi16系結晶(X=0.8〜1.5)、BaTiSiO系結晶およびTiO系結晶の構成成分でもあり、結晶析出を促進させ破壊靭性値を向上させる。その含有率は25〜45%である。TiOの含有率が25%未満では還元結晶化熱処理しても所望の表面抵抗率まで低下せず、所望の結晶が析出しにくくなる。好ましくは30%以上である。またTiOの含有率が45%を超えるとガラスが不安定になるおそれや、化学耐久性が低下するおそれが生じる。さらにガラスの延伸成形を行った場合、失透が発生するおそれがある。なお、本発明者は、価数が変わりやすいイオンの主な供給源はTiであって、これが還元結晶化熱処理されることによって混在する異価数のイオンが表面抵抗率を低下させていると考えている。
MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOは、ガラスを安定化させる成分でありいずれか1成分以上を含有することが好ましい。この場合、これら5成分の含有率の合計MgO+CaO+SrO+BaO+ZnOは20%以上であることが好ましい。より好ましくは25%以上である。前記5成分の含有率の合計が50%を超えると、ガラスが不安定になるおそれや、または延伸成形を行った場合に失透が発生するおそれがある。前記5成分の含有率の合計は45%以下であるとより好ましい。上記成分のうち、BaOは主結晶の一つであるBaTi16系結晶(X=0.8〜1.5)およびBaTiSiO系結晶の構成成分であるので、5%以上含有させることが好ましい。
およびAlはいずれも必須ではないが、ガラスの安定性または化学耐久性を向上させるために合計で10%までの範囲で含有してもよい。10%を超えるとガラスが不安定になる。
ZrOは必須ではないが、ガラスの安定性または化学耐久性を向上させるために10%までの範囲で含有してもよい。また、還元結晶化熱処理の際の核形成剤としても有効である。10%を超えるとかえってガラスが不安定になったり、延伸成形の際に失透が発生したりするおそれがある。また、主結晶の析出を妨げたりする。ZrOの含有率は5%以下であるとより好ましい。
すなわち、本発明の原ガラスの組成は、下記酸化物基準のモル百分率表示で本質的に、SiO:20〜50%、TiO:25〜45%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO:20〜50%、B+Al:0〜10%、およびZrO:0〜10%を含有するものである。前記のガラス組成は、SiO:25〜50%、TiO:30〜45%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO:25〜45%、B+Al:0〜10%、およびZrO:0〜5%であればより好ましい。
本発明のスペーサーは本質的に上記成分からなるが、その他の成分を合計で10%まで含有してもよい。その他の成分は含有率の合計が5%以下であるとより好ましい。その他の成分としては、SO、Cl等の清澄剤の残存成分、LiO、NaO、KO等のアルカリ金属酸化物、Nb、La、Y、Feが例示される。
前記SO、Clを含有させる場合、その含有率の合計は2%以下であることが好ましい。LiO、NaOおよびKOはガラスの熔融を促進する効果を有するので、これらのうちの一つ以上の成分の含有率の合計が5%以下となる範囲で含有してもよい。LiO、NaOおよび/またはKOの含有率の合計が5%を超えるとイオン伝導性が強くなり、電界印加により上記成分が移動しスペーサー内で分極が生じ抵抗が増大するおそれがある。
なお、イオン伝導性を抑制したい場合はアルカリ金属酸化物を含有しないことが好ましい。また、環境的な配慮から、Pb、V、As、Sb、CdまたはCrを含有しないことが好ましい。なお、ガラス中にこれらの成分を意図的に含有させておらず、不純物として混入している程度の含有率であれば、「実質的に含有しない」ものとみなす。
<スペーサーの製造方法>
次に本発明のスペーサーの製造方法について説明する。
まず、前述のSiOとTiOを主成分とするSiO−TiO系ガラスの組成となるように常法に従って原料を調合し、電気炉等で熔解して均質化したのち、熔融ガラスを型材に流し込んでガラス成形体を作製する。
