JP2006172246A - 電力取引支援装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 市場価格予測部21と入札データ作成部41と入札データ評価部51を設け、電力取引の支援をする。市場価格予測部21は、過去の気象実績データ、複数の供給エリアを結ぶ連系線の過去の空き容量実績データ、過去の電力スポット価格の実績データ、将来の気象予測データ、上記複数の供給エリアを結ぶ連系線の将来の空き容量予測データ、自社の需要予測データ、及び自社の発電設備データに基づいて回帰式により予測市場価格を求める。入札データ作成部41は、予測市場価格に基づき、取引時間単位ごとに入札価格と入札電力量を組にした入札データを作成する。入札データ評価部51は、入札データに基づいて利益を算出しこの利益の値により上記入札データを評価する。
【選択図】 図1
Description
図1〜図8は、この発明を実施するための実施の形態1を示すものであり、図1は電力取引支援装置の構成を示す構成図、図2は市場価格予測部の動作を示すフローチャートである。図3は入札データ作成部の動作を示すフローチャート、図4は入札データ評価部の動作を示すフローチャート、図5はストレステスティングの詳細を示すフローチャートである。図6は評価指標値の目標値の例を示す説明図、図7は評価指標値の目標値と実際に得られた評価指標値とを対比させて示す説明図、図8は調整前と調整後の落札プロファイルに対する評価指標値を対比して示す説明図である。図1において、電力取引の市場参加者側において設置される電力取引支援装置は、次のように構成されている。気象実績データファイル11には、電力取引を行う供給エリア及びこれに連系する供給エリアにおける所定期間にわたる気温を含む気象の実績データ、例えば30分ごとの気温等の気象実績データを蓄積する。連系線空き容量実績データファイル12には、対象供給エリアと繋がっている連系線の送電余力の実績データである連系線空き容量の実績データ、例えば30分ごとの両方向の空き容量の実績データ(MW:電力)を所定期間にわたって蓄積する。
電力取引支援装置は、以上のように構成され、この発明における市場価格予測手段は上記気象実績データファイル11、連系線空き容量実績データファイル12、気象予測データファイル13、連系線空き容量予測データファイル14、取引価格実績データファイル16、市場価格予測部21、市場価格予測データファイル22により構成され、入札データ作成手段は自社発電設備データファイル31、自社需要予測データファイル32、入札データ作成部41により構成され、評価手段は取引価格実績データファイル16、入札データ評価部51により構成されている。
まず、市場価格予測部21の動作を図2のフローチャートにより説明する。気象実績データファイル11及び気象予測データファイル13には、図示しないインターネットを介して気温情報提供機関から取り込まれた対象供給エリア及び関連性供給エリアの気温を含む気象実績データ及び予測データが記憶される。連系線空き容量実績データファイル12及び連系線空き容量予測データファイル14には、同様に連系線空き容量情報を提供する中立機関から取り込まれた連系線空き容量の実績及び予測データが記憶される。取引価格実績データファイル16には、卸電力取引所から取り込まれた電力の取引価格の実績データが記憶される。以上のようにして、気象実績データファイル11、連系線空き容量実績データファイル12、気象予測データファイル13、連系線空き容量予測データファイル14、取引価格実績データファイル16には、過去の実績データ及び必要な予測データが取り込まれ蓄積される(ステップS11)。なお、気温を含む気象データの予測データ及び連系線空き容量の予測データは、必要の都度オンラインで当該情報を提供する機関から入手するようにしてもよい。
P(t)=aT0+bP(t−1)+Σci・Ti+Σdi・Ci
ここに、a,b,ci,diは、上述の回帰分析で求めた係数である。
この時間単位ごとの予測価格EPnは、市場価格予測プロファイルとして市場価格予測データファイル22に保存される(ステップS14)。このデータは、次のような形で取引時刻単位ごとに予測市場価格を表したものであり、1日当たりのデータ数は取引時間刻みを30分とすれば、24個となる(なお、具体的な数値例については後述の実施例の表3を参照)。
(年月日)(午前零時から30分間)EP1(00:00,5.19円)
EP2(00:30,4.81円)
EP3(01:00,5.16円)
・・・・・・
EP24(23:30,5.12円)
例えば、夏期において予測気温が高ければ電力需要が増加する可能性が高いし、関連する供給エリアとの連系線空き容量が大きければそれだけ融通が利くので価格変動が抑制されるなどの連関が考えられる。
そして、入札データの作成方法としては、次のコストベース法とプライスベース法とがあり、それぞれ図示しないコストベース注文作成手段とプライスベース注文作成手段が実行する。
