JP4370801B2 - ガラス、ガラスの製造方法およびフィールドエミッションディスプレイ装置 - Google Patents

ガラス、ガラスの製造方法およびフィールドエミッションディスプレイ装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、比抵抗の小さいガラス、比抵抗の小さいガラスの製造方法およびフィールドエミッションディスプレイ装置(以下、FEDという。)に関する。
【0002】
【従来の技術】
FEDはミクロンサイズの極微小な電子銃を画素ごとに多数配置した陰極線管(CRT)パネルである。
電子銃を画素ごとに独立して駆動するFEDは、CRTパネルと違って電子ビームを広角度で走査する必要がないので、CRTパネルよりはるかに薄く、かつフラットなディスプレイである(たとえば、特許文献1参照。)。特に、CRTパネルでは実現困難な40インチ以上の大画面フラットディスプレイとして期待されている。
【0003】
FEDにおいては、蛍光体を有するアノードパネルと、電子を放出するエミッタを有するエミッタパネルとが複数のスペーサを介して対向しており、アノードパネルとエミッタパネルの周囲はガラスペースト等を用いて封着されている。
FEDの内部空間、すなわち対向するアノードパネルとエミッタパネルの間の空間は典型的には10−3〜10−5Paの高真空状態であり、エミッタパネルのエミッタから前記空間中に放出された電子はアノードパネルの蛍光体に到達して電子線励起発光を起こす。その結果、当該蛍光体が属する画素が発色する。
【0004】
対向するアノードパネルとエミッタパネルとの距離は典型的には1〜2mmであり、その距離を大気圧と前記内部空間圧力(たとえば10−3〜10−5Pa)との圧力差にかかわらず保持するために、前述の通り複数のスペーサがアノードパネルとエミッタパネルの間に介在している。このようなスペーサとして従来、アルミナが使用されていた。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−230776号公報(第1〜15頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
アルミナからなるスペーサにおいては、電子による帯電が起こりやすく、その結果、表示画面に乱れが生じやすい問題があった。
前記帯電を防止するスペーサとして、本発明者は先に、SiO 40〜80モル%、Al 1〜20モル%、LiO+NaO+KO 15〜50%、TiO 0〜10モル%、ZrO 0〜10モル%、からなるガラスを発明した。
【0007】
このガラスは比抵抗が小さく、これを用いたスペーサの抵抗は小さく前記帯電の防止に有効である。しかし、このガラスはアルカリ金属酸化物を15モル%以上含有するイオン伝導性ガラスであり、時間の経過とともにスペーサの抵抗が増大するおそれがある。すなわち、電界印加によりスペーサに分極が発生し、そのためにスペーサの抵抗が増大するおそれがある。
【0008】
本発明は、アルカリ金属酸化物の含有量が少なく前記スペーサに使用しても電界印加による分極が発生しにくいガラス、そのようなガラスの製造方法およびFEDの提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記酸化物基準のモル%表示で本質的に、SiO 3060%、TiO+Nb+SnO+Ta+WO+CeO 1525%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 27.540、N 1525%を含有し、アルカリ金属酸化物を実質的に含有せず、ガラス転移点が600℃以上であり、20℃における比抵抗(以下、ρと記す。)が1015Ω・cm以下であるガラスを提供する(本発明の第1のガラス)。
【0010】
また、下記酸化物基準のモル%表示で本質的に、SiO 3060%、TiO+Nb+SnO+Ta+WO+CeO 1525%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 27.540、N 1525%を含有し、アルカリ金属酸化物を実質的に含有しないガラスが得られるように調合された原料を溶解して、ガラス転移点が600℃以上であり、20℃における比抵抗が1015Ω・cm以下であるガラスを製造する方法であって、ガラス中にFeが存在し、[Fe2+]/([Fe2+]+[Fe3+])で表されるレドックスRが0.6以上となるような条件で製造することを特徴とするガラスの製造方法を提供する(本発明の製造方法)。
【0011】