続いて、次の二つの方法のいずれかで加工体または延伸成形体を製造する。第一の方法は、該ガラス成形体に切断加工および研磨加工を施して所定のサイズの加工体を直接得る方法である。また、第二の方法は、ガラス成形体またはガラス成形体に加工を施した加工体を軟化点温度付近まで再加熱し、延伸成形により、例えばリボン状の連続した延伸成形体を得たのち所望の長さに切断する方法である。
なお、前記の第二の方法(延伸成形法)は、寸法安定性がよく低コストで成形できるので好ましい。特に薄いスペーサーを製造する場合に好適な方法である。さらに、断面が複雑な形状(台形や十字形等)のスペーサーが望まれている場合は前記の延伸成形法がより好ましい。
次に、前記の方法によって得られた加工体または切断した延伸成形体に還元結晶化熱処理を施す。すなわち、水素中、混合割合を調整した水素および窒素の混合雰囲気中、または混合割合を調整した水素および不活性ガスの混合雰囲気中にて所望の温度で一定時間熱処理することにより主に原ガラスの表面層のTiイオンが還元され、同時にTiを含む結晶が析出する。前記の還元結晶化熱処理によって表面抵抗率が低下するとともに、破壊靭性値が上昇して本発明のスペーサーが得られる。なお、前記気体の混合割合は、例えば電気炉内をフローしている各々の気体の流量比を変えることで調節できる。
なお、前記の還元結晶化熱処理の温度は600〜900℃とする。前記の温度を600℃未満にして熱処理をすると還元が進行しにくくなるとともに結晶が析出しにくくなり、還元結晶化熱処理前と表面抵抗率が実質的に変わらないうえに、破壊靱性値が上昇しない。還元結晶化熱処理の温度が900℃より高いと、ガラス加工体または切断した延伸成形体が変形するおそれがある。
前記還元結晶化熱処理の温度はSiO−TiO系ガラスの軟化点未満であるとより好ましい。なお、前記方法は、600〜900℃の一定の温度に保持する1段の熱処理でもよいが、例えばいったんガラス転移点付近の温度で表面層のTiイオン等を還元してから、ガラス転移点以上から軟化点未満の温度で結晶を析出させる2段の還元結晶化熱処理をすると結晶の均質度が向上しより好ましい。
また、前記の還元結晶化熱処理の時間は2〜24時間が好ましい。還元結晶化熱処理の時間が2時間より短いと、Tiイオン等の還元と結晶化が十分に行われなくなり、還元結晶化熱処理前と表面抵抗率と破壊靱性が所望の値にならないので好ましくない。還元結晶化熱処理の時間が24時間より長くても表面抵抗率と破壊靱性にはほとんど影響しないので経済性を考えると好ましくない。
本発明の前記製造方法で得られたスペーサーの破壊靭性値は0.7MPa・m1/2以上であれば好ましく、0.8MPa・m1/2以上であるとさらに好ましい。破壊靭性値が0.7MPa・m1/2以上であるとFEDパネルの組立工程等でスペーサーの欠けやクラックが発生しにくくなる。
本発明方法における前記の還元結晶化熱処理により、主結晶として、BaTi16系結晶(X=0.8〜1.5)、BaTiSiO系結晶およびTiO系結晶のうち少なくとも1つの結晶を含む結晶化ガラスが得られる。結晶析出の有無は例えばCuKα線を用いたX線回折により2θが10〜50°の範囲で測定すると、BaTi16系結晶(X=0.8〜1.5)の場合は、主回折ピークが2θで27〜28°付近に検出され、BaTiSi系結晶の場合は、主回折ピークが2θで29〜30°付近に検出され、TiO系結晶の場合は主回折ピークが2θで24〜25°付近に検出されることで確認できる。なお、BaTiSi系結晶については、Baの一部がSrに置換された固溶体も含まれる。
本発明の製造方法により得られるスペーサーの表面抵抗率は、20℃において10〜1012Ωとなるので、FED用スペーサーとして好適である。表面抵抗率が1012Ωより大きいとスペーサーが帯電し電子線が偏向するおそれがある。一方、表面抵抗率の下限値はスペーサー形状とスペーサー間に印加される電圧に左右されるが、表面抵抗率が10より小さいとスペーサー表面に電流が流れ過ぎるおそれがある。前記表面抵抗率は、さらに好ましくは10〜1011Ωである。
