JP2006172246A - 電力取引支援装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 電力取引を定量的な指標に基づいて適切に実施できるよう支援する電力取引支援装置を得る。
【解決手段】 市場価格予測部21と入札データ作成部41と入札データ評価部51を設け、電力取引の支援をする。市場価格予測部21は、過去の気象実績データ、複数の供給エリアを結ぶ連系線の過去の空き容量実績データ、過去の電力スポット価格の実績データ、将来の気象予測データ、上記複数の供給エリアを結ぶ連系線の将来の空き容量予測データ、自社の需要予測データ、及び自社の発電設備データに基づいて回帰式により予測市場価格を求める。入札データ作成部41は、予測市場価格に基づき、取引時間単位ごとに入札価格と入札電力量を組にした入札データを作成する。入札データ評価部51は、入札データに基づいて利益を算出しこの利益の値により上記入札データを評価する。
【選択図】 図1

Description

この発明は、電力取引市場における電力取引を支援する電力取引支援装置に関する。
電力自由化を受けて、電力取引市場における取引が近く開始される見込みである。電力取引はこれから始まるのであるが、取引注文をもっぱら人の判断に委ねるのではなく、より定量的な指標に基づいて適切に行いたいという要請が生じている。
この発明は上記のような要請に応えるべくなされたものであり、電力取引を定量的な指標に基づいて適切に行うことができるように支援する電力取引支援装置を得ることを目的とする。
この発明に係る電力取引支援装置においては、過去の気象実績データ、複数の供給エリアを結ぶ連系線の過去の送電余力実績データ、過去の取引価格の実績データ、将来の気象予測データ、複数の供給エリアを結ぶ連系線の将来の送電余力予測データ、自己の需要予測データ、及び自己の発電設備データに基づいて電力取引の対象とする供給エリアにおける予測市場価格を求める市場価格予測手段を備えたものである。
この発明に係る電力取引支援装置は、過去の気象実績データ、複数の供給エリアを結ぶ連系線の過去の送電余力実績データ、過去の取引価格の実績データ、将来の気象予測データ、複数の供給エリアを結ぶ連系線の将来の送電余力予測データ、自己の需要予測データ、及び自己の発電設備データに基づいて電力取引の対象とする供給エリアにおける予測市場価格を求める市場価格予測手段を備えたものであるので、求められた予測市場価格に基づいて電力取引を適切に行うことができる。
実施の形態1.
図1〜図8は、この発明を実施するための実施の形態1を示すものであり、図1は電力取引支援装置の構成を示す構成図、図2は市場価格予測部の動作を示すフローチャートである。図3は入札データ作成部の動作を示すフローチャート、図4は入札データ評価部の動作を示すフローチャート、図5はストレステスティングの詳細を示すフローチャートである。図6は評価指標値の目標値の例を示す説明図、図7は評価指標値の目標値と実際に得られた評価指標値とを対比させて示す説明図、図8は調整前と調整後の落札プロファイルに対する評価指標値を対比して示す説明図である。図1において、電力取引の市場参加者側において設置される電力取引支援装置は、次のように構成されている。気象実績データファイル11には、電力取引を行う供給エリア及びこれに連系する供給エリアにおける所定期間にわたる気温を含む気象の実績データ、例えば30分ごとの気温等の気象実績データを蓄積する。連系線空き容量実績データファイル12には、対象供給エリアと繋がっている連系線の送電余力の実績データである連系線空き容量の実績データ、例えば30分ごとの両方向の空き容量の実績データ(MW:電力)を所定期間にわたって蓄積する。
気象予測データファイル13には、これからの先の所定期間の気温を含む気象予測データを一時的に蓄積する。連系線空き容量予測データファイル14には、対象供給エリアと繋がっている連系線空き容量のこれから先の所定期間の予測データ(MW:電力)を一時的に蓄積する。取引価格実績データファイル16には、対象供給エリアにおいて過去に成立した取引価格(スポット価格)の実績データ、例えば30分ごとの価格(円/kWh)と量(MWh/h)を蓄積する。市場価格予測部21は、気象実績データファイル11、連系線空き容量実績データファイル12、気象予測データファイル13、連系線空き容量予測データファイル14、及び取引価格実績データファイル16に蓄積されたデータに基づき市場価格を予測するモジュールであり、その予測結果は市場価格予測データファイル22に記憶される。
