JP5027558B2 - 合成皮革 - Google Patents
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そして、従来は、この改良手段として、合成皮革にフッ素系樹脂を含む材料などを用いて表面加工する等が試みられてきている。しかし、従来から用いられている表面加工用の材料を用いて防汚加工を行う場合、防汚性能の高い樹脂はモジュラスが高いので、防汚性を向上させるほど柔軟性を低下させて硬くなってしまう。そして、柔軟性が低下して硬くなると、磨耗耐久性も悪くなってしまう。
本体材10には、繊維基材15と樹脂層16を有しており、さらに、本実施形態の樹脂層16は、湿式凝固層21、表皮層22を有している。
繊維基材15の起毛については、任意であるが、両面に行うことができる。
湿式凝固層21を形成するための溶液を塗工する工程では、通常用いられる方法を採用することができ、例えば、コンマコーティング法、ドクターナイフコーティング法、リバースロールコーティング法、バーコーティング法等様々なものが挙げられる。
なお、湿式凝固層21は、湿式凝固法により形成されるので、多孔質となっている。
表皮層22に用いられる樹脂は、特に限定されるものではないが、ポリウレタン樹脂などを用いることができる。
防汚層11は、2液硬化型含シリコーン・フッ素樹脂を含む材料を用いて行われるものであり、シリコーン含有ふっ素系共重合体と、硬化剤とを混合させて表皮層22の上から塗って、固化させることにより形成される。
また、防汚層11は適度な硬さを有しており、防汚層11に用いられる材料のみで硬化させた樹脂の破断強度は、12.0〜30.0MPaである。
(実施例1)
繊維製の基材として、経緯レーヨン/ポリエステル(35/65)混紡糸、20/1×20/2平織りを両面起毛し厚さ0.75mmとしたものを用いた。
そして、上記の基材に、湿式凝固層と、表皮層と、防汚層とを形成するため、以下のような配合の材料を用いた。
なお、この配合物の粘度は、4000±500kPa・sである。
なお、この配合物Cの粘度は、200±100kPa・sの範囲となっている。
まず、繊維製の基材の上に、表1に示す配合の配合物Aを平方メートル当たり930g塗布し、その後、30℃、DMF濃度10%の水浴中で水凝固させる。さらに、凝固後に、60℃の温水洗いし、140℃の乾燥温度で乾燥させて、湿式凝固層を形成する。
さらに、重ねて、表2に示す配合の配合物B2を平方メートル当たり80g塗布し、その後、80〜130℃の乾燥温度で乾燥させ、表皮層を形成する。
また実施例1の合成皮革の防汚層の厚みは4.2μmである。
実施例1の防汚層とは異なるものを用いた点を除いては、同じの材料・製造方法によって比較例1の合成皮革を製作した。
そして、基材の上に湿式凝固層を形成したものに、離型紙上に形成した表皮層を重ねて、離型紙を剥離し、防汚層となる配合物Dを、100メッシュのグラビアロールで平方メートル当たり20g塗布し、140℃で乾燥し、更に60℃で48時間熟成して、比較例1の合成皮革を製作した。
また比較例1の合成皮革の防汚層の厚みは3.7μmである。
以下に示す方法により、実施例2の合成皮革を製造した。
まず、表5に示す配合の配合物E1をバンバリーミキサーにより5分間混練し、続いて2本ロールのウオ一ムアップロールにより6分間混練し、しかるのち逆L字形4本ロールカレンダにより、上記配合物をエステル・レーヨン製両面メリヤス編物(平方メートル当たりの目付量150g)の生地である繊維基材にプライマー層を設けたものに0.3mmの厚みに貼着して成形・積層した。
さらに、表5に示す配合の配合物E2をバンバリーミキサーにより5分間混練し、続いて2本ロールのウォームアップロールにより6分間混練し、しかるのち逆L字形4本ロールカレンダにより、0.2mmの厚みとなるように、繊維基材と配合物E1の発泡樹脂の積層体の上に積層して貼着して積層体とする。このとき、配合物E2は、配合物E1側に重ねられる。
さらに、この積層体を温度210℃の発泡炉に2分間通して配合物E1からなる層を発泡させながら表面にエンボス加工を施して、合計厚み0.9mmの皮革様のシボを形成した発泡シートとした。
配合物Cの塗布量は、乾燥後の質量で平方メートル当たり2.5gである。また実施例2の合成皮革の防汚層の厚みは1.8μmである。
実施例2の防汚層とは異なるものを用いた点を除いては、同じの材料・製造方法によって比較例2の合成皮革を製作した。
配合物Hの塗布量は、乾燥後の質量で平方メートル当たり2.5gである。また比較例2の合成皮革の防汚層の厚みは2.1μmである。
カンチレバーについては、JIS L 1096 A法の45°カンチレバー法により評価した。そして、カンチレバーの測定値が小さいほど柔らかいものである。
また、ハートルーブについては、JIS L 1096 D法のハートルーブ法により評価した。そして、ハートルーブの測定値が大きいほど柔らかいものである。
