JP2006169691A - 易分割性繊維束及び微細繊維、ならびにこれらの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来のポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂において良好であった耐熱性・耐薬品性・難燃性等の諸性能を殆ど低下させることなくその繊維直径が従来に比して著しく微細なるポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂を主成分とする微細繊維及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 ポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂若しくはその前駆体と、少なくとも1種類以上の繊維形成性高分子化合物と、これらを溶解する有機溶剤とを主成分とする紡糸原液を得る工程と、細孔を通して吐出した紡糸原液を固化させて紡糸する工程によって易分割性繊維束を得る。この易分割性繊維束中の繊維形成性高分子のみを溶解除去して微細繊維を得る。
【選択図】 なし

Description

本発明はポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂を主成分とする微細繊維とその製造方法、並びにこの微細繊維を得るための易分割性繊維束とその製造方法に関する。
近年、各種材料のうち軽量で加工性に優れ、腐食しないことからプラスチックといわれる有機系材料の活発な開発が進んできた。プラスチックは、産業分野において技術の進歩と経済活動の発展に大きな役割を果たすとともに、その用途は自動車やコンピュータ、家電などをはじめ我々の日常生活のあらゆる分野に広まってきた。
プラスチックの機能は、生産量の増加と平行して高度化しており、耐熱性・耐衝撃性・耐磨耗性などを高めたエンジニアリングプラスチック(エンプラ)や、さらに現在では、エンプラの機能を凌駕するスーパーエンプラと呼ばれるものまで登場している。
このプラスチックの優れた特徴を活かしたいわゆる合成繊維についても大きな発展が見られる。これは天然繊維にはない高強度や高耐熱性、耐腐食性などが繊維の分野でも重要視されてきたためである。プラスチックは、繊維状とすることにより、布、紙、フェルト、不織布等の各種形態への加工が容易となる。
スーパーエンプラの1つであるポリイミド樹脂は、高温・高放射線下に長期間耐える軽量な有機材料として、1960年代に開発された。当然の如くポリイミド樹脂についても、その優れた特性を繊維として各種用途で活用しようとする試みが数多くなされてきた。具体例としては、例えばポリ(4,4´−オキシジフェニレンピロメリットイミド)の繊維化について紡糸・延伸後に高温加熱処理を行い脱水閉環させる方法が提案されている。また、ポリイミドを溶剤又は可塑剤に溶解又は分散し、これを紡糸してフィラメントとする方法や、また、熱可塑性ポリイミドを原料として溶融紡糸する方法も知られている。
しかしながら、ポリイミドは融点が高く、溶融粘度も高く、さらに、メルトフラクチャーが発生しやすいこと等により所望のフィラメントを紡糸することは困難であった。そのため、例えば特許文献1に記載されているように、粘度と紡糸温度更には溶融状態での滞留時間や、口金から集束位置までの距離までも厳しく規定して溶融紡糸することにより、製造安定化を図ることが試みられている。
このポリイミド樹脂の加工性を改良するため、主鎖にアミド結合を導入したのがポリアミドイミド樹脂で、1970年代に初めて開発・上市された。ポリアミドイミド樹脂は、250℃という厳しい高温環境下でも、連続使用に耐え、高い耐クリ−プ性・疲労特性を示す。電気特性としては、広い温度・周波数領域にわたって、安定した特性を示す。更に高温下においても摺動特性に優れるうえ、脂肪族および芳香族炭化水素、塩素化およびフッ素化炭化水素、及びほとんどの酸に対する優れた耐薬品性を有し、また線膨張係数が小さく、寸法安定性に優れ高精度な機械加工が可能であり、放射線安定性に優れている。そのため、ポリイミド樹脂と共に、あらゆる用途で活用されている。
ポリアミドイミド樹脂の繊維化の具体例としては、例えば特許文献2に記載されているように、良溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン中にポリアミドイミドポリマーを溶解し、これを水あるいはN−メチル−2−ピロリドン水溶液中に吐出して湿式紡糸する方法が知られている。
一方、一般の繊維素材分野では、繊維径の細い、いわゆる微細繊維が、繊維間が緻密に詰まりながらも柔軟であることから、各種フィルター、特に薄い高性能フィルターや人工皮革あるいはクリーニング用布帛等の各種用途に用いられている。
当然合成繊維の分野でも、プラスチックの優れた特徴を活かした微細繊維が求められている。特に表面積の大きさが重要となる用途において、微細繊維化の要請が高い。
合成樹脂製の微細繊維を得る方法としては、複数の成分からなりそれぞれが非相溶の紡糸原液を紡糸し、叩解あるいは他の方法で分割微細化する方法(例えば、特許文献3)、芯と鞘が別々のポリマーからなるいわゆるコンジュゲート繊維を紡糸し、後に鞘成分を何らかの方法で除去することで芯成分の微細繊維を得る方法(例えば、特許文献4)、複数の成分からなりそれぞれが非相溶で海島型に相分離した紡糸原液を紡糸し、その後海成分を除去して微細繊維を得る方法(例えば、特許文献5)などが知られている。
特開2000−129535号公報 特開平8−218223号公報 特開平9−302525号公報 特開2003−253555号公報 特開平8−218223号公報
ところが、特許文献1に記載されているように、加工性を考慮した条件で紡糸すると、ポリイミド樹脂本姓の性能が損なわれた繊維しか得ることができなかった。また、特許文献2に記載されているように、単一成分からなるポリアミドイミド樹脂を紡糸しても、最初から細くかつ均一な径の繊維を紡糸することは困難であった。また、紡糸後に延伸して、均一かつ充分な細さとすることにも技術的限界があった。そのため、細繊化と均一化の両立を考慮すると、特許文献2に記載の方法によって得られる繊維径は高々0.3デニール(比重1.4のポリアミドイミドの場合、5.5μmに相当)までであった。
また、特許文献3のように、叩解という物理的応力を利用する場合、叩解終了までに少なくとも十数分の時間を要したり、ビーター、リファイナー、ミキサーあるいは高圧水流を用いたりといった設備的な問題も内包していた。
更には長時間叩解を加えても基本的には完全分離した微細繊維を一本単位で回収することは不可能に近かった。これは、紡糸後に高度の延伸を加え海成分の樹脂の分子配列を一方方向に整えることにより繊維中の強度に異方性を発現させた状態、すなわち繊維軸方向に裂け易くした状態で物理的に引き裂くからである。
また、叩解により微細繊維化する方法は延伸により容易に分子鎖の配列を変えられるポリマーには適用可能であるが、ポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂にも適用可能かどうかは不明であり、少なくとも従来これらの樹脂に対して試みられたことはなかった。
また、特許文献4のように、コンジュゲート繊維を利用する方法も、必ずしも総てのポリマーに適用できるわけではなく、また、適用できても、鞘成分が充分に除去できず、微細繊維の品質を損ねる場合があった。少なくとも従来ポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂に対して、コンジュゲート繊維を利用する方法が試みられたことはなかった。また、これによって得られる繊維径は高々1μm程度までであった。