(ア) コストベース法
入札ペア数とその入札ペアごとの(入札)量(MWh/h)を予め指定して、想定取引量と自社の需要量と自社の発電機コストデータに基づきコストベース発電計画でその取引量のコスト(円)を計算する方法である。
つまり、入札する時に、まずどれくらい量(MWh/h)を入札するかを定める。そして、それに対する電力コストを計算する。すなわち、
1) 供給義務のある電力量(例:自社需要)に、入札量を加算する(売り入札の場合)、または減算する(買い入札の場合)。落札した場合には、供給義務の量が変わる。
2) 1)のように変更した供給義務を考慮してコストベース発電計画を解く。すなわち、供給義務を果たすための発電量だけ発電したときの発電コストを求める。入札をしない時の発電計画と比べ、発電コストが増加あるいは減少する。
3) 取引時刻単位ごと(例えば、30分ごと)の発電コストの差分は、入札にともない増減する電力コストとなる。
4) なお、入札量(MWh/h)で割り算すれば入札単価(円/kWh)が求まる。これは、入札を行うことにともない増減する電力量分の単価であり、入札の基準となる。
(イ) プライスベース法
入札ペア数と入札ペアごとの(入札)価格(円/kWh)を予め設定し、市場価格予測に従いプライスベース発電計画で最適な(入札)量(MWh/h)を計算する方法である。
つまり、入札する時に、まず市場価格はいくらになるのかを想定する。それに対する入札量を計算するために、プライスベース発電計画を利用する。
1) 各発電機ごとに、発電費≦市場価格の場合は運転し、発電費>市場価格の場合は運転を停止する。発電コストは、出力の程度によって異なるため、各発電機1,2には、発電費≦市場価格を満たす最大出力を運用レベルとして設定しておく。
2) 総合の発電量を計算して、そこから自社需要量を引き算して、入札量を求める。
(ア) 市場価格予測データファイル22から複数の市場価格予測プロファイルを取得するか、あるは一つの市場価格予測プロファイルを取得しそれを基準に上下させた価格を設定するかして、ストレステスティングを行うためのn個(複数)のテスト用プロファイル1〜nを設定する。
(イ) 設定したテスト用プロファイルに基づきストレステスティングを行う。ストレステスティングとは、テスト用プロファイルごとにシミュレーションを行い、シミュレーション結果を評価指標値(この発明では、λで表す)を用いて評価する作業のことである。従って、ストレステスティングの結果は、価格1,価格2....価格nに対し評価指標値λ1,λ2,...λnを求めることに相当する。
(ウ) 事前に設定した条件、例えばストレステスティングの評価指標値λが目標値λr以上であるという条件を満たさなかった場合には、入札条件を適切に変更し入札データ作成部41に渡す。それにより、入札データ作成部41は繰り返し処理を行う。繰り返し処理により入札データが評価条件を満たした場合に、決定した入札データとされ、入札データファイル54に蓄積され、実際の市場取引に際して基準とされる。
・ テスト用プロファイル1に対して、入札データ(入札ブロック)とのマッチングを行い、落札プロファイル1における取引時刻単位ごとの量(MWh/h)を求める(ステップS641)。ここで、入札とは、所定の価格以上なら指定した量を販売し、所定の価格以下なら指定した量を購入することを意味する。入札ブロックには複数の入札ペア(価格と量のペア)があるため、(落札)量を決めるために以下の処理をする。
1) ある市場価格を想定し、想定した市場価格がどの入札ブロックとどの入札ブロックの範囲にあるか検索する。
2) 範囲に入ってる入札ブロックがあれば、その入札ブロックの量を落札量にする。例えば、3つの入札ブロックにおいて、
(ア) 価格 5円/kWh 量10MWh/h(売)
(イ) 価格 6円/kWh 量15MWh/h(売)
(ウ) 価格 7円/kWh 量20MWh/h(売)
であったとする。この場合、予測市場価格に応じて、次のようになる。
a) 予測市場価格=5.5円/kWhならば、該当する範囲は5円/kWhの入札ブロック(ア)と、6円/kWhの入札ブロック(イ)の範囲である。従って、入札量を15MWh(売)とする。
b) 予測市場価格=4.5円/kWhならば、当該価格4.5円/kWhを含む入札ブロックの範囲はない。従って、入札量は0となる。この詳細例については、後述の実施例の表5、表6に示している。
・ 求めた落札プロファイル1の量(MWh/h)に対してコストベース発電計画を作成し(ステップS642)、利益R11を求める(ステップS643)。
・ テスト用プロファイル1の量(MWh/h)に対してプライスベース発電計画を作成し(ステップS644)、利益R12を求める(ステップS645)
・ 市場取引をしない場合として、対象の発電設備と自社需要(+その他の契約)に対してコストベース発電計画を作成し(ステップS646)、市場取引をしなかった場合の利益R13を求める(ステップS647)。
