JP2006176701A - 高純度化されたムコ多糖類の製造方法 - Google Patents

高純度化されたムコ多糖類の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 タンパク質やその分解物の含有量が少なく、医薬品、化粧品原料等に使用可能な高純度のムコ多糖類(例えば、コンドロイチン硫酸)を簡便に得る。
【解決手段】 タンパク質やその分解物を含むムコ多糖類と、水酸化ナトリウム等の塩基性物質を含み、溶液中のOH濃度が0.01〜1mol/Lの水溶液を限外ろ過にかけ、タンパク質やその分解物を透過液として除去する。このとき、透過液として失われる分の液体の補充には、OH濃度が0.01〜1mol/Lの水溶液を用いる。タンパク質やその分解物を除去して得られたムコ多糖類の水溶液は必要に応じて中和などにより中性にし、さらにアルコール沈殿を行うことにより高純度のムコ多糖類を固形物として回収することができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、医薬品、化粧品、健康食品、食品添加物、飼料等の分野において種々の用途が期待されるムコ多糖類の製造方法に関する。
ムコ多糖とは、広義には動物から得られた多糖類であり、その原料としては、鮫、鮭等の魚類、鯨、ナマコ等のその他の水生動物、および牛、豚、鶏、馬等の陸上動物から取り出した骨、軟骨、皮、魚の鱗等が知られている。
ムコ多糖の代表的な物質としては、グリコサミノグルカンを挙げることが出来る。グリコサミノグルカンは、一般にコアタンパク質に共有結合したプロテオグルカンとして存在する。グリコサミノグルカンは、繰り返し二糖で構成され、二糖の内のひとつはD−グルコサミンまたはD−ガラクトサミンのいずれかである。グルコサミノグルカンの例としては、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン、ケタラン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸及びデルマタン硫酸等が知られている。
これらのなかでコンドロイチン硫酸は、動物の粘質性分泌液、軟骨等から得られるムコ多糖の一種であり、動物、人体の保水をはかり、これによって新陳代謝を潤滑にし、細胞の賦活機能を果たしていると推定されており、医薬品、化粧品、健康食品として広く用いられている。
コンドロイチン硫酸の生理作用としては、細胞外液の容量調節と水分代謝、細胞外液のイオン移動と調節、関節組織の円滑化、脂血清澄作用と血液凝固阻止作用、抗炎症作用、抗ガン作用、角膜透明度維持、感染防止等が知られている。食品、飲料、化粧品または医薬品の有効成分として、これらの生理機能を十分に発揮するために、簡便で安価な高純度コンドロイチン硫酸の製造方法の開発が求められていた。
一般にムコ多糖含有抽出物を製造する方法は、骨、軟骨、皮等の原料よりアルカリ液で分解・抽出するアルカリ処理法、中性塩液で抽出する中性塩処理法、プロテアーゼ、プロナーゼ等のタンパク質分解酵素で処理する酵素法等の方法を用いることが出来、またこれらの方法を組み合わせた処理法も用いることが出来る。
これらの処理により、ムコ多糖と、該ムコ多糖に共有結合しているコアタンパク質とを切断し、ムコ多糖含有抽出物を得る。しかしながら、該ムコ多糖含有抽出物中には、タンパク質やその分解物(以下、タンパク質等とも称す)が多量に含まれている。ムコ多糖類へのタンパク質等の混在は、特に医薬品、化粧品分野での使用に支障をきたすことがある。例えば、注射薬用医薬剤として用いる場合には、タンパク質等が混在するとアレルギー反応を引き起こしやすくなり、化粧品用途では経時的な褐変を生じるなど安定性に問題を生じやすくなる。
よって、これらの方法のみでタンパク質等の残存により十分な純度を得ることは困難である。この問題を解決するために、ムコ多糖含有抽出物を、アルコール分画処理、イオン交換クロマトグラフィー処理、限外ろ過、活性炭処理、あるいはこれらの方法を組み合わせることが提案されている。
限外ろ過による処理は、分離対象であるタンパク質等を透過液として除去する方法である。このような限外ろ過に際しては、タンパク質等と共に水が失われ、徐々に被ろ過液の粘度が上昇するなどして透過量が少なくなっていく傾向があり、これを避けるために、失われた分に相当する水を補給する必要がある(例えば、特許文献1、2参照)。
特開昭57−192401号公報 特開2000−273102号公報
しかしながら、上記限外ろ過によってもタンパク質等を完全に取り除くことは困難であり、長時間に渡り限外ろ過を行い高純度のムコ多糖類を得た場合でも若干量のタンパク質等が混入している場合があるなどの問題点があった。また上記特開昭57−192401号公報には注射液としても使用可能なほど高純度のコンドロイチン硫酸を得る方法が記載されているが、該方法においては前処理として重金属などを用いて酸化的に解重合する必要があり操作が煩雑であった。
