JP5849676B2 - 土木建築用高張力鋼板およびその製造方法 - Google Patents

土木建築用高張力鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、土木、建築構造物に用いる土木建築用高張力鋼板およびその製造方法に関し、特に鋼とコンクリートを組み合わせた合成桁の橋梁に用いて好適なものに関する。
従来、橋梁の鋼桁とコンクリート床版(あるいは鋼コンクリート合成床版)とを組み合わせた合成桁を製造する場合、鋼材の弾性域内の特性のみにより設計を行う弾性設計法が用いられてきたが、近年、新たな合理化設計法として鋼材降伏後の塑性変形性能を考慮した塑性設計法が提案されている。(例えば非特許文献1参照)。
塑性設計法では鋼材が塑性変形した際の加工硬化による強度上昇を加味して設計を行うため、使用する鋼材には、土木建築用としての一般的な特性の他に優れた加工硬化率を備えていることが求められる。
従来より、鉄鋼材料の加工硬化率を増加させる手法については数多くの研究がなされており、その手法としては残留オーステナイトの加工誘起変態を利用したもの(特許文献1、特許文献2)、あるいは2相以上の組織から成る複相組織(特許文献3、特許文献4)を利用するものが開示されている。
特開昭55−145121号公報 特開平2−217425号公報 特開昭53−25211号公報 特開平11−279700号公報
土木学会、「鋼・合成構造標準示方書 総則編・構造計画編・設計編」、P244−250、2007.3
ところで、本発明者らは、先に、合成桁(ウェブとフランジを有する鋼桁と、コンクリート床版あるいは鋼コンクリート合成床版とをずれ止めを用いて合成した桁)の曲げ耐荷力性能をSM570鋼材を基として降伏後の応力−ひずみ曲線を種々変化させた鋼材で鋼桁を製作して検討し、曲げ耐荷力性能を向上させた合成桁を提案している(特願2010−277901)。
上記提案には、合成桁の曲げ耐荷力の算定に鋼材降伏後の性能を考慮した塑性理論を用いて、全塑性曲げモーメントが曲げ耐荷力に等しいとして曲げ耐荷力を算定する場合に最適な鋼材について述べられている。
それによれば、降伏棚が無く、降伏直後〜1.0%歪(弾性歪と塑性歪の総和量が1.0%)の変形初期段階での応力上昇率すなわち加工硬化率が大きい鋼材を鋼桁に用いた場合、曲げ耐荷力性能を向上させた合成桁とすることが可能であるが、特許文献1〜4記載の加工硬化率が大きい鋼材を適用することはできない。
すなわち、特許文献1〜3に記載の鋼材は、均一伸び量を増加させることを目的とした組織設計が成され、変形後期段階での加工硬化率を増大させるものである。
特許文献4記載の鋼材は比較的変形初期段階での加工硬化率を増加させたものであるが、ラインパイプ用鋼の耐座屈性を高めることを目的とし、歪域が1〜4%における加工硬化率を増加させる組織設計によるものである。
コンクリート床版と鋼桁から成る合成桁においては、鋼桁に導入される歪み量が1〜3%程度の段階でコンクリート床版が圧壊してしまうため、1〜3%の歪み域において大きな加工硬化が得られても、合成桁の曲げ耐荷力性能を向上させることはできない。
そこで、本発明は、上記提案に係る合成桁に用いて好適な鋼材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は上記課題を解決するため、軟質相と硬質相から成る複相組織鋼を用いて鋼材の加工硬化特性のうち、降伏直後である変形極初期段階の加工硬化特性に及ぼすミクロ組織の影響について鋭意検討し、組織設計に関する以下の知見を得た。
図1に、軟質相と硬質相から成る複相組織鋼の弾性限近傍の応力−歪み曲線と加工硬化率−歪み曲線の模式図を示す。複相組織鋼の弾性変形−塑性変形遷移挙動は図1に示すように3段階考えられ、第1段階では軟質相、硬質相ともに弾性変形のみ生じている。
第2段階では、軟質相の塑性変形が開始するが、硬質相では塑性変形は生じておらず、弾性変形のみ生じる。したがって、複相組織鋼の降伏直後である第2段階では、硬質相の弾性変形により、非常に大きな加工硬化が生じる。
