以下、本発明の燃料噴射装置を、ガソリンエンジンに燃料を噴射するものに適用して、具体化した実施形態を図面に従って説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係わる燃料噴射弁と燃焼室の間を遮蔽する遮蔽機構周りを示す模式的部分横断面図である。図2は、本実施形態の燃料噴射装置の内燃機関への装着状態を示す模式的縦断面図である。図3は、図1中の遮蔽機構を示す模式図である。図4は、図3中の遮蔽機構の動作状態の過程を示す模式図であって、図4(a)は連通孔を閉塞する遮蔽状態を、図4(b)は連通孔を開放する開放状態を示す図である。図5は、本実施形態の燃焼噴射装置および内燃機関の作動状態を示す模式図であって、図5(a)は内燃機関への燃料噴射状態、図5(b)は内燃機関の着火および燃焼状態を示す図である。なお、図14は、本実施形態に適用する燃料噴射弁の一実施例を示す断面図である。
図2に示すように、燃料噴射装置1は、内燃機関100、特にガソリンエンジンに用いられ、例えば多気筒(例えば4気筒)ガソリンエンジン(以下、エンジンと呼ぶ)100の各気筒に燃料を噴射する。図3に示すように、エンジン100は、シリンダブロック101と、シリンダヘッド102と、ピストン104と、シリンダブロック(以下、シリンダと呼ぶ)101の内周壁、ピストン104、およびシリンダヘッド102の天井内壁とで区画される燃焼室106と、燃料に着火する点火プラグ等の点火装置105とを備える周知の内燃機関である。なお、ピストン104のシリンダ101内周壁内における往復運動はコンロッド(図示せず)を介してクランクシャフト(図示せず)の連続回転運動に変換される。燃焼室106は、ピストン104の往復移動により容積が増減する。なお、ここで、図1および図2では、図面作図上、4気筒のうちの1気筒のみを示しており、図9では、図2に示す気筒に設けられる燃料噴射弁を示している。
シリンダヘッド102は、図2に示すように、図示しない吸気管に接続し、吸入吸気が導かれる吸気ポート102iと、図示しない排気管に接続し、排気を排出する排気ポート102eとを備えている。図2に示すように、吸気弁(以下、吸気バルブと呼ぶ)107は、吸気ポート102iの内壁に着座、および離座することで、吸気ポート102iに導かれた吸入空気または燃料と空気の混合気の燃焼室104への流れを遮断、および許容する。なお、詳しくは、図2に示すように、吸気バルブ107は、例えば図示しない吸気カムシャフトにより往復移動する軸部と、軸部に固定され、吸気ポート102iの内壁(詳しくは内壁のシート部)102isに着座および離座するフェイス部107aとを有しており、吸気バルブ107の移動するバルブリフト量に応じて、シート部107isとフェイス部107aの間に所定の隙間が形成される。また、排気弁(以下、排気バルブと呼ぶ)109は、同様に、図示しない排気カムシャフトにより往復移動する軸部と、軸部に固定され、排気ポート102eの内壁(詳しくは内壁のシート部)102esに着座および離座するフェイス部109aとを有しており、例えば離座することで開弁し、吸気バルブ109の移動するバルブリフト量に応じて、シート部102esとフェイス部109aの間に所定の隙間が形成される。
なお、吸気バルブ107、吸気カムシャフト、排気バルブ109、および排気カムシャフトは、周知構造の駆動弁装置であればいずれの構造であってもよい。駆動弁装置は、例えばエンジン100の吸気行程において吸気バルブ107を開弁し、排気バルブ109を閉弁する。また、圧縮行程および燃焼行程では、吸気バルブ107および排気バルブ109を開弁する。なお、吸気バルブ107および排気バルブ109は、1気筒に各2つ配置されるものでも、各1つ配置されるものであってもよい。
なお、以下に説明するエンジン100は、燃焼室106内に燃料を直接噴射されるガソリン直噴エンジンとする。なお、燃料噴射弁2から噴射される燃料は、燃焼室106、特にピストン104の頂部に形成されるキャビティ104aに向けて噴射される。
燃料噴射装置1は、燃料の噴射を行なう燃料噴射弁2と、燃焼中の火炎もしくは燃焼ガスから燃料噴射弁2を保護する遮蔽機構3とを含んで構成されている。
燃料噴射弁2は、図2に示すように、シリンダヘッド102の吸気ポート102i側に設けられている。なお詳しくは、吸気バルブ107のうち、フェイス部107aに近い側の吸気ポート102i側に設けられている。吸気ポート102i側には、燃焼室106に連通する連通孔102jが形成されており、連通孔102jは、燃料噴射弁2の弁部Bが燃焼室106に向かって装着可能である(図1および図2参照)。なお、燃料噴射弁2のエンジン100への搭載位置は、上記シリンダヘッド102の吸気ポート102i側に設けるようないわゆる斜め搭載に限らず、シリンダヘッド102の燃焼室106に対する壁面の略中央に設けるいわゆるセンター搭載であってもよく、排気ポート102e側に設けるように搭載するものなど、いずれの搭載位置であってもよい。