また、前記ガラスの製造方法によって製造されたガラスであって、前記ρが1015Ω・cm以下であるガラスを提供する(本発明の第2のガラス)。
【0012】
また、蛍光体を有するアノードパネルと、電子を放出するエミッタを有するエミッタパネルと、複数のスペーサとを有し、アノードパネルとエミッタパネルとが前記複数のスペーサを介して対向しているフィールドエミッションディスプレイ装置であって、スペーサが前記ガラスであることを特徴とするフィールドエミッションディスプレイ装置を提供する(本発明のFED)。
【0013】
本発明者は、ガラス中に遷移金属イオン等、価数が変わりやすいイオンを多く含有させ、かつ異価数のイオンを混在させることにより、アルカリ金属酸化物の含有量が少なくともガラスの比抵抗を低下させることができることを見出し、本発明に至った。なお、このようなガラスにおける電気伝導は主として電子伝導により、イオン伝導の寄与は小さいと考えられる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の第1のガラスの前記ρは1015Ω・cm以下であり、FEDのスペーサに好適である。ρは、好ましくは1014Ω・cm以下、より好ましくは1013Ω・cm以下、特に好ましくは1012Ω・cm以下である。
【0015】
また、本発明の第1のガラスの50〜350℃における平均線膨張係数αは60×10−7〜110×10−7/℃であることが好ましい。この範囲外では、αが典型的には75×10−7〜90×10−7/℃であるFEDガラス基板との膨張マッチングが困難になるおそれがある。このようなガラス基板にはたとえばソーダライムシリカガラスが用いられる。
【0016】
また、本発明の第1のガラスのガラス転移点は500℃以上であることが好ましい。500℃未満では、これをFEDのスペーサとして用い、FEDパネルをガラスフリット等でシールする際に寸法変化が発生するおそれがある。より好ましくは700℃以上、特に好ましくは740℃以上である。
【0017】
本発明の第1のガラスの組成についてモル%を単に%と表示して以下に説明する。
SiOはガラスの骨格を形成し、ガラスの安定性および化学耐久性を向上させる成分であり、必須である。20%未満ではガラスの安定性または化学耐久性が低下する。好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上である。70%超では、TiO、Nb、SnO、Ta、WOまたはCeOの含有量が少なくなりρが増大する。好ましくは65%以下、より好ましくは60%以下である。
【0018】
TiO、Nb、SnO、Ta、WOおよびCeOはρを低下させる成分であり、これら6成分のうち1成分以上を含有しなければならない。これら6成分の含有量の合計TiO+Nb+SnO+Ta+WO+CeOが10%未満ではρが増大する。好ましくは15%以上である。50%超ではガラスが不安定になる、または化学耐久性が低下する。好ましくは45%以下である。
なお、本発明者は、Ti、Nb、Sn、Ta、WおよびCeは先に述べた価数が変わりやすいイオンの供給源であり、これによって混在する異価数のイオンがρを低下させていると考えている。
Nbの含有量は10〜50モル%であることが好ましい。
【0019】
MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOはいずれも必須ではないが、ガラスをより安定化させたい場合にはいずれか1成分以上を含有することが好ましい。この場合、これら5成分の含有量の合計MgO+CaO+SrO+BaO+ZnOは10%以上であることが好ましい。より好ましくは15%以上である。前記合計が50%超では、ガラスが不安定になる、または化学耐久性が低下するおそれがある。好ましくは45%以下である。
【0020】
およびAlはいずれも必須ではないが、ガラスの安定性または化学耐久性を向上させるために合計で30%までの範囲で含有してもよい。30%超ではかえってガラスが不安定になる。好ましくは合計で25%以下である。
【0021】
本発明の第1のガラスは本質的に上記成分からなるが、その他の成分を合計で10%まで含有してもよい。好ましくは合計で5%以下である。
前記その他の成分として、SO、Cl等の清澄剤、LiO、NaO、KO等のアルカリ金属酸化物、La、Y、Feが例示される。
【0022】
SO、Cl等の清澄剤の含有量の合計は2%以下であることが好ましい。
