JP2006159447A - プレストレスコンクリート部材の電熱養生構造 - Google Patents

プレストレスコンクリート部材の電熱養生構造 Download PDF

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Abstract

【課題】 施工作業の効率化を図りつつ、寒中においてもグラウト材の充填作業を実現可能にする。
【解決手段】 コンクリート69中に埋設されるシース21内にPC鋼材22を挿通し、PC鋼材22の緊張に基づくプレストレスが導入された後にシース内にグラウト材25を充填することによりプレストレスコンクリート部材を製造するときに、シース21に対して略平行な鉄筋14を予め配設するとともに、鉄筋14より細い外径からなる電熱線18を鉄筋14の下部に沿って設け、またシース21内にグラウト材25を充填する際に電熱線18を通電することにより鉄筋14を加熱する。
【選択図】図2

Description

本発明は、PC鋼材の緊張に基づくプレストレスが導入された後にシース内にグラウト材が充填されるプレストレスコンクリート部材の電熱養生構造及び方法に関する。
PCを製造する工法の一つとして、ポストテンション工法が従来から知られている。このポストテンション工法では、まず、金属管等のシースを型枠内に配置し、シース内にPC鋼材を挿通する。次に、型枠内にコンクリートを充填してこれを硬化させた後、PC鋼材を緊張させてプレストレスを導入するものである。このポストテンション工法においては、コンクリートの硬化後にPC鋼材を緊張させるため、現場での施工に適した工法といえる。
そしてポストテンション工法では、PC鋼材の耐腐食性の向上およびPC鋼材とコンクリート構造体との一体性を確保する見地から、上述のプレストレスが導入された後、シース内にグラウトを充填することが行われている。実際にこのグラウト充填時において、PC鋼材の耐腐食性の向上を図るとともに、PC鋼材とコンクリート構造体と間で付着性を向上させるためには、シース内に空隙を残すことなく、グラウト厚が等しくなるようにこれを充填するのが望ましい。
ところで、このグラウトの充填を寒中において実行する場合には、かかるグラウトが凍結してしまい、所定の材料強度を得ることができないという問題点が生じる。また、グラウトが凍結した場合には、かかるグラウト自身が膨張してしまい、シースを埋設する周囲のコンクリートに亀裂を生成させてしまうという問題点も生じる。さらに、氷点下で施工作業を行うとシース内に浸入した水が凍結してしまうため、かかる状態においてグラウトを充填した場合には、凍結した氷が事後的に溶解するにつれてグラウトとシースとの間で空隙が形成されることになり、PC鋼材の耐腐食性、付着性の向上を図ることができなくなるという問題点も生じる。
このため、土木学会コンクリート標準示方書では、日平均気温が4℃以下になる時期を寒中と定義し、かかる寒中においてはグラウトが凍結する恐れがあるため、グラウトの充填作業を原則的に禁止し、さらにシース内へ注入したグラウトの温度については、少なくとも5日間は5℃以上に保つことを規定している。
しかしながら、工事の進捗状況との関係から、寒中においてもグラウトの充填作業の実現化への要請は依然として高かった。
このため、寒中におけるグラウトの凍結を防止すべく、シートでグラウト部分を覆い、外部に設置したジェットヒータ等でかかるグラウト部分に熱風を吹き付けて加温する方法や、シース近傍に電熱温床線を併設する方法が従来において提案されている。
また、シースの外周に発熱線をらせん状に巻き付けてこれをコンクリート中に埋設し、かかる発熱線につき通電することによりシースを加熱し、グラウトの凍結を防止する工法も近年において提案されている(例えば、特許文献1参照)。この工法においては、厳冬期においてもグラウトの強度発現が短時間で行われ、施工能率を向上させることが可能となる。
特開2002−332746号公報
しかしながら、上述したジェットヒータ等で加熱する方法では、大規模な装置構成が必要となることから、施工作業そのものが大掛かりになり製作に伴うコストが増大してしまう要因ともなる。
