JP2006147929A - 半導体レーザ - Google Patents

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Abstract

【課題】狭い遠視野像を得ることができると共に、閾値電流を十分に小さくできる半導体レーザを提供する。
【解決手段】N型GaAs(100)ジャスト基板1には、<011>結晶軸方向に延存する逆メサリッジ3が形成されている。逆メサリッジ3上には、N型AlGaAs下部クラッド層5、ノンドープの量子井戸活性層6、P型AlGaAs上部クラッド層7、AlGaAs高抵抗上部クラッド層8およびAlGaAs上部クラッド層9を含む断面三角形状領域30が形成されている。N型AlGaAs下部クラッド層5の屈折率はP型AlGaAs上部クラッド層7の屈折率と異なる。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば光ディスク装置または光通信システム等の光源に用いられる、低閾値電流、且つ狭い遠視野像を有する半導体レーザに関するものである。
光ディスク装置または光通信システム等の光源に用いられる半導体レーザの光出力は、全部が利用されているわけではなく、対物レンズまたは光ファイバーとの光結合効率を掛けた光出力のみが利用されている。従って、光ディスク盤面上または光ファイバーに入る実効的な光出力を大きくするためには、できるだけ狭い遠視野像を有する半導体レーザ(以下、狭ビーム半導体レーザと呼ぶ)が望まれている。
しかしながら、狭い遠視野像を得ようとすると、レーザ光出射端面の光スポット径を大きくする必要があるが、レーザ光出射端面の光スポット径を大きくすると、活性層内への光閉じ込めの割合が小さくなり(利得が小さくなり)、閾値電流が大きくなるという矛盾が発生する。
上述した光スポット径拡大と閾値電流増大という矛盾の解決策として、レーザ光出射端面近傍のみ光スポット径が大きくなる光導波路構造とし、それ以外の領域では通常の光導波路のままにする手法が一般的に採用されている。例えば特許文献1(特開平6−334255号公報)に、そのような手法を採用した狭ビーム半導体レーザが開示されている。
図9に、従来の狭ビーム半導体レーザを斜め上方から見た概略図を示す。
上記狭ビーム半導体レーザは、ストライプ状のリッジ92が形成されたp型GaAs基板91を備えている。このリッジ92に関して、レーザ光出射端面近傍の部分の共振器長方向に垂直な幅W1は、中央部の共振器長方向に垂直な幅W2よりも広くなっている。
また、上記リッジ92上には、1回のMOCVD成長により、断面三角形状領域100を形成している。この断面三角形状領域100は、n型GaAsバッファ層93、n型AlGaAs下部クラッド層94、活性層95およびp型AlGaAs第1上部クラッド層96の一部からなっている。また、上記断面三角形状領域100が含む活性層95に関してもリッジ92と同様に、レーザ光端面近傍の部分の共振器長方向に垂直な幅は、中央部の共振器長方向に垂直な幅よりも広くなっている。
また、上記断面三角形状領域100の両側にはnpn構造AlGaAs電流ブロック層97が形成されている。
なお、98はp型AlGaAs第2上部クラッド層であり、99はp型GaAsキャップ層である。
上記構成の狭ビーム半導体レーザによれば、断面三角形状領域100の両側にnpn構造AlGaAs電流ブロック層97を形成していることにより、断面三角形状領域100が含む活性層95に電流が集中するので、閾値電流を下げることができる。
また、上記断面三角形状領域100内における活性層95に関して、レーザ光出射端面近傍の部分の共振器長方向に垂直な幅が、中央部の共振器長方向に垂直な幅が広いことにより、レーザ光出射端面の光スポット径を大きくすることができる。
しかしながら、上記従来の狭ビーム半導体レーザでは、レーザ出射端面近傍での光スポット径を大きくした部分での利得が小さくなるので、閾値電流が十分に小さくなっていないという問題がある。
この問題を解決しようとして、レーザ光出射端面近傍の光スポットを大きくした部分に電流を流さないようにする構造を形成すると、その部分では利得とは逆の光吸収が起こってしまう。その結果、上記閾値電流を小さくできるどころか、逆に、閾値電流が大きくなってしまう。
特開平6−334255号公報
そこで、本発明の課題は、狭い遠視野像を得ることができると共に、閾値電流を十分に小さくできる半導体レーザを提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の半導体レーザは、
