JP2006169541A - プリプレグ - Google Patents

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Abstract

【課題】プリプレグのタックが良好で経時変化が小さく、かつ、耐衝撃性を維持したまま吸湿後の高温における圧縮層間剪断強度(CILS)および交差積層板圧縮強度(LCS)の優れた繊維強化複合材料を与え得るプリプレグを提供する。
【解決手段】要件[A]を満足する炭素繊維に、要件[B]の樹脂を含浸せしめたプリプレグにおいて、要件[C]を満足する粒子がプリプレグ中に20重量%以下存在し、プリプレグの内部よりも表面に高濃度に分布することを特徴とするプリプレグ。
[A]:フックドロップ値が10cm以上である連続繊維からなる炭素繊維
[B]:熱硬化性樹脂を主体としてなるベース樹脂
[C]:熱可塑性樹脂を素材とする粒径150μm以下の粒子。
【選択図】 なし

Description

本発明は、繊維強化複合材料用マトリックス樹脂として好適な熱硬化性樹脂を炭素繊維に含浸させて得られる、特に耐衝撃性に優れ、交差積層板圧縮強度の高いコンポジットの製造に供せられるプリプレグに関するものである。
熱硬化性樹脂をマトリックスとする繊維強化複合材料は、軽量で力学特性、耐食性などが優れていることから、これまで、航空・宇宙、スポーツ、土木・建築などの産業分野で広く用いられており、これまでにも、種々の熱硬化性樹脂と強化繊維の組合わせによるプリプレグ、複合材料が知られている。なかでも、エポキシ樹脂と炭素繊維からなるプリプレグは、比強度、比弾性率に優れ、複合材料としての耐熱性、圧縮強度などの諸特性に優れている。
プリプレグは、エポキシ樹脂などからなるマトリックス樹脂を、炭素繊維などの強化繊維に含浸させたものであり、いくつかの方法で製造することができる。一般的には、マトリックス樹脂を離型紙などのフィルム上にコーティングした樹脂コーティングフィルムと炭素繊維などの強化繊維をシート状に配列してなる強化繊維シートとが用いられ、この強化繊維シートの両面あるいは片面に、前記樹脂コーティングフィルムの樹脂側を重ね合わせ、これを加熱および加圧することにより当該樹脂を前記強化繊維間に含浸させ、プリプレグは、作製される。
一般に、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とした複合材料は脆く、衝撃に弱い。
用途によっては、耐衝撃性を向上させたプリプレグが必要で、例えば、特許文献1には、熱可塑性粒子をプリプレグ表層に配し、その結果、プリプレグを積層した時に、その積層層間に高靱性の熱可塑性粒子が局在する、いわゆる粒子層間強化プリプレグが開示されている。
ところが、この技術では、耐衝撃性は大きく向上するが、CILS(Compression Interlaminer Shear Strength:圧縮層間剪断強度)が低下するため、圧縮層間剪断強度を必要とする用途への適用には制限があった。また、粒子層間強化プリプレグは、一般に、粒子を含有しないプリプレグに比べて、後に説明するタックが弱いという欠点を有していた。
特開平1−104624号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、プリプレグのタックが良好で、しかもタック経時変化の少ないプリプレグを提供することにある。また、耐衝撃性を維持したまま吸湿後の高温におけるCILSの優れた繊維強化複合材料の形成を可能にするプリプレグを提供することにある。さらに、交差積層板の圧縮強度(LCS:Laminate Compressive Strength)が既存の材料より著しく高いプリプレグを提供することにある。
本発明のプリプレグは、上記目的を達成するために、次の構成を有する。
すなわち、要件[A]を満足する炭素繊維に、要件[B]の樹脂を含浸せしめたプリプレグにおいて、要件[C]を満足する粒子がプリプレグ中に20重量%以下存在し、プリプレグの内部よりも表面に高濃度に分布することを特徴とするプリプレグである。
[A]:フックドロップ値が10cm以上である連続繊維からなる炭素繊維
[B]:熱硬化性樹脂を主体としてなるベース樹脂
[C]:熱可塑性樹脂を素材とする粒径150μm以下の粒子。
本発明のプリプレグによれば、それを用いて得られる繊維強化複合材料において、CAIなどの耐衝撃性の高さを保持したまま、吸湿後の高温におけるCILSに優れ高いLCSが得られるばかりか、プリプレグのタックを良好なものとし、タック経時変化を抑制することができる。
以下の記述においては、構成要素[B]と構成要素[C]の両方からなる部分の名称を、マトリックス樹脂と呼び、構成要素[B]のみをさす名称を、ベース樹脂とし、それぞれを区別して用いる。
本発明において、構成要素[B]は、先に定義した通り、熱硬化性樹脂を主体としてなるベース樹脂である。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、マレイミド樹脂、シアン酸エステル樹脂、アルキド樹脂、付加硬化型ポリイミド樹脂などを挙げることができる。なかでも、エポキシ樹脂は、耐熱性、機械特性に優れた複合材料を得ることを可能にするため、好ましく用いられる。
エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノール化合物とジシクロペンタジエンの共重合を原料とするエポキシ樹脂、ジグリシジルレゾルシノール、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタンのようなグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノクレゾール、テトラグリシジルキシレンジアミンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂およびこれらの混合物が用いられるが、これに限定されるものではない。
好ましいエポキシ樹脂は、2官能以上のグリシジルアミン型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物からなるものである。
上記熱硬化性樹脂に、熱可塑性樹脂を混合、溶解して用いることも、好適である。このような熱可塑性樹脂としては、一般に、主鎖に、炭素炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、尿素結合、チオエーテル結合、スルホン結合、イミダゾール結合、カルボニル結合から選ばれる結合を有するものである。
特に、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリイミドから選ばれた1種以上の樹脂が、構成要素[B]に、混合、溶解していることが好適である。
これらの熱可塑性樹脂は、市販のポリマーを用いてもよく、また市販のポリマーより分子量の低い、いわゆるオリゴマーを用いても良い。オリゴマーとしては、熱硬化性樹脂と反応しうる官能基を末端または分子鎖中に有するオリゴマーがさらに好ましい。
熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物は、それらを単独で用いた場合より良好な結果を与える。熱硬化性樹脂の脆さを熱可塑性樹脂の強靱さでカバーし、かつ熱可塑性樹脂の成形困難性を熱硬化性樹脂でカバーし、バランスのとれたベース樹脂となる。
硬化剤としては、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォンのような芳香族アミン、脂肪族アミン、イミダゾール誘導体、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、カルボン酸アミド、ポリフェノール化合物、ノボラック樹脂、ポリメルカプトン、また三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体などがあげられるが、これに限定されるものではない。
構成要素[B]のエポキシ樹脂用硬化剤として、ジアミノジフェニルスルホンが好ましく使用される。
これらの硬化剤には、硬化活性を高めるために、適当な硬化助剤を組合わせることができる。好ましい例としては、ジシアンジアミドに3−(3−,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)を硬化助剤として組合わせる例、カルボン酸無水物やノボラック樹脂に三級アミンを硬化助剤として組合わせる例がある。
本発明において、構成要素[C]は、先に定義した通り、粒径150μm以下の熱可塑性樹脂からなる粒子である。
例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリカーボナート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸セルロース、酪酸セルロースからなる群から選ばれた1種以上の樹脂からなる粒径150μm以下の粒子が挙げられる。
好ましくは、ポリアミド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアラミド、からなる群から選ばれた1種以上の樹脂からなる粒径60μm以下の粒子である。
この粒子を形成する特に好ましい樹脂は、ポリアミドである。中でも、ナイロン−12を主体とするポリアミドは、耐衝撃性の点で、特に優れる。具体的には、東レ(株)製SP−500が挙げられる。
構成要素[C]の素材を選択する場合、構成要素[C]の素材の弾性率が構成要素[B]の硬化物の弾性率より低いほうが、高いLCSを得るため好ましい。とりわけ、構成要素[C]の素材の曲げ弾性率が構成要素[B]の硬化物の曲げ弾性率の2/3以下、さらには1/2以下であることが好ましい。
特許文献1に示されるような、ポリアミド樹脂とエポキシ樹脂との組合わせによりセミIPN(高分子相互侵入網目構造:Inter-penetrating Polymer Network)化した、もしくはセミIPN化しうる粒子は、耐熱性、耐溶剤性をかね備えるので、一層好ましい。具体的には、東レ(株)製トレパール(登録商標)TNが挙げられる。
