JP2006152851A - ブローバイガス還元装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ブローバイガスから分離したオイルをオイル溜まり部へ効率良く回収することが可能なブローバイガス還元装置を提供する。
【解決手段】 ブローバイガスからオイルを分離するためのオイルセパレータ9を備えたPCV装置8に対し、分離後のオイルを回収するためのオイル回収孔91cをオイルセパレータ9内におけるブローバイガス流路の最下流端の下端部に形成する。また、オイルが分離された後のブローバイガスをエンジンの吸気系へ送るためのブローバイガス排出孔91bをオイルセパレータ9内におけるブローバイガス流路の最下流端の上端部に形成する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、例えば自動車用エンジン(内燃機関)のブローバイガス中に含まれるオイルミスト(霧状となったエンジンオイル等)を分離し、このオイル分離後のブローバイガスをエンジンの吸気系へ送るブローバイガス還元装置(以下、PCV(Positive Crankcase
Ventilation)装置という)に係る。特に、本発明は、上記分離したオイルがエンジンの吸気系へ流れ込んでしまうことを防止するための対策に関する。
従来より、自動車用エンジンには、シリンダとピストンとの隙間からクランクケース内に吹き抜けたブローバイガスを吸気系に導くためのPCV装置が備えられている。つまり、このPCV装置によって、一酸化炭素や炭化水素等を含むブローバイガスを燃焼室に向けて再度送り込み、このブローバイガスの大気中への放出を防止している。
また、下記の特許文献1にも開示されているように、このPCV装置は、オイルセパレータを備えている。このオイルセパレータによってブローバイガス中に含まれているオイルミストが分離され、このオイルがオイルパン等のオイル溜まり部へ送られる一方、オイルミストが分離除去された後のブローバイガスはエンジンの吸気系に還流されるようになっている。
尚、上記オイルセパレータの配置形態としては、特許文献1に開示されているようにエンジンのシリンダヘッドカバー(以下、単にヘッドカバーという)の内部に配置されるものや、特許文献2に開示されているようにヘッドカバーの外部(例えばV型エンジンにおける左右の各バンクの間)に配置されるものが知られている。
図8は、エンジンのヘッドカバー内部に配置される一般的なオイルセパレータaの内部構成の概略を示す断面図である。この図において、エンジンが直列型である場合には図中の上側が鉛直上方となる。また、V型である場合には図中の上側が相手方バンク側となる。つまり、この図8がシリンダの軸線に沿った方向から見た図となる。
この図8に示すように、オイルセパレータaは、セパレータケーシングb内に複数のバッフルプレートc1,c2,…が配置された構成となっている。また、セパレータケーシングbの一端側(図中左側)の側面には、図示しないシリンダブロックに形成されたブローバイガス通路によってクランクケース内部と連通するブローバイガス導入孔dが形成されている。一方、セパレータケーシングbの他端側(図中右側)の側面には、図示しないブローバイガス供給通路によってエンジンの吸気系と連通するブローバイガス排出孔eが形成されている。
上記バッフルプレートc1,c2の配置形態としては、セパレータケーシングbの下面から上方に延びてセパレータケーシングbの上面との間にガス通路を形成するロアバッフルプレートc1,c1,c1と、セパレータケーシングbの上面から下方に延びてセパレータケーシングbの下面との間にガス通路を形成するアッパバッフルプレートc2,c2とが、上記ブローバイガス導入孔dからブローバイガス排出孔eに亘って所定間隔を存して交互に配置されている。これによりセパレータケーシングb内に迷路状のガス通路fが形成され、図8に実線の矢印で示すように、ブローバイガス導入孔dからブローバイガス排出孔eに向けてブローバイガスがガス通路fを流れていく間に所謂慣性衝突作用によってオイルミストが各バッフルプレートc1,c2により捕捉されるようになっている。
また、セパレータケーシングbの底部の複数箇所には、バッフルプレートc1,c2によって捕捉されて流下または滴下したオイルを図示しないオイルパンに向けて排出するためのオイル回収孔g,gが形成されている。各オイル回収孔g,gの形成位置は、オイル回収(図8に破線で示す矢印参照)が円滑に行えるように、バッフルプレートc1,c2に対応した位置に設定されている。具体的には、例えば図8に示すように上記アッパバッフルプレートc2,c2の下方位置に設定されていたり、ロアバッフルプレートc1,c1,c1の下端近傍位置に設定されている。