燃料噴射弁2は、図示しない燃料ポンプにより加圧された燃料が、燃料分配管(図示せず)を介して供給される。燃料噴射弁2は図14の一実施例に示すように略円筒形状であり、一端から燃料を受け、他端から燃料を噴射する。燃料噴射弁2は、燃料の噴射および噴射停止する弁部Bと、弁部Bを駆動する電磁駆動部Sとを含んで構成されている。燃料噴射弁2の一端側の燃料入口部には内部に内孔が形成されており、燃料噴射弁10内の弁部Bへ燃料を供給する内部燃料通路と連通している。内孔にはフィルタ(図示せず)が取付けられており、異物が除去される。なお、エンジン100が直噴用エンジンの場合には、燃料噴射弁2は気筒の燃焼室106に燃料を直接噴射供給する。この場合、燃焼室106へ供給する燃料の圧力を約2MPa以上とするために、燃料ポンプによって燃料タンクから吸上げられた所定の低圧(例えば0.2MPa)の燃料を、図示しない高圧ポンプでさらに加圧し、この加圧された所定の高圧の燃料(例えば、2〜13MPaの範囲内の所定圧の燃料)が、燃料分配管を介して燃料噴射弁2に供給される。燃料ポンプから吐出される燃料、高圧ポンプからさらに加圧されて吐出される燃料は、それぞれ図示しない燃料調圧装置としてのプレッシャレギュレータによって所定の圧力に調圧されている。
弁部Bは、図14に示すように、弁ボディ12と、ノズルニードル30と、ハウジング16とを含んで構成されている。弁ボディ12はハウジング(以下、弁ハウジングと呼ぶ)16の燃料噴射側端部の内壁に溶接により固定されている。弁ボディ12は燃料流れ方向の噴孔21側に向けて縮径する内周面としての円錐面13を有している。円錐面13には、ノズルニードル30が離座および着座可能である。なお、ここで、円錐面13は、ノズルニードル30が離座および着座可能な弁座14を構成する。具体的には、弁座14には、ノズルニードル30の当接部31が離座および着座する。ノズルニードル30は略軸状に形成され、弁ボディ12内を軸方向に往復移動可能である。なお、ここで、弁座14と当接部31は、弁部が燃料の噴射を停止するための油密機能の働きをするシート部を構成している。
弁座の中央側には、図14に示すように、弁座14の燃料流れの下流側に向って、内部燃料通路と連通可能な噴孔21が配置されている。この噴孔21は、要求される燃料の噴霧の形状、方向、数などに応じて、その大きさ、噴孔軸線の方向、噴孔配列等が決定される。また、噴孔の開口面積は、開弁時の流量を規定する。なお、燃料噴射弁2の燃料噴射量は、開弁している噴孔の開口面積と、ノズルニードル30のリフト量と、開弁期間とによって計量されている。ノズルニードル30が弁座14に着座すると噴孔21からの燃料の噴射が遮断され、ノズルニードル30が弁座14から離座すると噴孔21から燃料が噴射される。
電磁駆動部Sは、図14に示すように、筒部材40、可動コア(以下、アーマチャと呼ぶ)50、固定コア(以下、吸引部材と呼ぶ)54、コイル60、および圧縮スプリング58とを有する。筒部材40は、弁ハウジング16の反噴孔側の内周壁に挿入され、溶接により弁ハウジング16に固定されている。また、筒部材40は、噴孔21側から第1磁性筒部42、非磁性筒部44、および第2磁性筒部46により構成されている。非磁性筒部44は第1磁性筒部42と第2磁性筒部46との磁気的短絡を防止する。この磁気的短絡防止により、コイル60の通電により発生する電磁力による磁束を、アーマチャ50と吸引部材54に効率的に流れるようにしている。アーマチャ50は磁性材料で略円筒状に形成されており、ノズルニードル30の反噴孔側の端部34と溶接により固定されている。アーマチャ50はノズルニードル30とともに往復移動する。アーマチャ50の筒壁を貫通する流出孔52は、アーマチャ50の筒内外を連通する燃料通路を形成している。吸引部材54は磁性材料で略円筒状に形成されている。吸引部材54は筒部材40内に挿入されており、筒部材40と溶接により固定されている。吸引部材54はアーマチュア50に対し反噴孔側に設置されアーマチャア50に向きあっている。アジャスティングパイプ56は吸引部材54の内周に圧入され、内部に燃料通路を形成している。スプリング58は一端部でアジャスティングパイプ56に係止され、他端部でアーマチャ50に係止されている。アジャスティングパイプ56の圧入量を調整することにより、アーマチャ50に付勢するスプリング58の荷重が変更される。スプリング58の付勢力によりアーマチャ50およびノズルニードル30は弁座14に向けて付勢されている。コイル60はスプール62に巻回されている。ターミナル65はコネクタ64にインサート成形されており、コイル60と電気的に接続している。コイル60に通電すると、アーマチャ50と吸引部材54との間に磁気吸引力が働き、スプリング58の付勢力に抗してアーマチャ50は吸引部材54側に吸引される。
なお、ここで、弁ボディ12とノズルニードル30とは弁部Bを構成する。弁部Bのうち、弁座14と当接部31はシート部を構成する。噴孔21は燃料を微粒化し、噴霧を形成する燃料噴霧形成手段を構成する。上述の構成を有する燃料噴射弁2は、コネクタ64からコイル60に供給する電流を制御することでノズルニードル30のリフトを制御し、前記燃料通路に流入した燃料を弁部Bからエンジン100の気筒に噴射する。燃料噴射弁2は、ノズルニードル30を着座方向に付勢するスプリング58を有しており、コイルへ60の電流供給の停止時には、弁部Bが閉弁して噴射を終了する。
