JP2006169602A - 疲労特性に優れた溶接継手 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属組織が主としてフェライトとベイナイトで構成され、パーライトの面積率が10%以下であり、かつ(110)面からのX線回折強度の半価幅が0.13度以上であり、さらに鋼の化学組成が下記の(a)式および(b)式を満足する鋼材を用いた溶接継手であって、溶接熱影響部における硬度値がHv 300以下で、かつ、溶接熱影響部における硬度値が母材または溶接金属のいずれか硬度が低い方の硬度の80%以上であることを特徴とする溶接継手。 6≦20C+5Si+10Mn≦30 ・・・(a) 0.01≦C/Mn≦0.10 ・・・(b)ただし、(a)式および(b)式の元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。上記の鋼の化学組成の一例は、C:0.01〜0.10%、Si:0.03〜0.60%、Mn:0.5〜2.0%、sol.Al:0.005%を超えて0.10%まで、N:0.0005〜0.0080%、残部がFeおよび不純である。
【選択図】図1
Description
0.01≦C/Mn≦0.10 ・・・(b)
ただし、(a)式および(b)式の元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。
第2群:Cu:0.7%未満、Ni:3.0%以下、Cr:1.0%未満およびMo:0.8%以下
第3群:Ca:0.007%以下、Mg:0.007%以下、Ce:0.007%以下、Y:0.5%以下およびNd:0.5%以下。
0.01≦C/{Mn+(1/10)Cu+(1/2)Ni+(1/4)Cr+Mo+20Nb+10Ti+5V}≦0.10
・・・(d)
ただし、(c)式および(d)式の元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。
即ち、[背景技術]の欄で述べたように、従来の疲労設計としては、2×106回程度の疲労試験で決定される疲労強度値を限界として用いて来たのであるが、仔細に観察すると2×106回を超えて破断する溶接継手には、上述のような特徴があったのである。
本発明の溶接継手を構成する鋼(母材)の組織は、高強度の継手を得るために、主として、フェライトとベイナイトで構成される。上記ベイナイトは上部ベイナイト、下部ベイナイト、アシキュラーフエライト、グラニュラーベイナイトなどの組織を含むものである。
半価幅は、X繰回折強度の分布において、回折強度がピーク強度の1/2となる部分の分布幅を回折角度で示した値である。高温で生成し、転位密度の小さな組繊ほど半価幅は小さい。半価幅の大きな組織ほど転位密度が大きく、疲労亀裂進展抵抗性に優れる。
(a)式の「20C+5Si+10Mn」の値が6未満の場合は、フェライト+ベイナイト組織中のベイナイトの比率が十分でなく、後述のような製造条件で鋼板を製造しても適切な半価幅を得ることができず、良好な疲労亀裂進展抵抗性が得られない。その値が30を超える場合は、強度を490MPa級にしようとすると、フェライト+ベイナイト組織中のフェライト組織を増加せねばならず、この場合も良好な疲労亀裂進展抵抗性が得られない。
鋼の成分の作用効果および含有量の限定理由は下記のとおりである。
Cは、鋼の強度を高めるのに有効な元素であり、鋼の強度を得るために、0.01%以上含有させる。しかし、その含有量が0.10%を超えると、強度が高くなりすぎて靱性が劣化するので、これを避けるために0.10%以下とする。より望ましいのは0.03〜0.07%である。なお、C含有量は、溶接熱影響部の硬さに大きな影響を与えるので、このような鋼のC含有量の制限は、本発明の溶接継手実現にとって重要である。
Siは、鋼の脱酸に有効な元素であり、その効果を得るために0.03%以上含有させる。しかしながら0.60%を超えると、M−A組織の形成が促進される。M−A組織は、ベイナイト組織中に形成される島状マルテンサイトの一種で、残留オーステナイトを含むM−A変態生成物である。M−A組織は非常に硬度が高く、容易に靱性を劣化させることが知られている。したがって、勒性劣化を避けるためにSi含有量は0.60%以下とする。より望ましいのは0.3〜0.5%である。
Mnは、焼入性向上に有効な元素であり、強度上昇と疲労亀裂進展抵抗性を向上させるために、0.5%以上含有させる。一方、2.0%を超えると靱性が劣化するので、Mn含有量の上限は2.0%とする。ただし、後述するようにBを含有する場合には0.3〜2.0%としてもよい。
AlはSiとともに脱酸に必要な元素であり、その効果を得るために0.005%を超えるsol.Alを含有させる。他方、sol.Al含有量が0.10%を超えるとM−A比率(M−A組織の存在比率)が増加し勒性が劣化する。これを避けるためにsol.Al含有量は0.10%以下とする。
Nは、AlやTiと結合して析出物となり、オーステナイト粒の細粒化に寄与し靱性を改善する作用がある。この効果を得るために、Nは0.0005%以上含有させる。しかし、Nの含有量が0.0080%を超えるとM−A比率が増加し、靱性が劣化する。これを避けるためにN含有量の上限は0.0080%とする。
