しかしながら、ダイカストでは、バリや溶損の発生によって、実装ケースの製造品質を維持するのが困難であるという問題点がある。
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、安定した製造品質でしかも低コストに製造可能な電気光学装置用実装ケース及びその製造方法、これを備えた電気光学装置、並びに該電気光学装置を備えた電子機器を提供することを課題とする。
本発明の第1の電気光学装置用実装ケースは、上記課題を解決するために、表示像が表示される電気光学装置に用いられ、前記表示像が表示される画像表示領域を有する電気光学パネルを収容するための電気光学装置用実装ケースであって、板材がプレス加工により成形されてなり、前記電気光学パネルにおける前記画像表示領域の周辺に位置する周辺領域に対向する底部と該底部に連続しており前記電気光学パネルの側縁を取り囲む側部とを含んで前記電気光学パネルを収容可能に構成された本体部と、前記側部が部分的に凹凸を有するように前記プレス加工により成形されてなり、前記本体部に収容された前記電気光学パネルの前記底部との対向面と反対側の面を覆うカバー部材のフックが引っ掛けられる爪部とを備える。
本発明の第1の電気光学装置用実装ケース(以下、適宜「実装ケース」と略称する)によれば、板材をプレス加工して成形されている。そのため、ダイカスト成形時には問題となっていたバリや溶損による製造品質の劣化を解消することができる。また、ダイカストからプレス加工へ製造技術を転換することで、量産が一層容易となり、金型の寿命が延びるなど製造単価を低く抑えることも可能である。
但し、ダイカストで製造すれば、比較的複雑な形状に実装ケースを作り込むことができる。これに対し、本発明の第1の実装ケースは、電気光学パネルが収容される本体部と、カバー部材のフックが引っ掛けられる爪部とが、アルミニウム板等の板材から成形されてなる。爪部は、プレス加工の過程において、板材の側部に対応する部位を部分的に凹凸を有するように加工してなる、フックが引っ掛けられる形状の部分であり、本体部の加工と並行して又は相前後して成形される。尚、本発明における「プレス加工」とは、本体部の成形工程だけでなく、実装ケースの製造に係るプレス加工による工程全般を指す。また、爪部に対する「プレス加工」とは、板材の爪部となる部位に積極的に加工を施す場合以外に、板材の他部を加工した結果として、爪部の全体或いはその一部が得られる場合をも含んでいる。また、ここでいう「板材」は、相互に組み合わせられる複数枚の板材であってもよいが、品質や製造効率といった観点からは、実装ケース全体が一枚の板材から成形されていることが望ましい。尚、この実装ケースは、全体が一枚の板材から構成されていてもよいし、その他の部材からなる部品がプレス加工に相前後して板材に対して取り付けられて構成されてもよい。
本体部に各種機能を果たすための構成要素を付加すると、構造が複雑化するために、そのような構造をプレス加工で忠実に成形するのは一般に困難である。しかしながら、本発明の場合には、板材のうち本体部の側部に相当する部位に、部分的に凹凸を付けるだけでよく、比較的容易に実現可能である。
尚、この第1の実装ケースには、本体部や爪部以外の構成要素が付加されていてもよい。その他の構成要素は、製造効率上はプレス加工で成形されることが望ましいが、構造が複雑な場合などにおいては、ダイカスト等の他の手法により成形され、後に本体部等と接合や係合等されてもよい。
以上説明したように、本発明の第1の実装ケースは、爪部を備えることによってカバー部材を比較的容易に取付可能な構成をしており、そのような多少複雑な構成であるにもかかわらずプレス加工で実現することができる。即ち、本実装ケースは、少なくとも本体部と爪部とがプレス加工で製造されるために、ダイカスト成形時に生じるバリや溶損による品質劣化が少ない或いは全くなく、安定した製造品質でしかも低コストに製造可能である。
本発明の第1の実装ケースの一態様では、前記爪部は、前記プレス加工における切り起こし加工により形成されている。
この態様によれば、プレス加工の一環として、本体部の側部の所定部位を切り起こすことで爪部が形成されている。切り起こされた爪部の縁は、側部との間に明瞭な段差を生むために、フックを確実に引っ掛けることができる。
本発明の第1の実装ケースの他の態様では、前記側部における前記フックの外縁に当接する部位に、前記側部の外面側から見て突出するように前記プレス加工により成形されてなる凸部の少なくとも一部によって、前記フックを案内するガイド部が形成されている。
この態様によれば、爪部にフックを案内するガイド部が、本体部の側部における、爪部に引っ掛けられる際にフックの外縁が当接する部位に形成されている。ガイド部は、具体的には、爪部の両脇に成形された、外側に凸の凸部乃至その一部からなり、側部に対する凸部の段差がフックを案内する溝として機能する。よって、この場合の実装ケースでは、フレームにカバー部材を装着する際、フックは、ガイド部に案内されて、確実に爪部に引っ掛けることができる。
本発明の第1の実装ケースの他の態様では、前記凸部の成形により前記側部の内側に生じた凹部の少なくとも一つは、前記電気光学パネルを接着固定する接着剤を滞留させる接着剤溜りとして用いられる。
この態様によれば、本体部の側部における所定部分に、プレス加工によって外側に凸の凸部を成形すると、その裏面には凸部に対応する凹部が生じる。この凹部が、接着剤溜りに利用される。接着剤溜りは、液晶パネルをフレーム内に接着固定する際に接着剤を滞留させるために設けられ、これにより、液晶パネルを確実かつ容易に接着固定することができる。また、接着剤溜りはガイド部と表裏一体的に成形されることから、製造工程の簡素化にも寄与する。
本発明の第1の実装ケースの他の態様では、少なくとも前記本体部と前記爪部とが、前記板材として一枚の板材から構成されている。
この態様によれば、実装ケースのうち少なくとも本体部と爪部とを含んで構成される部分は、プレス加工された一枚の板材から成形されている。そのため、複数の板材を接合するなどの手間が不要となり、効率よく製造可能である。
