JP2006169704A - 黒鉛繊維束の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ホウ素の黒鉛化触媒作用をより低い温度で効果的に発現させ、毛羽が少なく品質の優れた黒鉛繊維束を得ることができる製造方法を提供する。
【解決手段】 ホウ素を含有する炭素繊維束を、窒素分圧P(気圧)が下記式を満足する雰囲気中1800℃以上の最高温度T(℃)で緊張下に加熱処理する、黒鉛繊維束の製造方法である。
−1.54×10-6×T2+10.9×10-3×T−17.5≧log(P)
ここで、PおよびTは、それぞれ窒素分圧(気圧)および最高温度(℃)である。
【選択図】 なし
【解決手段】 ホウ素を含有する炭素繊維束を、窒素分圧P(気圧)が下記式を満足する雰囲気中1800℃以上の最高温度T(℃)で緊張下に加熱処理する、黒鉛繊維束の製造方法である。
−1.54×10-6×T2+10.9×10-3×T−17.5≧log(P)
ここで、PおよびTは、それぞれ窒素分圧(気圧)および最高温度(℃)である。
【選択図】 なし
Description
本発明は、毛羽が少なく品質の優れた黒鉛繊維束の製造方法に関する。
炭素繊維は比強度、比弾性に優れているためスポーツ、レジャー用品から宇宙航空用途まで巾広く利用されつつある。特に2000℃以上の高温で焼成される黒鉛繊維は弾性率が高く、それだけ薄肉軽量化できるため、その重要性は大きい。しかしながら高い弾性率を得るために黒鉛化温度を高くすると、炉の消耗による炉の寿命の低下が起こるので、可能な限り低い温度で黒鉛化することが要望されている。
黒鉛化温度の高温化以外の方法で弾性率を向上させる方法は種々検討されており、例えば黒鉛化工程で伸長処理することによって弾性率を向上させることが特許文献1に記載されている。しかし、通常黒鉛化工程で伸長するために繊維束に高張力を付与すると、毛羽が発生するため、品質的に満足できないものとなる。
また、弾性率を向上させる他の方法として、ホウ素処理によって得られる黒鉛繊維の黒鉛構造を発達させる方法(ホウ素の黒鉛化触媒作用)が知られている(特許文献2〜6)。
しかし、これらの方法では、ホウ素の黒鉛化触媒作用をより低い温度で発現させるための黒鉛化処理の際の雰囲気についての工夫はほとんどなされていなかった。
しかし、これらの方法では、ホウ素の黒鉛化触媒作用をより低い温度で発現させるための黒鉛化処理の際の雰囲気についての工夫はほとんどなされていなかった。
本発明の目的は、ホウ素の黒鉛化触媒作用をより低い温度で効果的に発現させ、毛羽が少なく品質の優れた黒鉛繊維束を得ることができる製造方法を提供することにある。
本発明の要旨は、ホウ素を含有する炭素繊維束を、窒素分圧P(気圧)が下記式を満足する雰囲気中1800℃以上の最高温度T(℃)で緊張下に加熱処理する、黒鉛繊維束の製造方法である。
−1.54×10-6×T2+10.9×10-3×T−17.5≧log(P)
ここで、PおよびTは、それぞれ窒素分圧(気圧)および最高温度(℃)である。
−1.54×10-6×T2+10.9×10-3×T−17.5≧log(P)
ここで、PおよびTは、それぞれ窒素分圧(気圧)および最高温度(℃)である。
本発明によれば、ホウ素の黒鉛化触媒作用をより低い温度で効果的に発現させ、毛羽が少なく品質の優れた黒鉛繊維束を得ることができる製造方法を提供することができる。
以下に本発明を詳細に説明する。
炭素材料を黒鉛化する際、ホウ素が存在していると、より黒鉛化が促進されるホウ素の黒鉛化触媒作用は一般的に良く知られている。しかし、その作用の発現は、概して2400℃以上である。
炭素材料を黒鉛化する際、ホウ素が存在していると、より黒鉛化が促進されるホウ素の黒鉛化触媒作用は一般的に良く知られている。しかし、その作用の発現は、概して2400℃以上である。
