JP2006160872A - 熱剥離型粘着シート及び電子部品、回路基板 - Google Patents

熱剥離型粘着シート及び電子部品、回路基板 Download PDF

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知子 土井
Akihisa Murata
秋桐 村田
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幸生 有満
Masaaki Sato
正明 佐藤
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Abstract

【課題】 物品の搬送用や加工時における固定用として好適な接着力を有し、目的達成後に加熱により接着力を低減させて剥離でき、接着力が低減された状態を有効に保持することが可能な熱剥離型粘着シートを提供する。
【解決手段】 熱剥離型粘着シートは、基材の少なくとも一方の面に発泡剤を含有する熱膨張性粘着層が形成された熱剥離型粘着シートであって、加熱により熱膨張性粘着層の接着力が加熱処理前の接着力の10%以下の大きさにまで低減した状態を経た後、さらに加熱して、該熱膨張性粘着層の剥離開始温度より30℃以上高い温度で30分以上加熱を続けても、熱膨張性粘着層の接着力を加熱処理前の接着力の10%以下の大きさで保持させることができることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、物品の搬送用や加工時における固定用などとして好適な接着力を持ち、目的達成後に加熱により接着力を低減させて剥離させることができ、しかも、剥離作業条件が不適切であっても、効果的に接着力を低減した状態とすることが可能な熱剥離型粘着シートに関する。また、前記熱剥離型粘着シートを用いて製造された電子部品や回路基板に関する。さらに、熱剥離型粘着シートからの被着体の剥離方法に関する。
従来、基材上に熱膨張性微小球などの発泡剤(又は膨張剤)を含む粘着層(感圧接着層)を設けた加熱剥離型粘着シートが知られている(特許文献1〜特許文献2参照)。この加熱剥離型粘着シートは、物品の接着目的を達成した後、発泡剤含有感圧接着層を加熱することによって、該発泡剤含有感圧接着層が発泡もしくは膨張して、発泡剤含有感圧接着層表面が凹凸状に変化し、これにより被着体(物品)との接着面積が減少し、この接着面積の減少により接着力が低減し、被着体を容易に分離できるようにしたものであり、電子部品やその材料等の加工時における固定や、搬送等の物流など、多種多様な目的で用いられている。
しかしながら、作業時間の短縮などを目的に、熱膨張性微小球等の発泡剤を発泡させて剥離作業を行う適切な剥離作業温度よりも高温で、加熱処理を行う場合がある。また、適切な剥離作業温度であっても、熱のかかり方が不均一であった際には、部分的に剥離が生じて、未剥離の部分が残ることがあり、長時間加熱処理を行う場合がある。このように、剥離作業条件が、不適切であった場合(具体的には、剥離作業温度が高かったり、剥離作業時間が長かったりした場合)、発泡剤の破裂や、発泡剤の膨張状態(発泡状態)の変化(例えば、球状の膨張状態から、球を押し潰したような形状の膨張状態への変化など)等により、減少していた被着体との接着面積が広がることにより、発泡剤を含有している感圧接着層による接着力が再び発現し、被着体が再接着してしまう場合がある。
特開昭56−61468号公報 特開平5−279636号公報
従って、本発明の目的は、物品の搬送用や加工時における固定用などとして好適な接着力を有し、また、目的達成後に加熱により接着力を低減させて剥離させることができ、しかも、剥離作業条件が不適切であっても、効果的に接着力を低減した状態とすることが可能な熱剥離型粘着シート、および前記熱剥離型粘着シートを用いて製造された電子部品や回路基板を提供することにある。
本発明の他の目的は、発泡させた発泡剤が経時で変形したり、破裂したりする剥離作業条件であっても、熱膨張性粘着層上に貼着されている被着体を容易に剥離させることができる熱剥離型粘着シート、および前記熱剥離型粘着シートを用いて製造された電子部品や回路基板を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、熱剥離型粘着シートから被着体を剥離させる際に、剥離作業条件が不適切であっても、被着体を容易に剥離させることができる熱剥離型粘着シートからの被着体の剥離方法を提供することにある。
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、熱剥離型粘着シートの熱膨張性粘着層として、熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度が異なる複数の熱膨張性微小球を含有する熱膨張性粘着層を用いると、不適切な条件で剥離作業を行っても、容易に熱剥離型粘着シートから被着体を剥離させることができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明は、基材の少なくとも一方の面に発泡剤を含有する熱膨張性粘着層が形成された熱剥離型粘着シートであって、加熱により熱膨張性粘着層の接着力が加熱処理前の接着力の10%以下の大きさにまで低減した状態を経た後、さらに加熱して、該熱膨張性粘着層の剥離開始温度より30℃以上高い温度で30分以上加熱を続けても、熱膨張性粘着層の接着力を加熱処理前の接着力の10%以下の大きさで保持させることができることを特徴とする熱剥離型粘着シートを提供する。
前記熱剥離型粘着シートとしては、加熱により熱膨張性粘着層の接着力が加熱処理前の接着力の10%以下の大きさにまで低減した状態を経た後、さらに加熱して、該熱膨張性粘着層の剥離開始温度より50℃以上高い温度で30分以上加熱を続けても、熱膨張性粘着層の接着力を加熱処理前の接着力の10%以下の大きさで保持させることができる熱剥離型粘着シートであってもよく、また、加熱により熱膨張性粘着層の接着力が加熱処理前の接着力の10%以下の大きさにまで低減した状態を経た後、さらに加熱して、該熱膨張性粘着層の剥離開始温度より70℃以上高い温度で30分以上加熱を続けても、熱膨張性粘着層の接着力を加熱処理前の接着力の10%以下の大きさで保持させることができる熱剥離型粘着シートであってもよい。
また、前記熱剥離型粘着シートとしては、熱膨張性粘着層が、熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度が異なる2種以上の発泡剤を含有していてもよく、この際、2種以上の発泡剤において、熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度が最も高い発泡剤に係る剥離開始温度が、熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度が最も低い発泡剤に係る剥離開始温度よりも、30℃以上高くてもよい。発泡剤としては、熱膨張性微小球を好適に用いることができる。
本発明は、また、前記熱剥離型粘着シートを用いて製造されたことを特徴とする電子部品や回路基板を提供する。
本発明は、さらにまた、基材の少なくとも一方の面に発泡剤を含有する熱膨張性粘着層が形成された熱剥離型粘着シートから、該熱剥離型粘着シートの熱膨張性粘着層上に貼着された被着体を剥離させる方法であって、熱剥離型粘着シートとして、前記熱剥離型粘着シートを用いることを特徴とする熱剥離型粘着シートからの被着体の剥離方法を提供する。前記熱剥離型粘着シートからの被着体の剥離方法では、熱剥離型粘着シートにおける熱膨張性粘着層の剥離開始温度以上の温度で剥離作業を行った後、さらに加熱して、前記剥離開始温度より30℃以上高い温度で剥離作業を行ってもよく、また、当初より、熱剥離型粘着シートにおける熱膨張性粘着層の剥離開始温度より30℃以上高い温度で剥離作業を行ってもよい。