遮蔽機構3は、図1、図2に示すように、連通孔102jを閉塞および開放する遮蔽部材3aと、遮蔽部材3aを駆動する駆動装置3bとを備えている。詳しくは、図3に示すように、遮蔽部材3aは、略軸状に形成されており、噴弁孔102jにほぼ直交する駆動孔102k内に、往復移動可能に収容されている。図3に示すように、遮蔽部材3aの先端部は、略半円状に形成され、連通孔102jの内周と当接することで、連通孔102を閉塞する(図4(a)参照)。なお、遮蔽部材3aの往復移動の範囲としては、図4(a)に示す連通孔102jを閉塞する閉塞位置と、図4(b)に示す連通孔102jを開口する開口位置とを往復動するものであれば、いずれの往復移動範囲であってもよい。
駆動装置3bは、連通孔102jを閉塞する閉塞位置と、連通孔102jを開口する開口位置とを切換える切換手段を有する。この様な切換え手段を有するものであれば、遮蔽部材3aをどのように駆動するものであってもよい。なお、本実施例では、駆動装置3bは、閉塞位置(図4(a)参照)と、開口位置(図4(b)参照)との間を図3に示す矢印方向に往復動する軸方向駆動可能なもの(以下、軸方向駆動装置と呼ぶ)である。詳しくは、駆動装置3bは、遮蔽部材3aと協働する可動コア3baと、可動コア3baを磁気吸引力で駆動するコイル3bcとからなる周知構造の電磁駆動装置(以下、ソレノイドと呼ぶ)である。なお、駆動装置3bは、ソレノイド3b、3bcによる駆動など電気駆動に限らず、例えばエンジン100に使用するオイルあるいはエアなどの作動流体の一部を用い、作動流体の膨張、圧縮を利用した流体駆動によるオイルシリンダなどの軸方向駆動装置であってもよい。
なお、ここで、駆動装置3bは、燃料噴射弁2の弁部B等が装着されている連通孔102jを閉塞および開放する切換手段を構成する。
制御手段としてのECU90は、図示しないリードオンリメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、マイクロプロセッサ(CPU)、入力ポート、出力ポートを相互に双方向性バスで接続した公知の構成のマイクロコンピュータとして構成されている。このECU90は、バッテリ等の電源を用いて、燃料噴射弁2のターミナル65への通電開始および通電停止を行なうことで、燃料噴射弁2への通電期間を制御する。エンジン100の回転速度、吸気管圧力(または吸入空気量)、冷却水温等のエンジンの運転状態を検出する図示しない各種センサの信号91、92、93、94、95、96を読み込み、エンジン用の各種プログラム(図示せず)に従って、燃料噴射弁2の電磁駆動部Sの動作を制御する。なお、詳しくは、クランクシャフトの回転状態に応じて720°CA毎にパルス信号を出力する基準位置センサ91と、より細かなクランク角毎(例えば、30°CA毎)にパルス信号を出力する回転角センサ92とが設けられている。シリンダ101(ウォータジャケット)などには、冷却水温を検出するための水温センサ93が配設されている。吸気管には、吸入空気流量を検出するエアフローメータ94などが配設されている。排気管には、排ガス中の酸素濃度等に比例し、空燃比信号を出力する空燃比センサなどが設けられている。また、運転者の要求等を検出するためのアクセルペダルセンサ95、スロットル開度センサ96等が設けられている。
なお、本実施形態では、ECU90は、遮蔽機構3の遮蔽部材3aの軸方向往復動位置を、エンジン100の運転状態に応じて変更する。エンジン100の運転状態は、各種信号91〜96、特に信号91および信号92に基づいてエンジン100の燃焼サイクルにおける吸気行程、圧縮行程、および燃焼行程の各過程を検出する。なお、ピストン104の位置(詳しくは上死点位置から下死点位置までの間の位置)を直接または間接的に検出するものであってもよい。ECU90は、各種センサから検出したエンジン100の運転状態に応じて遮蔽機構3を駆動制御して連通孔102jの閉塞および開放タイミングを制御する。そして、検出した運転状態に基づいて燃焼状態にある前に遮蔽機構3の駆動装置3bを駆動制御し、燃焼時には燃料噴射弁2と燃焼室106との間を遮蔽するようにする。
なお、ここで、ECU90は、上記プログラムで実行する機能を主な手段で示すと、燃料噴射弁2の噴射動作を制御する燃料噴射制御手段と、点火装置105の点火動作を制御する点火制御手段と、遮蔽機構3(詳しくは遮蔽部材3a)における閉塞位置と開口位置間の往復動作を制御する遮蔽部材制御手段とから構成されている。
次に、上述した構成を有する本実施形態の燃料噴射装置1の作動を説明する。車両のエンジンキーをIG位置にして、図示しないイグニッションスイッチがオン(ON)すると、燃料ポンプが駆動され、燃料タンク内に燃料が燃料ポンプにより吸い上げられる。吸い上げられた燃料は、プレッシャレギュレータにより調圧され、所定の低圧燃料が高圧ポンプへ供給される。高圧ポンプによって所定の低圧燃料は加圧され、加圧された燃料が燃料分配管へ供給される。燃料分配管へ供給された燃料は、プレッシャレギュレータにより所定の高圧燃料に調圧されて、燃料分配管内の各分配口から燃料噴射弁2へ供給される。
(燃料噴射弁2の動作)