本発明の第2の実装ケースは、上記課題を解決するために、表示像が表示される電気光学装置に用いられ、前記表示像が表示される画像表示領域を有する電気光学パネルを収容するための電気光学装置用実装ケースであって、板材がプレス加工により成形されてなり、前記電気光学パネルにおける前記画像表示領域の周辺に位置する周辺領域に対向する底部と該底部に連続しており前記電気光学パネルの側縁を取り囲む側部とを含んで前記電気光学パネルを収容可能に構成された本体部と、前記側部が部分的に前記側部の内側から見て凹むように前記プレス加工により成形されてなり、前記電気光学パネルを接着固定する接着剤を滞留させる接着剤溜りとを備える。
本発明の第2の実装ケースによれば、第1の実装ケースと同様、板材をプレス加工して成形されているために、ダイカストでは問題となる製造品質の劣化が解消でき、量産化や金型の寿命の延長等により製造単価を低く抑えることが可能である。
そして、第2の実装ケースは接着剤溜りを備えている。接着剤溜りは、上記爪部と同様、本体部の側部に相当する部位がプレス加工により部分的に成形されてなり、液晶パネルをフレーム内に接着固定する際に接着剤を滞留させる部分である。よって、本発明の第2の実装ケースにおいては、液晶パネルを確実かつ容易に接着固定することができる。
以上説明したように、本発明の第2の実装ケースは、接着剤溜りを備えることによって液晶パネルを確実かつ容易に接着固定可能な構成をしており、そのような多少複雑な構成であるにもかかわらずプレス加工で実現することができる。即ち、本実装ケースは、少なくとも本体部と接着剤溜りとがプレス加工で製造されるために、ダイカスト成形時に生じるバリや溶損による品質劣化が少ない或いは全くなく、安定した製造品質でしかも低コストに製造可能である。
本発明の第3の実装ケースは、上記課題を解決するために、表示像が表示される電気光学装置に用いられ、前記表示像が表示される画像表示領域を有する電気光学パネルを収容するための電気光学装置用実装ケースであって、板材がプレス加工により成形されてなると共に、前記電気光学パネルにおける前記画像表示領域の周辺に位置する周辺領域に対向する底部と該底部に連続しており前記電気光学パネルの側縁を取り囲む側部とを含んで前記電気光学パネルを収容可能に構成された本体部を備え、前記底部と前記側部の少なくとも一部とが、前記プレス加工における絞り加工によって、前記板材としての一枚の板材における連続した曲面として形成されている。
本発明の第3の実装ケースによれば、第1の実装ケースと同様、板材をプレス加工して成形されているために、ダイカストでは問題となる製造品質の劣化が解消でき、量産化や金型の寿命の延長等により製造単価を低く抑えることが可能である。
そして、第3の実装ケースにおいては、本体部のうち、底部と側部の少なくとも一部とは、絞り加工によって完全に継ぎ目のない状態で形成されている。そのため、本体部内に外部からの光が漏れ、表示品質に影響するのを未然に防止することが可能である。従って、本発明の第3の実装ケースは、少なくとも本体部をプレス加工で成形することにより、安定した製造品質でしかも低コストに製造されつつ、良好な表示品質を維持することが可能である。
本発明の電気光学装置は、上記課題を解決するために、本発明の電気光学装置用実装ケース(但し、その各種態様を含む)と、前記本体部に収容された前記電気光学パネルと、前記電気光学パネルが前記電気光学装置用実装ケースに収容された状態で前記爪部に前記フックが引っ掛けられた前記カバー部材とを備える。
本発明の電気光学装置によれば、本発明の実装ケースに、電気光学パネルが収容され、カバー部材により実装ケース内に固定されてなる。この際、カバー部材のフックを爪部に引っ掛ければ簡単に固定でき、これに加えて、凹部に接着剤を滞留させることも容易である。そのため、安定した品質で低コストに生産することができる。また、爪部、接着剤溜り、及び、底部と側部の少なくとも一部とを絞り加工で形成した本体部のうちの少なくともいずれかを備えることで、電気光学パネルを収容する以外の機能を付加することが可能である。
尚、このような電気光学装置には、例えば、液晶装置、有機EL装置、電子ペーパ等の電気泳動装置、電子放出素子を利用した表示装置(Field Emission Display及びSurface-Conduction Electron-Emitter Display)等の各種装置が挙げられる。
本発明の電子機器は、上記課題を解決するために、本発明の電気光学装置を備える。
本発明の電子機器は、本発明の電気光学装置を備えるようにしたので、上記の電気光学装置と同様の作用及び効果を奏する。
また、このような電子機器は、上記電気光学装置を具備してなるテレビジョン受像機、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネル等の各種の電子機器であってよい。
本発明の第1の電気光学装置用実装ケースの製造方法は、上記課題を解決するために、表示像が表示される電気光学装置に用いられ、前記表示像が表示される画像表示領域を有する電気光学パネルを収容するための電気光学装置用実装ケースを製造する電気光学装置用実装ケースの製造方法であって、一枚の板材をプレス加工により成形することによって、前記電気光学パネルにおける前記画像表示領域の周辺に位置する周辺領域に対向する底部と該底部に連続しており前記電気光学パネルの側縁を取り囲む側部とを含み、前記電気光学パネルを収容可能な本体部を形成する本体部形成工程と、前記本体部形成工程と並行又は相前後して、前記板材のうち前記側部に相当する部位を、前記プレス加工により部分的に凹凸を有するように成形することによって、前記本体部に収容された前記電気光学パネルの前記底部との対向面と反対側の面を覆うカバー部材のフックが引っ掛けられる爪部を形成する爪部形成工程とを含む。
本発明の第1の電気光学装置用実装ケースの製造方法によれば、板材をプレス加工することによって、上記第1の実装ケースにおける本体部及び爪部が夫々成形される。ここで、本体部形成工程及び爪部形成工程は、いずれが先に実行されてもよいし、同時に実行されてもよい。
また、これらの各工程とは別に或いは同時に、その他の構成要素が成形されてもよい。例えば、その他の構成要素としては、フックを爪部に案内するガイド部等が挙げられる。ガイド部は、本体部形成工程及び爪部形成工程と並行又は相前後して形成してよい。前述したように、本体部の側部においては、ガイド部となる凸部の裏面に凸部に対応する凹部が生じる。そこで、ガイド部の形成工程では、このような凹部の少なくとも一つが接着剤溜りとして使用されるように、予め位置形状を予め設定して凸部を成形するようにしてもよい。