<011>結晶軸方向に延在するストライプ部が形成され、(100)結晶面を主面とする化合物半導体基板と、
上記ストライプ部上に形成されたレーザ共振器と
を備え、
上記レーザ共振器は、上記化合物半導体基板上に形成された第1クラッド層と、上記第1クラッド層上に形成された活性層と、上記活性層上に形成された第2クラッド層とを有し、
上記レーザ共振器の一方の端部における幅は、上記レーザ共振器の共振器長方向の中央部における幅と、上記レーザ共振器の他方の端部における幅とに比べて狭く、
上記第2クラッド層の屈折率は上記第1クラッド層の屈折率と異なることを特徴としている。
上記構成の半導体レーザによれば、上記第1クラッド層の屈折率に対して第2クラッド層の屈折率を異ならし、レーザ共振器の共振器長方向の中央部における幅とレーザ共振器の他方の端部における幅とよりも、レーザ共振器の一方の端部における幅を狭くすることにより、レーザ共振器の一方の端面での光スポット径を大きくすることができる。
また、上記レーザ共振器の共振器長方向の中央部における幅よりもレーザ共振器の一方の端部における幅を狭くし、かつ、レーザ共振器の他方の端部における幅よりもレーザ共振器の一方の端部における幅を狭くすることにより、レーザ共振器の一方の端部における利得の低下を防ぐことができるので、閾値電流を十分に小さくすることができる。
また、上記第1クラッド層の屈折率と第2クラッド層の屈折率とを異ならすことにより、第1クラッド層または第2クラッド層の層厚を薄くすることができ、高次横モードを立ち難くすることができる。
一実施形態の半導体レーザでは、
上記レーザ共振器によって形成される光導波路は、上記レーザ共振器の他方の端部側から上記レーザ共振器の一方の端部側へ向かって幅が連続的に狭くなるテーパ部を有する。
上記実施形態の半導体レーザによれば、上記レーザ共振器の他方の端部側からレーザ共振器の一方の端部側へ向かって幅が連続的に狭くなるテーパ部を光導波路が有することにより、光導波路で光損失が発生するのを防ぐことができる。
一実施形態の半導体レーザでは、
上記第2クラッド層上に形成された電流ブロック層を備え、
上記ストライプ部はリッジ部であり、
上記活性層は量子井戸活性層であり、
上記第1クラッド層、上記量子井戸活性層、上記第2クラッド層および上記電流ブロック層はエピタキシャル成長で形成され、
上記量子井戸活性層は、上記リッジ部上に位置する部分と、上記リッジ部の両側方に位置する部分とに分断され、
上記電流ブロック層の上記リッジ部上の部分の少なくとも一部は電流ブロック機能を消失している。
上記実施形態の半導体レーザによれば、上記電流ブロック層のリッジ部上の部分の少なくとも一部が電流ブロック機能を消失していることにより、量子井戸活性層に注入される電流の密度を高めることができる。
一実施形態の半導体レーザでは、
上記電流ブロック層は、上記リッジ部上に位置する部分と、上記リッジ部の両側方に位置する部分とに分断され、
上記量子井戸活性層の上記リッジ部上の部分における両側面は、上記電流ブロック層の上記リッジ部側方の部分で覆われている。
上記実施形態の半導体レーザによれば、上記量子井戸活性層のリッジ部上の部分における両側面を電流ブロック層のリッジ部側方の部分で覆うことにより、量子井戸活性層のリッジ部上の部分からリッジ部側方への電流リークを低減することができる。
一実施形態の半導体レーザでは、上記電流ブロック層の上記リッジ部側方の部分は、ノンドープのAlGaAsで形成されている。
一実施形態の半導体レーザでは、上記AlGaAsの電気抵抗は、上記第2クラッド層の電気抵抗より大きい。
一実施形態の半導体レーザでは、
上記量子井戸活性層に関して、上記レーザ共振器の一方の端面近傍の部分は量子井戸構造が無秩序化されている。
上記実施形態の半導体レーザによれば、上記量子井戸活性層に関して、レーザ共振器の一方の端面近傍の部分の量子井戸構造を無秩序化することにより、量子井戸活性層におけるレーザ共振器の一方の端面近傍の部分のバンドギャップが大きくなる。従って、上記量子井戸活性層におけるレーザ共振器の一方の端面近傍の部分を発振波長に対して透明にすることができる。すなわち、上記量子井戸活性層におけるレーザ共振器の一方の端面近傍の部分での光吸収を無くすことができる。
一実施形態の半導体レーザでは、
上記化合物半導体基板はGaAsからなり、
上記第1クラッド層、上記量子井戸活性層、上記第2クラッド層および上記電流ブロック層は、AlGaAs系またはAlGaInP系またはGaAs系またはGaInP系の化合物半導体からなり、