第3段階では、軟質相、硬質相ともに塑性変形が起こる。ここで、歪み量0.2〜1.0%の領域は一般的に第2段階の領域に相当する。したがって、橋梁塑性設計に適した特性である、塑性歪量が0.2%時の応力σ0.2と弾性歪と塑性歪の総和量が1.0%時の応力σ1.0の比σ1.0/σ0.2が大きな鋼板を得るには、軟質相と硬質相による複相化が有効であり、また第2段階における加工硬化が大きくなるような組織設計が必要である。
本発明は得られた知見を基に更に検討を加えてなされたもので、すなわち本発明は、
1.引張試験において降伏棚がなく、塑性歪量が0.2%時の応力σ0.2と、弾性歪と塑性歪の総和量が1.0%時の応力σ1.0の比(σ1.0/σ0.2)が1.060以上1.350以下、前記0.2%時の応力σ0.2が450MPa以上、引張強度TSが590MPa以上であることを特徴とする土木建築用高張力鋼板。
2.ミクロ組織が、フェライト、ベイナイト、パーライト、マルテンサイト(島状マルテンサイトを含む)のうち、2種以上の組織を含む複相組織で、前記複相組織中のフェライト、ベイナイト、パーライト、マルテンサイト(島状マルテンサイトを含む)組織のそれぞれのビッカース硬度をH、H、H、H、それぞれの体積率(%)をV、V、V、Vとし、
複相組織の平均硬度をHAve.=(H+H+H+H)/100 としたとき、(1)式によるΔHが(2)式を満足することを特徴とする1に記載の土木建築用高張力鋼板。
ここで、HAve.−H<0のときには上式でHAve.−H=0を代入することとし、HAve.−H<0のときには上式でHAve.−H=0を代入することとし、HAve.−H<0のときには上式でHAve.−H=0を代入することとし、HAve.−H<0のときには上式でHAve.−H=0を代入することとする。
1.100≦ΔH≦1.350・・・(2)
3.鋼組成が、質量%で、C:0.045〜0.095%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.80〜1.80%、P:0.020%以下、S:0.0050%以下、Mo:0.03〜0.50%、V:0.010〜0.100%、Nb:0.010〜0.100%、Al:0.050%以下、N:0.0060%以下、Ti:0.003〜0.030%を含み、さらに、Mo、V、Nbの1種以上を0.100%≦(Mo+V+Nb)≦0.700%を満足するように含有し、0.350≦Ceq≦0.470である、残部Feおよび不可避的不純物からなる請求項1または2に記載の土木建築用高張力鋼板。
但し、Ceq=C+Mn/6+Cu/15+Ni/15+Cr/5+Mo/5+V/5で各元素は含有量(質量%)
4.鋼組成に、更に、質量%で、Cu:0.10〜0.80%、Ni:0.10〜0.80%、Cr:0.10〜0.80%のうちの1種以上を含むことを特徴とする請求項3に記載の土木建築用高張力鋼板。
5.鋼組成に、更に、質量%で、B:0.0005〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0005〜0.0050%、Mg:0.0005〜0.0050%のうちの1種以上を含むことを特徴とする3または4に記載の土木建築用高張力鋼板。
6.3乃至5のいずれか一つに記載の鋼組成を有する鋼素材を1000〜1200℃に加熱し、表面温度が950℃以下で累積圧下率が30%以上、圧延仕上温度が表面温度で900℃以下750℃超えとなる圧延を行った後、表面温度が750℃以上から6℃/s以上50℃/s以下の平均冷却速度で加速冷却し、表面温度が680℃以下となるように加速冷却を停止することを特徴とする土木建築用高張力鋼板の製造方法。
但し、平均冷却速度は加速冷却開始温度−30℃から冷却停止温度+30℃間での板厚(t)の1/4部における冷却速度の平均値を示す。
7.加速冷却を行った後、650℃以下に焼き戻すことを特徴とする6に記載の土木建築用高張力鋼板の製造方法。
本発明は、少なくともウェブとフランジを有する鋼桁と、コンクリート床版あるいは鋼コンクリート合成床版とをずれ止めを用いて合成させる合成桁において、YSが450MPa級である鋼板による鋼桁が、降伏点から3.0%ひずみまでのいずれのひずみにおいても公称応力/公称ひずみの勾配が正となり、0.2%歪における応力σ0.2に対する1.0%歪における応力σ1.0の比である応力上昇率(σ1.0/σ0.2)が1.060以上である鋼材からなるウェブとフランジを具備していれば、一般的な橋梁設計において鋼桁は全塑性曲げモーメントに到達可能となる。
