JP2006151880A - 抗イヌIgEモノクローナル抗体、その製造法および用途 - Google Patents
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Abstract
【課題】イヌのアレルギー疾患を治療する方法は、ヒトの治療に準じ、ステロイドなどの免疫抑制剤や抗ヒスタミン剤が用いられているが、副作用を回避しながら効果を示す薬剤の投与は難しいのが現状である。さらに副作用の少ない有効な治療薬の開発が望まれている。
【解決手段】
本発明はイヌIgE抗体を特異的に認識するモノクローナル抗体、またはイヌIgEで免疫された動物のB細胞と形質細胞腫株との融合細胞株の産生するイヌIgE抗体と特異的に反応するモノクローナル抗体、およびそのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、さらには該モノクローナル抗体および該ハイブリドーマを製造する方法を提供するものである。
【解決手段】
本発明はイヌIgE抗体を特異的に認識するモノクローナル抗体、またはイヌIgEで免疫された動物のB細胞と形質細胞腫株との融合細胞株の産生するイヌIgE抗体と特異的に反応するモノクローナル抗体、およびそのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、さらには該モノクローナル抗体および該ハイブリドーマを製造する方法を提供するものである。
Description
本発明はモノクローナル抗体、さらに詳しくは、イヌIgE抗体に対して作製された、抗イヌIgEモノクローナル抗体および該モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマに関するものである。
近年、先進諸国を中心にイヌを生活の伴侶として生活を共にする人が増加している。室内で飼育するなどその飼育形態の変化や環境の影響によって飼育されているイヌに人間同様種々のアレルギー疾患が増加している。アレルギーはアレルギー症状を呈するイヌに固有のアレルゲンを吸入すること、アレルゲンに接触することあるいは摂食することによって発症するのであり、アレルギーを予防するにはその原因となるアレルゲンとの接触あるいは摂食を回避すればよい。そのためには、アレルゲンの特定が必要となっている。
従って、人間の場合と同様、アレルギー症状を呈しているイヌの真のアレルゲンを同定することさらにはI型アレルギーにおいて重要な役割を果たしているIgE抗体、特にアレルゲン特異的なIgE抗体量を正確に測定することが必要である。
従って、人間の場合と同様、アレルギー症状を呈しているイヌの真のアレルゲンを同定することさらにはI型アレルギーにおいて重要な役割を果たしているIgE抗体、特にアレルゲン特異的なIgE抗体量を正確に測定することが必要である。
先に記述したように、イヌのアレルギー症状を抑制するためにはアレルゲンの回避が必要でありそのためにはアレルゲンの特定やアレルゲン特異的なIgE抗体量の正確な測定が必要である。その診断を可能とするためには、イヌIgE抗体に特異性を有する抗体が必要である。しかし、現在入手可能な抗イヌIgE抗体は、特異性並びに親和性の点から満足できるものではなく信頼性のある診断を可能とする抗イヌIgE抗体が望まれていた。デボア(Douglas J. Deboer)らが1993年にイヌIgEに対するモノクローナル抗体を報告しているが(非特許文献1)、得られた抗体は、IgEのみならずIgGも僅かに認識したりELISAで使用できないなど満足できる抗体ではなく市販されるにはいたらなかった。現在、ベッチル社(Bethyl Laboratories, Inc, 米国)からヤギで作製した抗イヌIgEポリクローナル抗体が市販されているが、本抗体は親和性が低く目的に合致したものではない。
Vet. Immunol. Immunopathol.1993;37:183-199
イヌのアレルギー疾患を治療する方法は、ヒトの治療に準じて行われている。ステロイドなどの免疫抑制剤や抗ヒスタミン剤が用いられているが、副作用を回避しながら効果を示す薬剤の投与は難しいのが現状である。さらに副作用の少ない有効な治療薬の開発が望まれている。