従って本発明は、実質的にタンパク質を含まない高純度のムコ多等類を、工業的な生産に適した簡便かつ低コストな方法で製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった。その結果、タンパク質等を含むムコ多糖類の水溶液を、特定の条件下で限外ろ過にかけることにより、該タンパク質等を極めて効率よく除去でき、高純度のムコ多糖類が得られることを見出し、さらに検討を進めた結果、本発明を完成するに至った
即ち本発明は、ムコ多糖類並びに、タンパク質及び/又はその分解物を含有してなる原料水溶液を被ろ過液として限外ろ過を行うことにより、該水溶液から前記タンパク質及び/又はその分解物を透過液として分離する工程を含む、高純度化されたムコ多糖類を製造する方法において、上記原料水溶液としてOH濃度が0.01〜1mol/Lとなるように塩基性物質が配合されたものを用いる共に、OH濃度が0.01〜1mol/Lとなるように塩基性物質が配合された水溶液を被ろ過液に補給しつつ行うことを特徴とする前記方法である。
本発明の方法により、タンパク質やタンパク質分解物の含有量が少ない高純度のムコ多糖類を容易に得ることが出来る。これにより、医療用途、化粧品用途など高い純度の求められる用途に対しても安価にムコ多等類を提供することが可能になる。
本発明は、ムコ多糖類並びに、タンパク質及び/又はその分解物を含有してなる原料水溶液を被ろ過液として限外ろ過を行い、高純度のムコ多糖類を得る。
本発明の製造方法を適用する上記ムコ多糖類は特に限定されるものではないが、代表的には、グリコサミノグルカンを挙げることが出来る。グリコサミノグルカンは、一般にコアタンパク質に共有結合したプロテオグルカンとして存在する。グリコサミノグルカンは、繰り返し二糖で構成され、二糖の内のひとつはD−グルコサミンまたはD−ガラクトサミンのいずれかで構成される。グルコサミノグルカンの例としては、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン、ケタラン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸及びデルマタン硫酸等が挙げられる。これらの中で、精製の効率が高いことから、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ケタラン硫酸、デルマタン硫酸が好ましく、特にコンドロイチン硫酸が好ましい。ムコ多糖類が、硫酸エステルを有している場合には、酸(−OSO3H)または、Na塩(−OSO3Na)、K塩(−OSO3K)、Ca塩(−OSO3Ca)等のイオン性構造またはこれらの混合物であっても良い。またムコ多糖類が、カルボシキル基構造を有している場合には、酸(−CO2H)または、Na塩(−CO2Na)、K塩(−CO2K)、Ca塩(−CO2Ca)等のイオン性構造またはこれらの混合物であっても良い。
前記の通り、ムコ多等類は、鮫、鮭等の魚類、鯨、ナマコ等のその他の水生動物、および牛、豚、鶏、馬等の陸上動物等の骨、軟骨、皮、鱗等(以下、ムコ多糖類含有組織)をアルカリ処理、酵素処理等することにより、多量のタンパク質等を含む状態で得られる。
本発明の製造方法における限外ろ過は、上記のようなタンパク質等を含むムコ多等類から、該タンパク質等を除去し、高純度のムコ多糖類を得るために行われる。即ち、本発明における限外ろ過を適用する原料組成物に含まれる(限外ろ過により除去される)タンパク質等は、上記ムコ多糖類含有組織としていかなる組織を用いたか、どのような条件で処理したかにより決定されるものである。
本発明の製造方法を適用する対象としては、このようなタンパク質等を含むムコ多等類であればその起源は問わない。一般に、魚類、特に鮭は、得られる処理品の純度が特に高く、臭気も少なく、また多量かつ安定的に供給されやすい。なかでも鮭の鼻軟骨等の軟骨はムコ多等類の含有量が多く、食用にあまり適さず、取り扱いも容易であるという利点を有する。
上記ムコ多糖類含有組織から、本発明の製造方法における限外ろ過を適用する、ムコ多糖類並びに、タンパク質及び/又はその分解物を含有してなる原料水溶液を得る方法は特に限定されるものではないが、代表的な方法を具体的に述べると以下の通りである。
骨、軟骨、皮等のムコ多糖類含有組織においては、ムコ多糖類はコアタンパク質と共有結合した状態で存在している。この共有結合を切断し、後述する限外ろ過によりムコ多糖類とコアタンパク質とを分離可能な状態にするためには、ムコ多糖類含有組織をアルカリ液で分解・抽出するアルカリ処理法、中性塩液で抽出する中性塩処理法、プロテアーゼ等のタンパク質分解酵素を加えて処理する酵素法等、またはこれらの方法を組み合わせた処理法など公知の方法を適用すればよい。これらの方法の中で、アルカリ処理法及び酵素法による処理が好ましく、特に酵素処理が好ましい。また酵素処理においては、特にアルカリ性プロテアーゼを用いることが好ましい。なお、用いる骨、軟骨、皮等のムコ多糖類含有組織は、あらかじめ水洗、有機溶媒洗浄等により肉、脂肪等の夾雑物を除去することが好ましい。これらムコ多糖類含有組織を、処理前に切断、粉砕、水を添加し加圧する等の処置をしてアルカリ処理法や酵素処理の効率を高めることが通常行われる。