軟質相、硬質相単相組織と複相組織鋼の応力−歪み曲線と加工硬化率−歪み曲線の模式図 σ1.0/σ0.2とΔHの関係を示す図。 合成桁の曲げ耐荷力Mを全塑性曲げモーメントMで除して無次元化した値:M に及ぼす鋼材の応力上昇率(σ1.0/σ0.2)の影響を示す図。 非線形FEM解析を行う合成桁のモデルを示す図。
以下、本発明を土木建築分野において鋼とコンクリートを組合わせた構造物の一つである合成桁を対象として説明する。本発明に係る土木建築用鋼は、合成桁としての必要な強度を満たすため、応力σ0.2が450MPa以上、引張強度TSが590MPa以上とする。
また、鋼とコンクリートを組み合わせた合成桁の鋼桁に用いた場合に早期破断を起こすことなく曲げ耐荷力が全塑性曲げモーメントに到達可能となるように降伏後の応力−ひずみ曲線で示される変形挙動(応力上昇率)において、塑性歪量が0.2%時の応力σ0.2と、弾性歪と塑性歪の総和量が1.0%時の応力σ1.0の比(σ1.0/σ0.2)を1.060以上1.350以下とする。
図3に合成桁の曲げ耐荷力Mを全塑性曲げモーメントMで除して無次元化した値:M に及ぼす鋼材の応力上昇率(σ1.0/σ0.2)の影響を示す。M が1.0以上であれば、全塑性曲げモーメントに到達、1.0未満であれば、全塑性曲げモーメントに未到達であることを意味している。図よりσ1.0/σ0.2が1.060未満となると、鋼桁が全塑性曲げモーメントに到達できなくなってしまい、合成桁の曲げ耐荷力が著しく小さくなる。
図3は、図4に示すモデルを用いた非線形FEM解析により合成桁の曲げ耐荷力Muに及ぼす鋼材モデル、コンクリートの強度および合成桁の断面諸元の影響を明らかとし、得られた非線形FEM解析の結果のうち、Mu / Mpに及ぼす鋼材特性(鋼材の応力上昇率)の影響について示すものである。
非線形FEM解析において、鋼材モデルは、SM570ベースで引張り試験において降伏棚がなく、応力上昇率の異なる4種類の鋼材とし、コンクリートの強度は、コンクリートの圧縮強度fcとして、fc30:fc= 30 N/mm2、fc40:fc= 40 N/mm2、fc50:fc= 50 N/mm2、fc60:fc= 60 N/mm2とした。
合成桁の断面諸元は、Dt:合成桁断面の全高、Dp :合成桁断面の床版上面から塑性中立軸までの距離として求めるDp / Dtを鋼材の応力−ひずみ関係、コンクリートの応力−ひずみ関係、床版の断面諸元(鋼桁断面を一定とし、床版幅bcを350 mm、470 mm、1340 mm)を変化させ、0.067≦Dp / Dt ≦0.443の範囲とした。
一方で、σ1.0/σ0.2が1.350よりも大きくなると、矯正や溶接により導入されるわずかな塑性歪による局所的な加工硬化が非常に大きく、鋼桁内における局所的な強度差が大きくなる。そのため、塑性設計時に想定されていた合成桁の変形挙動とは大きく異なるものとなり危険である。よってσ1.0/σ0.2値を1.060以上1.350以下に限定する。尚、引張り試験において降伏棚がある鋼材は降伏直後において加工硬化が生じないので、本発明鋼として適当でない。
本発明に係る土木建築用鋼は降伏直後である変形極初期段階の加工硬化特性であるσ1.0/σ0.2値を1.060以上1.350以下とするため、ミクロ組織が、フェライト、ベイナイト、パーライト、マルテンサイト(島状マルテンサイトを含む)のうち、2種以上の組織を含む複相組織で、当該複相組織の平均硬度と各組織のそれぞれの硬度で構成される(1)式によるパラメータΔHが以下の(2)式を満足することが好ましい。
ここで、複相組織中のフェライト、ベイナイト、パーライト、マルテンサイト(島状マルテンサイトを含む)組織のそれぞれのビッカース硬度をH、H、H、H、それぞれの体積率(%)をV、V、V、Vとし、複相組織の平均硬度をHAve.=(H+H+H+H)/100とする。
