JP2006161121A - アーク式イオンプレーティング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】処理物である基板の表面に、密着性の良好な、高品質で均一な硬質膜を量産的に形成するためのアーク式イオンプレーティング装置を提供。
【解決手段】真空容器1の中に設けられた、回転式装着用治具8に保持された基材9の1側に向かって真空容器1の内側のアーク式蒸発源6に取り付けられた陰極を構成するターゲット10、真空容器1に対して基材9に負のバイアス電圧を印加する第1の直流のバイアス電源12、基材9を挟むように基材9の他側に向けて真空容器1内上部に取り付けられた圧力勾配型プラズマ電子銃2、及び真空容器1内に配置したアノード16に対して圧力勾配型プラズマ電子銃2に負のバイアス電圧を印加する直流電源15、を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、アーク式イオンプレーティング法によって、ドリル・エンドミル等の切削工具、金型、パンチ等の成形用工具、機械部品等の耐摩耗部品の基材の表面に密着性の優れた、高品質の被膜を形成するアーク式イオンプレーティング装置に関する。
従来TiNなどのセラミック硬質膜を工具などの基材の表面に形成する場合、イオンプレーティング法が一般的に用いられている。特にアーク法イオンプレーティングは、耐熱性に優れるTiAlNなどの多元素の成膜が可能であるため、最近ではドライの表面処理加工技術として広く普及している。一般的なアーク式イオンプレーティング装置は例えば特許文献1に開示する、図2に示すようなものがあり、図示しない真空排気ポンプにつながる真空排気穴4を介して真空に排気される真空容器1と、真空容器1の中にそれぞれ設けられた、被処理物である基材9を保持する装着用治具である回転式装着用治具8、回転式装着用治具8に保持された基材9に向けて真空容器1の内側のアーク式蒸発源6に取り付けられた陰極を構成するターゲット10、アーク式蒸発源6に取り付けられたターゲット10と陽極を構成する真空容器1との間に接続されたアーク電源13、及び真空容器1に対して回転式装着用治具8に保持された基材9に負のバイアス電圧を印加する直流のバイアス電源12、を有する。基材9にはバイアス電源12を用いて負の数十Vから数百Vの大きさのバイアス電圧が印加される。ターゲット10は成膜したい物質に応じた金属が選択される。このターゲット10は、図示していないトリガー電極によりアーク電源13を用いたアーク放電を生じることにより局部的に溶解されて、陰極物質を蒸発させる。このときターゲットの近傍にはイオン化した蒸発物質を含むアーク放電部プラズマ11が形成される。
特開2004−256914号公報 特開2004−156091号公報 特実開平6−33956号公報
図2に示す装置により、具体的にアーク方式によるTiNの成膜工程の場合を述べる。ターゲット10にはTi金属板を用いる。真空容器1内を真空に排気した後、真空容器内に導入口3から反応性のガスである窒素ガスを導入して、基材9には負のバイアス電圧を印加した状態で、アーク式蒸発源6に取り付けられたターゲット10表面に、トリガー電強によりアーク放電を発生、継続させる。ターゲット10の前面には溶解金属で生じたアーク放電プラズマ11が発生し、Tiの蒸発金属と反応ガス(窒素ガス)のイオン化した状態ができる。そして負のバイアスに印加された基材9にはイオン化した金属蒸発物質と反応ガスイオンが反応してTiN被膜が形成される。以上はコーティング被膜の形成工程のみを述べたが、切削工具などを基材にする場合には密着性を確保するため、通常は真空容器内部にヒータなどの加熱機構を加えて350 ℃以上の温度に保持した状態で行う。また上記のような成膜工程の前に真空容器内にArなどの不活性ガスを導入して、バイアス電源12を用いて、基材9と真空容器1との間でアルゴンのグロー放電を起こして数百Vのイオンボンバードを行い、基材の表面を清浄化した上で、成膜工程を行うことにより被膜の密着性はより向上する。通常のアーク式イオンプレーティング装置による処理工程は、(基材の装着)→(真空排気)→(基材の加熱)→(イオンボンバード)→(成膜)→(冷却)→(基材の取り出し)である。
イオンボンバード工程