LiO、NaOまたはKOはガラスの溶融を促進する効果を有し、たとえば合計で5%まで含有してもよい。5%超では先に述べたようにイオン伝導性が強くなるおそれがある。なお、イオン伝導性を抑制したい場合はアルカリ金属酸化物を含有しないことが好ましい。
【0023】
Laおよび/またはYはガラスをより安定化させるため、または化学的耐久性を向上させるために合計で15%以下の範囲で含有してもよい。15%超ではガラスがかえって不安定になる。Laおよび/またはYを含有する場合合計で、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上である。
本発明の第1のガラスは本発明の製造方法によって製造することが好ましい。本発明の製造方法はイオン伝導性が小さくかつ前記ρが小さいガラスの製造に好適である。
本発明の製造方法について以下に説明する。
まず、下記酸化物基準のモル%表示で本質的に、SiO 3060%、TiO+Nb+SnO+Ta+WO+CeO 1525%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 27.540、N 1525%を含有し、アルカリ金属酸化物を実質的に含有しないガラスが得られるように原料を調合する。調合された原料は必要に応じて混合される。なお、本発明においては前記調合された原料がガラスカレットである場合も含む。
【0024】
前記ガラスは、Laおよび/またはYを合計で15%以下の範囲で含有してもよい。
【0025】
前記調合された原料は溶解されてガラスとされるが、そのガラスの前記Rは0.6以上である。0.6未満ではガラスのρが増大する。
ρを1014Ω・cm以下、1013.5Ω・cm以下、1012Ω・cm以下としたい場合、Rはそれぞれ0.65以上、0.9以上、0.95以上とすることが好ましい。
【0026】
Rを大きくするためには、たとえば都市ガス等を用いてガラス溶解時の雰囲気を還元雰囲気とすればよい。
該還元雰囲気中の酸素分圧pは10−4気圧以下であることが好ましい。
pを10−7気圧以下とする場合、露点および酸素濃度をコントロールしたHフロー電気炉、炉内が酸素濃度数ppm以下の不活性ガスで満たされカーボン、金属等の酸素ゲッタを有する電気炉、等を用いてガラスを溶解することが好ましい。
【0027】
また、大気雰囲気中で溶解したガラスについて次のような還元化処理をしてもよい。すなわち、前記ガラスを、露点および酸素濃度をコントロールしたHフロー電気炉、炉内が酸素濃度数ppm以下の不活性ガスで満たされその中にカーボン、金属等の酸素ゲッタを有する電気炉、等に保持する還元化処理をしてもよい。
【0028】
この還元化処理は、当該ガラスのガラス転移点をTgとして、(Tg−100℃)〜(Tg+50℃)で行うことが好ましい。(Tg−100℃)未満では還元反応に時間がかかりすぎるおそれがある。(Tg+50℃)超ではガラスが変形するおそれがある。
また、前記好ましい温度範囲に保持する時間は1時間以上であることがより好ましい。1時間未満では還元反応が不充分になるおそれがある。
【0029】
ガラス中にFeがたとえばFe基準で0.01モル%以上存在する場合、前記Rは湿式分析、分光透過率測定等の結果から知ることができる。
【0030】
ガラス中のFe基準のFe含有量がたとえば0.01モル%未満であってRの測定が困難な場合、本発明の製造方法は次のようにして実施される。
すなわち、Rの測定が困難なガラスを製造するために調合された原料にFeを添加し、Fe基準のFe含有量が0.01〜1モル%となるようにする。これを溶解して得られたガラスのRを測定する。該Rをもって、前記調合された原料にFeを添加しないことを除き同じようにして溶解してえられたRの測定が困難なガラスのRとする。このRが0.6以上となる条件で前記調合された原料を溶解し、本発明の製造方法を実施する。
【0031】
本発明の製造方法によって製造されたガラスは本発明の第2のガラスである。
本発明の第2のガラスの前記ρは、好ましくは1015Ω・cm以下、より好ましくは1014Ω・cm以下、特に好ましくは1013Ω・cm以下、最も好ましくは1012Ω・cm以下である。
【0032】
本発明の第2のガラスがたとえばNbを含有する場合、該ガラス中にはNb5+イオンとNb4+イオンが混在しており、それによって非イオン伝導性すなわち電子伝導性が発現しρを小さくできると考えられる。なお、ガラス溶解時の雰囲気が還元雰囲気である場合、前記Nb4+イオンの少なくとも一部は原料中に存在していたNb5+イオンが溶解時に変化したものと考えられる。
【0033】
本発明のFEDはそのスペーサとして本発明の第1のガラスまたは第2のガラスを用いる。