これら粒子は、単独で使用されても良いが、2種以上が混合されて使用されても良い。
粒子の粒径は、遠心沈降速度法などで求められる体積平均粒径を意味する。粒子の大きさは、複合材料に形成されたとき、強化繊維の配列を乱すほどに大きくなければ良い。
粒径が150μm以上では、強化繊維の配列を乱したり、積層して得られる複合材料の層間を必要以上に厚くするため、複合材料に形成されたとき、その物性を低下させることがあるので、150μm以下でなければならない。
粒径が1μm以下では、強化繊維の繊維間に粒子が潜り込み、プリプレグ積層体の層間部分に局在化せず、粒子の存在効果が十分に得られず、耐衝撃性が低くなるので、粒径は1μm以上が好ましい。
さらに好ましい粒子の粒径は、3〜60μmであり、いっそう好ましくは、5〜30μmである。
この粒子の外形形状、表面あるいは内部形態は、球状粒子でも、非球状粒子でも、また多孔質粒子でもよい。
球状の方が、樹脂の流動特性を低下させないという点で好ましいが、特定の粒径を有する熱可塑性樹脂の粒子を用いる目的が、この粒子を積層体の層間に局在化することにより衝撃下での層間剥離の進展を抑制することにあるため、粒子の形状、形態は、特には限定されない。
粒子は、プリプレグの片面または両面の表面に内部よりも高濃度に分布していることが必須である。ここで、内部よりも表面に高濃度に分布しているとは、粒子の90%以上の量が、プリプレグの表面からプリプレグの厚さ30%以内に局在化していることを云う。なお、プリプレグ中の粒子の局在化の程度は、特許文献1に開示されているように次の方法で評価できる。すなわち、まずプリプレグを2枚の平滑な支持板の間にはさんで密着させ、長時間かけて徐々に温度を挙げて硬化させる。この時に重要なのは可能な限り低温でゲル化させることである。ゲル化しないうちに温度を上げるとプリプレグ中の樹脂が流動し、粒子が移動するため元のプリプレグ中における正確な粒子分布の評価ができない。ゲル化した後、さらに時間をかけて徐々に温度をかけてプリプレグを硬化させる。硬化したプリプレグを用いてその断面を200倍以上に拡大して200mm×200mm以上の写真を撮る。この断面写真を用い、まず平均的なプリプレグ厚みを求める。プリプレグ1層の平均厚みは写真上で任意に選んだ少なくとも5ヶ所で測り、その平均をとる。次に両方の支持板に接していた面からプリプレグの厚みの30%の位置にプリプレグの両方向と平行に線を引く。支持板に接していた面と30%の平行線の間に存在する粒子の断面積をプリプレグの両面について定量し、これとプリプレグ全幅に渡って存在する粒子の断面積を定量し、その比をとることによりプリプレグ表面からプリプレグの厚さの30%以内に存在する粒子量が算出される。粒子断面積の定量はイメージアナライザーによってもよいし、断面写真から所定の領域に存在する粒子部分をすべて切り取りその重量を秤ることによってもよい。粒子の部分的な分布のばらつきの影響を排除するため、この評価は得られた写真の幅全域に渡って行い、かつ、任意に選んだ5ヶ所以上の写真について同様の評価を行い、その平均をとる必要がある。粒子とマトリックス樹脂との見分けがつきにくい時は、一方を選択的に染色して観察する。顕微鏡は光学顕微鏡でも走査型電子顕微鏡でも良く、粒子の大きさや染色方法によって使い分けると良い。
粒子の量としては、プリプレグに対して、20重量%以下の範囲でなければならない。プリプレグに対して20重量%を超えると、ベース樹脂との混合が困難になる上、プリプレグのタック、ドレープ性が低下する。ベース樹脂の特性を維持しつつ、粒子による耐衝撃性を付与するには、前記粒子の量は、プリプレグに対して20重量%以下であることが必要であり、より好ましくは15重量%以下である。プリプレグのハンドリングをいっそう優れたものにするためには、前記粒子の量は、10重量%以下であることが好ましい。なお、粒子量は、高い耐衝撃性、交差積層板圧縮強度を得るために、プリプレグに対し、1重量%以上、好ましくは2重量%以上とするのが良い。
プリプレグ中の粒子含有量は次のように評価する。まず、マトリックス樹脂を溶解するが粒子を溶解しない溶媒を選択する。ビーカー中にこの溶媒を入れ、重量を測定したプリプレグをその中に浸す。超音波洗浄器を用いて樹脂を溶解した後、強化繊維をピンセットにて摘み上げ、残りの溶液を重量を予め測定したメンブレンフィルター上に濾過する。ここで粒子がフィルター上に濾別され、溶解した樹脂は溶媒とともにフィルターを通過する。次にピンセットにて摘み上げた強化繊維を、元のビーカーに戻す。ビーカー内で強化繊維を溶媒で洗い洗浄液をフィルターで濾過する作業を数回繰り返す。洗浄を終えた強化繊維を取り出した後、ビーカー内に粒子が残存しないよう内壁を溶媒で数回洗浄し、洗浄液を濾過する。粒子が濾別されたフィルターを4つ折りにしてオーブンにて乾燥後、重量を測定する。元のフィルター重量を差し引いたものが粒子重量であり、元のプリプレグ重量との比から粒子含有率を算出できる。
構成要素[C]の粒子は、複合材料への成形硬化後に、その形状を残していても良いし、変形してもかまわない。さらに、成形後、構成要素[B]に溶解して溶解後に相分離するなど、元の形状を完全に失っても構わない。
