JP2006161224A - 偽造防止用紙、及び偽造防止印刷物 - Google Patents

偽造防止用紙、及び偽造防止印刷物 Download PDF

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Abstract

【課題】 パスター加工により、正文字のみのマイクロ文字および/または正画像のみのマイクロ画像が形成されたスレッドを用紙に抄き込む場合に、スレッドの表裏を制御した偽造防止用紙を提供する。
【解決手段】 用紙の流れ方向に連続的にスレッドが抄き込まれた偽造防止用紙において、該スレッドが、可視光は透過し、かつ紫外線を透過しないベースフィルム(21)の表面に正文字のみのマイクロ文字および/または正画像のみのマイクロ画像(22)が連続して視認されるようにパスター加工により形成されており、かつ裏面に紫外線の照射で蛍光発色する接着剤層(23)が形成されたスレッドを用紙に抄き込んで偽造防止用紙を得る。
【選択図】図11

Description

本発明は、パスター加工により形成された正文字のみのマイクロ文字および/または正画像のみのマイクロ画像(以下、本発明では、特に断りのない限り両者を併せてマイクロ文字と言う)を有するスレッドが、用紙の流れ方向に挿入されたいわゆる「スレッド入り紙」タイプの偽造防止用紙及び偽造防止印刷物に関するものである。
紙層内に糸状物を挿入した「スレッド入り紙」と呼ばれる偽造防止用紙はよく知られている。スレッド入り紙は製造に極めて高度な技術を必要とするので偽造防止に大きな効果があり、周知のように各国の紙幣等に多く使用されている。
スレッド入り紙には大きく分けて2種類ある。一つはスレッドが用紙内部に挿入され、用紙表面に露出しない種類のものであり、もう一つはスレッドの一部が用紙表面に露出した「窓開きスレッド入り紙」と呼ばれるものである。
前者の用紙を製造する方法としては、長網抄紙機のスライス部分における紙料の流れの中にノズルを入れ、ノズルに水を流しながらスレッドを繰り出し、抄紙網に形成される紙匹中にスレッドを抄き込む方法(特許文献1)、長網抄紙機のフローボックスから流出する紙料へスレッドの挿入装置を設置し、空気流でスレッドと紙料を非接触状態としながらスレッドを抄き込む方法(特許文献2)、2層以上を有した円網抄紙機を使用し、2層以上の抄き合わせで、内壁に凹凸を設けた送管を使用してスレッドを紙層間に送り出し、紙層間にスレッドを抄き込む方法(特許文献3)等が提案されている。
後者の「窓開きスレッド入り紙」を製造する方法としては、ワイヤー上の紙料懸濁液に、凹凸部を有するガイドの凸部先端にスレッドを通した溝を有するベルト機構を埋没して製造する方法(特許文献4)や、凹凸状に加工した網を円網抄紙機の上網に使用し、スレッドを網表面の凹凸部に接触させながら挿入して窓開き部分にスレッドを抄き込む方法(特許文献5)や、長網抄紙機のワイヤー上の回転ドラム内に圧縮空気ノズルを内蔵させ、予め紙匹に挿入したスレッド上のスラリーを圧縮空気で間欠的に吹き飛ばしてスレッドを露出させる方法(特許文献6)等が提案されている。
「窓開きスレッド入り紙」は、用紙の流れ方向に間欠的に厚みを薄くした窓開き部を形成し、この窓開き部にスレッドが露出していることが特徴である。従って、表面に接着剤を塗工していないスレッドを使用して製造した用紙では、スレッドの露出部を爪等でこするとスレッドが簡単に剥がれてしまったり、印刷時にスレッドが浮き上がったりするので致命的な欠点となる。このため表面に感熱接着剤を設けたスレッドを使用して窓開きスレッド入り紙を抄紙し、抄紙機の乾燥ゾーンでこの用紙を乾燥する際にスレッドに塗工されている感熱接着剤を溶融若しくは軟化することによって、用紙を構成するセルロース繊維とスレッドとを確実に接着させ、剥離強度を高める対策がとられている。
スレッド入り紙に使用するスレッドにも多種多様な構成が提案されている。例えば、ホログラムスレッド、磁気スレッド、紫外線の照射で蛍光発色するスレッド、サーモクロミック剤を塗工したスレッド、金属蒸着スレッド、マイクロ文字入りスレッド等々が実用化されている。
マイクロ文字入りスレッドは、プラスチックフィルムに直接箔押しする方法や、真空蒸着装置においてマスク若しくはテンプレートを使用する選択的金属化をする方法、金属化と腐食により非金属化する方法で製造することが知られている(特許文献7参照)。
一方、本出願人は、特許文献8において、用紙の流れ方向にスレッドを挿入した偽造防止用紙において、前記スレッドは、ベースとなるフィルムと、前記フィルムの表面に形成された金属蒸着層からなる正文字のみのマイクロ文字と、前記金属蒸着層の上に形成された透明インクによる印刷層と、前記フィルムの裏面に形成された感熱接着剤層とからなり、前記印刷層を形成するインクには紫外線の照射で発色する染顔料が添加されており、用紙の表側から見た場合に、正文字のマイクロ文字が見えるように前記スレッドが用紙に挿入されていることを要旨とする偽造防止用紙を提案した。スレッドをかような構成にすることで、スレッドに紫外線を照射したときにスレッドの印刷層が発色して見えるか否かを判定することにより、スレッドの表裏面の識別が簡単にできるという効果が得られる。この特許において金属蒸着層からなるマイクロ文字は、いわゆる「パスター加工」(後に詳述)で得られることを述べた。
「パスター加工」によりマイクロ文字を形成したスレッドは外国紙幣に多く使用されている。例えば現在の米国のドル紙幣やヨーロッパのユーロ紙幣等ではスレッドが紙層間に埋没する構成の用紙が、ユーロ紙幣に移行する前のドイツの100マルク紙幣等ではスレッドが窓部に間欠的に露出する構成の用紙が採用されている。これらスレッドに形成されるマイクロ文字は、図3にモデル的に示したように、「正文字」と「上下反転の逆文字」が交互に位置するようになっている。このことは、用紙を抄造するときにスレッドが反転しても良いような設計になっていることを意味している。別の言い方をすると、スレッドには表裏の区別をしていないことを意味している。