燃料噴射弁2の燃料噴射時には、燃料噴射弁2のコイル60に電流が供給され、ノズルニードル30が開始すると、弁部Bは開弁され燃料の噴射を開始する。このとき、遮蔽機構3(詳しくは遮蔽部材3a)は連通孔102jを開放しており連通孔102jが開口しているので、噴射した燃料は、図5(a)に示すように、噴孔21から連通孔102jを経由して燃焼室106へ供給される。一方、燃料噴射停止時には、コイル60への電流供給が停止され、スプリング58によりノズルニードル30のリフトが減少する。そして、ノズルニードル30が弁座14に着座すると、噴射が終了する。コイル60への通電期間を調節することにより、燃料噴射弁2から噴射される燃料(燃料噴霧)の噴射期間つまり燃料噴射量が調節される(図5(a)参照)。
(燃料噴射装置1、特に遮蔽機構3の作動と、エンジン100の燃焼サイクル過程、特に着火および燃焼行程の作動関係)
エンジン100の着火および燃焼行程では、遮蔽機構3(詳しくは遮蔽部材3a)は連通孔102jを閉塞している。その結果、燃料噴射弁2の噴孔21を含む弁部Bは、燃焼室106から隔離されているので、燃焼中の火炎もしくは燃焼ガスの噴孔21への被曝を防止することができる(図5(b)参照)。一方、エンジン100(詳しくは燃焼室106)への燃料噴射状態では、遮蔽機構3(詳しくは遮蔽部材3a)は連通孔102jを開放しており連通孔102jが開口されているので、噴孔21から燃焼室106に向かって燃料が供給される(図5(a)参照)。
なお、エンジン100の燃焼サイクル過程において、遮蔽機構3を駆動動作させて連通孔102jを閉塞する期間(以下、連通孔102jの閉塞期間と呼ぶ)は、着火および燃焼行程に限らず、圧縮行程などの他の行程であってもよい。なお、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、および排気行程中の期間のうち、燃料噴射弁2から燃焼室106に向かって燃料を噴射供給する噴射期間を除く他の期間を、連通孔102jの閉塞期間とすることが好ましい。これにより、噴孔21は、燃焼時における火炎および燃焼ガスの直接被曝が防止されるとともに、未燃燃料などを含む燃焼ガスが着火および燃焼後も燃焼室106に滞留している場合において滞留する残留燃焼ガスによる間接被曝が防止または抑制される。なお、この場合、ECU90は、エンジン100の運転状態に基づいて燃料噴射弁2の噴射開始時期および噴射期間を算出し、燃料噴射弁2の開閉を駆動制御するとともに、噴射開始時期および噴射期間の情報に基づいて遮蔽機構3の閉塞位置、開口位置を駆動制御する。
次に、本実施形態の作用効果を説明すると、(1)本実施形態では、燃料噴射弁2と燃焼室106との間を燃焼時に遮蔽する遮蔽部材3aが設けられている。これにより、エンジン100の燃焼時に燃焼室106内で発生する火炎もしくは未燃燃料などを含む燃焼ガスを遮蔽部材3aによって遮蔽し、火炎および燃焼ガスから燃料噴射弁2を保護することができる。したがって、燃料噴射弁2の噴孔21などの噴射部でのデポジットの生成および付着を防止または抑制することができる。
(2)噴孔は、一般に、要求される燃料の噴霧の形状、方向、および数などに応じて、その大きさ、噴孔の軸線の方向、噴孔の配列などが決定されている。燃焼時の火炎等の被曝により噴孔にデポジットが付着すると、要求される噴霧形状等の燃料噴射特性が損なわれるおそれがある。例えば噴孔は燃料(噴霧)の微粒化を促進するために、噴孔の大きさが微細な孔に形成されている。
これに対して、本実施形態では、噴孔21が弁部Bもしくはその先端部側つまり燃料噴射弁2の先端側に設けられているものであったとしても、遮蔽部材3aは、常に燃焼室106と噴孔21の間を燃焼時において遮蔽し、燃焼時の火炎および燃焼ガスから噴孔21を確実に隔離することができる。
(3)なお、本実形態では、気筒内(詳しくはシリンダヘッド102)には、燃料噴射弁2と燃焼室106を連通する連通孔102jが形成されており、遮蔽部材3aは、燃料噴射弁2の弁部B等が装着されている連通孔102jを閉塞および開放する駆動装置3bを備えている。これにより、駆動装置3bによる遮蔽部材3aの閉塞、開放動作によって、燃料噴射弁2から燃料を噴射する燃料噴射時には連通孔102jを開放する開放状態と、燃焼室106内の燃焼時には連通孔102jを閉塞する遮蔽状態を、エンジン100の運転状態に応じて切換えられる。したがって、燃焼噴射装置1(詳しくは燃料噴射弁2)の燃料噴射機能と、デポジットが噴孔21等の噴射部に生成もしくは付着するのを防止する防止機能とを、効果的に両立させることが可能である。
(4)なお、駆動装置3bは、具体的には、図3に示すソレノイド3b、3bcによる駆動など電気駆動に限らず、例えばエンジン100に使用するオイルあるいはエアなどの作動流体の一部を用い、作動流体の膨張、圧縮を利用した流体駆動によるオイルシリンダなどの軸方向駆動装置で構成することができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明を適用した他の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態においては、第1の実施形態と同じもしくは均等の構成には同一の符号を付し、説明を繰返さない。