尚、オイルセパレータとしては、上記バッフルプレートc1,c2に代えて、セパレータケーシング内に複数枚のパンチングメタルプレートを配設したものも知られており、この場合にも、オイル回収孔の形成位置はパンチングメタルプレートの下端近傍位置に設定されている。
実開昭61−39423号公報 実公平8−5298号公報
上述したように、従来のオイルセパレータaでは、各オイル回収孔g,gの形成位置がバッフルプレートc1,c2に対応した位置に設定されているため、バッフルプレートc1,c2によって捕捉されたオイルがそのままオイル回収孔g,gに向けて流下または滴下した場合には、このオイルを容易に回収することが可能である。
しかしながら、セパレータケーシングbの内部ではブローバイガスが比較的高速度で流れているため、バッフルプレートc1,c2によって捕捉されたオイルが、このブローバイガスの流れの影響を受けてオイル回収孔g,gの形成位置に流れ込まない場合がある。これでは、セパレータケーシングbの底部にオイルが溜まってしまい、その量が多くなった場合には、オイルの一部がブローバイガス排出孔eからエンジンの吸気系に流れ出てしまう可能性がある。図8では、このセパレータケーシングbの底部の一部にオイルhが溜まった状態(ブローバイガスの流れによってガス通路fの最下流部分にオイルhが押し流された状態)を仮想線で示し、このオイルhが吸気系に流れ出てしまう状態を仮想線の矢印で示している。
このように、従来のオイルセパレータaにあっては、ブローバイガスから分離されたオイルが、再びブローバイガスの流れに沿ってミスト状となりエンジンの吸気系に流れ出てしまうといった不具合を招く可能性があった。
また、従来のオイルセパレータaでは、オイル回収孔g,gの形成位置がバッフルプレートc1,c2に対応した位置に設定されているため、このオイル回収孔g,gはセパレータケーシングbの底部の略中央付近に形成されることになる。一方、エンジンのヘッドカバー内部に配置されるオイルセパレータaにあっては、その下側にカムシャフトが配置されることになる。このような状況では、カムシャフトの回転に伴って飛散されるカムシャフト潤滑用のオイルがオイル回収孔g,gからセパレータケーシングbの内部に入り込む可能性があり、これによってもセパレータケーシングbの底部にオイルが溜まりやすい状況となって、このオイルの一部がブローバイガス排出孔eからエンジンの吸気系に流れ出てしまう虞がある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ブローバイガスから分離したオイルをオイル溜まり部へ効率良く回収することが可能なブローバイガス還元装置を提供することにある。
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決手段は、ブローバイガス中に含まれるオイルミストを分離した後、このブローバイガスを内燃機関の吸気系へ送ると共に、分離したオイルを内燃機関のオイル溜まり部側へ送るブローバイガス還元装置を前提とする。このブローバイガス還元装置に対し、内部にブローバイガス流路を有し、このブローバイガス流路に沿ってブローバイガスが流れる間にオイルミストを分離するオイルセパレータを備えさせる。そして、このオイルセパレータ内におけるブローバイガス流路の最下流端の下端部に、分離後のオイルをオイル溜まり部側へ送るためのオイル回収孔を形成している。尚、上記オイル溜まり部は、内燃機関のクランクケース、オイルパン、その他、内燃機関においてオイルが溜まる部位であればよい。
この特定事項により、クランクケース内から回収されたブローバイガスは、オイルセパレータに導入され、このオイルセパレータ内に設けられたブローバイガス流路に沿って流れる間にオイルミストが分離される。この分離のための手法としては例えばバッフルプレートを使用した慣性衝突作用を利用するものが適用可能である。オイルが分離除去された後のブローバイガスは内燃機関の吸気系へ送られ、燃焼室内で燃焼されることになる。これによって、ブローバイガスの大気中への放出が防止される。一方、オイルセパレータ内で分離されたオイルは、オイルセパレータ内を流れるブローバイガスの流れの影響を受けて、オイルセパレータ内におけるブローバイガス流路の最下流端まで押し流されることになる。そして、この最下流端の下端部にはオイル回収孔が形成されているため、オイルはこのオイル回収孔に容易に流れ込んでオイル溜まり部へ送られる。このように、本解決手段では、ブローバイガスから分離されたオイルを、ブローバイガスの流れを利用してオイル回収孔に導くことが可能であるので、オイルセパレータの底部に大量のオイルが溜まってしまうといった状況が回避できる。その結果、オイルセパレータ内に溜まったオイルの一部がブローバイガスと共にエンジンの吸気系に流れ出てしまうことを防止できる。