本発明者らは、イヌIgE抗体を特異的に認識するモノクローナル抗体を得るべく鋭意検討した結果、それを得ることに成功し、本発明を完成させるにいたった。すなわち、本発明はイヌIgE抗体を特異的に認識するモノクローナル抗体、またはイヌIgEで免疫された動物のB細胞と形質細胞腫株との融合細胞株の産生するイヌIgE抗体と特異的に反応するモノクローナル抗体、およびそのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、さらには該モノクローナル抗体および該ハイブリドーマを製造する方法を提供するものである。また、該モノクローナル抗体を用いる各種疾患の診断薬および該モノクローナル抗体を遺伝子工学的にマウス型からイヌ型に変換したイヌ型抗体としてイヌ生体内のIgEを捕捉することによるアレルギー治療薬を提供するものである。
本発明の抗イヌIgEモノクローナル抗体は次の各工程を経て製造された。
1.抗原の製造
2.免疫
3.抗体価測定系の設定
4.細胞融合
5.ハイブリドーマの選択およびクローニング
6.モノクローナル抗体の採取
以下、各工程につき説明する。
1.抗原の製造
2.免疫
3.抗体価測定系の設定
4.細胞融合
5.ハイブリドーマの選択およびクローニング
6.モノクローナル抗体の採取
以下、各工程につき説明する。
1.抗原の製造
特異性が高くかつ診断に使用できるレベルの親和性を有する抗IgE抗体の取得は、免疫源として用いるイヌIgE抗体の純度並びに量が重要である。一般にIgE抗体の存在量は、IgGなどの他の抗体と比較して極めて微量であり純度の高い抗体を得ることが困難である。また、IgE抗体かどうかを確認することも標準品が入手できないため難しいのが現状であった。そのため、純度並びに量も不十分な状態で免疫源としていたため診断などに使用できる抗イヌIgE抗体を作製できなかった。
そこで、10頭のビーグル犬にそれぞれ水酸化アルミニウムをアジュバントとしてスギ花粉抗原を投与し免疫した後に採血し血清をゲル濃度4−12%グラディエントゲルを用いてゲル電気泳動に供した。CBB染色並びに抗ヒトIgE抗体(生化学工業(株)カタログ番号240491)で検出しヒト精製IgEをマーカーとして同じ泳動位置にバンドが認められる個体を選択した。続いて、このIgE抗体価の高いイヌから血清を得た。血清を50%飽和硫安で抗体画分を沈殿させ分離しPBSに対して一晩透析した。続いて、プロティンGカラムに供し大量にあるIgGを吸着除去した。プロティンGカラム操作を繰返しウェスタンブロッティングにてIgEが明確に確認できるレベルまで精製した。次に、Kaptiv-AEカラム(テクノゲン社製)にIgE抗体を吸着させ緩衝液で十分に洗浄した後、0.1Mの酢酸溶液で溶出し直ぐに1Mのトリス塩酸緩衝液(pH9.0)で中和した。各精製過程は、ヒトIgE抗体を標準品としたゲル電気泳動で確認しながら実施した。得られたIgE抗体を電気泳動にて分析した結果を図1に示す。ヒトIgE抗体と同じ位置にバンドが認められ純度もほぼ満足できるレベルに達していることが分かった。ゲル電気泳動の図から概算したIgE抗体量は全タンパクの30%以上であった。IgE抗体画分を限外瀘過にて濃縮し1mg/mlとした。
特異性が高くかつ診断に使用できるレベルの親和性を有する抗IgE抗体の取得は、免疫源として用いるイヌIgE抗体の純度並びに量が重要である。一般にIgE抗体の存在量は、IgGなどの他の抗体と比較して極めて微量であり純度の高い抗体を得ることが困難である。また、IgE抗体かどうかを確認することも標準品が入手できないため難しいのが現状であった。そのため、純度並びに量も不十分な状態で免疫源としていたため診断などに使用できる抗イヌIgE抗体を作製できなかった。