・ 評価指標値λは、以下のように計算する(ステップS648)。
λ=(R11‐R13)÷(R12‐R13)
λの値は≦1であり、1に近い値になればなるほど入札の効率が高い。λは、ある市場価格に対して、理想的な取引により得られる潜在的利益に対する実際に得られる実現利益の割合である。
従って、
λ=1 → 潜在的利益をすべて確保できる入札、
λ=0 → 潜在的利益を全く得られない入札(落札しない場合)、
λ<0 → 明らかに入札を間違えた(損が生じる取引)、
であり、通常0<λ<1の範囲にある。
テスト用プロファイル2〜nについても入札データとのマッチングを行い、落札プロファイル2〜落札プロファイルnを求め、さらにλ2〜λnを求める。そして、図4のステップS65(図4)へ行って、求めた評価指標値λ1〜λnを評価する。
なお、上記において入札データ評価部51を設けない場合は、入札データ作成部41において作成した入札データをそのまま入札データファイル54へ出力すればよい。
取引対象時間を30分を1単位として3単位分の1.5時間分について例示する。
対象の事業者は、発電機1及び発電機2の2台の発電機を所有し、電力の供給義務がある。
発電設備に対して、簡単化するために最小停止時間や起動期間,電力の増減速度等の運転制約を考慮しない。起動停止費用もないことにする。発電機1及び発電機2の特性は次の表1の通りである。
C(P)=g・P^2+h・P・+j
また、事業者の電力の供給義務は、次の表2の通りとする。
市場価格予測部21にて求めた市場価格予測プロファイルは次の表3の通りである。
入札データ作成部41により入札データを求める。この入札データは、次の表4に示すように複数の入札ブロックにて構成されている。例えば、4つの入札ブロックで構成された入札データを作成する。各入札ブロックは、複数の入札ぺア(表4では3つのペアだけ示している)を有している。ここでは、プライスベース法により入札データを作成するものとし、入札ペアごとの(入札)価格を予め市場価格に従い設定し、プライスベース発電計画により最適な(入札)量を決定することにする。
入札ブロックは、次のように通りである。
・入札ブロック1=価格予測の70%の値
・入札ブロック2=価格予測の80%の値
・入札ブロック3=価格予測の100%の値
・入札ブロック4=価格予測の110%の値
これに基づき、プライスベース発電計画を作成し、表4のような量(MWh/h)を有する入札ブロックを作成する。
以上のようにして得られた入札データを評価する。この例ではプライスベース法を使い、利用した価格予測と異なる市場価格が成立した場合には、取引結果がどのようになるかを予測及び評価することとする。
入札データ評価部51にて、ストレステスティングを行うが、3つの市場価格を設定して市場価格の変化によって入札の成果を評価する。
(3−1) ストレステスティングを行うために、次の表5に示す3つのテスト用プロファイル1〜3を設定する。ここでは、テスト用プロファイル1を基準にして、テスト用プロファイル2は115%、テスト用プロファイル3は126%の価格を選んだ。
λ=(R1−R3)/(R2−R3)
である。従って、各落札プロファイル1〜3における評価指標値λ1〜λ3は、
・λ1=(R11‐R13)÷(R12‐R13)→λ1=0.32
・λ2=(R21‐R23)÷(R22‐R23)→λ2=0.65
・λ3=(R31‐R33)÷(R32‐R33)→λ3=0.14
となり、λ1〜λ3の平均値λは0.37となる。
これによれば、市場価格はある程度以上高くなると、取引の効率が落ちるといえる。ストレステスティングにて、コストベース法による落札プロファイル2と3の結果(表8と表9)は同じである(時刻00:00に28.1MWh販売のみ)が、落札プロファイル3は高い価格による「付加的利益」の機会を全く使えないため、λ3の値は0.14と非常に低い。
(3−8) そこで、入札データの調整を行う。入札データはプライスベース法で求め、合理的な入札データの調整は基になった予測価格の値を変えなければならないが、簡単な例として、前と同じ予測価格に基づき、入札ブロックの「切り方」を変更する。上記の(3−6)項で得られた入札データにおいては、価格が高い入札ブロックであっても、期待するほど販売できないため、もっと高い予測価格を用いることにする。そこで、入札ブロック3,4の価格を上げる。
・入札ブロック1=価格予測の70%の値 → 70%の値(維持)
・入札ブロック2=価格予測の80%の値 → 90%の値(増加)
・入札ブロック3=価格予測の100%の値 → 110%の値(増加)
・入札ブロック4=価格予測の110%の値 → 125%の値(増加)
新しい入札ブロックは表14のとおりである。
・λ1=(RR11‐R13)÷(R12‐R13)→λ1=1.00
・λ2=(RR21‐R23)÷(R22‐R23)→λ2=0.65
・λ3=(RR31‐R33)÷(R32‐R33)→λ3=0.48