こうした本体部及び爪部以外の構成要素は、製造効率上はプレス加工で成形されることが望ましいが、構造が複雑な場合などにおいては、ダイカスト等の他の手法により成形し、後に本体部等と接合するようにしても構わない。
このように、本発明の第1の実装ケースの製造方法では、本体部に爪部が付加された実装ケースを、プレス加工で成形することができる。より具体的には、少なくとも本体部及び爪部の成形にプレス加工を採用しているために、ダイカスト成形時に生じるバリや溶損による品質劣化が少ない或いは全くないことから、本発明の第1の実装ケースを、安定した製造品質で、しかも低コストに製造することができる。
本発明の第2の電気光学装置用実装ケースの製造方法は、上記課題を解決するために、表示像が表示される電気光学装置に用いられ、前記表示像が表示される画像表示領域を有する電気光学パネルを収容するための電気光学装置用実装ケースを製造する電気光学装置用実装ケースの製造方法であって、一枚の板材をプレス加工により成形することによって、前記電気光学パネルにおける前記画像表示領域の周辺に位置する周辺領域に対向する底部と該底部に連続しており前記電気光学パネルの側縁を取り囲む側部とを含み、前記電気光学パネルを収容可能な本体部を形成する本体部形成工程と、前記本体部形成工程と並行又は相前後して、前記板材のうち前記側部に相当する部位が部分的に前記側部の内側から見て凹むように前記プレス加工により成形することによって、前記電気光学パネルを接着固定する接着剤を滞留させる接着剤溜りを形成する接着剤溜り形成工程とを含む。
本発明の第2の電気光学装置用実装ケースの製造方法によれば、板材をプレス加工することによって、上記第2の実装ケースにおける本体部及び接着剤溜りが夫々成形される。本体部形成工程及び接着剤溜り形成工程は、いずれが先に実行されてもよいし、同時に実行されてもよい。また、これらの各工程とは別に或いは同時に、その他の構成要素が成形されてもよい。この場合の構成要素は、製造効率上はプレス加工で成形されることが望ましいが、構造が複雑な場合などにおいては、ダイカスト等の他の手法により成形され、後に本体部等と接合するようにしても構わない。
このように、本発明の第2の実装ケースの製造方法では、接着剤溜りが付加された実装ケースを、プレス加工で成形することができる。より具体的には、本体部及び接着剤溜りの成形にプレス加工を採用しているために、ダイカスト成形時に生じるバリや溶損による品質劣化が少ない或いは全くないことから、本発明の第2の実装ケースを、安定した製造品質で、しかも低コストに製造することができる。
本発明の第3の電気光学装置用実装ケースの製造方法は、上記課題を解決するために、表示像が表示される電気光学装置に用いられ、前記表示像が表示される画像表示領域を有する電気光学パネルを収容するための電気光学装置用実装ケースを製造する電気光学装置用実装ケースの製造方法であって、一枚の板材をプレス加工により成形することによって、前記電気光学パネルにおける前記画像表示領域の周辺に位置する周辺領域に対向する底部と該底部に連続しており前記電気光学パネルの側縁を取り囲む側部とを含んで前記電気光学パネルを収容可能な本体部を形成する本体部形成工程を含んでおり、前記本体部形成工程において、前記底部と前記側部の少なくとも一部とを前記プレス加工における絞り加工によって連続した曲面として形成する。
本発明の第2の電気光学装置用実装ケースの製造方法によれば、板材をプレス加工することによって、上記第3の実装ケースにおける本体部が成形される。本体部以外の構成要素は、一連のプレス加工により本体部と共に成形されることが好ましいが、その他の手法により成形されてもよい。
このような本発明の第2の実装ケースの製造方法では、少なくとも本体部をプレス加工で成形することにより、優れた表示品質を発揮できる、本発明の第3の実装ケースが製造される。また、少なくとも本体部をプレス加工で成形するために、ダイカスト成形時に生じるバリや溶損による品質劣化が少ない或いは全くないことから、本発明の第3の実装ケースを、安定した製造品質で、しかも低コストに製造することができる。
本発明のこのような作用及び他の利得は、次に説明する実施形態から明らかにされる。
本発明の実施形態について図を参照して説明する。
(1:電子機器の実施形態)
先ず、図1を参照し、本実施形態の電子機器の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る電子機器の概略構成を示している。尚、本実施形態では、本発明の電子機器として、投射型液晶プロジェクタを例にとる。
図1において、液晶プロジェクタ1100は、夫々RGB用の液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bの3枚を用いた複板式カラープロジェクタとして構築されている。
液晶プロジェクタ1100では、メタルハライドランプ等の白色光源のランプユニット1102から投射光が発せられると、3枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によって、RGBの3原色に対応する光成分R、G及びBに分けられ、各色に対応する液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bに夫々導かれる。この際特にB光は、長い光路による光損失を防ぐために、入射レンズ1122、リレーレンズ1123及び出射レンズ1124からなるリレーレンズ系1121を介して導かれる。そして、液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bにより夫々変調された3原色に対応する光成分は、ダイクロイックプリズム1112により合成された後、投射レンズ1114を介してスクリーン1120にカラー映像として投射される。尚、以下の説明では、液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bを区別なく指し示す場合には、液晶ライトバルブ100と記すことにする。また、ここでは、液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bの夫々が、本発明の「電気光学装置」の一具体例に相当している。