また、マイクロ文字は文字を形成する部分が金属蒸着層の場合(前記米国ドル紙幣等)と、マイクロ文字を形成する部分が抜き文字になっている場合(前記ドイツ100マルク紙幣等)がある。
特開昭51−130309号公報 特開平2−169790号公報 特公平5−40080号公報 特公平5−85680号公報 米国特許第4462866号公報 特開平6−272200号公報 特公平6−062030号公報(5欄46行〜6欄3行、7欄26行〜8欄12行) 特許第3279212号公報
スレッドに形成されるマイクロ文字は、例えば紙幣の表面から観察した場合、正文字のみの繰り返しで形成されている場合の方が、前述したような「正文字」と「上下反転の逆文字」が交互に位置するように形成されている場合より、偽造防止効果が高い。用紙を製造する場合に後者はスレッドの表裏をコントロールして挿入する必要があるからである。
前述したように、本出願人は、「正文字のみのマイクロ文字」を形成したスレッドを用紙に挿入した偽造防止用紙を提案した(特許文献8)。この特許ではスレッドの表裏はマイクロ文字が紫外線の照射で蛍光発色するか否かで判定している。
しかしながら、この方法では文字や画像の面積が小さい場合、紫外線の照射で蛍光発色する強度が必然的に低くなり、スレッドの表裏の判定を正確に行うことが困難となる問題点があることが判った。本発明はこの問題点を解決することを課題とする。
上記課題を解決するための、本発明の要旨の第一(図1及び図2参照)は、用紙の流れ方向に連続的にスレッド(6)が抄き込まれた偽造防止用紙において、該スレッドを表(おもて)面から観察したときに、パスター加工により形成された正文字のみのマイクロ文字および/または正画像のみのマイクロ画像(22)が連続して視認され、かつスレッドに紫外線を照射したときにスレッドのいずれか一方の面が紫外蛍光発色することを特徴とする偽造防止用紙用紙を得ることにある。本発明では、「スレッドの表(おもて)面」とは、本発明の偽造防止用紙に所定の印刷を施し偽造防止印刷物、例えば商品券等を得る場合、その表(おもて)面と一致することを意味する。また、「視認」とは、対象物に照明を当ててその反射光を観察すること、及び背面から照明を当ててその透過光を観察することを意味する。
また本発明は、こうして得られた偽造防止用紙に所定の印刷層(9)を設けたことを特徴とする偽造防止印刷物を得ることも目的とする(図4参照)。
本発明の偽造防止用紙によれば、下記に述べるような顕著な効果が得られる。
1)スレッドに紫外線を照射したときにスレッドが発色して見えるか否かを判定することにより、スレッドの表裏面の識別が簡単にできる。その結果、抄紙時におけるスレッドの挿入が正しくなされているか否かを迅速に検出でき、抄紙途中でスレッドが挿入された段階で直ちにスレッド挿入状態を判定でき、正しくない場合には速やかにスレッド挿入状態を表裏反転させて正常に戻すことができる。従って、スレッドが正しく挿入されている偽造防止用紙の製造の歩留まりを著しく高めることが可能となる。
2)感熱接着剤をスレッドの片面(スレッド裏面)のみに塗工したため、感熱接着剤非塗工面(スレッド表面)が用紙の窓開き部に露出するように抄紙時のスレッド挿入を制御することにより、乾燥ゾーンのシリンダードライヤー、キャンバス、タッチロール等と接触してもこれらの装置が感熱接着剤で汚染されることがない。さらには、両面に感熱接着剤を塗工した従来のスレッドと比較してコストダウンが可能となるだけでなく、その製造に際しても特別な装置を必要とせず、通常の塗工機が使用できる利点がある。
3)用紙の表側から見ると、スレッド上に正文字のみのマイクロ文字が見えるため、違和感なく判読できる。このように正文字や正画像のみが見えるようにするには、抄紙時のスレッド挿入に際して、表裏面の判別ができるようなスレッドを使用しなければならず、そのためには高度な技術が必要となるので偽造防止効果が飛躍的に高まる。
4)スレッドが紙層間に潜り込む構成の偽造防止用紙(窓開きスレッド入りタイプの偽造防止用紙ではない)においては、用紙の表面及び裏面を反射光で観察してもスレッドの存在を感知できない。これは、用紙に入射した光がスレッドの文字や画像部分(蒸着層で構成されている)で反射されるのでマイクロ文字や画像が見えなくなるからである。この場合、用紙を透かして見ると、スレッドの金属蒸着層の部分は光が透過せず、それ以外の部分は光を透過するので、一種の「すき入れ」として文字や画像部分が視認され、偽造防止効果がより一層高まる。
5)金属蒸着層の金属光沢色が用紙表側から見えるため、意匠性が高まると同時に、これを複写機で複写すると、金属光沢色は複写できないため偽造防止効果が高まる。
本発明を解りやすく詳細に説明するために、偽造防止印刷物の端的な構成を例にとって説明する。図4は、2層抄き合わせ紙からなる偽造防止用紙を用いた商品券の例を示す図であり、図5はその部分拡大断面図である。図示した偽造防止用紙は、最外層の紙層7と最外層に接する紙層8の2層から構成されており、最外層の紙層7には用紙の縦方向(抄紙時の紙層の流れ方向)に間欠的に窓開き部4が設けられている。
最外層の紙層7とこれに接する紙層8との間にスレッド6が挿入されていて、このスレッドが窓開き部4の部分で露出している。紙層7の側が用紙の表側となる。なお必要に応じて、窓開き部の中に文字若しくは画像からなるすき入れを施してもよく、スレッドの抄き込みと文字若しくは画像のすき入れの両方を施すことによって偽造防止効果をより一層高めることができる。
かような、偽造防止用紙を製造するのには、先ず、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等の木材パルプや麻、綿、藁等を原料とした非木材パルプ等を適宜混合して叩解し、必要に応じて合成繊維、半合成繊維、無機繊維等を混合してこれに填料、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、サイズ剤、定着剤、歩留まり向上剤、濾水性向上剤、消泡剤、染料、着色顔料、紫外蛍光発色剤等を適宜添加し、通常フリーネス450〜250mlC.S.F.に調整した紙料を調整する。