そこで、10頭のビーグル犬にそれぞれ水酸化アルミニウムをアジュバントとしてスギ花粉抗原を投与し免疫した後に採血し血清をゲル濃度4−12%グラディエントゲルを用いてゲル電気泳動に供した。CBB染色並びに抗ヒトIgE抗体(生化学工業(株)カタログ番号240491)で検出しヒト精製IgEをマーカーとして同じ泳動位置にバンドが認められる個体を選択した。続いて、このIgE抗体価の高いイヌから血清を得た。血清を50%飽和硫安で抗体画分を沈殿させ分離しPBSに対して一晩透析した。続いて、プロティンGカラムに供し大量にあるIgGを吸着除去した。プロティンGカラム操作を繰返しウェスタンブロッティングにてIgEが明確に確認できるレベルまで精製した。次に、Kaptiv-AEカラム(テクノゲン社製)にIgE抗体を吸着させ緩衝液で十分に洗浄した後、0.1Mの酢酸溶液で溶出し直ぐに1Mのトリス塩酸緩衝液(pH9.0)で中和した。各精製過程は、ヒトIgE抗体を標準品としたゲル電気泳動で確認しながら実施した。得られたIgE抗体を電気泳動にて分析した結果を図1に示す。ヒトIgE抗体と同じ位置にバンドが認められ純度もほぼ満足できるレベルに達していることが分かった。ゲル電気泳動の図から概算したIgE抗体量は全タンパクの30%以上であった。IgE抗体画分を限外瀘過にて濃縮し1mg/mlとした。
2.免疫
上記のようにして得られた免疫原を哺乳動物、例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、ハムスター、ラット、マウスなどに投与する。モノクローナル抗体を得るためには、ラット、ハムスター、マウスが好ましく、特にマウスが好ましい。免疫の方法は、動物の皮下、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内などのいずれの経路でも可能であるが、主として静脈内、皮下、腹腔内に投与するのが好ましい。免疫間隔はいかなる設定も可能であるが数日から4週間隔、好ましくは3日〜2週間隔で、2〜10回免疫し、最終免疫後、1〜5日、好ましくは約2〜4日後に抗体産生細胞を採取すればよい。免疫する際には、種々のアジュバントを用いると免疫の効率がよくなる。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、BCGなどが用いられる。抗体産生細胞としては、脾臓細胞、各部位のリンパ節細胞、胸腺細胞、末梢血細胞が用いられるが、脾臓細胞を用いるのが一般的である。抗原の免疫量は1回にマウス1匹あたり0.1〜500μg、好ましくは1〜300μg用いることが望ましい。
上記のようにして得られた免疫原を哺乳動物、例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、ハムスター、ラット、マウスなどに投与する。モノクローナル抗体を得るためには、ラット、ハムスター、マウスが好ましく、特にマウスが好ましい。免疫の方法は、動物の皮下、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内などのいずれの経路でも可能であるが、主として静脈内、皮下、腹腔内に投与するのが好ましい。免疫間隔はいかなる設定も可能であるが数日から4週間隔、好ましくは3日〜2週間隔で、2〜10回免疫し、最終免疫後、1〜5日、好ましくは約2〜4日後に抗体産生細胞を採取すればよい。免疫する際には、種々のアジュバントを用いると免疫の効率がよくなる。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、BCGなどが用いられる。抗体産生細胞としては、脾臓細胞、各部位のリンパ節細胞、胸腺細胞、末梢血細胞が用いられるが、脾臓細胞を用いるのが一般的である。抗原の免疫量は1回にマウス1匹あたり0.1〜500μg、好ましくは1〜300μg用いることが望ましい。
3.抗体価測定系の設定
免疫した動物の血中抗体価、あるいは後記の抗体産生細胞培養上清中の抗体価を測定する必要がある。抗体検出の方法は、いかなる方法も使用できるがELISAが便利である。プラスティックプレートの各ウェルに先に精製してあるイヌIgE抗体画分を加え室温放置して固相化しBSAやスキムミルクでブロッキングする。そこへ、PBSで希釈した血清あるいはハイブリドーマ培養上清を抗原が固相化されたウェルへ加え反応させた後に洗浄し、酵素で標識された抗マウスIgG抗体を加え、反応・洗浄後に基質を加えて発色させ、抗イヌIgE抗体の存在量を測定する。ELISAでの判定に加えて、精製したイヌIgEを、ヒトIgEを標準品としたウェスタンブロッティングに供し得られた抗体がイヌIgE抗体と反応することを確認する。