自社発電設備データファイル31には、自社が所有する発電機に関する最大出力、最低出力、発電費を計算するためのデータなどの発電設備データが記憶されている。自社需要予測データファイル32には、契約済みの電力先渡取引契約データを含む広義の自社需要予測データが記憶されている。入札データ作成部41は、図示しないがコストベース注文作成手段とプライスベース注文手段と価格調整手段とを有し、指定した条件に基づき所定の入札フォームを有する入札データを作成するモジュールであり、具体的には取引時刻単位(例えば、30分)ごとに価格(円/kWh/h)と(電力)量(MWh/h)とをペアにした入札ペアを所定数有する入札ブロックを複数ブロック作成する(数値の具体例については後述の実施例の表4参照)。この入札データの作成には、コストベース法とプライスベース法との2つの方法を選択できるようになっている(詳細後述)。
入札データ評価部51は、入札データ作成部41が作成した入札データを評価するモジュールであり、評価結果が所定の条件を満たす場合は当該データを入札データファイル54に渡して蓄積し、所定の条件を満たさない場合は入札条件を変更して入札データ作成部41にフィードバックし、入札データ作成部41は入札データを作成し直す。
電力取引支援装置は、以上のように構成され、この発明における市場価格予測手段は上記気象実績データファイル11、連系線空き容量実績データファイル12、気象予測データファイル13、連系線空き容量予測データファイル14、取引価格実績データファイル16、市場価格予測部21、市場価格予測データファイル22により構成され、入札データ作成手段は自社発電設備データファイル31、自社需要予測データファイル32、入札データ作成部41により構成され、評価手段は取引価格実績データファイル16、入札データ評価部51により構成されている。
次に、動作について説明する。市場価格予測部21は、回帰分析により予測市場価格を計算するものである。そして、日本市場に独特な予測方法として、回帰分析にあたって入札の対象となる供給エリアと他の供給エリア間の送電余力としての連系線空き容量も考慮する。
まず、市場価格予測部21の動作を図2のフローチャートにより説明する。気象実績データファイル11及び気象予測データファイル13には、図示しないインターネットを介して気温情報提供機関から取り込まれた対象供給エリア及び関連性供給エリアの気温を含む気象実績データ及び予測データが記憶される。連系線空き容量実績データファイル12及び連系線空き容量予測データファイル14には、同様に連系線空き容量情報を提供する中立機関から取り込まれた連系線空き容量の実績及び予測データが記憶される。取引価格実績データファイル16には、卸電力取引所から取り込まれた電力の取引価格の実績データが記憶される。以上のようにして、気象実績データファイル11、連系線空き容量実績データファイル12、気象予測データファイル13、連系線空き容量予測データファイル14、取引価格実績データファイル16には、過去の実績データ及び必要な予測データが取り込まれ蓄積される(ステップS11)。なお、気温を含む気象データの予測データ及び連系線空き容量の予測データは、必要の都度オンラインで当該情報を提供する機関から入手するようにしてもよい。
市場価格予測部21は、気温と連系線空き容量と取引価格の各実績データに基づき、回帰分析法により回帰関数の係数(a,b,c,d)を決定する。なお、回帰関数は一次関数にする(ステップS12)。次いで、ステップS12で求めた回帰関数を用いて、取引時刻単位として30分を一単位とする時間軸に対する電力取引の予測市場価格(P(t))を目的変数とし、対象供給エリアの予測気温(T0)、関連する供給エリアの予測気温(Ti),関連する連系線空き容量(Ci)を説明変数とする回帰式を求める。すなわち、次の式により、予測市場価格P(t)を求める(ステップS13)。
P(t)=aT0+bP(t−1)+Σci・Ti+Σdi・Ci
ここに、a,b,ci,diは、上述の回帰分析で求めた係数である。
この時間単位ごとの予測価格EPnは、市場価格予測プロファイルとして市場価格予測データファイル22に保存される(ステップS14)。このデータは、次のような形で取引時刻単位ごとに予測市場価格を表したものであり、1日当たりのデータ数は取引時間刻みを30分とすれば、24個となる(なお、具体的な数値例については後述の実施例の表3を参照)。
(年月日)(午前零時から30分間)EP1(00:00,5.19円)
EP2(00:30,4.81円)
EP3(01:00,5.16円)
・・・・・・
EP24(23:30,5.12円)
例えば、夏期において予測気温が高ければ電力需要が増加する可能性が高いし、関連する供給エリアとの連系線空き容量が大きければそれだけ融通が利くので価格変動が抑制されるなどの連関が考えられる。