2層以上の抄き合わせにより偽造防止用紙を製造するに際しては、従来から一般に抄き合わせ紙の製造に使用されている多槽式円網抄紙機が使用できる。図6は2層の紙層(図5)からなる抄き合わせ紙を製造するための2槽式円網抄紙機の例を示しており、窓開き部のない最外層に接する紙層8を形成するための第1の槽(最終槽より前の槽)11と、窓開き部4を有する最外層の紙層7を形成するための第2の槽(最終槽)12とを備えている。
槽12の円網シリンダー12aの上網12bには、図7に示したように、金属、樹脂、紙等で作った窓開き部に相当する型13を、金属細線で取り付けたり、ハンダ付けしたり、接着剤で貼り付ける。窓開き部に相当する型13の形状は図示の例では長方形であるが、それ以外にも例えば正方形、円、楕円、等の任意の形状とすることができる。
最外層の紙層を形成する槽12の円網シリンダーの上網12bに図7に示したような型13を取り付けるに際しては、矢印Wで示した紙の流れ方向(用紙の縦方向)における窓開き部に相当する長さXと、窓開き部と窓開き部の間に位置する非窓開き部5に相当する長さYとの比率を3:1〜1:2となるような間隔で型13を間欠的に取り付けることが望ましい。窓開き部の比率をこの範囲とすることにより、用紙を連続的にロール状に巻き取る際の皺発生防止効果が確実になされるだけでなく、用紙表面のデザイン上も好ましいものとなるからである。
図6の円網抄紙機の槽11の円網シリンダー11aには何等細工を施さない上網を装着する。何等細工を施さない上網を装着した円網シリンダー11aで抄紙した紙層はキャンバス14に転移され、槽12の型13を取り付けた円網シリンダー12aの上に運ばれ、この円網シリンダー12aで抄紙された最外層の紙層がその上に重ねられ、2つの紙層が抄き合わされた用紙が抄造される。スレッドの挿入は、紙層と紙層とが重ねられる直前の矢印Vの箇所で行われる。スレッドの抄き込み方法としては、前述の特許文献3で本願と同じ出願人が提案しているような、内壁に凹凸を設けた送管を使用してスレッドを送り込む方法等が採用できる。なお、円網シリンダー12aに取り付けた型13は図6では所々に図示して簡略化してあるが、実際には円網シリンダー12aの全周に間欠的に取り付けられている。
上述した2層抄き合わせ方法により図4および図5に示した構成の偽造防止用紙が製造できる。すなわち、型13を取り付けた円網シリンダー12aで抄紙された最外層の紙層7には型13に相当する部分に紙料の乗らない窓開き部4が形成される。スレッド6を窓開き部4の中に入るように紙層の間に挿入することにより、図4のように窓開き部ではスレッドが露出し、非窓開き部では紙層の間にスレッドが埋没した状態となる。
本発明の偽造防止用紙は、上記した以外の種々の方法により製造することもできる。例えば「窓開き糸入り紙」の製造方法として従来技術で紹介した特許文献4で提案されているように、凹凸部を有するガイドの凸部先端に溝を設け、この溝にスレッドを通した状態で、ガイドを長網抄紙機のワイヤー上の紙料懸濁液中に埋設させ、紙料懸濁液の水分がワイヤーから下方に脱水されて紙層がほとんど形成されたところでガイドを上方に移動させることによって、ガイドの凸部先端に接していた部分でスレッドが露出している窓開き部を形成する方法、特許文献6で提案されているように長網抄紙機のワイヤー上に、圧縮空気ノズルを内蔵した回転ドラムを設置し、内部にスレッドが挿入されているワイヤー上の湿紙に、回転ドラム内の圧縮空気ノズルから圧縮空気を間欠的に吹き付けてスレッド上のスラリーを吹き飛ばすことによって、スレッドが露出した窓開き部を間欠的に形成する方法、特許文献5で提案されているように、表面の一部が凹凸状に加工された網を円網抄紙機の上網に使用し、紙料懸濁液の入った槽内で網を回転させる際に、スレッドを網表面の凹凸部に接触させながら抄き込むことによって、網表面の凸部に接していたスレッドを窓開き部に露出させる方法、等を採用することができる。
以上は窓開きスレッド入り紙の製造例であるが、本発明には用紙表面に窓部を形成せずに、スレッドを紙層内部に潜り込ませたタイプの偽造防止用紙も含まれる。その製造例は図6における最外層の紙層7を形成するための第2の槽12において、槽12の円網シリンダー12aに型13を取り付けないプレーンな網を使用して2層抄き合わせ紙を製造する際に紙層間にスレッドを挿入する方法を一例として挙げることができる。
また他の例としては、米国特許第1486079号公報に提案されているように、傾斜式抄紙機の2層抄き合わせ時に紙層間にスレッドを挿入する方法を挙げることができる。本発明ではこれらの例だけでなく、スレッドを紙層内部に潜り込ませたタイプの偽造防止用紙を製造する方法をいずれも採用できる。
本発明の偽造防止用紙を製造するに際しては、抄紙途上で紙面に澱粉、ポリビニルアルコール、各種表面サイズ等をサイズプレス装置等で塗工することも可能である。さらに必要に応じ、マシンカレンダー処理やスーパーカレンダー処理を施し、表面平滑性を向上させることも適宜行うことができる。
次に本発明で使用するスレッドについて説明する。本発明の偽造防止用紙は、該スレッドを表(おもて)面から観察したときに、パスター加工により形成された正文字のみのマイクロ文字および/または正画像のみのマイクロ画像(22)が連続して視認され、かつスレッドに紫外線を照射したときにスレッドのいずれか一方の面が紫外蛍光発色するように構成されている。スレッドは、この効果が得られればどのような構成でも構わない。