不活性雰囲気中においては、低温では窒化ホウ素が安定であり、高温では炭化ホウ素が安定になる。加熱雰囲気に窒素が含まれていると安定な窒化ホウ素が生成し、その窒化ホウ素が炭化ホウ素に変化して、はじめて黒鉛化触媒作用が発現すると考えられる。
窒化ホウ素から炭化ホウ素への変化が起こる温度は、そのときの窒素分圧が関係しており、窒素分圧を下げることにより、その温度を低くすることが本発明の目的である。
本発明におけるホウ素を含有する炭素繊維束としては、ホウ素を含有していれば、ポリアクリロニトリル系炭素繊維束、ピッチ系炭素繊維束、レーヨン系炭素繊維束、フェノール樹脂系炭素繊維束等の公知の炭素繊維束を用いることができ、特に限定されるものではない。
ホウ素を含有していない炭素繊維束であっても、黒鉛化処理前にホウ素又はホウ素化合物をその炭素繊維束に付着させることにより、ホウ素を含有する炭素繊維束とすることができる。しかし、品質及び物性発現性の観点から以下に詳述するポリアクリロニトリル系炭素繊維束が好適である。
本発明で用いる炭素繊維束の原料となる、アクリロニトリル系重合体としては、90モル%以上のアクリロニトリル単位と10モル%以下の共重合可能なビニル系モノマー単位、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩および低級アルキルエステル類、アクリルアミドおよびその誘導体、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸およびそれらの塩類またはアルキルエステル類などの共重合体を挙げることができる。共重合成分単位を10モル%を以下とすることにより、後述する耐炎化工程での単糸間接着が抑制され好ましい。
アクリロニトリル系重合体の重合法については、従来公知の溶液重合、懸濁重合、乳化重合などを適用することができる。アクリル系重合体溶液に使用される溶媒は、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、塩化亜鉛水溶液、硝酸等を使用することができる。
アクリロニトリル系重合体は、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法など公知の紡糸用法でアクリル繊維とすることができる。各工程を以下で詳しく述べる。凝固浴で得られた凝固糸は従来公知の水洗、浴延伸、工程油剤付与、乾燥緻密化、スチーム延伸などを行うことにより所定の繊度を有するアクリル繊維束とする。工程油剤には従来公知のシリコーン系油剤を用いることができる。アクリル繊維束にホウ素化合物を付与する方法としては、工程油剤と共に付与する方法が好適である。ホウ素化合物としては、ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸及びそれらのアンモニウム塩、三酸化二ホウ素、ホウ酸エステル類から選ばれた一種類以上であること好適である。
かかるアクリル繊維束の耐炎化条件としては、酸化性雰囲気中200〜300℃で緊張下、密度が好ましくは1.25g/cm3以上、より好ましくは1.32g/cm3以上になるまで加熱するのが良い。耐炎化を十分とすることにより、前炭素化する際に単糸間接着の発生を抑制できる。雰囲気については、空気、酸素、二酸化窒素など公知の酸化性雰囲気を採用でき、経済性の面から空気が好ましい。
かかる耐炎化繊維束の前炭素化条件としては、最高温度が500〜800℃で緊張下、300〜500℃の温度領域において500℃/分以下、好ましくは300℃/分以下の昇温速度で加熱することが炭素繊維の機械的特性を向上させるために有効である。雰囲気については、窒素、アルゴン、ヘリウム、など公知の不活性雰囲気を採用でき、経済性の面から窒素が望ましい。