本発明のスペーサーの50〜350℃における平均線膨張係数αは、60×10−7〜110×10−7/℃であると好ましい。前記平均線膨張係数αが60×10−7/℃未満の値または110×10−7/℃よりも大きい値であると、典型的に平均線膨張係数αが75×10−7〜90×10−7/℃であるFEDガラス基板との膨張マッチングが困難になるおそれがある。このようなガラス基板にはたとえばソーダライムシリカガラスが用いられる。
<結晶化ガラススペーサーを用いたFED>
本発明のFEDは、本発明の結晶化ガラススペーサーを用いることで得られる。FEDの方式としては、2極管方式、3極管方式、4極管方式(金属板状集束電極型、薄膜集束電極型、等)、等が知られているが、本発明においてFEDの方式は限定されず、これら方式のいずれであってもよい。
以下、図1を用いて本発明を説明する。なお図1は、3極管方式を採用したFEDの部分断面の概略図である。一般的にFEDにおいては、蛍光体7を有するアノードパネル10と、電子を放出するエミッタ6を有するエミッタパネル20とが、複数(図1においては2個)のスペーサー5を介して対向している。前記のアノードパネル10は通常ガラス板等の透明板である前面基板1、前面基板1のエミッタパネル20に対向する面上に形成された透明電極であるアノード電極3、およびアノード電極3上に形成された蛍光体7等からなる。
前記の前面基板1に用いられるガラス板としては、たとえば厚さが1〜3mmであるソーダライムガラス板や、プラズマディスプレイに用いられる高歪点ガラス板が挙げられる。また、アノード電極3に用いられる透明電極としては、たとえば厚さが0.01〜100μmであるITO(Indium Tin Oxide:SnドープIn)膜が挙げられる。前記の蛍光体7は、1画素ごとに赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の蛍光物をブラックストライプ(図示せず)を介してストライプ状に形成したものである。なお、図1に示されている3個の蛍光体7は、左から順にR、G、Bの蛍光物である。
前記エミッタパネル20は必須要素としてエミッタ6を有するが、3極管方式の場合はエミッタ6の他にゲート電極9および絶縁層8が必須要素である。なお、2極管方式においてはゲート電極9および絶縁層8は不要である。3極管方式において、一般的にエミッタパネル20はガラス板等からなる背面基板2、背面基板2のアノードパネル10に対向する面上に形成された電極であるカソード電極4、カソード電極4上に形成されたエミッタ6および絶縁層8、絶縁層8上に形成されたゲート電極9、等からなる。
前記背面基板2に用いられるガラス板としては、前面基板1と同様に、たとえば厚さが1〜3mmであるソーダライムガラス板や、プラズマディスプレイに用いられる高歪点ガラス板が挙げられる。カソード電極4に用いられる電極としては、たとえば厚さが0.01〜100μmであるAl、Ag等の金属膜、ITO膜が挙げられる。
前記エミッタ6はその表面から蛍光体7に向けて電子を放出する素子であり、たとえば、ダイアモンド的カーボン(Diamond Like Carbon)、カーボンナノチューブ電子源、Siの異方性エッチングを用いた電解放出素子、Mo等の金属蒸着電解放出素子が挙げられる。前記エミッタ6の形状は限定されないが、図1においては円錐状のものが示されており、典型的には、その高さおよび底面直径はいずれも0.1〜100μm、その個数は1画素あたり数百個から数千個である。なお、1画素の大きさは300μm×300μm程度である。
なお、2極管方式のFEDにおいては、ストライプ状に形成されたアノード電極およびカソード電極のそれぞれが直角に交差するように配置され、エミッタは前記カソード電極上に形成されたダイアモンド的カーボン膜であることが多い。
ゲート電極9はエミッタ6から放出される電子の量を制御するための手段であり、たとえば厚さが0.001〜0.1μmであるPt系合金等の金属膜である。絶縁層8は、ゲート電極9をエミッタ6に対し所望の位置に設け、かつゲート電極9をカソード電極4と電気的に絶縁するための手段であり、たとえば厚さが0.1〜100μmである酸化物セラミックス膜、PbO−SiO−RO系低融点ガラス膜である。ここで、ROはアルカリ土類金属酸化物である。