液晶ライトバルブ100は、例えば、後述の如きアクティブマトリクス駆動方式の液晶パネルが実装ケースに収容されて構成されている。
また、この液晶プロジェクタ1100には、液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bに冷却風を送るためのシロッコファン1300が設けられている。このシロッコファン1300は、その側面に複数のブレード1301を備えた略円筒形状の部材を含んでおり、該円筒形状の部材がその軸を中心として回転することで前記ブレード1301が風を生じさせるようになっている。尚、このような原理から、シロッコファン1300で作り出される風は、らせん状に渦巻いたものとなる。このような風は、図1には図示されない風路を通じて各液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bに送給され、各液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bの近傍に設けられた吹き出し口100RW、100GW及び100BWから、液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bの夫々に対して送り出されるようになっている。
以上説明した構成においては、液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bの各実装ケースは、ダイクロイックプリズム1112の3つの側面に夫々付設されている。その各実装ケースからは、内部で液晶装置と接続されたFPCが引き出されている。引き出されたFPCの各端部は、ダイクロイックプリズム1112の上面側或いは下面側に曲げられて、外部コネクタに接続される。その際、きつく曲げると、FPCを損傷する可能性がある。
また、このような液晶プロジェクタ1100の駆動時には、強力な光源たるランプユニット1102からの投射光により、液晶ライトバルブ100において温度が上昇する。この際、過度に温度が上昇すると、液晶ライトバルブ100内の液晶が劣化したり、光源光のむらによる部分的な液晶パネルの加熱によるホットスポットの出現により透過率にムラが生じたりする。
そこで、本実施形態では、特に液晶ライトバルブ100を以下のように構成し、FPCの損傷を防止すると共に、その温度上昇を効率的に抑制する。
(2:電気光学装置の実施形態)
次に、本発明の電気光学装置に係る実施形態を説明する。本発明の「電気光学装置」の一例たる液晶ライトバルブ100は、液晶パネルが実装ケースに収容されてなる。そこで、先ず図2及び図3を参照して、液晶パネルの具体的構成例について説明し、次に、図4から図9を参照して、実装ケース及び液晶ライトバルブ100の構成例とその動作について説明する。そして、図10から図24を参照して、実装ケースの製造方法について説明する。
(2−1:液晶パネルの構成)
本実施形態における液晶パネルは、本発明の「電気光学パネル」の一具体例であり、駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式を採る。図2は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た液晶パネルの平面図であり、図3は、図2のH−H'断面図である。
図2及び図3において、液晶パネルでは、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。また、シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。即ち、本実施形態の電気光学装置は、プロジェクタのライトバルブ用として小型で拡大表示を行うのに適している。
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
画像表示領域の周辺に広がる領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する周辺領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられており、走査線駆動回路104が、この一辺に隣接する2辺に沿って設けられている。更にTFTアレイ基板10の残る一辺には、画像表示領域10aの両側に設けられた走査線駆動回路104間をつなぐための複数の配線105が設けられている。また図2に示すように、対向基板20の4つのコーナー部には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10にはこれらのコーナーに対向する領域において上下導通端子が設けられている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
図3において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、格子状又はストライプ状の遮光膜23、更には最上層部分に配向膜が形成されている。また、液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
尚、図2及び図3に示したTFTアレイ基板10上には、データ線駆動回路101、走査線駆動回路104等に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
(2−2:実装ケース及び液晶ライトバルブの構成)
次に、図4から図8を参照して、以上に説明した液晶パネルを実装する実装ケースの具体的構成と、実装ケースに液晶パネルが実装されてなる液晶ライトバルブの具体的構成とについて説明する。ここに、図4は、本実施形態に係る液晶ライトバルブを示す分解斜視図であり、図5は当該液晶ライトバルブの正面図、図6は図5を矢印X側から見た側面図、図7は図5の矢印Y側から見た側面図である。図8は図5を裏側から見た背面図である。
図4から図8に示すように、液晶ライトバルブ100は、以上のように構成された液晶パネル500が、実装ケース601に収容されてなる。