また、オイル回収孔の形成位置はブローバイガス流路の最下流端、つまり、オイルセパレータの一端部であるため、このオイルセパレータがヘッドカバーの内部に配置された場合であってもオイル回収孔がカムシャフトに対面する構成とはなり難い。このため、カムシャフトの回転によって飛散されるカムシャフト潤滑用のオイルがオイル回収孔からオイルセパレータの内部に入り込む可能性も低くなる。従って、これによってもオイルセパレータ内に多量のオイルが溜まってしまうといった状況を回避することができ、エンジンの吸気系へのオイルの流出が防止できる。
また、オイルが分離された後のブローバイガスを内燃機関の吸気系へ送るためのブローバイガス排出孔の形成位置としては、オイルセパレータ内におけるブローバイガス流路の最下流端の上端部に設定している。
これによれば、オイルセパレータ内におけるブローバイガス流路の最下流端までブローバイガスの流れ(動圧)を分離後のオイルに作用させることができ、このオイルを確実にオイル回収孔に導くことが可能になる。このため、オイル回収性能を良好に発揮することができると共に、オイルセパレータの内部空間の全体を有効に利用したオイル分離機能を発揮させることもできる。
また、上記オイル回収孔及びブローバイガス排出孔の形成箇所としてはそれぞれ1箇所のみとしている。
このようにオイル回収孔及びブローバイガス排出孔の個数を必要最小限に抑えることで、ブローバイガス中に含まれているオイル以外のオイル(例えば上述したカムシャフトの回転によって飛散されるカムシャフト潤滑用のオイル)がオイルセパレータ内に入り込む
ことを抑制できると共に、ブローバイガスが内燃機関の吸気系以外の空間に流れ出てしまうといったことも抑制できる。特に、ブローバイガスがカム室に流れ出た場合にはオイルの劣化が進むことになるが、オイル回収孔は1箇所のみであるため、このオイル回収孔からのブローバイガスの流出は殆ど無く、オイルの劣化を回避することができる。
オイルセパレータのより具体的な構成としては以下のものが掲げられる。先ず、オイルセパレータを、ブローバイガス導入孔及びオイル回収孔が形成されたセパレータケーシング内にオイル捕捉手段が配置された構成とする。そして、上記ブローバイガス導入孔の形成箇所からオイル回収孔の形成箇所に亘って、セパレータケーシング内の底面とオイル捕捉手段との間に間隙を形成している。
これによれば、捕捉手段によって捕捉されてブローバイガスから分離したオイルは捕捉手段からセパレータケーシング内の底面に滴下することになる。そして、ブローバイガス導入孔の形成箇所からオイル回収孔の形成箇所に亘って、セパレータケーシング内の底面とオイル捕捉手段との間に間隙が形成されているため、この隙間がブローバイガスの一部が流れる流路となり、この流路を流れるブローバイガスによってセパレータケーシング底面上のオイルはオイル回収孔に向けて押し流される。つまり、セパレータケーシングの底面にはオイル捕捉手段が存在しないため、オイルの流れを阻害するものが無く、このオイルは迅速にオイル回収孔に導かれることになる。これより、オイルの回収を高効率で行うことができる。
また、オイルセパレータを、ブローバイガス導入孔及びオイル回収孔が形成されたセパレータケーシング内にオイル捕捉手段が配置された構成とし、上記オイル回収孔を、ブローバイガス流路の最下流端におけるセパレータケーシングの側壁面に形成している。
これによれば、オイルセパレータがヘッドカバーの内部に配置された場合であっても、カムシャフトとオイル回収孔とが対面することがなくなる。つまり、カムシャフトの回転によって上向きに飛散されるカムシャフト潤滑用のオイルは、セパレータケーシングの下面に当たるのみであって、側壁面に形成されているオイル回収孔からセパレータケーシング内に入り込むことはなく、このセパレータケーシング内へのオイル浸入が効果的に阻止できる。
本発明では、ブローバイガスからオイルを分離するためのオイルセパレータを備えたブローバイガス還元装置に対し、分離後のオイルを回収するためのオイル回収孔をオイルセパレータ内におけるブローバイガス流路の最下流端の下端部に形成している。このため、ブローバイガスから分離されたオイルを、ブローバイガスの流れを利用してオイル回収孔に導くことが可能となる。その結果、オイルセパレータの底部に大量のオイルが溜まってしまうといった状況が回避でき、オイルセパレータ内に溜まったオイルの一部がブローバイガスと共にエンジンの吸気系に流れ出てしまうことを防止可能なブローバイガス還元装置を提供できる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、本発明に係るPCV装置(ブローバイガス還元装置)を自動車用V型エンジン(内燃機関)に適用した場合について説明する。