Bは、必須成分ではない。しかし、Bには焼入性を著しく高める作用があり、強度上昇と疲労亀裂進展抵抗性を向上させるのに有効である。従って、これらの効果を得たいときに添加する。上記の効果を得るには、0.0003%以上含有させるのが有効である。しかし、Bの含有量が0.0030%を超えると勒性が劣化するので、その上限は0.0030%とするのが望ましい。
Nb:0.08%以下
Nbも必須成分ではないが、細粒化作用を通じて靭性を向上させる効果がある。また、焼入性を増すので強度向上と疲労亀裂進展抑制に有効である。したがって、これらの効果を得るために含有させても構わない。その場合、0.005%以上含有させるのが望ましい。他方その含有量が0.08%を超えると靭性が劣化するので、0.08%を上限とする。より好ましいのは0.06%以下である。
Tiも必須成分ではないが、強度向上と疲労亀裂進展抑制に有効であるので、これらの効果を得るために含有させても構わない。上記効果を得るには0.005%以上含有させるのが望ましい。他方、0.03%を超えると靭性が劣化するので、その上限は0.03%とするのが望ましい。
Vも必須成分ではないが、強度向上と疲労亀裂進展抑制に有効である。特に厚肉材においては改善傾向が顕著になる。従って、これらの効果を得るために含有させても構わない。含有させる場合には、上記効果を得るために0.005%以上含有させるのが望ましい。他方、0.08%を超えると靭性が劣化するので、その上限は0.08%とするのが望ましい。
Cu:0.7%未満
Cuは、必須成分ではないが、鋼の強度を高める作用があるので、その目的で含有させても構わない。その効果を得るには0.1%以上の含有が望ましく、0.3%以上の含有がさらに望ましい。しかしながら、その含有量が0.7%以上になると鋼の靱性が劣化するので、含有させる場合でもその上限は0.7%未満とする。より望ましいのは0.5%未満である。
Niも必須成分ではないが、鋼の強度を高める作用があり、また、疲労亀裂進展抑制にも有効である。従ってこれらの効果を得るために含有させても構わない。その効果を得るには0.2%以上の含有が望ましい。しかし、その含有量が3.0%を超えるとコスト上昇に見合うだけの高強度化と疲労亀裂進展抑制効果が見られないので、含有させる場合でもその上限は3.0%とする。
Crも必須成分ではないが、鋼の強度を高める作用があり、また、疲労亀裂進展抑制にも有効である。従ってこれらの効果を得るために含有させても構わない。その場合には0.1%以上の含有が望ましく、0.3%以上がさらに望ましい。しかし、Crを過剰に含有させると靱性が劣化するので、含有させる場合でも1.0%未満とする。
Moも必須ではない。しかし、Moは焼入れ性を高めて強度を改善するのに有効な元素である。ただし、Mo含有量が0.8%を超えると靱性の劣化を引き起こすばかりでなく、コストの上昇を招くためその含有量の上限は0.8%である。なおMoを添加する場合は、その含有量を0.1%以上とするのが望ましく、0.2%以上とすることが一層望ましい。
Ca:0.007%以下
Caは、組織微細化を通して靭性改善に寄与する。その効果を得るには0.0015%以上の含有が望ましい。しかしながら、その含有量が0.007%を超えるとCa介在物の量が過剰となりかえって靭性が劣化する。従って、Caを添加する場合は、その含有量は0.007%以下とする必要がある。より望ましい含有量は0.0020〜0.0030%である。
Mgも組織微細化を通して靭性改善に寄与する。その効果を得るには0.0005%以上の含有が望ましい。しかし、0.007%を超えるとMg介在物の量が過剰となって、Caと同様に靭性劣化を来す。従ってMgを添加する場合は、その含有量は0.007%以下とする必要がある。より望ましい含有量は0.0010〜0.0030%である。
Ceは、組織微細化を通して靭性改善に寄与する。その効果を得るには0.0005%以上の含有が望ましい。しかし、Ceの含有量が0.007%を超えるとCe介在物の量が過剰となり、かえって靭性が劣化する。従ってCeを添加する場合、その含有量は0.007%以下とする必要がある。より、望ましい含有量は0.0008〜0.0030%である。
Yは、組織微細化を通して靭性改善に寄与する。その効果を得るには0.01%以上の含有が望ましい。しかし、その含有量が0.5%を超えるとY介在物の量が過剰となり、かえって靭性が劣化する。従ってYを用いる場合、その含有量は0.5%以下とする必要がある。より望ましい含有量は0.02〜0.05%以下である。
Ndは、組織の微細化を通して靭性改善に寄与する。その効果を得るには0.01%以上含有させるのが望ましい。しかし、Ndの含有量が0.5%を超えるとNd介在物の量が過剰となりかえって靭性が劣化する。従ってNdを添加する場合、その含有量は0.5%以下とする必要がある。より望ましい含有量は0.02〜0.05%である。
図2に熱影響部の硬さの測定方法を示す。図において、1は主板、2はガセット、3は溶接金属、4は溶接熱影響部である。熱影響部の硬さは、溶接余盛り止端(図の破線の位置)から鋼板表面に平行に1mm溶接金属側に入った点を通り、鋼板表面に対し垂直方向の直線(a−a線)上において、押付け荷重9.8N、測定間隔0.5mmでビッカース硬度を板厚方向に溶接熱影響部を超える領域まで測定するものとする。