であり、平均λ=0.71となる。
よって、
・調整前平均λ:0.37
・調整後平均λ:0.71
となり、評価指標値が目標値0.5を上回るので、この入札データを入札データとして採用する。なお、調整前後の評価指標値λ1〜λ3の値を棒グラフにて示すと、図8のようになる。
入札データ作成手段は、評価用予測市場価格に基づいて評価用入札価格と評価用入札量とを含む評価用データを作成するとともに、コストベース注文作成手段とプライスベース注文作成手段との双方を有し、
コストベース注文作成手段は、自己の需要予測データに評価用入札量を加算又は減算して求めた自己の発電機が発電すべき発電量と自己の発電設備データとに基づいて発電費用を算出してコストベースの入札価格を決定して発電量とコストベースの入札価格とからコストベースの利益を計算するものであり、
プライスベース注文作成手段は評価用入札価格に基づいて利益額が最大となるように自己の発電機が発電すべき発電量を算出してプライスベースの入札量を決定して評価用入札価格とプライスベースの入札量とからプライスベースの利益を計算するものであり、
評価手段は、コストベースの利益とプライスベースの利益とに基づいて評価用データを評価するものであることを特徴とするので、入札機会を有効に活用できる。
13 気象予測データファイル、14 連系線空き容量予測データファイル、
16 取引価格実績データファイル、21 市場価格予測部、
22 市場価格予測データファイル、31 自社発電設備データファイル、
32 自社需要予測データファイル、41 入札データ作成部、
51 入札データ評価部、54 入札データファイル。
Claims (7)
- 過去の気象実績データ、複数の供給エリアを結ぶ連系線の過去の送電余力実績データ、過去の取引価格の実績データ、将来の気象予測データ、上記複数の供給エリアを結ぶ連系線の将来の送電余力予測データ、自己の需要予測データ、及び自己の発電設備データに基づいて電力取引の対象とする上記供給エリアにおける予測市場価格を求める市場価格予測手段を備えた電力取引支援装置。
- 上記市場価格予測手段は、上記気象実績データと上記送電余力実績データと上記取引価格の実績データに関する回帰分析を行い上記気象予測データ及び上記送電余力予測データを説明変数とし上記予測市場価格を目的変数とする回帰式を求め当該回帰式に基づいて上記予測市場価格を求めるものであることを特徴とする請求項1に記載の電力取引支援装置。
- 上記予測市場価格に基づき、取引時間単位ごとに入札価格と入札電力量を組にした入札データを作成する入札データ作成手段を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力取引支援装置。
- 上記入札データ作成手段は、上記予測市場価格に基づき利益最大となる上記入札量を算定するプライスベース注文作成手段と所定の取引量における自己の発電費用を算定して上記入札価格を決定するコストベース注文作成手段との少なくとも一方を備えたものであることを特徴とする請求項3に記載の電力取引支援装置。
- 上記入札データ作成手段は、上記プライスベース注文作成手段又は上記コストベース注文作成手段にて決定された上記入札価格を増減して入札価格を調整して上記入札データ作成手段に渡し上記入札データを再計算させる価格調整手段を有するものであることを特徴とする請求項4に記載の電力取引支援装置。
- 上記入札データに基づいて利益を算出しこの利益の値により上記入札データを評価する評価手段を備えたことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の電力取引支援装置。
- 上記評価手段は、上記入札データを評価するために複数の評価用の予測市場価格を設定するものであり、
上記入札データ作成手段は、上記評価用予測市場価格に基づいて評価用入札価格と評価用入札量とを含む評価用データを作成するとともに、上記コストベース注文作成手段と上記プライスベース注文作成手段との双方を有し、
上記コストベース注文作成手段は、上記自己の需要予測データに上記評価用入札量を加算又は減算して求めた上記自己の発電機が発電すべき発電量と上記自己の発電設備データとに基づいて発電費用を算出してコストベースの上記入札価格を決定して上記発電量と上記コストベースの入札価格とからコストベースの利益を計算するものであり、
上記プライスベース注文作成手段は上記評価用入札価格に基づいて利益額が最大となるように上記自己の発電機が発電すべき発電量を算出してプライスベースの上記入札量を決定して上記評価用入札価格と上記プライスベースの入札量とからプライスベースの利益を計算するものであり、
上記評価手段は、上記コストベースの利益と上記プライスベースの利益とに基づいて上記評価用データを評価するものであることを特徴とする請求項6に記載の電力取引支援装置。
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