−エンジンの全体構成の説明−
図1は、本実施形態に係るV型エンジンEをクランク軸Cの軸心に沿った方向から見た外観図である。また、図2は、本実施形態に係るV型エンジンEの内部の概略構成を示す
断面図である。
これら図に示すように、V型エンジンEは、シリンダブロック1の上方にV型に突出した一対のバンク2A,2Bを有している。各バンク2A,2Bは、シリンダブロック1の上端部に設置されたシリンダヘッド3,3と、その上端に結合されたヘッドカバー4,4とをそれぞれ備えている。上記シリンダブロック1には複数のシリンダ5,5,…(例えば各バンク2A,2Bに3個ずつ)が所定の挟み角をもって配設されており、これらシリンダ5,5,…の内部にピストン51,51,…が往復移動可能に収容されている。また、各ピストン51,51,…はコネクティングロッド52,52,…を介してクランク軸Cに動力伝達可能に連結されている。更に、シリンダブロック1の下側にはクランクケース6が取り付けられており、このクランクケース6の内部空間がクランク室61となっている。また、このクランクケース6の更に下側にはオイル溜まり部となるオイルパン11が配設されている。
また、上記シリンダヘッド3,3には吸気ポート31を開閉するための吸気バルブ32及び排気ポート33を開閉するための排気バルブ34がそれぞれ組み付けられており、シリンダヘッド3,3とヘッドカバー4,4との間に形成されているカム室41,41に配置されたカムシャフト35,36の回転によって各バルブ32,34の開閉動作が行われるようになっている。
一方、上記各バンク2A,2Bの内側(バンク間側)の上部には各バンク2A,2Bに対応する吸気マニホールド7,7が配設されており、各吸気マニホールド7,7の下流端が各吸気ポート31,31,…に連通している。これら吸気マニホールド7,7にはインジェクタ71,71が備えられている。尚、排気マニホールドについては図では省略しているが、この排気マニホールドの上流端が各排気ポート33,33,…に連通している。
このように構成されたV型エンジンEが、車両前方部のボンネットの下方のエンジンルーム内に、車両に対して横置きまたは縦置きに配置されている。つまり、横置き配置の場合には、一方のバンク2Aが前方バンクとなり他方のバンク2Bが後方バンクとなる。また、縦置き配置の場合には、一方のバンク2Aが右バンクとなり他方のバンク2Bが左バンクとなる。
−PCV装置の説明−
上記V型エンジンEは、シリンダ5の内面とピストン51の外面との隙間からクランク室61内に吹き抜けたブローバイガスを吸気系に導くためのPCV装置8,8を備えている。これらPCV装置8,8は、各バンク2A,2Bに個別に設けられている。
上記PCV装置8,8は、クランク室61内に吹き抜けたブローバイガスを抜き出すためのブローバイガス通路81,81、このブローバイガス通路81,81によって抜き出されたブローバイガスからオイルミストを分離するためのオイルセパレータ9,9、このオイルセパレータ9,9からブローバイガスを吸気系に導くためのブローバイガス供給配管82,82を備えている。以下、それぞれについて説明する。
(ブローバイガス通路81)
上記ブローバイガス通路81,81は、シリンダブロック1からシリンダヘッド3,3に亘って各バンク2A,2Bそれぞれに形成されており、これによってクランク室61とカム室41とが連通している。つまり、ブローバイガス回収時には、このブローバイガス通路81,81によってクランク室61内のブローバイガスがカム室41,41に導入されるようになっている。また、このブローバイガス通路81,81の形成位置は、各バンク2A,2Bにおけるシリンダ5,5,…の形成位置よりも外側(図2の左右方向外側)
となっている。
(オイルセパレータ9)
次に、本形態の特徴とする部材であるオイルセパレータ9,9について説明する。各バンク2A,2Bに備えられているオイルセパレータ9,9は互いに対称な構成となっている。ここでは一方のバンク2AのPCV装置8に備えられたオイルセパレータ9を代表して説明する。
図3は、V型エンジンEの一方のバンク2Aのヘッドカバー4の周辺部を示す斜視図であって、ヘッドカバー4を実線で示し、シリンダヘッド3,3及びシリンダブロック1を仮想線で示し、オイルセパレータ9を破線で示している。また、図4は、図2におけるIV-IV線に沿った断面図、つまり、オイルセパレータ9の内部をシリンダ5の軸線に沿って
上方から見た図である。