かかる前炭素化繊維束の炭素化条件としては、最高温度が1200〜2000℃で緊張下、1000〜1200℃の温度領域において500℃/分以下、好ましくは300℃/分以下の昇温速度で加熱することが炭素繊維の機械的特性を向上させるために有効である。雰囲気については、窒素、アルゴン、ヘリウム、など公知の不活性雰囲気を採用でき、経済性の面から窒素が望ましい。
こうして得られたホウ素を含有する炭素繊維束を黒鉛化処理することになるが、先にも述べたように、ホウ素を含有する炭素繊維束としては、前述した方法によるものに限定されない。
黒鉛化処理する前の炭素繊維束のホウ素含有量としては、0.01〜5重量%が好ましく、0.1〜3重量%がより好ましい。ホウ素の含有量が0.01重量%以上とすることにより、得られる黒鉛繊維束の弾性率を十分に向上でき、5重量%以下であれば、黒鉛化工程でホウ素化合物が黒鉛化炉壁に堆積し操業性の低下をもたらすこともないので、毛羽や糸切れが減少する。
ホウ素含有量の評価はについては次の方法に拠った。
(ホウ素含有量)
ICP発光分光分析法で測定した。試料の調整方法は次の通りである。測定する炭素繊維約0.1gを精秤してから、700℃マッフル炉で灰化する。さらに、炭酸ナトリウム1.0gで加熱溶融する。溶融物を蒸留水に溶解して、ICP発光分光分析に供した。実施例においては、サーモエレクトロン社製のIRIS AP-ADVANTAGEを用いた。
(ホウ素含有量)
ICP発光分光分析法で測定した。試料の調整方法は次の通りである。測定する炭素繊維約0.1gを精秤してから、700℃マッフル炉で灰化する。さらに、炭酸ナトリウム1.0gで加熱溶融する。溶融物を蒸留水に溶解して、ICP発光分光分析に供した。実施例においては、サーモエレクトロン社製のIRIS AP-ADVANTAGEを用いた。
本発明における黒鉛化処理条件としては、窒素分圧Pが下記式を満足する雰囲気中1800℃以上で緊張下に加熱処理することである。
−1.54×10-6×T2+10.9×10-3×T−17.5≧log(P)
ここで、P:窒素分圧(気圧)、T:最高温度(℃)である。
−1.54×10-6×T2+10.9×10-3×T−17.5≧log(P)
ここで、P:窒素分圧(気圧)、T:最高温度(℃)である。
一般的に、1000℃以上では化学熱力学的に平衡状態にあると考えられ、窒化ホウ素及び炭化ホウ素の安定性は、NIST-JANAF Thermochemical Tables等のデータを元に化学熱力学的平衡状態の計算から求めることができる(図1の相図参照)。
例えば、窒素分圧が1気圧では、2470℃以下では窒化ホウ素が安定であり、2470℃以上では炭化ホウ素が安定となる。窒素分圧が0.1気圧の雰囲気中では、2180℃以下では窒化ホウ素が安定であり、2180℃以上では炭化ホウ素が安定となる。窒素分圧が0.01気圧の雰囲気中では、1950℃以下では窒化ホウ素が安定であり、1950℃以上では炭化ホウ素が安定となる。窒素分圧が0.001気圧の雰囲気中では、1760℃以下では窒化ホウ素が安定であり、1760℃以上では炭化ホウ素が安定となる。窒素分圧が0.0001気圧の雰囲気中では、1610℃以下では窒化ホウ素が安定であり、1610℃以上では炭化ホウ素が安定となる。
黒鉛化処理雰囲気の窒素分圧としては、窒素分圧Pが上式を満足していることが必要であり、さらに、0.1気圧以下であることが好ましい。窒素分圧Pが上式を満足している場合には、炭化ホウ素が安定となり、ホウ素の黒鉛化触媒作用を発現させることができ、処理された黒鉛繊維束の弾性率向上の効果が大きくなる。また、窒素分圧が0.1気圧以下である場合は、ホウ素の黒鉛化触媒作用をより低い温度で発現させることができ、処理された黒鉛繊維束の弾性率向上の効果が大きくなるため、より好ましい。
黒鉛化処理温度としては、1800℃以上が好ましい。1800℃未満であれば、処理された黒鉛繊維束の弾性率向上の効果が小さくなる。
黒鉛化処理の際の炭素繊維束の張力としては、1000mg/dTex以下であることが好ましい。炭素繊維束の張力が1000mg/dTex以下とすることにより、黒鉛繊維束の毛羽の発生が抑制され良好な品質の黒鉛繊維束が得られる。