以下、請求項2〜5の構成を図面に基づいて説明する。図1は請求項2の構成によるスレッドの一部拡大断面図である。パスター加工により形成される正文字のみのマイクロ文字22は、紫外線で蛍光発色する接着剤層23の反対面からスレッドを観察したときに、正文字のみのマイクロ文字が視認できるようなデザインで形成する。なお、本発明において、「透過」や「透過しない」という意味は、それぞれ「透過率100%」や「透過率0%」を意味せず、本発明の目的の、スレッドの表裏を明瞭に判定できさえすれば多少性能が劣っても良いことを意味する。
図2は請求項3の構成によるスレッドの一部拡大断面図である。可視光は透過し、かつ紫外線を透過しないベースフィルム21側からスレッドを観察したときに、正文字のみのマイクロ文字22が視認できるようなデザインで形成することが必要であるため、マイクロ文字は逆文字にして形成することが必要である。
図8は請求項4の構成によるスレッドの一例を示す一部拡大断面図である。可視光は透過し、かつ紫外線を透過しないベースフィルム21の構成を、可視光および紫外線を透過するベースフィルム24の裏面に、可視光は透過し、かつ紫外線を透過しない塗工層25を設けた構成とし、可視光は透過し、かつ紫外線を透過しないベースフィルム21の表面にはパスター加工により形成される正文字のみのマイクロ文字および/または正画像のみのマイクロ画像22が形成されており、紫外線を透過しない塗工層25の裏面には紫外線で蛍光発色する接着剤層23を設けてある。
図9は請求項5の構成によるスレッドの一例を示す一部拡大断面図である。可視光および紫外線を透過するベースフィルム24の表面に、正文字のみのマイクロ文字および/または正画像のみのマイクロ画像22が連続して視認されるようにパスター加工により形成されており、その裏面に紫外線を透過しない塗工層25を設けた構成になっている。
図10は請求項6の構成によるスレッドの一例を示す一部拡大断面図である。可視光は透過し、かつ紫外線を透過しないベースフィルム21の表面に正文字のみのマイクロ文字および/または正画像のみのマイクロ画像22が連続して視認されるようにパスター加工により形成されており、かつ裏面に紫外線の照射で蛍光発色する塗工層26と接着剤層27が形成されている。
本発明に使用する「可視光は透過し、かつ紫外線を透過しないベースフィルム21」としては、セロファンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ナイロンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム等の各種フィルムを使用できる。このベースフィルムは、抄紙機の乾燥ゾーンで変形し難いことが好ましく、通常はポリエステルフィルムやポリエチレンナフタレートフィルムのような耐熱性のあるフィルムが好ましく使用できる。ベースフィルムは無色透明のフィルム或いは着色フィルムのいずれも使用できるが、後に述べるように高光沢金属インクの光沢を最大限利用するには無色透明のフィルムを用いることが好ましい。
ベースフィルム21は、可視光は透過し、かつ紫外線を透過しない性質を有することが必要である。かようなフィルムは、フィルムを製造するときに紫外線吸収剤を混合したり、あるいは紫外線吸収剤の単独あるいは紫外線吸収剤を混合した塗工層25を可視光および紫外線を透過するベースフィルム24の表裏いずれかの面に塗工したり、紫外線吸収剤を染着加工したり、あるいはこれらを併用する方法等で得ることができる。紫外線吸収剤としては、サリチル酸系、ハイドロキノン系、トリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、アミン系、酸化亜鉛や酸化チタン等の超微粒子金属酸化物系等の周知の紫外線吸収剤をいずれも使用することができる。紫外線吸収剤の添加量はフィルム質量に対して通常0.001〜5質量%である。
ベースフィルム21の厚みは薄すぎると、スレッドにしてから用紙に抄き込む時にスレッドが不必要に伸びてしまったり、逆に厚すぎるとマイクロスリッター加工がし難くなると共にスレッドを抄き込んだ後の用紙がスレッド抄き込み位置で盛り上がり、連続してロール状に巻き取ることが困難となるので、通常8〜25μm厚みのものを使用する。
ベースフィルム21には本発明の目的を阻害しない範囲で種々の処理を施しておいてもよい。例えばヌレ指数の改善のためコロナ放電処理をすること、プライマー塗工処理すること、透明樹脂を塗工してホログラムエンボス処理をすること、透明な着色層を設けること等である。
また後に述べるように、偽造防止効果の向上とスレッドの表裏を判定することを目的として、接着剤に紫外線照射により発色する蛍光発色剤を併用したり、ベースフィルム21の裏面に、紫外線の照射で蛍光発色する塗工層26を設けることにより、ベースフィルム21が紫外線を吸収する性質を有していると、スレッドの表裏をブラックライトのような紫外線発生器を使用して容易に判定できるという性質を与えることができる。
次いで、本発明では前記したベースフィルム21に正文字のみのマイクロ文字および/または正画像のみのマイクロ画像22を「パスター加工」により形成する。パスター加工とは、真空蒸着の業界においてはよく知られた加工方法であり、例えば金属アルミニウムを真空蒸着したポリエステルフィルムの蒸着面に、耐酸性を有した透明インキで文字や画像を印刷し、次いで塩酸水溶液のよう酸性の水溶液にフィルムを浸漬するか、或いは耐アルカリ性を有した透明インキで文字や画像を印刷し、次いで水酸化ナトリウム水溶液のようなアルカリ性の水溶液にフィルムを浸漬して印刷部分以外に露出しているアルミニウム蒸着層を溶解し、次いでフィルムを水洗し酸やアルカリを除去してから乾燥する方法である(特開昭63−216795号等)。こうすることで、印刷部分と、印刷部分に同調した下層の金属蒸着部分はフィルム上にそのまま残り、それ以外の部分ではフィルムが露出する。本発明では、上記透明インキとして耐酸性や耐アルカリ性に優れた無色透明の合成樹脂を各種溶剤に熔解したインキや、耐酸性や耐アルカリ性に優れた無色透明の水系の合成樹脂エマルションを使用する。こうすることで銀色のマイクロ文字や画像が両面から視認できるスレッドを得ることができる。パスター加工するための文字や図柄はグラビア印刷機やスクリーン印刷機等の周知の印刷機を用いて形成する。