上記処理方法及び用いたムコ多糖類含有組織の種類に応じ、上記処理により得られる被処理液にはムコ多糖類、タンパク質及び/又はその分解物、並びに脂肪や筋組織、その他、種々の夾雑物を含んだ水溶液として得られるのが一般的である。本発明の製造方法における限外ろ過を適用するに際しては、このような夾雑物を事前にできるだけ取り除いておくことが好ましい。不溶性の夾雑物を除去するためには、遠心分離、ろ紙、ろ布、ろ砂等を用いたろ過等を行うことができる。さらに、上記遠心分離やろ過等によっても除去できない濁り成分の除去、脱臭、脱色、脱脂等を行うために、ケイソウ土等のろ過助剤を用いたろ過、活性炭処理等を行うことが出来る。なお活性炭処理に際しては、多量の活性炭を用いるとムコ多糖類の収量が低下する場合があるため、該活性炭処理を適用する水溶液から水を除去して得られる成分を100質量%とした場合、活性炭の量を2.5質量%以下とすることが好ましい。
このようにして夾雑物を除いた水溶液(粗水溶液)には、ムコ多糖類、タンパク質及び/またはその分解物が含まれており、この状態のまま後述する塩基性物質を添加して限外ろ過にかけてもよいが、保管や輸送等の際の取り扱いが容易であり、また腐敗等を防止しやすくなるため、一旦、スプレードライ(噴霧乾燥)、蒸発乾燥、凍結乾燥等の方法で固化・粉末化させて用いるのが一般的である。このようにして得られる固形物には、ムコ多糖類、タンパク質及び/またはその分解物のほか、塩類、灰分、その他無機物等が含まる場合がある。以下ではこのような溶媒を除去して得られる固形物分を「粗ムコ多糖類」と称す。また、上記のような方法により得られる粗水溶液から溶媒を除去せず、水溶液の状態のまま次の工程に供する場合でも、溶媒を除去したならば残存する成分は同じく粗ムコ多糖類と称する。
なお、本発明の効果が顕著になるという点から、本発明の製造方法における限外ろ過を適用する対象としては、上記のような粗ムコ多糖類中に占めるタンパク質及び/又はたんぱく質分解物の含有率(タンパク質等含有率)が10〜90質量%のものであることが好ましい。
本発明の製造方法は、上記のような方法で得ることのできるムコ多糖類並びに、タンパク質及び/又はタンパク質分解物を含有してなる原料水溶液を、特定の条件下で限外ろ過にかける点に特徴を有する。即ち、まず最初に、上記ムコ多糖類、タンパク質及び/又はタンパク質分解物(これらは通常、粗ムコ多糖類を構成する成分として配合される)、水、並びに塩基性物質が配合された状態の水溶液を調製する。ここで、該塩基性物質は、OH濃度が0.01〜1mol/Lとなるように配合する必要がある。
ムコ多糖類とタンパク質等とは、水溶液中で水素結合により比較的強固に結びついており、中性乃至OH濃度が0.01mol/L未満の塩基性の状態で限外ろ過を行っても十分に分離させることができない。即ち、OH濃度が0.01mol/Lとすることにより上記水素結合が十分に壊れ、ムコ多糖類とタンパク質等とが別個の分子として挙動するようになり、限外ろ過により十分な分離が可能となる。一方、OH濃度が1mol/Lより大きい場合にはムコ多糖類が分解(例えば、硫酸エステルが加水分解)してしまい収量や品質が低下する。強い酸性条件下でも、ムコ多糖類が極めて容易に分解してしまう。好ましくは、OH濃度が0.05〜0.5mol/Lとなるように塩基性物質を配合する。
さらに本発明の製造方法における限外ろ過に際しては、タンパク質等が透過液として除去され、ムコ多糖類が濃縮される。しかし、ムコ多糖類は溶液の粘度を上昇させる効果が高く、濃縮が進むにつれて粘度が上昇して、ろ過されにくくなる。従って、ほぼ透過液量に相当する量だけ水を加えるが、OH濃度が低い水を加えてしまうと、ムコ多糖類とタンパク質等の分離が困難になる。逆にOH濃度が高すぎると上記と同様、ムコ多糖類の収量や品質等が低下する。従って、透過液として失われた分として補充するものも、OH濃度が0.01〜1mol/Lとなるように塩基性物質が配合された水溶液を用いる必要がある。
上記原料水溶液に占める各成分の濃度は、OH濃度以外は特に限定されるものではないが、ムコ多糖類の濃度が高い方が効率が良いが、高すぎると水溶液の粘度が高くろ過されにくくなるため、ムコ多糖類の濃度が0.2〜60質量%となるように調製することが好ましく、0.5〜30質量%となるように調製することが好ましい。なお、粗ムコ多糖類中に占めるムコ多糖類の濃度は、後述するような各種方法でおおよそ求めることができ、該粗ムコ多糖類中に占めるムコ多糖類濃度から、各成分の配合比を決定すればよい。
原料水溶液の調製に用いる水は特に限定されるものではなく、例えば工業用水、浄水、上水、イオン交換水、超純水、蒸留水、湧水のいずれを使用しても良い。
