JP2008261030A - 脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】大型構造用鋼として十分なアレスト性を有し、しかも工業的に安定的かつ効率的な製造が可能な、脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】質量%でC:0.01〜0.14%、Si:0.03〜0.5%、Mn:0.3〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Nb:0.005〜0.050%、Ti:0.005〜0.050%、Al:0.002〜0.10%、N:0.0010〜0.0080%を含有し、残部鉄及び不可避不純物からなる鋼片を950〜1150℃に加熱し、900℃以上での累積圧下率30%以上の粗圧延後、Ar3+20℃〜850℃での累積圧下率25%以上の仕上一次圧延を行い、さらにAr3〜Ar3+50℃での、各パス圧下率12%以上で2パス以上の仕上二次圧延を行い、Ar3以上の温度から、板厚平均8℃/s以上で500℃以下まで加速冷却することを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】質量%でC:0.01〜0.14%、Si:0.03〜0.5%、Mn:0.3〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Nb:0.005〜0.050%、Ti:0.005〜0.050%、Al:0.002〜0.10%、N:0.0010〜0.0080%を含有し、残部鉄及び不可避不純物からなる鋼片を950〜1150℃に加熱し、900℃以上での累積圧下率30%以上の粗圧延後、Ar3+20℃〜850℃での累積圧下率25%以上の仕上一次圧延を行い、さらにAr3〜Ar3+50℃での、各パス圧下率12%以上で2パス以上の仕上二次圧延を行い、Ar3以上の温度から、板厚平均8℃/s以上で500℃以下まで加速冷却することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、脆性き裂伝播停止特性(以下、アレスト性とも言う。)に優れた厚手高強度鋼板(以下、厚手高強度高アレスト鋼板または単に高アレスト鋼板とも言う。)の製造方法に関し、特に、板厚50mm以上の厚手材(以下、単に厚手材とも言う。)で、降伏強度355〜460MPa級でも、Kca=6000N/mm1.5となる温度(以下、アレスト性指標TKca=6000とも言う。)が−10℃以下となる、脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法に関する。本発明を適用した鋼板は、造船、建築、橋梁、タンク、海洋構造物等の溶接構造物に適用される。また、本発明鋼板は、鋼管、コラム等に加工した二次加工品として流通する場合もある。
近年の鋼構造物の大型化にともない、使用される鋼材の厚手高強度化とともに、安全性確保の観点から脆性き裂伝播停止特性への要求が厳しくなってきている。ところが、一般に強度や板厚が大きくなると、アレスト性の確保は急激に困難さを増し、鋼構造物への厚手高強度鋼板の適用を阻害する要因となっている。同時に需要家の短納期化に対する要望も年々大きくなり、鋼板製造工程における生産性向上が強く望まれている。
鋼材のアレスト性を向上させる冶金学的な要因としては、(i)結晶粒微細化、(ii)Ni添加、(iii)脆化第二相制御、(iv)集合組織制御等が知られている。
鋼材のアレスト性を向上させる冶金学的な要因としては、(i)結晶粒微細化、(ii)Ni添加、(iii)脆化第二相制御、(iv)集合組織制御等が知られている。
(i)の結晶粒を微細化する方法については、特許文献1に記載された技術がある。これは、Ar3点以上の未再結晶域で圧下率50%以上の圧延を施した後、700〜750℃の範囲で30〜50%の二相域圧延を行う方法である。また、鋼板の結晶粒を微細化する特殊な方法として、圧延前または粗圧延終了後に鋼片表面を冷却し、内部との温度差をつけたまま圧延開始して復熱させることにより表層部に細粒フェライトを生成させる方法が特許文献2、3に記載されている。
(ii)のNi添加は、低温域における交差すべりを助長することで、脆性き裂の伝播を抑制し(非特許文献1参照。)、マトリクスのアレスト性を向上させるといわれている(非特許文献2参照。)。
(iii)の脆化第二相を制御する方法としては、特許文献4に記載された技術がある。これは、母相のフェライト中に脆化相であるマルテンサイトを微細分散させる技術である。
(iv)の集合組織制御に関しては、極低炭素のベイナイト鋼で低温大圧下圧延を行い、圧延面に並行に(211)面を発達させる方法が特許文献5に記載されている。
特開平02−129318号公報
特公平06−004903号公報
特開2003−221619号公報
特開昭59−047323号公報