また、特許文献5のように、海島型に相分離した紡糸原液を紡糸し、その後海成分を除去して微細繊維を得る方法も、適用できるポリマーが限定されており、適用できても、微細繊維の品質を損ねる場合があった。少なくとも従来ポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂に対して、この方法が試みられたことはなかった。
本発明は上記事実に鑑み、本発明者らが鋭意研究を進め、完成させたものである。すなわち、その課題とするところは従来のポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂において良好であった耐熱性・耐薬品性・難燃性等の諸性能を殆ど低下させることなくその繊維直径が従来に比して著しく微細なポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂を主成分とする微細繊維及びその製造方法を提供することにある。並びにこの微細繊維を得るための易分割性繊維束とその製造方法を提供することにある。
本発明は、以下の態様を含む。
[1]ポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂若しくはその前駆体と、少なくとも1種類以上の繊維形成性高分子化合物と、これらを溶解する有機溶剤とを主成分とする紡糸原液を得る工程と、細孔を通して吐出した紡糸原液を固化させて紡糸する工程とを有することを特徴とする易分割性繊維束の製造方法。
[2]紡糸工程が、細孔を通して吐出した紡糸原液を、繊維形成性高分子化合物を固化する凝固液中で固化させて紡糸する工程である[1]に記載の易分割性繊維束の製造方法。
[3]紡糸原液を、細孔から凝固液中に直接吐出する[1]又は[2]に記載の易分割性繊維束の製造方法。
[4]ポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂若しくはその前駆体と、繊維形成性高分子化合物との質量比が、8:2〜2:8の範囲である[1]から[3]の何れかに記載の易分割性繊維束の製造方法。
[5]繊維形成性高分子化合物が、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン及びこれらの共重合体の一種以上である[1]から[4]の何れかに記載の易分割性繊維束の製造方法。
[6][1]から[5]の何れかに記載の易分割性繊維束の製造方法により易分割性繊維束を得た後、該易分割性繊維束中の繊維形成性高分子のみを溶解除去することを特徴とする微細繊維の製造方法。
[7]ポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂若しくはその前駆体と、少なくとも1種類以上の繊維形成性高分子化合物とを8:2〜2:8の範囲で含み、前記ポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂若しくはその前駆体が軸方向に多数延在していることを特徴とする易分割性繊維束。
[8]直径が0.01μm以上、2μm未満、繊維長が0.01mm以上であり、[6]に記載の微細繊維の製造方法により製造されたことを特徴とする微細繊維。
本発明の易分割性繊維束の製造方法によれば、繊維直径が著しく小さく、かつ耐熱性・耐薬品性・難燃性等の諸性能も維持されたポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂を主成分とする微細繊維を得ることが可能な易分割性繊維束を製造することができる。
また、本発明の易分割性繊維束によれば、これを分割することにより、繊維直径が著しく小さく、かつ耐熱性・耐薬品性・難燃性等の諸性能も維持されたポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂を主成分とする微細繊維を容易に得ることができる。
また、本発明の微細繊維の製造方法によれば、繊維直径が著しく小さく、かつ耐熱性・耐薬品性・難燃性等の諸性能も維持されたポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂を主成分とする微細繊維を容易に得ることができる。
さらに、本発明の微細繊維は、繊維直径が著しく小さく、かつ耐熱性・耐薬品性・難燃性等の諸性能も維持されたポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂を主成分とする微細繊維である。
<易分割性繊維束の製造方法>
ポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂若しくはその前駆体(以下「ポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂若しくはその前駆体」を総称して「ポリイミド樹脂等」という場合がある。)と、少なくとも1種類以上の繊維形成性高分子化合物と、これらを溶解する有機溶剤とを主成分とする紡糸原液を得る工程と、細孔を通して吐出した紡糸原液を、繊維形成性高分子化合物を固化する凝固液中で固化させて紡糸する工程とを有する。
(ポリアミドイミド樹脂)
本発明において、微細繊維の基体としては、ポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂が用いられる。
まず、ポリアミドイミド樹脂について説明する。ポリアミドイミド樹脂は、その名の通り分子骨格にアミド基とイミド基を有している。本発明で使用するポリアミドイミド樹脂は特別なものではなく、特に限定はない。
ポリアミドイミド樹脂の製造方法にも特別の制約があるものではない。一般的に行われる方法で得られるが、以下にそれを例示し説明する。
ポリアミドイミド樹脂は、(a)芳香族トリカルボン酸一無水物と芳香族ジアミンとの当モル量を有機極性溶媒中、脱水触媒存在下、高温で重縮合・イミド化反応をさせる方法や、(b)無水トリメリット酸モノクロリドに代表される無水芳香族トリカルボン酸モノクロリドと芳香族ジアミンとの当モル量を有機極性溶媒中、低温で重縮合・イミド化反応をさせる方法、または(c)芳香族トリカルボン酸一無水物と芳香族ジイソシアネートとを有機極性溶媒中高温で重縮合・イミド化反応させる方法等によって製造される。
なお、何れの方法も、有機極性溶媒としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキシド、N−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性の有機溶媒が好適であるが、これらの有機溶媒とトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、γ−ブチルラクトン等を限定的に併用することも可能である。
いずれの方法でも、アミド結合をしながら重合し高分子量化してゆくが、一方ではこの成長と同時的に又は後からアミド酸部分が分子内イミド化反応も行われ目的のポリアミドイミドとなって該溶媒中に溶解して得られる。従って本発明で言うポリアミドイミド樹脂は基本的にはアミドイミドの構造そのものであるが、しかし或る程度未イミド化のアミド酸部分を含有するものであってもかまわない。
芳香族トリカルボン酸一無水物としては、トリメリット酸一無水物が望ましいが、その一部を他の多塩基酸またはその無水物に置き換えることができる。例えば、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、プロピレングリコールビストリメリテート等のテトラカルボン酸及びこれらの無水物、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、セバチン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、ジカルボキシポリブタジエン、ジカルボキシポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)、ジカルボキシポリ(スチレン−ブタジエン)等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