また、シース近傍に電熱温床線を併設する方法や、特許文献1に開示されている工法では、配設した電熱線が、PC鋼材の挿入作業時に或いはコンクリート打設時に切断してしまう虞がある。特に配筋時において鉄筋同士が衝突してしまう場合もあり、更に気泡を抜くためのバイブレータをコンクリート中に挿入した場合に、かかるバイブレータの先端が電熱線に接触してしまう場合もあることから、電熱線の切断の要因がより増加してしまう。
特に特許文献1に開示されている工法では、図7に示すようにシース71の周囲において電熱線72がらせん状に巻き付けてあることから、シース71の上部においても電熱線72が露出した構成となっている。このため、コンクリート73中に挿入されたバイブレータ74の先端がシース71上部に接触した場合には、同時に電熱線72にも接触してしまう可能性が高く、ひいては電熱線72そのものが切断されてしまう可能性が高くなる。一般に、コンクリート73が硬化した後にかかる電熱線72の断線箇所を探索してこれを結線することは不可能に近いことから、コンクリート73へバイブレータ74を挿入する際には、そのかかるバイブレータ74の先端に対してシース71が接触するのを防ぐために多大な注意を払う必要があり、作業効率そのものを著しく低下させてしまう要因となっていた。
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、施工作業の効率化を図りつつ、寒中においてもグラウト材の充填作業を実現可能にするためのプレストレスコンクリート部材の電熱養生構造及び方法を提供することにある。
本発明では、上述した課題を解決するために、シースに対して略平行な鉄筋を予め配設するとともに、鉄筋より細い外径からなる電熱線を前記鉄筋の下部に沿って設け、シース内にグラウト材を充填する際に、電熱線を通電することにより鉄筋を加熱する。
即ち、本発明を適用したプレストレスコンクリート部材の電熱養生構造は、コンクリート中に埋設されたシース内にPC鋼材が挿通され、PC鋼材の緊張によりプレストレスが導入された後に、前記シース内にグラウト材が充填されるプレストレスコンクリート部材の電熱養生構造において、シースに対して略平行な鉄筋が配設されているとともに、当該鉄筋の下部に沿って電熱線が設けられる。
また、本発明を適用したプレストレスコンクリート部材の電熱養生方法は、コンクリート中に埋設されるシース内にPC鋼材を挿通し、PC鋼材の緊張に基づくプレストレスが導入された後にシース内にグラウト材を充填するプレストレスコンクリート部材の電熱養生方法において、シースに対して略平行な鉄筋を予め配設するとともに、電熱線を鉄筋の下部に沿って設け、シース内にグラウト材を充填する際に、電熱線を通電することにより鉄筋を加熱する。
本発明では、コンクリート中に埋設されるシース内にPC鋼材を挿通し、PC鋼材の緊張に基づくプレストレスが導入された後にシース内にグラウト材を充填することによりプレストレスコンクリート部材を製造するときに、シースに対して略平行な鉄筋を予め配設するとともに電熱線を鉄筋の下部に沿って設け、またシース内にグラウト材を充填する際に電熱線を通電することにより鉄筋を加熱する。
これにより、鉄筋からの熱はシースへ伝導し、グラウト材の充填時においてシースは、より温められることになる。特に、シースに対して鉄筋は略平行となるように配設されていることから、かかる鉄筋の下部に沿って配設されている電熱線から発せられる熱は、シースに対してほぼ均一に伝わることになる。その結果、グラウト材の充填を寒中において実行する場合においても、かかるグラウト材の凍結するのを防止することが可能となり、また凍結に基づくグラウト材自体の膨張をも抑制することが可能となるため、シースを埋設する周囲のコンクリートに亀裂が発生するのを防止することが可能となる。
以下、本発明を適用したプレストレスコンクリート部材の電熱養生構造における最良の実施形態につき図を参照して説明する。