次に、入札データ作成部41は、図3のフローチャートに示すように動作し、入札データの作成をする。入札データは、所定の形式の入札フォームに従い作成される。この入札フォームは、後述の表4に示すような形式にされており、複数の入札ブロック1〜nに分割されており、各入札ブロック1〜nはそれぞれ取引時刻単位ごとに(入札)価格(円/kWh)と(電力)量(MWh/h)の入札ぺアを有している。
そして、入札データの作成方法としては、次のコストベース法とプライスベース法とがあり、それぞれ図示しないコストベース注文作成手段とプライスベース注文作成手段が実行する。
(ア) コストベース法
入札ペア数とその入札ペアごとの(入札)量(MWh/h)を予め指定して、想定取引量と自社の需要量と自社の発電機コストデータに基づきコストベース発電計画でその取引量のコスト(円)を計算する方法である。
つまり、入札する時に、まずどれくらい量(MWh/h)を入札するかを定める。そして、それに対する電力コストを計算する。すなわち、
1) 供給義務のある電力量(例:自社需要)に、入札量を加算する(売り入札の場合)、または減算する(買い入札の場合)。落札した場合には、供給義務の量が変わる。
2) 1)のように変更した供給義務を考慮してコストベース発電計画を解く。すなわち、供給義務を果たすための発電量だけ発電したときの発電コストを求める。入札をしない時の発電計画と比べ、発電コストが増加あるいは減少する。
3) 取引時刻単位ごと(例えば、30分ごと)の発電コストの差分は、入札にともない増減する電力コストとなる。
4) なお、入札量(MWh/h)で割り算すれば入札単価(円/kWh)が求まる。これは、入札を行うことにともない増減する電力量分の単価であり、入札の基準となる。
(イ) プライスベース法
入札ペア数と入札ペアごとの(入札)価格(円/kWh)を予め設定し、市場価格予測に従いプライスベース発電計画で最適な(入札)量(MWh/h)を計算する方法である。
つまり、入札する時に、まず市場価格はいくらになるのかを想定する。それに対する入札量を計算するために、プライスベース発電計画を利用する。
1) 各発電機ごとに、発電費≦市場価格の場合は運転し、発電費>市場価格の場合は運転を停止する。発電コストは、出力の程度によって異なるため、各発電機1,2には、発電費≦市場価格を満たす最大出力を運用レベルとして設定しておく。
2) 総合の発電量を計算して、そこから自社需要量を引き算して、入札量を求める。
入札データ作成部41は、入札データの作成に当たり、まずコストベース法が指定(選択)されているかの判定を行う(ステップS31)。コストベース法が選択されていれば、自社発電設備データファイル31及び自社需要予測データファイル32から計算に必要な自社発電設備データ、電力先渡取引契約データを含む自社需要データを取得し(ステップS32)、取引時刻単位ごとに最大購入量又は最大販売量を決めて、適切に定めた複数の入札ブロックにおける入札ペアごとに入札量の割り当てを行う、すなわち各入札ブロック中の入札ペアにおける量(MWh/h)の設定を行う(ステップS33)。
そして、コストベースの発電計画を作成し、入札しない場合の発電コストと入札をした場合の発電コストとの差から、販売または購入にともない増減する電力量分の電力コストを求める(ステップS34)。なお、発電コストは、自社発電設備データファイル31に記憶されている発電機のデータを用いて、ある出力Pに対するコストC(P)を、C(P)=g・P^2+h・P・+j(jは定数)として求める。ここに、a,b,ci,diは、上述の係数であり、自社発電設備データファイル31に記憶されている。上記電力コストを当該入札量で割り算すると単位電力量当たりの価格であるコスト単価(円/kWh)が得られ、入札価格の基準となる。なお、設定した入札ブロックの数をnとすると、全く取引をしなかった場合のケースを一つ加えn+1の発電計画を作成する必要がある。そして、求めた入札ブロックの上記コスト単価にマージンを考慮して価格調整を行い(ステップS35)、入札候補データとして入札データ評価部51へ出力する(ステップS36)。この入札候補データが上記入札ペア中の価格(円/kWh)として採用される。