塩基性物質としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の有機水酸化物等があげられる。これらの中でも、OH濃度の調整のしやすさ、入手の容易さや経済性、最終製品へ混入した場合の影響等から水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、特に水酸化ナトリウムが好ましい。なお、アルカリ金属の水酸化物等の強塩基は、水溶液中では完全に解離するため、該強塩基を原料水溶液に加えた量から、原料水溶液中のOH濃度を計算できる。即ち、例えばアルカリ金属の水酸化物を用いるのであれば、その水酸化物の濃度をそのままOH濃度とできる。
また、限外ろ過に供する原料水溶液には、上記粗ムコ多糖類、水、塩基性物質に加えて、必要に応じて以下のような成分を配合してもよい。
限外ろ過時や、後述する前処理の際の腐敗の抑制と、ムコ多糖類とタンパクを解きほぐす効果を補助する目的で、有機カルボン酸塩や食塩、有機溶媒を添加しても良い。有機カルボン酸塩を例示すると、酢酸塩、クエン酸、酒石酸、マロン酸等の1価または2価以上の有機カルボン酸の塩を用いることが出来るが、水への溶解性の観点から、特に酢酸の塩が好ましい。塩の対イオン(カチオン種)としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン等を用いることが出来るが、精製効率の点で特にナトリウムイオンが好ましい。特に好適な有機カルボン酸塩として、酢酸ナトリウムを挙げることが出来る。また、酢酸ナトリウムは酢酸と水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどと水溶液中で反応させて、用時調達してもよい。有機溶媒は、メタノール、エタノール、アセトン等水溶性の有機溶媒が好適に用いることができる。特に除菌の効果と製品への混入の観点からエタノールが特に好適である。また、前述の塩や有機溶媒は単独または二種類以上組み合わせて添加してもよい。
該有機カルボン酸塩または食塩の濃度は特に制限されないが、溶解度やアルカリ処理におけるムコ多糖類とタンパクを解きほぐす効果を高める目的から、調製した原料水溶液中の濃度が通常8〜60質量%、好ましくは9〜50質量%、特に好ましくは10〜40質量%の範囲から適宜選択するとよい。
さらに防腐剤としては、n−ブタノール等のアルコール類、ポリヘキサメチレン等のグアニジン類、塩化ベンザルコニウム等の逆性石鹸、アルキルポリアミノエチルグリシン等の表面活性剤、次亜塩素酸ナトリウム等のハロゲン系殺菌剤、過酸化水素、過酢酸等の過酸化物等を用いることが出来る。これら防腐剤の使用量は、用いるムコ多糖類の種類、処理温度等によって適宜調整すればよい。
上記各成分を溶解した原料水溶液を調製する方法は特に限定されないが、前期粗ムコ多糖類、及び必要に応じて配合される有機カルボン酸塩や食塩等を水に溶解させ、この溶液に所定量の塩基性物質を含む水溶液を加える方法が好ましい。溶解させる温度は低温だと溶解に時間がかかり高温だとムコ多糖類の加水分解を促進することから通常−10〜120℃、好ましくは−5〜100℃、さらに好ましくは0〜80℃、特に好ましくは10〜60℃程度の範囲から適宜選択すればよい。
上記のような成分が配合された原料水溶液は、限外ろ過に供する前に、ムコ多糖類とタンパクを解きほぐす塩基性物質の効果を上げるために、限外ろ過工程の前処理として塩基性条件で(即ち、前記塩基性物質を加えた後に)一定時間攪拌することが好ましい。攪拌時間はあまり長すぎるとムコ多糖類の変性を助長するため、通常0.01〜100時間、好ましくは0.5〜50時間、さらに好ましくは1〜24時間の範囲から適宜選択する。攪拌温度は、あまり低すぎるとアルカリの処理の効果が低減し、原料水溶液の凝固が生じ、高すぎると溶液の蒸発およびムコ多糖類の加水分解等の分解反応が促進されるため、通常−10〜120℃、好ましくは−5〜100℃、さらに好ましくは0〜80℃、特に好ましくは10〜60℃程度の範囲から適宜選択すればよい。
上記のように調製された原料水溶液を被ろ過液として限外ろ過に供することにより、タンパク質やタンパク質分解物、塩基性物質等の水溶液が限外ろ過膜を通過し、目的物であるムコ多糖類は限外ろ過の循環液中に濃縮される。
限外ろ過に際して用いる限外ろ過膜としては、濃縮の対象となるムコ多糖類が通過せず、一方でタンパク質等が通過するものであれば特に限定されず、ムコ多糖類の種類に応じて適宜選択すればよい。一般的には、分画分子量10000〜200000のものを用いることができ、好ましくは分画分子量20000〜50000の限外ろ過膜である。
本発明における限外ろ過操作の圧力は、使用する限外ろ過装置の範囲内で大気圧下、加圧下のいずれで行っても良く、大気、圧縮空気、窒素、アルゴン、ヘリウム等の雰囲気下で行っても良い。ろ過速度を向上させるため、通常は0.01〜0.5MPa程度の加圧下で行われる。限外ろ過時の温度は高いとムコ多糖水溶液の腐敗やムコ多糖の分解を促進してしまい、低いとムコ多糖水溶液の粘性が上昇し限外ろ過の透過液量が著しく低下することから0〜100℃が好ましく、10〜60℃程度がより好ましい。