スペーサー5は、大気圧とFED内部空間圧力(たとえば10−3〜10−5Pa)との圧力差にかかわらずアノードパネル10とエミッタパネル20との間隔を所望の値に保持するためのものであり、典型的には高さは1〜2mm、幅が0.01〜0.5mmである。
本発明のFEDにおいては、本発明の製造方法により得たスペーサーを用いる。該結晶化ガラススペーサーを用いてなる本発明のFEDは、アルミナスペーサーを用いてなる従来のFED製造の方法と同様の方法で製造できる。
以下、本発明について実施例に基づいて詳細に説明する。
(例1:実施例)
SiO:31モル%、TiO:37モル%、Al:3モル%、CaO:14モル%、BaO:15モル%となるように原料を調合し、白金または白金、ロジウムるつぼを用いて電気炉内で大気雰囲気下で1400℃で5時間撹拌しながら熔解した。次いで熔融ガラスを流し出して板状に成形し徐冷した。
上記の方法で得た板材を2×0.2×50mmのサイズに研磨加工および切断を行い、FED用スペーサーの形状に加工した。また、小片の一部を所定のサイズに切断、研磨し、試験片を得た。これらの加工体を石英の管状炉に導入し、水素を0.2リットル/分の流量および窒素を1.8リットル/分の流量でフローさせながら、740℃の温度で2時間保持したのち50℃/時間の速度で790℃まで昇温し次いで14時間保持してトータル17時間の還元結晶化熱処理を行った。
こうして得られたスペーサーおよび試験片について、CuKα線を用いて2θが10〜50°の範囲でX線回折を行うと、図2のグラフにおける(a)のようにBaTi16系結晶(X=0.8〜1.5)およびTiO系結晶の回折ピークが検出され、結晶化ガラスであることが確認された。次いで破壊靭性値KICをJIS R1607に準拠した方法でIF(Indentation Fracture)法により測定すると0.86MPa・m1/2と高かった。なお、IF法はビッカース圧子を押し込んだときに結晶化ガラスまたはガラスの表面に残る圧痕の大きさと圧痕の4隅から発生するクラックの長さとヤング率から破壊靭性値KICを求める方法である。なお、ヤング率は超音波法により測定した。さらに、20℃における表面抵抗率を高抵抗計(R8340A、アドバンテスト社製)にて測定すると、表面抵抗率は108.4ΩとFED用スペーサーに好適な値を有した。
また、50〜350℃における平均線膨張係数αは84×10−7/℃であり、市販のソーダライムガラス(α:87×10−7/℃)や高歪点ガラスである市販のプラズマディスプレイ用ガラス(旭硝子社製/商品名:PD200/平均線膨張係数α:83×10−7/℃)に平均線膨張係数が近似していた。
(例2:実施例)
SiO:31モル%、TiO:37モル%、Al:3モル%、CaO:14モル%、BaO:15モル%となるように原料を調合し、白金または白金、ロジウムるつぼを用いて電気炉内で大気雰囲気下で1400℃で5時間撹拌しながら熔解した。次いで熔融ガラスを流し出して板状に成形し徐冷した。
上記の方法で得た板材を2×0.2×50mmのサイズに研磨加工および切断を行い、FED用スペーサーの形状に加工した。また、小片の一部を所定のサイズに切断、研磨し、試験片を得た。これらの加工体を石英の管状炉に導入し、水素を1.4リットル/分の流量および窒素を0.6リットル/分の流量でフローさせながら、740℃の温度で2時間保持したのち50℃/時間の速度で810℃まで昇温し次いで6時間保持してトータル9時間24分の還元結晶化熱処理を行った。
こうして得られたスペーサーおよび試験片について、CuKα線を用いて2θが10〜50°の範囲でX線回折を行うと、図2グラフにおける(b)のようにBaTi16系結晶(X=0.8〜1.5)およびTiO系結晶の回折ピークが検出され、結晶化ガラスであることが確認された。次いで破壊靭性値KICを測定すると1.33MPa・m1/2と高かった。さらに、20℃における表面抵抗率は106.5ΩとFED用スペーサーに好適な値を有した。