従来の粒子層間強化プリプレグは、耐衝撃性は大きく向上するが、CILSが低下する欠点を有していた。
特に、吸湿後の高温におけるCILSの低下が、より顕著であった。
CILSは、BOEING MATERIAL SPECIFICATION 8-276に記されている方法で評価できる。
吸湿後の高温におけるCILSとは、指定された大きさに加工した試験片を71±5℃(160±10F)の温水中に2週間浸漬後、取りだし、82.2±5℃(180±10F)の雰囲気中で測定したものである。
耐衝撃性は、CAI(Compression Strength After Impact:衝撃付与後の圧縮強度)で表わせ、BOEING MATERIAL SPECIFICATION 8-276に記されている方法で評価できる。
プリプレグのタック性が良好であり経時変化が少なく、積層板の耐衝撃性、CILSを向上させ、しかも交差積層板の圧縮強度(LCS)を向上させる手段について鋭意検討した結果、強化繊維として構成要素[A]の実質的に撚り、捩れのない炭素繊維を用い、構成要素[C]と共に用いることが有効であることを見出した。
つまり、耐衝撃性を向上させるには構成要素[C]の粒子の存在は不可欠であるが、単純に構成要素[C]を添加した従来技術ではCILSの低下およびプリプレグのタック性低下を伴っていた。そこで鋭意検討の結果、実質的に撚り、捩れのない炭素繊維を構成要素[C]と共に用いると、耐衝撃性を損うことなくCILSを向上させ、かつプリプレグのタック性を向上させ、しかも驚くべきことにLCSを向上させうることを見出したのである。
構成要素[A]は、先に定義した通り、フックドロップ値が10cm以上である連続繊維からなる炭素繊維である。この炭素繊維として、より好ましいものは、断面形状が実質的に円形のものである。炭素繊維の撚り、捩れは、フックドロップ値で定量的に表わすことができる。
ここで、フックドロップ値測定は次の手順にて行う。すなわち、温度23±2℃、湿度50±5%の雰囲気中で炭素繊維束を2時間放置する。炭素繊維束を1.5m長に切り、下部に100gの荷重をつけ繊維束を垂直に吊り下げる。これに1mmφ、長さ100mm程度のステンレスワイヤーの下部20〜30mmを曲げ、全重量が12gとなるように荷重を掛けたものを、上部20〜30mmをUの字に曲げた部分で繊維束幅方向の中央に引っ掛ける。30分経過後の前記荷重の落下距離(単位、cm)をフックドロップ値とする。撚り、捩れがあるとこの値が小さくなる。少なくとも5回の測定を行い、平均値をとる。
一般に、炭素繊維には、その製造工程において、切れたフィラメントのローラーへの巻きつきなどの工程トラブルを防ぐため、またプリプレグ製造においては炭素繊維供給用クリール、ガイド、コームで炭素繊維の広がりを押え、工程通過性を向上させるために、集束性が付与されている。
炭素繊維を集束させる手法としては、繊維束のフィラメントに、交絡を付与する方法、撚りを付与する方法、サイジング剤を付与する方法がある。なお、撚りを付与した場合は、工程通過後、その撚りを解除する場合がある。
しかしながら、炭素繊維を集束させると、工程通過性は向上するが、プリプレグの製造においては、その集束性ゆえに、マトリックス樹脂の含浸性が低下する。また、撚り掛け後解除する方法では、炭素繊維に撚り、捩れが残るため、製造したプリプレグが平滑でなく、かつ表面に凹凸があり、複合材料としての物性にも悪影響を与える。この集束性の指標となるのが、フックドロップ値である。
フックドロップ値を大きくすることは、プリプレグの製造において、樹脂含浸性、表面平滑性が向上するが、炭素繊維供給用クリール、ガイド、コームで炭素繊維束が広がり過ぎ、毛羽発生、工程通過性不良など、トラブルを起こしやすくなる。
この点から、炭素繊維束の好ましいフックドロップ値は、10cm以上100cm以下、より好ましくは、12cm以上100cm以下である。
このように、実質的に撚り、捩れのない炭素繊維を、マトリックス樹脂と組合わせて用いると、吸湿後の高温におけるCILSが向上することを見出した。
フックドロップ値が10cm以上の炭素繊維を使用したプリプレグは、表面平滑性がよく、積層、硬化後の層間厚みが均一で安定して形成されるため、欠陥部が少なくCILSが向上すると考えられる。
また、従来、粒子を表面に高濃度に含有するプリプレグは、同じベース樹脂を用い前記粒子を除外したプリプレグに比べてタックがかなり弱いと言う問題点を有していた。タックが低下すると、プリプレグ積層時に隣接するプリプレグ間で相互のズレが生じ、適当な積層板が得られなくなる。