特許文献1に開示する、図2に示すアーク式イオンプレーティング装置は、前述したようにArなどの不活性ガスを用いてイオンボンバードを行うことで密着性が向上するが、通常の真空容器を陽極にして、基材を陰極にした場合、2極放電によるグロー放電プラズマを形成させるためには数10Pa(パスカル)の比較的低真空度の圧力領域で、基材に印加する負電圧も数百マイナスVが必要になる。この領域のイオンボンバードメントは、基材が複雑な形状物や先端が尖った物などを処理する場合は、ドリルで言えば溝形状の所が密着不良になったり、切れ刃の先端部の表面が荒れたりするなどの問題が生じる。また平板状の表面においても平板の中央部と角部で密着性が異なり、中央部において膜の剥離を生じる現象が起きやすい。上記対策として、特許文献2では、真空容器内部にフィラメントワイヤーなどの電子放出機構を設けることでプラズマ形成のアシストを行い、0.1 Pa以下の高真空領域でグロー放電プラズマの形成を可能にし、基材にダメージを与えないでイオンボンバード・エッチングを行っている。しかし本発明者らの経験ではワイヤーの寿命が短いために数チャージ毎の取り替えが煩雑でロスタイムが多いことなどが問題になる。またフィラメント方式ではワイヤーの近傍の狭いプラズマ領域しかつくることができないため、製品装着治具等の工夫で生産は可能であるが、量産装置においてはこの機構は適当ではない。
成膜工程
特許文献1に開示する、図2に示すアーク式イオンプレーティング装置は、また成膜中の反応ガスのイオン化についても、ターゲット表面に形成されるアーク放電プラズマの領域11に限定されるためプラズマ密度も低く、成膜中のプラズマ密度も不均一になり、基材の中央と端面で形成される被膜の結晶性が異なるなどのばらつきが生じやすくなるという課題があった。また特許文献1又は特開平10−251845号公報のように、アークイオンプレーティング装置の成膜工程において一般的に反応ガスの導入は真空装置内部に直接導入するケースが多い。あるいは特開平09−157837号公報のように、イオン化を促進する方法として反応ガスの導入をターゲット近傍に吹き付ける方法も提案されている。また特開平10−1771号公報のように、あらかじめガスをフィラメントからでる熱電子でイオン化してターゲット近傍に導入する例もある。しかしながら上記の方法ではいずれも反応ガスのイオン化はターゲット近傍のプラズマ領域しか作用せず成膜の結晶性を広域のわたって向上させるには十分とはいえない。
本発明の課題は、処理物である基板の表面に、密着性の良好な、高品質で均一な硬質膜を量産的に形成するためのアーク式イオンプレーティング装置を提供することにある。
このため本発明は、真空容器と、前記真空容器内にそれぞれ設けた、被処理物である基材を保持する装着用治具、前記真空容器に対して前記装着用治具に保持された基材に負のバイアス電圧を印加する第1のバイアス電源、前記装着用治具に保持される基材の1側に向けて前記真空容器の1内側に取り付けられた陰極を構成するターゲット、前記陰極を構成するターゲットと陽極を構成する前記真空容器との間に接続されたアーク電源、前記装着用治具に保持される基材を挟むように前記基材の他側に向けて前記真空容器の他内側に取り付けられた圧力勾配型プラズマ電子銃、及び前記真空容器又は前記真空容器内に配置したアノードに対して前記圧力勾配型プラズマ電子銃に負のバイアス電圧を印加する圧力勾配型プラズマ電子銃用の直流電源、とを有することを特徴とするアーク方式イオンプレーティング装置によって上述の本発明の課題を解決した。
本発明では、装着用治具に保持される基材の1側に向けて真空容器の1内側に取り付けられた陰極を構成するターゲット、装着用治具に保持される基材を挟むように基材の他側に向けて真空容器の他内側に取り付けられた圧力勾配型プラズマ電子銃、及び真空容器又は真空容器内に配置したアノードに対して圧力勾配型プラズマ電子銃に負のバイアス電圧を印加する圧力勾配型プラズマ電子銃用の直流電源、とを有するので、処理物である基材の表面に、ターゲットの前面から溶解金属で生じたアーク放電プラズマを発生させて蒸発金属と反応ガスをイオン化した状態とし、さらに圧力勾配型プラズマ電子銃によるグロー放電プラズマが、これら蒸発金属と反応ガスのイオン化した状態のイオン化をアシストするようにして、密着性の良好な、高品質で均一な硬質膜を量産的に形成するためのアーク式イオンプレーティング装置を提供するものとなった。
この圧力勾配型プラズマ電子銃を用いることによって、成膜前のイオンボンバード工程において不活性ガス(たとえばArガス)のイオン化が促進してイオンボンバード効果を高め、また成膜中には反応ガス(たとえば窒素ガス)のイオン化を促進しターゲットからのイオン化した陰極物質と反応させることにより反応性が向上し、密着力の優れた、高品位の被膜が得られるものとなった。