また、50〜350℃における平均線膨張係数αを測定すると、84×10−7/℃であり市販のソーダライムガラスや高歪点ガラスである市販のプラズマディスプレイ用ガラスに平均線膨張係数が近似していた。
(例3:比較例)
SiO:31モル%、TiO:37モル%、Al:3モル%、CaO:14モル%、BaO:15モル%となるように原料を調合し、白金または白金、ロジウムるつぼを用いて電気炉内で大気雰囲気下で1400℃で5時間撹拌しながら熔解した。次いで熔融ガラスを流し出して板状に成形し徐冷した。
上記の方法で得た板材を2×0.2×50mmのサイズに研磨加工および切断を行い、FED用スペーサーの形状に加工した。また、小片の一部を所定のサイズに切断、研磨し、試験片を得た。しかしながら、これらの加工体については、何ら熱処理も施さなかった。
このガラスの破壊靭性値KICを測定すると0.62MPa・m1/2と低く、FED用スペーサーとして使用すると欠けやクラックの発生率が高いことが予想された。さらに、20℃における表面抵抗率は1016.2Ωであり、所望の抵抗率を有するスペーサーが得られなかった。
なお、例1(実施例)〜例3(比較例)の試験片のガラスの転移点Tは744℃であり、軟化点Tは813℃である。
こうして得られた例1〜例3の試験片について、X線回折で同定した結晶種(表中、BTはBaTi16系結晶、BTSはBaTiSi系結晶、TはTiO系結晶、Oはそれ以外の結晶を表す)、破壊靱性値KIC(単位:MPa・m1/2)、20℃における表面抵抗率(単位:Ω)、50℃から350℃までの平均線膨張係数α(単位:10−7/℃)を下記表1に示す。
Figure 2006182637
前記例1および例2(ともに実施例)の試験片は表面抵抗率が10〜1012Ωであり、かつ破壊靭性値が0.70MPa・m1/2以上とFED用スペーサーとして好適なものである。しかし、還元結晶化熱処理を施さない例3(比較例)の試験片は表面抵抗率が1012Ωを超えているため、帯電して電子線を偏向させるおそれがある。さらに例3の試験片は破壊靭性値が0.7MPa・m1/2未満であるので、欠けやクラックが発生しやすい。
(例4〜例9[実施例]および例10〜例13[比較例])
まず、下記の表2〜表4に示す含有率(モル%表示)となるように、ガラス原料として通常用いられている酸化物、炭酸塩、硫酸塩および硝酸塩からなる原料を調合し、白金または白金、ロジウムるつぼを用いて電気炉内で、大気雰囲気下において1400℃で5時間撹拌しながら熔解する。次いで熔融ガラスを前記るつぼから流し出して板状に成形した後に徐冷し、例4〜例9の実施例のための板材および例10〜例13の比較例のための板材をそれぞれ複数個作製する。
その後、上記の方法で得られた例4〜例13の板材を所望のサイズに切断し、研磨加工して試験片を得る。各例について複数個作製したうちの一つの試験片についてのガラス転移点T(単位:℃)およびガラス軟化点T(単位:℃)の測定値を表2〜表4に示す。
また、残された例4〜例13までのそれぞれの試験片を石英の管状炉に導入し、表2、表3に示す流量の水素および窒素ガスをフローしながら、表2、表3に示す温度、時間で二段階の還元結晶化熱処理する。ここで第一段階から第二段階までの昇温速度は50℃/時間とする。なお、表4の例12はガラススペーサーとして特許文献3に例示されている組成であり、例13はガラススペーサーとして特許文献4に例示されている組成である。前記の12および例13については前述のような還元結晶化熱処理を行わない。
こうして得られる例4〜例13の試験片について、X線回折で同定した結晶種(表中、BTはBaTi16系結晶、BTSはBaTiSi系結晶、TはTiO系結晶、Oはそれ以外の結晶を表す)、破壊靱性値KIC(単位:MPa・m1/2)、20℃における表面抵抗率(単位:Ω)、および50℃〜350℃における平均線膨張係数α(単位:10−7/℃)を表2〜表4に示す。
Figure 2006182637
Figure 2006182637
Figure 2006182637
