JP2006160871A - 衣料用樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 水・アルコールに対する低い膨潤性と、すぐれた透湿性能とを有する皮膜を提供することのできる衣料用親水性ポリウレタン樹脂組成物を得る。
【解決手段】 得られる親水性ポリウレタン樹脂の主鎖に対して、ポリオキシエチレン基をペンダント状に共重合でき、かつ分子内に活性水素を2個有する単量体と、有機ジイソシアネートとよりなる衣料用親水性ポリウレタン樹脂組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】 得られる親水性ポリウレタン樹脂の主鎖に対して、ポリオキシエチレン基をペンダント状に共重合でき、かつ分子内に活性水素を2個有する単量体と、有機ジイソシアネートとよりなる衣料用親水性ポリウレタン樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
この発明は、水・アルコールに対する低い膨潤性と、すぐれた透湿性能とを有する皮膜を提供することのできる衣料用樹脂組成物に係り、詳しくは得られる親水性ポリウレタン樹脂の主鎖に対して、ポリオキシエチレン基をペンダント状に共重合させ、かつ分子内に活性水素を2個有する単量体と、有機ジイソシアネートとよりなる衣料用親水性ポリウレタン樹脂組成物に関するものである。
衣料用樹脂組成物は、主として防水性、透湿性が要求される加工布帛の製造に用いられている。防水性、透湿性を有する加工布帛およびその製造方法については、これまでに数多くの開示がなされている。それらの代表的な開示としては、
・ 多孔質テフロン膜や多孔質ポリエチレンを接着剤を用いて繊維基材にラミネートした布帛、
・ ポリウレタン樹脂よりなる微多孔質皮膜を湿式凝固法により形成し被覆した布帛(特許文献1および2)、
・ 親水性ポリウレタン樹脂を繊維基材上に乾式コーティングによって皮膜形成した布帛(特許文献3)、さらに最近には、
・ 多孔質テフロン膜に親水性ポリウレタン膜を積層し、膜表面に外力が加わった際の連続多孔の破損の防止、あるいは連続多孔にゴミ等の異物や洗濯時の洗剤等が残留しないように改善した防水シート(特許文献4)、
・ 水膨潤性を有する親水性ポリウレタン樹脂をフィルム化し、これをポリウレタン系接着剤を介して基材となるナイロン平織物等に代表される基布にラミネートすることで得られる高透湿性を有する乾式ラミネート布帛(特許文献5)、
などがある。
特公昭60−47955号公報
特開平8−3876号公報
特開2003−201675号公報
特開2003−326661号公報
特開平10−259302号公報
・ 多孔質テフロン膜や多孔質ポリエチレンを接着剤を用いて繊維基材にラミネートした布帛、
・ ポリウレタン樹脂よりなる微多孔質皮膜を湿式凝固法により形成し被覆した布帛(特許文献1および2)、
・ 親水性ポリウレタン樹脂を繊維基材上に乾式コーティングによって皮膜形成した布帛(特許文献3)、さらに最近には、
・ 多孔質テフロン膜に親水性ポリウレタン膜を積層し、膜表面に外力が加わった際の連続多孔の破損の防止、あるいは連続多孔にゴミ等の異物や洗濯時の洗剤等が残留しないように改善した防水シート(特許文献4)、
・ 水膨潤性を有する親水性ポリウレタン樹脂をフィルム化し、これをポリウレタン系接着剤を介して基材となるナイロン平織物等に代表される基布にラミネートすることで得られる高透湿性を有する乾式ラミネート布帛(特許文献5)、
などがある。
しかしながら、上記した従来の加工布帛では何れも以下のような実用上の問題を有していた。即ち、上記(1)の布帛では、得られた布帛の風合いが非常に硬く、加工に要するコストも高い。(2)の特許文献1および2に記載の布帛では、その加工工程において凝固槽内に水混和性有機溶剤が混入するため、この溶剤を蒸留回収するための手間と費用が嵩み、また凝固槽の温度管理条件の幅が狭い、あるいは加工速度が遅いなどの問題がある。また(3)の特許文献3に記載の布帛では、主に用いる樹脂が水膨潤性の親水性ポリウレタン系樹脂であり、衣料として洗濯時あるいは雨滴等による水分により加工された樹脂が水膨潤し、繊維基材と加工樹脂界面での剥離トラブルを起こしやすいという問題がある。さらに、上記(4)および(5)の特許文献4および5に記載の布帛においても、衣料として雨滴あるいは洗濯により吸水した場合、あるいはアルコール系溶剤を含む一般消費者向け撥水スプレー等を噴霧した際に、親水性ポリウレタン加工表面が膨潤し、その結果布帛の平滑性を失い、デザインを損ねるといった問題点を有していた。
上記に鑑みてこの発明は、上述した従来の衣料用樹脂組成物が有する問題点を解決して、水・アルコールに対する低い膨潤性とすぐれたと透湿性を兼ね備えた衣料用布帛を得ることのできる衣料用樹脂組成物を、従来の布帛とは異なる素材と手段によって提供することを目的とするものである。