Ave.−H<0のときには上式でHAve.−H=0を代入することとし、HAve.−H<0のときには上式でHAve.−H=0を代入することとし、HAve.−H<0のときには上式でHAve.−H=0を代入することとし、HAve.−H<0のときには上式でHAve.−H=0を代入することとする。
1.100≦ΔH≦1.350・・・(2)
前述したように、軟質相と硬質相から成る複相組織鋼の場合、降伏直後の歪み量0.2〜1.0%の領域変形極初期段階で大きな加工硬化を得ることが容易なためミクロ組織を、フェライト、ベイナイト、パーライト、マルテンサイト(島状マルテンサイトを含む)のうち、2種以上の組織を含む複相組織鋼とすることが好ましい。
パラメータΔHは複相組織鋼のσ0.2の、軟質相、硬質相の平均強度への依存度と降伏直後の歪み量0.2〜1.0%の領域における流動応力の硬質相の強度への依存度を示すもので、1.100未満になると、σ1.0/σ0.2が1.060未満で、一方で、1.350より大きくなると、σ1.0/σ0.2が1.350よりも大きくなってしまうためΔHの上限値を1.350とした。なお、ΔHは1.150以上、1.300以下とするのが好ましい。
図2に、σ1.0/σ0.2をΔHを用いて整理した結果を示す。σ1.0/σ0.2とΔHのは非常に良い相関性を示し、ΔHが1.150以上1.350以下の領域では、σ1.0/σ0.2が1.060以上1.350以下となっている。
本発明に係る土木建築用鋼の好ましい成分組成と製造条件は以下の様である。
[成分組成] 以下の説明において%はmass%を意味する。
C:0.045〜0.095%
Cは、鋼の強度を向上させる元素であり、引張強度TS:590MPa以上を確保するために、0.045%以上の含有を必要とする。しかし、0.095%を超えてCを過剰に含有すると溶接性が低下するため、0.045〜0.095%とすることが好ましい。より好ましくは0.065〜0.085%である。
Si:0.05〜0.50%
Siは脱酸材として作用し、製鋼上0.05%以上の含有を必要とする。一方、0.50%を超えて含有すると母材靭性が劣化するため、0.05〜0.50%とすることが好ましい。より好ましくは0.10〜0.40%である。
Mn:0.80〜1.80%
Mnは、鋼の焼入れ性の向上を介して強度を向上させる元素である。このような効果を確保するためには0.80%以上の含有を必要とする。一方、1.80%を超える含有は、溶接性を著しく低下させるため、0.80〜1.80%とすることが好ましい。より好ましくは0.90〜1.70%である。
P:0.020%以下
Pは、不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であり、鋼の靭性を低下させるため、できるだけ低減することが望ましい。特に0.020%を超える含有は、著しく靭性を低下させるため、0.020%以下とすることが好ましい。
S:0.0050%以下
Sは、不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であり、鋼の靭性や板厚方向引張試験における絞りを低下させるため、できるだけ低減することが望ましい。特に0.0050%を超える含有は、上記した特性の低下が著しくなるため、0.0050%以下とすることが好ましい。
Mo:0.03〜0.50%
Moは、焼入れ性を増加させ、強度を確保しつつ降伏直後からの加工硬化を大きくする効果があるため0.03%以上を添加することが好ましい。しかし、0.50%を超えると強度が過剰となり、溶接性が損なわれるため、0.03〜0.50%とすることが好ましい。より好ましくは0.1〜0.35%である。
V:0.010〜0.100%
Vは、強度上昇に有効な元素でその効果を得るため0.010%以上とすることが好ましいが、0.100%を超えて含有させてもその効果が飽和するとともに溶接性を劣化させるため、0.010〜0.100%とすることが好ましい。なおより好ましくは0.015〜0.075%である。
Nb:0.010〜0.100%