本発明を適用したプレストレスコンクリート部材は、例えば橋桁等に配設される。橋桁1は、互いに並設又は連結状に架設されることにより橋を構成するためのブロックユニットであり、例えば図1の断面図に示すように、脚柱11の上端部にスラブ12を配設することにより断面が略T字状のT形梁を構成している。また橋桁1は、脚柱11の部材軸方向(図1における紙面垂直方向)に直交する方向に延長するように埋設される枠型鉄筋13と、部材軸方向に略平行に埋設される鉄筋14と鉄筋14に略並行に埋設されるシース21と、シース21内に挿通されて構成されるPC鋼材22と、これら各鉄筋13,14に打設されるコンクリート69とを備えている。
脚柱11並びにスラブ12は、枠型鉄筋13並びに縦鉄筋14を型枠内に配設してコンクリート69を打設することにより、脚柱11とスラブ12とが単一体として構成されるように構築される。スラブ12の上面12aには、図示しないアスファルトを敷設することにより車両や人が通行するための橋床が構成されることになる。このスラブ12として、例えば一端が自由端であり他端が固定端であるブラケット(張出し桁)を組み合わせて構成してもよい。
枠型鉄筋13は、1本の鉄筋材につき折り曲げ加工を複数回施すことにより構成される。この枠型鉄筋13は、枠形鉄筋縦中心線8から右側に向かって斜め上向きに延長する上側傾斜鉄筋31と、その端部から立ち上がる上端側部縦鉄筋32と、その上端部から左側に向かって枠形鉄筋縦中心線8を越えて水平に延長する上端横鉄筋33と、その左端部から下降する上端側部縦鉄筋34と、その下端部から右側に向かって斜め下向きに延長する上側傾斜鉄筋35と、枠形鉄筋縦中心線8を跨いでそれぞれ上端横鉄筋33から下降する中間縦鉄筋36,37と、中間縦鉄筋36の下端から枠形鉄筋縦中心線8を越えて中間縦鉄筋37の下端へ延長する下側横鉄筋38等が形成されている。これら各鉄筋31〜38は、図示しない結束線により互いに結束されていてもよい。
鉄筋14は、図1に示すように1本のシース21の周囲に4本の割合で配設されている。この鉄筋14のうち、鉄筋14aはシース21の右斜め上に配設され、鉄筋14bはシース21の左斜め上に配設され、鉄筋14cはシース21の右斜め下に配設され、鉄筋14dはシース21の左斜め下に配設される。この各鉄筋14a〜14dは、シース21の長手方向に平行であれば、これに対して如何なる間隔をもって配設されていてもよいが、少なくとも1本の鉄筋14a〜14dからの熱がシース21に伝導することは必須となる。これは、シース21に対して熱を伝導できるものであれば、鉄筋14は、少なくとも1本で構成されていればよいことを示唆している。
また、鉄筋14の下部に沿って、例えば図2に示されるようにニクロム線等に代表される電熱線18が設けられている。この電熱線18は、図3(a)の断面拡大図に示すように鉄筋14の下部中央に設けられていることが望ましい。また、図3(b)の断面拡大図に示すように、鉄筋14の下部中央において長手方向(部材軸方向)に連続して電熱線18と嵌合可能な溝41を予め形成しておき、かかる溝41に対して電熱線18を嵌合させるようにしてもよい。
ちなみに、この電熱線18は、銅、ニッケル合金からなり、数本に亘って束ねられて構成される発熱導体部と、この発熱導体部の周囲において形成されたエチレンプロピレンゴム等からなる絶縁材と、この絶縁材を覆う耐熱ビニール等で構成される外装材により構成されていてもよい。かかる場合において電熱線18の仕上り外径は、5.5φ程度となる。
シース21は、鉄筋14の間隙においてスパン方向に伸びる6本の被覆管で構成されている。このシース21は、主としてポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂材料から選択される。これらシース21の配設仕様は、脚柱11に分布する断面力を考慮して設定される。本実施の形態においては、脚注11の中央部上側には圧縮力、中央部下側には引張力が作用するため、シース21内に挿通されるPC鋼材22を構造物断面図心より下側に設置する必要が生じることから、シース21を脚柱11の下方に設置する。
PC鋼材22は、脚柱11を構成するコンクリート69にプレストレスを導入すべく配設されたものであり、機械的強度を向上させるべく、高炭素鋼を冷間加工することにより、或いは焼入れや焼戻し等の熱処理を施すことにより作製される。このPC鋼材22は、シース21内に挿通されて部材軸方向に延長して設けられる結果、その両端が脚柱11外に突出される。この突出されたシース21の両端は、図示しないジャッキに取付けられて緊張されることにより、PC鋼材22全体にプレストレスが加えられることになる。