本発明で搭載している圧力勾配型プラズマ電子銃は、特許文献3に開示するような、ルツボを用いて金属元素を溶解する溶解方式イオンプレーティング装置で一般的に使われている電子銃であるが、本発明においてはガスのイオン化を広域に促進するのためにアーク式イオンプレーティング装置において搭載することにより、特に量産装置を容易に得ることができる。なお、本発明装置においてはアノードは圧力勾配型プラズマ電子銃と基材までの距離が短い場合は、必ずしも必要ではなく、真空用本体をアノードの代わりにしてもよい。アノードは大型の真空容器などで電子銃と基材との距離が離れている場合にプラズマを発生、継続するために必要となる。
好ましくは、前記装着用治具は複数個の回転装着軸を有する量産装置に展開することができる。
本発明を実施するための最良の形態を説明する。図1の本発明を実施するための最良の形態のアーク式イオンプレーティング装置の断面ブロック図に示すように、図示しない真空排気ポンプにつながる真空排気穴4を介して真空に排気される真空容器1と、この真空容器1の中にそれぞれ設けられた、被処理物である基材9を保持する装着用治具である回転式装着用治具8、回転式装着用治具8に保持された基材9の1側に向かって真空容器1の内側のアーク式蒸発源6に取り付けられた陰極を構成するターゲット10、アーク式蒸発源6に取り付けられた陰極を構成するターゲット10と陽極を構成する真空容器1との間に接続されたアーク電源13、真空容器1に対して回転式装着用治具8に保持された基材9に負のバイアス電圧を印加する第1の直流のバイアス電源12、回転式装着用治具8に保持される基材9を挟むように基材9の他側に向けて真空容器1の他内側である上内側部に取り付けられた圧力勾配型プラズマ電子銃2、及び真空容器1内に配置したアノード16に対して圧力勾配型プラズマ電子銃2に負のバイアス電圧を印加する圧力勾配型プラズマ電子銃用の直流電源15、を有する。3は反応ガス導入口、14は不活性ガス導入口である。
基材9には第1のバイアス電源12を用いて負のバイアス電源が印加され、このバイアス電源は数十Vから数百Vの大きさである。ターゲット10は成膜したい物質に応じた金属が選択される。このターゲット10は、図示していないトリガー電極によりアーク電源13を用いたアーク放電を生じることにより局部的に溶解されて、陰極物質を蒸発させる。このときターゲットの近傍にはイオン化した蒸発物質を含むアーク放電部プラズマ11が形成される。本発明装置においてはアノード16は圧力勾配型プラズマ電子銃2と基材9までの距離が短い場合は、必ずしも必要ではなく、真空容器1本体をアノードの代わりにしてもよい。アノード16は大型の真空容器などで、圧力勾配型プラズマ電子銃2と基材9との距離が離れている場合にプラズマを発生、継続するために必要となる。
圧力勾配型プラズマ電子銃2は、アーク式蒸発源6に取り付けられたターゲット10を横方向に複数設置したアーク式イオンプレーティング装置のような機構の場合には、基材9の装着治具8の構成に応じて基材9がプラズマに覆われるように真空容器1の横内壁に複数個を設置してもよい。また図2に示すように装着用治具8は複数個の基材9を保持する回転装着軸20を増やして量産装置に展開することも容易にできる。
イオンボンバード工程について説明する。本発明は真空装置1の上部に圧力勾配型プラズマ電子銃2を搭載しており、圧力勾配型プラズマ電子銃2の周囲には磁石5が取り付けられており、圧力勾配型プラズマ電子銃2から発せられるプラズマビームを制御してプラズマ7を形成させる。作動においてはまず不活性ガス導入口14から不活性ガスであるArを電子銃の容器内に導入し、圧力勾配型プラズマ電子銃2を陰極として起動させて、アノード16との間でプラズマ電子ビーム7を発生させる。圧力勾配型プラズマ電子銃の作動域である1 Paで電子銃を加熱し、赤熱した状態で徐々に 0.5〜0.01 Pa まで真空度を上げて電子を放出させアノードと16の間でグロー放電を生じさせる。真空容器1内にはAr不活性ガスによるプラズマ領域7が形成され、イオン化したアルゴン原子が多く存在した状態になる。ここで回転治具である回転式装着用治具8と基材9にバイアス電源12で数百V(たとえば 200V)印加する。イオン化したArイオンは電気的に基材に引き寄せられて基材表面に衝突する(ボンバードする)。このとき基材の表面の汚染物(酸化膜や洗浄付着物など)がエッチング作用により物理的に除去される。このボンバード工程をコーティング前に行うことによって、基材と被膜の密着性は飛躍的に向上する。ここで被膜の密着性は、ボンバードする真空度と基材に印加する電圧により、大きく左右される。低真空度で、印加電圧が高いほど基材はダメージを受けやすくなる。前述したように工具のような切れは刃先端部が荒れたり、写真1に示すように平面の中央部で剥離が生じやすくなる。従ってイオンボンバード処理は、例えばハイス工具を処理するときは、0.5 Pa以上の高真空で、印加電圧が 200V以下であることが好ましい。