第2実施形態では、第1の実施形態で説明した遮蔽機構3において、閉塞位置と開口位置の間で遮蔽部材3aを軸方向に往復移動する軸方向駆動装置3bに代えて、図6に示すように、遮蔽部材203aを回転方向に往復移動する回転方向駆動装置203bとする。図6は、本実施形態に係わる遮蔽機構を示す模式図である。図7は、図6中の遮蔽機構の動作状態の過程を示す模式図であって、図7(a)は連通孔を閉塞する遮蔽状態を、図7(b)は連通孔を開放する開放状態を示す図である。
図6に示すように、遮蔽機構203は、噴射弁102jを閉塞および開放する遮蔽部材203aと、遮蔽部材3aを駆動する駆動装置203bとを有している。
図6に示すように、遮蔽部材203aは、略平板状に形成されており、噴弁孔102jの外側から内部に向かって周方向にほぼ直交する駆動溝(図示せず)内に、往復移動可能に収容されている。図6に示すように、遮蔽部材203aの先端部は、略半円状に形成され、連通孔102jの内周と当接することで、連通孔102jを閉塞する(図7(a)参照)。なお、遮蔽部材203aの往復移動の範囲としては、図5(a)に示す連通孔102jを閉塞する閉塞位置と、図7(b)に示す連通孔102jを開口する開口位置とを往復動するものであれば、いずれの往復移動範囲であってもよい。
駆動装置203bは、図7(a)および図7(b)に示すように、連通孔102jを閉塞する閉塞位置と、連通孔102jを開口する開口位置と間を回転方向に往復動する軸方向駆動可能なものである。なお、具体的には、遮蔽部材203aを例えばカムなどの回転体として用い、その回転体を図5(a)に示す閉塞位置と図5(b)に示す開口位置とを回転方向に移動する回転駆動装置である。
以上説明した本実施形態は、上記の様な遮蔽機構203を有する構成であっても、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1の実施形態で説明した遮蔽機構3において、遮蔽部材3aと遮蔽部材3aを駆動する駆動装置3bを有するものに代えて、図8(a)および図8(b)に示すように、燃焼室106内部のピストン104側に設ける遮蔽部材303とする。図8は、本実施形態の燃料噴射装置の内燃機関への装着状態を示す模式的図であって、図8(a)は縦断面図、図8(b)は部分横断面図である。図9は、本実施形態に係わる燃料噴射および点火の動作を制御する制御処理を示すフローチャートである。図10は、本実施形態の燃焼噴射装置および内燃機関の作動状態を示す模式図であって、図10(a)は内燃機関への燃料噴射状態、図10(b)は内燃機関の着火および燃焼状態を示す図である。
図8(a)に示すように、燃料噴射弁2は連通孔102jに装着されている。詳しくは燃料噴射弁2の先端部側つまり弁部Bの一部が燃焼室106内に僅かに突出している。なお、連通孔102jへの燃料噴射弁2の装着状態としては、弁部Bの一部が燃焼室106内に僅かに突出している場合に限らず、連通孔102j内を弁部Bなどの噴射部でほぼ埋めつくされている場合であってもよい。
図8(b)に示すように、遮蔽部材303は、噴孔21等を含む弁部Bの外周を覆うことが可能なように、ピストン104の頂部側から燃焼室106に向かって延出されている。詳しくは、遮蔽部材303は、弁部Bの外周に沿って半円筒状(図8(b)参照)に形成されている。また、遮蔽部材303は、弁部Bとキャビティ104aとの間に配置されている。
燃焼室106に向かって延出されている遮蔽部材303の延出高さは、吸気行程などにおいて燃料噴射弁2の噴孔21から噴射される燃料(噴霧)の流れを阻害しない程度の高さに形成されている。なお、ピストン104の位置が略上死点位置にあるときには、遮蔽部材303により燃料噴射弁2の弁部Bは確実に覆われている。本実施形態では、例えば第1の実施形態の遮蔽機構3のように遮蔽部材3aを独立して駆動可能な駆動装置3bを設ける必要がないので、燃焼時の火炎および燃焼ガス等から、燃料噴射弁2の噴孔21などの噴射部を遮蔽して保護する手段を、簡素に構成することができる。
なお、ここで、遮蔽部材303が燃料噴射弁2の弁部B等の噴射部を覆っている状態を遮蔽状態と呼ぶ。また、遮蔽部材303が燃料噴射弁2の弁部B等の噴射部を覆っておらず、燃料噴射弁2の噴孔21からの燃料の噴射が可能な状態を開放状態と呼ぶ。
次に上述した構成を有する本実施形態に係わる燃料噴射および点火制御の制御方法について、図9に従って説明する。図9に示すように、S501(Sはステップ)では、エンジン100などに取付けられたエンジン100の運転状態を検出するための各種センサ91、92、93、94、95、96からの信号をECU90に読み込む。ECU90は、読み込んだ各種センサ91、92からの信号によりエンジン100の燃焼サイクルの過程うちの吸気行程を検出し、S502へ移行する。
なお、ECU90は、読み込んだ各種センサ91、92、94、95、96からの信号によりエンジン100の運転状態を検出し、運転状態に最適な燃料噴射量を決定する。最適燃料噴射量から燃料噴射弁2の噴射期間が算出される。