パスター加工により形成される正文字のみのマイクロ文字22は、窓開きスレッド入り紙を製造する場合には、図1で示すスレッドの場合は、接着剤層23の反対面からスレッドを観察したときに、正文字のみのマイクロ文字が視認できるようなデザインで形成する。また、図2で示すスレッドの場合は、ベースフィルム側からスレッドを観察したときに、正文字のみのマイクロ文字22が視認できるようなデザインで形成することが必要であるため、マイクロ文字は逆文字にして形成することが必要である。
スレッドが紙層内に埋没する構成のスレッド入り紙の場合には、紫外線の照射で蛍光発色する接着剤層23または接着剤層27の塗工量は窓開きスレッド入り紙に使用するスレッドの場合と比較して、接着剤層23または接着剤層27の厚みを少なくすることができる。この場合は、紫外線の照射で蛍光発色する接着剤層23または接着剤層27はどちらの面に形成しても良い。
紫外線の照射で蛍光発色する接着剤層23または接着剤層27は、抄紙機の乾燥ゾーンの温度で溶融若しくは軟化する感熱接着剤である。この紫外線の照射で蛍光発色する接着剤層23または接着剤層27は、アイオノマー樹脂系、ポリエステル樹脂系、ポリ酢酸ビニル樹脂系、ポリ塩化ビニル樹脂系、ポリアクリル酸エステル樹脂系、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂系、ポリビニルアルコール樹脂系等の公知の感熱接着剤が使用できる。その塗工量は、通常で0.1〜10g/m(乾燥質量換算)とする。接着剤には必要に応じて、ブロッキング防止剤、潤滑剤、着色剤、等を添加してもよい。
紫外線の照射で蛍光発色する紫外蛍光発色剤を使用し、スレッドのいずれか一方の面に処理することで、スレッドの表裏を容易に確認することが可能となり、本発明の特徴であるスレッドを表面から観察したときに、パスター加工により形成された正文字のみのマイクロ文字および/または正画像のみのマイクロ画像22が連続して視認されるようになる。このために上記したように紫外線の照射で蛍光発色する接着剤層23を設けても良いが、ベースフィルム21の裏面に、紫外線の照射で蛍光発色する塗工層26を設け、さらに接着剤層27を設ける構成にしても構わない。
本発明で使用する紫外蛍光発色剤は、クマリン系、オキサゾール系、ピラゾリン系等の紫外蛍光染料が一例として挙げられる。これらの紫外蛍光染料は、通常の光源のもとでは無色であるが、紫外線の照射により青白色に発光する。この種の紫外蛍光染料としては、染料メーカー各社で販売されているが一例を挙げると、(商品名「Mikawhite ATN conc.」、日本化薬(株)製造:通常の光源のもとで無色、紫外線の照射で赤味掛かった白色に発色)、(商品名「Leucopher EF 2N」、クラリアント(株)製造:通常の光源のもとで無色、紫外線の照射でわずかに青味の白色に発色)、(商品名「TBO」、住友精化(株)製造:通常の光源のもとで無色、紫外線の照射で青白色に発色)、等々である。
また、本発明では、通常の光源のもとでは有彩色で、紫外線の照射により各種色相に発光するアミノケトン系等の染料も使用できる。この種の紫外蛍光染料も染料メーカー各社で販売されているが一例を挙げると、(商品名「Yellowfluor G」、住友化学工業(株)製造:通常の光源のもとで黄色、紫外線の照射で黄色に発色)、(商品名「Kayaset Flavine FN」、日本化薬(株)製造:通常の光源のもとで黄色、紫外線の照射で黄色に発色)、(商品名「Kayaset Flavine FG」、日本化薬(株)製造:通常の光源のもとで黄色、紫外線の照射で黄色に発色)、(商品名「Kayaset Yellow SF−G」、日本化薬(株)製造:通常の光源のもとで黄色、紫外線の照射で黄色に発色)、(商品名「Kayaset Orange SF−R」、日本化薬(株)製造:通常の光源のもとでオレンジ色、紫外線の照射でオレンジ色に発色)、(商品名「Kayaset Red SF−B」、日本化薬(株)製造:通常の光源のもとで赤色、紫外線の照射で赤色に発色)、(商品名「Kayaset Red SF−4G」、日本化薬(株)製造:通常の光源のもとで赤色、紫外線の照射で赤色に発色)、等々である。
本発明では紫外蛍光発色剤として、無機の紫外蛍光顔料も使用できる。具体的には、銅、銀、マンガン等で活性化した硫化亜鉛;マンガン等で活性化したケイ酸亜鉛;銀、銅等で活性化した硫化亜鉛;カドミウム、ビスマス等で活性化した硫化カルシウム;サマリウム、セリウム等で活性化した硫化ストロンチウム;鉛等で活性化したタングステン酸カルシウム;ユーロピウム等で活性化したSr(POCl;マンガン等で活性化したZnGeO;ユーロピウム等で活性化したYS;ユーロピウム等で活性化したY等を挙げることができる。また、必要に応じて、これらにアントラキノン系やアセトフェノン系等の増感剤を併用することもできる。
本発明においては、紫外線の照射で蛍光発色する接着剤層23の反対の面にごく少量の紫外線の照射で蛍光発色しない接着剤層を必要に応じて設けることもできる。特に窓開きスレッド入り紙でスレッドの巾が2mmを超える広幅になったときに、非窓開き部がオフセット印刷等の印刷工程で浮き上がること等のトラブルを防ぐためにはこの層を設けることが好ましい。
次いで、マイクロスリッター等の周知の装置を使用して所定の幅にスリットしてボビンに巻き取ることで本発明に使用するスレッドはできあがる。この際、マイクロ文字は図11に示すように、スレッドの中央に位置するようにスリットする。スレッドの幅は通常0.5〜5mmである。
スレッドの紫外蛍光発色の判定は、目視や、CCDを使用した撮像等により自動的に行うことができ、自動的に発色の検出を行う場合には、スレッドの反転と同時に警報を発するようにすることも可能である。