請求項1に記載の発明は、得られる親水性ポリウレタン樹脂の主鎖に対して、ポリオキシエチレン基をペンダント状に共重合でき、かつ分子内に活性水素を2個有する単量体と、有機ジイソシアネートとよりなる水・アルコールに対する低い膨潤率と透湿性にすぐれた衣料用親水性ポリウレタン樹脂組成物を特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、得られる親水性ポリウレタン樹脂の主鎖に対して、ポリオキシエチレン基をペンダント状に共重合でき、かつ分子内に活性水素を2個有する単量体を、親水性ポリウレタン樹脂固形分に対する該単量体中のポリオキシエチレン基の重量比率で10〜50重量%用いることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、得られる親水性ポリウレタン樹脂の主鎖に対して、ポリオキシエチレン基をペンダント状に共重合でき、かつ分子内に活性水素を2個有する単量体として、その分子量が1000〜3000の単量体を用いることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明で得られた樹脂組成物よりなる40μm厚さの無孔フィルムの水・アルコールに対する膨潤率が110%以内であり、また10μm厚さの無孔フィルムのJIS L−1099酢酸カリウム法による透湿度が15000g/m2・24h以上であることを特徴とするものである。
この発明の上記請求項に記載の衣料用樹脂組成物によれば、防水性、透湿性を有する加工布帛を製造するに当り、得られるポリマーの主鎖に対して、ポリオキシエチレン基をペンダント状に共重合でき、かつ分子内に活性水素を2個有する単量体と、有機ジイソシアネートとからなる親水性ポリウレタン系樹脂を用いることによって、親水性ポリウレタン樹脂の高透湿性を維持しながら、同時に水・アルコールに対する膨潤性を低く改善できるのであり、その結果、得られる加工布帛は、高透湿性を有すると同時に耐洗濯性、後撥水スプレー噴霧時に必要な耐アルコール性等の消費耐久性にすぐれたものとすることができ、衣料用、衛生資材等の用途に極めて好適である。
以下、この発明について詳細に説明する。この発明で目的とする水・アルコールに対する低い膨潤性と、すぐれた透湿性とを同時に満足させるためには、親水性ポリウレタン系樹脂を合成する際に、このポリマー主鎖にリニアな形で直接ポリオキシエチレン基を導入するのではなく、ポリマー主鎖に対してペンダント状にポリオキシエチレン基を導入することが必要である。
従来から、透湿性を有する無孔フィルムを得る手段としては、ポリマー主鎖にリニアな形で直接ポリオキシエチレン基を導入する方法が一般的であり、この方法ではポリオキシエチレン量に比例して透湿度は高く保持できるが、同時に水・アルコールによる膨潤率も大きくなる。
これに対して、この発明ではポリマー主鎖に対しペンダント状にポリオキシエチレン基を導入することによって、ポリマー主鎖への直接的な水・アルコールに対する膨潤性が抑えられ、その結果、水・アルコールに対する低い膨潤性とすぐれた透湿性とを同時に満足させることができるのである。
さらには、ポリマー主鎖に対してペンダント状にポリオキシエチレン基が共重合されることで、得られた衣料用親水性ポリウレタン樹脂組成物をフィルム化した際に、ペンダント状のポリオキシエチレン基に由来する親水セグメントの自由度がリニアに共重合されたものよりも大きくなり、透湿度の向上においても有効に働くことができるのである。
このように、この発明で有機ジイソシアネートとともに用いる、得られるポリマーの主鎖に対してポリオキシエチレン基をペンダント状に共重合でき、かつ分子内に活性水素を2個有する単量体としては、α−メトキシポリオキシエチレングリセリン、α−メトキシポリオキシエチレンプロピレングリセリン等に代表される単分子トリオールへのα−アルコキシポリオキシエチレン付加物等があり、夫々エチレンオキサイド量、プロピレンオキサイド量を変量することで、平均分子量を変更することも可能であるが、この発明においては平均分子量1000〜3000(好ましくは1500〜2500)の範囲が望ましい。これは、平均分子量が1000より小さいと透湿性能に対して有効性がなくなり、また平均分子量が3000より大きい場合にはペンダント状に共重合されていても、ポリマー全体の水膨潤率が増加傾向を示すので好ましくない。
勿論、透湿度の向上や材料コストを考慮するうえで、透湿性と膨潤性のバランスを崩さない範囲で、分子内に活性水素を2個有する平均分子量400〜4000の親水性の大きなポリアルキレンエーテルグリコールや、末端にヒドロキシル基を有するポリエステルポリオールを併用することもできる。