免疫した動物の血中抗体価、あるいは後記の抗体産生細胞培養上清中の抗体価を測定する必要がある。抗体検出の方法は、いかなる方法も使用できるがELISAが便利である。プラスティックプレートの各ウェルに先に精製してあるイヌIgE抗体画分を加え室温放置して固相化しBSAやスキムミルクでブロッキングする。そこへ、PBSで希釈した血清あるいはハイブリドーマ培養上清を抗原が固相化されたウェルへ加え反応させた後に洗浄し、酵素で標識された抗マウスIgG抗体を加え、反応・洗浄後に基質を加えて発色させ、抗イヌIgE抗体の存在量を測定する。ELISAでの判定に加えて、精製したイヌIgEを、ヒトIgEを標準品としたウェスタンブロッティングに供し得られた抗体がイヌIgE抗体と反応することを確認する。
4.細胞融合
上記脾臓細胞と形質細胞腫株との細胞融合は、たとえば摘出したマウスの脾臓細胞を、選択できるようなマーカーを持った同種または異種の、好ましくは同種の細胞腫株と融合させる。細胞腫株としては、ミエローマが好ましくPAI、P3−X63/Ag4.1、653、Y3−AG1.2.3などを用いることができる。細胞融合は、ポリエチレングリコールを融合促進剤として用いる。107〜108 個のミエローマ細胞と脾臓細胞を混合比1:1〜1:10でRPMI−1640などの培地中、30〜37℃で1〜10分間混合することによって融合させる。融合促進に使用するポリエチレングリコールの代わりにポリビニルアルコールなどを用いることもできる。濃度は10〜80%、好ましくは30〜50%で30秒から30分、好ましくは3〜15分処理することによって細胞融合が終了する。
上記脾臓細胞と形質細胞腫株との細胞融合は、たとえば摘出したマウスの脾臓細胞を、選択できるようなマーカーを持った同種または異種の、好ましくは同種の細胞腫株と融合させる。細胞腫株としては、ミエローマが好ましくPAI、P3−X63/Ag4.1、653、Y3−AG1.2.3などを用いることができる。細胞融合は、ポリエチレングリコールを融合促進剤として用いる。107〜108 個のミエローマ細胞と脾臓細胞を混合比1:1〜1:10でRPMI−1640などの培地中、30〜37℃で1〜10分間混合することによって融合させる。融合促進に使用するポリエチレングリコールの代わりにポリビニルアルコールなどを用いることもできる。濃度は10〜80%、好ましくは30〜50%で30秒から30分、好ましくは3〜15分処理することによって細胞融合が終了する。
5.ハイブリドーマの選択およびクローニング
融合した細胞は、10〜20%のウシ胎児血清を含むRPMI−1640培地などで希釈し96穴のマイクロタイタープレートに各ウェルあたり1×105〜1×106個になるように加えHAT培地を用いてハイブリドーマだけを選択的に増殖させることができる。10〜14日ころからHT培地に交換し、さらに培養を継続する。7〜10日以降に増殖してくる細胞はハイブリドーマだけである。増殖する細胞の培養上清を先に述べた方法で抗体の産生の有無を確認できる。産生を確認できたウェル中の細胞を限界希釈法にてクローニングする。
融合した細胞は、10〜20%のウシ胎児血清を含むRPMI−1640培地などで希釈し96穴のマイクロタイタープレートに各ウェルあたり1×105〜1×106個になるように加えHAT培地を用いてハイブリドーマだけを選択的に増殖させることができる。10〜14日ころからHT培地に交換し、さらに培養を継続する。7〜10日以降に増殖してくる細胞はハイブリドーマだけである。増殖する細胞の培養上清を先に述べた方法で抗体の産生の有無を確認できる。産生を確認できたウェル中の細胞を限界希釈法にてクローニングする。
6.モノクローナル抗体の採取