また、トリメリット酸化合物の一部をグリコールに置き換えることもできる。グリコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等のアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコールや上述のジカルボン酸の1種又は2種以上と上記グリコールの1種又は2種以上とから合成される、末端水酸基のポリエステル等が挙げられる。
芳香族ジアミンとしては3,3′―ジアミノベンゾフエノン、P―フエニレンジアミン、4,4′―ジアミノジフエニル、4,4′―ジアミノジフエニルメタン、4,4′―ジアミノジフエニルエーテル、ビス[4―{3―(4―アミノフエノキシ)ベンゾイル}フエニル]エーテル、4,4′―ビス(3―アミノフエノキシ)ビフエニル、ビス[4―(3―アミノフエノキシ)フエニル]スルホン、2,2′―ビス[4―(3―アミノフエノキシ)フエニル]プロパン等が挙げられる。ここで芳香族ジアミン成分が主鎖にアミド結合を持っている場合(例えば前記4,4′―ジアミノベンツアニリド)には、酸成分として芳香族テトラカルボン酸二無水物を組み合わせることができる。
芳香族ジイソシアネートとしては、前記例示する芳香族ジアミンの2つのアミノ基がイソシアネート基に置換されたものが例示できる。
ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量の制御は一般に反応時間を変えることで行得るが、一般的には10000〜100000、好ましくは20000〜80000の範囲が適切である。
ポリアミドイミド樹脂としては、エポキシ、シロキサン等で変成したものも使用可能である。
(ポリイミド樹脂)
次に、ポリイミド樹脂について説明する。ポリイミド樹脂は、その名の通り分子骨格にイミド基を有している。本発明で使用するポリイミド樹脂は特別なものではなく、特に限定はない。
ポリイミド樹脂の製造方法にも特別の制約があるものではない。一般的に行われる方法で得られるが、以下にそれを説明する。ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸誘導体と1級ジアミンを反応、重合させてポリイミド前駆体とし、閉環イミド化してポリイミドとするのが一般的である。
テトラカルボン酸誘導体としては、ピロメリット酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸、1,2,5,6−アントラセンテトラカルボン酸、3,3 ′,4,4′− ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3 ′,4′− ビフェニルテトラカルボン酸、ビス (3,4−ジカルボキシフェニル) エーテル、3,3 ′,4,4′− ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス (3,4−ジカルボキシフェニル) スルホン、ビス (3,4−ジカルボキシフェニル) メタン、2,2−ビス (3,4−ジカルボキシフェニル) プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2− ビス (3,4−ジカルボキシフェニル) プロパン、ビス (3,4−ジカルボキシフェニル) ジメチルシラン、ビス (3,4−ジカルボキシフェニル) ジフェニルシラン、2,3,4,5−ピリジンテトラカルボン酸、2,6−ビス (3,4−ジカルボキシフェニル) ピリジンなどの芳香族テトラカルボン酸及びこれらの二無水物並びにこれらのジカルボン酸ジ酸ハロゲン化物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4− テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸などの脂環式テトラカルボン酸及びこれらの二無水物並びにこれらのジカルボン酸ジ酸ハロゲン化物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸及びこれらの二無水物並びにこれらのジカルボン酸ジ酸ハロゲン化物などが挙げられる。
テトラカルボン酸誘導体としては、テトラカルボン酸二無水物を用いるのが一般的である。
ジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、4,4′− ジアミノビフェニル、3,3′-−ジメチル−4,4′− ジアミノビフェニル、3,3′− ジメトキシ−4,4′− ジアミノビフェニル、ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジニフェニルエーテル、2,2−ジアミノジフェニルプロパン、ビス (3,5−ジエチル−4− アミノフェニル) メタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノナフタレン、1,4−ビス (4−アミノフェノキシ) ベンゼン、1,4−ビス (4−アミノフェニル) ベンゼン、9,10− ビス (4−アミノフェニル) アントラセン、1,3−ビス (4−アミノフェノキシ) ベンゼン、4,4′− ビス (4−アミノフェノキシ) ジフェニルスルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ) フェニル] プロパン、2,2−ビス (4−アミノフェニル) ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ) フェニル] ヘキサフルオロプロパンなどの芳香族ジアミン、ビス (4−アミノシクロヘキシル) メタン、ビス (4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル) メタンなどの脂環式ジアミン及びテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、更にはジアミノシロキサン等が挙げられる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンのモル数の比は0.8 から1.2 であることが好ましい。通常の重縮合反応同様、このモル比が1に近いほど生成する重合体の重合度は大きくなる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応、重合させる方法は、特に限定されるものではなく、一般にはN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の有機極性溶媒中にジアミンを溶解し、その溶液中にテトラカルボン酸二無水物を添加、反応させてポリイミド前駆体を合成する。その際の反応温度は −20℃から 150℃、好ましくは−5℃から 100℃の任意の温度を選択することができる。
ポリイミド樹脂の数平均分子量の制御は一般に反応時間を変えることで行い得るが、一般的には10000〜100000、好ましくは20000〜80000の範囲が適切である。
ポリイミド樹脂としては、エポキシ、シロキサン等で変成したものも使用可能である。
ポリイミド前駆体を閉環イミド化してポリイミドとする反応は、一般的には、窒素雰囲気下で熱処理を施すことにより行う。
