JP2006179881A - 配線・電極及びスパッタリングターゲット - Google Patents

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Abstract

【課題】電気抵抗率が低く、電子デバイスの高密度化、特に液晶ディスプレイ等の平面表示素子の大型化、高精細化に適した配線・電極、及びその製造に用いられる放電安定性の高いスパッタリングターゲットを提供する。
【解決手段】Alに元素周期律表第3族から選ばれる1種以上の金属を総含有量で0.5原子%未満含有し、かつ、酸素含有量が100ppm以下のAl系合金薄膜により配線・電極を形成することにより、同一条件で作製した純Al薄膜の電気抵抗率と同等の低い電気抵抗率を有し、かつ、ヒロック耐性の高い配線・電極が得られる。このような配線・電極は、元素周期律表第3族から選ばれる1種以上の金属を総含有量で0.5原子%未満含有し、かつ、酸素含有量が100ppm以下であるAl系合金からなるスパッタリングターゲットを用い形成することができる。
【選択図】 図3

Description

本発明は半導体デバイスやフラットパネルディスプレイに使用されるAl系合金薄膜からなる電極・配線及びその製造に使用されるAl系合金からなるスパッタリングターゲットに関するものである。
LCD等のフラットパネルディスプレイ用の薄膜トランジスタ(以下TFTと称する)等の配線や電極に使用される材料として、従来、Cr、Mo等の高融点金属が使用されており、また、半導体電子デバイスに用いられる配線には、Al、Cuなどの純金属や、Al−Cu、Al−Cu−Si、Al−Ndなどの合金材料が用いられている。しかし、最近、特に高集積回路半導体デバイス(VLSI)や薄型テレビとして需要の高いTFT液晶ディスプレイ(TFT−LCD)の電極・配線において、高密度化・高集積化による配線幅の減少や配線長の増大などによる信号遅延や高温多層膜工程による配線の熱欠陥(ヒロックやボイドなど)などが大きな問題となってきている。
ディスプレイの大型化、高精細化に伴い、より低抵抗の配線・電極材料が要求されており、『FPDテクノロジー大全』によると20型でSuper Extended Graphics Array(SXGA)以上の解像度には10μΩcm以下の抵抗率の配線材料が必要とされている。また、半導体デバイスの高密度化に伴い、配線のサイズをより微細にし、欠陥を少なくする必要がある。そのため電極・配線材料として低抵抗で高熱安定性の材料の開発が強く要求されている。
これらの問題を解決するために、古くはVLSI半導体回路ではAl−Cu(例えば、非特許文献1参照),Al−Cu−Si(例えば、非特許文献2参照)が、最近ではCu膜(例えば、非特許文献3参照)が、また、液晶の薄膜半導体(TFT)ではAl−Ta(例えば、非特許文献4参照)、Al−Zr(例えば、非特許文献5参照)、Al−Nd(例えば、特許文献1、2参照)などの合金化が図られ、特に、液晶配線材料としてはNdを2原子%程度添加したAl合金材料が広く使用されている。しかし、将来のデバイスの高速化、高集積化に対しては電気抵抗がまだ高く、また、高生産性を確保するためにスパッタリング投入パワーを大きくすると異常放電によるスプラッシュが発生しやすいという問題がある。
特開平7−45555号公報 特開2001−93862号公報 F.d’Huerle:Metal.Trans.,vol.2,p.683 S.Vaidya,D.B.Fraser and A.K.Sinha,Proc.18th IRPS,IEEE,1980,p.165 C.−K.Hu,S.Chang,M.B.SmallandJ.E.Lewis,Proc.3th VLSI Multilevel Interconnect.Conf.,IEEE,1986,p.181 日本金属学会会報、32巻、第4号(1993)、p.232 SID,94Digest(1994)、p.142