ところが、この問題もフックドロップ値で10cm以上の炭素繊維を用いることにより、従来の粒子含有樹脂のプリプレグとの比較において、タックが向上することを見出した。プリプレグの表面平滑性の良さが寄与していると思われる。加えて、タック性の経時変化が小さくなることを見いだした。従来のプリプレグに比較して、室温放置する間の炭素繊維の動きが小さく、相対的に樹脂の沈み込みが起こりにくく、プリプレグ表面に樹脂が確保されやすいためと考えられる。こうした表面樹脂確保には、構成要素[A]の撚り、捩れが小さいことによる内部応力の小ささ及び構成要素[C]の存在による樹脂増粘の両方が寄与していると考えられる。ここで、タック性とは、プリプレグの表面粘着性の指標であり、一般には21.7±1.7℃(71±3F)、湿度50±5%の環境下においてタックテスターによって評価される。具体的には(株)東洋精機製作所製PICMAタックテスタIIを用い、18×18mmのカバーガラスを0.4kgfの力で5秒間プリプレグに圧着し、30mm/分の速度にて引張り、剥がれる際の抵抗力にてタック性を評価する。
さらに、本発明のプリプレグを用いたコンポジットの交差積層板の圧縮強度は、従来のプリプレグから予想される値に比較し大きな向上が認められることを見いだした。一般に繊維強化複合材料の交差積層板の圧縮強度は、同一プリプレグの一方向積層板の圧縮強度から積層板理論を用いて計算予測できる。一方向積層板の強度が同じなら交差積層板の強度もほぼ同等というのが従来技術であった。しかしながら、本発明のプリプレグの場合は、従来技術の粒子含有プリプレグの場合と比較し、一方向積層板の圧縮強度が同等であるにも関わらず、交差積層板の圧縮強度(LCS)が著しく高いことがわかった。交差積層板の圧縮試験においては、全体破壊が生じる前に試験体中の0゜層(荷重付加方向に連続繊維が強化材として配列する層)の外側にある交差層(例えば±45゜層や90゜層)の部分的な剥離がしばしば生じる。従来技術の粒子含有プリプレグの場合に比較して、意外にも本発明のプリプレグの場合は全体破壊に至る前の交差層の剥離が生じないかあるいは生じたとしてもその時期が遅れる。結果として全体破壊に至るまでにより大きな荷重を負担でき高強度を示すものである。こうした効果は、構成要素[A]の撚り、捩れが小さいことによる積層板層間厚みの均一性および構成要素[C]の存在による剥離抵抗の増加の両方によるものと考えられる。
LCSは有孔板圧縮強度用に Boeing Specification Support Standard BSS7260に記されている測定方法を用い、無孔板にて評価する。試験片サイズは、長さ(荷重付加方向)304.8mm×幅38.1mmとし、試験片側面への補強タブ付けは行わずに圧縮強度を求める。
本発明に使用される炭素繊維は、断面形状が実質的に円形であることが好ましい。樹脂を含浸させる時に、フィラメントの再配列が起り易くなり、炭素繊維間への樹脂の浸み込みが容易になるからである。
なお、断面形状が実質的に円形である炭素繊維とは、その断面の外接円半径Rと内接円半径rとの比(R/r)を変形度として定義した時に、この変形度が1.1以下のものを云う。
炭素繊維の引張強度が、4400MPa以上、弾性率が、270GPa以下であることは、炭素繊維複合材料で考えられる標準弾性率を保ちながら、引張り強度の高い硬化板の製造が可能になるため、好ましい。また、炭素繊維の引張強度が、5000MPa以上、弾性率が、270GPa以上、密度が、1.76g/cm 以下であることは、いっそう高強度、高弾性率であり、かつ比重の低い硬化板の製造が可能になるので、好ましい。
本発明に用いられる炭素繊維は、連続繊維からなる。連続でないと、強化繊維の強度を、複合材料に加工したときに、十分に発揮させることが困難となる。炭素繊維は、その形状や配列をについて特に限定されず、例えば、単一方向、ランダム方向、シート状、マット状、織物状、組み紐状であっても良い。特に、比強度、比弾性率が高いことを要求される用途には、炭素繊維が単一方向に引き揃えられた配列が最も適しているが、取扱いの容易な織物状の配列も本発明に適している。
また、本発明に使用される炭素繊維としては、ヤーン、トウ、ストランド状の一方向に引き揃えられたフィラメントの束からなる炭素繊維も適しており、これらから形成される本発明に係るヤーンプリプレグ、トウプリプレグ、ストランドプリプレグは、好ましい。
本発明のプリプレグは、いくつかの方法で製造することができる。
ベース樹脂あるいはマトリックス樹脂を、離型紙などのフィルム上にコーティングした樹脂コーティングフィルムを用いて、シート状にした炭素繊維の両面あるいは片面から、前記樹脂コーティングフィルム上の樹脂を、前記炭素繊維間に含浸させて、プリプレグを作製する、いわゆるホットメルト法が、一般的に用いられる。ウェット法と称して、溶媒に溶解した樹脂に引き揃えた炭素繊維を浸漬、乾燥してプリプレグを作製する方法もある。
また、粒子をプリプレグ表層に多く存在させる目的で、通常の方法で作製したプリプレグの片面あるいは両面に、粒子を含有したマトリックス樹脂フィルムを貼着する方法などを用いることもできる。
さらに、粒子を含まないプリプレグを作製後、粒子を片面または両面に散布してもよい。
より具体的には、本発明のプリプレグを得るには、次のような製造方法を採用するのが良い。