これらの図に示すように、オイルセパレータ9はヘッドカバー4の内面(下側の面)に取り付けられており、セパレータケーシング91と、このセパレータケーシング91内に配置された複数のバッフルプレート(オイル捕捉手段)92a〜92dとにより構成されている。
上記セパレータケーシング91は、一端側が開放された金属製で略直方体形状の箱形部材であって、この開放側がヘッドカバー4の内面に取り付けられることによって、このヘッドカバー4との間で略密閉されたセパレータ室(ブローバイガス流路)93を形成している。このセパレータケーシング91のヘッドカバー4の内面に対する取り付け手段としてはボルト止め等が掲げられる。尚、ここでは、セパレータケーシング91とヘッドカバー4の内面とによってセパレータ室93を形成しているが、セパレータケーシング91のみによってセパレータ室93を形成する構成としてもよい。
そして、このセパレータケーシング91には、ブローバイガス導入孔91a、ブローバイガス排出孔91b、オイル回収孔91cがそれぞれ1箇所のみに形成されている。以下、各孔について説明する。
ブローバイガス導入孔91aは、セパレータケーシング91の長手方向(ヘッドカバー4に取り付けられた状態での気筒配列方向:図3に矢印Aで示す方向)の一方側の側面9A(図2における奥側の面)に形成されており、セパレータケーシング91の内部空間である上記セパレータ室93とカム室41とを連通するものである。更に、その形成位置としては、セパレータケーシング91の側面9Aにおける鉛直下端位置に設定されている。つまり、セパレータケーシング91を図2の裏側から見た斜視図である図5(a)からも明らかなように、セパレータケーシング91はバンク2Aの傾斜角度分だけ傾斜配置されているため、その下端コーナ部分にブローバイガス導入孔91aは形成されている。
ブローバイガス排出孔91bは、セパレータケーシング91の長手方向(ヘッドカバー4に取り付けられた状態での気筒配列方向)の他方側の側面(側壁面)9B(図2における手前側の面)に形成されており、上記ブローバイガス供給配管82が接続されている。つまり、このブローバイガス排出孔91bはブローバイガス供給配管82を介してセパレータ室93とエンジンEの吸気系とを連通するものである。このブローバイガス排出孔91bの形成位置としては、セパレータケーシング91の側面9Bにおける鉛直上端位置に設定されている。つまり、セパレータケーシング91を図2の表側から見た斜視図である図5(b)からも明らかなように、セパレータケーシング91はバンク2Aの傾斜角度分だけ傾斜配置されているため、その上端コーナ部分にブローバイガス排出孔91bは形成されている。
オイル回収孔91cは、セパレータケーシング91の長手方向(ヘッドカバー4Aに取り付けられた状態での気筒配列方向)の他方側の側面9B(図2における手前側の面)に形成されており、上記セパレータ室93とカム室41とを連通するものである。その形成位置としては、セパレータケーシング91の側面9Bにおける鉛直下端位置に設定されている。つまり、図5(b)からも明らかなように、セパレータケーシング91はバンク2Aの傾斜角度分だけ傾斜配置されているため、その下端コーナ部分にオイル回収孔91cは形成されている。従って、このセパレータケーシング91の側面9Bでは、その上端コーナ部分にブローバイガス排出孔91bが、下端コーナ部分にオイル回収孔91cがそれぞれ形成されていることになる。
次に、上記セパレータケーシング91内に配置された複数のバッフルプレート92a〜92dについて説明する。本形態に係るオイルセパレータ9は、セパレータケーシング91内に第1〜第4の4枚のバッフルプレート92a〜92dが配置されている。各バッフルプレート92a〜92dは、セパレータ室93の上面を構成する面(図4における手前側の面であってヘッドカバー4の内面)及びセパレータ室93の下面を構成する面(図4における奥側の面であってセパレータケーシング91におけるシリンダヘッド4側の面)に亘って配置されている。以下、各バッフルプレート92a〜92dの形状について説明する。
第1バッフルプレート92aは、上記ブローバイガス導入孔91aの近傍に配置されており、図4中においてブローバイガス導入孔91aの形成位置の僅かに上側位置から水平方向に延びた後、セパレータケーシング91の下側の傾斜内面(セパレータケーシング91におけるバンク外側の側面であってバンク2Aの傾斜角度分だけ傾斜した内面:以下、下側傾斜内面という)94に向かって傾斜した形状となっている。また、この第1バッフルプレート92aの傾斜部分の下端はセパレータケーシング91の下側傾斜内面94よりも僅かに上方位置に設定されている。つまり、この傾斜部分の下端とセパレータケーシング91の下側傾斜内面94との間でブローバイガスの流通が可能となっている。