Nbは、結晶粒微細化作用を有し、低C鋼において非調質でも強度上昇をもたらす元素でありその効果を得るため0.010%以上とすることが好ましいが、0.100%を超えると、靭性及び溶接性を劣化させる傾向があるため、0.010〜0.100%とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.020〜0.065%である。
Al:0.001〜0.050%
Alは、脱酸材として作用する元素であり、溶鋼の脱酸プロセスにおいて、脱酸材としてもっとも汎用的に使用される元素であり、0.001%以上含有することが望ましい。一方、0.050%を超える含有は、粗大な炭化物を形成して、鋼板母材の延性を著しく低下させるため、0.001〜0.050%とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.020〜0.045%である。
N:0.0060%以下
Nは、固溶Nとして存在すると、歪時効後の母材靭性や溶接熱影響部靭性を低下させるため、0.0060%以下とすることが好ましい。
Ti:0.003〜0.030%
Tiは、析出強化により鋼板の強度を向上させるとともに、固溶Nを固定し、溶接熱影響部靭性を改善するために有効な元素であり、このような効果を得るためには0.003%以上とすることが好ましい。一方、0.030%を超えて過剰に含有すると、溶接熱影響部靭性が低下するため、0.003〜0.050%の範囲に限定することが好ましい。
0.100%≦(Mo+V+Nb)≦0.700%
各合金元素は含有量(質量%)とする。
Mo、V、Nbは各元素の含有範囲内で、0.100%≦(Mo+V+Nb)≦0.700%を満足するように含有することが好ましい。Mo、V、Nbは焼入れ性を増加させ、強度を確保しつつ降伏直後からの加工硬化を大きくするために重要な元素である。(Mo+V+Nb)が0.100%未満の範囲では、引張り強さ590MPa以上の強度かつ(σ1.0/σ0.2)が1.060以上を確保することができない。一方、0.700%を超えると、溶接性が低下するとともに、製造コストが高騰する。そのため、Mo、V、Nbは(Mo+V+Nb)が0.100〜0.700%となるように含有することが好ましい。
eq:0.350〜0.470%
eq=C+Mn/6+Cu/15+Ni/15+Cr/5+Mo/5+V/5、各合金元素は含有量(質量%)で含有しない場合は0とする。
eqは強度と溶接性を表す指標である。Ceqが0.350%未満では、必要な強度が得られなく、一方、0.470%を超えると、溶接性が劣化するため、0.350〜0.470%
とすることが好ましい。
以上が基本成分組成で残部Fe及び不可避的不純物とするが、更に所望の特性を向上させる場合、Cu:0.10〜0.80%、Ni:0.10〜0.80%、Cr:0.10〜0.80%、B:0.0005〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0005〜0.0050%、Mg:0.0005〜0.0050%の1種以上を含有してもよい。
Cu:0.10〜0.80%
Cuは、靭性を低下させずに強度を向上させるのに有効な元素であり、このような効果を得るには0.10%以上の含有が必要である。一方、0.80%を超える含有は、熱間圧延時に表面疵を多発させる。このため、含有させる場合は0.10〜0.80%とすることが好ましい。
Ni:0.10〜0.80%
Niは、靭性を低下させずに強度を向上させるのに有効な元素であり、このような効果を得るには0.10%以上の含有が必要である。一方、0.80%を超える含有は、効果が飽和して含有量に見合う効果が期待できずに経済的に不利となるため、含有させる場合は0.10〜0.80%とすることが好ましい。
Cr:0.10〜0.80%
Crは、靭性を低下せずに強度を向上させるのに有効な元素であり、このような効果を得るには0.10%以上の含有が必要である。一方、0.80%を超える含有は、溶接性を低下させるため、含有させる場合は0.10〜0.80%とすることが好ましい。
B:0.0005〜0.0050%
Bは、極微量の含有で焼入れ性を向上させ、それにより鋼板の強度を向上させるのに有効な元素であり、このような効果を得るには0.0005%以上の含有を必要とする。一方、0.0050%を超えて含有すると、溶接性が低下するため、含有させる場合は0.0005〜0.0050%とすることが好ましい。