この際、加熱イミド化させる温度は 100〜 400℃の任意の温度を採用できるが、80〜250℃の範囲が好ましく、120〜220℃の範囲がより好ましい。また、生成する水を系外へ除去するために、不活性ガスの流通や水と共沸する溶剤、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサンなどをエントレーナーとして使用することが望ましい。
ポリイミド前駆体をポリイミドに転化する他の方法として公知の脱水閉環触媒を使用して化学的に閉環することもできる。例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸等の酸無水物、ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物等の脱水閉環剤と、必要に応じてピリジン、イソキノリン、イミダゾール、トリエチルアミン等の閉環触媒(脱水閉環剤及び閉環触媒はテトラカルボン酸二無水物の2〜10倍モル)を添加して、比較的低温(室温〜100℃程度)で化学閉環させる方法などが挙げられる。
本発明においては、予め閉環イミド化したポリイミドを用いて紡糸原液を得てもよいし、前駆体のままで易分割性繊維束を得た後に、閉環イミド化の処理を行ってもよいが、後者の方法が望ましい。前駆体の方が溶解性が高く、易分割性繊維束を得やすいからである。
(繊維形成性高分子化合物)
本発明に用いる繊維形成性高分子化合物としては、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン及びこれらの共重合体から選択して用いることが好ましい。
特に、二酢酸セルロースを用いることが好ましい。二酢酸セルロースは有機極性溶媒に溶け易い。そのため、アセトン等の一般的な有機溶剤により溶解除去が可能である。また、繊維とした際の強度が高いため、紡糸を容易に行うことができる利点がある。
なお、繊維形成性高分子化合物は2種以上を混合して使用しても差し支えない。
(有機溶剤)
紡糸原液を得る工程で用いる有機溶剤は、ポリイミド樹脂等と繊維形成性高分子化合物とを、共に溶解させることが可能な溶剤である。
例えば、繊維形成性高分子化合物として二酢酸セルロース及び/又は三酢酸セルロースを使用する場合、有機溶剤としてはN−メチル−2−ピロリドンを好適に使用できる。また、繊維形成性高分子化合物としてポリアクリロニトリルを用いる場合はジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシド、N−メチル−2−ピロリドン等を好適に使用できる。その他の繊維形性能高分子化合物についても適宜溶剤を選択すれば良い。なお、2種類以上の混合溶剤を用いることも可能である。
(その他の成分)
紡糸原液には、目的に応じて、その他の成分を適宜添加することができる。添加しうる成分としては、分散剤、界面活性剤、顔料、染料、帯電防止剤等が挙げられる。
(紡糸原液を得る工程)
紡糸原液におけるポリイミド樹脂等と繊維形成性高分子化合物の質量比は、使用目的に応じて繊維形成性高分子化合物:ポリイミド樹脂等=8:2〜2:8から選択可能である。例えば、紡糸の容易さを重視する場合には繊維形成性高分子化合物/ポリイミド樹脂等=8:2〜5:5程度が望ましい。
また、別の観点から、易分割性繊維束中の繊維形成性高分子化合物のみを溶解して微細繊維を一本毎に単独で回収したい場合は、繊維形成性高分子化合物/ポリイミド樹脂等=8:2〜6:4が良く、逆に微細繊維同士が部分的に結着したフィブリル化繊維を得たいのであれば繊維形成性高分子化合物/ポリイミド樹脂等=4:6〜2:8が良い。
すなわち、いずれの形で微細繊維を用いるかに応じてポリイミド樹脂等と繊維形成性高分子化合物の割合を変えると良い。
紡糸原液における有機溶剤の割合は、紡糸原液全体に対して、50〜85質量%であることが好ましい。これにより、ポリイミド樹脂等の微細化が容易になると共に、ポリイミド樹脂等が細切れ状態となることを防止できる。
ポリイミド樹脂等と繊維形成性高分子化合物とを有機溶剤に混合溶解する方法についても特に制限はない。
例えば、所定量の繊維形成性高分子化合物とポリイミド樹脂等及び有機溶剤を混合容器に入れ、攪拌翼を用いて、100〜10000R.P.Mで30分以上攪拌し続けて混合溶解することができる。この時粘度が高く攪拌し難いようであれば、40〜60℃程度に昇温してもよいが、80℃を超える温度で30分間以上攪拌を続けると用いる有機溶剤によっては揮発する問題がある。特に開放状態では有機溶剤が揮発することに伴い濃縮が進むため注意が必要である。
また、ポリイミド樹脂等と繊維形成性高分子化合物とを、各々有機溶剤に溶解したものを混合してもよい。
攪拌して均一に混合溶解が済んだ後、紡糸中の糸切れを防止する意味から、混合液中の微細気泡を減圧脱泡させたほうが望ましい。
また、後述の紡糸工程においても、紡糸装置の原液貯槽内で均一混合状態を維持するために、5〜20R.P.Mで緩やかに攪拌しつづけることが望ましい。
(紡糸工程)
本発明では、細孔(ノズル)を通して吐出した紡糸原液を固化させて紡糸する。固化は、繊維形成性高分子化合物を固化する凝固液中で行うことが好ましい。
この場合、紡糸ノズルから一旦、空気や不活性ガス中に紡糸原液を吐出させる乾湿式紡糸法によってもよいが、紡糸原液を、紡糸ノズルから凝固液中に直接吐出する湿式紡糸法が好ましい。これにより、ノズル吐出直後の繊維同士の膠着を防止することができる。
凝固液としては、紡糸原液中の繊維形成性高分子化合物に対して固化能を有するものを用いる。凝固液の組成については繊維形成性高分子化合物の種類により異なる。
例えば、繊維形成性高分子化合物として二酢酸セルロース及び/又は三酢酸セルロースを用いる場合には、水や水とアルコール混合液等が使用可能である。ポリアクリロニトリルを用いる場合にも、水、水とアルコール混合液が有効である。
凝固液に水あるいは水とアルコールの混合液を用いる場合には塩析・脱水効果により凝固速度を早めるために硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム等の無機塩類を添加する等の操作も有効である。逆に凝固速度が速過ぎて断糸したり、延伸が困難であったりする場合には、紡糸原液の溶解に用いた溶剤を凝固液に混ぜることなど、一般の湿式紡糸で取られる手法を採用することができる。
凝固液の温度は−5℃から60℃の範囲で希望する固化能になる温度を選択すれば良い。一般に凝固液の温度が高めの方が固化能は高いが、余り高くなると紡糸原液中のポリイミド樹脂等の粘度が下がり微細繊維が細切れになるなどの問題があるため、5℃〜40℃の範囲にすることが望ましい。
湿式紡糸法では紡糸原液をギアポンプ等の吐出量を一定に制御する装置を通して紡糸ノズルから凝固液に吐出することで糸條を得ることができる。
その後、凝固液から糸條を引き出す速度は、紡糸ノズルの吐出線速度の1.1倍以上〜500倍未満、好ましくは4倍〜100倍、更には5倍〜10倍の範囲にすることが最も好ましい。固化する繊維形成性高分子化合物の混合比率によってはあまり延伸すると固化の際、繊維形態を保持するのが困難になるため、一般的には高くとも15倍程度までが望ましい。1.1倍未満では繊維同士が膠着し易くなる。
乾湿式紡糸法、湿式紡糸法の他に、固化を気相中で行う乾式紡糸も可能である。この場合、脱溶媒に用いる気体としては溶媒の沸点以上に加温した空気が一般的である。引火点や着火点が低い溶媒を用いる場合や、酸化が問題となる場合には、窒素やアルゴンなどの不活性気体を用いることが望ましい。
(延伸工程)
紡糸工程で得られた糸條をより細繊化するあるいは分子配列を均整化する目的で、乾熱あるいは湿熱で延伸を加えても良い。
湿熱で延伸する場合は、例えば凝固液と同組成の液に浸漬しながら10℃〜80℃の範囲において2.0倍から8.0倍程度に延伸することが望ましい。但し、繊維中に有機溶剤が多く残留する湿式延伸は分子配列の均整効果が低いので、乾式延伸の方が望ましい。