(a)多数本の連続した炭素フィラメントからなり、フックドロップ値が10cm以上である繊維交絡度を有する炭素繊維束からなるシートが、用意される工程と、(b)熱硬化性樹脂を主体としたベース樹脂と、完成されるプリプレグの重量の20%以下の重量の、熱可塑性樹脂からなり粒径が150μm以下の粒子とが混合されてなるマトリックス樹脂が離型フィルム上にコーティングされた樹脂コーティングフィルムが、用意される工程と、(c)前記炭素繊維束からなるシートの表面に前記マトリックス樹脂が接する状態に、前記樹脂コーティングフィルムが、前記炭素繊維束からなるシートに重ね合わせられた積層シートが、形成される工程と、(d)該積層シートが、加熱および加圧され、前記炭素繊維束の多数本の炭素フィラメント間に、前記ベース樹脂が含浸せしめられた樹脂含浸成形体が、形成される工程、とからなるプリプレグの製造方法、または、(a)多数本の連続した炭素フィラメントからなり、フックドロップ値が10cm以上である繊維交絡度を有する炭素繊維束からなる炭素繊維シートが用意される工程と、(b)熱硬化性樹脂を主体としたベース樹脂が第1の離型フィルム上にコーティングされた第1の樹脂コーティングフィルムが、用意される工程と、(c)前記炭素繊維束からなるシートの表面に前記ベース樹脂が接する状態に、前記第1の樹脂コーティングフィルムが、前記炭素繊維束からなるシートに重ね合わせられた第1の積層シートが、形成される工程と、(d)該第1の積層シートが、加熱および加圧され、前記炭素繊維束の多数本の炭素フィラメント間に、前記ベース樹脂が含浸せしめられた第1の樹脂含浸成形体が、形成される工程と、(e)熱硬化性樹脂を主体としたベース樹脂と、完成されるプリプレグの重量の20%以下の重量の、熱可塑性樹脂からなり粒径が150μm以下の粒子とが混合されてなるマトリックス樹脂が第2の離型フィルム上にコーティングされた第2の樹脂コーティングフィルムが、用意される工程と、(f)前記第1の樹脂含浸成形体の表面に前記第2の樹脂コーティングフィルムのマトリックス樹脂が接する状態に、前記第2の樹脂コーティングフィルムが前記第1の樹脂含浸成形体に重ね合わせらた第2の積層シートが、形成される工程と、(g)該第2の積層シートが、加熱および加圧され、前記マトリックス樹脂と前記ベース樹脂とが一体化せしめられた第2の樹脂含浸成形体が、形成される工程、とからなるプリプレグの製造方法である。
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本実施例で使用した炭素繊維の詳細は以下の通りである。
“トレカ(登録商標)”T800H−12K−40B(東レ(株)製))
引張強度 5490 MPa(560kgf/mm
引張弾性率 294 GPa(30.0×10kgf/mm
繊度 0.445g/m
密度 1.81 g/cm
フックドロップ値 8.2 cm
変形度(R/r) 1.37
“トレカ(登録商標)”M30G−18K−11E(東レ(株)製))
引張強度 5490 MPa(560 kgf/mm
引張弾性率 294 GPa(30.0×10kgf/mm
繊度 0.745g/m
密度 1.73 g/cm
フックドロップ値 14.1 cm
変形度(R/r) 1.04
“トレカ(登録商標)”T700S−12K−50C(東レ(株)製))
引張強度 4900 MPa(500 kgf/mm
引張弾性率 230 GPa(23.5×10kgf/mm
繊度 0.800g/m
密度 1.80 g/cm
フックドロップ 17.1 cm
変形度(R/r) 1.05
なお、炭素繊維の引張強度、引張弾性率はJIS R7601に基づいて測定したものである。
(実施例1)
混練装置でビスフェノールF型エポキシ樹脂10重量部(大日本インキ化学(株)製エピクロン(登録商標)830)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂30重量部(油化シェル(株)製エピコート(登録商標)825)とテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)(住友化学(株)製 ELM−434)60重量部にポリエーテルスルフォン(PES)12.6重量部を配合、溶解した後、ポリアミド微粒子(東レ(株)製 トレパールTN 平均粒径12.5μ)21.6重量部を混練し、さらに硬化剤である4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン(4,4’−DDS)45重量部を混練し、マトリックス樹脂を調整した。このマトリックス樹脂を離型紙上に目付52g/mでフィルムコーティングしたものを2枚作製した。コーティング面を向かい合わせにした間に炭素繊維“トレカ”M30G−18K−11Eを配列し、加熱プレスロールで加圧して炭素繊維に樹脂を含浸させて一方向のプリプレグを作製した。このプリプレグは炭素繊維目付190g/m、プリプレグ目付294g/m、マトリックス樹脂含有率35.4%であった。プリプレグのタックは表1に示すとおり「良好」であり、しかも室温放置における経時変化が少ないものであった。
作製した一方向材のプリプレグを所定寸法、枚数カットした後、積層した。