前述したように、限外ろ過に際してはタンパク質等に加えて水も透過液として失われ、これによりムコ多糖類の濃度が上昇して被ろ過液の濃度が高くなるため、透過液として失われた分に相当する程度の量の液体を補給しながらおこなう必要がある。本発明においては、このとき補給する液体として、OH濃度が0.01〜1mol/L(好ましくは0.05〜0.5mol/L)となるように塩基性物質が配合された水溶液を用いる。この場合の水及び塩基性物質としては、前記原料水溶液の調製において述べたのと同様であり、水酸化ナトリウム水溶液が特に好ましい。さらに該水溶液には、前記した原料水溶液に配合されるような有機溶媒、塩、塩基性物質、防腐剤を含んでいてもよく、最も好ましくは、原料水溶液から粗ムコ多糖類を除いたものと同種の成分が同等の濃度で配合された水溶液である。
該追加液の被ろ過液への補給量は特に制限されるものではないが、通常、透過液として失われた量と同量が随時補給される。該補給は連続的に行っても良いし、透過液量が一定量に達した際にその相当量をまとめて一度に補給する手順を何回か繰り返す方法でも良い。透過液量が一定量に達した際にまとめて補給する際には、透過速度の低下度合いをみて適宜行えばよいが、一般的には、原料水溶液として調製した被ろ過液の5〜50%程度、特に10〜33%程度が透過液として失われるたびに行うことが好ましい。
上記のようにして塩基性水溶液を補給しながら限外ろ過を続けることにより、原料水溶液中に含まれていたタンパク質等は徐々に透過液として除去される。最終的に得られる高純度化されたムコ多糖類として、どの程度のものを得ることを目的とするかにもよるが、通常は、該限外ろ過は、透過液中にタンパク質等が検出されなくなるまで行う。即ち、本発明における限外ろ過の終了は、透過液をニンヒドリン呈色試験、キサントプロテイン試験等の呈色試験、ゲル浸透クロマトグラフィー等のクロマトグラフィー、UV,IR等の吸収スペクトルなどのいずれか、または組み合わせた試験により分析し、タンパク質およびタンパク分解物が検出されなくなったことをもって決定することができる。
このようにして実質的にタンパク質等を含まないムコ多糖類の水溶液を得ることができる。得られたムコ多糖類の水溶液はそのまま各種用途に供してもよいが、ムコ多糖類の保存安定性や生体への為害性を考慮すると、該水溶液のpHを一旦、中性付近に調整することが好ましい。pHの調整範囲は、通常pH=5〜10となるようにする。方法としては酢酸、塩酸等の酸を加える方法と、塩基性物質を含まない水を加えて限外ろ過する方法、さらに緩衝能のある物質あるいは混合物を添加する方法が挙げられる。酸を加えて中和する際には、後述する沈殿法によりムコ多糖類を固形化する場合にムコ多糖類と共に中和塩が析出してくるのを防止するために、カルボン酸で中和することが好ましく、酢酸で中和することが特に好ましい。また、中和により析出してくる物質がある場合があるが、このような場合には、遠心分離やムコ多糖類の水溶液が通過するような条件での濾過によって除去すると良い。
このようにして得られる実質的にタンパク質等を含まないムコ多糖類の(中性)水溶液はそのまま各種用途に使用してもよいが、取り扱いを容易にするために、さらに水分と分離して固形物とすることが好ましい。水分と分離する方法としては、水溶液から直接水分を揮発除去させる方法(直接乾燥法)と、水溶液に水溶性有機溶媒を加えてムコ多糖類を沈殿させる方法(沈殿法)が挙げられる。
水溶液から直接水分を揮発除去させる方法としては、凍結乾燥(フリーズドライ)および噴霧乾燥(スプレードライ)等が挙げられる。凍結乾燥時の水溶液の濃度としては、ムコ多糖類の濃度が50質量%以下、凍結温度を−5℃以下、減圧度を700mmHg以下で行うと良い。一方、噴霧乾燥時の水溶液の濃度としては1〜40質量%の範囲で行い、乾燥温度は50〜200℃の範囲で適宜選択すればよい。
上記のような水溶液から直接水分を揮発除去させる方法では、得られる固形分には限外ろ過の際に用いた塩基性物質あるいは該塩基性物質が中和された塩類、有機カルボン酸塩等が多量に含まれる場合がある。このような成分が問題になる用途に使用する場合には、沈殿法を採用することが好ましい。沈殿法に用いる水溶性有機溶媒としては、対象となるムコ多糖類が溶解しないものであれば特に限定されないが、効率の点でアルコール類を用いることが好ましい(以下、アルコールを用いた沈殿法をアルコール沈殿とも称す)。
該アルコール沈殿に使用するアルコールは公知のものが何ら制限なく使用できる。例示するとメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等の低級アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類があげられ、なかでも、乾燥しやすいという観点からメタノール、エタノールが好ましく、毒性が低いということからエタノールが特に好ましい。
該アルコール沈殿時の温度は、析出させるムコ多糖類の種類によっても異なるが、通常、−20〜70℃、好ましくは−10〜60℃さらに好ましくは−5〜55℃の範囲から適宜選択すればよい。