このPC鋼材22によるプレストレスの導入により、図1に示すように、断面力は直線状に変化し、脚柱11の底面11aには圧縮応力σ1が、スラブ12の上面12aには、引張応力σ2が作用する。このため、この引張応力σ2がコンクリート69自身が持つ許容引張応力の範囲内に収まるように、シース21の高さ及びプレストレスの負荷力は予め最適に設定される。
なお、図4に示すようにスパン中程において、PC鋼材22を脚柱11の底面11aにより近接させてこれを水平に配置することにより、PC鋼材22の引張力が側面視で橋桁1を上に凸湾曲させる力を生じさせ(矢印a)、橋桁1への荷重付加時の対向力として作用させることが可能となる。
PC鋼材22とシース21により生成される間隙には、図2に示すようにグラウト材25が充填される。このグラウト材25は、PC鋼材22の耐腐食性の向上およびPC鋼材22とコンクリート69との一体性を確保する見地から充填されるものであり、セメントや水、混和材等を混合することにより生成される。グラウト材25は、グラウトポンプ等によりシース21内に充填されるが、シース21とグラウト材25との間で形成される空隙を残すことなく、グラウト厚が等しくなるように充填するのが望ましい。
上述の如き構成からなる橋桁1は、以下に説明する手順に基づいて構築され、またポストテンション工法に基づいてプレストレスが導入される。
先ず、枠型鉄筋13と鉄筋14とを溶接処理を施すことにより、これらを互いに固着するとともに、鉄筋14の下部に沿って電熱線18を設ける。この電熱線18は、例えば結線ワイヤ等を用いて任意の間隔毎に結線させるようにしてもよいし、接着剤により鉄筋14に接着されるようにしてもよい。
次に、枠型鉄筋13並びに鉄筋14に対してシース21を配設し、さらにこのシース21内にPC鋼材22を挿通させる。なお、このPC鋼材22については、打設されたコンクリート69が所定の強度を発現する前後において、シース21内への挿通させるようにしてもよい。
次に、各鉄筋13,14に対してコンクリート69を打設するとともに、打設されたコンクリート69中に生成された気泡を抜くためのバイブレータを挿入する。このバイブレータの挿入は、一般的に打設されたコンクリート躯体に対して上方から下方へ挿入される。コンクリート中にある気泡は、挿入されたバイブレータにより加えられる振動に応じて攪拌されることになり、最終的に気泡同士が合体して次第に上昇してゆき、そのままコンクリート中から逃散することになる。
また、打設されたコンクリート69が所定の強度を発現した場合には、図示しないジャッキによりPC鋼材22に所定の緊張力を導入することによりプレストレスを導入し、PC鋼材22の端部を例えばナット等により定着する。最後に、PC鋼材22とシース21とにより生成される間隙に対して上述したグラウト材25を充填する。このグラウト材25を充填する際には、電熱線18を通電することにより鉄筋14を加熱する。この通電に関しては、電熱線18と直列に接続された図示しない電源からこの電熱線18に対して電圧を印加させるようにしてもよい。また、この電熱線18への加熱温度につき、サーモスタットを用いて調整するようにしてもよい。
この電熱線18と図示しない電源から構成されるヒータについては、例えば、最高使用温度は、80℃、瞬間最高許容温度を150℃/20分としてもよい。
電熱線18を介して加熱された鉄筋14は、シース21に対してその熱を伝導させる。このとき、少なくとも1の鉄筋14a〜14dからの熱が、シース21へ伝導していればよい。各鉄筋14からシース21への伝熱特性は、その鉄筋14とシース21の間隔や、その間隔を構成する材質等に支配されるところ、これらの間隔や材質により、全ての鉄筋14a〜14dからの熱が、シース21へ伝導しない場合もある。しかしながら、少なくとも1の鉄筋14a〜14dからの熱が、シース21へ伝導していれば本発明所期の作用効果を得ることができる。