液晶パネル500は、図2及び図3に示した形態をしており、外部回路接続端子102(図2及び図3を参照)には、フレキシブルプリント配線板(以下、FPCと略称する)501が接続されている。また、TFTアレイ基板10及び対向基板20の各々における液晶層50を挟んで対向する面とは反対側の面には、夫々、防塵用基板400が設けられている(図4を参照)。更に、液晶パネル500の外表面には、反射防止板等の光学部材が付設されている。但し、偏光板や位相差板等は、液晶パネル500の外表面に付設されてもよいが、液晶プロジェクタ1100の光学系が備えていてもよい。
実装ケース601は、液晶パネル500を収容するフレーム610と、フレーム610に被さるカバー部材620とからなる。カバー部材620は、両側縁のフック627をフレーム610の側面に形成された爪部617に引っ掛けることによって、フレーム610と組み合せられている。液晶パネル500は、フレーム610に対向基板20側が面する向きに収容され、TFTアレイ基板10側の外表面をカバー部材620で覆われている。即ち、本実施形態における液晶ライトバルブ100は、フレーム610の側から光が入射し、液晶パネル500を透過して、カバー部材620の側から出射するということを前提としている(図1において、ダイクロイックプリズム1112には、フレーム610ではなくカバー部材620が対向していることになる)。
カバー部材620は、窓部625が開口された額縁状の本体と、本体の両脇に、フック627とを備えている。窓部625は、液晶パネル500の画像表示領域10a(図2参照)から射出される光を取り出すために、画像表示領域10aと対向するように開口されている。
一方、フレーム610は、アルミニウム合金板などの板材から構成されており、各部がプレス加工により成形されてなる。フレーム610となる板材としては、加工性に富むと同時に、液晶パネル500に対するヒートシンクとして機能させるために熱伝導率の比較的大きい材料であることが望ましく、例えば、アルミニウム、銅又はこれらの合金等から構成するとよい。ここでは、フレーム610は、液晶パネル500を収容する本体部613に加えて、取付孔611a〜611e、冷却用の導風部612、放熱用の羽根部614Fを備えており、全体が一枚の板材から成形されている。
本体部613は、液晶パネル500の形状に合わせ、言わば内側をくり抜かれたように成形されている。即ち、この本体部613は、対向基板20側の外表面に対向する部分と、その側面を取り囲む部分とからなり、夫々の部分が、本発明の実装ケースにおける本体部の「底部」及び「側部」の一具体例に対応している。また、本体部613のうち、特に光入射側の部分は、画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域からの迷光が画像表示領域10a内に進入するのを防ぐために、絞り加工によって隙間なく連続的に成形されている。但し、ここでは、板材の更に端部を加工して羽根部614F等を成形するために、本体部613の光射出側の部分は、板材のうち本体部613の四隅に相当する部位に切れ込みを入れ、曲げ加工して成形されている。
本体部613はまた、窓部615、ガイド部616及び爪部617を備えている。窓部615は、収容された液晶パネル500の画像表示領域10a(図2参照)に光を透過させるために、画像表示領域10aと対向するように開口されている。このため、図1に示した液晶プロジェクタ1100内のランプユニット1102から発せられた光は、窓部615を通過して液晶パネル500に入射可能となる。
本体部613は更に、窓部615の辺縁に、画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域が当接するように構成されており、液晶パネル500の熱をフレーム610へ伝導させ、外気へ放出することができる。
ガイド部616及び爪部617は、本体部613の側部が、部分的に凹凸を有するようにプレス加工で成形されてなる。爪部617は、前述したようにフック627を引っ掛けるために用いられ、例えば切り起こし加工によって、フック627と対応する位置に成形されている。ガイド部616は、例えば絞り加工によって、爪部617の両脇に夫々成形され、爪部617側の段差がフック627を爪部617に案内する溝として機能する。
ところで、プレス加工においては、板材の外表面に突出する部分を成形すると、その裏面には同形の窪みが生じる。そこで、本実施形態においては、ガイド部616を成形すると同時に、その裏面に生じる窪みを接着剤溜り616aとしている。接着剤溜り616aは、液晶パネル500をフレーム610内に接着固定する際に、接着剤を滞留させるために設けられている。
このような本体部613における、ガイド部616や爪部617が形成されていない部位の延長上に、取付孔611a〜611e、導風部612及び羽根部614Fが形成されている。
取付孔611a〜611eは夫々、板材の本体部613の周縁に相当する部位を部分的にプレス加工により折り畳んでなる台座を貫通するように形成されている。これら取付孔611a〜611eは、当該液晶ライトバルブ100を、図1に示した如き液晶プロジェクタ1100内に取り付ける際に利用される。このうち取付孔611a〜611dは、フレーム610の四隅に設けられている。また、フレーム610には、これらの他に取付孔611eが設けられている。取付孔611eは、取付孔611c及び611dと共に三角形を形作るように配置されている。その結果、液晶ライトバルブ100では、四隅の取付孔611a乃至611dを用いた四点固定と、取付孔611e、611c及び611dを用いた三点固定の双方が実施可能である。
導風部612は、板材の本体部613の周縁に相当する部位が部分的にプレス加工されてなる斜面612Tを有している。斜面612Tは、図4又は図6に示したように、例えば、曲げ加工によって本体部613の周縁を本体部613側に任意の角度で折り返すことで形成される。斜面612Tは、フレーム610に向かって供給される冷却風を整流し、後述するように、冷却風を窓部615が開口された面上に向かって導くように作用する。尚、ここでは、導風部612と羽根部614Fとは、窓部615が開口された面の相対向する辺側に、夫々形成されている。