上記第2クラッド層の屈折率は上記第1クラッド層の屈折率よりも高い。
上記実施形態の半導体レーザによれば、上記化合物半導体基板をGaAsで構成し、第1クラッド層、量子井戸活性層、第2クラッド層および電流ブロック層をAlGaAs系またはAlGaInP系またはGaAs系またはGaInP系の化合物半導体で構成することにより、第1クラッド層、量子井戸活性層、第2クラッド層および電流ブロック層の結晶品質の低下を防ぐことができる。
また、上記第2クラッド層の屈折率が第1クラッド層の屈折率よりも高いので、光が第2クラッド層の方に漏れ易くなる。
一実施形態の半導体レーザでは、
上記第1クラッド層、上記量子井戸活性層、上記第2クラッド層および上記電流ブロック層のエピタキシャル成長は有機金属気相成長法で行われた。
上記実施形態の半導体レーザによれば、上記第1クラッド層、量子井戸活性層、第2クラッド層および電流ブロック層のエピタキシャル成長を有機金属気相成長法で行うことにより、高品質な第1クラッド層、量子井戸活性層、第2クラッド層および電流ブロック層を簡単に得ることができる。
一実施形態の半導体レーザでは、
上記電流ブロック層の上記リッジ部上の部分の少なくとも一部には、上記電流ブロック層上に形成されたZnO薄膜のZnが拡散している。
上記実施形態の半導体レーザによれば、上記電流ブロック層のリッジ部上の部分の少なくとも一部に、電流ブロック層上に形成されたZnO薄膜のZnを拡散させることにより、電流ブロック層のリッジ部上の部分の少なくとも一部の導電型を容易にP型にすることができる。
一実施形態の半導体レーザでは、
上記量子井戸構造の無秩序化は、上記量子井戸活性層上に形成したSiO2膜を高速昇温熱処理法で熱処理することにより行われた。
上記実施形態の半導体レーザによれば、上記量子井戸構造の無秩序化を、量子井戸活性層上に形成したSiO2膜を高速昇温熱処理法で熱処理することにより行うので、量子井戸活性層の形成時間を短縮することができる。
一実施形態の半導体レーザでは、
上記電流ブロック層の上記リッジ部上の部分に関して、上記レーザ共振器の一方の端面近傍の部分は電流ブロック機能を有する一方、上記レーザ共振器の一方の端面近傍の部分以外の部分は電流ブロック機能を消失している。
上記実施形態の半導体レーザによれば、上記電流ブロック層のリッジ部上の部分に関して、レーザ共振器の一方の端面近傍の部分は電流ブロック機能を有する一方、レーザ共振器の一方の端面近傍の部分以外の部分は電流ブロック機能を消失していることにより、レーザ共振器の一方の端部における光導波路に電流を流すことなく、レーザ共振器の他の部分における光導波路に電流を流すことができる。すなわち、上記レーザ共振器の一方の端部を非励起部とし、かつ、レーザ共振器の他の部分を励起部とすることができる。
一実施形態の半導体レーザでは、
上記電流ブロック機能を消失している部分には、上記電流ブロック層上に形成したZnO薄膜を高速熱処理法で熱処理することにより、上記ZnO薄膜のZnが拡散している。
上記実施形態の半導体レーザによれば、上記電流ブロック機能を消失している部分に、電流ブロック層上に形成したZnO薄膜を高速熱処理法で熱処理することにより、ZnO薄膜のZnを拡散させるので、電流ブロック層の形成時間を短縮することができる。
一実施形態の半導体レーザでは、
上記第1クラッド層または上記第2クラッド層には、CBr4をソースとしたCが不純物としてドーピングされている。
上記実施形態の半導体レーザによれば、上記第1クラッド層または第2クラッド層には、CBr4をソースとしたCを不純物としてドーピングするので、製造コストの上昇を防ぐことができる。
本発明の半導体レーザは、第2クラッド層の屈折率が第1クラッド層の屈折率と異なり、レーザ共振器の共振器長方向の中央部における幅とレーザ共振器の他方の端部における幅とよりも、レーザ共振器の一方の端部における幅が狭いので、レーザ共振器の一方の端面での光スポット径を大きくすることができる。
また、上記レーザ共振器の共振器長方向の中央部における幅よりもレーザ共振器の一方の端部における幅が狭く、かつ、レーザ共振器の他方の端部における幅よりもレーザ共振器の一方の端部における幅が狭いことによって、レーザ共振器の一方の端部における利得の低下を防ぐことができるので、閾値電流を十分に小さくすることができる。