FEDの方式としては、2極管方式、3極管方式、4極管方式(金属板状集束電極型、薄膜集束電極型、等)、等が知られているが、本発明のFEDの方式は限定されず、これら方式のいずれであってもよい。
以下では、3極管方式を採用した本発明のFEDの部分断面の概略を示す図1を用いて説明する。
【0034】
蛍光体7を有するアノードパネル10と、電子を放出するエミッタ6を有するエミッタパネル20とは、複数(図1においては2個)のスペーサ5を介して対向している。
【0035】
アノードパネル10は通常、ガラス板等の透明板である前面基板1、前面基板1のエミッタパネル20に対向する面上に形成された透明電極であるアノード電極3、アノード電極3上に形成された蛍光体7、等からなる。
【0036】
前面基板1に用いられるガラス板としては、たとえば厚さが1〜3mmであるソーダライムシリカガラス板が挙げられる。
アノード電極3に用いられる透明電極としては、たとえば厚さが0.01〜100μmであるITO(Inドープ酸化スズ)膜が挙げられる。
【0037】
蛍光体7はたとえば、図1に示すように、1画素ごとに赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の蛍光物をブラックストライプ(図示せず)を介してストライプ状に形成されたものである。なお、図1に示されている3個の蛍光体7は、左から順にR、G、Bの蛍光物である。
【0038】
エミッタパネル20は必須要素としてエミッタ6を有するが、3極管方式においてはこの他にゲート電極9および絶縁層8を必須要素として有する。なお、2極管方式においてはゲート電極9および絶縁層8は不要である。
【0039】
3極管方式においてエミッタパネル20は通常、ガラス板等である背面基板2、背面基板2のアノードパネル10に対向する面上に形成された電極であるカソード電極4、カソード電極4上に形成されたエミッタ6および絶縁層8、絶縁層8上に形成されたゲート電極9、等からなる。
【0040】
背面基板2に用いられるガラス板としては、たとえば厚さが1〜3mmであるソーダライムシリカガラス板が挙げられる。
カソード電極4に用いられる電極としては、たとえば厚みが0.01〜100μmであるAl、Ag等の金属膜、ITO(Inドープ酸化スズ)膜が挙げられる。
【0041】
エミッタ6はその表面から蛍光体7に向けて電子を放出する素子であり、たとえば、ダイアモンド的カーボン(Diamond Like Carbon)、カーボンナノチューブ電子源、Siの異方性エッチングを用いた電解放出素子、Mo等の金属蒸着電解放出素子、が挙げられる。その形状は限定されないが、図1においては円錐状のものが示されており、典型的には、その高さおよび底面直径はいずれも0.1〜100μm、その個数は1画素あたり数百個から数千個である。なお、1画素の大きさは300μm×300μm程度である。
【0042】
なお、2極管方式においてはアノード電極がストライプ状に形成され、カソード電極が当該アノード電極と直角に交差するストライプ状に形成され、エミッタは当該カソード電極上に形成されたダイアモンド的カーボン膜であることが多い。
【0043】
ゲート電極9はエミッタ6から放出される電子の量を制御するためのものであり、たとえば厚さが0.001〜0.1μmであるPt系合金等の金属膜である。
絶縁層8は、ゲート電極9をエミッタ6に対し所望の位置に設け、かつゲート電極9をカソード電極4と電気的に絶縁するためのものであり、たとえば厚さが0.1〜100μmである酸化物セラミックス膜、PbO−SiO−RO系低融点ガラス膜である。ここで、ROはアルカリ土類金属酸化物である。
【0044】
スペーサ5は、大気圧とFED内部空間圧力(たとえば10−3〜10−5Pa)との圧力差にかかわらずアノードパネル10とエミッタパネル20との間隔を所望の値に保持するためのものであり、典型的には、高さは1〜2mm、幅が0.01〜0.5mmである。
本発明のFEDにおいて、スペーサ5は本発明の第1のガラスまたは第2のガラスからなる。
【0045】
スペーサ5のガラス転移点は500℃以上であることが好ましい。500℃以下では、FEDパネルをガラスフリット等でシールする際、寸法変化が発生するおそれがある。より好ましくは600℃以上である。
【0046】
本発明のFEDは、たとえばスペーサとしてアルミナスペーサを用いる従来のFEDを製造するのと同様の方法で製造できる。
【0047】