羽根部614Fは、板材の本体部613の周縁に相当する部位が部分的に、本体部613の外側に向かって延在するようにプレス加工されてなり、フレーム610に液晶パネル500から伝導された熱を外気中に放出する、所謂放熱用フィンとして機能する。ここで、羽根部614Fの両面には、図5に示したように、例えばハーフパンチ加工による直線状の段差614aが複数並列するように形成されている。これらの段差614aは、羽根部614F乃至フレーム610の表面積を増大し、放熱効果を高めるように作用する。
尚、図7に示したように、液晶ライトバルブ100においては、一端側が液晶パネル500に接続されたFPC501の他端側が、開口614から実装ケース601外へ引き出される。本実施形態では、開口614は、本体部613の周縁における、羽根部614Fに加工された部分に対応する位置に規定されている。つまり、本体部613の周縁のうち底部の一辺に沿った部分が羽根部614Fに加工された結果、この部分が占めていた領域に生じる開口が、開口614として利用されている。このように、羽根部614Fに加工した部分に生じた開口の処理と、FPC501の引き出し用に開口を設けるという課題とを同時に解決する、単純化された構造は、プレス加工による成形に適しており、製造工程を簡素化にも寄与する。
(2−3:液晶ライトバルブの動作)
次に、図9を参照して、以上に説明した液晶ライトバルブの動作について説明する。図9は、本実施形態に係る液晶ライトバルブに対する典型的な風の流れ方を示している。
図1に示した如き液晶プロジェクタ1100においては、シロッコファン1300から液晶ライトバルブ100に向かって送られた冷却風が、図9に示したように、実装ケース601の外表面に流れる。尚、このような冷却風の流れを実現するためには、図1の吹き出し口100RW、100GW及び100BWが、実装ケース601の導風部612と対向するように、液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bを配置する必要がある。
図9において、実装ケース601の外表面には、斜面612Tによって整流され、あたかも斜面612Tを駆け上がるようにして本体部613へと導かれる冷却風W1の流れが生じる。冷却風W1は、窓部615における露出面から液晶パネル500の熱を奪っていく。即ち、液晶ライトバルブ100では、導風部612の存在により、冷却風W1が本体部613へ向けて効率よく送り出され、液晶パネル500が効果的に冷却される。
また、ここでは、冷却風W1は、導風部612と対向配置されることで丁度風下に存在する羽根部614Fに向かって流れる。そのため、冷却風W1によって、羽根部614F延いてはフレーム610が冷却される。こうして羽根部614F乃至フレーム610を積極的に冷却すると、液晶パネル500から伝導する熱を実装ケース601外へ放出するのに非常に有効である。即ち、羽根部614F自体は、フレーム610に伝導された熱の放出を促し、表面に形成された段差614aは、その表面積を拡げて放熱効果を増すように作用する。また、ここでは、段差614aの延在方向は冷却風W1の向きとほぼ合致しており、段差614aも冷却風W1の流れをつくるのに寄与している。
こうした冷却作用を有する導風用斜面や羽根部等の各種冷却機構は、通常、ダイカスト成形された実装ケースでは実現されていたものの、実装ケース601のようにプレス加工で成形する場合には、設計上プレス加工が可能でなければならないという制約があり、構造的な工夫が更に必要である。ここでは、具体的に、本体部614の周縁に相当する部位を部分的に変形させて導風部612と羽根部614Fとを成形するようにしたので、実装ケース601の冷却効率が高められている。
尚、液晶ライトバルブ100は、このような動作時に、フレーム610側からの投射光によって表示を行うが、フレーム610のうち画像表示領域10aを縁取る底部から側部にかけての部分は、絞り加工によって一枚の板材における連続する曲面として成形されていることから、フレーム610に空いた隙間から迷光が画像表示領域10a内に進入する事態が未然防止され、良好な表示品質を維持することができる。
(2−4:実装ケースの製造方法)
次に、図10から図24を参照して、実装ケース601、特にフレーム610の製造方法について説明する。図10から図21は夫々、フレーム610の各製造工程を平面図と、断面図とで表している。断面図としては、各平面図の中心を通る縦断面図と横断面図とが夫々、対応する断面と平行に配置されている。これらの断面図については、工程を理解しやすいように、構成要素の省略乃至追加が適宜になされている。また、図22(a)〜(f)は、上記横断面から見た、一連の製造工程を表している。図23(a)〜(f)及び図24(a)〜(e)は、上記縦断面から見た、一連の製造工程を表している。
先ず、図10の工程において、アルミニウム合金等の板材610aの中央部分及び両端の夫々に、レーザ加工機でブランク形状B1及びB2を切り出す。
次に、図11の工程において、絞り加工により、板材610aのブランクB1を中心とした部分に、本体部613の底面を成形すると共に、ブランクB2のブランクB1寄りの端に、ガイド部616’及び接着剤溜り616a’を成形する。即ち、ここで本体部613の底部は、板材610aにおける側部と連続する曲面として成形される。
ガイド部616’と接着剤溜り616a’とは、板材610aに付けられた凹凸の裏表という関係にあり、板材610aを所定の外形形状に切り抜くことで、夫々がガイド部616及び接着剤溜り616aとなる。即ち、フレーム610を、このような構造をとるように設計することにより、ガイド部616及び接着剤溜り616aを効率よく形成することが可能である。尚、ここでの絞り加工では、板材610aは、本体部613の底面やガイド部616’乃至接着剤溜り616a’の形状に対応する金型を用い、絞り加工機で部分的に成形される。
ガイド部616’のように板材610aの外表面に突出する部分を成形すると、その裏面には窪みが生じる。つまり、ここでは、ガイド部616’の裏側に生じる窪みが、接着剤溜り616a’となる。よって、本実施形態においては、ガイド部616と接着剤溜り616aとを、プレス加工において効率よく成形することができる。