S502からS504の制御処理では、ピストン104が下死点位置側にあるときには、燃料噴射弁2の弁部B等噴射部が遮蔽部材303によって覆われておらず開放状態にあることを推定または確認し、燃料噴射弁2からの燃料噴射を実行する(図10(a)参照)。詳しくは、S502では、ピストン104位置が下死点位置側にあるか否かを判定する。ピストン104位置が下死点位置側にあるならば、S503へ移行し、逆にピストン104位置が下死点位置側にないならば、ピストン104位置が下死点位置側になるまでS502の判定を繰返す。なお、ECU90は、センサ91、92に基づいて1燃焼サイクル中の吸気行程に対応するクランク角度が認識することが可能であるため、センサ91、92から求めたクランク角度に応じてピストン位置を推定できる。なお、ピストン位置は、ピストン104の位置を非接触などによる検出センサを用いて直接検出するようにしてもよい。
S503では、S502でピストン104位置が下死点位置側にあると判断されると、遮蔽部材303により燃料噴射弁2が開放状態であるか否かを判定する。クランク角度からピストン104位置を推定し遮蔽部材303が弁部B等の噴射部を覆っていないならば、燃料噴射弁2が開放状態にあると判断し、S504へ移行する。逆に推定したピストン104位置から遮蔽部材303が弁部B等の噴射部を覆っているならば、燃料噴射弁2が遮蔽状態にあると判断し、燃料噴射弁2が開放状態にあると判断されるまでS503の判定を繰返す。
S504では、S502からS503の制御処理にてピストン104が下死点位置側にあり、燃料噴射弁2の弁部B等の噴射部が開放状態にあることを推定または確認されると、ECU90は、燃料噴射弁2からの燃料噴射を実行し、S505へ移行する。
S505からS506の制御処理では、S504で燃料噴射弁2の燃料噴射を開始し、所定の噴射期間が経過すると、燃料噴射弁2からの燃料の噴射を停止させる。このとき、エンジン100の運転状態に要求される燃料噴射量に相当する燃料が燃料噴射弁2から噴射されたことを確認する。詳しくは、S505では、燃料噴射弁2からの燃料噴射を実行中において、ピストン104位置が上昇を継続していることを確認し、S506へ移行する。
S506では、燃料噴射弁2からの燃料噴射が停止されているか否かを判定する。燃料噴射が停止されているならば、S507へ移行する。逆に燃料噴射が継続されているならば、燃料噴射が停止されるまでS506の判定を繰返す。
S507からS509の制御処理では、ピストン104がほぼ上死点位置にあるときに、点火装置105の点火を実行する(図10(b)参照)。詳しくは、S507では、ピストン104位置がほぼ上死点位置にあるか否かを判定する。ピストン104位置がほぼ上死点位置にあるならば、S508へ移行する。逆にピストン104位置がほぼ上死点位置にないならば、ピストン104位置がほぼ上死点位置に到達するまでS507の判定を繰返す。
S508では、S507でピストン104位置がほぼ上死点位置にあると判断されると、遮蔽部材303により燃料噴射弁2が遮蔽状態であるか否かを判定する。遮蔽部材303が弁部B等の噴射部を覆っているならば、燃料噴射弁2が遮蔽状態にあると判断し、S509へ移行する。逆に遮蔽部材303が弁部B等の噴射部を覆っていないならば、遮蔽部材303が弁部B等の噴射部を覆う状態になるまでS508の判定を繰返す。
S509では、S507およびS508の制御処理にてピストン104がほぼ上死点位置にあり、燃料噴射弁2の弁部B等の噴射部が遮蔽状態にあることを推定または確認されると、ECU90は、点火装置105の点火を実行し、S510へ移行する。このとき、点火装置105の点火により燃料が着火される。燃料噴射弁2の弁部B等の噴射部が遮蔽状態にあるので、燃焼時の火炎および燃焼ガスから弁部B等の噴射部が保護される。したがって、燃焼時の火炎および燃焼ガスにより弁部B等の噴射部が直接被曝されるのを防止または抑制する。その結果、燃焼時の火炎および燃焼ガスの被曝により弁部B等の噴射部にデポジットが生成または付着するのを防止または抑制することができる。
S510では、ピストン位置がさらに下死点側に下降され、遮蔽部材303により燃料噴射弁2が開放され、S511では、排気バルブ109が開弁され、燃焼室106内の燃焼ガスが排気ポート102を通じて排気される。
なお、ここで、ECU90は、燃料噴射制御手段と、点火制御手段と、ピストン104位置、またはエンジン100の燃焼サイクル過程としての吸気、圧縮および燃焼行程の各過程を検出する検出手段とから構成されている。
以上説明した本実施形態では、ピストン104には、燃焼室106に向かって燃料を噴射する燃料噴射弁2の弁部B等の噴射部を燃焼時に覆うように、燃焼室106内に延出されている遮蔽部材303が設けられている。
これにより、燃料噴射弁2がエンジン100の気筒に装着される方法、特に連通孔102jへの燃料噴射弁2の装着状態として、弁部Bの一部が燃焼室106内に僅かに突出している場合、あるいは連通孔102j内を弁部Bなどの噴射部でほぼ埋めつくされている場合などにおいて、デポジット生成もしくは付着の可能性が比較的高い燃焼時に、燃料噴射弁2の弁部B等の噴射部を、ピストン104から延出する遮蔽部材303で覆おうことにより、火炎もしくは燃焼ガスの直接被曝の防止が図れる。したがって、燃料噴射弁2の噴孔21などの噴射部へのデポジットの生成および付着を防止または抑制することができる。