本発明の熱剥離型粘着シートは、物品の搬送用や加工時における固定用などとして好適な接着力を有し、また、目的達成後に加熱により接着力を低減させて剥離させることができ、しかも、剥離作業条件が不適切であっても、効果的に接着力を低減した状態とすることが可能である。また、発泡させた発泡剤が経時で変形したり、破裂したりする剥離作業条件であっても、熱膨張性粘着層上に貼着されている被着体を容易に剥離させることができる。さらにまた、前記熱剥離型粘着シートを用いることにより、電子部品及び回路基板が優れた製造作業性で製造される。
また、本発明の熱剥離型粘着シートからの被着体の剥離方法によれば、熱剥離型粘着シートから被着体を剥離させる際に、剥離作業条件が不適切であっても、被着体を容易に剥離させることができる。
以下に、本発明の実施の形態を、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の部材や部分などには同一の符号を付している場合がある。
本発明の熱剥離型粘着シートは、基材と、該基材の少なくとも一方の面に形成され且つ発泡剤(熱膨張性微小球など)を含有する熱膨張性粘着層とを有しており、且つ、加熱により熱膨張性粘着層の接着力が加熱処理前の接着力の10%以下の大きさにまで低減した状態を経た後、さらに加熱して、該熱膨張性粘着層の剥離開始温度より30℃以上高い温度で30分以上加熱を続けても、熱膨張性粘着層の接着力を加熱処理前の接着力の10%以下の大きさで保持させることが可能な構成を有している。
ここで、「剥離開始温度」とは、発泡剤(熱膨張性微小球など)を含有する熱膨張性粘着層による接着力を加熱前の接着力の10%以下に低下させることができる最低の加熱処理温度を意味している。従って、発泡剤(熱膨張性微小球など)を含有する熱膨張性粘着層による接着力を加熱前の接着力の10%以下に低下させることができる最低の加熱処理温度を測定することにより、発泡剤(熱膨張性微小球など)が熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度を求めることができる。具体的には、加熱剥離型粘着シートの発泡剤(熱膨張性微小球など)が含まれている熱膨張性粘着層の表面に、幅が20mmで且つ厚みが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[商品名「ルミラーS10#25」(東レ社製);「PETフィルム」と称する場合がある]を、ハンドローラで気泡が混入しないように貼り合わせて、試験片を作製する。この試験片を、PETフィルムを貼り合わせてから30分後に、PETフィルムを180°の剥離角度で引き剥がして、その際の接着力(測定温度:23℃、引張速度:300mm/min、剥離角度:180°)を測定し、該接着力を「初期接着力」とする。また、前記方法にて作製した試験片を、各温度(加熱処理温度)に設定されたホットプレートで、各温度に予熱しておいた金属板(ステンレス板、厚さ約1mm)で重石した状態で1分間加熱した後、23℃に2時間放置させ、その後、PETフィルムを180°の剥離角度で引き剥がして、その際の接着力(測定温度:23℃、引張速度:300mm/min、剥離角度:180°)を測定し、該接着力を「加熱処理後の接着力」とする。そして、加熱処理後の接着力が、初期接着力の10%以下になる最低の加熱処理温度を求める。この最低の加熱処理温度が、熱膨張性粘着層の剥離開始温度である。
従って、本発明の熱剥離型粘着シートは、発泡剤を含有する熱膨張性粘着層を有しているので、該熱膨張性粘着層に貼着した物品(被着体)を加熱により剥離させることができる。しかも、熱剥離型粘着シートは、前述のように、加熱により熱膨張性粘着層の接着力が加熱処理前の接着力の10%以下の大きさにまで低減した状態を経た後、さらに加熱して、該熱膨張性粘着層の剥離開始温度より30℃以上高い温度で30分以上加熱を続けても、熱膨張性粘着層の接着力を加熱処理前の接着力の10%以下の大きさで保持させることができるので、剥離作業条件が不適切であっても、効果的に接着力を低減した状態とすることができる。特に、発泡させた発泡剤が経時で変形したり、破裂したりする剥離作業条件であっても、熱膨張性粘着層上に貼着されている被着体を容易に剥離させることができる。
なお、熱膨張性粘着層の接着力を低減させて、被着体を剥離させる際の加熱処理時の温度としては、熱膨張性粘着層の剥離開始温度以上の温度であることが重要である。また、加熱処理時の温度としては、通常、発泡剤が熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度よりも25℃以上高い温度であると、前記剥離開始温度で膨張可能となる発泡剤(熱膨張性微小球など)が変形してしまい易くなる。そのため、前記発泡剤を変形させずに効果的に熱膨張させるためには、加熱処理時の温度としては、発泡剤の種類などにもよるが、通常、発泡剤が熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度よりも25℃を超えない温度であることが重要となっている。従って、熱膨張性粘着層に貼着されている被着体を剥離させる際の加熱処理温度としては、通常、熱膨張性粘着層の剥離開始温度以上の温度であり且つ前記剥離開始温度よりも25℃を超えない温度である範囲から選択される。しかしながら、加熱処理時の温度が、熱膨張性粘着層の剥離開始温度以上の温度であり且つ熱膨張性粘着層の剥離開始温度よりも25℃を超えない温度であっても、剥離作業時間が長くなると、発泡させた発泡剤が経時で変形してしまい、この変形により、熱膨張性粘着層と被着体との減少していた接着面積が増加して、被着体が熱膨張性粘着層に再接着してしまう場合がある。具体的には、接着力低減による剥離の際に、剥離作業温度が適切な温度であっても、剥離作業時間が長いために、発泡させた発泡剤の経時的変形により(例えば、熱膨張性粘着層自体の重さにより、発泡剤が球状の膨張状態から、球を押し潰したような形状の膨張状態へ経時的に変形してしまったり、発泡剤中のガス成分が経時で抜けてしまうことにより、発泡剤が球状の膨張状態から、元の膨張していない状態へ経時的に変形してしまったりする発泡剤の経時的変形により)、低減された接着力が回復して、被着体が再び熱膨張性粘着層に貼着されてしまう場合がある。このように、発泡剤を発泡させて、熱膨張性粘着層と被着体との接着面積を減少させた後、発泡剤の膨張状態の経時的変形により、前記接着面積が増大して、被着体が再接着されてしまった場合、通常、熱膨張性粘着層と被着体との接着面積を再度減少させることができず、もはや被着体を熱膨張性粘着層から容易に分離させることができないが、本発明では、熱膨張性粘着層の剥離開始温度より30℃以上高い温度で加熱処理を再度行うことにより、熱膨張性粘着層の接着力を加熱処理前の接着力の10%以下の大きさに低減させることができるので、これにより、熱膨張性粘着層と被着体との接着面積を再度減少させて接着力を低減した状態とすることができ、被着体を熱膨張性粘着層から容易に分離させることができる。
従って、例えば、熱剥離型粘着シートに接着されている被着体(接着保持物品)に適宜な加工を施した後、通常の剥離作業温度(例えば、熱膨張性粘着層の剥離開始温度以上且つ前記剥離開始温度よりも25℃を超えない温度)で剥離作業を行った際に、熱膨張性粘着層への熱のかかり方が不均一であること等により、熱膨張性粘着層に貼着されていた被着体をすべて分離させることができなかったため、さらに加熱処理を行って、加熱処理時間(剥離作業時間)を通常の時間よりも長くした場合、熱膨張性粘着層による接着力が低減された状態から回復して、接着力が増大しても、前記剥離開始温度よりも30℃以上高い温度で、再度、加熱処理を行うことにより、接着力を、再度、低減させることができる。そのため、剥離作業の際には、剥離作業時間に関係なく加熱処理を行うことができ、被着体を熱剥離型粘着シートから分離させる剥離作業性を向上させることができる。