こうして得られた黒鉛繊維束は、従来公知の電解液中で電解酸化処理を施す、また、気相もしくは液相で酸化処理を施すことによって、複合材料における黒鉛繊維とマトリックス樹脂との親和性や接着性をさらに向上させることができる。
さらに、必要に応じて従来公知の方法によりサイジング剤を付与することができる。
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
(樹脂含浸ストランド特性)
ストランド強度及びストランド弾性率は、JIS-R-7601に記載された試験法に準拠して測定した。
ストランド強度及びストランド弾性率は、JIS-R-7601に記載された試験法に準拠して測定した。
(毛羽)
1.0m/minで走行中の繊維束を目視で10分間、毛羽の数を観察した。毛羽の数が1個以下であるものを◎、2〜5個であるものを○、6〜10個であるものを△、11個以上であるものを×と判定した。
1.0m/minで走行中の繊維束を目視で10分間、毛羽の数を観察した。毛羽の数が1個以下であるものを◎、2〜5個であるものを○、6〜10個であるものを△、11個以上であるものを×と判定した。
実施例1・2、比較例1・2については、弾性率が360±4GPaになるように黒鉛化処理温度を変更した。また、(炉の寿命予測)としては、実施例2の黒鉛化処理温度1950℃を基準として○とし、1950℃より高いものを×、1950℃より低いものを◎とした。
(実施例1)
アクリロニトリル単位99モル%とメタクリル酸単位1モル%からなる共重合体を用いて、濃度が22重量%のジメチルホルムアミド(DMF)溶液を作成した。この溶液を孔径150μm、ホール数3000の紡糸口金を通して一旦空気中に吐出し、約3mmの空間を走行させた後、温度15℃、濃度79%のDMF水溶液中で凝固させた。この凝固繊維束2本を合糸して、水洗後、浴延伸し、アミノ変性シリコーン油剤及びホウ酸を付与した後、さらに加圧スチーム中で延伸して単繊維繊度0.8dTex、トータル繊度4800dTexのアクリル繊維束を得た。
アクリロニトリル単位99モル%とメタクリル酸単位1モル%からなる共重合体を用いて、濃度が22重量%のジメチルホルムアミド(DMF)溶液を作成した。この溶液を孔径150μm、ホール数3000の紡糸口金を通して一旦空気中に吐出し、約3mmの空間を走行させた後、温度15℃、濃度79%のDMF水溶液中で凝固させた。この凝固繊維束2本を合糸して、水洗後、浴延伸し、アミノ変性シリコーン油剤及びホウ酸を付与した後、さらに加圧スチーム中で延伸して単繊維繊度0.8dTex、トータル繊度4800dTexのアクリル繊維束を得た。
得られたアクリル繊維束を空気中240〜280℃で緊張下に加熱し密度1.35g/cm3の耐炎化繊維束に転換し、さらに、窒素雰囲気中700℃で緊張下に加熱し前炭素化繊維束とした。この前炭素化処理での300〜500℃での昇温速度は200℃/分であった。
得られた前炭素化繊維束を窒素雰囲気中1400℃で緊張下に加熱し炭素繊維束Aとした。この炭素化処理での1000〜1200℃での昇温速度は400℃/分であった。得られた炭素繊維束Aのトータル繊度は2250dTexであり、ホウ素含有率は1.0重量%であった。
この炭素繊維束Aをアルゴン雰囲気中1900℃で緊張下に加熱し黒鉛繊維束とした。このときの炭素繊維束Aの張力は600mg/dTexであった。この黒鉛化処理は1気圧下で行い、使用したアルゴン中の窒素の体積含有率が10体積ppm未満であったので、窒素分圧は、0.00001気圧未満である。この黒鉛化処理の1800℃以上での時間は、1分であった。このときの毛羽の評価は、◎であった。また、炉の寿命予測は、◎であった。