目的とする抗体を産生するクローニングされたハイブリドーマを適当な濃度、好ましくは10〜20%のウシ胎児血清を含むRPMI−1640、MEMなどの適当な培地、あるいは無血清培地中で1週間程度培養しその培養液から抗体を得ることができる。また、大量の抗体を得るためにはミエローマ細胞由来と同種の動物にプリスタンなどの鉱物油を腹腔内に投与し、その後に該ハイブリドーマを1×104〜107個、好ましくは1×106個を腹腔内に投与する。約4〜30日、好ましくは6〜20日後に腹水を採取する。得られた腹水から抗イヌIgE抗体を精製するには、硫安分画、イオン交換カラムクロマトグラフィーなど通常タンパク質の精製に用いられることのできる種々の精製法を用いることができる。また、プロティンAあるいはプロティンGを用いたアフィニティ-カラムクロマトグラフィーによって単離することができる。
得られたモノクローナル抗体は、その抗原特異性が重要であるので、各種の抗体との交差反応性を調べた。イヌ全血清をSDS−PAGE(ゲル濃度4−12%グラディエントゲル)に供し各タンパク質を分離しウェスタンブロッティングによって該抗体が反応するタンパク質のバンドを検出して反応性を確認した。イヌ精製IgG(生化学工業;コード番号251381)、ヒトIgE(生化学工業;コード番号280645)を対照としてイヌ全血清をSDS−PAGE上で分離したタンパク質のバンドの中でIgE相当の位置にのみ反応するクローンを選択し2A5(特許生物寄託センター寄託番号FERM P−20228)、3D10(特許生物寄託センター寄託番号FERM P−20229)、3H12の3クローンを得た。得られたクローンをマウスモノクローナル抗体イソタイピングキット(Amersham Biosciences社製、カタログ番号RPN29)を用いて調べた結果、2A5および3D10はIgG2a(κ)、3H12はIgG2b(κ)であった。
以下に実施例をもって本発明をより詳細に説明するが、本発明はここに記載する実施例に限定されるものでない。
目的とする抗体を産生するクローニングされたハイブリドーマを適当な濃度、好ましくは10〜20%のウシ胎児血清を含むRPMI−1640、MEMなどの適当な培地、あるいは無血清培地中で1週間程度培養しその培養液から抗体を得ることができる。また、大量の抗体を得るためにはミエローマ細胞由来と同種の動物にプリスタンなどの鉱物油を腹腔内に投与し、その後に該ハイブリドーマを1×104〜107個、好ましくは1×106個を腹腔内に投与する。約4〜30日、好ましくは6〜20日後に腹水を採取する。得られた腹水から抗イヌIgE抗体を精製するには、硫安分画、イオン交換カラムクロマトグラフィーなど通常タンパク質の精製に用いられることのできる種々の精製法を用いることができる。また、プロティンAあるいはプロティンGを用いたアフィニティ-カラムクロマトグラフィーによって単離することができる。
得られたモノクローナル抗体は、その抗原特異性が重要であるので、各種の抗体との交差反応性を調べた。イヌ全血清をSDS−PAGE(ゲル濃度4−12%グラディエントゲル)に供し各タンパク質を分離しウェスタンブロッティングによって該抗体が反応するタンパク質のバンドを検出して反応性を確認した。イヌ精製IgG(生化学工業;コード番号251381)、ヒトIgE(生化学工業;コード番号280645)を対照としてイヌ全血清をSDS−PAGE上で分離したタンパク質のバンドの中でIgE相当の位置にのみ反応するクローンを選択し2A5(特許生物寄託センター寄託番号FERM P−20228)、3D10(特許生物寄託センター寄託番号FERM P−20229)、3H12の3クローンを得た。得られたクローンをマウスモノクローナル抗体イソタイピングキット(Amersham Biosciences社製、カタログ番号RPN29)を用いて調べた結果、2A5および3D10はIgG2a(κ)、3H12はIgG2b(κ)であった。
以下に実施例をもって本発明をより詳細に説明するが、本発明はここに記載する実施例に限定されるものでない。