次に、図12の工程において、更に絞り加工により、本体部613の底面の四隅に対し“角出し”を行う。“角出し”とは、板材610aのうち、図11の絞り加工で曲げてできた角から丸みを取り、よりはっきりと角を付けることを指す。こうして角を作り込むことで、この部分に液晶パネル500をぴったりと嵌め込むことができるようになる。
次に、図13の工程において、板材610aの周囲の不要な部分をレーザ加工機で切り取り、所定の外形形状の板材610bを切り出す。その際、本体部613の底面の両側には、ガイド部616であり接着剤溜り616aである箇所が残される。更に、ブランクB1を更に拡げるように開口して、窓部615を形成する。その後、必要に応じて板材610bの周縁に手加工で面付けを行う。
次に、図14の工程において、ベンダーで板材610bの曲げ加工を行う。即ち、板材610bのうち、図14の平面図における上端部分及び下端部分、つまり本体部613の周縁に相当する部分が、本体部613の底面に対してほぼ垂直に(図14の縦断面図における矢印の方向に)曲げられる。但し、このとき、下端部分については、取付孔611c及び611dが夫々形成される部位である孔形成部611ca’及び611da’は曲げられるが、羽根部614Fとなる羽根形成部614F’は、曲げられずにそのまま残される。
更に、図15の工程において、もう一回、板材610bの曲げ加工を行う。今度は、図15の平面図において、板材610bの上端部分及び下端部分を、前工程より内側の位置で本体部613の底面に対してほぼ垂直に(図15の縦断面図における矢印の方向に)折り返す。その結果、本体部613の底部から側部下側にかけては、液晶パネル500の外形に対応した段差が成形される。尚、本実施形態においては、羽根形成部614F’が、この工程において折り返された部分、つまり本体部613の周縁に相当する部分より一段低くなることにより、開口614が自動的に形成される。
次に、図16の工程において、平面図における板材610bの上側の所定部分と、下側の孔形成部611ca’及び611da’とを180度折り曲げて、台座部611aa〜611eaを形成する。
次に、図17の工程において、切り起こし加工により、平面図における板材610bの両側縁に、ガイド部616に挟まれた爪部617を成形すると共に、以下のような2種類の半抜き加工(所謂、ハーフパンチ加工)を行う。一つは丸半抜き加工であり、これにより、台座部611ca、611da及び611eaに円形の型を付ける。台座部611ca及び611daの夫々には、取付孔611c及び611dより小さな径の型を付ける。台座部611eaには、取付孔611eより大きな径の型を付ける。もう一つは2段半抜き加工であり、これにより、図17の横断面図に示したように、羽根形成部614F’の両面に直線状の段差614aを形成し、羽根部614Fを成形する。
次に、図18の工程において、金型を用いて板材610bの曲げ加工を行う。即ち、図18の平面図における板材610bの両側縁を、同平面図における上端部分及び下端部分と同様に底部から立ち上がるように(即ち、図18の横断面図における矢印の方向に)折り曲げる。その結果、ここで折り曲げた部分と、2段に折り曲げられた上記上端部分及び下端部分とが、底部を取り囲む側部となって、本体部613が成形される。
次に、図19の工程において、ベンダーで板材610bの曲げ加工を行う。即ち、板材610bのうち、台座部611aaと台座部611ea、台座部611eaと台座部611baの各間に延在する斜面形成部612T’が、本体部613の底面に対してほぼ垂直に(図19の縦断面図における矢印の方向に)曲げられる。
続いて、図20の工程において、斜面形成部612T’に対し、ベンダーで更に曲げ加工を行う。本工程では、斜面形成部612T’は、図20の縦断面図における矢印の方向に概ね45度曲げられる。その結果、斜面形成部612T’の外側の面が、斜面612Tとなる。こうして、台座部611aaと台座部611ea、台座部611eaと台座部611baの各間に、斜面612Tを有する導風部612が形成される。
次に、図21の工程において、台座部611aa〜611eaの各々を貫通するように取付孔611a〜611eを形成する。取付孔611a〜611eは、例えば、台座部611aa〜611eaの各所定位置にレーザ加工機で穿つことで所定寸法の孔を開けて、孔の周縁を面取り加工することで形成される。本実施形態では、180度折り曲げることで板材610bが2重に折り重なってできた台座部611aa〜611eaに、取付孔611a〜611eを形成するようにしたので、ある程度の高さと強度を有するように取付孔611a〜611eを形成できる。
面取り後の取付孔611a〜611eでは、例えば、これらの取付孔にネジを接着剤で固定する際に、取付穴の面取りされた部分とネジとの隙間に接着剤が溜まるために、比較的確実にネジを接着剤止めすることが可能となる。或いは、皿ネジを用いる場合に、ネジと取付孔の形状が合うことで、より確実な固定が可能である。こうして、取付孔611a〜611eを備えたフレーム610が完成する。フレーム610は、上述したように液晶パネル500の冷却や、フック627の引っ掛け、接着剤溜め、取付などの様々な機能を備えるが、本実施形態では、こうした構造をプレス加工のみで成形することができることから、生産性よく製造可能である。
尚、ここでは、取付孔611a〜611eの全てに面取り加工を施すようにしたが、必ずしも全ての穴に施す必要はなく、例えば、取付孔611c、611d及び611eのように、主に使用される取付孔等に対して施すだけでもよい。
図22は、ここまでの一連の工程のうち、横断面から見た主な工程を順に表している。尚、図22の(a)〜(f)は夫々、図10、図11、図12、図13、図17、及び図18の各工程に対応している。
また、図23及び図24は、ここまでの一連の工程のうち、縦断面から見た主な工程を順に表している。図23の(a)〜(f)は夫々、図10〜図15の各工程に対応している。図24の(a)〜(d)は夫々、図16、図19、図20及び図21の各工程に対応している。
カバー部材620は、例えば金属製の薄板を、図4に示した外形形状に切り抜き、窓部625を開口し、フック627を折り曲げることによって製造される。以上のようにして、本実施形態に係る実装ケース601が製造される。