Ca:0.0005〜0.0050%
Caは、Sを固定することによってMnSの生成を抑制して、板厚方向の絞り特性を改善し、また、溶接熱影響部靭性を改善する効果を有する。このような効果を得るためには、0.0005%以上の含有を必要とする。一方、0.0050%を超える過剰の含有は、母材靭性を低下させる。このため、含有する場合は0.0005〜0.0050%とすることが好ましい。
REM:0.0005〜0.0050%
REMは、Sを固定することによってMnSの生成を抑制して、板厚方向の絞り特性を改善し、また、溶接熱影響部靭性を改善する効果を有する。このような効果を得るためには、0.0005%以上の含有を必要とする。一方、0.0050%を超えると、母材靭性を低下させる。このため、含有する場合は0.0005〜0.0050%とすることが好ましい。
Mg:0.0005〜0.0050%
Mgは、溶接熱影響部においてオーステナイト粒の成長を抑制し、溶接熱影響部靭性の改善に有効な元素である。このような効果を得るためには、0.0005%以上の含有が必要である。一方、0.0050%を超える含有は、効果が飽和して含有量に見合う効果が期待できずに経済的に不利となるため、含有する場合は0.0005〜0.0050%とすることが好ましい。
[製造条件]
スラブ加熱条件:スラブ加熱温度が1000〜1200℃
スラブ加熱温度は完全にオーステナイト化するため1000℃以上とする。一方、1200℃を超える温度まで加熱すると、TiNによりピン止めされていてもオーステナイト粒が著しく粗大化して、母材靭性が劣化するため、1000〜1200℃以下とすることが好ましい。
熱間圧延条件:鋼板表面温度が950℃以下での累積圧下率(CR率)が30%以上で、圧延仕上温度が900℃以下、750℃超え
オーステナイト未再結晶域の比較的高温で圧延を行うことで、粗大オーステナイト粒の生成等の混粒化が抑制される。累積圧下率が30%未満では十分な効果が期待できないため、鋼板表面温度が950℃以下での累積圧下率を30%以上とすることが好ましい。
また、圧延仕上温度が鋼板表面温度で900℃超えの場合、その後の冷却によって複相組織が得られず、一方、750℃以下になると、生成した初析フェライト中に転位が導入されて降伏直後において大きな加工硬化が得られなくなるので、900℃以下、750℃超えとすることが好ましい。
熱間圧延後の加速冷却条件:冷却開始温度が鋼板表面温度で750℃以上で、平均冷却速度:6℃/s以上、50℃/s以下、冷却停止温度:680℃以下
冷却開始温度が750℃未満になると、フェライト量が顕著に増加して強度が低下し、降伏棚が発現するようになり、本発明で規定した土木建築用鋼として特性が損なわれるので、750℃以上とすることが好ましい。
平均冷却速度が6℃/s未満の場合、十分な強度が得られない。一方、冷却速度が50℃/s超えになると、軟質相、硬質相から成る複相組織鋼において硬質相の量が過多となり降伏直後の大きな加工硬化が得られなくなるため、平均冷却速度は6℃/s以上、50℃/s以下とすることが好ましい。なお、平均冷却速度は加速冷却開始温度−30℃から冷却停止温度+30℃間での板厚(t)の1/4部における冷却速度の平均値を示す。
冷却停止温度が680℃超えになると、粗大フェライトが多量に生成して、強度低下や、降伏棚が生じるため、冷却停止温度は680℃以下とすることが好ましい。加速冷却を行った後、650℃以下に焼戻しても良い。焼戻し温度が650℃より大きくなると、硬質相の軟化が著しく進行し、強度低下、降伏直後の加工硬化率の低下を招くため、焼戻し温度を行う場合は、650℃とすることが好ましい。
表1に示した成分の鋼(A〜I:本発明鋼、J〜M:比較鋼)を、表2に示した条件で制御圧延し、種々の厚鋼板を得た。
得られた厚鋼板について、組織観察、微小硬度試験、引張試験を実施し、組織、引張特性を調査した。各試験方法は以下の通りである。
(1)組織観察