第2バッフルプレート92bは、上記第1バッフルプレート92aの傾斜部分との間に所定間隔を存した位置に配設され、且つこの傾斜部分と略平行に延びている。また、この第2バッフルプレート92bは、その上端がセパレータケーシング91の上側の傾斜内面(セパレータケーシング91におけるバンク内側の側面であってバンク2Aの傾斜角度分だけ傾斜した内面:以下、上側傾斜内面という)95よりも僅かに下方位置に設定され、且つその下端がセパレータケーシング91の下側傾斜内面94よりも僅かに上方位置に設定されている。つまり、この第2バッフルプレート92bの下側部分においてもセパレータケーシング91の下側傾斜内面94に沿ってブローバイガスの流通が可能となっている。
第3バッフルプレート92cは、上記第2バッフルプレート92bとの間に所定間隔を存した位置に配設され、且つこの第2バッフルプレート92bと略平行に延びている。また、この第3バッフルプレート92cは、その上端がセパレータケーシング91の上側傾斜内面95に接続されている一方、その下端がセパレータケーシング91の下側傾斜内面94よりも上方位置に設定されている。つまり、この第3バッフルプレート92cの下側部分においてもセパレータケーシング91の下側傾斜内面94に沿ってブローバイガスの流通が可能となっている。
第4バッフルプレート92dは、上記第3バッフルプレート92cの下端部との間に所定間隔を存した位置において略鉛直方向に延びている。また、この第4バッフルプレート92dは、その上端がセパレータケーシング91の上側傾斜内面95よりも僅かに下方位
置に設定され、且つその下端がセパレータケーシング91の下側傾斜内面94よりも僅かに上方位置に設定されている。つまり、この第4バッフルプレート92dの下側部分においてもセパレータケーシング91の下側傾斜内面94に沿ってブローバイガスの流通が可能となっている。尚、これらバッフルプレート92a〜92dによって案内されるブローバイガスの流れについては後述する。また、オイルセパレータ9の容量、各孔91a,91b,91cの開口寸法、バッフルプレート92a〜92dの形状や配設枚数は、V型エンジンEの排気量やブローバイガスの発生量等に適したブローバイガス回収能力が発揮できるように適宜設計される。
−PCV装置8の動作説明−
次に、上述の如く構成されたPCV装置8の動作について説明する。各バンク2A,2Bにそれぞれ設けられたPCV装置8,8は、エンジンの負荷状態に応じて動作が異なっている。具体的には、一方のバンク2Aに設けられているPCV装置8のブローバイガス排出孔91bの近傍にはPCVバルブ83が備えられている一方、他方のバンク2Bに設けられているPCV装置8はPCVバルブを備えていない。また、上記PCVバルブ83を備えている一方のPCV装置8のブローバイガス供給配管82は吸気系のスロットル弁下流の吸気通路に接続されている一方、PCVバルブを備えていない他方のPCV装置8のブローバイガス供給配管82は吸気系のスロットル弁上流の吸気通路に接続されている。
そして、V型エンジンEの低負荷時(スロットル開度が小さいとき)には、クランク室61から上記一方のバンク2Aのカム室41に導かれたブローバイガスがオイルセパレータ9を経た後、ブローバイガス供給配管82を流れてスロットル弁下流の吸気通路へ導出されると共に、他方のPCV装置8のブローバイガス供給配管82から上記他方のバンク2Bのカム室41及びブローバイガス通路81を通ってクランク室61に新気が導入されることによりクランク室61の換気が行われる。一方、クランク室61内のブローバイガス量が増大する高負荷時(スロットル開度が大きいとき)には、両バンク2A,2Bのカム室41,41にブローバイガスが導かれて、このブローバイガスが各オイルセパレータ9,9を経た後、ブローバイガス供給配管82,82を流れて吸気通路へ導出されることになる。
次に、ブローバイガスを吸気通路へ導出する際の動作について詳細に説明する。V型エンジンEの圧縮行程や膨張行程においてシリンダ5とピストン51との隙間からクランク室61内に吹き抜けたブローバイガスは、ブローバイガス通路81を経てカム室41に流れ込み、このカム室41からブローバイガス導入孔91aを経てオイルセパレータ9の内部に流れ込む。このオイルセパレータ9の内部であるセパレータ室93に流れ込んだブローバイガスは、ブローバイガス排出孔91bに向けて流れることになるが、その際、以下のように流れてオイルが分離される。