積層構成はCILS用は(0)12、CAI用は(45/90/-45/0)3S、LCS用は(45/90/-45/0)2Sである。これを離型フィルムを敷いたアルミツール板にのせ、さらに離型フィルムおよびバギングフィルムでシールし、ノズルを通じて真空引きした。これをオートクレーブに入れ、6kg/cmの加圧下で180℃120分処理し、硬化板を作製した。この硬化板の吸湿後の82.2±5℃の雰囲気中でのCILSは50.3MPa(7.3ksi)と高レベルであり、CAIは241MPa(35ksi)、LCSは579MPa(84ksi)であった。
(実施例2)
炭素繊維に“トレカ”T700S−12K−50Cを用いた以外は実施例1と同様の方法、条件でプリプレグおよび硬化板を作製した。
プリプレグのタックは「良好」であった。また、硬化板の吸湿後の82.2±5℃の雰囲気中でのCILSは58.6MPa(8.5ksi)と高レベルであり、CAIは276MPa(40ksi)、LCSは593MPa(86ksi)であった。
(実施例3)
混練装置でビスフェノールF型エポキシ樹脂10重量部(大日本インキ化学(株)製エピクロン830)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂30重量部(油化シェル(株)製エピコート825)とテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM:住友化学(株)製ELM−434)60重量部にPES12.6重量部を配合、溶解した後、硬化剤である4,4’−DDSを45重量部混練し、マトリックス樹脂を調整した。このマトリックス樹脂を一次樹脂とした。
混練装置でビスフェノールF型エポキシ樹脂10重量部(大日本インキ化学(株)製エピクロン830)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂30重量部(油化シェル(株)製エピコート825)とテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM:住友化学(株)製ELM−434)60重量部にPES12.6重量部を配合、溶解した後、ポリアミド微粒子(東レ(株)製トレパールTN 平均粒径12.5μ)75.5重量部を混練し、さらに硬化剤である4,4’−DDSの45重量部を混練し、マトリックス樹脂を調整した。このマトリックス樹脂を二次樹脂とした。
一次樹脂を目付31.5g/mで離型紙上にフィルムコーティングしたものを2枚作製した。コーティング面を向かい合わせにした間に炭素繊維“トレカ”M30G−18K−11Eを配列し、加熱プレスロールで加圧して炭素繊維に樹脂を含浸させて一方向の一次プリプレグを作製した。この一次プリプレグは炭素繊維目付190g/m、プリプレグ目付253g/m、マトリックス樹脂含有率24.9%であった。
次に、二次樹脂を目付20.5g/m で離型紙上にフィルムコーティングしたものを2枚作製した。この二次樹脂コーティングフィルムを向かい合わせにした間に、さきほどの一次プリプレグを通し、一次と同じように加熱プレスロールで加圧して、二次プリプレグを作製した。このプリプレグは炭素繊維目付190g/m、プリプレグ目付294g/m、マトリックス樹脂含有率35.4%であった。プリプレグのタックは「非常に良好」であった。
作製したこのプリプレグを実施例1と同様の方法、条件で硬化板を作製した。
硬化板の吸湿後の82.2±5℃の雰囲気中でのCILSは52.4MPa(7.6ksi)であり、CAIは215MPa(36ksi)、LCSは572MPa(83ksi)であった。
(実施例4)
炭素繊維に“トレカ”T700S−12K−50Cを用いた以外は実施例3と同様の方法、条件でプリプレグおよび硬化板を作製した。
プリプレグのタックは「非常に良好」であった。また、硬化板の吸湿後の82.2±5℃の雰囲気中でのCILSは53.8MPa(7.8ksi)であり、CAIは297MPa(43ksi)、LCSは586MPa(85ksi)であった。
(実施例5)
ポリアミド微粒子にSP−500(平均粒径 5μ)を用いた以外は実施例3と同様の方法、条件でプリプレグおよび硬化板を作製した。
プリプレグのタックは「非常に良好」であった。また、硬化板の吸湿後の82.2±5℃の雰囲気中でのCILSは34.5MPa(5.0ksi)であり、CAIは255MPa(37ksi)、LCSは593MPa(86ksi)であった。
(実施例6)
炭素繊維に“トレカ”T700S−12K−50Cを用いた以外は実施例5と同様の方法、条件でプリプレグおよび硬化板を作製した。
プリプレグのタックは「非常に良好」であった。また、硬化板の吸湿後の82.2±5℃の雰囲気中でのCILSは44.1MPa(6.4ksi)であり、CAIは262MPa(38ksi)、LCSは614MPa(89ksi)であった。
(実施例7)
混練装置でビスフェノールF型エポキシ樹脂10重量部(大日本インキ化学(株)製 エピクロン830)とテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM:住友化学(株)製 ELM−434)90重量部にポリエーテルスルフォン(PES)12.7重量部を配合、溶解した後、硬化剤である3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン(3,3’−DDS)を32.5重量部混練し、マトリックス樹脂を調整した。このマトリックス樹脂を一次樹脂とした。