本発明に係る疲労亀裂進展抵抗性に優れた溶接継手を構成する鋼材を製造する手段は、公知の熱間圧延設備、または公知の熱間圧延設備と公知の熱処理設備を使用して製造することができる。その製造条件は、以下に述べる条件が好適である。
(1)溶接熱影響部における硬度値がHv 300以下:
溶接熱影響部における硬度値がHv 300を超えるということは、溶接熱影響部にマルテンサイトが多いために過度に硬化していることを意味する。マルテンサイト変態は急激な膨張を伴う現象であり、局部的な残留応力を生じ、本発明の目的とする長寿命域における溶接継手の疲労特性改善には好ましくない。また、マルテンサイトは脆性的であり、疲労亀裂が発生した後は、その寿命を短くするのでマルテンサイトの生成は避けるべきである。したがって、Hv 300以下に制限する必要がある。なお、Hvはビッカース硬度を示す記号である。
溶接熱影響部が軟化し、その硬度値があまりに低いことは好ましくない。溶接熱影響部が著しく軟化し、母材および溶接金属のいずれか硬度が低い方の硬度値の80%未満になると、軟化した部分に歪みが集中して本発明の目的とする長寿命域における溶接継手疲労特性改善には好ましくない。そこで、80%をその下限とした。この値の確保は、例えば、溶接条件を適切に選択するか、あるいは溶接法に合わせて鋼材成分を選定することによって可能である。
Claims (6)
- 金属組織が主としてフェライトとベイナイトで構成され、パーライトの面積率が10%以下であり、かつ(110)面からのX線回折強度の半価幅が0.13度以上であり、さらに鋼の化学組成が下記の(a)式および(b)式を満足する鋼材を用いた溶接継手であって、溶接熱影響部における硬度値がHv 300以下で、さらに溶接熱影響部における硬度値が母材または溶接金属のいずれか硬度が低い方の硬度の80%以上であることを特徴とする溶接継手。
6≦20C+5Si+10Mn≦30 ・・・(a)
0.01≦C/Mn≦0.10 ・・・(b)
ただし、(a)式および(b)式の元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。 - 鋼の化学組成が、質量%で、C:0.01〜0.10%、Si:0.03〜0.60%、Mn:0.5〜2.0%、sol.Al:0.005%を超えて0.10%まで、N:0.0005〜0.0080%を含有し、残部がFeおよび不純物からなることを特徴とする請求項1に記載の溶接継手。
- 鋼の化学組成が、質量%で、C:0.01〜0.10%、Si:0.03〜0.60%、Mn:0.3〜2.0%、Sol.Al:0.005%を超えて0.10%まで、N:0.0005〜0.0080%、B:0.0003〜0.0030%を含有し、残部がFeおよび不純物からなることを特徴とする請求項1に記載の溶接継手。
- 鋼が、前記の成分に加えてさらに質量%で、Nb:0.08%以下、Ti:0.03%以下およびV:0.08%以下からなる群のうちの1種以上を含有し、下記(a)式および(c)式を満足することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の溶接継手。
6≦20C+5Si+10Mn≦30 ・・・(a)
0.01≦C/(Mn+20Nb+10Ti+5V)≦0.10 ・・・(c)
ただし、(a)式および(c)式の元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。 - 鋼が、前記の成分に加えてさらに質量%で、Cu:0.7%未満、Ni:3.0%以下、Cr:1.0%未満およびMo:0.8%以下からなる群のうちの1種以上を含有し、下記(a)式および(d)式を満足することを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれかに記載の溶接継手。
6≦20C+5Si+10Mn≦30 ・・・(a)
0.01≦C/{Mn+(1/10)Cu+(1/2)Ni+(1/4)Cr+Mo+20Nb+10Ti+5V}≦0.10
・・・(d)
ただし、(a)式および(d)式の元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。 - 鋼が、前記の成分に加えてさらに質量%で、Ca:0.007%以下、Mg:0.007%以下、Ce:0.007%以下、Y:0.5%以下およびNd:0.5%以下からなる群のうちの1種以上を含有し、下記の(a)式および(d)式を満足することを特徴とする請求項2から請求項5までのいずれかに記載の溶接継手。
6≦20C+5Si+10Mn≦30 ・・・(a)
0.01≦C/{Mn+(1/10)Cu+(1/2)Ni+(1/4)Cr+Mo+20Nb+10Ti+5V}≦0.10
・・・(d)
ただし、(a)式および(d)式の元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。
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