判定結果により、スレッドの表裏が用紙に正しく挿入されていない場合には、スレッド挿入状態を直ちに反転させる必要がある。スレッド挿入状態を反転させる方法としては、スレッド挿入箇所においてスレッドを切断した後、スレッドを反転させて再び挿入する手動的方法や、スレッド挿入装置にスレッド反転機能をもたせて機械的に行う方法が考えられる。機械的にスレッドを反転させる場合には、スレッドの発色の判定結果と連動させれば、自動的にスレッドを反転させることもできる。
前述したように、本出願人が特許文献8で提案したスレッドの表裏の判定方法では、スレッドの表裏は、マイクロ文字が紫外線の照射で蛍光発色するか否かで判定している。この方法では文字や画像の面積が小さい場合、紫外線の照射で蛍光発色する強度が必然的に低くなり、スレッドの表裏の判定を正確に行うことが困難となる問題点があることが判った。本発明者等が子細に検討した結果、マイクロ文字を形成する各文字や各画像の面積の合計がスレッドの面積に対して20%〜60%であると、特に本発明は効果が大きいことを見出した。面積が20%未満であると、マイクロ文字や画像が視認しにくくなり、また60%を超えると特許文献8で提案した方法を使用してもスレッドの表裏が容易に判定できる。
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、実施例中の質量、質量部、厚みはいずれも乾燥換算の値を意味する。
[スレッドの製造例1]
厚み16μmの、可視光は透過し紫外線を透過しないポリエステルフィルム(東レ(株)製造)の表面全体に金属アルミニウムを45nm蒸着し、さらにこのアルミニウム蒸着層の上に、2液硬化型のアクリル系樹脂からなる耐アルカリ性の透明インキを用い、グラビア印刷機を使用して正文字と画像からなるマイクロ文字及び画像の印刷層を形成した。マイクロ文字と画像の特太ゴシック体よりなる大きさ1mm、文字や画像の間隔は0.5mm、文字及び画像の列の間隔は1.5mmとした。次いでこのフィルムを10%の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して印刷層を形成した部分以外のアルミニウム蒸着層を溶解した後、フィルムを水酸化ナトリウム水溶液から取り出し、フィルム表面の水酸化ナトリウムを水洗して除去してから乾燥した(こうして製造したパスター加工済みのフィルムを図13に例示した)。さらにこのパスター加工済みのフィルムの裏面には、オキサゾール系の紫外蛍光発色剤(接着剤に対して0.5質量%使用)を添加したエチレン−酢酸ビニル系の感熱接着剤を5μm塗工して感熱接着剤層を形成した。次いでマイクロスリッターを使用して文字列と文字列の丁度中央でスリットすることにより、文字列が中央に位置する巾1.5mmのスレッド(図11に例示したようなスレッドであるが、これより文字の巾が太い)を製造した。スレッドはボビンに巻き取った。このスレッドにおいて、マイクロ文字および画像を形成する各文字と画像の面積の合計がスレッドに対して占める割合を調べたところ70%であった。
[スレッドの製造例2]
マイクロ文字と画像の中太ゴシック体よりなる大きさ1mm、文字や画像の間隔は0.5mm、文字及び画像の列の間隔は1.5mmとした以外は製造例1と同様にして巾1.5mmのスレッドを製造した。このスレッドにおいて、マイクロ文字および画像を形成する各文字と画像の面積の合計がスレッドに対して占める割合を調べたところ60%であった。
[スレッドの製造例3]
マイクロ文字と画像の太ゴシック体よりなる大きさ1mm、文字や画像の間隔は0.5mm、文字及び画像の列の間隔は1.5mmとした以外は製造例1と同様にして巾1.5mmのスレッドを製造した。このスレッドにおいて、マイクロ文字および画像を形成する各文字と画像の面積の合計がスレッドに対して占める割合を調べたところ50%であった。
[スレッドの製造例4]
マイクロ文字と画像のゴシック体よりなる大きさ1mm、文字や画像の間隔は0.5mm、文字及び画像の列の間隔は1.5mmとした以外は製造例1と同様にして巾1.5mmのスレッドを製造した。このスレッドにおいて、マイクロ文字および画像を形成する各文字と画像の面積の合計がスレッドに対して占める割合を調べたところ30%であった。
[スレッドの製造例5]
マイクロ文字と画像の細ゴシック体よりなる大きさ1mm、文字や画像の間隔は0.5mm、文字及び画像の列の間隔は1.5mmとした以外は製造例1と同様にして巾1.5mmのスレッドを製造した。このスレッドにおいて、マイクロ文字および画像を形成する各文字と画像の面積の合計がスレッドに対して占める割合を調べたところ20%であった。
[スレッドの比較製造例1]
厚み16μmのポリエステルフィルムの表面全体に金属アルミニウムを45nm蒸着してアルミニウム蒸着層を形成した後、さらにこのアルミニウム蒸着層の上に、チオフェン系の蛍光染料を0.5質量%添加した2液硬化型のアクリル系樹脂からなる耐アルカリ性の透明インキを用い、グラビア印刷機を使用して正文字と画像からなるマイクロ文字及び画像の印刷層を形成した。マイクロ文字と画像の特太ゴシック体よりなる大きさ1mm、文字や画像の間隔は0.5mm、文字及び画像の列の間隔は1.5mmとした。次いでこのフィルムを10%の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して印刷層を形成した部分以外のアルミニウム蒸着層を溶解した後、フィルムを水酸化ナトリウム水溶液から取り出し、フィルム表面の水酸化ナトリウムを水洗して除去してから乾燥し、図13に例示したようなパスター加工済みのフィルムを製造した。次いでこのフィルムの裏面にエチレン−酢酸ビニル系の感熱接着剤を5μm塗工して感熱接着剤層を形成した。次いでマイクロスリッターを使用して文字列と文字列の丁度中央でスリットすることにより、文字列が中央に位置する巾1.5mmのスレッド(図11に例示したようなスレッド)を製造した。スレッドはボビンに巻き取った。このスレッドにおいて、マイクロ文字および画像を形成する各文字と画像の面積の合計がスレッドに対して占める割合を調べたところ70%であった。