つまり、セパレータ室93に流れ込んだブローバイガスは、図4に実線の矢印で示すように、先ず、第1バッフルプレート92aによってセパレータケーシング91の下側傾斜内面94に向けてガイドされた後、この第1バッフルプレート92aの下端部において、セパレータケーシング91の下側傾斜内面94に沿う流れと、第2バッフルプレート92bの上端に向かう流れとに分流される(図中a,b)。第2バッフルプレート92bの上端に向かう流れは、この第2バッフルプレート92bの上端において下向きに反転され(図中c)、第3バッフルプレート92cの下端に向かう流れとなり、その後、第4バッフルプレート92dの側面に衝突する。この衝突によってブローバイガスは第4バッフルプレート92dにガイドされて下向きの流れ(図中d)と上向きの流れ(図中e)とに分流され、下向きの流れは、上記第1バッフルプレート92aによってセパレータケーシング91の下側傾斜内面94に向けてガイドされた流れ(図中a)と合流した後に、第4バッ
フルプレート92dの下側を通過してブローバイガス排出孔91bに向けて流れる(図中f)。一方、第4バッフルプレート92dに衝突してこの第4バッフルプレート92dにガイドされた上向きの流れ(図中e)は、第4バッフルプレート92dの上側を通過してブローバイガス排出孔91bに向かって流れる(図中g)。このとき、第4バッフルプレート92dの下側を通過してきたブローバイガス(図中f)と合流することになる。このようにして、ブローバイガスは各バッフルプレート92a〜92dに衝突しながら分流及び合流を繰り返すことにより、各バッフルプレート92a〜92dによって確実に捕捉され、このバッフルプレート92a〜92d上での捕捉量が所定量を上回った時点で自重によってセパレータケーシング91の底面94に滴下することになる。
このようにしてセパレータケーシング91の下側傾斜内面94にオイルが滴下することになるが、上述した如く、各バッフルプレート92a〜92dの下端とセパレータケーシング91の下側傾斜内面94との間にはブローバイガスの流通が可能な空間が形成されているため、オイルは、セパレータ室93を流れるブローバイガスの流れの影響を受けて、セパレータ室93の最下流端まで押し流されることになる。そして、この最下流端の下端部にはオイル回収孔91cが形成されているため、オイルはこのオイル回収孔91cに容易に流れ込んでオイルセパレータ9から落下し(図4に破線で示す矢印参照)、上記ブローバイガス通路81を流下してオイルパン11へ送られる。
このように、本実施形態では、オイルセパレータ9内においてブローバイガスから分離されたオイルを、ブローバイガスの流れを利用してオイル回収孔91cに導くことが可能であるので、オイルセパレータ9の底部に大量のオイルが溜まってしまうといった状況が回避できる。その結果、オイルセパレータ9内に溜まったオイルの一部がブローバイガスと共にV型エンジンEの吸気系に流れ出てしまうことを防止できる。
また、オイル回収孔91cの形成位置はブローバイガス流れ方向の最下流端、つまり、オイルセパレータ9の長手方向の一端部であり、しかもセパレータケーシング91の側面9Bとなっている。このため、オイル回収孔91cがカムシャフトに対面する構成ではなく、カムシャフト35,36の回転によって飛散されるカムシャフト潤滑用のオイルがオイル回収孔91cからオイルセパレータ9の内部に入り込む可能性は殆どなくなる。従って、これによってもオイルセパレータ9内に多量のオイルが溜まってしまうといった状況を回避することができ、V型エンジンEの吸気系へのオイルの流出が防止できる。
−その他の実施形態−
以上説明した実施形態は、本発明に係るPCV装置8を自動車用V型エンジンEに適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、自動車用直列型エンジン、自動車用水平対向型エンジン等に対しても適用可能である。また、自動車用に限らず、その他のエンジンにも適用可能である。また、気筒数、V型エンジンEにおけるシリンダ5,5の挟み角、その他エンジンEの仕様は特に限定されるものではない。
また、上述した実施形態では、ヘッドカバー4内部にオイルセパレータ9を設置したPCV装置8に本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、ヘッドカバーの外部(例えばV型エンジンにおける左右の各バンク間)にオイルセパレータを設置したPCV装置に対しても適用可能である。
また、バッフルプレート92a〜92dとしては、その表面にオイル吸着部材を適用してもよい。このオイル吸着部材は、ブローバイガスの衝突に伴いこのブローバイガス中のオイルミストを捕らえて漸次油滴状に成長させるものであり、例えばメッシュ状のコーティング膜やシート等が掲げられる。