これら従来技術の問題点を解決するために、本発明は、電子デバイスの高密度化、特に液晶ディスプレイ等の平面表示素子の大型化、高精細化に適した電気抵抗率の低い配線・電極及びその作製に用いられる放電安定性の高いスパッタリングターゲットを提供することを目的とするものである。
本発明者らは電子デバイスの高密度化のためのAl系合金配線材料の開発過程で、周期律表の第3族の元素を微量添加したAl系合金薄膜において、周期律表第3族の元素の総含有量を0.5原子%未満とし、酸素含有量を100ppm以下とすることにより、同一条件で作製した純Al薄膜の電気抵抗率と同等の電気抵抗率を有し、かつ、純Al薄膜に比べてヒロック耐性が格段に優れたAl系合金薄膜が得られることを見出した。
また、周期律表第3族の元素の総含有量を0.5原子%未満としたAl系合金薄膜においては、Al系合金の(111)面が基板面に対して平行になるように、(111)面の配向性を向上させること、すなわち、Al系合金の(111)X線回折強度の大きな合金薄膜とすることにより、低抵抗率でヒロック耐性の高い薄膜を得ることができることを見出した。
すなわち、本発明の第1の態様の配線・電極は、元素周期律表第3族から選ばれる1種以上の元素を含むAl系合金薄膜からなる配線・電極であって、前記Al系合金薄膜に含まれる元素周期律表第3族の元素の総含有量が0.5原子%未満であり、かつ、酸素含有量が100ppm以下であることを特徴とする配線・電極である。ここで、元素周期律表第3族の元素とは、Sc、Y、ランタノイド、アクチノイドを意味する。
本発明の第2の態様の配線・電極は、元素周期律表第3族から選ばれる1種以上の元素を含むAl系合金薄膜からなる配線・電極であって、前記Al系合金薄膜に含まれる元素周期律表第3族の元素の総含有量が0.5原子%未満であり、かつ、Al系合金の(111)X線回折強度が、前記Al系合金薄膜と同一条件で形成された純Al薄膜の(111)X線回折強度より大きいことを特徴とする配線・電極である。
本発明の第3の態様の配線・電極は、元素周期律表第3族から選ばれる1種以上の元素を含むAl系合金薄膜からなる配線・電極であって、前記Al系合金薄膜に含まれる元素周期律表第3族の元素の総含有量が0.5原子%未満であり、かつ、Al系合金の(111)面の配向率が50%以上であることを特徴とする配線・電極である。
なお、これらの第2及び第3の態様の配線・電極を構成するAl系合金薄膜の酸素含有量は100ppm以下である事が好ましい。酸素含有量を100ppm以下とする事により、(111)面の配向性を向上させることが容易となり、それにより、低抵抗率、高ヒロック耐性の配線・電極を容易に得ることが可能となる。
また、Al系合金薄膜に含まれる元素周期律表第3族の元素としてはNdが最も好ましい。
本発明の配線・電極においては、薄膜形成後、150℃以上の熱処理を施す事が好ましい。熱処理を施す事により、(111)面の配向性が強くなる傾向にあり、より低抵抗率、高ヒロック耐性の配線・電極を容易に得ることが可能となる。
本発明のスパッタリングターゲットは、元素周期律表第3族から選ばれる1種以上の元素を含むAl系合金からなるスパッタリングターゲットであって、前記元素周期律表第3族の元素の総含有量が0.5原子%未満であり、かつ、酸素含有量が100ppm以下であるスパッタリングターゲットである。
また、Al系合金に含まれる元素周期律表第3族の元素としてはNdが最も好ましい。
以下、本発明の配線・電極及びその作製に用いられるスパッタリングターゲットについてさらに詳しく説明する。