上記のように、例4〜例9(実施例)の試験片は、適切な組成であり且つ還元結晶化熱処理が施されるので、高い破壊靭性値を有する結晶化ガラスが得られFED用スペーサーとして好適な表面抵抗率と破壊靱性値を有する。
しかし、例10(比較例)はTiOの含有率が25%未満であるため、還元結晶化熱処理しても好適な表面抵抗率が得られない。また、例11(比較例)はTiOの含有率が45%を超えるため、熔融したガラスを流し出した際に失透し、透明で均質な原ガラスを得ることができない。さらに例12および例13(ともに比較例)は、結晶化ガラスではないため高い破壊靭性値が得られない。
以上詳述したようなガラススペーサーを用いてフィールドエミッションディスプレイを製造した場合、クラックや欠けの発生を抑制し歩留りを向上できるようになるため有用である。
本発明の一実施形態のFEDにおける部分断面の概略を示す模式図。 例1および例2のX線回折を示すグラフ。
符号の説明
1:前面基板
2:背面基板
3:アノード電極
4:カソード電極
5:スペーサー
6:エミッタ
7:蛍光体
8:絶縁層
9:ゲート電極
10:アノードパネル
20:エミッタパネル

Claims (9)

  1. 下記酸化物基準のモル百分率表示で本質的に、
    SiO: 20〜50%、
    TiO: 25〜45%、
    MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO: 20〜50%、
    +Al: 0〜10%、および
    ZrO: 0〜10%を含有し、
    主結晶として、BaTi16系結晶(X=0.8〜1.5)、BaTiSi系結晶およびTiO系結晶からなる群より選ばれる少なくとも1つの結晶を含むことを特徴とするフィールドエミッションディスプレイ用結晶化ガラススペーサー。
  2. 破壊靭性値が0.7MPa・m1/2以上である請求項1記載のフィールドエミッションディスプレイ用結晶化ガラススペーサー。
  3. 20℃における表面抵抗率が10〜1012Ωである請求項1または請求項2に記載のフィールドエミッションディスプレイ用結晶化ガラススペーサー。
  4. 50〜350℃における平均線膨張係数が、60×10−7〜110×10−7/℃である請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィールドエミッションディスプレイ用結晶化ガラススペーサー。
  5. 下記酸化物基準のモル百分率表示で本質的に、
    SiO: 20〜50%、
    TiO: 25〜45%、
    MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO: 20〜50%、
    +Al: 0〜10%、および
    ZrO: 0〜10%を含有するガラスを、
    還元性雰囲気中において600〜900℃で熱処理する工程を有することを特徴とするフィールドエミッションディスプレイ用結晶化ガラススペーサーの製造方法。
  6. 前記還元性雰囲気が、水素雰囲気である請求項5記載のフィールドエミッションディスプレイ用結晶化ガラススペーサーの製造方法。
  7. 前記還元性雰囲気が、水素および窒素の混合雰囲気である請求項5記載のフィールドエミッションディスプレイ用結晶化ガラススペーサーの製造方法。
  8. 前記熱処理の時間が2〜24時間である請求項5〜7の何れか1項記載のフィールドエミッションディスプレイ用結晶化ガラススペーサーの製造方法。
  9. 蛍光体を有するアノードパネルと、電子を放出するエミッタを有するエミッタパネルと、複数のスペーサーとを有し、前記のアノードパネルとエミッタパネルとが前記複数のスペーサーにより離間されて対向しているフィールドエミッションディスプレイであって、
    前記スペーサーが請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィールドエミッションディスプレイ用結晶化ガラススペーサーであることを特徴とするフィールドエミッションディスプレイ。
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