アルコールと水溶液の接触は、アルコールに水溶液を滴下してもよく、水溶液にアルコールを滴下してもよいが、作業性から、水溶液にアルコールを添加する方法が好ましい。なお、アルコール沈殿に際しては、必ずしも100%のアルコールを用いる必要はなく、95質量%エタノールのように水を含んだアルコールを用いてもよい。
アルコール沈殿に際しては、析出の容易さから、前記限外ろ過により得られたムコ多糖類を含む水溶液におけるムコ多糖類の濃度を0.01〜10質量%の範囲となるように調整した水溶液を用いると良い。また加えるアルコールの量も、ムコ多糖類の種類や濃度に応じて適宜決定すればよく、一般的には、水溶液に対して40〜400質量%程度である。
アルコールと水溶液を接触させる際は、水溶液を攪拌しておくことが好ましく、攪拌翼のせん断速度が0.7〜50m/秒となるように攪拌速度を調節するとよい。アルコールの滴下速度は、滴下速度が0.0001〜40L/分の範囲となるように調節するとよい。
また、アルコール沈殿においてムコ多糖類の析出速度を速めるため、水溶液中に各種塩類を配合しておくとよい。該塩類としてはアルコール沈殿時に析出してこないことが望ましく、カルボン酸塩類が好適であり、毒性等の観点から酢酸塩がより好ましい。特に好ましくは、酢酸のアルカリ金属塩であり、最も好ましい塩類は酢酸ナトリウムである。塩類として酢酸ナトリウムを配合する場合には、その濃度が0.1〜5質量%となるように添加して溶解させておくと良い。また、限外ろ過時の原料水溶液の調整や、限外ろ過後に酢酸で中和するなどした場合には、ムコ多糖類の水溶液中に上記範囲よりも多量の酢酸塩が含まれている場合がある。この場合には、逆に水を加えて酢酸ナトリウムの濃度が0.1〜5質量%となるように調整するとよい。
該アルコール沈殿操作により析出したムコ多糖類の固体は、通常の固液分離操作により固体を得ることができる。例示すると、遠心分離ろ過、過圧ろ過、減圧濾過、デカンテーション、フィルタープレス等があげられる。さらに、分離した固体をアルコール、アルコール/水の混合溶液等で洗浄しても良い。
上記のようにアルコール沈殿などの沈殿法により単離された固形物は水や水溶性有機溶を含有しているため、さらに乾燥処理を行うことが好ましい。また前記直接乾燥法により得られた固形物も必要に応じてさらに乾燥することができる。
該乾燥処理は公知の処理が何ら制限なく使用される。例えば、減圧乾燥、温風乾燥、調湿乾燥、風乾、棚段乾燥が挙げられ、棚式で乾燥してもよく、コニカルドライヤーのように回転させて乾燥させても良い。得られるムコ多糖類の種類によって適宜選択すればよい。
該乾燥操作の温度は、あまり低いと乾燥時間が長期化し、高すぎるとムコ多糖類が変性するため、通常−10〜120℃、好ましくは0〜110℃、さらに好ましくは10〜100℃の範囲から適宜選択する。
減圧下乾燥を行う場合には、減圧度を0〜700mmHgの範囲で適宜選択する。
乾燥処理により得られたムコ多糖類の固形物は必要に応じて、粉砕し、さらに分級することができる。この粉砕・分級処理は公知のものが何ら制限なく使用される。
粉砕方法としてはジョークラッシャー、ジャイレトリー・クラッシャー、コーンクラッシャー、ハンマークラッシャー、シュレッダー、ロールクラッシャー、ハンマーミル、ディスインテグレーター、カッターミル、円盤ミル、ピンミル、スタンプミル、フレットミル、ロッドミル、ローラーミル、テーブルミル、リングロールミル、リングロールミル、エロフォールミル、ターボ系粉砕機、スクリーンミル、遠心分級ミル、縦型ジェット粉砕機、マイクロナイザージェット粉砕機、衝突式ジェット粉砕機、ポットミル、チューブミル、コニカルミル、ラジアルミル、塔式粉砕機、円形振動ミル、らせん系振動ミル、遊星型粉砕機、サンドミル、コロイドミル、乳鉢、石臼、薬研等が挙げられる。
一方、分級方法としては、公知のふるい分け法が何ら制限なく使用される。例示すると、重力流動式、機械的強制流動式、振動流動式、気流同伴流動式等のふるい分けが挙げられる。使用するふるいのメッシュのサイズは3.5〜635メッシュの範囲から、適宜選択すればよい。
このようにして得られたムコ多糖類は、タンパク質やその分解物の含量が少なく高純度のムコ多糖類であり、特に医薬品、化粧品用途に適している。
なお本発明の製造方法において、原料や中間生成物、最終取得物等における各種成分の純度等の分析は以下の方法によって行うことが出来る。
(1)ムコ多糖類
対象となるムコ多糖類の構造に応じた方法により分析する。例えば、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸等のグルコサミノグルカンの場合には、構成ユニットのひとつであるウロン酸分析により分析できる。ウロン酸分析法としては、一般にカルバゾール法を用いることが出来る。またコンドロイチン硫酸、ヘパリン、デルマタン硫酸等の硫酸基を有するムコ多糖の場合には、硫酸バリウム比濁法、ロジゾン酸法等の硫酸基定量法を用いることが出来る。