また、加熱処理時の温度が、熱膨張性粘着層の剥離開始温度よりも25℃以上の温度であると、発泡させた発泡剤が変形してしまい、この変形により、熱膨張性粘着層と被着体との接着面積を効果的に減少させることができず、被着体が熱膨張性粘着層に接着されたままの状態で保持されてしまう場合がある。具体的には、接着力低減による剥離の際に、剥離作業温度が高いために、発泡させた発泡剤の変形により、熱膨張性粘着層による接着力を効果的に低減させることができず、被着体が熱膨張性粘着層に貼着されたままになってしまう場合がある。このように、発泡剤を発泡させた際に、発泡剤の変形により、熱膨張性粘着層と被着体との接着面積を効果的に減少させることができず、被着体が接着されたままになってしまった場合、通常、もはや被着体を熱膨張性粘着層から容易に分離させることができないが、本発明では、熱膨張性粘着層の剥離開始温度より30℃以上高い温度で加熱処理を行っても、熱膨張性粘着層の接着力を加熱処理前の接着力の10%以下の大きさに低減させることができるので、これにより、加熱処理時の温度が、熱膨張性粘着層の剥離開始温度よりも30℃以上の温度であっても、熱膨張性粘着層と被着体との接着面積を効果的に減少させて接着力を有効に低減した状態とすることができ、被着体を熱膨張性粘着層から容易に分離させることができる。
従って、例えば、熱剥離型粘着シートに接着されている被着体(接着保持物品)に適宜な加工を施した後、通常の剥離作業温度よりも高い温度(例えば、熱膨張性粘着層の剥離開始温度よりも25℃以上の温度)で剥離作業を行った際に、通常であれば、発泡剤を変形させないように、加熱処理時間を制御することが必要であるが、加熱処理時間を発泡剤が変形しないような時間に制御せず、通常の剥離作業温度の場合と同様の時間とした場合、通常であれば、発泡剤が変形して、熱膨張性粘着層による接着力を効果的に低減させることができない場合であっても、熱膨張性粘着層による接着力を効果的に低減させることができる。そのため、剥離作業の際には、剥離作業温度が、通常の剥離作業温度よりも高温であっても加熱処理を行うことができので、発泡剤を迅速に発泡(膨張)させて剥離作業を行うことができ、これにより、剥離作業に要する時間を短縮させることができ、被着体を熱剥離型粘着シートから分離させる剥離作業性を向上させることができる。すなわち、本発明では、加熱処理時の温度としては、熱膨張性粘着層の剥離開始温度よりも25℃以上の温度(例えば、30℃以上の温度)であってもよい。
このように、本発明の熱剥離型粘着シートは、熱膨張性粘着層に貼着されている被着体を剥離させる際に、剥離作業温度が適切な温度であっても剥離作業時間が長かったり、剥離作業温度が高かったりして、剥離作業条件が不適切であっても、熱剥離型粘着シートの熱膨張性粘着層から被着体を容易に剥離させることができる。
なお、熱剥離型粘着シートの加熱処理において、熱膨張性粘着層を加熱する時間(加熱処理時間)としては、熱膨張性粘着層の剥離開始温度よりも25℃(特に30℃)以上又は未満であっても、特に制限されず、発泡剤の種類、加熱処理時の温度、加熱手段などに応じて適宜選択すればよい。具体的には、加熱処理時間としては、30分を超えていてもよいが、通常、5秒〜30分(好ましくは10秒〜10分、さらに好ましくは30秒〜3分)程度の範囲から適宜選択することができる。
本発明の熱剥離型粘着シートとしては、熱膨張性粘着層中に含有されている発泡剤として、熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度が異なる2種以上の発泡剤が用いられた構成の熱剥離型粘着シートを用いることができる。このように、熱剥離型粘着シートにおける熱膨張性粘着層に含有される発泡剤として、付与する剥離開始温度が異なる2種以上の発泡剤が用いられていると、付与する剥離開始温度が最も低い発泡剤を急激に発泡させることが可能な高温(発泡剤が経時で変形してしまう温度)で加熱処理を行って、熱膨張性粘着層の接着力を加熱処理前の接着力の10%以下の大きさにまで急激に(迅速に)低減させ、この時に、熱剥離させる際の加熱処理温度が高すぎることにより、発泡(膨張)している発泡剤(付与する剥離開始温度が最も低い発泡剤)が変形しても、熱膨張性粘着層中に含有されている他の発泡剤が発泡することにより、熱膨張性粘着層の接着力を加熱処理前の接着力の10%以下の大きさで保持させることができる。従って、この熱剥離型粘着シートを用いると、熱剥離型粘着シートに貼着されている被着体を迅速に且つ容易に剥離させることができる。
もちろん、従来と同様に、剥離作業時の温度が、発泡剤を効果的に発泡させることが可能な温度(発泡剤が経時で変形せず、膨張状態が変化する温度)で剥離処理を行うことができる。具体的には、熱剥離型粘着シートにおける熱膨張性粘着層に含有される発泡剤として、付与する剥離開始温度が異なる2種以上の発泡剤が用いられている場合、付与する剥離開始温度が最も低い発泡剤を効果的に発泡させることが可能な温度(発泡剤が経時で変形せず、膨張状態が変化する温度)で加熱処理を行って、熱膨張性粘着層の接着力を加熱処理前の接着力の10%以下の大きさにまで低減させた後、発泡(膨張)している発泡剤の膨張状態(発泡状態)が変化して(球状から、球を押し潰したような形状への変化など)、減少していた被着体との接着面積が広がって、接着力が回復しても、さらに加熱して、熱膨張性粘着層中に含有されている他の発泡剤を発泡させることにより、熱膨張性粘着層の接着力を加熱処理前の接着力の10%以下の大きさで保持させることができる。
より具体的には、例えば、熱剥離型粘着シートの熱膨張性粘着層が、付与する剥離開始温度が異なる2種の発泡剤(熱膨張性微小球など)を含有している場合において、付与する剥離開始温度が低い方の発泡剤による剥離開始温度が90℃である(この発泡剤を「90℃発泡型発泡剤」と称する場合がある)場合、90℃発泡型発泡剤を効果的に発泡させて、熱膨張性粘着層に貼着している被着体を剥離させる際には、通常、90〜115℃の温度で加熱処理が行われるので、付与する剥離開始温度が高い方の発泡剤としては、付与する剥離開始温度が115℃を超える温度の発泡剤を用いることができ、例えば、付与する剥離開始温度が120℃である発泡剤(「120℃剥離型発泡剤」と称する場合がある)を用いることができる。このような熱剥離型粘着シートに、115℃を超える温度として、例えば、130℃の温度で加熱処理を行った場合、90℃発泡型発泡剤が急激に発泡した後、加熱処理時間によっては、90℃発泡型発泡剤が変形するが、該変形が生じても、120℃剥離型発泡剤が効果的に発泡されていることにより、熱膨張性粘着層の剥離可能状態が保持されている。一方、90〜115℃で加熱処理を行った場合、90℃発泡型発泡剤が効果的に発泡され、この際、加熱処理時間によっては、90℃発泡型発泡剤は、膨張状態が球状状態から球を押し潰したような形状に変形してしまい、低減していた接着力が回復して、被着体が再び熱膨張性粘着層に貼着されてしまう場合があるが、さらに130℃の高温で加熱処理を行って、120℃剥離型発泡剤を効果的に発泡させることにより、熱膨張性粘着層の剥離可能状態を再度形成させることができる。
図1は本発明の熱剥離型粘着シートの例を部分的に示す概略断面図である。図1において、1は熱剥離型粘着シート、2は熱剥離型粘着シート1の基材、3は熱剥離型粘着シート1の熱膨張性粘着層、4はセパレータである。図1で示される熱剥離型粘着シート1は、基材2と、該基材2の一方の面に形成された熱膨張性粘着層3と、さらに、該熱膨張性粘着層3上に形成されたセパレータ4とで構成されている。この熱剥離型粘着シート1では、熱膨張性粘着層3の構成が重要となっている。
[熱膨張性粘着層]
前記熱膨張性粘着層3は、付与される剥離開始温度が異なる2種以上の発泡剤を有効成分として含有している。すなわち、前記2種以上の発泡剤は、それぞれ、発泡すると、熱膨張性粘着層の接着力を加熱処理前の接着力の10%以下の大きさにまで低減させることができるような割合で、熱膨張性粘着層中に含有されている。このような2種以上の発泡剤のうち、熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度が最も高い発泡剤としては、熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度が最も低い発泡剤を効果的に発泡させることができる温度(経時で変形や破裂せずに膨張状態が変化する温度)よりも高い温度の剥離開始温度を、熱膨張性粘着層に付与することができる発泡剤であることが重要である。