得られた黒鉛繊維束を表面処理後、サイジング剤を付与し、トータル繊度2200dTexの黒鉛繊維束とした。この炭素繊維束の樹脂含浸ストランド特性を測定すると弾性率362GPa、強度4.9GPaであった。
(実施例2)
実施例1得た炭素繊維束Aを窒素含有アルゴン雰囲気中1950℃で緊張下に加熱し黒鉛繊維束とした。このときの炭素繊維束の張力は600mg/dTexであった。この黒鉛化処理は1気圧下で行い、使用した窒素含有アルゴン中の窒素の体積含有率が1体積%であったので、窒素分圧は、0.01気圧である。この黒鉛化処理の1800℃以上での時間は、1分であった。このときの毛羽の評価は、◎であった。また、炉の寿命予測は、○である。
実施例1得た炭素繊維束Aを窒素含有アルゴン雰囲気中1950℃で緊張下に加熱し黒鉛繊維束とした。このときの炭素繊維束の張力は600mg/dTexであった。この黒鉛化処理は1気圧下で行い、使用した窒素含有アルゴン中の窒素の体積含有率が1体積%であったので、窒素分圧は、0.01気圧である。この黒鉛化処理の1800℃以上での時間は、1分であった。このときの毛羽の評価は、◎であった。また、炉の寿命予測は、○である。
得られた黒鉛繊維束を表面処理後、サイジング剤を付与し、トータル繊度2200dTexの黒鉛繊維束とした。この炭素繊維束の樹脂含浸ストランド特性を測定すると弾性率359GPa、強度4.8GPaであった。
(比較例1)
実施例1で得た炭素繊維束Aを窒素雰囲気中2100℃で緊張下に加熱し黒鉛繊維束とした。このときの炭素繊維束の張力は600mg/dTexであった。この黒鉛化処理は1気圧下で行ったので、窒素分圧は、1.0気圧である。この黒鉛化処理の1800℃以上での時間は、1分であった。このときの毛羽の評価は、◎であった。また、炉の寿命予測は、×であった。
実施例1で得た炭素繊維束Aを窒素雰囲気中2100℃で緊張下に加熱し黒鉛繊維束とした。このときの炭素繊維束の張力は600mg/dTexであった。この黒鉛化処理は1気圧下で行ったので、窒素分圧は、1.0気圧である。この黒鉛化処理の1800℃以上での時間は、1分であった。このときの毛羽の評価は、◎であった。また、炉の寿命予測は、×であった。
得られた黒鉛繊維束を表面処理後、サイジング剤を付与し、トータル繊度2200dTexの黒鉛繊維束とした。この炭素繊維束の樹脂含浸ストランド特性を測定すると弾性率359GPa、強度4.6GPaであった。
この比較例1を実施例1及び実施例2と比較すると毛羽の評価は同等であるが、炉の寿命予測が劣っており、炉の消耗による炉の寿命の低下が起こると考えられる。
(比較例2)
実施例1で得た炭素繊維束Aを窒素雰囲気中1950℃で緊張下に加熱し黒鉛繊維束とした。このときの炭素繊維束の張力は1200mg/dTexであった。この黒鉛化処理は1気圧下で行ったので、窒素分圧は、1.0気圧である。この黒鉛化処理の1800℃以上での時間は、1分であった。このときの毛羽の評価は、×であった。また、炉の寿命予測は、○であった。
実施例1で得た炭素繊維束Aを窒素雰囲気中1950℃で緊張下に加熱し黒鉛繊維束とした。このときの炭素繊維束の張力は1200mg/dTexであった。この黒鉛化処理は1気圧下で行ったので、窒素分圧は、1.0気圧である。この黒鉛化処理の1800℃以上での時間は、1分であった。このときの毛羽の評価は、×であった。また、炉の寿命予測は、○であった。
得られた黒鉛繊維束を表面処理後、サイジング剤を付与し、トータル繊度2180dTexの黒鉛繊維束とした。この炭素繊維束の樹脂含浸ストランド特性を測定すると弾性率359GPa、強度4.4GPaであった。
この比較例2を実施例2と比較すると炉の寿命予測は同等であるが、毛羽の評価が劣っており、品質面で満足できるものではない。
実施例3・4、比較例3については、弾性率が420±4GPaになるように黒鉛化処理温度を変更した。また、(炉の寿命予測)としては、実施例4の黒鉛化処理温度2400℃を基準として○とし、2400℃より高いものを×、2400℃より低いものを◎とした。