ステップS31において、コストベース法が指定されていなければ、プライスベース法が選択されているとして、自社発電設備データファイル31、自社需要予測データファイル32から計算に必要な自社発電設備データ、契約済みの電力先渡取引契約データを含む自社需要データを取得する(ステップS41)。そして、市場価格予測データファイル22から予測市場価格を取得し(ステップS42)、取得した予測市場価格に基づいて、設定したい入札ブロック数と同じ数のケース、例えば取得した予測市場価格を基準に70,80,100,110%に変化させた価格を設定し、各入札ブロックの取引時刻単位ごとの入札ペアの入札価格を設定する(ステップS43)。入札ブロック数分のプライスベース発電計画を作成し、各入札ブロックごとに最適な入札量を求める(ステップS44)。そして、当該入札データを入札候補データとして入札データ作成部41に出力する(ステップS36)。
入札データ評価部51は、入札データ作成部41が作成した入札データについてストレステスティングを行い、入札データの適用性を評価し、評価結果が悪い場合は入札データを変更するものである。入札フォームを作成した時から、入札フォームを利用する時まで市場の事情が変化することもありうるし、そうでない場合でも、市場価格が変動したときの取引結果がどのようになるかを予測及び評価することが重要である。このために、ストレステスティングを行い、入札データの適用性の評価を行う。概略の動作は、次の通りである。
(ア) 市場価格予測データファイル22から複数の市場価格予測プロファイルを取得するか、あるは一つの市場価格予測プロファイルを取得しそれを基準に上下させた価格を設定するかして、ストレステスティングを行うためのn個(複数)のテスト用プロファイル1〜nを設定する。
(イ) 設定したテスト用プロファイルに基づきストレステスティングを行う。ストレステスティングとは、テスト用プロファイルごとにシミュレーションを行い、シミュレーション結果を評価指標値(この発明では、λで表す)を用いて評価する作業のことである。従って、ストレステスティングの結果は、価格1,価格2....価格nに対し評価指標値λ1,λ2,...λnを求めることに相当する。
(ウ) 事前に設定した条件、例えばストレステスティングの評価指標値λが目標値λr以上であるという条件を満たさなかった場合には、入札条件を適切に変更し入札データ作成部41に渡す。それにより、入札データ作成部41は繰り返し処理を行う。繰り返し処理により入札データが評価条件を満たした場合に、決定した入札データとされ、入札データファイル54に蓄積され、実際の市場取引に際して基準とされる。
これを、図4のフローチャートによりさらに詳細に説明する。まず、評価の基準となる目標値λrの値を設定する。評価指標値λの目標値λrは、落札プロファイル等の価格プロファイルごとに設定されるが、その例を図6に示す。(ステップS61)。次に、ストレステスティング用の市場価格予測プロファイルであるテスト用プロファイルを設定する。このテスト用プロファイルは、価格を予測市場価格を基準にして、予想される範囲で変化させた価格に設定する。例えば、市場価格予測データファイル22から取得した市場価格予測プロファイル中の予測市場価格を基準として、テスト用プロファイルとして予測市場価格の100%、115%,126%にしたもの(後述の表5参照)を作成する(ステップS62)。市場価格予測データファイル22から対象とする入札データを選択する(ステップS63)。次いで、ストレステスティングを実行する(ステップS64)。なお、ストレステスティングを実行する方法の詳細は後述する。
ストレステスティングの結果を評価する。例えば、評価指標値λ(n)がそれぞれ目標値λr(n)以上であるか否かを判定することにより評価する(ステップS65)。評価の方法として、他にλの個別値の偏差、または全体の偏差による判定なども考えられる。得られた各評価指標値λ(n)と目標値λr(n)との例を図7に示すが、λ1〜λ3及びλ8〜λ10は目標値を下回っている。目標値未満であれば、図示しない価格調整手段により、入札データを、入札価格の上げ下げや量の増減等により適宜調整し(ステップS66)、ステップS62に戻り、入札データ作成部41は再度入札データを作成する。ステップS66における調整の対象として、ある注文に対して入札価格値間の幅(プライスベース)を変更したり、入札量値間の幅(コストベース)を変更したり、その他モジュールにより様々な入札調整のルールを設定できる。例えば、評価指標値λの平均λが目標値よりX%低いとすると、入札ブロック1の設定価格が高すぎる可能性がある。そこで、その価格を下げる調整をする。但し、価格を下げすぎると逆効果になるため、下げるステップを小刻みにしてして繰り返し調整を行ったほうがいい。従って、データ販売入札がメインである場合に、X%という偏差で目標をずれたので、例えば入札ブロック1の価格を(X/2)%だけ価格を下げる、等のルールを設定する。入札データ評価部51は、ステップS65において、作成された入札データが評価条件(λ>=λr)を満たしているか否かを判定し、満たしている場合は当該入札データを入札データとし、入札データファイル54に蓄積する(ステップS67)。この入札データが、実際の市場取引に際して基準とされる。