本発明の第1の態様の配線・電極は、Alを主成分とし、元素周期律表第3族から選ばれる1種以上の元素の総含有量が0.5原子%未満であり、かつ、酸素含有量が100ppm以下のAl系合金薄膜からなる配線・電極である。元素周期律表第3族の元素から選ばれる1種以上の元素の総含有量を0.5原子%未満とし、酸素含有量を100ppm以下とすることにより、同一条件で作製した純Al薄膜の電気抵抗率と同等の電気抵抗率を有し、かつ、純Al薄膜に比べてヒロック耐性が格段に優れたAl系合金薄膜を得ることができる。なお、得られる配線・電極の電気抵抗率の観点から、元素周期律表第3族の元素から選ばれる1種以上の元素の総含有量は0.4原子%以下がより好ましい。また、0.3原子%以下であることがさらに好ましい。それにより、同一条件で作製した純Al薄膜と同等の低い電気抵抗率のAl系合金薄膜を得ることが可能となる。なお、元素周期律表第3族の元素の総含有量の下限値は特になく、少なくとも0でなければ良いが、ヒロック耐性の観点から、0.01原子%以上であることが好ましく、0.05原子%以上であることがさらに好ましい。酸素含有量については、(111)面の配向性をさらに向上させ、より低抵抗率で、高ヒロック耐性の合金薄膜を得ること等を考慮すると、50ppm以下とすることがさらに好ましい。
本発明の第2の態様の配線・電極は、元素周期律表第3族から選ばれる1種以上の元素を含むAl系合金薄膜からなる配線・電極であって、前記Al系合金薄膜に含まれる元素周期律表第3族の元素の総含有量が0.5原子%未満であり、かつ、Al系合金の(111)X線回折強度が、前記Al系合金薄膜と同一条件で形成された純Al薄膜の(111)X線回折強度より大きいことを特徴とする配線・電極である。
Al系合金の(111)X線回折強度が大きいことは、(111)面が基板面に平行に配向していることを示しており、その理由は必ずしも明確ではないが、この(111)面の配向性を向上させることにより、低抵抗率で、かつ、ヒロック耐性に優れたAl合金薄膜を得ることができる。
また、この(111)面の配向性の向上は、例えば、薄膜中の酸素含有量を低減することにより達成することができる。特に、元素周期律表第3族の元素の総含有量が0.5原子%未満の合金薄膜では、(111)面の配向性に及ぼす酸素の影響が顕著であり、酸素含有量を低減することにより、配向性が著しく向上し、同一条件で形成した純Al薄膜よりも強い(111)X線回折強度を示す合金薄膜が得られる。
上記の(111)面の配向性は、後方散乱電子回折像法(以下EBSP法と称す)により、Al系合金薄膜の表面に存在する結晶面について、どのような結晶面がどのような傾きでどのくらい存在しているかを測定することで評価することができる。例えば、測定対象であるAl系合金薄膜の表面を構成する結晶面の内、基板面に対する傾きが15度以内の(111)面の面積の合計が、測定領域の全面積の50%に相当するとき、「(111)面の配向率が50%である」と定義することができる。
また、(111)面の配向性の増大により、(111)X線回折強度が増大することから、(111)X線回折強度と上記の(111)面の配向率との相関を予め定めることにより、X線回折強度を測定することで、前記(111)面の配向率を推定することができる。
この(111)面の配向性に及ぼす酸素の影響は、元素周期律表第3族の元素の総含有量が0.5原子%未満のAl系合金薄膜では非常に顕著であり、酸素含有量が少ないAl系合金薄膜、例えば、酸素含有量20ppmのターゲットを用いてスパッタリング法により成膜して得たAl系合金薄膜では、第3族元素の含有量が0.1原子%程度の場合、(111)X線回折強度が非常に強くなり、純Al薄膜の2倍近い強度を示す(図5参照)。また、EBSP法により測定される上記(111)面の配向率は75%に達する。
これに対して、酸素含有量270ppmのターゲットを用いてスパッタリング法により成膜して得たAl系合金薄膜では、第3族元素の含有量が0.1原子%程度の場合でも、(111)X線回折強度は非常に弱く、酸素含有量20ppmのターゲットを用いて得られたAl系合金薄膜の10分の1程度の回折強度を示すだけである(図5参照)。また、EBSP法により測定される上記(111)面の配向率も高々35%にすぎない。
なお、後述の実施例3及び比較例2との比較から明らかなように、配向性の高いAl系合金薄膜では、抵抗率が非常に低く、かつ、第3族元素の添加元素の含有量が極わずかであってもヒロック耐性が十分に高いことが認められる(図3〜5参照)。