乾熱延伸の場合には200℃〜400℃、好ましくは300℃〜380℃の雰囲気下で2.0倍から8.0倍程度に延伸する方法が挙げられる。この場合、窒素・ヘリウム・炭酸ガス等の不活性ガス中で行うのが一般的である。
ただし、延伸は易分割性繊維束中のポリイミド系繊維の微細化を促進させるためのものであって絶対条件ではない。従って、紡糸後に敢えて高度の延伸を加える必要はない。
(乾燥工程)
紡糸工程後、又は延伸工程後、必要に応じて糸條を加熱し乾燥させる。加熱は100℃〜400℃であるがこれは用いた有機溶剤の種類を勘案して決定すべきである。但し、あまりに高温では繊維形成性高分子化合物が熱分解や融解を起こすため好ましくは300℃以下で出来るだけ短時間で行うことが望ましい。この場合、繊維形成性高分子化合物の酸化を防止する目的で窒素・ヘリウム・アルゴンガス等の不活性ガス中で加熱すること等の処理を行なうことができる。
乾燥工程においては糸條同士が膠着しないよう乾燥前に鉱物油、シリコン系・フッ素系などの疎水性油剤を付着させることは効果的である。
<易分割性繊維束>
以上の操作により、易分割性繊維束を得ることができる。本発明の易分割性繊維束は、ポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂若しくはその前駆体と、少なくとも1種類以上の繊維形成性高分子化合物とを8:2〜2:8の範囲で含んでいる。
なお、形態については使用目的に応じて例えばステープル、トウなどを選ぶこともできる。また、微細繊維を得る前に紡績や織布などの加工を加える場合には、クリンプ処理を施すなどの処理を行なってもよい。
本発明の易分割性繊維束は、ポリイミド樹脂等が軸方向に多数延在している。本発明では、この延在したポリイミド樹脂等を、ほぼ途切れることなくつながった状態とすることが可能である。易分割性繊維束中の微細繊維の繊維長は、凝固液中での脱溶媒の速度や凝固液から糸條を引き出す速度を適度に調節することで制御することが可能である。なお、脱溶媒の速度は、凝固液の温度、塩類濃度、有機溶媒の濃度によって調節することができる。
本発明によれば、長さが0.01mm以上で、場合によっては数cm以上の微細繊維を含む易分割性繊維束が容易に得られる。
本発明では、易分割性繊維束を裂け易くした状態で物理的に引き裂く方法を採用しておらず、液滴そのものを引延ばす方法で微細繊維化を達成している。そのため、易分割性繊維束は、形成時から分離した微細繊維が一本単位で集合した構造体となっている。本発明の易分割性繊維束は、分割が極めて容易である点が特に優れている。
本発明におけるこの独特の易分割性繊維束の形成機構を、発明者らは以下の様に推測した。
すなわち、紡糸原液中には海成分(繊維形成性高分子)と島成分(ポリイミド樹脂等)があり、島成分が球状を保ちながら海成分中に分散している状態である。次にこの状態の原液を紡糸すると、原液がキャピラー状のノズルを通る際、急速に吐出線速度が増加する。しかしながら、高粘度の紡糸原液はノズル孔壁部では殆んど速度を持たず滞留した状態となっており、孔壁から離れるに従い流速が増加してゆきキャピラー中心部が最も速度が高い状態である。すなわち、孔壁からの距離により吐出線速度が異なり、このため原液中にずり応力が発生している。この際島成分(ポリイミド樹脂等)の液滴はこのずり応力で吐出方向に急激に引延ばされ、最終的に円柱状へと変化すると考えられる。
ところが、上記液滴から円柱状への変化だけでは、延在したポリイミド樹脂等がほぼ途切れることなくつながっている独特の構成を説明することは困難である。
すなわち、島成分の液滴の半径をR、引延ばされた後の円柱の半径をr、長さをLとすると
(4πR)/3=πr
の関係式が成り立つ。例えば液滴の半径と引延ばされた後の円柱の半径とを共に0.05μmと仮定すると、円柱の長さLは僅か0.07μm程度でありとても繊維とは言えないものである。
現実には、本発明によって得られる微細繊維の繊維長は、観測の結果、少なくとも0.01mm以上あり最長では数cmまでにもなる。
すなわち、本発明の特徴は、ずり応力で吐出方向に引延ばされた液滴が球状から繊維状へ形状を変化させているだけではなく、引延ばされた液滴同士が両末端で繋がり合い、あたかも無限長を有するが如く長繊維化して行くことにある。この長繊維化には紡糸原液からの脱溶媒が大きく関与していると考えられる。この機構は次の様に推定される。
前述したように紡糸原液中で液滴は吐出方向に引延ばされているが、液滴同士が両末端で繋がり合うためには両円柱の中心軸の一致が原則である。完全一致までには至らずとも中心軸のずれは円柱の直径以下であることが必要である。キャピラー中では円柱(引延ばされた液滴)の中心軸は全て吐出方向には揃っているものの、その位置はランダムであって、たまたま末端で繋がり合うのは確率的なものである。
ところが、紡糸原液がノズルキャピラー部より外界(凝固液中)へ出た際、急激に脱溶媒が進行する。この結果、円柱状で吐出された原液はノズルから出た直後、その直径はキャピラーと同径から急激に縮まる。この結果、全ての液滴は中心に向かい集まり始め、その相対位置(中心軸間の距離)が近づきはじめる。その中心軸のずれが円柱の直径以下になると両末端で繋がり合い急速に長繊維化して行く。その後、海成分の脱溶媒が進み更に島成分の溶媒も一旦海成分を介して凝固液中に移るため、海成分、島成分とも粘度が急激に増加し完全に固型化されるものと考えられる。
凝固液から糸條を引き出す速度の紡糸ノズルの吐出線速度に対する割合を適切に設定すると、延伸力が加わることによる両末端での繋がり合いが促進させる。
なお、通常の溶融紡糸では、可塑変形領域で延伸され、本発明の場合に比べると極めて緩慢な速度でその繊維直径を減じてゆくので、液滴同士の末端が繋がる確率は低い。最も繊維直径が減じ、液滴末端の繋がりの確率が最も高い可塑変形領域の終点では液滴は融点付近まで温度が下がり、もはや両末端が接触しても繋がり合うことが不可能なほどの高粘度となる。
本発明では、細孔を通して吐出した紡糸原液を凝固液中で固化するため、通状の溶融紡糸と異なり、繊維長の長い微細繊維を得易い。
本発明における島成分が微細化する機構においては、両成分の混合条件が重要である。すなわち、ポリイミド樹脂等を均一な粒径の島成分として安定して分散させる必要があるが、条件次第では海成分と島成分の相転移現象が発生したり、島成分中に海成分が内包された多相型の分散状態あるいはその逆の分散状態が発生したりすることも有り得る。
本発明者らは多数の要因を組み合わせた実験を通じ、ポリイミド樹脂等を均一な粒径の島成分として安定して分散させるための条件に関して以下の知見を得た。
海相、島相を決定する要因は主に3項目ある。1項目はその混合組成である。この場合、体積分率の大きい成分が海相となる傾向を示す。75%以上の体積分率を有する成分は他の条件によらずほぼ確実に海成分となり、25%以下の体積分率を有する成分は他の条件によらずほぼ確実に島成分となる。
各々の体積分率が25〜75%の間であれば、その他の条件に依存して何れか一方が海成分または島成分になる場合もあるし、海、島が入雑じった複雑な組成を示す場合もある。なお、ここでの体積とはポリマーそのものの体積ではなく、溶媒に溶解させた高粘度溶液の体積を言う。
2項目は溶液粘度である。一般的には溶液粘度が高い成分は島成分となる傾向を示す。前述の通り体積分率の高い成分は海成分に成り易いが、これを島成分とするためには溶液粘度を海成分よりも高くする必要がある。ここでポリイミド樹脂等の溶液粘度をη、繊維形成性高分子化合物の溶液粘度をηとして、η/ηを粘度比と定義する。
ここで、溶液粘度は、E型粘度計(コーンプレート型)を用い、ギャップ0.125mm、10r.p.m、で、紡糸時の温度を測定温度とする条件で測定した粘度とする。また、ポリイミド樹脂等のみを溶解した溶液と繊維形成性高分子化合物のみを溶解した溶液とを互いに同一濃度(質量%)となるように別々に調製し、各々について測定した粘度とする。