なお、熱膨張性粘着層3の剥離開始温度は、その定義上、有効成分として含まれている2種以上の発泡剤のうち、熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度が最も低い発泡剤により付与される剥離開始温度となる。
熱膨張性粘着層は熱膨張性を付与するための発泡剤と、粘着性を付与するための粘着剤とを少なくとも含有している。そのため、加熱剥離型粘着シートの熱膨張性粘着層上に複数個の被着物が貼着された状態で、任意な時に加熱剥離型粘着シートを加熱して、発泡剤を発泡及び/又は膨張させることにより、熱膨張性粘着層が膨張し、この熱膨張性粘着層の膨張により、熱膨張性粘着層の表面(粘着面)が凹凸状に変形して、該粘着面と被着物との接着面積が減少し、これにより、前記凹凸状に変形した粘着面と被着物との間の接着力が減少し、該粘着面に貼着している被着物を加熱剥離型粘着シートから剥離させることができる。
(発泡剤)
発泡剤としては、熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度が異なる2種以上の発泡剤が用いられており、公知の発泡剤から2種以上を、適宜、選択して用いることができる。なお、発泡剤における熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度は、発泡剤の含有割合や熱膨張性粘着層の粘着力等にもよるが、通常、発泡剤の熱膨張開始温度に相当している。発泡剤における熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度は、発泡剤を、粘着剤層に熱膨張性(熱剥離性)を付与する有効成分として(すなわち、加熱により発泡乃至膨張させた際に、加熱前の接着力の10%以下に低下させることができる割合で)、粘着剤層中に含有させた状態で、前述のようにして、各温度で接着力を測定することにより、求めることができる。
このような2種以上の発泡剤において、熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度が異なる2種以上の発泡剤の組み合わせとしては、特に制限されないが、熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度が最も高い発泡剤(「高剥離温度付与型発泡剤」と称する場合がある)に係る剥離開始温度が、熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度が最も低い発泡剤(「低剥離温度付与型発泡剤」と称する場合がある)に係る剥離開始温度よりも、30℃以上高くなっている組み合わせであることが重要である。
なお、低剥離温度付与型発泡剤としては、熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度が、60〜160℃(好ましくは70〜130℃、さらに好ましくは80〜110℃)である発泡剤を好適に用いることができる。
また、高剥離温度付与型発泡剤としては、低剥離温度付与型発泡剤に係る剥離開始温度などに応じて、適宜選択することができる。例えば、低剥離温度付与型発泡剤が、85〜95℃(特に、90℃程度)の剥離開始温度を付与する発泡剤である場合、高剥離温度付与型発泡剤としては、前記低剥離温度付与型発泡剤に係る剥離開始温度よりも30℃以上高い温度(具体的には、115〜125℃、特に、120℃程度)の剥離開始温度を付与する発泡剤を好適に用いることができる。また、例えば、低剥離温度付与型発泡剤が、115〜125℃(特に、120℃程度)の剥離開始温度を付与する発泡剤である場合、高剥離温度付与型発泡剤としては、前記低剥離温度付与型発泡剤に係る剥離開始温度よりも50℃以上高い温度(具体的には、165〜175℃、特に、160℃程度)の剥離開始温度を付与する発泡剤を好適に用いることができる。さらにまた、例えば、低剥離温度付与型発泡剤が、145〜155℃(特に、150℃程度)の剥離開始温度を付与する発泡剤である場合、高剥離温度付与型発泡剤としては、前記低剥離温度付与型発泡剤に係る剥離開始温度よりも70℃以上高い温度(具体的には、215〜225℃、特に、220℃程度)の剥離開始温度を付与する発泡剤を好適に用いることができる。
なお、発泡剤が、3種以上用いられている場合、熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度が隣接する2つの発泡剤において、熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度の差としては、20℃未満であってもよいが、20〜70℃(好ましくは25〜60℃、さらに好ましくは30〜50℃)であることが望ましい。
本発明では、発泡剤としては、付与する剥離開始温度が異なる2種以上であれば特に制限されないが、例えば、付与する剥離開始温度がそれぞれ異なる2〜10種(好ましくは2〜5種、さらに好ましくは2〜3種)の発泡剤を用いることができる。なお、これらの2種以上の発泡剤の種類やその数(種類数)あるいは組み合わせは、加熱処理の際の温度等に応じて適宜選択することができる。
熱膨張性粘着層において用いられている発泡剤としては、特に制限されないが、熱膨張性微小球を好適に用いることができる。熱膨張性微小球としては、特に制限されず、公知の熱膨張性微小球(種々の無機系熱膨張性微小球や、有機系熱膨張性微小球など)から適宜選択することができる。熱膨張性微小球としては、混合操作が容易である観点などより、マイクロカプセル化されている発泡剤を好適に用いることができる。このような熱膨張性微小球としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタンなどの加熱により容易にガス化して膨張する物質(熱膨張性物質)を、弾性を有する殻内に内包させた微小球などが挙げられる。前記殻は、熱溶融性物質や熱膨張により破壊する物質で形成される場合が多い。前記殻を形成する物質として、例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホンなどが挙げられる。熱膨張性微小球は、慣用の方法、例えば、コアセルベーション法や、界面重合法などにより製造できる。なお、熱膨張性微小球には、例えば、商品名「マツモトマイクロスフェアー」[松本油脂製薬(株)製]などの市販品もある。
なお、熱膨張性微小球において、付与する剥離開始温度は、熱膨張性物質の種類(特に、気化温度)や、殻を形成する物質の種類や殻の厚みなどにより、適宜な温度に調整することができる。
本発明では、発泡剤としては、熱膨張性微小球以外の発泡剤も用いることもできる。このような発泡剤としては、種々の無機系発泡剤や有機系発泡剤などの各種発泡剤を適宜選択して使用することができる。無機系発泡剤の代表的な例としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水酸化ホウ素ナトリウム、各種アジド類などが挙げられる。また、有機系発泡剤の代表的な例としては、例えば、水;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタンなどの塩フッ化アルカン系化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレートなどのアゾ系化合物;パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3´−ジスルホニルヒドラジド、4,4´−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)などのヒドラジン系化合物;p−トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4´−オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)などのセミカルバジド系化合物;5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾールなどのトリアゾール系化合物;N,N´−ジニトロソペンタメチレンテロラミン、N,N´−ジメチル−N,N´−ジニトロソテレフタルアミドなどのN−ニトロソ系化合物などが挙げられる。