次に成膜工程について説明する。アーク式蒸発源6には陰極物資であるターゲット10を取り付ける。具体的にはターゲットがTiで反応ガスにはN2 の場合は窒化チタン(TiN)が形成される。またターゲットにTiAlの合金を用いれば、反応ガスがN2 ならばTiAlNが形成される。ターゲット表面にアーク放電を生じさせると、アーク放電のホットスポットがターゲット表面に多数生じてターゲット近傍で継続的なアーク分岐が起きる。発生したターゲット原子は多数のホットスポットで蒸気飛散して基板へ向かう。そこに反応ガス導入口3から反応ガスを導入し、回転式装着用治具8と基材9にバイアス電源12をたとえば 100Vに印加することで、蒸着物質と反応ガスがイオン化した状態で引き寄せられて基材9の表面に上記の様な硬質な被膜が形成される。一方でこの成膜中に圧力勾配型プラズマ電子銃2を作動させた場合の効果について説明する。前述のように圧力勾配型プラズマ電子銃2を用いることでアルゴンによるグロー放電のプラズマ領域7がアノード16との間にできる。反応ガスである窒素ガスはアルゴンのプラズマ領域7でアルゴンイオンにより窒素ガスの分解、イオン化が促進される。この状態で基板にバイアス電源12でたとえば前述と同様に-100V印加することで被膜の形成を行う。基板表面に形成された被膜は、結晶性がよく、表面も平滑になり高品質な被膜が得られる。この違いを具体的な実施例で示す。
〔比較例1〕
比較例1として、図2に示した従来の装置を用いた。ターゲット10にはTiAlを使用し、基材には高速度工具鋼で作成した試験片(6mm ×6mm ×40mm:母材硬さ66.0 HRC、研磨面粗さ Ry 0.2m)を用いた。真空排気で10〜2 Paまで排気した後、図示していない加熱用ヒータで 450℃に加熱保持をした。それからボンバード工程として、 Arガスを導入して10Paを維持し、装着した基材にグロー放電が維持できる−500 Vを印加して陰極を構成する基材9と陽極を構成する真空容器1の2極でグロー放電プラズマを形成させて基材表面のボンバードを20分間行った。ボンバード終了後の成膜工程では、反応ガスとして窒素ガスN2 を用いて、真空に排気しながら 4Paに保持し、ターゲットに印加してアーク放電を起こしTiAlを蒸発させた。このときのアーク放電電流は50Aである。基材はバイアス電圧-100Vを印加して所定時間成膜を行い、基材表面にTiAlNを3μm形成した。
一方、本発明装置による実施例1として図1に示した装置で、ボンバード工程として圧力勾配型プラズマ電子銃2にArガスを導入して0.3 Paを維持し、高真空のグロー放電プラズマを形成した後、基材に-200Vを印加してプラズマシストによる基材のイオンボンバード処理を20分間行った。その後の成膜工程は比較例1と同じ条件で同様に基材にTiAlNの3μmを成膜した。基材のTiAlN被膜の密着力の評価には、スクラッチ試験法よる臨界強度Lc(N)とロックウェルによる圧痕剥離試験法で行った。そしてスクラッチ試験は、TiAlN被膜の表面をダイヤモンド圧子で荷重を増加させながら、AE信号(アコースティックエミション)を測定する方法で、剥離が生じた時に発する音をAEで検出し、そのときの荷重を密着強度の臨界荷重値Lcとして密着力の評価を行う測定法である。基材のTiAlN被膜の圧痕剥離試験法は標準的なロックウェル(Cスケール)硬度計を用いておこない、ダイヤモンド圧子を基材のTiAlN被膜表面に押圧した場合に生ずる圧痕を観察するものである(図4)。ダイヤモンド圧子の剪断力により密着の程度に応じて圧痕の周囲に硬質被膜の剥離が生じるため密着性の判断が出来る。このためセラミック硬質膜の密着性の簡便な評価方法として一般的に広く知られている。
ボンバード工程 成膜工程
プラズマアシスト プラズマアシスト
比較例1 なし なし
実施例1 あり なし

膜の密着力 圧痕剥離試験
比較例1 Lc20N 圧痕の周囲に剥離(図4(A))
実施例1 Lc56N 圧痕の周囲に剥離なし(図4(B))