特開2002−241891号公報
田村今男著、「鉄鋼材料強度学」、日刊工業新聞社発行、1969年7月5日、p.125
長谷部、川口、「テーパ形DCB試験によるNi添加鋼板の脆性破壊伝播停止特性について」、鉄と鋼、vol.61(1975)、p.875
(iii)の脆化第二相を制御する方法としては、特許文献4に記載された技術がある。これは、母相のフェライト中に脆化相であるマルテンサイトを微細分散させる技術である。
(iv)の集合組織制御に関しては、極低炭素のベイナイト鋼で低温大圧下圧延を行い、圧延面に並行に(211)面を発達させる方法が特許文献5に記載されている。
しかし、特許文献1に記載された方法は、ミクロ組織がフェライト(α)主体で強度が比較的低く、板厚も20mm程度の低温用鋼を対象としたものであり、本発明が対象とするような板厚50mm以上の厚手材に適用する場合には、スラブ厚の観点からそもそも圧下率確保が困難で、温度待ち時間が長くなり生産性が著しく低下してしまうという問題がある。
また、特許文献2、3に記載されている発明を、本発明が対象とするような厚手材に適用しようとする場合は、組織形態が同じであってもアレスト性確保は困難となり、表層フェライト微細化による効果は相対的に小さくなるという問題がある。さらに、製造プロセスとしても板厚方向の温度制御がさらに困難となるとともに、復熱過程での圧延圧下率を大きくせざるを得ず、生産性を大きく阻害するという問題がある。
また、上記(ii)のようにNi添加で所望のアレスト性を有する鋼板を製造するには合金コストがかかりすぎるという問題がある。
また、上記(ii)のようにNi添加で所望のアレスト性を有する鋼板を製造するには合金コストがかかりすぎるという問題がある。
また、厚手材では、特許文献4に記載された発明のように、マルテンサイトを微細に分散させることは困難である。さらに、厚手高強度鋼板においては、この種の脆化相は脆性破壊発生特性を低下させてしまうおそれがある。
また、特許文献5に記載された発明は、厚手材に適用すると、圧延効率が極端に低下してしまい、工業的生産には適さないという問題がある。
また、特許文献5に記載された発明は、厚手材に適用すると、圧延効率が極端に低下してしまい、工業的生産には適さないという問題がある。
以上のように、本発明が対象とする、板厚が50mm以上の厚手材で、降伏強度が355〜460MPa級でも、アレスト性指標TKca=6000が−10℃以下となる、大型構造物に適用可能な、高アレスト鋼板を安定的かつ効率的に製造する技術はいまだ確立されていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、大型構造用鋼として十分なアレスト性を有し、しかも工業的に安定的かつ効率的な製造が可能な、脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決し得る脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法であり、その要旨とするところは次の通りである。
(1) 質量%で、C:0.01〜0.14%、Si:0.03〜0.5%、Mn:0.3〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Nb:0.005〜0.050%、Ti:0.005〜0.050%、Al:0.002〜0.10%、N:0.0010〜0.0080%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼片を、950〜1150℃に加熱し、900℃以上の温度で累積圧下率30%以上の粗圧延を行った後、Ar3+20℃〜850℃の温度で累積圧下率25%以上の仕上一次圧延を行い、さらにAr3〜Ar3+50℃の温度において、各パス圧下率12%以上で、2パス以上の仕上二次圧延を行い、引き続きAr3以上の温度から、板厚平均で8℃/s以上の冷却速度で500℃以下の温度まで加速冷却を行うことを特徴とする、脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法。
(2) 前記加速冷却終了後、300〜600℃の温度で焼戻し処理することを特徴とする、上記(1)に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法。
(3) さらに、質量%で、Cu:0.05〜1.5%、Cr:0.05〜1.0%、Mo:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜2.0%、V:0.005〜0.10%、B:0.0002〜0.0030%の1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法。