本発明の第1または第2のガラス(以下、本発明のガラスという。)はFEDのスペーサに好適であるが、これに限定されない。たとえば、二次電池、燃料電池、太陽電池、pHメータ等の電極にも好適である。特に本発明のガラスのうちガラス転移点がたとえば700℃以上であるものは100℃以上700℃未満の高温で使用される電極に好適である。
【0048】
また、本発明のガラスのうち、電気伝導の活性化エネルギーが0.2eV以上、より好ましくは0.4eV以上であるものは、比抵抗の温度変化の大きいことが求められるサーミスタのセンサ等に好適である。
【0049】
また、本発明のガラスのうち、ρがたとえば1010Ω・cm以下、好ましくは10Ω・cm以下であるものはジュール加熱を利用して窓ガラスの曇り防止、マイクロリアクタ等の反応器、等に適用可能である。
【0050】
また、本発明のガラスのうち、ρが小さくたとえば1010Ω・cm以下であって、前記αがたとえば70×10−7/℃以上、好ましくは75×10−7/℃以上、より好ましくは80×10−7/℃以上であるものは、熱膨張係数の大きなことが求められるスイッチング材料MEMS(Micro−Electro−Mechanical Systems)等に好適である。
【0051】
また、本発明のガラスのうち、室温における熱伝導率κとρの積κρがたとえば1015/K以下、好ましくは1014/K以下、より好ましくは1013/K以下であるものは、熱電材料等に好適である。なお、アルミナのκρは3.8×1019/Kである。
【0052】
本発明のガラスは、Pb、V、As、Sb、CdまたはCrを含有しないことが好ましい。
【0053】
【実施例】
SiO 40モル%、Nb 20モル%、BaO 40モル%となるように原料を調合し、白金またはアルミナるつぼを用いて種々の酸素分圧雰囲気の電気炉内で1400℃で1〜2時間溶解した。次いで溶融ガラスを流し出して板状に成形し、徐冷した(例1〜4)。なお、例1は大気雰囲気下で溶解した。
【0054】
例1〜4における溶解時の雰囲気の酸素分圧p(単位:気圧)、レドックスRを表1に示す。
p:電気炉内にZrO酸素センサーを挿入し、大気(酸素分圧=0.2気圧)をリファレンスとして測定した。
R:ガラス中にFeを0.1モル%添加し、溶解して得られたガラスを湿式分析し、[Fe2+]/([Fe2+]+[Fe3+])を算出した。
【0055】
こうして得られたガラス板について、ρ(単位:Ω・cm)、α、ガラス転移点Tg(単位:℃)を以下に示す方法で測定した。
ρ:大きさが5cm×5cm、厚さが2mmの試料の両面にAlを蒸着し、このAlを電極としてASTM D257に準拠して、20℃における比抵抗を測定した。なお、アルミナのρ20は1016Ω・cmである。結果を表に示す。
【0056】
α:示差熱膨張計を用いて、石英ガラスを参照試料として室温から5℃/分の速度で昇温した際のガラスの伸び率を、ガラスが軟化してもはや伸びが観測されなくなる温度、すなわち屈伏点まで測定し、得られた熱膨張曲線から50〜350℃における平均線膨張係数を算出した。例1〜4のαは86×10−7/℃であった。なお、アルミナのαは72×10−7/℃である。
Tg:前記αの測定と同様にして得られた熱膨張曲線における屈曲点に相当する温度をガラス転移点とした。例1〜4のTgは786℃であった。
【0057】
また、例4のガラスについて20℃、40℃、60℃、100℃、130℃における比抵抗を測定し、得られたデータをアーレニウスプロットして電気伝導の活性化エネルギーを求めたところ0.48eVであった。
【0058】
また、例4のガラスについてJIS R1611に準拠して前記κを測定したところ0.77W/m・Kであった。したがって例4のガラスのκρは7.7×1012/Kである。
【0059】
また、例1〜4のガラスについて化学的耐久性を次のようにして評価した。すなわち、ガラスを4cm×4cmの大きさに切断後、両面を研磨、鏡面研磨して厚みが2mmのガラス板とした。このガラス板を炭酸カルシウムおよび中性洗剤を用いて洗浄後、90℃のイオン交換水に20時間浸漬し、単位表面積あたりの浸漬による質量減少ΔW1を求めた。イオン交換水を、濃度が0.1mol・dm−3である塩酸水溶液、濃度が0.1mol・dm−3である水酸化ナトリウム水溶液、にそれぞれ替えて同様にして質量減少を求めた(ΔW2、ΔW3)。
【0060】
例1〜4のガラスについてΔW1、ΔW3はいずれも0.01mg/cm以下、ΔW2はいずれも0.10mg/cmであった。
ΔW1は0.02mg/cm以下であることが好ましい。0.02mg/cm超では洗浄工程等においてガラス表面が変質するおそれがある。より好ましくは0.01mg/cm以下である。
【0061】