混在する不純物の特性ピークが明確であり、目的のムコ多糖のシグナルと分離可能な場合には、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)においても純度分析をすることが可能である。またゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、純度分析が可能である。
(2)タンパク質やその分解物
タンパク質を水中で分解し、生成したアミノ酸をニンヒドリン反応により呈色することを利用するニンヒドリン法を用いることが出来る。
また、硫酸と強熱して窒素をすべてアンモニウムイオンとして定量する方法であるケルダール法、2つ以上のペプチド結合が近接して存在する場合に、強アルカリ性側で2価の銅と錯塩を形成する反応を利用するビュレット法、フェノール試薬とタンパク質中の芳香族アミノ酸に由来する呈色反応であるローリー法、芳香族アミノ酸含量を指標とするUV法、過剰の酸(又は塩基性)色素を添加して、タンパク質との間に不溶性の塩を形成させ、沈殿させて、未反応の色素量を分光光度計で測定し、算出した結合色素量からタンパク量を求める色素結合法等、一般にタンパク質を分析する方法を用いることが出来る。
これらのなかから、製造するムコ多糖類に応じた分析方法を採用すればよいが、一般に妨害物質の影響を受けにくいこと、検出感度が高いことから好適にはニンヒドリン法を用いることが出来る。
またタンパク質やその分解物の特性ピークが明確であり、目的のムコ多糖のシグナルと分離可能な場合には、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)においても混在量を分析することが可能である。
(3)有機カルボン酸塩
イオン交換クロマトグラフィー法にて分析することが出来る。また、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)によっても有機カルボン酸塩由来の特性シグナルに基づいて、定量することも可能である。
(4)硫黄含量
日本薬局方一般試験法に基づき、酸素フラスコ燃焼法により分析することが出来る。
(5)微生物分析法
公知方法によって可能であるが、例えば日本薬局方一般試験法に基づく、微生物限度試験法生菌数試験(メンブランフィルター法)を用いることができる。
(6)水溶性有機溶媒含量
ガスクロマトグラフィー法(GC)で測定することが可能である。また、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)によっても水溶性有機溶媒由来の特性シグナルに基づいて、定量することも可能である。
本発明の製造法により得られるムコ多糖類の用途としては、特に制限はないが、医薬品、化粧品、食品、飲料、調味料、飼料等が挙げられる。
本発明の製造方法を用いて得られる高純度化されたムコ多糖類は、タンパク質やタンパク質の分解物の含有が極めて少ないという利点を生かしやすい点で、医薬品用途や化粧品用途に特に好適である。例えばコンドロイチン硫酸の有する生理機能としては関節組織の円滑化、脂血清澄作用、血液凝固阻止作用、抗炎症作用、抗ガン作用を利用した医薬品が挙げられる。医薬品として使用する場合には、その投与形態に応じて適宜、公知の製剤形態を採用すればよい。投与形態は公知の形態で行えばよく、例えば、内用、外用及び注射によることができる。注射剤は、例えば静脈内、筋肉内、皮下、皮内等に投与する事が出来、外用剤には座剤等でもよい。また、任意の飲食品に添加して日常的に摂取させることもできる。
医薬品用途に用いる場合には、本発明の製造方法により得られた高純度化されたムコ多糖類を有効成分とし、これを公知の医薬用担体と組合せ製剤化すれば良い。当該製剤の製造は一般的には、ムコ多糖類を薬学的に許容できる液状又は固体状の担体と配合し、かつ必要に応じて溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を加えて、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、カプセル剤等の固形剤、通常液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤とすることができる。またこれを使用前に適当な担体の添加によって液料となし得る乾燥品とすることが出来る。
医薬用担体は、上記投与形態及び剤型に応じて選択することができ、経口剤の場合は、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩等が利用される。また経口剤の調製に当っては、更に結合剤、崩壊剤、界面活性剤、潤沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を配合することもできる。
一方、非経口剤の場合は、常法に従いムコ多糖類を、希釈剤としての注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油、ゴマ油、ラッカセイ油、タイズ油、トウモロコシ油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等に溶解ないし懸濁させ、必要に応じ、殺菌剤、安定剤、等張化剤、無痛化剤等を加えることにより調製することができる。