更には、セパレータケーシング91内に配置されるオイル捕捉手段としては、上述したバッフルプレート92a〜92dに代えて、複数枚のパンチングメタルプレートやメッシュ状のプレートであってもよい。この場合も、図6に示すように、セパレータケーシング91の下側傾斜内面94と捕捉手段としてのプレート96,96,…の下端との間に間隙を設けておき、この部分をオイル流通空間として利用することが好ましい。この場合、ブローバイガスをプレート96,96,…に衝突させる必要から、ブローバイガス導入孔91aはセパレータケーシング91の側面9Aの上端部(図6参照)や中央部に形成しておくことが好ましい。
加えて、本発明に係るPCV装置8を直列型エンジンに適用する場合のオイルセパレータ9の構成として、オイル回収孔91cへのオイルの案内をより確実に行うために以下の構成を採用することが好ましい。
・図7(a)(オイルセパレータ9の側面図)に示すように、オイルセパレータ9の配置状態として、ブローバイガス流通方向の下流側に向かってセパレータケーシング91の底面94を下側に傾斜させる構成。
・図7(b)(オイルセパレータ9の正面図)に示すように、オイル回収孔91cをセパレータケーシング91の幅方向の一端側に形成した場合において、このオイル回収孔91cの形成位置に向かってセパレータケーシング91の底面94を下側に傾斜させる構成。
・図7(c)(オイルセパレータ9の正面図)に示すように、オイル回収孔91cをセパレータケーシング91の幅方向の中央部に形成した場合において、セパレータケーシング91の底面94を、その中央部に向かって下側に傾斜させる構成。
実施形態に係るV型エンジンをクランク軸の軸心に沿った方向から見た外観図である。 実施形態に係るV型エンジンの内部の概略構成を示す断面図である。 V型エンジンの一方のバンクのヘッドカバーの周辺部を示す斜視図である。 オイルセパレータの内部構成を示す図であって、図2におけるIV-IV線に沿った断面図である。 セパレータケーシングを示し、(a)はブローバイガス導入側から見た斜視図であり、(b)はブローバイガス排出側から見た斜視図である。 変形例における図4相当図である。 PCV装置を直列エンジンに適用する場合の変形例であって、(a)はオイルセパレータの側面図、(b),(c)はオイルセパレータの正面図である。 従来例におけるオイルセパレータの内部構成を示す断面図である。
符号の説明
8 PCV装置(ブローバイガス還元装置)
9 オイルセパレータ
91 セパレータケーシング
91a ブローバイガス導入孔
91b ブローバイガス排出孔
91c オイル回収孔
92a〜92d バッフルプレート(オイル捕捉手段)
93 セパレータ室(ブローバイガス流路)
94 底面
9B 側面(側壁面)
E V型エンジン(内燃機関)

Claims (5)

  1. ブローバイガス中に含まれるオイルミストを分離した後、このブローバイガスを内燃機関の吸気系へ送ると共に、分離したオイルを内燃機関のオイル溜まり部側へ送るブローバイガス還元装置において、
    内部にブローバイガス流路を有し、このブローバイガス流路に沿ってブローバイガスが流れる間にオイルミストを分離するオイルセパレータを備えており、
    このオイルセパレータ内におけるブローバイガス流路の最下流端の下端部に、分離後のオイルをオイル溜まり部側へ送るためのオイル回収孔が形成されていることを特徴とするブローバイガス還元装置。
  2. 上記請求項1記載のブローバイガス還元装置において、
    オイルが分離された後のブローバイガスを内燃機関の吸気系へ送るためのブローバイガス排出孔は、オイルセパレータ内におけるブローバイガス流路の最下流端の上端部に形成されていることを特徴とするブローバイガス還元装置。
  3. 上記請求項2記載のブローバイガス還元装置において、
    オイル回収孔及びブローバイガス排出孔の形成箇所はそれぞれ1箇所のみであることを特徴とするブローバイガス還元装置。
  4. 上記請求項1、2または3記載のブローバイガス還元装置において、
    オイルセパレータは、ブローバイガス導入孔及びオイル回収孔が形成されたセパレータケーシング内にオイル捕捉手段が配置された構成となっており、
    上記ブローバイガス導入孔の形成箇所からオイル回収孔の形成箇所に亘って、セパレータケーシング内の底面とオイル捕捉手段との間に間隙が形成されていることを特徴とするブローバイガス還元装置。
  5. 上記請求項1、2または3記載のブローバイガス還元装置において、
    オイルセパレータは、ブローバイガス導入孔及びオイル回収孔が形成されたセパレータケーシング内にオイル捕捉手段が配置された構成となっており、
    上記オイル回収孔は、ブローバイガス流路の最下流端におけるセパレータケーシングの側壁面に形成されていることを特徴とするブローバイガス還元装置。
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