本発明の配線・電極を構成するAl系合金薄膜に含まれる元素周期律表第3族の元素としてはSm、Nd、Gdが好ましくNdが最も好ましい。
本発明のAl系合金薄膜は少なくとも1つの元素周期律表第3族の元素を含むものであるが、より低い電気抵抗率の薄膜を得るという観点から、元素周期律表第3族の元素以外の元素はできるだけ含まない方が好ましい。特に、Al、元素周期律表第3族の元素、水素、酸素、窒素、炭素、硫黄、希ガス元素以外の元素(以下、不純物元素と称す)の総量が50ppm以下であることが好ましい。また、ガス成分(水素、酸素、窒素、炭素、硫黄)は総量で500ppm以下、より好ましくは、350ppm以下である。
本発明のAl系合金薄膜からなる配線・電極の形成には、スパッタリングや真空蒸着、イオンプレーティング等の真空成膜法や、めっき法などの湿式法を用いる事が出来る。中でも、大面積に均一に高速成膜が可能な点でスパッタリング法が好ましい。
スパッタリング法による成膜法では、純Alターゲット上にチップ材料を置いて成膜する方法や、純Alターゲットと希土類元素のターゲットの同時スパッタリング、あるいは、Al系合金ターゲットを使用したスパッタリングを利用する事が出来る。中でも、薄膜特性の均一性の観点からAl系合金からなるスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法が好ましい。
熱処理は、Al系合金薄膜の形成後に行なうが、熱処理の温度を高くする事により低抵抗率を得る事が出来る。熱処理の温度は好ましくは200℃以上、より好ましくは250℃以上である。なお、本発明における熱処理とは、例えば、窒素中、真空中等の非酸化性雰囲気中で所定温度で所定時間保持することであり、保持時間としては15分以上が好ましく、30分〜1時間であることがさらに好ましい。該熱処理は熱処理用の炉を利用する他、デバイスの製造工程で発生する熱(例えばCVD工程での熱履歴)を利用することもできる。
薄膜中の酸素含有量や不純物元素の含有量の制御は、ターゲット中の酸素含有量や不純物元素の含有量を制御する事により可能である。酸素含有量が100ppm以下の薄膜は、酸素含有量が100ppm以下のスパッタリングターゲットを使用する事により製造する事が可能である。また、不純物含有量が50ppm以下の薄膜は、不純物含有量が50ppm以下のスパッタリングターゲットを使用する事により得る事が可能である。
本発明のスパッタリングターゲットは、元素周期律表第3族の元素から選ばれる1種以上の元素を含むAl系合金からなるスパッタリングターゲットであって、前記元素周期律表第3族の元素から選ばれる1種以上の元素の総含有量が0.5原子%未満、かつ、酸素含有量が100ppm以下であるスパッタリングターゲットであり、以下のようにして作製できる。粒径が1〜100μm程度の原料粉末(Alと元素周期律表第3族元素から選ばれる1種以上の元素)を所定の組成比で混合し、ホットプレス法(HP法)や熱間静水圧法(HIP法)などの技術を使用して製造したり、また、所定の組成比で混合した原料粉末を溶解して鋳造法で作製したりする事ができる。本発明のスパッタリングターゲットに含まれる、元素周期律表第3族の元素から選ばれる1種以上の元素の総量は、得られる薄膜の抵抗率の観点から、0.4原子%以下がより好ましい。また、0.3原子%以下であることがさらに好ましく、それにより、同一条件で作製した純Al薄膜と同等の低い電気抵抗率のAl系合金薄膜を得ることが可能となる。また、元素周期律表第3族の元素の総含有量の下限値は特になく、少なくとも0でなければ良いが、ヒロック耐性の観点から、0.01原子%以上であることが好ましく、0.05原子%以上であることがさらに好ましい。