[スレッドの比較製造例2]
マイクロ文字と画像の中太ゴシック体よりなる大きさ1mm、文字や画像の間隔は0.5mm、文字及び画像の列の間隔は1.5mmとした以外は比較製造例1と同様にして巾1.5mmのスレッドを製造した。このスレッドにおいて、マイクロ文字および画像を形成する各文字と画像の面積の合計がスレッドに対して占める割合を調べたところ60%であった。
[スレッドの比較製造例3]
マイクロ文字と画像の太ゴシック体よりなる大きさ1mm、文字や画像の間隔は0.5mm、文字及び画像の列の間隔は1.5mmとした以外は比較製造例1と同様にして巾1.5mmのスレッドを製造した。このスレッドにおいて、マイクロ文字および画像を形成する各文字と画像の面積の合計がスレッドに対して占める割合を調べたところ50%であった。
[スレッドの比較製造例4]
マイクロ文字と画像のゴシック体よりなる大きさ1mm、文字や画像の間隔は0.5mm、文字及び画像の列の間隔は1.5mmとした以外は比較製造例1と同様にして巾1.5mmのスレッドを製造した。このスレッドにおいて、マイクロ文字および画像を形成する各文字と画像の面積の合計がスレッドに対して占める割合を調べたところ30%であった。
[スレッドの比較製造例5]
マイクロ文字と画像の細ゴシック体よりなる大きさ1mm、文字や画像の間隔は0.5mm、文字及び画像の列の間隔は1.5mmとした以外は比較製造例1と同様にして巾1.5mmのスレッドを製造した。このスレッドにおいて、マイクロ文字および画像を形成する各文字と画像の面積の合計がスレッドに対して占める割合を調べたところ20%であった。
実施例1] (偽造防止用紙の製造例1)
紙料の調製
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)20質量部、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)80質量部をフリーネス350mlC.S.F.に叩解し、これに白土10質量部、紙力増強剤(商品名「ポリストロン117」、荒川化学工業(株)製)0.3質量部、サイズ剤(商品名「サイズパインE−50」、荒川化学工業(株)製)1.0質量部、硫酸バンドを適量加え、紙料を調製した。
[抄紙網の製造]
図6に示したような円網抄紙機の最外層の紙層を形成する槽12の円網シリンダー12aの上網12b(幅1300mm)に短辺10mm、長辺25mm、厚み0.3mmの樹脂板からなる多数の型13を接着剤を使用して紙層の流れ方向に10mm間隔で連続的に貼り付けた。この列を上網12bの幅方向に等間隔に6列取り付けた。
[用紙の抄造]
図6に示したような2槽式円網抄紙機の、窓開き部のない最外層に接する紙層8を形成するため、第1の槽11の円網シリンダー11aには何等細工を施さない上網を装着し、開き部4を有する最外層の紙層7を形成するための第2の槽(最終槽)12の円網シリンダーには上記型13を取り付けた上網12bを装着した。1槽目で形成した紙層8の上に2槽目で形成した紙層7が重なるようにして、前記紙料を用い抄紙速度50m/分で2層抄き合わせ紙を製造した。この際、紙層8(乾燥質量に換算して50g/m)と紙層7(同50g/m)の間に、製造例1〜5,及び比較製造例1〜5で製造したスレッドを特許文献3で提案した方法を用いて型13の中央に相当する位置に挿入した。クーチロール15の位置にブラックライト(図示せず)を設置して湿紙に紫外線を照射した。用紙の窓開き部に露出するスレッドが紫外線の照射で発色して見える場合は、製造例1〜5のスレッドの場合には、スレッド裏面の感熱接着剤塗工層が窓開き部に露出していることを意味するので、スレッド挿入位置Vで挿入されているスレッドを切断し、スレッドの表裏面を反転させた後、再び挿入する動作を行った。
また、用紙の窓開き部に露出するスレッドが紫外線の照射で発色して見えない場合は、比較製造例1〜5のスレッドの場合には、スレッド裏面の感熱接着剤塗工層が窓開き部に露出していることを意味するので、スレッド挿入位置Vで挿入されているスレッドを切断し、スレッドの表裏面を反転させた後、再び挿入する動作を行った。
次いで常法に従い湿紙を脱水後、シリンダードライヤーで乾燥し、2層抄き合わせ紙からなる本発明の偽造防止用紙を製造した。得られた用紙は、用紙の流れ方向における窓開き部4の長さXが10mm、非窓開き部の長さYが10mmであり、窓開き部4内部ではスレッド6が露出し、非窓開き部5ではスレッド6が紙層の間に埋設された状態となっていた。窓部に露出したスレッドをルーペで観察するとアルミニウム金属光沢感に優れたマイクロ文字や画像が観察できた。
実施例2] (偽造防止用紙の製造例2)
紙料の調製は実施例1と同様に行った。
[抄紙網の製造]
図6に示した円網抄紙機の最外層の紙層7を形成するための第2の槽(最終槽)12の円網シリンダーの上網12bには実施例1の場合と異なり型13を取り付けないプレーンな網を使用した。
[用紙の抄造]
スレッドの製造例1〜5、及びスレッドの比較製造例1〜5に述べたスレッドを使用し、上記抄紙網を使用した他は実施例1と同様にして偽造防止用紙を製造した。この偽造防止用紙を反射光で観察してもスレッドが挿入されていることは判らなかったが、光にかざすとスレッドに印刷されたマイクロ文字が光を遮断するので黒っぽいマイクロ文字を観察することができた。
実施例1及び2で製造した偽造防止用紙の評価結果を表1に示す。
Figure 2006161224
紫外蛍光発色強度の評価方法
市販のブラックライト((商品名「ブラックライトブルー10BL−B」、松下電器産業(株)製造)を紙面から5cmの高さから照射し、蛍光発色した様子を目視で観察した。
◎:スレッドの発色強度は強く、容易に表裏が判定できたレベル
○:◎よりは発色強度は弱いが、実用上問題のないレベル