その結果、グラウト材25の充填時においてシース21は、かかる鉄筋14からの伝熱に基づいて、より温められることになる。特に、シース21に対して鉄筋14は略平行となるように配設されていることから、かかる鉄筋14の下部に沿って配設されている電熱線18から発せられる熱は、シース21に対してほぼ均一に伝わることになる。その結果シース21全体はほぼ均一に温められることになり、グラウト材25がある一定の箇所のみ溶解してしまうような不都合を回避することができる。
このため、グラウト材25の充填を寒中において実行する場合においても、かかるグラウト材25の凍結するのを防止することが可能となり、また凍結に基づくグラウト材25自体の膨張をも抑制することが可能となるため、シース21を埋設する周囲のコンクリート69に亀裂が発生するのを防止することができる。
さらに、氷点下で施工作業を行う場合においても、シース21がより温められることから、シース21内に浸入した水の凍結を防止することができ、グラウト材25とシース21との間で空隙が形成されることがなくなることから、PC鋼材22の耐腐食性、付着性の向上を図ることが可能となる。
このため、本発明を適用した橋桁1では、電熱線18を通電することによりシース22を温めることができるため、外気温に支配されることなくグラウト材25を充填することが可能となる。特に寒冷地において橋桁1を構築する場合においても、寒中における工事を回避するための余計な日程調整をする必要もなくなり、より効率的な工事計画を立案することも可能となる。
さらに、シース21内にグラウト材25を充填した後においても電熱線18を通電し続けるようにしてもよい。即ち、所定の硬化したグラウトを得るためには、かかるグラウト材25を少なくとも5日間、5℃以上に保持することにより、水和反応を促進させる必要があるところ、電熱線18を5日間に亘り通電することによりこれを容易に実現することができる。
また、グラウト材25を5℃以上の保持するためには、シース21と鉄筋14との位置関係や、電熱線からの発熱量がより最適に調整されていることが必要となる。かる位置関係や発熱量の詳細は、以下に説明する解析モデルから特定することが可能となる。
先ず、解析モデルとして、図5に示すようにコンクリート69中に三箇所に亘り配設された電熱線81,82,83の中央にシース21が設けられている2次元温度解析モデルを考える。この解析モデルでは、コンクリート69中における熱の移動が、コンクリート69内部における熱伝導と、コンクリート69と大気との間における熱伝達に支配されることに着目したものである。
コンクリート69の熱特性値が温度の影響を受けないと仮定した場合に、コンクリート69内部の熱の支配方程式は、以下の式1)式で表すことができる。
Figure 2006159447
ここで熱拡散率hは以下で表される。
=λ/(C・ρ
なお、上記式1)において、Tは、コンクリート69の温度であり、λは、コンクリート69の熱伝導率であり、ρは、コンクリート69の密度であり、Cは、コンクリート69の比熱であり、Q(t)は、任意時間tにおける発熱体温度である。
これらの式1)を解くためは、初期条件と環境条件を設定する必要がある。初期条件は、以下の式2)により表される。この初期条件は、コンクリート温度を示すものである。
(x、y、0)=Tc0・・・・・・・・・・・・・・・・・・式2)
コンクリート69が外気や他の流体と接する部分においては、熱伝達境界として次式3)が成り立つ。この式3)において、コンクリート−空気の熱伝達率をαCとし、外気温もしくは外部の流体温度をTとしている。
Figure 2006159447
これらを離散化することにより、FEM解析を行う。
この解析モデルにおいて、コンクリート69の物性値として以下の値を用いる。即ち、コンクリート69において、設計基準強度は、40N/mmであり、初期温度は23℃であり、熱伝導率λは2.8W/m℃であり、密度ρは、2400kg/mであり、比熱Cは1.15kJ/kg℃である。また、この解析モデルにおいて、上下端に設定された熱伝達境界C1は、15mm/℃であり、左右端に設定された熱伝達境界C2は、6W/mm℃である。