本発明のスパッタリングターゲットを製作する際、原料の選別、精製や、混合法、焼結条件、あるいは、熔解条件、鋳造条件等を制御することにより、スパッタリングターゲット中の酸素含有量を100ppm以下とすることができ、それにより、酸素含有量100ppm以下のAl系合金薄膜の形成が可能となり、かつ、放電安定性を向上させることができる。なお、酸素含有量については、(111)面の配向性をさらに向上させ、より低抵抗率で、高ヒロック耐性の合金薄膜を得ること等を考慮すると、50ppm以下とすることがさらに好ましい。
また、Al系合金薄膜に含まれる元素周期律表第3族の元素としてはSm、Nd、Gdが好ましくNdが最も好ましい。
なお、本発明における純Al及び純Al薄膜は、いずれも合金化するための元素を添加していないAl及びAl薄膜を意味し、具体的には少なくとも純度99.99重量%以上の高純度のAl及びAl薄膜を意味する。
本発明によれば、電気抵抗率が同一条件で作製した純Al薄膜と同等であり、ヒロックの発生が純Al薄膜と比べて格段に少ない配線・電極を得ることができ、電子デバイスの高密度化、特に液晶ディスプレイ等の平面表示素子の大型化、高精細化に適した配線・電極として使用することができる。また、本発明のスパッタリングターゲットによれば、そのような配線・電極を安定した放電により効率よく形成することが可能となる。
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順、製造方法などは本発明の趣旨を逸脱しない限り変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(実施例1、比較例1)
純Alからなる円板状ターゲット(直径100mm、純度99.99%)の上にNdチップ(5mm×5mm×1mmt、純度99.9%)を所定の組成になるように配設した複合ターゲットを用い、DCマグネトロンスパッタ装置を使用し、スパッタガスをAr0.5Paとして、厚さ200nm、Nd含有量0.08原子%、0.17原子%及び0.34原子%のAlNd合金薄膜を作製した(実施例1)。また、比較例として、Ndを添加していない純Al薄膜並びにNd含有量0.55原子%及び0.65原子%のAlNd合金薄膜を同様に作製した(比較例1)。それらの試料を窒素雰囲気中で60分間、200〜400℃にて熱処理した後の電気抵抗率を四端子法にて測定した。350℃で熱処理した場合の抵抗率比(試料の電気抵抗率/同一条件で作製した純Al薄膜の電気抵抗率)のNd濃度依存性を図1に示す。薄膜組成はICP法を用いて測定した。また、各種熱処理温度での抵抗率比を表1に示す。なお、溶融ガス分析により得られた前記の純Alからなる円板状ターゲットの酸素含有量は20ppmであった。
図1および表1からNd含有量が0.5原子%未満のAlNd合金薄膜においては、同一条件で作製した純Al薄膜と同等の電気抵抗率を有する事が分かる。
Figure 2006179881
また、0.08原子%Ndを含有した膜の350℃熱処理後のXRDプロファイル(θ−2θ法)を図2に示す。40°付近の回折線は、Alの(111)回折線に該当するものであり、図2より、(111)面が基板面に平行に配向していることが分かる。
さらに、熱処理後の薄膜を光学顕微鏡により観察し、ヒロック密度を測定した。350℃熱処理後の各Nd組成の試料のヒロック密度比(試料のヒロック密度/同一条件で作製した純Al薄膜のヒロック密度)を表2に示す。表2から微量のNdの添加によりヒロックの発生を著しく低減できることがわかる。
Figure 2006179881
これに対して、元素周期律表第3族の元素の含有量が0.55原子%及び0.65原子%の合金薄膜では、ヒロック耐性は多少向上するが、抵抗率比はそれぞれ1.04及び1.09であり、同一条件で作製した純Al薄膜と同等の電気抵抗率(抵抗率比:1.0)を有する実施例の合金薄膜と比べて大きなものとなっている。
(実施例2)