発明者らはこの粘度比と体積分率及び両成分の混合条件の関係を調査した。その結果、η/η=1の場合、ポリイミド樹脂等の溶液は、その体積分率が30%であれば、ほぼ完全な島成分となり、40〜70%であれば、島成分中に海成分が内包された多相型となり、70%であれば、完全に逆転して海成分となる。
また、η/η=0.25の場合、ポリイミド樹脂等の溶液を島成分として安定させるためには25%以下の体積分率とする必要がある。逆にη/η=4の場合には40%の体積分率でもポリイミド樹脂等の溶液は島成分として安定である。このように粘度比と体積分率及び両成分の混合条件には密接な関連がある。
3項目は両成分の相溶性である。本発明では基本的に共通の溶媒に2成分のポリマーを溶解させるが、両成分は非相溶であることが前提である。但し、余りに非相溶性が強すぎる場合、紡糸原液の保存安定性が極端に低下するので現実的ではない。また、島成分の粒子径が大きくなり易く、微細繊維が得難くなる。一般に相溶性が良好な場合、紡糸原液中の島成分の粒子径は小さくなり、その数は増加する。また、混合する2成分の溶解度パラメタ−(SP値)の中間値を持つ第3成分を少量添加すると島成分の粒子径は小さくなり、その数は増加する。
島成分(ポリイミド樹脂等)が微細化する機構においては、紡糸原液中の海成分(繊維形成性高分子)と島成分の分散状態も重要である。特に島成分は0.01μm以上5μm未満の直径の液滴であることが必要である。島成分の液滴の直径が100nm未満になると、ずり応力のみではもはや容易には引延ばしが出来ず、結果として微細繊維中に粒が相当量残った状態となる。また、5μm以上の直径となると引延ばしがなされた後でもその繊維径は2μmを超えるものとなりもはや微細繊維とは言い難い。
実際、本発明者らが行った用途検討でも2μmを超えた繊維では従来繊維と大差なく、高密度化したり均一な紙を得たりするために望まれる性能を得ることが出来ないことが分かった。特にη/η>1の場合、島成分はキャピラー中のずり応力に対して破壊を受け難く、長く伸び易いという効果がある程度は反映されるが、余り極端に高い場合にはキャピラー中の微細繊維形成の過程で島成分の吐出軸方向への変形が周囲の変形に追随できず微細化し難い問題がある。
<微細繊維の製造方法>
易分割性繊維束から微細繊維を得るためには、易分割性繊維束を繊維形性高分子化合物のみを選択的に溶解する溶媒に浸漬する等により、繊維形性高分子化合物を溶解除去する。
なお、ポリイミド樹脂等がポリイミド樹脂の前駆体である場合には、繊維形性高分子化合物の溶解除去に先立ち、上述の方法でポリイミド前駆体を閉環イミド化する処理を行う。
繊維形性高分子化合物のみを選択的に溶解する溶媒は、用いた繊維形性高分子化合物によって、適宜選択する。
例えば、用いた繊維形性高分子化合物が二酢酸セルロースの場合にはアセトンが好適であり、三酢酸セルロースの場合には塩化メチレンが好適である。またポリアクリロニトリルの場合にはジオキサンやチオシアン酸ナトリウム水溶液などが好適である。
繊維形性高分子化合物を溶解除去して微細繊維を得る操作は、易分割性繊維束を得て直ちに行っても良く、一旦易分割性繊維束のままで紙・不織布・糸・織物などに加工した後に行っても良い。
微細繊維を一本毎に単独で回収するような場合は、易分割性繊維束から直ちに繊維形性高分子化合物を溶解除去して微細繊維を回収する方法が望ましい。
一方、微細繊維同士が部分的に結着したフィブリル化繊維を得るのであれば、易分割性繊維束のままで紙・不織布・糸・織物などに加工を加えて後、不要な繊維形性高分子化合物を溶解除去する方法が有効である。この場合、加工物を単に溶媒に浸漬する処理だけでは期待するようなフィブリル化度が得られないのであれば、物理的な叩解力を加えたり、表面を摩擦させて起毛させたりする等の補助的な処理を行うことが望ましい。
<微細繊維>
以上の操作により、ポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂を主成分とする微細繊維を得ることができる。本発明の微細繊維は、繊維長が0.01mm以上であることが好ましい。
上述のように、本発明によれば、長さが数cm以上の微細繊維集合体が容易に得られる。従って微細繊維束を予め所望の長さにカットすることで目的の繊維長の微細繊維を得ることが可能である。
本発明者らの実験によれば、繊維長が10mmを超えるような微細繊維はハンドリング途中で絡まりが発生し、もはや容易には解すことは出来ず、実用上使用が困難である。0.01mm以上、10mm未満、特に0.05mm以上2mm未満の範囲の繊維長とすることがあらゆる用途に対して適切である。
本発明の微細繊維はまた、直径が0.01μm以上、2μm未満であることが好ましい。
直径がこの範囲であれば、従来不可能であった高密度で薄い紙に加工することや、織物、不織布などの用途への利用が可能となる。
微細繊維の直径は、島成分の液滴の大きさや延伸倍率の大きさ等により調整することができる。
本発明の微細繊維は、ポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂において良好であった諸性能を殆ど低下させることなく微細化されている。そのため、紙・不織布・紐や織物等を始め、各種フィルター類や電解コンデンサーや電気二重層キャパシタ用セパレーター、電子部品用被覆材や同接着剤の補強材、ゴム・セメント等の補強材等、特に高い耐熱性や耐薬品性、電気特性、摺動特性、寸法安定性や放射線安定性などが要求される用途で使用可能である。
例えば電解コンデンサー用のセパレーターとして用いる場合には、(1)セパレーターの殆どの面積が電流の通路となるように空隙断面積が大きいこと、(2)セパレーターができる限り薄いこと、(3)セパレーターの構成繊維ができる限り円柱状であること、(4)セパレーターの構成繊維径ができる限り小さいことが要求される。本発明の微細繊維は、これらの条件を容易に満たすことができる。
本発明によれば、微細繊維の繊維長を0.01mm以上とすることができるので、特別なバインダーを用いることなく繊維間の交絡を充分に得ることができる。そのため、高い強度と良好な取り扱い性が得られる。また、極めて薄く均一な厚みで成形することが可能であり、空隙の発生や破れも防止できることから、電極間の接触による内部ショートを効率的に防止できる、
また、セパレーターの占有体積削減による極板面積の向上と静電容量増加につながる。更に、優れた低tanδ化は高周波への対応も可能とするものであり、また発熱を防止するなど極めて有効な効果をもたらす。
別の例ではビルトアップ方式による多層プリント配線板で多用されてきたガラス織布基材エポキシ樹脂プリプレグに替えて、本発明の微細繊維を用いることができる。この場合、強度、低誘電率、低比重がもたらすプリプレグの薄化が可能となり、プリント配線基板の剛性向上、製造時や部品実装時における基板の折損防止等の効果が得られる。また、プリプレグの表面平滑性向上に伴う高密度ファインライン化も可能である。プリプレグに使用する場合にも、微細繊維は、直径が0.01μm以上、2μm未満で、繊維長が0.01mm以上、10mm未満であることが好ましい。
また、フィルターとして本発明の微細繊維を用いると、優れた耐熱性、耐蒸熱性、耐酸性を兼ね備えたフィルターとすることができる。そのため、例えは石炭ボイラー、ゴミ焼却炉、金属溶鉱炉、あるいはディーゼル自動車などから排出される高温ダストなどを集塵するためのフィルター用濾材として好適である。
従来より繊維径がサブミクロンの各種耐熱性繊維を用いたフィルターが存在していたが、強度を補うためにバインダーを用いる例が多かった。本発明の微細繊維はバインダーを要しないこと、繊維径が微細なことから、従来の耐熱性フィルターと比較して優れたろ過精度を得ることができる。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