実施例1の圧力勾配型プラズマ電子銃によるボンバード工程の後、イオンアシストのない状態で従来の反応ガス導入のみで成膜した場合(実施例1)と圧力勾配型プラズマ電子銃による反応ガスのイオン化のアシストを行いながら成膜した場合(実施例2)について、被膜の表面性状の比較を行った(図5)。
ボンバード工程 成膜工程
プラズマアシスト プラズマアシスト
実施例2 あり あり

膜厚 密着性 表面性状
実施例1 3.0μm 56N SEM写真1(図5(A))
実施例2 3.2μm 60N SEM写真2(図5(B))
実施例1、2から判るように、通常の方法で成膜した比較例1のTiAlN膜は、密着性は良好であるが表面は非常に粗く(SEM写真1)、成膜時に圧力勾配型プラズマ電子銃を使用した場合(SEM写真2)は表面の平滑性が向上している。
〔発明を実施するための最良の形態の効果〕
本発明を実施するための最良の形態の圧力勾配型プラズマ電子銃を搭載したアーク式イオンプレーティング装置は、ボンバード工程で用いられる不活性ガスと、成膜工程で用いられる反応ガスのそれぞれのイオン化を促進するため搭載するものであり、被膜の密着性と成膜される被膜の品質を広域な成膜範囲わたって飛躍的に向上させることが可能となった。しかもその構成においては基本構成のままで量産装置に適用するのは比較的容易であり、従来のアーク式イオンプレーティング装置の性能を大幅に向上させるものである。
本発明を実施するための最良の形態のアーク式イオンプレーティング装置の断面ブロック図。 従来のアーク式イオンプレーティング装置の断面ブロック図。 (A)は図1のアーク式イオンプレーティング装置の装着用治具に4個の基材を保持する回転装着軸を設けたものの断面ブロック図、(B)は(A)の装着用治具に4個の基材を保持する回転装着軸を上面からみた部分上面図。 基材のTiAlN被膜表面の圧痕剥離試験法による剥離の写真で、(A)は圧痕の周囲に剥離がある比較例1の写真、(B)は圧痕の周囲に剥離がない実施例1の写真。 基材のTiAlN被膜のTiAlN膜表面性状の倍率1000倍の電子顕微鏡(SEM)写真で、(A)は実施例1のSEM写真、(B)は実施例2のSEM写真。
符号の説明
1・・真空容器 2・・勾配型プラズマ電子銃 6・・アーク式蒸発源
8・・回転式装着用治具(装着用治具) 9・・基材
10・・ターゲット 12・・第1のバイアス電源 13・・アーク電源
15・・直流電源 16・・アノード

Claims (5)

  1. 真空容器と、前記真空容器内にそれぞれ設けた、被処理物である基材を保持する装着用治具、前記真空容器に対して前記装着用治具に保持された基材に負のバイアス電圧を印加する第1のバイアス電源、前記装着用治具に保持される基材の1側に向けて前記真空容器の1内側に取り付けられた陰極を構成するターゲット、前記陰極を構成するターゲットと陽極を構成する前記真空容器との間に接続されたアーク電源、前記装着用治具に保持される基材を挟むように前記基材の他側に向けて前記真空容器の他内側に取り付けられた圧力勾配型プラズマ電子銃、及び前記真空容器又は前記真空容器内に配置したアノードに対して前記圧力勾配型プラズマ電子銃に負のバイアス電圧を印加する圧力勾配型プラズマ電子銃用の直流電源、とを有することを特徴とするアーク方式イオンプレーティング装置。
  2. 前記ターゲットは前記真空容器の第1の横内壁に取り付けられ、前記圧力勾配型プラズマ電子銃は前記真空容器の上部内壁又は第2の横内壁に取り付けられたことを特徴とする請求項1記載のアーク方式イオンプレーティング装置。
  3. 前記圧力勾配型プラズマ電子銃によるグロー放電プラズマは、コーティング成膜中に用いられる反応ガスのイオン化をアシストするようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアーク式イオンプレーティング装置。
  4. 前記圧力勾配型プラズマ電子銃によるグロー放電プラズマは、コーティング成膜前に不活性ガスによるイオンボンバードを施すときに前記不活性ガスのイオン化をアシストするようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1に記載のアーク式イオンプレーティング装置。
  5. 前記装着用治具は複数個の基材を保持する回転装着軸を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1に記載のアーク方式イオンプレーティング装置。
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