スギ花粉抗原をビーグル犬(雌、4歳)に水酸化アルミニウムをアジュバントとして静脈内投与した。1週間間隔で4回投与した。さらに4日後に花粉抗原のみを同様に投与した。最終投与の後、3日後に血液を採取した。投与期間中、血液を採取しベッチル社の抗イヌIgEポリクローナル抗体を用いたELISA法にて測定しIgEタイターの上昇を確認した。感作したビーグル犬のうち3頭でタイターの顕著な上昇が見られたため、この3頭から採血し一頭あたり約100mlの血液を得た。遠心分離にて血清を分離し以後の試験に供した。
実施例1で得られた血清10mlに100%飽和硫安溶液10mlを撹拌しながらゆっくりと滴下した。撹拌をさらに10分間続けた後、遠心分離(8000g、10分間、5℃)した。沈殿部を50%飽和硫安溶液で2回洗浄し抗体画分を得た。沈殿している抗体画分をPBS10mlに溶解し,透析チューブに入れてPBSに対し1晩透析を行った。PBSで平衡化したプロティンGカラム(Amersham Biosciences, Hi Trap Protein G HP 17-0405-01)に供し通過液を集めた。通過液をPBSで平衡化してある5ml容量のKaptiv-AEカラム(Tecnogen、TG9001)に供した。PBS 30mlで洗浄した後、0.1M酢酸緩衝液(pH3.0)で溶出した。280nmの吸光度を測定し、溶出してきたタンパク質画分を集め、直ちに0.5Mのリン酸緩衝液(pH8.0)を加えて中和した。調製した各分画をSDS−PAGEにて分離しウェスタンブロッティングした結果を図1に示した。図から明らかなように、Kaptiv-AEカラムで分離したIgE画分では、IgE抗体濃度が濃縮されていることが分かる。発色強度から推定したIgE抗体濃度は全タンパクの約30%程度となっていた。なお、本画分にはIgG抗体は認められなかった。
実施例2で得られたイヌIgE画分100μgをフロイント完全アジュバントを用いてBALB/c(雌、4週令)マウスに腹腔内に投与した。その後2週間間隔でイヌIgE画分50μgをフロイントの不完全アジュバントと混和して3回追加免疫を行った。さらに追加免疫の2週間後にイヌIgE画分50μgをアジュバントを用いずに投与した。しかる後、3日後に免疫したマウスより脾細胞を得た。
実施例3で得られた脾細胞1.36×108個をミエローマ653株2.7×107個とポリエチレングリコール(SIGMA P-2906)を用いて常法とおり細胞融合を行った。全量を20%FCS−IMDM(SIGMA P-2906)50mlに懸濁した。96穴プレート5枚に100μl/wellずつまいた。週2回HAT培地(ICN 1680849)に交換しながら培養し続いてHT培地(ICN 1680949)に交換し培養を継続した。2週間後、ウェル全ての培養上清をELISAによる1次スクリーニングに供した。マイクロタイタープレート(Nunc社製449824)にイヌIgEおよびイヌIgGをそれぞれ5μg/ml、50μl/wellとなるよう固相化した。BSA(生化学工業、カタログ番号250080)でプレートをブロッキングした後に、培養上清を50μlウェルに加え室温で2時間反応させた後にPBSで3回洗浄した。続いて、HRP標識抗マウスIgG抗体(生化学工業、カタログ番号286005)を10000倍にPBSで希釈しその溶液50μlを各ウェルに加えた。0.05%のTween 20を含むPBSで3回洗浄した。0.1Mのクエン酸緩衝液(pH5.0)2.5mlに1mgOPD錠(SIGMA、P-6662)を完全に溶解しそこへ3%H2O2を5μl加えた基質溶液100μlずつ各ウェルへ加えた。10分後、2N硫酸を50μl加え反応を停止した。ELISAプレートリーダーで492nmの吸光度を測定した。各ウェルの吸光度から、IgEに対する吸光度が高くIgGに対する吸光度の低い(差及び比が大)ウェルを選択肢、48穴プレートにて拡大培養を行った。結果を表1に示した。