(4) さらに、質量%で、Mg:0.0003〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.0030%、REM:0.0005〜0.010%の1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法。
(1) 質量%で、C:0.01〜0.14%、Si:0.03〜0.5%、Mn:0.3〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Nb:0.005〜0.050%、Ti:0.005〜0.050%、Al:0.002〜0.10%、N:0.0010〜0.0080%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼片を、950〜1150℃に加熱し、900℃以上の温度で累積圧下率30%以上の粗圧延を行った後、Ar3+20℃〜850℃の温度で累積圧下率25%以上の仕上一次圧延を行い、さらにAr3〜Ar3+50℃の温度において、各パス圧下率12%以上で、2パス以上の仕上二次圧延を行い、引き続きAr3以上の温度から、板厚平均で8℃/s以上の冷却速度で500℃以下の温度まで加速冷却を行うことを特徴とする、脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法。
(2) 前記加速冷却終了後、300〜600℃の温度で焼戻し処理することを特徴とする、上記(1)に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法。
(3) さらに、質量%で、Cu:0.05〜1.5%、Cr:0.05〜1.0%、Mo:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜2.0%、V:0.005〜0.10%、B:0.0002〜0.0030%の1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法。
(4) さらに、質量%で、Mg:0.0003〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.0030%、REM:0.0005〜0.010%の1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法。
本発明の適用によって、板厚が50mm以上の厚手材で、降伏強度が355〜460MPa級でも、アレスト性指標TKca=6000が−10℃以下となる、大型構造物に適用可能な高アレスト鋼板を、安定的な製造方法により提供することが可能になることから、産業上の効果は極めて大きい。
一般に鋼板のアレスト特性は、温度勾配型ESSO試験や二重引張試験によって評価される。試験後の破面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、ティアリッジと呼ばれる延性破壊部で囲まれたへき開面の単位を「破面単位」と定義すると、この破面単位が細かいほどアレスト性が向上することが知られている。そこで、破面単位を効率的に微細化する手段について、種々の実験的検証を行った。
まず、通常の組織微細化の手段として有効とされる、オーステナイト(γ)未再結晶温度域における制御圧延(Controlled Rolling;CR)と、引き続き行われることの多い加速冷却の影響を検討した。具体的には、降伏強度355MPa級の鋼片を用いて、種々の圧延・冷却条件で板厚50mm材を製造して、温度勾配型ESSO試験によりアレスト性を評価し、さらにミクロ組織観察と破面単位測定を行い、アレスト性との相関を調査した。その結果、概ね圧延温度が低く、累積圧下率が大きいほど、そして冷却速度が大きく、冷却停止温度が低いほどアレスト性が向上する傾向を確認した。ところが、ミクロ組織(この場合はα粒径)が細かくても破面単位が細かくならないケースが認められた。この原因を明らかにするため、後方散乱電子回折(Electron Back Scattering Pattern:EBSP)により破面と垂直な断面の結晶方位解析を行い、SEMによる破面観察結果と対比させたところ、一つのα粒が一つの破面単位に相当するわけではなく、隣接する他のα粒(またはベイナイト)と合わさって破面単位を構成していることが判明した。なお、この実効的な破壊の単位を、α粒径等と区別するために、有効結晶粒径と呼ぶことがある。
そこで本発明者らは、有効結晶粒径を微細化し、アレスト性をさらに向上させるべく、圧延のパススケジュールまで含めて詳細な検討を行った。その結果、CRの最終段階において、Ar3直上の温度域で1パス当たりの圧下率を大きくすることにより、アレスト性を向上させ得る事実を知見した。このような圧延を便宜的に仕上二次圧延と呼び、CRの初期段階の圧延を仕上一次圧延と呼ぶことにする。仕上二次圧延を適切な条件で実施すると、γ粒界のレッジや変形帯と呼ばれる不均一な変形組織の生成が促進され、有効結晶粒を構成する組織の方位がよりランダム化することで、有効結晶粒径が細かくなるものと推定される。