またムコ多糖類は、皮膚の保湿性や弾力性の向上効果、皮膚の老化防止効果等の効果を有することが知られており、化粧品の有効成分として用いられている。本発明の製造方法により高純度化されたムコ多糖類もまたこのような効果を得るための有効成分として化粧品に用いることができる。例えばローション類、乳液類、クリーム類、パック類、浴用剤、洗顔剤、浴用石鹸又は浴用洗剤等が挙げられる。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
製造例1
ムコ多糖原料組成物の調製
鮭頭部より鼻軟骨を採取し、粉砕した。次いで固形分に対して、2倍量のイオン交換水を加えpHを中性付近に調製し、0.2質量%のタンパク質分解酵素(アルカリ性プロテアーゼ)を加えて、50℃前後で1〜2時間処理した後、90℃に加熱し酵素を失活させた。冷却後、遠心分離して、活性炭を0.2質量%添加し、攪拌した。次いでろ過助剤(ケイソウ土、ラヂオライト300)を入れてろ過した後、ろ液をスプレードライヤを用いて乾燥させ、微黄色粉末を得た。得られたムコ多糖類を含む組成物を分析したところ、コンドロイチン硫酸のNMR純度が約43質量%、タンパク質やその分解物は、ケルダール分析法にて約55質量%、塩化ナトリウム約2質量%であることが判った。これを実施例1及び比較例1にて用いる粗ムコ多糖類とした。
実施例1
3L四つ口フラスコに、スリーワンモーター(35w)を連結した半月板攪拌翼(半径5cm)、温度計、コンデンサーを装着した。これに、イオン交換水190ml、粗ムコ多糖類10.0gを加え、40℃で攪拌(せん断速度2m/秒)しながら溶解させた。さらに、8.4質量%水酸化ナトリウム水溶液10.0g(水酸化ナトリウム0.8g、イオン交換水9.2g)を加え、40℃で2時間攪拌し原料水溶液を得た。
次に、22℃まで冷却し、限外ろ過膜50000(アドヴァンテック製)のものを用いて、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を随時添加しながら40時間限外ろ過した。
限外ろ過により得られた水溶液(濃縮液)を酢酸で中和後(pH=5.5)、0.45μmのメンブランフィルターで精密加圧ろ過を行った。
そのろ液を5℃に冷却後、攪拌速度をせん断速度が2m/秒となるように調節し、95質量%エタノール260g(エタノール247g、イオン交換水13g)を2時間かけて滴下した。滴下後、10℃以下で1時間さらに攪拌して、減圧ろ過により、沈殿を分離した。さらに、95質量%エタノール10gで2回洗浄した。得られた湿体は6.0gであり、50℃で棚段式減圧乾燥を行ったところ、乾燥体3.4gを得た。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)、アミノ酸自動分析(ニンヒドリン法)の結果、コンドロイチン硫酸ナトリウム3.4g、タンパク質/タンパク質分解物未検出、酢酸ナトリウム未検出であった。さらに核磁気共鳴スペクトル(NMR)測定でコンドロイチン硫酸ナトリウム純度98%、酸素フラスコ燃焼法(硫黄)を行ったところ硫黄含量は5.9%であった。
比較例1
実施例1と同様にして原料水溶液を調製し、水酸化ナトリウム水溶液に代えて、イオン交換水を随時添加した以外は同様にして40時間の限外ろ過を行った。得られた濃縮液はほぼ中性であったため、酢酸による中和は行わずに、実施例1と同じくメンブランフィルターろ過、アルコール沈殿を行った。得られた湿体は6.00gであり、50℃で棚段式減圧乾燥を行ったところ、乾燥体3.6gを得た。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)、アミノ酸自動分析(ニンヒドリン法)の結果、コンドロイチン硫酸ナトリウム3.4g、タンパク質/タンパク質分解物1.4g、酢酸ナトリウム未検出であった。さらに核磁気共鳴スペクトル(NMR)測定でコンドロイチン硫酸ナトリウム純度70%、酸素フラスコ燃焼法(硫黄)を行ったところ硫黄含量は4.5%であった。

Claims (2)

  1. ムコ多糖類並びに、タンパク質及び/又はその分解物を含有してなる原料水溶液を被ろ過液として限外ろ過を行うことにより、該水溶液から前記タンパク質及び/又はその分解物を透過液として分離する工程を含む、高純度化されたムコ多糖類を製造する方法において、上記原料水溶液としてOH濃度が0.01〜1mol/Lとなるように塩基性物質が配合されたものを用いる共に、OH濃度が0.01〜1mol/Lとなるように塩基性物質が配合された水溶液を被ろ過液に補給しつつ行うことを特徴とする前記方法。
  2. 限外ろ過を行うことにより得られたムコ多糖類を含む水溶液にアルコールを加えて、該ムコ多糖類を析出させる工程をさらに含む請求項1記載の方法。
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