48穴プレートへ移植後、増殖の良いウェルについて培養上清をウェスタンブロッティングに供した(図2)。ε鎖と特異的に反応する4ウェル(1E10、2A5、3D10、3H12)を選択し特に反応の良い3ウェル(2A5、3D10、3H12)をクローニングへ移行した。クローニングは、5%BriClone(Archport Ltd)を含む20% FCS-IMDM(SIGMA I-3390)培地を用い限界希釈法にて実施した。96穴プレート1枚に100μl/ウェルまき1週間後に培地を追加した。増殖が認められたウェルから、シングルあるいはコロニー数の少ないウェルを選び培養上清を実施例4で行ったのとまったく同じELISA法により一次スクリーニングを行った。実施例4と同様の選択基準によりクローンを選択し48穴プレートに移植した。増殖が良好で、かつイヌIgEと反応しイヌIgGと反応しないクローンを選択しその培養上清をウェスタンブロッティングに供しクローンを選択してクローニングを終了した。
確立したクローンについて、培養上清を用いてマウスモノクローナル抗体アイソタイピングキット(Amersham
Biosciences、カタログ番号RPN29)を用いてサブクラスを決定した。その結果、2A5及び3D10はIgG2a(κ)であり、3H12はIgG2b(κ)であった。
確立したクローンについて、培養上清を用いてマウスモノクローナル抗体アイソタイピングキット(Amersham
Biosciences、カタログ番号RPN29)を用いてサブクラスを決定した。その結果、2A5及び3D10はIgG2a(κ)であり、3H12はIgG2b(κ)であった。
上記の通り得られた抗イヌIgEモノクローナル抗体を大量に得るために、確立したクローンをマウス5匹に移植し腹水を採取することとした。BALB/cマウス(♀、10週令)1匹あたりに0.5mlのプリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン、フナコシカタログ番号05−1504)をガラス製注射筒を用いて腹腔内へ投与した。1週間後に、先に調製したモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの一つ3D10をFCSを含まないIMDM培地で洗浄し同じ培地に5×106細胞/mlとなるように調製した該ハイブリドーマを投与した。5日間飼育し腹水が貯留した事を確認した後、腹水を採取した。採取したマウスは再び飼育ケージに戻し飼育を継続した。3週間の間飼育と腹水採取を繰り返した。
実施例6で得られた腹水約10mlに氷冷下、撹拌しながら同量の100%飽和硫安溶液をゆっくりと加えた。10分間撹拌した後、8000gで10分間遠心分離し沈殿部を集めた。氷冷した50%飽和硫安溶液で沈殿を洗浄した後に、PBSに溶解し透析チューブに入れPBSに対して4℃で一晩透析した。透析した後、実施例2で使用したものと同じPBSで平衡化したプロティンGカラムに供した。カラムをPBS30mlで洗浄した後、0.1Mクエン酸緩衝液(pH3.5)で溶出した。UVモニターで確認しながらタンパク溶出画分を集め直ちに中和した。電気泳動並びにELISAで抗イヌIgEモノクローナル抗体であることを確認し目的とする精製抗体約30mgを得た。
実施例7で得られた精製抗イヌIgEモノクローナル抗体3D10の3mgを1ml容量のHiTrap NHS-activated HP(Amersham社製) を用い指定されている取扱法に従ってカラム内の担体に結合させた。Tris−HCl緩衝液(75mM、pH8.0)で平衡化した後、実施例2で得られた部分精製したイヌIgE画分10mlを50%飽和硫安で沈殿させ沈殿物を10mlの上記平衡化した緩衝液に溶解した。その溶液を調製したカラムに通しカラムを平衡化したのと同じ緩衝液で280nmの吸光度をモニターし吸光度がほぼ0を示すまで洗浄した。その後、0.5MのNaClを含むグリシン−塩酸緩衝液(100mM、pH2.7)で結合しているイヌIgE抗体を溶出した。カラム通過画分、溶出画分をSDS−PAGEに供し精製を確認した。結果を図3に示す。これにより、当該モノクローナル抗体を用いてイヌIgEを精製できることが明らかとなった。