ΔW2は0.20mg/cm以下であることが好ましい。0.20mg/cm超では酸洗浄工程、酸エッチング工程等においてガラス表面が変質する、または電解質液に浸漬して電極として使用すると腐食するおそれがある。より好ましくは0.15mg/cm以下である。
【0062】
ΔW3は0.20mg/cm以下であることが好ましい。0.20mg/cm超ではアルカリ洗浄工程、アルカリエッチング工程等においてガラス表面が変質する、または電解質液に浸漬して電極として使用すると腐食するおそれがある。より好ましくは0.15mg/cm以下、特に好ましくは0.05mg/cm以下である。
【0063】
【表1】
Figure 0004370801
【0064】
また、表2、3のSiOからLaまでの欄にモル%表示で示す組成となるように原料を調合し、これを白金るつぼに入れて大気雰囲気下で1400〜1500℃に2〜5時間保持して溶解した。次いで溶融ガラスを流し出して板状に成形し、徐冷した(例A〜K)。
これらガラスのα(単位:10−7/℃)およびTg(単位:℃)を同表に示す。
【0065】
得られたガラスを5cm×5cmの大きさに切断後、両面を研磨、鏡面研磨して厚みが0.1〜0.3mmのガラス板とした。
このガラス板を、水素窒素混合ガス(水素:窒素=2:8(体積比)、露点=−40℃)をフローしながらそのガスによって満たした電気炉(温度=785℃)中に2時間保持した。なお、この還元化処理によって得られるガラスのRは0.99以上と推定される。
還元化処理後のガラス板についてρを測定した。結果を同表に示す。
【0066】
【表2】
Figure 0004370801
【0067】
【表3】
Figure 0004370801
【0068】
【発明の効果】
本発明によれば、アルカリ金属酸化物含有量が少なくとも比抵抗が小さいガラスが得られる。
また、スペーサにおける帯電が起こりにくく、その結果、表示画面の乱れが生じにくいFEDが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のFEDの部分断面の概略を示す図である。
【符号の説明】
1 :前面基板
2 :背面基板
3 :アノード電極
4 :カソード電極
5 :スペーサ
6 :エミッタ
7 :蛍光体
8 :絶縁層
9 :ゲート電極
10:アノードパネル
20:エミッタパネル

Claims (7)

  1. 下記酸化物基準のモル%表示で本質的に、SiO 3060%、TiO+Nb+SnO+Ta+WO+CeO 1525%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 27.540、N 1525%を含有し、アルカリ金属酸化物を実質的に含有しないガラスが得られるように調合された原料を溶解して、ガラス転移点が600℃以上であり、20℃における比抵抗が1015Ω・cm以下であるガラスを製造する方法であって、ガラス中にFeが存在し、[Fe2+]/([Fe2+]+[Fe3+])で表されるレドックスRが0.6以上となるような条件で製造することを特徴とするガラスの製造方法。
  2. 前記Rが、Fe基準のFe含有量が0.01〜1.0モル%の範囲で測定されることを特徴とする請求項1に記載のガラスの製造方法。
  3. 前記ガラスが、Laおよび/またはYを合計で15モル%以下の範囲で含有することを特徴とする請求項1または2に記載のガラスの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のガラスの製造方法により得られるガラス。
  5. 50〜350℃における平均線膨張係数が60×10−7〜110×10−7/℃である請求項4に記載のガラス。
  6. 蛍光体を有するアノードパネルと、電子を放出するエミッタを有するエミッタパネルと、複数のスペーサとを有し、アノードパネルとエミッタパネルとが前記複数のスペーサを介して対向しているフィールドエミッションディスプレイ装置の前記スペーサが、請求項4または5に記載のガラスであることを特徴とするフィールドエミッションディスプレイ装置用スペーサ。
  7. 蛍光体を有するアノードパネルと、電子を放出するエミッタを有するエミッタパネルと、複数のスペーサとを有し、アノードパネルとエミッタパネルとが前記複数のスペーサを介して対向しているフィールドエミッションディスプレイ装置であって、スペーサが請求項4または5に記載のガラスであることを特徴とするフィールドエミッションディスプレイ装置。
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