Ndチップの代わりにGdチップ(5mm×5mm×1mmt、純度99.9%)をGd含有量が0.2原子%になるように配設した複合ターゲットを用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ200nmのAlGd合金薄膜を形成し、窒素雰囲気中で60分間、350℃で熱処理を施した。得られたAlGd合金薄膜の電気抵抗率は同一条件で作製したAl薄膜の電気抵抗率よりも低く、その比は0.96であった。
(実施例3、比較例2)
真空溶解法によるインゴットから純Alターゲットを作製した。溶融ガス分析により測定した結果、このターゲットの酸素含有量は20ppmであった。以下、このターゲットを低酸素ターゲットと称す。
このターゲット上にNdチップ(5mm×5mm×1mmt、純度99.9%)を所定の組成になるように配設し、薄膜形成前の到達真空度を5×10−4Pa以下とした後、スパッタガスをAr0.5Paとして、厚さ200nmの種々の組成を有する薄膜を得た。成膜後の試料を窒素雰囲気中で60分間、350℃にて熱処理した後の電気抵抗率を四端子法にて測定した。また、ヒロック密度を光学顕微鏡を使用して測定した(実施例3)。
比較のために、純Al原料粉末をホットプレスで焼結させたインゴットから純Alターゲットを作製した。溶融ガス分析により測定した結果、このターゲットの酸素含有量は270ppmであった。以下、このターゲットを高酸素ターゲットと称す。実施例3と同様に、このターゲット上にNdチップ(5mm×5mm×1mmt、純度99.9%)を所定の組成になるように配設し、薄膜形成前の到達真空度を5×10−4Pa以下とした後、スパッタガスをAr0.5Paとして、厚さ200nmの種々の組成を有する薄膜を得た。成膜後の試料を窒素雰囲気中で60分間、350℃にて熱処理した後の電気抵抗率を四端子法にて測定した。また、ヒロック密度を光学顕微鏡を使用して測定した(比較例2)
実施例3で用いた低酸素ターゲットを用いて同一条件で作製した純Al薄膜の抵抗率に対する上記実施例3及び比較例2の薄膜の抵抗率比を図3に示す。同様にして同一条件で作製した純Al薄膜のヒロック密度に対する上記実施例3及び比較例2の薄膜のヒロック密度比を図4に示す。
図3、4から明らかなように、実施例3の酸素含有量20ppmの低酸素ターゲットを用いて作製した合金薄膜の方が、比較例2の酸素含有量270ppmの高酸素ターゲットを用いて作製した合金薄膜に比べて、低い抵抗率、低いヒロック密度の薄膜が得られる事が分かる。
また、図5に熱処理後の各合金薄膜の(111)X線回折強度のNd含有量依存性を示す。なお、X線回折測定の測定条件は以下の通りである。
X線:CuKα、印加電圧:50kV、電流:200mA、スキャン:37〜40°(θ−2θ法)、ステップスキャン刻み幅:0.002°、スキャン速度:0.1°/min。
図5より、Nd含有量が0.5原子%以上では、酸素含有量20ppmの低酸素ターゲットを用いて作製した合金薄膜と、比較例2の酸素含有量270ppmの高酸素ターゲットを用いて作製した合金薄膜との間で、(111)X線回折強度に大きな相違がないのに対して、Nd含有量が0.5原子%未満の合金薄膜では、両者は大きく異なっていることが分かる。すなわち、Nd含有量が0.5原子%未満の合金薄膜では、酸素の影響が非常に顕著になっており、しかも、微量のNdの添加により、純Al薄膜の(111)X線回折線よりも強い回折強度を示すようになることが分かる。
なお、前述のように、(111)X線回折強度が大きいことは、(111)面が基板面に平行に配向していることを示すものであり、酸素含有量が20ppmの低酸素ターゲットを用いて得た実施例3の合金薄膜では、極微量のNdの添加によっても、(111)面の配向性が著しく増大することが分かる。
これに対して、酸素含有量が270ppmの高酸素ターゲットを用いた比較例2の合金薄膜では、Nd含有量の低下に伴う(111)X線回折強度の増加は僅かであり、回折強度自体も非常に弱く、また、純Al薄膜の(111)X線回折強度を上回ることもない。