さらに、板厚50mm以上の厚手材でアレスト性指標TKca=6000を−10℃以下とするのに必要な仕上二次圧延条件について検討を行い、以下の知見を得た。まず、仕上二次圧延の各パス圧下率の影響を明らかにするため、温度をAr3+20℃狙い、パス数を2パスとして、各パス圧下率を種々変化させた場合のアレスト性を評価した。その結果を図1に示す。これより、各パスの圧下率としては12%以上が必要であることがわかる。各パス圧下率が大きいほどアレスト性は向上するため、上限を設ける必要はないが、通常は圧延機の能力により自ずと制限される。図2には、圧延温度をAr3+20℃狙い、各パス圧下率を14%として、パス数を変化させたときのアレスト性を示したが、これより2パス以上の圧下を加える必要があることがわかる。図3には、各パス圧下率を14%、パス数を2パスとして、圧延温度を種々変化させた場合のアレスト性の変化を示す。これより、仕上二次圧延の温度はAr3〜Ar3+50℃とする必要があることがわかる。Ar3よりも低くなると、表層に粗大な加工αが生成するため、アレスト性だけでなく、強度、靭性、延性までもが低下してしまう。一方、Ar3+50℃よりも高くなると、有効結晶粒径が微細化せず、アレスト性が低下する。
続いて本発明におけるその他の製造条件の限定理由について説明する。
本発明では鋼片の加熱温度を950〜1150℃とした。再加熱温度が950℃未満では合金元素の溶体化が不十分で材質不均一の原因となり、1150℃を超えると加熱γ粒径が粗大化してしまい最終的な組織微細化が困難になるおそれがある。
次の粗圧延は900℃以上の温度、30%以上の累積圧下率で行う必要がある。これらの条件を満たさないとγの再結晶が十分進行せず混粒組織となり、材質不均一の原因となり得る。
本発明では鋼片の加熱温度を950〜1150℃とした。再加熱温度が950℃未満では合金元素の溶体化が不十分で材質不均一の原因となり、1150℃を超えると加熱γ粒径が粗大化してしまい最終的な組織微細化が困難になるおそれがある。
次の粗圧延は900℃以上の温度、30%以上の累積圧下率で行う必要がある。これらの条件を満たさないとγの再結晶が十分進行せず混粒組織となり、材質不均一の原因となり得る。
引き続き行う仕上一次圧延は、二次圧延の前工程としてγ偏平化、転位導入等の観点から重要な工程であり、Ar3+20℃〜850℃の温度、25%以上の累積圧下率で実施する。温度がAr3+20℃未満であると、次の二次圧延工程でAr3以上の温度を確保することが困難となる。一方、圧延温度が850℃を超える、または累積圧下率が25%未満であると、γの偏平化や転位の導入が不十分となる可能性がある。なお、一次圧延工程では各パス圧下率の影響はそれほど大きくなく、効果は累積的であることを確認している。
次の仕上二次圧延は、上述したとおり、Ar3〜Ar3+50℃の温度において、各パス圧下率12%以上で、2パス以上の圧延を実施するとよい。
なお、仕上一次圧延と二次圧延は、実際上区別する必要はなく、連続的に行っても構わない。また、一次圧延終了時の温度が高い場合には、適切な条件で冷却を行ってもよい。
なお、仕上一次圧延と二次圧延は、実際上区別する必要はなく、連続的に行っても構わない。また、一次圧延終了時の温度が高い場合には、適切な条件で冷却を行ってもよい。
仕上二次圧延完了後はAr3以上の温度から、板厚平均で8℃/s以上の冷却速度で、500℃以下の温度まで加速冷却を行う。冷却開始温度がAr3を切ると表層部に粗大フェライトが生成し、強度とアレスト性が低下してしまう。冷却速度が8℃/s未満、あるいは冷却停止温度が500℃よりも高いと、強度が不足するだけでなく、有効結晶粒径の微細化が不十分となり、アレスト性が低下してしまう。
加速冷却後は、強度・靭性を調整するために300〜600℃の温度で焼戻し処理を行ってもよい。温度が300℃未満では延性や靭性の改善が十分でなく、600℃を超えるとセメンタイトが粗大化して脆性破壊の発生を助長するため、アレスト性が低下してしまう。
次に、本発明の成分限定理由について説明する。
Cは、安価に強度を高めるのに不可欠な元素であるため0.01%以上添加する。一方、添加量が増えると大入熱HAZ靭性確保が困難となるため0.14%を上限とする。
Siは、安価な脱酸元素であり、マトリクスを固溶強化するため0.03%以上添加するが、0.5%を超えると溶接性とHAZ靭性を劣化させるため上限を0.5%とする。
Mnは、母材の強度・靭性を向上させる元素として有効であるため0.3%以上添加するが、過剰添加はHAZ靭性、溶接割れ性を劣化させるため2.0%を上限とする。
P、Sは、含有量が少ないほど望ましいが、これを工業的に低減させるためには多大なコストがかかることから、Pは0.02%、Sは0.01%を上限とする。