5Lの反応容器にトリメリット酸無水物325g、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート424g、およびN−メチル−2−ピロリドン1400gを仕込み、攪拌しながら200℃まで約1.5時間で昇温させた。その後、200℃を保ちながら約5時間攪拌を続けて粘調なポリアミドイミド樹脂溶液を得た。この樹脂の数平均分子量をGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)を用いてポリスチレン換算にて求めたところ約55000であった。このポリアミドイミド樹脂溶液にN−メチル−2−ピロリドンを加え固形分濃度を15%に調整した。
これとは別に酢化度55%、重合度120の二酢酸セルロース150gを850gのN−メチル−2−ピロリドンに入れ常温で約1時間攪拌した後、更に60℃に昇温し30分の攪拌混合を行い完全に溶解したことを確認し、冷却して二酢酸セルロース溶液(固形分15%)を得た。
この二酢酸セルロース溶液と前述のポリアミドイミド樹脂溶液を固形分の質量比がニ酢酸セルロース:ポリアミドイミド樹脂=6:4になるように加え、小型ホモジナイザーで攪拌し均一な微黄色透明の紡糸原液を得た。
次にこれを孔径0.1mm、ホール数80の紡糸口金から一定吐出量を保ちながら、N−メチル−2−ピロリドン濃度10wt%、25℃の水溶液中に押出した。水溶液中で延伸倍率が2〜3になるよう巻取りローラーの回転数を調整した。なお、水溶液中の浸漬時間は約60秒であった。巻き取った糸條は緊張状態を保ったまま室温で5分間の風乾を行った後、窒素雰囲気下250℃で20分の乾燥を行ない易分割性ポリアミドイミド繊維束を得た。
(実施例2)
実施例1で得た易分割性ポリアミドイミド繊維束を20mmにカットした後、一部をガラス容器に入れた常温のアセトンに漬け、更にマグネチックスターラーで攪拌を行った。10分間の攪拌の後、約10分間静置したところ容器の底に微細な繊維が沈降した。上澄みのアセトンを除き、新たにアセトンを加え更に10分間の攪拌と約10分間静置を行なった。この操作を合計5回繰り返した後、容器の底から採取した微細繊維を走査型電子顕微鏡で確認したところ、繊維径100nm〜1000nm、繊維長が0.01mm〜20mmの微細ポリアミドイミド繊維であることを確認した。微細繊維の中から走査型電子顕微鏡で確認しながら繊維径800〜1000nmの繊維を選別し、引張強度・引張伸度、高温耐薬品性、難燃性(LOI値)、耐熱性を測定した。20本の繊維について測定し、平均を求めた結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1で得た易分割性ポリアミドイミド繊維束を50mmにカットしたものを斜めに置いたスライドガラス上に数本並べ、これに40℃に加温したアセトンを静かに滴下しつ分割化した。
このサンプルを乾燥させた後のSEM写真を図1に示す。また、このSEM写真中で分割繊維500本をランダムに抽出し、繊維軸に垂直方向の同一直線上の繊維径を測定し、繊維径分布を測定した結果を図2に示す。
(実施例4)
実施例1で得た易分割性ポリアミドイミド繊維束を10mmにカットしたものを斜めに置いたスライドガラス上に数本並べ、これに40℃に加温したアセトンを静かに滴下しつ分割化した。
このサンプルを乾燥させた後にレーザー顕微鏡(×1000)で観察し、視野内で測定できた分割繊維100本をランダムに抽出し、繊維長を測定した。結果を図3に示す。
(実施例5)
実施例1で調製した紡糸原液を、孔径1.2mm、ホール数18の紡糸口金を用い温度280℃の不活性雰囲気中に紡糸した。紡糸速度は200メートル/分であった。引き続いて窒素雰囲気下320℃の雰囲気下で4.0倍に延伸し巻き取った。更にこの糸條を緊張状態を保ったまま、窒素雰囲気下250℃で20分の乾燥を行ない易分割性ポリアミドイミド系繊維束を得た。
(実施例6)
実施例1で得たポリアミドイミド樹脂溶液(固形分濃度を15%)と二酢酸セルロース溶液(固形分15%)を固形分の質量比がニ酢酸セルロース:ポリアミドイミド樹脂=3:7になるように加え、小型ホモジナイザーで攪拌し均一な微黄色透明混合液を得た。
次にこれを、孔径0.1mm、ホール数80の紡糸口金から一定吐出量を保ちながら、N−メチル−2−ピロリドン濃度10wt%、25℃の水溶液中に押出した。水溶液中で延伸倍率が2〜3になるよう巻取りローラーの回転数を調整した。なお、水溶液中の浸漬時間は約60秒であった。
巻き取った糸條は緊張状態を保ったまま室温で5分間の風乾を行った後、引き続いて窒素雰囲気下320℃の雰囲気下で5.0倍に延伸し巻き取った。更に窒素雰囲気下250℃で20分の乾燥を行ない易分割性ポリアミドイミド繊維束を得た。
(実施例7)
実施例6で得た易分割性ポリアミドイミド繊維束の一部を3mmにカットしながら、ガラス容器中の常温アセトンに漬け、更にマグネチックスターラーで攪拌を行った。10分間の攪拌の後、約10分間静置し上澄みのアセトンを除き、新たにアセトンを加え更に10分間の攪拌と約10分間静置を行なった。この操作を合計5回繰り返した後、繊維束を取り出し、流水中で洗浄を行なった。
次いで、これを水中でリファイナーにて叩解してこの叩解液の沈降物を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果、繊維径70nm〜200nmの微細ポリアミドイミド繊維が繊維軸方向に集束してなり、表面が毛羽立ったフィブリル繊維が得られていることを確認した。
(比較例1)
実施例1で作成したポリアミドイミド樹脂溶液(固形分15%)のみを孔径0.1mm、ホール数80の紡糸口金から一定吐出量を保ちながら、N−メチル−2−ピロリドン濃度10wt%、25℃の水溶液中に押出した。水溶液中で延伸倍率が2〜3になるよう巻取りローラーの回転数を調整した。なお、水溶液中の浸漬時間は約60秒であった。
巻き取った糸條は緊張状態を保ったまま室温で5分間の風乾を行った後、窒素雰囲気下250℃で20分の乾燥を行ないポリアミドイミド繊維を得た。
この繊維の引張強度・引張伸度、高温耐薬品性、難燃性(LOI値)、耐熱性を測定した。20本の繊維について測定し、平均を求めた結果を表1に示す。
(実施例8)
温度計、攪拌機、原料投入仕込み口、および窒素ガス導入口を備えた1000mlの四つ口フラスコに、24.5gの4,4’−ジアミノジフェニルメタンおよび437mlの乾燥N−メチル−2−ピロリドンNMPを入れ、乾燥窒素気流下攪拌溶解した。反応系の温度を5〜70℃の範囲内に保ちながら、26.9gのピロメリット酸二無水物を添加して、24時間反応させた。次いで、反応混合物を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。その後、更にメタノールで洗浄し、減圧下、40℃で24時間乾燥させた。
得られたポリイミド樹脂前駆体(ポリアミック酸)のGPCによる分子量は、75,000であった。このポリイミド樹脂前駆体にN−メチル−2−ピロリドンを加え固形分濃度を15%に調整した。
これとは別に酢化度55%、重合度120の二酢酸セルロース75gを425gのN−メチル−2−ピロリドンに入れ常温で約1時間攪拌した後、更に60℃に昇温し30分の攪拌混合を行い完全に溶解したことを確認し、冷却して二酢酸セルロース溶液(固形分15%)を得た。
この二酢酸セルロース溶液と前述のポリイミド樹脂前駆体溶液を固形分の質量比がニ酢酸セルロース:ポリイミド樹脂前駆体=6:4になるように加え、小型ホモジナイザーで攪拌し均一な微黄色透明の紡糸原液を得た。