板厚(t)の1/4位置から組織観察用試料を採取し、L方向断面を機械研磨、ナイタールで腐食し、走査型電子顕微鏡(SEM)により3視野以上観察し、画像解析により各組織の面積分率を求めた。なお、組織は均一であるものと仮定して、面積分率の値を体積分率の値と同じものとみなして、ΔHの算出に用いた。
(2)微小硬度試験
板厚(t)の1/4位置より微小硬度試験用試料を採取し、L方向断面を機械研磨し、さらに電解研磨により機械研磨歪を除去した後、微小硬度試験機を用いて押し込み最大荷重0.1gにて各組織について20点測定し、その平均値を各組織の硬度とした。
(3)引張試験
厚鋼板の長手方向から板厚(t)の1/4位置からJIS Z2201の規定に準拠して、JIS14A号試験片を採取し、JISZ2241の規定に準拠して引張試験を行い、得られた公称応力−公称歪み曲線より各種引張特性(0.2%耐力、引張強度、σ1.0/σ0.2)を求めた。
表2の1〜4に各種試験より得られた測定結果を製造条件に併せて示す。本発明鋼はいずれも降伏棚が生じない、YSが450MPa以上、引張強度TSが590MPa以上、σ1.0/σ0.2が1.060以上1.350以下を満足する高張力鋼板となっている。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、降伏棚が生じる、強度不足、またはσ1.0/σ0.2が1.060以上1.350以下の範囲より外れている。

Claims (5)

  1. 鋼組成が、質量%で、C:0.045〜0.095%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.80〜1.80%、P:0.020%以下、S:0.0050%以下、Mo:0.03〜0.50%、V:0.010〜0.100%、Nb:0.010〜0.100%、Al:0.050%以下、N:0.0060%以下、Ti:0.003〜0.030%を含み、さらに、Mo、V、Nbの1種以上を0.100%≦(Mo+V+Nb)≦0.700%を満足するように含有し、0.350≦C eq ≦0.470である、残部Feおよび不可避的不純物からなり、
    引張試験において、塑性歪量が0.2%時の応力σ0.2と、弾性歪と塑性歪の総和量が1.0%時の応力σ1.0の比(σ1.0/σ0.2)が1.060以上1.350以下、前記0.2%時の応力σ0.2が450MPa以上、引張強度TSが590MPa以上であり、
    ミクロ組織が、フェライト、ベイナイト、パーライト、マルテンサイト(島状マルテンサイトを含む)のうち、2種以上の組織を含む複相組織であることを特徴とする土木建築用高張力鋼板。
    但し、C eq =C+Mn/6+Cu/15+Ni/15+Cr/5+Mo/5+V/5で各元素は含有量(質量%)
  2. 鋼組成に、更に、質量%で、Cu:0.10〜0.80%、Ni:0.10〜0.80%、Cr:0.10〜0.80%のうちの1種以上を含むことを特徴とする請求項に記載の土木建築用高張力鋼板。
  3. 鋼組成に、更に、質量%で、B:0.0005〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0005〜0.0050%のうちの1種以上を含むことを特徴とする請求項またはに記載の土木建築用高張力鋼板。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の土木建築用高張力鋼板の製造方法であって、
    素材を1000〜1200℃に加熱し、表面温度が950℃以下で累積圧下率が30%以上、圧延仕上温度が表面温度で900℃以下750℃超えとなる圧延を行った後、表面温度が750℃以上から6℃/s以上50℃/s以下の平均冷却速度で加速冷却し、表面温度が680℃以下となるように加速冷却を停止することを特徴とする土木建築用高張力鋼板の製造方法。
    但し、平均冷却速度は加速冷却開始温度−30℃から冷却停止温度+30℃間での板厚(t)の1/4部における冷却速度の平均値を示す。
  5. 加速冷却を行った後、650℃以下に焼き戻すことを特徴とする請求項に記載の土木建築用高張力鋼板の製造方法。
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