また、図3〜5より、(111)面の配向性を高めること、すなわち、(111)X線回折強度を大きくすることにより、同一条件で作製した純Al薄膜と同等の低い電気抵抗率で、かつ、十分に高いヒロック耐性を有するAl合金薄膜が得られることが分かる。
これに対して、酸素含有量が270ppmの高酸素ターゲットを用いた比較例2の合金薄膜では、抵抗率、ヒロック密度ともに大きな合金薄膜しか得られないことが分かる。
また、熱処理後の合金薄膜で、Nd含有量が約0.1at%の試料のEBSP分析を行った結果、前述の(111)面の配向率(基板面に対して±15度以内の(111)面の面積の合計が、測定領域の全面積に占める割合)は、酸素含有量が20ppmの低酸素ターゲットを用いた合金薄膜では75%であるのに対して、酸素含有量が270ppmの高酸素ターゲットを用いた合金薄膜では35%であった。
また、(111)面の配向性の増大により、(111)X線回折強度が増大することから、(111)X線回折強度と(111)面の配向率との相関関係を求め、図5に示す(111)X線回折強度を(111)面の配向率に換算した結果を図6に示す。
図6より、(111)面の配向率に及ぼす酸素の影響はNd含有量が0.5at%未満で非常に顕著になることが認められる。また、図3〜5より、(111)面の配向率を50%以上とすることにより、同一条件で作製した純Al薄膜と同等の低い電気抵抗率を有し、かつ、十分に高いヒロック耐性を有するAl合金薄膜が得られることが分かる。
なお、この(111)面の配向率は60%以上が好ましく、70%以上がさらに好ましい。配向率を大きくすることで、より低抵抗率でヒロック耐性の高いAl合金薄膜が得られる。
(実施例4、比較例3)
AlNd組成物を真空中で溶解し、鋳造してAl−0.2原子%Ndのインゴットを製造した。本インゴットを圧延しターゲット材とし、本ターゲット材を直径100mm、厚さ5mmの円板状に加工し、バッキングプレートにボンディングしてスパッタリングターゲットを完成させた。
得られたスパッタリングターゲットの酸素含有量を溶融ガス分析により測定した結果40ppmであった(実施例4)。
このスパッタリングターゲットを用いて実施例1と同じ条件でAlNd薄膜を得た。得られた薄膜を350℃でアニールした後、抵抗率を測定した結果、同一条件で作製した純Al薄膜に対する抵抗率比は0.98であった。
さらに、このスパッタリングターゲットをAr雰囲気(0.5Pa)中で1000Wの電力で放電させ、放電中に発生する異常放電(アーキング)をターゲット−電源間のケーブルに巻きつけたコイルで誘導起電力を検出することにより、1分間あたりのアーキング発生数を調べた結果0.2個/分であった。
一方、Al−0.2原子%Nd原料粉末をアトマイズ法により製造し、該原料粉末をHIP法により焼結しAlNdインゴットを作製した。本インゴットを圧延しターゲット材とし、本ターゲット材を直径100mm、厚さ5mmの円板状に加工し、バッキングプレートにボンディングしてスパッタリングターゲットを完成させた。得られたスパッタリングターゲットの酸素含有量をLECO分析により測定した結果500ppmであった(比較例3)。
このスパッタリングターゲットをAr雰囲気(0.5Pa)中で1000Wの電力で放電させ、上記と同様にして1分間あたりのアーキング発生数を調べた結果2.5個/分であった。
(実施例5)
Ndチップの代わりにSmチップ(5mm×5mm×1mmt、純度99.9%)をSm含有量が0.13原子%になるように配設した複合ターゲットを用いたこと以外は実施例3と同様にして、厚さ200nmのAlSm合金薄膜を形成し、窒素雰囲気中で60分間、350℃で熱処理を施した。得られたAlSm合金薄膜の電気抵抗率は、同一条件で作製した純Al薄膜の電気抵抗率よりも低く、その比は0.97であった。
(実施例6、比較例4)