そのようなポリアルキレンエーテルグリコールとしては、ポリエチレングリコール、
ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、グリセリンプロピレンオキシド付加物、末端にエチレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオール、ビニルモノマーグラフト化ポリエーテルポリオール等があり、また末端にヒドロキシル基を有するポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のアルキレングリコール類と、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、トリメリット酸等のカルボン酸類とを末端がヒドロキシル基となるように反応して得られるものがよい。さらには、ポリε−カプロラクトンポリオール、ポリカーボネートジオール等の単独あるいは混合物を用いることもできる。
ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、グリセリンプロピレンオキシド付加物、末端にエチレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオール、ビニルモノマーグラフト化ポリエーテルポリオール等があり、また末端にヒドロキシル基を有するポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のアルキレングリコール類と、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、トリメリット酸等のカルボン酸類とを末端がヒドロキシル基となるように反応して得られるものがよい。さらには、ポリε−カプロラクトンポリオール、ポリカーボネートジオール等の単独あるいは混合物を用いることもできる。
有機ジイソシアネートとしては、2,4−および2,6−トルイレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5′−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族系ジイソシアネートがあり、これらを単独あるいは混合して使用すればよい。但し、耐光性能の中でも特に耐光変色性を重視する場合には、脂肪族系ジイソシアネートを用いることが好ましく、芳香族系ジイソシアネートを用いる時には紫外線吸収剤等の光変色防止剤の添加が望ましい。
上記した単量体と有機ジイソシアネートとの反応においては、必要に応じて硬度調整剤および/または鎖延長剤として、ヒドラジン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、水、無水ピペラジン、3−アミノメチル−3,5,5′−トリメチルシクロヘキシルアミン、エチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等を単独あるいは混合して用いることができる。
また、上記で得られる親水性ポリウレタン系樹脂は、必要に応じてフッ素、アミノ酸、シリコーン等のモノマーと共重合した変性ポリウレタン樹脂、あるいは他の高分子化合物、例えばアクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル、スチレン共重合樹脂、シリコーン樹脂等との混合物としたものでもよい。
この発明におけるポリオキシエチレン基を、得られるポリマーの主鎖に対してペンダント状に有する親水性ポリウレタン系樹脂は、上記した単量体成分を用いて、末端にイソシアネート基が残存しないように配合して反応させ、平均分子量が30000〜120000の範囲のものが望ましく、その配合においてポリオキシエチレン基を、得られるポリマーの主鎖に対してペンダント状に持たせるために使用する分子内に2個の活性水素を有する単量体の使用量としては、親水性ポリウレタン系樹脂固形分におけるポリオキシエチレン量の重量比率で10〜50重量%(好ましくは20〜40重量%)であることが望ましい。
これは、ポリオキシエチレン基を、得られるポリマーの主鎖に対してペンダント状に持たせるために使用する分子内に2個の活性水素を有する単量体の使用量が、親水性ポリウレタン系樹脂固形分におけるポリオキシエチレン量の重量比率で10重量%よりも少ない場合は、得られた樹脂溶液中のポリオキシエチレン量が少なく、十分な透湿度が得られない。また、50重量%より多い場合には水・アルコールに対する膨潤率が大きくなり望ましくない。