尚、液晶パネル500は、例えば通常の方法によって製造することができる。製造された液晶パネル500は、その外部接続端子102にFPC501が接続され、FPC501を開口614から外部へ導出するようにしてフレーム610の本体部613内に嵌め込まれる。その際、フレーム610の内側には予め接着剤が供給されており、液晶パネル500とフレーム610とは互いに接着される。フレーム610の内側では、接着剤が接着剤溜り616aに滞留することにより、液晶パネル500をフレーム610に対して比較的確実に接着させることができる。
更に、フレーム610の側面の爪部617に、カバー部材620のフック627を引っ掛けることで、フレーム610における液晶パネル500の露出面側にカバー部材620を装着する。装着の際、フック627は、爪部617両脇に設けられたガイド部616の爪部617側の段差によって案内されるために、確実に爪部617に引っ掛けることができる。こうして、本実施形態に係る液晶ライトバルブ100が製造される。
以上説明したように、本実施形態における実装ケース601は、フレーム601が殆ど全ての工程をプレス加工により製造される。しかも、フレーム610は、本体部613の側部に爪部617や、ガイド部616(及び接着剤溜り616a)等の構造が付加された比較的複雑な構成であるにも関わらず、プレス加工での成形を実現しており、ダイカスト成形時よりも安定した製造品質で、低コストに製造可能である。
また、ここでは、本体部613の底部から側部にかけての部分を絞り加工により成形するようにしたので、フレーム610からの光漏れによる表示品質低下を未然に防止することが可能である。
尚、以上の実施形態において説明した実装ケースの製造方法は、本発明に係る実装ケースの製造方法の一具体例であり、例えば、工程順序の入れ替えや、フレーム構造に応じた工程の改変等の変形実施が可能である。
上記実施形態におけるフレーム610は、爪部617、ガイド部616(即ち、接着剤溜り616a)を備えるようにしたが、ガイド部と接着剤溜りとは、必ずしも表裏一体として構成されなくともよく、互いに別々に成形されてもよい。また、ガイド部は、爪部を設ける場合に付属的に成形されるべき構成要素であるが、接着剤溜りは、爪部と関係なく設けることができる。つまり、本発明に係るフレームの構造として、本体部に爪部だけ、或いは接着剤溜りだけが付加されていてもよい。
(取付孔に係る変形例)
次に、図25から図30を参照して、取付孔611a〜611eの変形例について説明する。図25から図29は、変形例に係るフレームの製造工程を順に表している。図30(a)〜(c)は、図29の工程をより詳細に表している。尚、本変形例では、上記実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
上記実施形態では、取付孔611a〜611eを台座部611aa〜611eaに形成する場合について説明したが、図30(c)に示したフレーム610’のように、取付孔をバーリング加工により形成してもよい。その場合は、例えば、図25及び図26に示したように、実施形態と同様に加工した板材610aを、板材610b’のように切り抜く。板材610b’の外形形状は、実施形態の板材610bと比べて、取付孔611a〜611eを設けることになる各部位の寸法が折り曲げない分だけ短くなっている。
更に、図17に対応する工程により、図27に示したように、爪部617、羽根部614Fを成形し、取付孔611c、611d及び611eを設けることになる部位の夫々に、円形の型を付ける。続いて、図28に示したように、底部の両側縁を折り曲げると共にガイド部612を形成する。
その後、図29に示したように、板材610b’の各所定部位にバーリング加工により取付孔611A〜611Eを形成する。具体的には、例えば、先ず図30(a)に示したように、下穴611A’〜611E’をレーザ加工機等で開口する。尚、図30(a)〜(c)には、取付孔611D及び611Eしか示されていないが、他の取付孔に対しても同様の加工を施すものとする。
次いで、図30(b)の工程において、下穴611A’〜611E’ にバーリング加工を行う。即ち、下穴611A’〜611E’の各々を円筒状にストレッチし、フランジングして取付孔611A〜611Eを形成する。この時点で、成形された板材610b’をフレーム610’とみなして製造を終了してもよいが、ここでは更に、図30(c)の工程において、取付孔611A〜611Eに面付けを行う。こうして、図29に示したフレーム610’が完成する。
尚、実施形態と同様、この変形例においても、各工程の順序を入れ替えてよい。例えば、取付孔の形成工程をもっと前に行うようにしてもよく、下穴加工のみ先に実行するようにしてもよい。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置用実装ケース及びその製造方法、電気光学装置、並びに電子機器もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。尚、上記実施形態では、一例として液晶パネルを備えた液晶ライトバルブについて説明したが、本発明の電気光学装置は、電気光学パネルとして、液晶パネル以外にエレクトロルミネッセンス装置、電気泳動装置、電子放出素子を利用した表示装置(Field Emission Display及びSurface-Conduction Electron-Emitter Display)等の各種の表示装置を備えていてよい。また、そのような電気光学装置を備える本発明の電子機器は、投射型だけでなく反射型のプロジェクタであってよく、その他にもテレビジョン受像機、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種の電子機器を実現できる。
10a…画像表示領域、10…TFTアレイ基板、20…対向基板、500…液晶パネル、501…FPC、601…実装ケース、610…フレーム、611a〜611e…取付孔、612…導風部、612T…斜面、613…本体部、614…開口、614F…羽根部、615…窓部、616…ガイド部、617…爪部、620…カバー部材、625…窓部、627…フック、100(100R、100G、100B)…液晶ライトバルブ、1100…液晶プロジェクタ、1102…ランプユニット、1300…シロッコファン。