実施例4と同じターゲット(溶解鋳造法ターゲット)を使用して、DCマグネトロンスパッタ装置でスパッタガスをAr0.5Paとして、厚さ200nmのAlNd合金薄膜を作製した(実施例6)。また、比較例3と同じターゲット(アトマイズ粉末ターゲット)を使用して、同じくDCマグネトロンスパッタ装置でスパッタガスをAr0.5Paとして、厚さ200nmのAlNd合金薄膜を作製した(比較例4)。これらの試料を窒素雰囲気中で60分間、200〜400℃にて熱処理した後の電気抵抗率を四端子法にて測定した。さらに、熱処理後の薄膜を光学顕微鏡により観察し、ヒロック密度を測定した。各試料の抵抗率比(試料の抵抗率/同一条件で作製した純Al薄膜の抵抗率)、ヒロック密度比(試料のヒロック密度/同一条件で作製した純Al薄膜のヒロック密度)を表3に示す。表3から、ターゲット中の酸素含有量が低いほうが、低抵抗率、高ヒロック耐性の薄膜が得られる事が分かる。特に、酸素含有量が500ppmのターゲットを使用して得た比較例4の合金薄膜では、抵抗率比が1.14と非常に大きなものとなっている。
Figure 2006179881
350℃で熱処理した場合の抵抗率比のNd濃度依存性の1例を示す図である。 350℃で熱処理した後のXRDプロファイル(θ−2θ法)の1例を示す図である。 実施例3及び比較例2の薄膜の抵抗率比を示す図である。 実施例3及び比較例2の薄膜のヒロック密度比を示す図である。 (111)X線回折強度のNd含有量依存性の一例を示す図である。 (111)X線回折強度と(111)面の配向率との相関関係を用いて、(111)X線回折強度を(111)面の配向率に換算した結果を示す図である。

Claims (8)

  1. 元素周期律表第3族から選ばれる1種以上の元素を含むAl系合金薄膜からなる配線・電極であって、前記Al系合金薄膜に含まれる元素周期律表第3族の元素の総含有量が0.5原子%未満であり、かつ、酸素含有量が100ppm以下であることを特徴とする配線・電極。
  2. 元素周期律表第3族から選ばれる1種以上の元素を含むAl系合金薄膜からなる配線・電極であって、前記Al系合金薄膜に含まれる元素周期律表第3族の元素の総含有量が0.5原子%未満であり、かつ、Al系合金の(111)X線回折強度が、前記Al系合金薄膜と同一条件で形成された純Al薄膜の(111)X線回折強度より大きいことを特徴とする配線・電極。
  3. 元素周期律表第3族から選ばれる1種以上の元素を含むAl系合金薄膜からなる配線・電極であって、前記Al系合金薄膜に含まれる元素周期律表第3族の元素の総含有量が0.5原子%未満であり、かつ、Al系合金の(111)面の配向率が50%以上であることを特徴とする配線・電極。
  4. 酸素含有量が100ppm以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の配線・電極。
  5. Al系合金薄膜に含まれる元素周期律表第3族の元素がNdであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の配線・電極。
  6. 薄膜形成後に、150℃以上の熱処理が施されたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の配線・電極。
  7. 元素周期律表第3族から選ばれる1種以上の元素を含むAl系合金からなるスパッタリングターゲットであって、前記元素周期律表第3族の元素の総含有量が0.5原子%未満であり、かつ、酸素含有量が100ppm以下であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
  8. Al系合金に含まれる元素周期律表第3族の元素がNdであることを特徴とする請求項7に記載のスパッタリングターゲット。
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JP2007070733A (ja) * 2006-10-06 2007-03-22 Sumitomo Chemical Co Ltd 冷間加工材
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