なお、本実施形態では、ECU90は、燃料噴射弁2の噴射動作を制御する燃料噴射制御手段と、点火装置105の点火動作を制御する点火制御手段と、ピストン104位置またはエンジン100の吸気、圧縮および燃焼行程の各過程を検出する検出手段とを有しているので、ECU90により、ピストン104が下死点位置側にあるときには燃料噴射弁2からの燃料噴射を実行させ、ピストン104が略上死点位置にあるときに点火装置105の点火を実行させるようにすることができる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、第1の実施形態で説明した遮蔽機構において、連通孔102jを機械的に遮蔽する遮蔽機構3に代えて、図11に示すように、連通孔102j内に気体を噴射供給する遮蔽機構403とする。図11は、本実施形態の燃料噴射装置の内燃機関への装着状態を示す模式的縦断面図である。図12は、本実施形態に係わる燃料噴射および点火の動作を制御する制御処理を示すフローチャートである。図13は、本実施形態の燃焼噴射装置および内燃機関の作動状態を示す模式図であって、図12(a)は内燃機関への燃料噴射状態、図13(b)は内燃機関の着火および燃焼状態を示す図である。なお、図12において、第3の実施形態で説明した制御処理と同じもしくは均等の構成には同一の符号を付している。
図11に示すように、遮蔽機構403は、連通孔102j内に高圧の気体を噴射する気体噴射装置とから構成されている。遮蔽機構403は、燃料噴射弁2と燃焼室106との間に高圧の気体を噴射する。遮蔽機構403は、気体を圧縮する圧縮ポンプ、あるいは高圧気体を貯蔵するガスタンク等の高圧気体の供給源404を有している。なお、ここで、遮蔽機構403は気体噴射装置の本体部を構成している。遮蔽機構403は、高圧気体の噴射の供給および停止をする周知構造の電磁弁を備えている。
遮蔽機構403から噴射する気体は、入手が容易な空気に限らず、窒素(N2)等の不活性ガスや燃焼室106から排出される排気、あるいは再循環排気などの気体状態の流体であればいずれのものであってもよい。なお、気体は、エンジン100の燃焼サイクルの排気行程で排気とともに排出される。
なお、本実施形態では、気体は、不活性ガス、酸素をほとんど含まない不活性ガス、および排気ガスもしくは再循環排気ガスのうち少なくともいずれかからなる気体で構成されていることが好ましい。これにより、燃焼ガスと燃焼反応する酸素を含む空気に比べて、前記ガスはデポジット生成の抑制が図れる。なお、前記ガスは燃焼状態への影響とならない噴射量と噴射圧力とする。
さらになお、遮蔽機構403から噴射する気体の圧力は、その噴射時に燃焼室内に生じる燃焼ガスの圧力以上の大きさであることが好ましい。これにより、遮蔽機構403から気体が噴射されると、その気体の圧力によって火炎および燃焼ガスを燃料噴射弁2(詳しくは噴孔21など噴射部)に近付けないようにすることができる。
さらになお、遮蔽機構403は、気体を噴射する際に、連通孔102j内に気体を充填するように噴射することが好ましい。これにより、遮蔽機構403から噴出される気体は、燃焼時に燃焼室106内で発生する火炎もしくは燃焼ガスから、燃料噴射弁2を分離するように連通孔102j内に充填させられる。したがって、連通孔内に充填され、形成される気体空間によって、火炎および燃焼ガスから燃料噴射弁が分離され、保護される。
次に上述した構成を有する本実施形態に係わる燃料噴射、および点火制御の制御方法について、図12に従って説明する。なお、第3の実施形態で説明した制御処理については説明を省略する。
図12に示すように、S603では、S502でピストン104位置が下死点位置側にあると判断されると、遮蔽機構403の気体の噴出動作により燃料噴射弁2を開放状態であるか否かを判定する。言い換えると遮蔽機構403の気体の噴出動作が停止しているか否かを判定する。なお、ここで、遮蔽機構403の気体の噴射動作中は、燃料噴射弁2の遮蔽状態と呼び、遮蔽機構403の気体の噴射停止中は、燃料噴射弁2の開放状態と呼ぶ。クランク角度からピストン104位置を推定し、遮蔽機構403の気体の噴出動作の停止状態にならば、燃料噴射弁2が開放状態にあると判断し、S504へ移行する。逆に推定したピストン104位置から推定し遮蔽機構403の気体の噴出動作中ならば、燃料噴射弁2が遮蔽状態にあると判断し、燃料噴射弁2が開放状態にあると判断されるまでS603の判定を繰返す。なお、S504では、S502およびS603の制御処理にてピストン104が下死点位置側にあり、燃料噴射弁2の弁部B等の噴射部が開放状態にあることを推定または確認されると、ECU90は、燃料噴射弁2からの燃料噴射を実行し、S505へ移行する。