(実施例3)
実施例1で得た炭素繊維束Aをアルゴン雰囲気中2300℃で緊張下に加熱し黒鉛繊維束とした。このときの炭素繊維束の張力は600mg/dTexであった。この黒鉛化処理は1気圧下で行い、使用したアルゴン中の窒素の体積含有率が10体積ppm未満であったので、窒素分圧は、0.00001気圧未満である。この黒鉛化処理の2000℃以上での時間は、1分であった。このときの毛羽の評価は、○であった。また、炉の寿命予測は、◎であった。
実施例1で得た炭素繊維束Aをアルゴン雰囲気中2300℃で緊張下に加熱し黒鉛繊維束とした。このときの炭素繊維束の張力は600mg/dTexであった。この黒鉛化処理は1気圧下で行い、使用したアルゴン中の窒素の体積含有率が10体積ppm未満であったので、窒素分圧は、0.00001気圧未満である。この黒鉛化処理の2000℃以上での時間は、1分であった。このときの毛羽の評価は、○であった。また、炉の寿命予測は、◎であった。
得られた黒鉛繊維束を表面処理後、サイジング剤を付与し、トータル繊度2150dTexの黒鉛繊維束とした。この炭素繊維束の樹脂含浸ストランド特性を測定すると弾性率422GPa、強度4.6GPaであった。
(実施例4)
実施例1で得た炭素繊維束Aを窒素含有アルゴン雰囲気中2400℃で緊張下に加熱し黒鉛繊維束とした。このときの炭素繊維束の張力は600mg/dTexであった。この黒鉛化処理は1気圧下で行い、使用した窒素含有アルゴン中の窒素の体積含有率が1体積%であったので、窒素分圧は、0.01気圧である。この黒鉛化処理の2000℃以上での時間は、1分であった。このときの毛羽の評価は、○であった。また、炉の寿命予測は、○である。
実施例1で得た炭素繊維束Aを窒素含有アルゴン雰囲気中2400℃で緊張下に加熱し黒鉛繊維束とした。このときの炭素繊維束の張力は600mg/dTexであった。この黒鉛化処理は1気圧下で行い、使用した窒素含有アルゴン中の窒素の体積含有率が1体積%であったので、窒素分圧は、0.01気圧である。この黒鉛化処理の2000℃以上での時間は、1分であった。このときの毛羽の評価は、○であった。また、炉の寿命予測は、○である。
得られた黒鉛繊維束を表面処理後、サイジング剤を付与し、トータル繊度2150dTexの黒鉛繊維束とした。この炭素繊維束の樹脂含浸ストランド特性を測定すると弾性率420GPa、強度4.6GPaであった。
(比較例3)
実施例1で用いた凝固繊維束2本を合糸して、水洗後、浴延伸し、アミノ変性シリコーン油剤のみを付与した後、さらに加圧スチーム中で延伸して単繊維繊度0.8dTex、トータル繊度4800dTexのアクリル繊維束を得た。
実施例1で用いた凝固繊維束2本を合糸して、水洗後、浴延伸し、アミノ変性シリコーン油剤のみを付与した後、さらに加圧スチーム中で延伸して単繊維繊度0.8dTex、トータル繊度4800dTexのアクリル繊維束を得た。
得られたアクリル繊維束を空気中240〜280℃で緊張下に加熱し密度1.35g/cm3の耐炎化繊維束に転換し、さらに、窒素雰囲気中700℃で緊張下に加熱し前炭素化繊維束とした。この前炭素化処理での300〜500℃での昇温速度は200℃/分であった。
得られた前炭素化繊維束を窒素雰囲気中1400℃で緊張下に加熱し炭素繊維束とした。この炭素化処理での1000〜1200℃での昇温速度は400℃/分であった。得られた炭素繊維束のトータル繊度は2250dTexであり、ホウ素含有率は0.001重量%未満であった。
この炭素繊維束をアルゴン雰囲気中2550℃で緊張下に加熱し黒鉛繊維束とした。このときの炭素繊維束の張力は600mg/dTexであった。この黒鉛化処理は1気圧下で行い、使用したアルゴン中の窒素の体積含有率が10体積ppm未満であったので、窒素分圧は、0.00001気圧未満である。この黒鉛化処理の2000℃以上での時間は、1分であった。このときの毛羽の評価は、○であった。また、炉の寿命予測は、×であった。