本発明では、加熱処理により、熱膨張性粘着層の接着力を効率よく且つ安定して低下させるため、体積膨張率が5倍以上、なかでも7倍以上、特に10倍以上となるまで破裂しない適度な強度を有する発泡剤が好ましい。
付与する剥離開始温度が異なる2種以上の発泡剤において、各発泡剤の配合量は、用いられている発泡剤の種類数や、熱膨張性粘着層の膨張倍率や接着力の低下性などに応じて適宜設定することができる。具体的には、各発泡剤の配合量としては、熱膨張性粘着層を形成する粘着剤のベースポリマー100重量部に対して、例えば1〜100重量部、好ましくは5〜40重量部、さらに好ましくは10〜30重量部である。
また、付与する剥離開始温度が異なる2種以上の発泡剤において、全発泡剤の配合量(発泡剤の総配合量)としては、一般には熱膨張性粘着層を形成する粘着剤のベースポリマー100重量部に対して、例えば1〜150重量部、好ましくは10〜130重量部、さらに好ましくは25〜100重量部である。
なお、付与する剥離開始温度が異なる2種以上の発泡剤において、各発泡剤の割合は、用いられている発泡剤の種類数や、熱膨張性粘着層の膨張倍率や、加熱処理による接着力の低下性などに応じて、例えば、各発泡剤の配合量、および発泡剤の総配合量が前記範囲となるように適宜選択することができる。
なお、発泡剤として熱膨張性微小球を用いた場合、該熱膨張性微小球の粒径(平均粒子径)としては、熱膨張性粘着層の厚みなどに応じて適宜選択することができる。熱膨張性微小球の平均粒子径としては、例えば、100μm以下(好ましくは80μm以下、さらに好ましくは1〜50μm、特に1〜30μm)の範囲から選択することができる。なお、熱膨張性微小球の粒径の調整は、熱膨張性微小球の生成過程で行われていてもよく、生成後、分級などの手段により行われてもよい。
(粘着剤)
熱膨張性粘着層において用いられている粘着剤(感圧接着剤)は、公知の粘着剤から適宜選択することができる。粘着剤は単独で又は2種以上組み合わせてられていてもよい。粘着剤としては、加熱時に発泡剤(熱膨張性微小球など)の発泡及び/又は膨張を可及的に拘束しないようなものが好ましい。
前記粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤等の各種粘着剤や、これらの粘着剤に融点が約200℃以下の熱溶融性樹脂を配合したクリ−プ特性改良型粘着剤などの公知の粘着剤(例えば、特開昭56−61468号公報、特開昭61−174857号公報、特開昭63−17981号公報、特開昭56−13040号公報等参照)などが挙げられる。また、粘着剤としては、放射線硬化型粘着剤(又はエネルギー線硬化型粘着剤)を用いることもできる。これらの粘着剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、粘着剤は、粘着性成分(ベースポリマー)等のポリマー成分などのほかに、粘着剤の種類等に応じて、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート、アルキルエーテル化メラミン化合物など)、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂などからなる常温で固体、半固体あるいは液状のもの)、可塑剤、充填剤、老化防止剤などの適宜な添加剤を含んでいてもよい。なお、粘着剤は、エマルジョン系粘着剤、溶剤系粘着剤などのいずれの形態の粘着剤であってもよい。
粘着剤としては、ゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤が好ましく、特にアクリル系粘着剤を好適に用いることができる。
ゴム系粘着剤としては、天然ゴムや各種の合成ゴム[例えば、ポリイソプレンゴム、スチレン・ブタジエンブロック共重合体(SB)ゴム、スチレン・イソプレンブロック共重合体(SI)ゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)ゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)ゴム、スチレン・イソプレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SIBS)ゴム、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)ゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンや、これらの変性体など]をベースポリマーとしたゴム系粘着剤が挙げられる。
また、アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系重合体[単独重合体(ホモポリマー)又は共重合体(コポリマー)]をベースポリマーとするアクリル系粘着剤が挙げられる。前記アクリル系粘着剤における(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル[好ましくは(メタ)アクリル酸C4-18アルキル(直鎖状又は分岐鎖状のアルキル)エステル]などが挙げられる。
なお、前記アクリル系重合体は、凝集力、耐熱性、架橋性などの改質を目的として、必要に応じて、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体成分に対応する単位を含んでいてもよい。このような単量体成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、カルボキシエチルアクリレートなどのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イコタン酸などの酸無水物基含有モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルなどのヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換又は無置換)アミド系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの(置換又は無置換)アミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−ビニルピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、N−ビニルカプロラクタムなどの窒素原子含有環を有するモノマー;N−ビニルカルボン酸アミド類;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクルロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルなどの酸素原子含有複素環を有するモノマー;フッ素系(メタ)アクリレートなどのフッ素原子を含有するアクリル酸エステル系モノマー;シリコーン系(メタ)アクリレートなどのケイ素原子を含有するアクリル酸エステル系モノマー;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートなどの多官能モノマー等が挙げられる。これらの単量体成分は1種又は2種以上使用できる。
前記放射線硬化型粘着剤は、粘着性を有するとともに、放射線(又はエネルギー線)により硬化することができる粘着剤であり、放射線による硬化により、接着力を低減することができる。すなわち、熱膨張性粘着層を形成する粘着剤として放射線硬化型粘着剤を用いると、放射線照射処理により、架橋硬化が生じて、接着力の低下が図られる。
なお、加熱処理前の適度な接着力と加熱処理後の接着力の低下性のバランスの点から、より好ましい粘着剤は、動的弾性率が常温から150℃において0.5〜100(Pa)[5万〜1,000万(dyn/cm2)]の範囲にあるポリマーをベースとした粘着剤である。