このような解析モデルに基づき、電熱線81,82,83の温度を50℃とし、外気音を22℃とした場合における温度分布を図6に示す。電熱線81,82,83からの距離が大きくなるにつれて温度が徐々に低くなる傾向が示されている。また、この図6に示す温度分布からシース21の中心における温度を解析した結果、図7に示すように、33℃程度になることが分かる。
ちなみに、今回の解析モデルと同様の実験系を構築し、電熱線81,82,83の温度を50℃として設定したところ、図7に示すように31℃付近に落ち着くことが分かった。このため、今回の解析モデルは、実験系と比較して3℃前後までのずれがあるもののほぼ同一の傾向を示していることが分かる。このため、この解析モデルに基づいて解析した電熱線81,82,83とシース21の位置関係や電熱線81,82,83の発熱量を、実際の電熱養生構造に適用し得ることも立証することができる。
ここで、上記解析モデルを用いて、外気温を−5℃に設定し、電熱線81,82,83の温度を同様に50℃した場合における温度分布を図8に示す。外気温が氷点下に設定されている場合においてもシース21の温度を18℃付近に維持することができることが分かる。このため、上述の如き解析モデルにおける電熱線81,82,83とシース21の位置関係、並びに電熱線81,82,83の発熱量を実現することにより、グラウト材25の充填を寒中において実行する場合においても、かかるグラウト材25の凍結するのを防止することが可能となることが分かる。
なお、この図8に示す温度分布においては、電熱線81,82,83の外延の比較的広い範囲において、温度が5℃以上になることが分かる。このため、電熱線81,82,83につき、シース21から離れた箇所に配設した場合においても、シース21内の温度を5℃以上にすることができることが分かる。
なお、本発明を適用した橋桁1では、打設されたコンクリート69中にバイブレータ58を上方から挿入する工程において、以下に説明するような効果を奏する。図9に示すように、バイブレータ58の先端は、鉄筋14に対して上方から挿入されてくる。その結果、バイブレータ58の先端と鉄筋14とが衝突する場合があり、また互いに擦れたりする場合もある。このため、鉄筋14の上部に沿って電熱線18を設ける構成、或いは鉄筋14の側部に沿って電熱線18を設ける構成においては、かかる挿入されたバイブレータ58の先端と接触してしまい、電熱線18自身が切断されてしまう可能性がある。
これに対して、橋桁1では、あくまで鉄筋14の下部に沿って電熱線18を設けているため、図9に示すようにバイブレータ58の先端が位置A、位置Bにくる場合においてもこれとの接触を回避することができる。また、仮にバイブレータ58の先端が位置Cに示すように斜め方向から挿入される場合においても、電熱線18との接触を高い確率で回避することが可能となる。
特にこの電熱線18は、鉄筋14よりも細い外径からなるように構成されていることから、バイブレータ58の先端に接触する確率をいきおい下げること可能となる。
ちなみに、電熱線18は、鉄筋14の下部中央に沿って直線状に設けることにより、バイブレータ58の先端との接触を最も高い確率で回避することができる。但し、この電熱線18の配設可能な範囲は、かかる鉄筋14の下部中央に限定されるものではなく、図9中太線D〜D´の範囲で示される鉄筋14の下半周としてもよい。かかる場合には、鉄筋14の下部は、鉄筋14の下半周とみなされることになる。また、電熱線18は直線状となるように設けられる場合に限定されるものではなく、上述した配設可能な範囲内において蛇行するように設けられていてもよい。
なお、上述した実施の形態においては、あくまでバイブレータ58をコンクリート69の上方から下方に向かって挿入される場合を想定して説明をしたが、これと異なる方向からバイブレータ58を挿入しなければならないケースにおいては、バイブレータ58の先端も鉄筋14に対して上方以外の側方や下方等から挿入されてくる場合もあり得る。このため、かかるケースが想定される箇所の鉄筋14に対しては、バイブレータ58の挿入方向に応じて電熱線18の配設位置を鉄筋14の下部以外となるように予め調整させるようにしてもよい。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば以下に説明するような棚筋を備える橋桁2に適用してもよい。