ここで、ストレステスティングの実施方法の詳細を、図5のフローチャートにより説明する。
・ テスト用プロファイル1に対して、入札データ(入札ブロック)とのマッチングを行い、落札プロファイル1における取引時刻単位ごとの量(MWh/h)を求める(ステップS641)。ここで、入札とは、所定の価格以上なら指定した量を販売し、所定の価格以下なら指定した量を購入することを意味する。入札ブロックには複数の入札ペア(価格と量のペア)があるため、(落札)量を決めるために以下の処理をする。
1) ある市場価格を想定し、想定した市場価格がどの入札ブロックとどの入札ブロックの範囲にあるか検索する。
2) 範囲に入ってる入札ブロックがあれば、その入札ブロックの量を落札量にする。例えば、3つの入札ブロックにおいて、
(ア) 価格 5円/kWh 量10MWh/h(売)
(イ) 価格 6円/kWh 量15MWh/h(売)
(ウ) 価格 7円/kWh 量20MWh/h(売)
であったとする。この場合、予測市場価格に応じて、次のようになる。
a) 予測市場価格=5.5円/kWhならば、該当する範囲は5円/kWhの入札ブロック(ア)と、6円/kWhの入札ブロック(イ)の範囲である。従って、入札量を15MWh(売)とする。
b) 予測市場価格=4.5円/kWhならば、当該価格4.5円/kWhを含む入札ブロックの範囲はない。従って、入札量は0となる。この詳細例については、後述の実施例の表5、表6に示している。
・ 求めた落札プロファイル1の量(MWh/h)に対してコストベース発電計画を作成し(ステップS642)、利益R11を求める(ステップS643)。
・ テスト用プロファイル1の量(MWh/h)に対してプライスベース発電計画を作成し(ステップS644)、利益R12を求める(ステップS645)
・ 市場取引をしない場合として、対象の発電設備と自社需要(+その他の契約)に対してコストベース発電計画を作成し(ステップS646)、市場取引をしなかった場合の利益R13を求める(ステップS647)。
・ 評価指標値λは、以下のように計算する(ステップS648)。
λ=(R11‐R13)÷(R12‐R13)
λの値は≦1であり、1に近い値になればなるほど入札の効率が高い。λは、ある市場価格に対して、理想的な取引により得られる潜在的利益に対する実際に得られる実現利益の割合である。
従って、
λ=1 → 潜在的利益をすべて確保できる入札、
λ=0 → 潜在的利益を全く得られない入札(落札しない場合)、
λ<0 → 明らかに入札を間違えた(損が生じる取引)、
であり、通常0<λ<1の範囲にある。
テスト用プロファイル2〜nについても入札データとのマッチングを行い、落札プロファイル2〜落札プロファイルnを求め、さらにλ2〜λnを求める。そして、図4のステップS65(図4)へ行って、求めた評価指標値λ1〜λnを評価する。
なお、上記において入札データ評価部51を設けない場合は、入札データ作成部41において作成した入札データをそのまま入札データファイル54へ出力すればよい。
以上で説明した電力取引支援装置の動作を、さらに表1〜表19を参照しながら具体的数字をあげて説明する。
取引対象時間を30分を1単位として3単位分の1.5時間分について例示する。
対象の事業者は、発電機1及び発電機2の2台の発電機を所有し、電力の供給義務がある。
発電設備に対して、簡単化するために最小停止時間や起動期間,電力の増減速度等の運転制約を考慮しない。起動停止費用もないことにする。発電機1及び発電機2の特性は次の表1の通りである。
Figure 2006172246
上表の発電機特性に基づき、次の式(上述)により発電費を求めるものとする。
C(P)=g・P^2+h・P・+j
また、事業者の電力の供給義務は、次の表2の通りとする。
Figure 2006172246
(1) 市場価格予測
市場価格予測部21にて求めた市場価格予測プロファイルは次の表3の通りである。
Figure 2006172246
(2) 入札データ作成
入札データ作成部41により入札データを求める。この入札データは、次の表4に示すように複数の入札ブロックにて構成されている。例えば、4つの入札ブロックで構成された入札データを作成する。各入札ブロックは、複数の入札ぺア(表4では3つのペアだけ示している)を有している。ここでは、プライスベース法により入札データを作成するものとし、入札ペアごとの(入札)価格を予め市場価格に従い設定し、プライスベース発電計画により最適な(入札)量を決定することにする。