得られた黒鉛繊維束を表面処理後、サイジング剤を付与し、トータル繊度2150dTexの黒鉛繊維束とした。この炭素繊維束の樹脂含浸ストランド特性を測定すると弾性率417GPa、強度4.5GPaであった。
この比較例3を実施例3及び実施例4と比較すると毛羽の評価は同等であるが、炉の寿命予測が劣っており、炉の消耗による炉の寿命の低下が起こると考えられる。
Claims (8)
- ホウ素を含有する炭素繊維束を、窒素分圧P(気圧)が下記式を満足する雰囲気中1800℃以上の最高温度T(℃)で緊張下に加熱処理する、黒鉛繊維束の製造方法。
−1.54×10-6×T2+10.9×10-3×T−17.5≧log(P)
ここで、PおよびTは、それぞれ窒素分圧(気圧)および最高温度(℃)である。 - ホウ素を含有する炭素繊維束がホウ素を0.01〜5重量%含有する炭素繊維束である、請求項1記載の黒鉛繊維束の製造方法。
- 緊張下に加熱処理する際の張力が、ホウ素を含有する炭素繊維束1dtexあたり1000mg以下である、請求項1または2記載の黒鉛繊維束の製造方法。
- 窒素分圧Pが0.1気圧以下である、請求項1〜3のいずれか1項記載の黒鉛繊維束の製造方法。
- ホウ素を含有する炭素繊維束がホウ素化合物含有アクリル繊維束を酸化性雰囲気中200〜300℃で加熱し、さらに不活性雰囲気中1200〜2000℃で加熱し得られたホウ素を含有する炭素繊維束ある、請求項1〜4のいずれか1項記載の黒鉛繊維束の製造方法。
- 300〜500℃の温度領域において昇温速度を500℃/分以下とする、請求項1〜5のいずれか1項記載の黒鉛繊維束の製造方法。
- 1000〜1200℃の温度領域において昇温速度が500℃/分以下とする、請求項1〜6のいずれか1項記載の黒鉛繊維束の製造方法。
- ホウ素を含有する炭素繊維束中のホウ素がホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸及びそれらのアンモニウム塩、三酸化二ホウ素、ホウ酸エステル類からなる群から選ばれる一種類以上のホウ素化合物による、請求項1〜7のいずれか1項記載の黒鉛繊維束の製造方法。
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JP2004367834A JP2006169704A (ja) | 2004-12-20 | 2004-12-20 | 黒鉛繊維束の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2006169704A true JP2006169704A (ja) | 2006-06-29 |
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JP (1) | JP2006169704A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012082565A (ja) * | 2010-09-13 | 2012-04-26 | Japan Exlan Co Ltd | 発色性に優れた制電性アクリル繊維およびその製造方法 |
-
2004
- 2004-12-20 JP JP2004367834A patent/JP2006169704A/ja active Pending
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JP2012082565A (ja) * | 2010-09-13 | 2012-04-26 | Japan Exlan Co Ltd | 発色性に優れた制電性アクリル繊維およびその製造方法 |
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