図10(a)は、かかる橋桁2の断面図を示しており、図10(b)は、橋桁2に配置されているシース周辺の拡大図を示している。この図10において上述した図1に示す橋桁1と同一の構成要素や部材については、同一の番号を付すことによりここでの説明を省略する。
橋桁2は、部材軸方向に伸びるシース22を支持するとともに鉄筋14c,14dと交差して固着されてなる棚筋61aと、鉄筋14a,14bのみと交差して固着されてなる棚筋61bとをさらに備えている。これら棚筋61a,61bは、脚柱11の内側面に適宜の間隔で配設されている。
このような構成においても、PC鋼材22とシース21とにより生成される間隙に対して上述したグラウト材25を充填する際に、電熱線18を通電することにより鉄筋14を加熱することができ、少なくとも1の鉄筋14a〜14dからの熱は、直接的にシース21へ伝導することになり、或いは棚筋61を介してシース21へ伝導することになる。その結果、グラウト材25の充填時においてシース21は、温められることになり、寒中における作業時においてグラウト材25が凍結するのを防止することが可能となる。
なお、本発明を適用したプレストレスコンクリート部材は、橋桁1,2に配設される場合に限定されるものではなく、少なくともコンクリートにより構成されるものであれば、他のいかなる構造に適用してもよいことは勿論である。
本発明を適用した橋桁の構成につき示す図である。 橋桁に配設されるシース並びに鉄筋の斜視図である。 橋桁に配設されるシース並びに鉄筋の断面図である。 PC鋼材を脚柱の底面により近接させてこれを水平に配置する例につき示す図である。 温度分布の解析モデルにつき説明するための図である。 電熱線の温度を50℃とし、外気音を22℃とした場合における温度分布を示す図である。 温度分布の解析結果につき説明するための図である。 外気温を−5℃に設定した場合における温度分布を示す図である。 本発明の効果につき説明するための図である。 本発明を適用した橋桁における他の構成につき示す図である。 従来技術の問題点につき説明するための図である。
符号の説明
1,2 橋桁
11 脚柱
12 スラブ
13 枠型鉄筋
14 鉄筋
18 電熱線
21 シース
22 PC鋼材
25 グラウト材
31 上側傾斜鉄筋
32 上端側部縦鉄筋
33 上端横鉄筋
34 上端側部縦鉄筋
35 上側傾斜鉄筋
36,37 中間縦鉄筋
38 下側横鉄筋
41 溝
58 バイブレータ
61 棚筋
69 コンクリート

Claims (4)

  1. コンクリート中に埋設されたシース内にPC鋼材が挿通され、前記PC鋼材の緊張によりプレストレスが導入された後に、前記シース内にグラウト材が充填されるプレストレスコンクリート部材の電熱養生構造において、
    前記シースに対して略平行な鉄筋が配設されているとともに、当該鉄筋の下部に沿って電熱線が設けられること
    を特徴とするプレストレスコンクリート部材の電熱養生構造。
  2. 前記シース内に充填されたグラウト材が5℃以上となるように前記電熱線からの発熱量並びに前記シースに対する前記鉄筋の配置が調整されていること
    を特徴とする請求項1記載のプレストレスコンクリート部材の電熱養生構造。
  3. 前記電熱線は、前記鉄筋の下部中央に沿って直線状に設けられ、又は前記鉄筋の下部中央に形成された嵌合溝に対して長手方向に連続して嵌合されてなること
    を特徴とする請求項1又は2記載のプレストレスコンクリート部材の電熱養生構造。
  4. コンクリート中に埋設されるシース内にPC鋼材を挿通し、前記PC鋼材の緊張に基づくプレストレスが導入された後に前記シース内にグラウト材を充填するプレストレスコンクリート部材の電熱養生方法において、
    前記シースに対して略平行な鉄筋を予め配設するとともに、電熱線を前記鉄筋の下部に沿って設け、
    前記シース内にグラウト材を充填する際に、前記電熱線を通電することにより前記鉄筋を加熱すること
    を特徴とするプレストレスコンクリート部材の電熱養生方法。
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