入札ブロックは、次のように通りである。
・入札ブロック1=価格予測の70%の値
・入札ブロック2=価格予測の80%の値
・入札ブロック3=価格予測の100%の値
・入札ブロック4=価格予測の110%の値
これに基づき、プライスベース発電計画を作成し、表4のような量(MWh/h)を有する入札ブロックを作成する。
Figure 2006172246
(3) 入札データの評価
以上のようにして得られた入札データを評価する。この例ではプライスベース法を使い、利用した価格予測と異なる市場価格が成立した場合には、取引結果がどのようになるかを予測及び評価することとする。
入札データ評価部51にて、ストレステスティングを行うが、3つの市場価格を設定して市場価格の変化によって入札の成果を評価する。
(3−1) ストレステスティングを行うために、次の表5に示す3つのテスト用プロファイル1〜3を設定する。ここでは、テスト用プロファイル1を基準にして、テスト用プロファイル2は115%、テスト用プロファイル3は126%の価格を選んだ。
Figure 2006172246
(3−2) 表5に対応して求めた落札プロファイル1〜3は、表6の通りである。
Figure 2006172246
(3−3) 対象の落札プロファイルに基づき、利益を計算する。各落札プロファイル1〜3に対してコストベース発電計画を作成し、利益R11,R21,R31を求める。利益R11,R21,R31は、それぞれ表7〜表9の通りである。なお、以下の表7〜表13、表16〜表18等におけるスポット取引量(MWh/h)とは落札プロファイルに基づいて決定された(電力取引)量であり、インバランス量(MWh/h)とは電力が足りないときに補填して貰う量のことであり、需要収入は販売単価を8(円/kWh)として計算したものである。
Figure 2006172246
Figure 2006172246
Figure 2006172246
(3−4) 各落札プロファイルに対して、プライスベース発電計画を作成し、理想的利益R12,R22,R32を求める。その結果は、表10、表11、表12の通りである。なお、表12の落札プロファイル3では、電力単価が高いので時間帯00:00〜00:30においては発電機1の運転容量を絞らないで全出力200(MW)で運転し、時間帯00:30〜01:30においても、発電機1だけを運転して不足する電力を購入するよりも、発電機2も加えて全出力300(MW)で運転して、余った電力を販売した方が利益がより大きくなるケースである。
Figure 2006172246
Figure 2006172246
Figure 2006172246
(3−5) 各落札プロファイル1〜3に対して、市場取引をしない場合のコストベース発電計画を作成し、市場取引をしない場合の利益R13,R23,R33を求める。市場取引をしないため、R13=R23=R33である。これを表13に示す。
Figure 2006172246
(3−6) 評価指標値λの計算を行う。前述の定義により
λ=(R1−R3)/(R2−R3)
である。従って、各落札プロファイル1〜3における評価指標値λ1〜λ3は、
・λ1=(R11‐R13)÷(R12‐R13)→λ1=0.32
・λ2=(R21‐R23)÷(R22‐R23)→λ2=0.65
・λ3=(R31‐R33)÷(R32‐R33)→λ3=0.14
となり、λ1〜λ3の平均値λは0.37となる。
これによれば、市場価格はある程度以上高くなると、取引の効率が落ちるといえる。ストレステスティングにて、コストベース法による落札プロファイル2と3の結果(表8と表9)は同じである(時刻00:00に28.1MWh販売のみ)が、落札プロファイル3は高い価格による「付加的利益」の機会を全く使えないため、λ3の値は0.14と非常に低い。
(3−7) 結果を評価する。たとえば、目標としてストレステスティングの評価指標値λ1〜λ3の平均値λの目標値を0.5以上とするならば、上記では平均値λ=0.37になり目標値よりも低いため、この入札データを実際に利用することはできない。
(3−8) そこで、入札データの調整を行う。入札データはプライスベース法で求め、合理的な入札データの調整は基になった予測価格の値を変えなければならないが、簡単な例として、前と同じ予測価格に基づき、入札ブロックの「切り方」を変更する。上記の(3−6)項で得られた入札データにおいては、価格が高い入札ブロックであっても、期待するほど販売できないため、もっと高い予測価格を用いることにする。そこで、入札ブロック3,4の価格を上げる。