上記の単量体成分にて親水性ポリウレタン樹脂を得る際に使用する有機溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、キシレン、イソプロピルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル等を単独または混合して使用すればよい。
また、この発明では親水性ポリウレタン系樹脂の末端に有する官能基としての活性水素と結合させて三次元架橋構造の親水性ポリウレタン系樹脂を得るために架橋剤を使用してもよい。架橋剤としては、トリメチロールプロパンとジイソシアネートよりなるポリイソシアネートアダクト体、ジイソシアネートをイソシアヌレート変性したポリイソシアヌレート体、あるいはこれらポリイソシアネート類をオキシム類、フェノール類でブロック化したブロックイソシアネート類の単独または混合物が用いられる。また、このようなポリイソシアネート類のほかに、メトキシメチロール化メラミン、メトキシメチル尿素などのアミノプラスト類を架橋剤として用いてもよく、これらは単独または混合して使用することができる。そして、これら架橋剤の使用量としては、親水性ポリウレタン系樹脂の固形分100重量部に対して1〜15重量部が適当である。
上記したような素成分によって得た、ポリオキシエチレン基をポリマー主鎖に対してペンダント状に共重合した親水性ポリウレタン系樹脂からは、水・アルコールに対する膨潤率が低く、かつ高透湿性能を有する衣料用樹脂組成物が得られるが、水・アルコールに対する膨潤率は110%以内であることが必要である。これは、洗濯時あるいは雨等で衣料が濡れた際の形状安定性およびアルコール溶剤を使用した撥水スプレー等が飛散した際の形状安定性保持に必要とするためである。
上記の水・アルコール膨潤率は、上記の樹脂組成物を硬化後の厚さが40μmとなるように離型紙上に塗布し、80℃×10分、120℃×10分の乾燥を行ってから60℃で96時間熟成を行って硬化フィルムを得、離型紙を取り除いた後、一辺が5cmの正方形に切り取ったフィルムを試料として用い、この試料フィルムを25℃の純水あるいはイソプロピルアルコール中に1時間浸漬させたのち取り出し、浸漬によって膨潤した各辺の長さの積を膨潤後のフィルムの面積として、次の数式1により算出した。
このようにして得られるこの発明の樹脂組成物は、水・アルコールに対する膨潤性、透湿性などの諸性能を兼ね備えていることから、透湿衣料、手袋、衛生資材用などとして用いることができるのである。
以下、実施例によりこの発明を詳細に説明するが、この発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、部数はすべて重量部である。
両末端にヒドロキシル基を有する平均分子量2000のブチレンアジペート400部、平均分子量2100のα−メトキシポリオキシエチレングリセリン600部、エチレングリコール93部、DMF1700部を配合し、窒素気流下で均一に混合した。次いで、この混合物に4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)500部を加えて75℃で加熱し、増粘に従ってDMF530部、MEK1487部を加え、30%濃度で25000mPa・s/30℃のポリオキシエチレン基をポリマーの主鎖に対してペンダント状に共重合した親水性ポリウレタン樹脂溶液を得た。
上記で得た親水性ポリウレタン樹脂溶液100部にMEK30部を加えて均一に混和した後、この混和液を離型紙(味の素社製、DNTP−FL)上に乾燥フィルム膜厚が40μmになるようにコーティングし、120℃で10分間加熱して乾式フィルムを得た。
さらに、上記の混和液を離型紙(味の素社製、DNTP−APT160フラット)上に乾燥フィルム膜厚が10μmになるようにコーティングし、100℃で2分間加熱して乾式フィルムを作製した。また、これらの乾式フィルムの上にポリウレタン系二液接着剤としてポリウレタン樹脂(セイコー化成社製、ラックスキンUD−108)100部と、ポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、コロネートHL)8部、トルエン20部を混和した溶液を32メッシュのグラビアプリンターにて塗工し、100℃で1分間乾燥した後、ナイロン平織物にラミネートした。その後、60℃×48時間の熟成を行ってから冷却して離型紙を剥離し、衣料用乾式透湿性防水布帛を得た。かくして得られた防水布帛のJIS L−1099酢酸カリウム法における透湿度は13900g/m2・24hであり、防水布帛の耐水性能はJIS L−1092 B法(高水圧法)で測定した結果150KPa以上であった。また、イソプロピルアルコールを主溶剤としたのち、撥水用スプレーと水を噴霧した際にも、布帛の形態変化は殆ど見られず良好であった。
比較例1
比較例1