混練装置でビスフェノールF型エポキシ樹脂10重量部(大日本インキ化学(株)製 エピクロン830)とテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM:住友化学(株)製 ELM−434)90重量部にポリエーテルスルフォン(PES)4.3重量部を配合、溶解した後、ポリアミド微粒子(東レ(株)製 SP−500 平均粒径5μ)19.9重量部を混練し、さらに硬化剤である3,3’−DDSの32.5重量部を混練し、マトリックス樹脂を調整した。このマトリックス樹脂を二次樹脂とした。
一次樹脂を目付31.5g/mで離型紙上にフィルムコーティングしたものを2枚作製した。コーティング面を向かい合わせにした間に炭素繊維“トレカ”T70ST700S−12K−50Cを配列し、加熱プレスロールで加圧して炭素繊維に樹脂を含浸させて一方向の一次プリプレグを作製した。この一次プリプレグは炭素繊維目付190g/m、プリプレグ目付253g/m、マトリックス樹脂含有率24.9%であった。
次に、二次樹脂を目付20.5g/m で離型紙上にフィルムコーティングしたものを2枚作製した。この二次樹脂コーティングフィルムを向かい合わせにした間に、さきほどの一次プリプレグを通し、一次と同じように加熱プレスロールで加圧して、二次プリプレグを作製した。このプリプレグは炭素繊維目付190g/m、プリプレグ目付294g/m、マトリックス樹脂含有率35.4%であった。プリプレグのタックは「極めて良好」であった。
作製したこのプリプレグを実施例1と同様の方法、条件で硬化板を作製した。
また、硬化板の吸湿後の82.2±5℃の雰囲気中でのCILSは42.1MPa(6.1ksi)であり、CAIは276MPa(40ksi)、LCSは593MPa(86ksi)であった。
(比較例1)
炭素繊維に“トレカ”T800H−12K−40Bを用いた以外は実施例1と同様の方法、条件でプリプレグおよび硬化板を作製した。
プリプレグのタックは「不良」で、実施例1、2に比較して劣っていた。また、硬化板の吸湿後の82.2±5℃の雰囲気中でのCILSは47.6MPa(6.9ksi)であり、実施例1、2に比較して劣っていた。また、CAIは262MPa(38ksi)、LCSは503MPa(73ksi)であった。
(比較例2)
炭素繊維に“トレカ”T800H−12K−40Bを用いた以外は実施例3と同様の方法、条件でプリプレグおよび硬化板を作製した。
プリプレグのタックは「やや不良」で、実施例3、4に比較して劣っていた。また、硬化板の吸湿後の82.2±5℃の雰囲気中でのCILSは49.0MPa(7.1ksi)であり、実施例3、4に比較して劣っていた。また、CAIは345MPa(50ksi)、LCSは510MPa(74ksi)であった。
(比較例3)
炭素繊維に“トレカ”T800H−12K−40Bを用いた以外は実施例5と同様の方法、条件でプリプレグおよび硬化板を作製した。
プリプレグのタックは「やや不良」で、実施例5、6に比較して劣っていた。また、硬化板の吸湿後の82.2±5℃の雰囲気中でのCILSは33.1MPa(4.8ksi)であり、実施例5、6に比較して劣っていた。また、CAIは324MPa(47ksi)、LCSは517MPa(75ksi)であった。
(比較例4)
炭素繊維に“トレカ”T800H−12K−40Bを用いた以外は実施例7と同様の方法、条件でプリプレグおよび硬化板を作製した。
プリプレグのタックは「やや不良」で、実施例7に比較して劣っていた。また、硬化板の吸湿後の82.2±5℃の雰囲気中でのCILSは34.5MPa(5.0ksi)であり、実施例7に比較して劣っていた。また、CAIは303MPa(44ksi)、LCSは503MPa(73ksi)であった。
実施例と比較例の結果を表1にまとめた。
Figure 2006169541
Figure 2006169541

Claims (4)

  1. 要件[A]を満足する炭素繊維に、要件[B]の樹脂を含浸せしめたプリプレグにおいて、要件[C]を満足する粒子がプリプレグ中に20重量%以下存在し、プリプレグの内部よりも表面に高濃度に分布することを特徴とするプリプレグ。
    [A]:フックドロップ値が10cm以上である連続繊維からなる炭素繊維
    [B]:熱硬化性樹脂を主体としてなるベース樹脂
    [C]:熱可塑性樹脂を素材とする粒径150μm以下の粒子。
  2. 構成要素[A]の炭素繊維の引張強度が4400MPa以上であることを特徴とする請求項1記載のプリプレグ。
  3. 構成要素[A]の炭素繊維の引張強度が5000MPa以上、弾性率が270GPa以上、密度が1.76g/cm以下であることを特徴とする請求項2記載のプリプレグ。
  4. 構成要素[A]の炭素繊維の断面形状が実質的に円形であることを特徴とする請求項1記載のプリプレグ。
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