△:発色強度が弱く表裏の判定が困難なレベル
表1で明らかのように、本発明によるスレッドの構成の場合、マイクロ文字や画像の面積の割合が小さい場合でもスレッドの表裏の判定は容易に行うことができる。
[偽造防止印刷物製造の実施例]
以上述べた本発明の偽造防止用紙の表面に、図4で例示したような印刷を常法に従って施して偽造防止印刷物を得た。
以上のような特性を活かして本発明で得られた偽造防止用紙は、紙幣、小切手、株券、債券、商品券、入場券、乗車券、カード、機密文書、パスポート、身分証明書等に好適に使用できる。
本発明に使用するスレッドの一例の一部拡大断面図である。 本発明に使用するスレッドの他の例の一部拡大断面図である。 従来のマイクロ文字入りスレッドの一例を示す図である。 本発明の偽造防止用紙を用いた商品券の一例を上面から見た図である。 図4の窓開き部の拡大断面図である。 本発明の偽造防止用紙の製造に好ましく用いられる2槽式円網抄紙機の例を示す説明図である。 図5の円網抄紙機で使用する円網シリンダーの上網に、窓開き部を形成するための型を取り付けた状態を示す部分説明図である。 本発明で使用するマイクロ文字入りスレッドの一例を示す一部拡大断面図である。 本発明で使用するマイクロ文字入りスレッドの他の一例を示す一部拡大断面図である。 本発明で使用するマイクロ文字入りスレッドの他の一例を示す一部拡大断面図である。 本発明で使用するマイクロ文字入りスレッドの一例を示す一部拡大断面図である。 本発明で使用するマイクロ文字入りスレッドの他の一例を示す一部拡大断面図である。 本発明で使用するパスター加工済みのフィルムの一例を示す一部拡大平面図である。
符号の説明
21 可視光は透過し、かつ紫外線を透過しないベースフィルム
22 パスター加工により形成されたマイクロ文字や画像
23 紫外線の照射で蛍光発色する接着剤層
24 可視光および紫外線を透過するベースフィルム
25 可視光は透過し、紫外線を透過しない塗工層
26 紫外線の照射で蛍光発色する塗工層
27 接着剤層
4 窓開き部
5 非窓開き部
6 スレッド
7 最外層の紙層
8 最外層に接する紙層
9 所定の印刷層
11 最外層に接する紙層8を形成するための第1の槽
11a 槽11の円網シリンダー
12 最外層の紙層7を形成するための第2の槽
12a 槽12の円網シリンダー
12b 槽12の円網シリンダー12aの上網
13 型
14 キャンバス
15 クーチロール










Claims (10)

  1. 用紙の流れ方向に連続的にスレッド(6)が抄き込まれた偽造防止用紙において、該スレッドを表(おもて)面から観察したときに、パスター加工により形成された正文字のみのマイクロ文字および/または正画像のみのマイクロ画像(22)が連続して視認され、かつスレッドに紫外線を照射したときにスレッドのいずれか一方の面が紫外蛍光発色することを特徴とする偽造防止用紙。
  2. 該スレッド(6)が、可視光は透過し、かつ紫外線を透過しないベースフィルム(21)の表面に正文字のみのマイクロ文字および/または正画像のみのマイクロ画像(22)が連続して視認されるようにパスター加工により形成されており、かつ裏面に紫外線の照射で蛍光発色する接着剤層(23)が形成されたスレッドであることを特徴とする請求項1記載の偽造防止用紙。
  3. 該スレッド(6)が、可視光は透過し、かつ紫外線を透過しないベースフィルム(21)の表面に正文字のみのマイクロ文字および/または正画像のみのマイクロ画像(22)が連続して視認されるようにパスター加工により形成されており、紫外線の照射で蛍光発色する接着剤層(23)が形成されたスレッドであることを特徴とする請求項1記載の偽造防止用紙。
  4. 可視光は透過し、かつ紫外線を透過しないベースフィルム(21)が、可視光及び紫外線を透過するベースフィルム(24)の表裏いずれかの面に、可視光は透過し、かつ紫外線を透過しない塗工層(25)を設けたフィルムであることを特徴とする請求項1または2記載の偽造防止用紙。
  5. 該スレッド(6)が、可視光および紫外線を透過するベースフィルム(24)の表面に、正文字のみのマイクロ文字および/または正画像のみのマイクロ画像(22)が連続して視認されるようにパスター加工により形成し、そのいずれか一方の面、若しくは両面に可視光は透過し、紫外線を透過しない塗工層(25)を設けたスレッドであることを特徴とする請求項1記載の偽造防止用紙。
  6. 該スレッド(6)が、可視光は透過し、かつ紫外線を透過しないベースフィルム(21)の表面に正文字のみのマイクロ文字および/または正画像のみのマイクロ画像(22)が連続して視認されるようにパスター加工により形成されており、かつ裏面に紫外線の照射で蛍光発色する塗工層(26)と接着剤層(27)が形成されたスレッドであることを特徴とする請求項1記載の偽造防止用紙。
  7. パスター加工により形成された部分の面積の合計がスレッド全体の面積に対して20%〜60%であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の偽造防止用紙。
  8. 用紙の流れ方向に間欠的に厚みを薄くした窓開き部が用紙の表側に形成されており、この窓開き部にスレッドが露出していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の偽造防止用紙。
  9. 用紙の流れ方向における前記窓開き部の長さ(X)と窓開き部と窓開き部の間に位置する非窓開き部の長さ(Y)との比率を3:1〜1:2としたことを特徴とする請求項8に記載の偽造防止用紙。
  10. 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の偽造防止用紙に所定の印刷層(9)を設けたことを特徴とする偽造防止印刷物。
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