S608では、S507でピストン104位置がほぼ上死点位置にあると判断されると、遮蔽機構403の気体の噴出動作により燃料噴射弁2を遮蔽状態であるか否かを判定する。言い換えると遮蔽機構403の気体の噴出動作により高圧気体が噴出されているか否かを判定する。クランク角度からピストン104位置を推定し、遮蔽機構403の気体の噴出動作中にならば、燃料噴射弁2が遮蔽状態にあると判断し、S509へ移行する。逆に推定したピストン104位置から推定し遮蔽機構403の気体の噴出動作の停止状態ならば、燃料噴射弁2が開放状態にあると判断し、燃料噴射弁2が遮蔽状態にあると判断されるまでS608の判定を繰返す。なお、S509では、S507およびS608の制御処理にてピストン104がほぼ上死点位置にあり、燃料噴射弁2の弁部B等の噴射部が遮蔽状態にあることを推定または確認されると、ECU90は、点火装置105の点火を実行し、S510へ移行する。なお、S510では、ピストン位置がさらに下死点側に下降され、遮蔽機構403の気体噴出動作の停止により燃料噴射弁2の遮蔽状態が解除される。
次に、本実施形態の作用効果を説明すると、(1)本実施形態では、遮蔽機構403は、燃料噴射弁2と燃焼室106との間に高圧の気体を噴射する機能を有するので、遮蔽機構403から噴出する気体によって燃料噴射弁2を燃焼室106から分離する気体空間を形成することが可能である。したがって、燃焼時に燃焼室106内で発生する火炎および燃焼ガスからその気体で燃料噴射弁2を保護することができる。
なお、その気体は、入手が容易な空気に限らず、窒素(N2)等の不活性ガスや燃焼室106から排出される排気、あるいは再循環排気などの気体状態の流体であればいずれのものであってもよい。
(2)なお、本実施形態では、気体は、不活性ガス、酸素をほとんど含まない不活性ガス、および排気ガスもしくは再循環排気ガスのうち少なくともいずれかからなる気体で構成されていることが好ましい。これにより、燃焼ガスと燃焼反応する酸素を含む空気に比べて、前記ガスはデポジット生成の抑制が図れる。また前記ガスは燃焼状態への影響とならない噴射量と噴射圧力とする。
(3)さらになお、遮蔽機構403は、気体を噴射する際に、連通孔102j内に気体を充填するように噴射することが好ましい。これにより、遮蔽機構403から噴出される気体は、燃焼時に燃焼室106内で発生する火炎もしくは燃焼ガスから、燃料噴射弁2を分離するように連通孔102j内に充填させられる。したがって、連通孔内に充填され、形成される気体空間によって、火炎および燃焼ガスから燃料噴射弁が分離され、保護される。
(4)さらになお、遮蔽機構403から噴射する気体の圧力は、その噴射時に燃焼室内に生じる燃焼ガスの圧力以上の大きさであることが好ましい。これにより、遮蔽機構403から気体が噴射されると、その気体の圧力によって火炎および燃焼ガスを燃料噴射弁2(詳しくは噴孔21など噴射部)に近付けないようにすることができる。
(他の実施形態)
なお、以上説明した第1、第2および第4の実施形態において、遮蔽機構3、403は、エンジン100の運転期間のうち、燃料噴射弁2から燃焼室106に向けて燃料を噴射する燃料噴射期間以外の他の全期間において、燃料噴射弁2を保護することが好ましい。一般に、エンジン100の運転状態において、減速時等のエンジンブレーキを利かせたい運転状態や全気筒のうち特定気筒の運転を休止するいわゆる減筒運転状態などの運転状態では、燃焼サイクル中であっても燃料噴射弁2の燃料噴射動作を停止させたい場合がある。これに対してこの様に構成するものでは、燃料噴射期間以外の他の全期間において、燃料噴射弁2を遮蔽機構3、403により保護するので、燃焼時に生じた火炎や燃焼ガスが燃焼室106内に残留する場合があったとしても、火炎や燃焼ガスから燃料噴射弁2を保護することことができる。
なお、以上説明した第1から第4の実施形態では、燃料の噴射および噴射停止する弁部Bと、弁部Bの先端側に設けられ、弁部Bの開閉動作により開閉される噴孔21とを有する構成で説明したが、噴孔21を有するものに限らず、いわゆる外開弁の弁部から噴射されるように構成されているものであってもよい。この場合、外開弁の弁部では、弁部自体が噴射部を構成する。
なお、以上説明した第1から第4の実施形態では、弁ボディ12の弁座14の下流側に噴孔21が配置される構成で説明したが、弁ボデイと、噴孔プレート20とを有するものであってもよい。なお、この場合、噴孔プレートは略有底筒状に形成されており、例えば弁ハウジング16の底部と弁ボディ12の底部との間に挟持されている。噴孔プレートには複数の噴孔21が配置されている。噴孔プレートは燃料を微粒化し、噴霧を形成する燃料噴霧形成手段を構成する。
なお、以上説明した第4の実施形態において、S510では、ピストン位置がさらに下死点側に下降され、遮蔽機構403の気体噴出動作の停止により燃料噴射弁2の遮蔽状態が解除されるように構成したが、S510ではピストン位置がさらに下死点側に下降され、S511にて排気バルブ109が開弁され、燃料室106内の燃焼ガスが排気ポート102eを排気されるとき、遮蔽機構403の気体噴出動作の停止により燃料噴射弁2の遮蔽状態が解除されるようにしてもよい。
なお、以上説明した第3の実施形態において、S510では、ピストン位置がさらに下死点側に下降され、遮蔽部材303により燃料噴射弁2が開放されように構成したが、S510ではピストン位置がさらに下死点側に下降され、S511にて排気バルブ109が開弁され、燃料室106内の燃焼ガスが排気ポート102eを排気されるとき、遮蔽部材303により燃料噴射弁2が開放されようにする場合があってもよい。