上記実施例1の配合中の平均分子量2100のα−メトキシポリオキシエチレングリセリン600部を、平均分子量2000のポリエチレングリコール600部に代えた以外は全て実施例1と同様に処理して、30%濃度で28000mPa・s/30℃のポリオキシエチレン基をポリマーの主鎖に対してリニア状に共重合した親水性ポリウレタン樹脂溶液を得た。
この親水性ポリウレタン樹脂溶液を用いて上記実施例1と同じ処方で防水布帛を得た。得られた防水布帛のJIS L−1099酢酸カリウム法における透湿度は11600g/m2・24hであり、防水布帛の耐水性能は150KPa以上であった。しかし、イソプロピルアルコールを主溶剤としたのち、撥水用スプレーと水を噴霧した際は、布帛の加工樹脂側が大きく膨潤し、ミシン縫い目を中心に形態変化が大きく、布帛表面に凸凹部が発生した。
両末端にヒドロキシル基を有する平均分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール440部、両末端にヒドロキシル基を有する平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール400部、平均分子量2100のα−メトキシポリオキシエチレングリセリン520部、1,4−ブタンジオール18部を配合し、窒素気流下で均一に混合した。次いで、この混合物にジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート524部を加えて110℃で3時間保持した後、DMF100部、トルエン1980部を加え、さらに3−アミノメチル−3,5,5′−トリメチルシクロヘキシルアミン85部とジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジアミン84部を加え、増粘と共に2−ブタノール4855部を加えることで、25%濃度で60000mPa・s/30℃のポリオキシエチレン基をポリマーの主鎖に対してペンダント状に共重合した親水性ポリウレタン樹脂溶液を得た。
上記で得た親水性ポリウレタン樹脂溶液100部に、MEKを30部加えて均一に混和した混和液を用いて、実施例1の処方と同様にして40μm、10μmの乾式フィルムを作製した。さらに、ナイロン織物上にポリウレタン樹脂よりなる微多孔質皮膜を湿式凝固法にて形成被覆した湿式加工布帛の上に、上記の混和液をフローティングナイフコーターを用いて8〜10g/m2・dry塗工し、120℃で10分間乾燥することにより、乾式透湿性ウレタン樹脂によってオーバーコートされた湿式ウレタン加工布帛を得た。
かくして得られた湿式加工布帛のJIS L−1099酢酸カリウム法における透湿度は13500g/m2・24hであり、イソプロピルアルコールを主溶剤としたのち、撥水用スプレーを噴霧した際にも、布帛の形態変化は見られなかった。
比較例2
比較例2
上記実施例2の配合中の平均分子量2100のα−メトキシポリオキシエチレングリセリン520部を、平均分子量2000のポリエチレングリコール520部に代えた以外は全て実施例2と同様に処理して、25%濃度で55000mPa・s/30℃のポリオキシエチレン基をポリマーの主鎖に対してリニア状に共重合した親水性ポリウレタン樹脂溶液を得た。
この親水性ポリウレタン樹脂溶液を用いて上記実施例2と同じ処方で得られた湿式加工布帛のJIS L−1099酢酸カリウム法における透湿度は13000g/m2・24hであったが、イソプロピルアルコールを主溶剤としたのち、撥水用スプレーを噴霧した際は、加工樹脂表面が膨潤し、基材であるナイロン織物側にカールする現象が発生した。
両末端にヒドロキシル基を有する平均分子量2000のポリカーボネートジオール200部、同じく平均分子量2100のα−メトキシポリオキシエチレングリセリン800部、ヘキシレングリコール59部を配合し、窒素気流下で均一に混合した。次いで、この混合物にジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート524部を加えて110℃で3時間加熱した後、DMF1605部、MEK2408部を加え、さらに3−アミノメチル−3,5,5′−トリメチルシクロヘキシルアミン170部を加えて加熱したのち、モノエタノールアミンを用いて反応中のイソシアネート残基を封鎖し、30%濃度で30000mPa・s/30℃の末端に水酸基を有し、かつポリオキシエチレン基をポリマーの主鎖に対してペンダント状に共重合した親水性ポリウレタン樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を用いて実施例1の処方と同様にして40μm、10μmの乾式フィルムを作製した。