次にこれを孔径0.1mm、ホール数80の紡糸口金から一定吐出量を保ちながら、N−メチル−2−ピロリドン濃度4wt%、25℃の水溶液中に押出した。水溶液中で延伸倍率が2〜3になるよう巻取りローラーの回転数を調整した。なお、水溶液中の浸漬時間は約60秒であった。巻き取った糸條は緊張状態を保ったまま室温で5分間の風乾を行った後、窒素雰囲気下180℃で5分の乾燥を行なった。引続き窒素雰囲気下220℃で40分の熱処理を行ないイミド化し、易分割性ポリイミド繊維束を得た。
(実施例9)
実施例8で得た易分割性ポリイミド繊維束を50mmにカットした後、一部をガラス容器に入れた常温のアセトンに漬け、更にマグネチックスターラーで攪拌を行った。10分間の攪拌の後、約10分間静置したところ容器の底に微細な繊維が沈降した。上澄みのアセトンを除き、新たにアセトンを加え更に10分間の攪拌と約10分間静置を行なった。この操作を合計5回繰り返した後、容器の底から採取した微細繊維を走査型電子顕微鏡で確認した。その結果、繊維径100nm〜1000nm、繊維長が0.01mm〜20mmの微細ポリイミド繊維であることを確認した。微細繊維の中から繊維径800〜1000nmの繊維を選別し引張強度・引張伸度、高温耐薬品性、難燃性(LOI値)、耐熱性を測定した。20本の繊維について測定し、平均を求めた結果を表1に示す。
(実施例10)
実施例8で調製した紡糸原液を孔径1.2mm、ホール数18の紡糸口金を用い温度280℃の不活性雰囲気中に紡糸した。紡糸速度は200メートル/分であった。引き続いて窒素雰囲気下150℃の雰囲気下で4.0倍に延伸し巻き取った。更にこの糸條を緊張状態を保ったまま、窒素雰囲気下220℃で45分の熱処理を行ない易分割性ポリイミド繊維束を得た。
(実施例11)
実施例8で得たポリイミド樹脂前駆体(固形分濃度を15%)と二酢酸セルロース溶液(固形分15%)を固形分の質量比がニ酢酸セルロース:ポリイミド樹脂前駆体=3:7になるように加え、小型ホモジナイザーで攪拌し均一な微黄色透明の紡糸原液を得た。
次にこれを孔径0.1mm、ホール数80の紡糸口金から一定吐出量を保ちながら、N−メチル−2−ピロリドン濃度5wt%、25℃の水溶液中に押出した。水溶液中で延伸倍率が2〜3になるよう巻取りローラーの回転数を調整した。なお、水溶液中の浸漬時間は約60秒であった。
巻き取った糸條は緊張状態を保ったまま室温で5分間の風乾を行った後、引き続いて窒素雰囲気下150℃の雰囲気下で5.0倍に延伸し巻き取った。更に窒素雰囲気下180℃で3分の乾燥を行なった後、引続き窒素雰囲気下220℃で40分の熱処理を行ないイミド化し、易分割性ポリイミド繊維束を得た。
(実施例12)
実施例9で得た易分割性ポリイミド繊維束の一部を3mm長にカットしながら、ガラス容器中の常温アセトンに漬け、更にマグネチックスターラーで攪拌を行った。10分間の攪拌の後、約10分間静置し上澄みのアセトンを除き、新たにアセトンを加え更に10分間の攪拌と約10分間静置を行なった。この操作を合計5回繰り返した後、繊維束を取り出し、流水中で洗浄を行なった。
次いで、流水で洗浄した後の繊維束を水中でリファイナーにて叩解してこの叩解液の沈降物を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果、繊維径70nm〜200nmの微細ポリイミド系繊維が繊維軸方向に集束してなり、表面が毛羽立ったフィブリル繊維が得られていることを確認した。
(比較例2)
実施例8で作成したポリイミド樹脂前駆体(ポリアミック酸)溶液(固形分15%)のみを孔径0.1mm、ホール数80の紡糸口金から一定吐出量を保ちながら、N−メチル−2−ピロリドン濃度5wt%、25℃の水溶液中に押出した。水溶液中で延伸倍率が2〜3になるよう巻取りローラーの回転数を調整した。なお、水溶液中の浸漬時間は約60秒であった。巻き取った糸條は緊張状態を保ったまま室温で5分間の風乾を行った後、窒素雰囲気下180℃で5分の乾燥を行なった。
引続き窒素雰囲気下220℃で40分の熱処理を行ないイミド化し、ポリイミド系繊維を得た。
この繊維の引張強度・引張伸度、高温耐薬品性、難燃性(LOI値)、耐熱性を測定した。20本の繊維について測定し、平均を求めた結果を表1に示す。
Figure 2006169691
表1における評価結果は、以下の方法で得た。
引張強度・引張伸度:JIS R−7601に準拠しオリエンテック社製テンシロンRTM25引張試験機を使用して評価した。
耐熱性 : 空気中100時間暴露後の強力保持率で評価した。
高温耐薬品性試験 : 濃度を調節した溶液に繊維を浸し、テフロン(登録商標)製瓶に入れ、密封した。これを100℃に保持した熱風乾燥機に入れ、2時間放置後、冷却した。水洗後、乾燥させ、上記と同様にして引張強度を測定した。ここで得られた引張強度の上記引張強度に対する割合を求め、これを高温耐薬品性の尺度とした。
難燃性(LOI値): JIS K 7201に記載の方法に従って、繊維の難燃性を測定した。
比較例1は一般的なポリアミドイミド繊維であり、良好な強伸度特性・耐熱性・耐薬品性・難燃性を有している。一方、本発明による実施例2では比較例1とほぼ同等の性能を有していることが確認できた。
また、比較例2は一般的なポリイミド繊維であり、良好な強伸度特性・耐熱性・耐薬品性・難燃性を有している。一方、本発明による実施例9、実施例12では比較例2とほぼ同等の性能を有していることが確認できた。
実施例3で得られたサンプルのSEM写真を示す図である。 実施例3で得られたサンプルの繊維径分布を測定した結果を示す図である。 実施例4で得られたサンプルの繊維長を測定した結果を示す図である。

Claims (8)

  1. ポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂若しくはその前駆体と、少なくとも1種類以上の繊維形成性高分子化合物と、これらを溶解する有機溶剤とを主成分とする紡糸原液を得る工程と、
    細孔を通して吐出した紡糸原液を固化させて紡糸する工程とを有することを特徴とする易分割性繊維束の製造方法。
  2. 紡糸工程が、細孔を通して吐出した紡糸原液を、繊維形成性高分子化合物を固化する凝固液中で固化させて紡糸する工程である請求項1に記載の易分割性繊維束の製造方法。
  3. 紡糸原液を、細孔から凝固液中に直接吐出する請求項1又は請求項2に記載の易分割性繊維束の製造方法。
  4. ポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂若しくはその前駆体と、繊維形成性高分子化合物との質量比が、8:2〜2:8の範囲である請求項1から請求項3の何れかに記載の易分割性繊維束の製造方法。
  5. 繊維形成性高分子化合物が、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン及びこれらの共重合体の一種以上である請求項1から請求項4の何れかに記載の易分割性繊維束の製造方法。
  6. 請求項1から請求項5の何れかに記載の易分割性繊維束の製造方法により易分割性繊維束を得た後、該易分割性繊維束中の繊維形成性高分子のみを溶解除去することを特徴とする微細繊維の製造方法。
  7. ポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂若しくはその前駆体と、少なくとも1種類以上の繊維形成性高分子化合物とを8:2〜2:8の範囲で含み、前記ポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂若しくはその前駆体が軸方向に多数延在していることを特徴とする易分割性繊維束。
  8. 直径が0.01μm以上、2μm未満、繊維長が0.01mm以上であり、請求項6に記載の微細繊維の製造方法により製造されたことを特徴とする微細繊維。


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