なお、この剛軟度の評価は、実施例1と比較例1のみについて行った。
具体的には、表7に示される配合により、実施例3及び比較例3の試料を作製し、防汚層に用いられる材料の破断強度を確認した。
(実施例3)
実施例3の試料の主剤として、関東電化工業株式会社製 エフクリア KD270 30%溶液を用い、硬化剤としてポリイソシアネートを用い、表7に示す配合の配合物を調製した。
そして、フェロ板(写真の艶出し用のクロムめっき板)上に、乾燥膜厚が約50μmとなるよう塗料を延展し、80℃で乾燥させて、そのままの状態で48時間熟成し、冷却の後、フェロ板から剥がして、実施例3の試験用の試料を作成した。
なお、試料の表裏は、上側を表面とし、下側(フェロ板側)を裏面とした。
比較例3の試料の主剤として、大日精化工業株式会社製 ダイアロマーFF262E 20%溶液を用い、硬化剤としてポリイソシアネートを用い、表7に示す配合の配合物を調製した。
そして、実施例3と同様に、フェロ板(写真の艶出し用のクロムめっき板)上に、乾燥膜厚が約50μmとなるよう塗料を延展し、80℃で乾燥させて、そのままの状態で48時間熟成し、冷却の後、フェロ板から剥がして、比較例3の試験用の試料を作成した。
なお、試料の表裏は、上側を表面とし、下側(フェロ板側)を裏面とした。
また、合わせて、実施例1、2や比較例1、2と同様の方法で、接触角を確認した。なお、接触角は、試料の表裏の両面について確認した。
これらの結果を、表8に示す。
実施例3と比較例3とを比較すると、表面については、蒸留水ではほとんど差が無く、n−ヘキサデカンでは、実施例3の接触角が大きかった。また、裏面については、蒸留水及びn−ヘキサデカンの両方で、接触角が小さくなった。
表面の接触角が大きいほど、使用時の防汚性能をより高めることができる。また、裏面の接触角が小さいほど、本体材との密着性を高めて、使用時に防汚層の脱落が発生しにくく、発生しても小さくすることができ、磨耗耐久性を向上させる。
そして、上記の結果より、実施例3の配合物を防汚層に用いることにより、防汚性能と磨耗耐久性を両立させることができることがわかる。
したがって、このことからも、2液硬化型含シリコーン・フッ素樹脂を用いることで、本願の合成皮革の本体材と防汚層との密着性が向上して、多少柔らかくても磨耗強さが向上し、防汚性能と磨耗耐久性とを両立することができることが分かる。
10 本体材
11 防汚層
15 繊維基材
16 樹脂層
21 湿式凝固層
22 表皮層
Claims (4)
- 繊維基材と樹脂層とを有する本体材の表面に、防汚層を形成した合成皮革であって、
本体材の樹脂層には、湿式凝固によって形成された湿式凝固層と、前記湿式凝固層に重ねられる表皮層が設けられており、防汚層は前記表皮層に重ねられるように形成されており、
前記防汚層は、フルオロオレフィン、反応性シリコーン及び水酸基含有不飽和単量体とによって構成される水酸基を含有した反応性シリコーン含有フッ素系共重合体と、不飽和イソシアネートとを反応させて生成されたシリコーン含有フッ素系共重合体である2液硬化型含シリコーン・フッ素樹脂を含む材料を用いて行われるものであって、
前記防汚層は、前記2液硬化型含シリコーン・フッ素樹脂と硬化剤とを混合させて表皮層の上から塗って、固化させることにより形成されるものであり、
硬化剤は、イソシアヌレート類を有する多価イソシアネートを用いており、
前記湿式凝固層はポリウレタン系の樹脂で形成されており、前記表皮層は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂で形成されており、
防汚層の厚みは0.1μm以上10μm以下の範囲であり、
防汚層に用いられる材料を硬化させた樹脂の破断強度は、12.0〜30.0MPaであり、
JIS L 1096に準じた耐揉が5000回/9.8N以上であり、
防汚層の表面における接触角は、蒸留水との接触角が98°〜110°であり、n−ヘキサデカンとの接触角が60°〜75°であり、
防汚層の表面における蒸留水との接触角は、防汚層の裏面における蒸留水との接触角よりも大きいものであり、
さらに、防汚層の表面におけるn−ヘキサデカンとの接触角は、防汚層の裏面におけるn−ヘキサデカンとの接触角よりも小さいものであることを特徴とする合成皮革。 - 防汚層の厚みは1.2μm以上2.5μm以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の合成皮革。
- 繊維基材は、繊維製の布であり、両面起毛していることを特徴とする請求項1又は2に記載の合成皮革。
- 繊維基材の厚さは0.70〜1.4mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の合成皮革。
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