熱膨張性粘着層は、例えば、粘着剤と、付与する剥離開始温度が異なる少なくとも2種以上の発泡剤(熱膨張性微小球など)と、必要に応じて溶媒やその他の添加剤などとを混合して、シート状の層に形成する慣用の方法により形成することができる。具体的には、例えば、粘着剤、付与する剥離開始温度が異なる少なくとも2種以上の発泡剤(熱膨張性微小球など)、および必要に応じて溶媒やその他の添加剤を含む混合物を、基材や、後述するゴム状有機弾性層上に塗布する方法、適当なセパレータ(剥離紙など)上に前記混合物を塗布して熱膨張性粘着層を形成し、これを基材又はゴム状有機弾性層上に転写(移着)する方法などにより、熱膨張性粘着層を形成することができる。なお、熱膨張性粘着層は単層、複層の何れであってもよい。
熱膨張性層(熱膨張性粘着層など)の厚さは、接着力の低減性などにより適宜に選択することができ、例えば、500μm以下(2〜500μm)の範囲から選択することができ、好ましくは5〜300μm(さらに好ましくは20〜150μm)程度である。但し、発泡剤として熱膨張性微小球が用いられている場合、熱膨張性層の厚さは、含まれている熱膨張性微小球の最大粒径よりも厚いことが重要である。熱膨張性層の厚さが薄すぎると、熱膨張性微小球の凹凸により表面平滑性が損なわれ、加熱前(未発泡状態)の接着性が低下する。また、加熱処理による熱膨張性層の変形度が小さく、接着力が円滑に低下しにくくなる。一方、熱膨張性層の厚さが厚すぎると、加熱処理による膨張乃至発泡後に、熱膨張性層に凝集破壊が生じやすくなり、被着物に糊残りが発生する場合がある。
[基材]
基材2は熱膨張性粘着層3等の支持母体として用いることができる。なお、基材2は単層の形態又は積層された形態のいずれ形態を有していてもよい。
基材としては、例えば、紙などの紙系基材;布、不織布、フェルト、ネットなどの繊維系基材;金属箔、金属板などの金属系基材;プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体や、これらの積層体(特に、プラスチック系基材と他の基材との積層体や、プラスチックフィルム(又はシート)同士の積層体など)等の適宜な薄葉体を用いることができる。基材としては、熱膨張性粘着層の加熱処理温度で溶融しない耐熱性に優れるものが、加熱後の取扱性などの点より好ましい。基材としては、プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材を好適に用いることができる。このようなプラスチック材における素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。これらの素材は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
なお、基材として、プラスチック系基材が用いられている場合は、延伸処理等により伸び率などの変形性を制御していてもよい。また、基材としては、熱膨張性粘着層などに放射線硬化性の物質を使用する際は、放射線の透過を阻害しないものを使用することが好ましい。
基材の厚さは、強度や柔軟性、使用目的などに応じて適宜に選択でき、例えば、一般的には1000μm以下(例えば、1〜1000μm)、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは3〜300μm、特に5〜250μm程度であるが、これらに限定されない。
基材の表面は、熱膨張性粘着層等との密着性を高めるため、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理等が施されていてもよく、下塗り剤によるコーティング処理等が施されていてもよい。また、熱膨張性粘着層等との剥離性を付与するために、例えば、シリコーン系樹脂やフッ素系樹脂等の剥離剤などによるコーティング処理が施されていてもよい。
なお、本発明では、基材の少なくとも一方の面(片面または両面)に熱膨張性粘着層を設けることができ、基材を熱膨張性粘着層の内部に埋設した形態などとすることもできる。
[セパレータ]
本発明では、セパレータ4としては、慣用の剥離紙などを使用できる。セパレータ4は熱膨張性粘着層3の保護材として用いられており、熱剥離型粘着シート1を被着体に貼着する際に剥がされる。セパレータ4は必ずしも設けられていなくてもよい。
セパレータとしては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等の剥離層を有する基材;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等のフッ素系ポリマーからなる低接着性基材;オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等の無極性ポリマーからなる低接着性基材などを用いることができる。なお、セパレータは、熱膨張性粘着層を支持するための基材として用いることも可能である。
なお、セパレータは公知乃至慣用の方法により形成することができる。また、セパレータの厚さ等も特に制限されない。
[中間層]
本発明では、基材と熱膨張性粘着層との間に1層又は2層以上の中間層を設けることもできる。該中間層は、前述のように、剥離性の付与を目的とした剥離剤のコーティング層や、密着力の向上を目的とした下塗り剤のコーティング層などが挙げられる。なお、剥離剤のコーティング層や下塗り剤のコーティング層以外の中間層としては、例えば、良好な変形性の付与を目的とした層、被着体への接着面積の増大を目的とした層、接着力の向上を目的とした層、被着体の表面形状に良好に追従させることを目的とした層、加熱による接着力低減の処理性の向上を目的とした層、加熱後の被着体よりの剥離性の向上を目的とした層などが挙げられる。
特に、熱剥離型粘着シートの変形性の付与や加熱後の剥離性の向上などの点より、基材と熱膨張性粘着層との間の中間層として、例えば、ゴム状有機弾性層を設けることができる。ゴム状有機弾性層を設けることにより、熱剥離型粘着シートを被着体に接着する際に、前記熱剥離型粘着シートの表面(熱膨張性粘着層の表面)を被着体の表面形状に良好に追従させて、接着面積を大きくすることができ、また、前記熱剥離型粘着シートを被着体から加熱剥離する際に、熱膨張性粘着層の加熱膨張を高度に(精度よく)コントロールし、熱膨張性粘着層を厚さ方向へ優先的に且つ均一に膨張させることができる。なお、ゴム状有機弾性層は、必要に応じて設けられる層であり、必ずしも設けられていなくてもよい。
ゴム状有機弾性層は、熱膨張性粘着層の基材側の面に、熱膨張性粘着層に重畳させた形態で設けることが好ましい。なお、基材と熱膨張性粘着層との間の中間層以外の層としても設けることができる。ゴム状有機弾性層は、基材の片面又は両面に介在させることができる。
ゴム状有機弾性層は、例えば、ASTM D−2240に基づくD型シュアーD型硬度が、50以下、特に40以下の天然ゴム、合成ゴム又はゴム弾性を有する合成樹脂により形成することが好ましい。
前記合成ゴム又はゴム弾性を有する合成樹脂としては、例えば、ニトリル系、ジエン系、アクリル系などの合成ゴム;ポリオレフィン系、ポリエステル系などの熱可塑性エラストマー;エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリブタジエン、軟質ポリ塩化ビニルなどのゴム弾性を有する合成樹脂などが挙げられる。なお、ポリ塩化ビニルなどのように本質的には硬質系ポリマーであっても、可塑剤や柔軟剤等の配合剤との組み合わせによりゴム弾性が発現しうる。このような組成物も、前記ゴム状有機弾性層の構成材料として使用できる。また、熱膨張性粘着層を構成する粘着剤等の粘着性物質などもゴム状有機弾性層の構成材料として好ましく用いることができる。