・入札ブロック1=価格予測の70%の値 → 70%の値(維持)
・入札ブロック2=価格予測の80%の値 → 90%の値(増加)
・入札ブロック3=価格予測の100%の値 → 110%の値(増加)
・入札ブロック4=価格予測の110%の値 → 125%の値(増加)
新しい入札ブロックは表14のとおりである。
Figure 2006172246
(3−9) ストレステスティングの再実行を行う。調整して再実行して作成した落札プロファイルは表15の通りであり、表7に比して変化した値に下線を付している。これにより、落札プロファイル1における時刻00:00〜00:30の量が0から28.1(MWh/h)になり、落札プロファイル3における時刻01:00〜01:30の量が0から65.8(MWh/h)になる。これにより、後述するが評価指標値λ1とλ3が大きくなり、平均値λが大幅に上昇する。
Figure 2006172246
(3−10) 落札プロファイル1〜3に基づいて求めた、調整後の利益RR11,RR21,RR31は、表16、表17、表18の通りである。
Figure 2006172246
Figure 2006172246
Figure 2006172246
従って、
・λ1=(RR11‐R13)÷(R12‐R13)→λ1=1.00
・λ2=(RR21‐R23)÷(R22‐R23)→λ2=0.65
・λ3=(RR31‐R33)÷(R32‐R33)→λ3=0.48
であり、平均λ=0.71となる。
よって、
・調整前平均λ:0.37
・調整後平均λ:0.71
となり、評価指標値が目標値0.5を上回るので、この入札データを入札データとして採用する。なお、調整前後の評価指標値λ1〜λ3の値を棒グラフにて示すと、図8のようになる。
以上のようにこの発明の電力取引支援装置によれば、過去の気象実績データ、複数の供給エリアを結ぶ連系線の過去の送電余力実績データ、過去の取引価格の実績データ、将来の気象予測データ、複数の供給エリアを結ぶ連系線の将来の送電余力予測データ、自己の需要予測データ、及び自己の発電設備データに基づいて電力取引の対象とする供給エリアにおける予測市場価格を求める市場価格予測手段を備えたものであるので、求められた予測市場価格に基づいて電力取引を適切に行うことができる。
そして、市場価格予測手段は、気象実績データと送電余力実績データと取引価格の実績データに関する回帰分析を行い気象予測データ及び送電余力予測データを説明変数とし予測市場価格を目的変数とする回帰式を求め当該回帰式に基づいて予測市場価格を求めるものであることを特徴とするので、定量的に求められた予測市場価格に基づいて電力取引を適切に行うことができる。
さらに、予測市場価格に基づき、取引時間単位ごとに入札価格と入札電力量を組にした入札データを作成する入札データ作成手段を備えたことを特徴とするので、作成された入札データに基づいて電力取引を適切に行うことができる。
また、入札データ作成手段は、予測市場価格に基づき利益最大となる入札量を算定するプライスベース注文作成手段と所定の取引量における自己の発電費用を算定して入札価格を決定するコストベース注文作成手段との少なくとも一方を備えたものであることを特徴とするので、作成された入札データに基づいて電力取引を適切に行うことができる。
そして、入札データ作成手段は、プライスベース注文作成手段又はコストベース注文作成手段にて決定された入札価格を増減して入札価格を調整して入札データ作成手段に渡し入札データを再計算させる価格調整手段を有するものであることを特徴とするので、より適切な入札データを作成することができ、この入札データに基づいて電力取引をさらに適切に行うことができる。
さらに、入札データに基づいて利益を算出しこの利益の値により入札データを評価する評価手段を備えたことを特徴とするので、入札データの適用性を適切に評価できる。
また、評価手段は、入札データを評価するために複数の評価用の予測市場価格を設定するものであり、
入札データ作成手段は、評価用予測市場価格に基づいて評価用入札価格と評価用入札量とを含む評価用データを作成するとともに、コストベース注文作成手段とプライスベース注文作成手段との双方を有し、
コストベース注文作成手段は、自己の需要予測データに評価用入札量を加算又は減算して求めた自己の発電機が発電すべき発電量と自己の発電設備データとに基づいて発電費用を算出してコストベースの入札価格を決定して発電量とコストベースの入札価格とからコストベースの利益を計算するものであり、
プライスベース注文作成手段は評価用入札価格に基づいて利益額が最大となるように自己の発電機が発電すべき発電量を算出してプライスベースの入札量を決定して評価用入札価格とプライスベースの入札量とからプライスベースの利益を計算するものであり、