実施例3で得た、末端に水酸基を有し、かつポリオキシエチレン基をポリマーの主鎖に対してペンダント状に共重合した親水性ポリウレタン樹脂溶液100部に、MEK30部、トリメチロールプロパンとジイソシアネートとよりなるポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、コロネートHL)3部を均一に混和した後、この混和液を用いて、実施例1の処方と同様にして40μm、10μmの乾式フィルムを作製した。
比較例3
比較例3
実施例3で用いた平均分子量2100のα−メトキシポリオキシエチレングリセリン800部を平均分子量2000のポリエチレングリコール800部に代えた以外は全て実施例3と同様に処理して、30%濃度で33000mPa・s/30℃のポリオキシエチレン基をポリマーの主鎖に対してリニア状に共重合した親水性ポリウレタン樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を用いて、実施例1の処方と同様にして40μm、10μmの乾式フィルムを作製した。
実施例1で得たポリオキシエチレン基をポリマーの主鎖に対してペンダント状に共重合した親水性ポリウレタン樹脂溶液100部に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(ダウケミカル社製、VAGH)3.3部をMEK26.7部に溶解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂溶液30部を加えて均一に混和した後、この混和液を用いて実施例1の処方と同様にして40μm、10μmの乾式フィルムを作製した。
比較例4
比較例4
両末端にヒドロキシル基を有する平均分子量2000のブチレンアジペート400部、両末端にヒドロキシル基を有する平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール500部、平均分子量2100のα−メトキシポリオキシエチレングリセリン100部、エチレングリコール93部、DMF1700部を配合し、窒素気流下で均一に混合した。次いで、この混合物に4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート500部を加えて75℃で加熱し、増粘とともにDMF530部、MEK1487部を加え、30%濃度で31000mPa・s/30℃のポリオキシエチレン基をポリマーの主鎖に対してペンダント状に共重合した親水性ポリウレタン樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を用いて、実施例1の処方と同様にして40μm、10μmの乾式フィルムを作製した。
上記実施例1〜5および比較例1〜4で得た10μm、40μmの乾式フィルムを、それぞれ離型紙から剥がし、各フィルムについて、上述した数式1による水膨潤率、アルコール膨潤率の測定およびJIS L−1099酢酸カリウム法による透湿度の測定を行った。その結果は表1に示した。
上記表1から、この発明の実施例1〜5で得たフィルムは何れも水膨潤性、アルコール膨潤性、透湿性において良好な結果を示した。これに対して、比較例1〜4で得たフィルムは、何れも膨潤性が大きく、透湿防水布帛とした際、寸法安定性、形態安定性に問題を有することが認められた。
Claims (4)
- 得られる親水性ポリウレタン樹脂の主鎖に対して、ポリオキシエチレン基をペンダント状に共重合でき、かつ分子内に活性水素を2個有する単量体と、有機ジイソシアネートとよりなることを特徴とする水・アルコールに対する低い膨潤性と透湿性にすぐれた衣料用親水性ポリウレタン系樹脂組成物。
- 得られる親水性ポリウレタン樹脂の主鎖に対して、ポリオキシエチレン基をペンダント状に共重合でき、かつ分子内に活性水素を2個有する単量体を、親水性ポリウレタン樹脂固形分に対する該単量体中のポリオキシエチレン基の重量比率で10〜50重量%用いることを特徴とする請求項1に記載の衣料用親水性ポリウレタン系樹脂組成物。
- 得られる親水性ポリウレタン樹脂の主鎖に対して、ポリオキシエチレン基をペンダント状に共重合でき、かつ分子内に活性水素を2個有する単量体として、その分子量が1000〜3000の単量体を用いることを特徴とする請求項1に記載の衣料用親水性ポリウレタン系樹脂組成物。
- 請求項1で得られた樹脂組成物よりなる40μm厚さの無孔フィルムの、水・アルコールに対する膨潤率が110%以内であり、また10μm厚さの無孔フィルムのJIS L−1099酢酸カリウム法による透湿度が15000g/m2・24h以上であることを特徴とする衣料用親水性ポリウレタン系樹脂組成物。
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