ゴム状有機弾性層は、例えば、前記天然ゴム、合成ゴム又はゴム弾性を有する合成樹脂などのゴム状有機弾性層形成材を含むコーティング液を基材上に塗布する方式(コーティング法)、前記ゴム状有機弾性層形成材からなるフィルム、又は予め1層以上の熱膨張性粘着層上に前記ゴム状有機弾性層形成材からなる層を形成した積層フィルムを基材と接着する方式(ドライラミネート法)、基材の構成材料を含む樹脂組成物と前記ゴム状有機弾性層形成材を含む樹脂組成物とを共押出しする方式(共押出し法)などの形成方法により形成することができる。
ゴム状有機弾性層の厚さは、一般的には500μm以下(例えば、1〜500μm)、好ましくは3〜300μm、さらに好ましくは5〜150μm程度である。ゴム状有機弾性層は単層であってもよく、2以上の層で構成してもよい。
なお、ゴム状有機弾性層は、天然ゴムや合成ゴム又はゴム弾性を有する合成樹脂を主成分とする粘着性物質で形成されていてもよく、また、かかる成分を主体とする発泡フィルム等で形成されていてもよい。発泡は、慣用の方法、例えば、機械的な攪拌による方法、反応生成ガスを利用する方法、発泡剤を使用する方法、可溶性物質を除去する方法、スプレーによる方法、シンタクチックフォームを形成する方法、焼結法などにより行うことができる。
また、ゴム状有機弾性層としては、熱膨張性粘着層に放射線硬化性の物質を使用する際は、放射線の透過を阻害しないものを使用することが好ましい。
[他の粘着層]
本発明では、熱剥離型粘着シートにおいて、基材の一方の面(片面)にのみ熱膨張性粘着層が形成されている場合、前記基材の他方の面に他の粘着層が形成されていてもよい。該他の粘着層を利用して、支持台座などの支持体に貼付して支持させることができる。このような他の粘着層を形成するための粘着剤としては、特に制限されず、上記熱膨張性粘着層において用いられる粘着剤として例示された粘着剤(例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、クリ−プ特性改良型粘着剤、放射線硬化型粘着剤など)等の公知乃至慣用の粘着剤を用いることができる。これらの粘着剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
なお、前記他の粘着層の厚さとしては、例えば、500μm以下(例えば、2〜500μm、好ましくは5〜300μm、さらに好ましくは20〜150μm)であってもよい。該他の粘着層の形成方法としては、前記熱膨張性粘着層と同様の方法(例えば、基材上に塗布する方法、セパレータ上に塗布して粘着層を形成した後、これを基材上に転写する方法など)を利用することができる。他の粘着層は単層、複層の何れであってもよい。
本発明の熱剥離型粘着シートは、シート状、テープ状などの形態を有することができる。
また、本発明の熱剥離型粘着シートとしては、熱膨張性粘着層が、発泡剤(熱膨張性微小球など)を含有するとともに、前記発泡剤における熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度以上の温度で熱架橋する架橋剤(熱架橋剤)や、紫外線の照射により架橋する架橋剤(紫外線架橋剤)を含有している熱剥離型粘着シートであっても、加熱により熱膨張性粘着層の接着力が加熱処理前の接着力の10%以下の大きさにまで低減した状態を経た後、さらに加熱して、該熱膨張性粘着層の剥離開始温度より30℃以上高い温度で30分以上加熱を続けても、熱膨張性粘着層の接着力を加熱処理前の接着力の10%以下の大きさで保持させることができる。すなわち、熱膨張性微小球などの発泡剤とともに、熱架橋剤や紫外線架橋剤(特に、熱架橋剤)を用いることにより、熱膨張性粘着層に貼着されている被着体を剥離させる際に、剥離作業温度が適切な温度であっても剥離作業時間が長かったり、剥離作業温度が高かったりして、剥離作業条件が不適切であっても、熱剥離型粘着シートの熱膨張性粘着層から被着体を容易に剥離させることができる。
[被着体]
本発明では、前記熱剥離型粘着シートにより接着保持する物品(被着体)は、任意に選択することができる。具体的には、被着体としては、半導体ウエハや半導体チップなどの電子系部品類;セラミックコンデンサや発振子などの電気系物品類;液晶セルなどの表示デバイス類の他、サーマルヘッド、太陽電池、プリント基板などの種々の物品が挙げられる。被着体は単独であってもよく、又は2種以上組み合わせられていてもよい。
本発明の熱剥離型粘着シートは、例えば、加工時には、強い接着力で被着体(被加工体)を接着することができ、加工後には、その接着状態を迅速に解除することができる用途で好適に用いることができる。すなわち、前記熱剥離型粘着シートを用いると、加工後に、容易に且つ迅速に剥離することができ、製造作業性を大きく向上させることができる。なお、このような被着体の加工方法としては、任意に選択することができ、例えば、研磨処理加工、ダイシング加工、パターン形成加工、組み立て加工などの加工が挙げられる。
また、本発明の熱剥離型粘着シートは、被着体を搬送する際の保護材としても好適に用いることができる。
本発明では、熱剥離型粘着シートに被加工体を貼着させた後、加工を施すことにより各種加工品を得ることができる。例えば、被着体(被加工体)として、半導体ウエハなどの電子系部品類を用いた場合、加工品として電子部品や回路基板などを得ることができる。すなわち、本発明の電子部品や回路基板は、前記熱剥離型粘着シートを用いて製造されている。
なお、熱剥離型粘着シートを被着体より剥離する際の加熱処理は、例えば、ホットプレート、熱風乾燥機、近赤外線ランプ、エアードライヤーなどの適宜な加熱手段を利用して行うことができる。加熱温度は、熱膨張性粘着層中の低剥離温度付与型発泡剤(熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度が最も低い発泡剤)に係る剥離開始温度(熱膨張開始温度または発泡開始温度)以上であればよいが、加熱処理の条件は、被着体の表面状態や発泡剤の種類等による接着面積の減少性、基材や被着体の耐熱性、加熱方法(熱容量、加熱手段等)などにより適宜設定できる。一般的な加熱処理条件は、温度100〜250℃で、5〜90秒間(ホットプレートなど)または5〜15分間(熱風乾燥機など)である。かかる加熱条件で、通例、熱膨張性粘着層の発泡剤が膨張及び/又は発泡して熱膨張性粘着層が膨張変形することにより凹凸状変形し、接着力が低下ないし喪失する。なお、加熱処理は使用目的に応じて適宜な段階で行うことができる。また、加熱源としては、赤外線ランプや加熱水を用いることができる場合もある。
[熱剥離型粘着シートからの被着体の剥離方法]
本発明における熱剥離型粘着シートからの被着体の剥離方法では、前記熱剥離型粘着シートを用いている。すなわち、加熱により熱膨張性粘着層の接着力が加熱処理前の接着力の10%以下の大きさにまで低減した状態を経た後、さらに加熱して、該熱膨張性粘着層の剥離開始温度より30℃以上高い温度で30分以上加熱を続けても、熱膨張性粘着層の接着力を加熱処理前の接着力の10%以下の大きさで保持させることができる熱剥離型粘着シートを用いて、該熱剥離型粘着シートの熱膨張性粘着層上に貼着された被着体を剥離させている。具体的には、熱剥離型粘着シートにおける熱膨張性粘着層の剥離開始温度以上の温度で剥離作業を行った後、さらに加熱して、前記剥離開始温度より30℃以上高い温度で剥離作業を行うことにより、剥離作業温度が適切な温度であるが剥離作業時間が長いために、剥離作業条件が、発泡している発泡剤が経時で変形してしまうような不適切な剥離作業条件となり、低減された接着力が回復して、被着体が再び熱膨張性粘着層に貼着されても、再度、接着力を低減した状態とすることができ、熱剥離型粘着シートの熱膨張性粘着層から被着体を容易に剥離させることができる。また、当初より、熱剥離型粘着シートにおける熱膨張性粘着層の剥離開始温度より30℃以上高い温度で剥離作業を行うことにより、通常の剥離作業温度よりも高温で剥離作業(加熱処理)を行ったために、剥離作業条件が、発泡している発泡剤が経時で変形や破裂してしまうような不適切な剥離作業条件となり、通常であれば発泡剤の変形や破裂により接着力を低減した状態とすることができない場合であっても、被着体と熱剥離型粘着シートの熱膨張性粘着層との界面で剥離が生じた後に再接着は起こらず、接着力を低減した状態とすることができ、熱剥離型粘着シートの熱膨張性粘着層から被着体を容易に剥離させることができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