ダニアレルギーと診断されたイヌ血液を用いて抗原特異的IgE濃度を測定した。ELISAプレートの各ウェルに1μg/ml濃度のダニアレルゲンDerf2を50μlずつ分注し室温で1時間放置し固相化した。1%BSAを各ウェルに200μlずつ分注し室温で1時間放置してブロッキングした。0.05%Tween 20を含むPBSで10倍希釈したイヌ血清50μlを各ウェルに加え室温で1時間放置した。0.05%Tween 20を含むPBSで洗浄した後、1μg/mlに希釈した抗体2A5またはBethyl社製ヤギ抗イヌIgEポリクローナル抗体(カタログ番号A40125A)を50μl加え室温で1時間放置した。0.05%Tween 20を含むPBSで洗浄した後、二次抗体として1μg/mlに調製したHRP標識された抗マウスIgG(生化学工業、カタログ番号286005)または抗ヤギIgG(生化学工業、カタログ番号284655)を50μl加え室温で1時間放置した。0.05%Tween 20を含むPBSで洗浄した後、発色剤であるOPD1mg/mlに30%過酸化水素水1μlを加えた溶液100μlを加えて室温で30分反応させた。2N硫酸50μlを加えて反応を停止し各ウェルの492nmの吸光度を測定した。結果を図4に示した。図の中で△で示した値は、獣医師による患犬の症状である。症状判定とダニアレルゲン特異的IgE量との間には、正の相関が認められる。患犬番号8の症例だけが外れているが、この症例はIV型アレルギーと同定されており抗体よりも細胞性免疫による症状であることからIgE量と症状が関連しないものであった。Bethyl社抗体を用いた場合、本発明による抗体と異なり感度が低く判定できない症例がほとんどであった。これにより本発明である抗体2A5が優れていることが明らかとなった。
ハウスダストマイトに対してアレルギー症状を示すイヌ3頭および症状を示さないイヌ3頭の前腕部静脈からそれぞれ1mlを採血した。遠心分離で血清を分離した。一方、ELISAプレートの各ウェルにダニアレルゲンDerf2溶液(生化学工業カタログ番号290452)100μg/ml溶液)50μlを入れPBSで3回洗浄し固相化した。BSAでブロッキングした後に、各ウェルへ先に調製したイヌ血清をPBSで2倍希釈および4倍希釈してそれぞれ50μl加え室温で2時間放置した。その後、各ウェルをTween 20を0.05%含むPBSで3回洗浄した。そこへ、実施例7で得られた抗イヌIgEモノクローナル抗体3D10をPBSに1μg/ml濃度に溶解しその溶液50μl各ウェルに加えた。60分放置した後、0.05%Tween20を含むPBSで3回洗浄した。そこへ、HRP標識した抗マウスIgG抗体(生化学工業カタログ番号286015)を PBSで1μg/ml濃度としその50μlを各ウェルへ加えた。0.05%Tween20を含むPBSで3回洗浄した。そこへ2.5mlの100mMクエン酸緩衝液(pH5.0)にOPD錠剤(SIGMAカタログ番号P−6662)を溶解し3%の過酸化水素水5μlを加えた基質溶液100μlを各ウェルへ加えた。5分経過した後に50μlの2N硫酸を加え反応を止め各ウェルの492nmの吸光度を測定した。プリック反応にて確認された各イヌのハウスダストマイトに対する反応強度とELISAによる吸光度を表2に示した。表から明らかなようにELISAで確認したアレルゲンとプリック反応で確認したアレルゲンは良く一致し本抗体を用いたELISAで感作アレルゲンを確認できることが明らかとなった。
Claims (6)
- イヌIgE抗体を特異的に認識する、2A5(FERM P−20228)および3D10(FERMP−20229)から選択されるモノクローナル抗体。
- イヌIgE抗体にて免疫されたマウスのB細胞と形質細胞腫との融合細胞株の産生する、イヌIgE抗体に特異的に反応する請求項1記載のモノクローナル抗体。
- 請求項2記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
- 請求項1記載のモノクローナル抗体を用いてアフィニティ-精製したイヌIgE抗体。
- 請求項1記載のモノクローナル抗体を用いたイヌアレルギー診断法。
- 請求項1記載のモノクローナル抗体を用いたイヌアレルギー診断キット。
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