Cは、安価に強度を高めるのに不可欠な元素であるため0.01%以上添加する。一方、添加量が増えると大入熱HAZ靭性確保が困難となるため0.14%を上限とする。
Siは、安価な脱酸元素であり、マトリクスを固溶強化するため0.03%以上添加するが、0.5%を超えると溶接性とHAZ靭性を劣化させるため上限を0.5%とする。
Mnは、母材の強度・靭性を向上させる元素として有効であるため0.3%以上添加するが、過剰添加はHAZ靭性、溶接割れ性を劣化させるため2.0%を上限とする。
P、Sは、含有量が少ないほど望ましいが、これを工業的に低減させるためには多大なコストがかかることから、Pは0.02%、Sは0.01%を上限とする。
Nbは、微量の添加により組織微細化、変態強化、析出強化に寄与し、母材強度確保に有効な元素であるため0.005%以上添加するが、過剰に添加するとHAZを硬化させ著しく靭性を劣化させるため0.050%を上限とする。
Tiは、微量の添加により組織微細化、析出強化、微細TiN生成により母材の強度・靭性、HAZ靭性向上に有効であるため0.005%以上添加するが、過剰に添加するとHAZ靭性を著しく劣化させるため0.050%を上限とする。
Alは、重要な脱酸元素であるため0.002%以上添加するが、過剰に添加すると鋼片の表面品位を損ない、靭性に有害な介在物を形成するため0.10%を上限とする。
Nは、Tiと共に窒化物を形成しHAZ靭性を向上させるため0.0010%以上添加するが、過剰に添加すると固溶Nによる脆化が生じるため0.0080%以下に限定する。
Tiは、微量の添加により組織微細化、析出強化、微細TiN生成により母材の強度・靭性、HAZ靭性向上に有効であるため0.005%以上添加するが、過剰に添加するとHAZ靭性を著しく劣化させるため0.050%を上限とする。
Alは、重要な脱酸元素であるため0.002%以上添加するが、過剰に添加すると鋼片の表面品位を損ない、靭性に有害な介在物を形成するため0.10%を上限とする。
Nは、Tiと共に窒化物を形成しHAZ靭性を向上させるため0.0010%以上添加するが、過剰に添加すると固溶Nによる脆化が生じるため0.0080%以下に限定する。
選択添加元素は以下の理由により限定する。
Cu、Cr、Moは、いずれも焼入れ性を向上させ、高強度化に有効であるため、0.05%以上添加してもよい。ただし、過度の添加はHAZ靭性を低下させるため、Cuは1.5%以下、CrおよびMoは1.0%以下に制限する。
Niは、強度確保とアレスト性、HAZ靭性向上に有効であるため0.05%以上添加してもよい。ただし、Ni量の増加は鋼片コストを上昇させるため2.0%以下に制限する。
Vは、析出強化により強度上昇に寄与するため0.005%以上添加してもよい。ただし、0.10%超添加するとHAZ靭性を低下させるため、これを上限とする。
Bは、焼入れ性を向上させる元素であり、適量添加により鋼の強度を高めるのに有効であるため0.0002%以上添加してもよい。ただし、過度の添加は溶接性を損ねるため、0.0030%以下に制限する。
Cu、Cr、Moは、いずれも焼入れ性を向上させ、高強度化に有効であるため、0.05%以上添加してもよい。ただし、過度の添加はHAZ靭性を低下させるため、Cuは1.5%以下、CrおよびMoは1.0%以下に制限する。
Niは、強度確保とアレスト性、HAZ靭性向上に有効であるため0.05%以上添加してもよい。ただし、Ni量の増加は鋼片コストを上昇させるため2.0%以下に制限する。
Vは、析出強化により強度上昇に寄与するため0.005%以上添加してもよい。ただし、0.10%超添加するとHAZ靭性を低下させるため、これを上限とする。
Bは、焼入れ性を向上させる元素であり、適量添加により鋼の強度を高めるのに有効であるため0.0002%以上添加してもよい。ただし、過度の添加は溶接性を損ねるため、0.0030%以下に制限する。
Mg、Ca、REMは、微細な酸化物や硫化物を形成しHAZ靭性向上に寄与するため添加してもよいが、過度の添加は介在物を粗大化させ靭性を低下させるため、Mgは0.0003〜0.0050%、Caは0.0005〜0.0030%、REMは0.0005〜0.010%の範囲に制限する。なお、REMとはLa、Ce等の希土類元素のことである。
表1の化学成分を有する鋼片を用いて、表2、3の製造条件により板厚50〜80mmの鋼板を試作した。表4に母材強度とアレスト性を示す。降伏強度(YP)、引張強度(TS)は、板厚中心部から圧延方向と直角の方向に採取したJIS Z 2201の4号引張試験片を用いて評価した。アレスト性についてはWES 3003に記載されている方法をもとに温度勾配型ESSO試験を行い、Kca=6000N/mm1.5を示す温度にて評価した。
本発明例のNo.1〜15は化学成分が所定の範囲内にあり、かつ所定の条件で製造したため、いずれもYP:355〜460MPa級鋼として十分な強度を有しており、アレスト性指標TKca=6000も−10℃以下と良好であった。