評価手段は、コストベースの利益とプライスベースの利益とに基づいて評価用データを評価するものであることを特徴とするので、入札機会を有効に活用できる。
電力取引支援装置の構成を示す構成図である。 市場価格予測部の動作を示すフローチャートである。 入札データ作成部の動作を示すフローチャートである。 入札データ評価部の動作を示すフローチャートである。 ストレステスティングの詳細を示すフローチャートである。 評価指標値の目標値の例を示す説明図である。 評価指標値の目標値と実際に得られた評価指標値とを対比させて示す説明図である。 調整前と調整後の落札プロファイルに対する評価指標値を対比して示す説明図である。
符号の説明
11 気象実績データファイル、12 連系線空き容量実績データファイル、
13 気象予測データファイル、14 連系線空き容量予測データファイル、
16 取引価格実績データファイル、21 市場価格予測部、
22 市場価格予測データファイル、31 自社発電設備データファイル、
32 自社需要予測データファイル、41 入札データ作成部、
51 入札データ評価部、54 入札データファイル。

Claims (7)

  1. 過去の気象実績データ、複数の供給エリアを結ぶ連系線の過去の送電余力実績データ、過去の取引価格の実績データ、将来の気象予測データ、上記複数の供給エリアを結ぶ連系線の将来の送電余力予測データ、自己の需要予測データ、及び自己の発電設備データに基づいて電力取引の対象とする上記供給エリアにおける予測市場価格を求める市場価格予測手段を備えた電力取引支援装置。
  2. 上記市場価格予測手段は、上記気象実績データと上記送電余力実績データと上記取引価格の実績データに関する回帰分析を行い上記気象予測データ及び上記送電余力予測データを説明変数とし上記予測市場価格を目的変数とする回帰式を求め当該回帰式に基づいて上記予測市場価格を求めるものであることを特徴とする請求項1に記載の電力取引支援装置。
  3. 上記予測市場価格に基づき、取引時間単位ごとに入札価格と入札電力量を組にした入札データを作成する入札データ作成手段を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力取引支援装置。
  4. 上記入札データ作成手段は、上記予測市場価格に基づき利益最大となる上記入札量を算定するプライスベース注文作成手段と所定の取引量における自己の発電費用を算定して上記入札価格を決定するコストベース注文作成手段との少なくとも一方を備えたものであることを特徴とする請求項3に記載の電力取引支援装置。
  5. 上記入札データ作成手段は、上記プライスベース注文作成手段又は上記コストベース注文作成手段にて決定された上記入札価格を増減して入札価格を調整して上記入札データ作成手段に渡し上記入札データを再計算させる価格調整手段を有するものであることを特徴とする請求項4に記載の電力取引支援装置。
  6. 上記入札データに基づいて利益を算出しこの利益の値により上記入札データを評価する評価手段を備えたことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の電力取引支援装置。
  7. 上記評価手段は、上記入札データを評価するために複数の評価用の予測市場価格を設定するものであり、
    上記入札データ作成手段は、上記評価用予測市場価格に基づいて評価用入札価格と評価用入札量とを含む評価用データを作成するとともに、上記コストベース注文作成手段と上記プライスベース注文作成手段との双方を有し、
    上記コストベース注文作成手段は、上記自己の需要予測データに上記評価用入札量を加算又は減算して求めた上記自己の発電機が発電すべき発電量と上記自己の発電設備データとに基づいて発電費用を算出してコストベースの上記入札価格を決定して上記発電量と上記コストベースの入札価格とからコストベースの利益を計算するものであり、
    上記プライスベース注文作成手段は上記評価用入札価格に基づいて利益額が最大となるように上記自己の発電機が発電すべき発電量を算出してプライスベースの上記入札量を決定して上記評価用入札価格と上記プライスベースの入札量とからプライスベースの利益を計算するものであり、
    上記評価手段は、上記コストベースの利益と上記プライスベースの利益とに基づいて上記評価用データを評価するものであることを特徴とする請求項6に記載の電力取引支援装置。
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