(実施例1)
アクリル系共重合体(エチルアクリレート:70重量部、2−エチルヘキシルアクリレート:30重量部、メチルメタクリレート:5重量部、および2−ヒドロキシエチルアクリレート:4重量部をモノマー成分とするアクリル系共重合体;重量平均分子量:約45万)100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製):1.4重量部、および熱膨張性微小球として、商品名「マツモトマイクロスフェアF−301D」(松本油脂製薬株式会社製;熱膨張開始温度:90℃):20重量部と、商品名「マツモトマイクロスフェアF−501D」(松本油脂製薬株式会社製;熱膨張開始温度:120℃):20重量部とを配合して、熱膨張性粘着剤を得た。この熱膨張性粘着剤を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製フィルム(PETフィルム)の一方の面に、乾燥後の厚さが約50μmとなるように、塗布し乾燥させて、熱剥離型粘着シートを得た。なお、この熱剥離型粘着シートにおける剥離開始温度は90℃である。
(実施例2)
アクリル系共重合体:100重量部に対して、さらに、テルペンフェノール系粘着付与剤を10重量部配合したこと以外は実施例1と同様にして熱膨張性粘着剤を得た。さらにまた、この熱膨張性粘着剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして熱剥離型粘着シートを得た。なお、この熱剥離型粘着シートにおける剥離開始温度は90℃である。
(比較例1)
熱膨張性微小球として、商品名「マツモトマイクロスフェアーF−301D」(松本油脂製薬株式会社製;熱膨張開始温度:90℃):20重量部(アクリル系共重合体:100重量部に対する割合)のみを用いたこと以外は実施例1と同様にして熱膨張性粘着剤を得た。さらにまた、この熱膨張性粘着剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして熱剥離型粘着シートを得た。なお、この熱剥離型粘着シートにおける剥離開始温度は90℃である。
(評価)
各実施例及び各比較例で得られた各粘着シートを、幅20mmに切断し、熱膨張性粘着層(熱膨張性微小球を含有する接着層)上に、厚さ25μmのポリエステルフィルム(商品名「ルミラーS−10」東レ株式会社製)を、2kgローラーで1往復にて貼着し、装置名「島津オートグラフAGS−50D」(島津製作所製)にて、加熱前及び加熱後の180°ピール接着力(粘着力)(N/20mm)[剥離速度:300mm/min、温度:23±2℃(21〜25℃)、湿度:65±5%RH(60〜70%RH)、ポリエステルフィルム(商品名「ルミラーS−10」)を剥離する]を測定するとともに、千分の一ミリまで計測可能なマイクロダイヤルゲージにて、加熱前及び加熱後の熱膨張性粘着層の厚さを測定した。なお、加熱処理は、100℃のホットプレート上で1分間、及び130℃の熱風乾燥機で15分間の条件で行った。また、この加熱処理により、熱膨張性粘着層の厚みは一定となっていた。
これらの結果は、それぞれ、表1の「接着力(N/20mm)」、「層厚(μm)」の欄に示した。表1中の層厚は、熱膨張性粘着層のみの値であり、支持基材(PETフィルム)の厚さ(38μm)は含まれていない(熱剥離型粘着シートの厚さから、支持基材の厚さ(38μm)を差し引いている)。
Figure 2006160872
表1より、実施例1及び2に係る熱剥離型粘着シートは、剥離開始温度が90℃である熱膨張性微小球が変形や破裂してしまう130℃で、加熱処理を行っても、熱膨張性粘着層の厚みは、100℃で加熱処理を行った際の厚みに対して60%以上となっており、また、その接着力は、100℃での加熱処理の時と同様に剥離可能な値まで減少された状態を保持している(すなわち、熱膨張性粘着層の接着力を加熱処理前の接着力の10%以下の大きさで保持している)。従って、実施例1及び2に係る熱剥離型粘着シートでは、通常行う加熱処理温度(100℃程度)よりも高温である130℃で加熱処理を行っても、熱膨張性粘着層の厚みは十分膨張しており、接着力低減状態を有効に保持している。そのため、迅速に剥離させることができ、加熱処理の作業性を大きく改善することができる。
一方、比較例1では、100℃で加熱処理を行った際には、実施例と同様に熱膨張性粘着層は接着力低減状態を保持しているが、130℃で加熱処理を行った際には、元の接着力(加熱処理前の粘着力)と同様の大きさに戻っており、剥離することが困難になっている。
本発明の熱剥離型粘着シートの例を部分的に示す概略断面図である。
符号の説明
1 熱剥離型粘着シート
2 熱剥離型粘着シート1の基材
3 熱剥離型粘着シート1の熱膨張性粘着層
4 セパレータ

Claims (11)

  1. 基材の少なくとも一方の面に発泡剤を含有する熱膨張性粘着層が形成された熱剥離型粘着シートであって、加熱により熱膨張性粘着層の接着力が加熱処理前の接着力の10%以下の大きさにまで低減した状態を経た後、さらに加熱して、該熱膨張性粘着層の剥離開始温度より30℃以上高い温度で30分以上加熱を続けても、熱膨張性粘着層の接着力を加熱処理前の接着力の10%以下の大きさで保持させることができることを特徴とする熱剥離型粘着シート。
  2. 加熱により熱膨張性粘着層の接着力が加熱処理前の接着力の10%以下の大きさにまで低減した状態を経た後、さらに加熱して、該熱膨張性粘着層の剥離開始温度より50℃以上高い温度で30分以上加熱を続けても、熱膨張性粘着層の接着力を加熱処理前の接着力の10%以下の大きさで保持させることができる請求項1記載の熱剥離型粘着シート。
  3. 加熱により熱膨張性粘着層の接着力が加熱処理前の接着力の10%以下の大きさにまで低減した状態を経た後、さらに加熱して、該熱膨張性粘着層の剥離開始温度より70℃以上高い温度で30分以上加熱を続けても、熱膨張性粘着層の接着力を加熱処理前の接着力の10%以下の大きさで保持させることができる請求項1記載の熱剥離型粘着シート。
  4. 熱膨張性粘着層が、熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度が異なる2種以上の発泡剤を含有している請求項1〜3の何れかの項に記載の熱剥離型粘着シート。
  5. 2種以上の発泡剤において、熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度が最も高い発泡剤に係る剥離開始温度が、熱膨張性粘着層に付与する剥離開始温度が最も低い発泡剤に係る剥離開始温度よりも、30℃以上高い請求項4記載の熱剥離型粘着シート。
  6. 発泡剤が、熱膨張性微小球である請求項1〜5の何れかの項に記載の熱剥離型粘着シート。
  7. 請求項1〜6の何れかの項に記載の熱剥離型粘着シートを用いて製造されたことを特徴とする電子部品。
  8. 請求項1〜6の何れかの項に記載の熱剥離型粘着シートを用いて製造されたことを特徴とする回路基板。
  9. 基材の少なくとも一方の面に発泡剤を含有する熱膨張性粘着層が形成された熱剥離型粘着シートから、該熱剥離型粘着シートの熱膨張性粘着層上に貼着された被着体を剥離させる方法であって、熱剥離型粘着シートとして、請求項1〜6の何れかの項に記載の熱剥離型粘着シートを用いることを特徴とする熱剥離型粘着シートからの被着体の剥離方法。
  10. 熱剥離型粘着シートにおける熱膨張性粘着層の剥離開始温度以上の温度で剥離作業を行った後、さらに加熱して、前記剥離開始温度より30℃以上高い温度で剥離作業を行う請求項9記載の熱剥離型粘着シートからの被着体の剥離方法。
  11. 当初より、熱剥離型粘着シートにおける熱膨張性粘着層の剥離開始温度より30℃以上高い温度で剥離作業を行う請求項9記載の熱剥離型粘着シートからの被着体の剥離方法。
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