一方、比較例のNo.16〜30は化学成分、製造条件のいずれかが本発明の範囲を逸脱していたために、アレスト性が低下してしまった。
No.25は加熱温度が高かった、No.24は粗圧延の累積圧下率が小さかった、No.23は仕上一次圧延の温度が高かった、No.28は仕上一次圧延の累積圧下率が小さかったために、有効結晶粒径が微細化されず、アレスト性が低下した。
No.22は仕上二次圧延の各パス圧下率が小さかった、No.20、27は二次圧延のパス数が2未満であった、No.18は二次圧延の温度が高かったために、いずれも有効結晶粒径が大きくなり、アレスト性が低下してしまった。
No.25は加熱温度が高かった、No.24は粗圧延の累積圧下率が小さかった、No.23は仕上一次圧延の温度が高かった、No.28は仕上一次圧延の累積圧下率が小さかったために、有効結晶粒径が微細化されず、アレスト性が低下した。
No.22は仕上二次圧延の各パス圧下率が小さかった、No.20、27は二次圧延のパス数が2未満であった、No.18は二次圧延の温度が高かったために、いずれも有効結晶粒径が大きくなり、アレスト性が低下してしまった。
No.16は仕上一次圧延終了から二次圧延の温度がAr3より低くなってしまい、表層部に粗大なフェライトが生成したため、強度とアレスト性が低下した。
No.21は、圧延終了温度はAr3以上であったが、加速冷却開始温度がAr3を切ったため、やはり表層粗大フェライトが生成し、アレスト性が低下した。
No.17は加速冷却の冷却速度が小さかった、No.26は冷却停止温度が500℃よりも高かったため、いずれも有効結晶粒径が大きくなり、十分なアレスト性が得られなかった。
No.21は、圧延終了温度はAr3以上であったが、加速冷却開始温度がAr3を切ったため、やはり表層粗大フェライトが生成し、アレスト性が低下した。
No.17は加速冷却の冷却速度が小さかった、No.26は冷却停止温度が500℃よりも高かったため、いずれも有効結晶粒径が大きくなり、十分なアレスト性が得られなかった。
No.19は熱処理温度が600℃超であったため、セメンタイトが粗大化し、アレスト性が低下した。
No.29はC含有量が多かったために強度が過大となり、アレスト性が低下してしまった。
No.30はNb量が多かったために、加熱時に残存した粗大な未固溶Nbが脆性破壊の起点となり、アレスト性が低下した。
No.29はC含有量が多かったために強度が過大となり、アレスト性が低下してしまった。
No.30はNb量が多かったために、加熱時に残存した粗大な未固溶Nbが脆性破壊の起点となり、アレスト性が低下した。
Claims (4)
- 質量%で、
C :0.01〜0.14%、
Si:0.03〜0.5%、
Mn:0.3〜2.0%、
P :0.020%以下、
S :0.010%以下、
Nb:0.005〜0.050%、
Ti:0.005〜0.050%、
Al:0.002〜0.10%、
N :0.0010〜0.0080%
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼片を、950〜1150℃に加熱し、900℃以上の温度で累積圧下率30%以上の粗圧延を行った後、Ar3+20℃〜850℃の温度で累積圧下率25%以上の仕上一次圧延を行い、さらにAr3〜Ar3+50℃の温度において、各パス圧下率12%以上で、2パス以上の仕上二次圧延を行い、引き続きAr3以上の温度から、板厚平均で8℃/s以上の冷却速度で500℃以下の温度まで加速冷却を行うことを特徴とする、脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法。 - 前記加速冷却終了後、300〜600℃の温度で焼戻し処理することを特徴とする、請求項1に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法。
- さらに、質量%で、
Cu:0.05〜1.5%、
Cr:0.05〜1.0%、
Mo:0.05〜1.0%、
Ni:0.05〜2.0%、
V :0.005〜0.10%、
B :0.0002〜0.0030%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法。 - さらに、質量%で、
Mg:0.0003〜0.0050%、
Ca:0.0005〜0.0030%、
REM:0.0005〜0.010%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法。
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- 2007-04-13 JP JP2007105733A patent/JP2008261030A/ja not_active Withdrawn
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