また、本発明の半導体レーザを光ピックアップ用の光源として使用すると、現状の開口数を持つ対物レンズにおいても大きな結合係数が得られ、光ディスクの表面の実効的光出力が大きくなり、光ディスクの高速化に有益である。特に、赤外レーザチップを赤色レーザチップや青色レーザチップと同一パッケージ内にマウントして使用する発光点が100μm程度に離れた多波長レーザにおいては、対物レンズとの結合係数が小さくなるので、本発明の狭ビームレーザを使用すれば大いに有益である。
以下、本発明の半導体レーザを図示の実施の形態により詳細に説明する。
図1に、本発明の一実施の形態のAlGaAs系の狭ビーム半導体レーザを斜め上方から見た概略図を示す。なお、本実施の形態では、上記狭ビーム半導体レーザの一方の端面を第1光出射端面と言うと共に、上記狭ビーム半導体レーザの他方の端面を第2光出射端面と言う。
上記狭ビーム半導体レーザは、N型GaAs(100)ジャスト基板1を備えている。このN型GaAs(100)ジャスト基板1には、段差面2A,2Bで挟まれて<011>結晶軸方向に延存する逆メサリッジ3が形成されている。
上記逆メサリッジ3上には、N型GaAsバッファ層4、N型AlGaAs下部クラッド層5、ノンドープの量子井戸活性層6、P型AlGaAs上部クラッド層7、AlGaAs高抵抗上部クラッド層8およびAlGaAs上部クラッド層9からなる断面三角形状領域30が形成されている。このN型AlGaAs下部クラッド層5はP型AlGaAs上部クラッド層7に対して屈折率が非対称になっている。つまり、上記N型AlGaAs下部クラッド層5の屈折率はP型AlGaAs上部クラッド層7の屈折率と異なっている。
また、上記逆メサリッジ3および断面三角形状領域30の両側には、N型GaAsバッファ層4’、N型AlGaAs下部クラッド層5’、ノンドープの量子井戸活性層6’、P型AlGaAs上部クラッド層7’、ノンドープのN-型AlGaAs高抵抗上部クラッド層8’およびAlGaAs上部クラッド層9’が順次形成されている。
上記AlGaAs上部クラッド層9’上には、GaAsキャップ層10およびP側電極11が順次形成されている。一方、上記N型GaAs(100)ジャスト基板1下にはN側電極12が形成されている。
なお、図1の17は、第1光出射端面に形成される光スポットである。
図2に、図1の一点鎖線を含む面で狭ビーム半導体レーザを切った概略断面図を示す。つまり、図2には、上記狭ビーム半導体レーザの共振器長方向の中央部の概略断面図が示されている。
図2の点線四角はZn拡散領域13を示している。つまり、図2において点線四角で囲んだ領域にはZnが拡散している。このため、上記AlGaAs高抵抗上部クラッド層8およびAlGaAs上部クラッド層9,9’およびGaAsキャップ層10に関して、Zn拡散領域13と重なっている部分はP型を示す。一方、上記AlGaAs高抵抗上部クラッド層8に関して、Zn拡散領域13と重なっていない部分はN-型を示す。また、上記AlGaAs上部クラッド層9,9’およびGaAsキャップ層10に関して、Zn拡散領域13と重なっていない部分はN型を示す。
なお、図2の18は、狭ビーム半導体レーザ内に形成される光導波路である。
図3に、上記狭ビーム半導体レーザを上方から見た概略図を示す。
上記光導波路18の第2光出射端面近傍の部分における幅Wrは、光導波路18の共振器長方向の中央部における幅Wc2と略等しくなっている。そして、上記光導波路18の第1光出射端面近傍の部分における幅Wf2は上記幅Wr,Wc2よりも小さくなっている。このような関係を満たす光導波路18は非励起部として機能するテーパ部15を有している。このテーパ部15は、第2光出射端面側から第1光出射端面側に近づくに従って次第に幅が狭くなっている。このテーパ部15の幅の変化率を大きくし過ぎると、光導波損失が起こるので、共振器長方向に対するテーパ部15の傾きは0度を越えかつ0.2度以下になるように設定されている。
また、上記光導波路18の第1光出射端面近傍の部分における幅Wf2は、量子井戸活性層6の第1光出射端面近傍の部分における幅Wf1と略等しく、また、上記光導波路18の共振器長方向の中央部における幅Wc2は、量子井戸活性層6の共振器長方向の中央部における幅Wc1と略等しくなっている(図1,図2参照)。なお、上記幅Wf1は上記幅c1よりも狭くなっている。
なお、図3のLtは、テーパ部15の共振器長方向の長さである。
本実施の形態では、上記N型GaAs(100)ジャスト基板1が化合物半導体基板の一例であり、逆メサリッジ3がストライプ部の一例であり、断面三角形状領域30がレーザ共振器の一例である。また、上記N型AlGaAs下部クラッド層5,5’が第1クラッド層の一例を構成し、量子井戸活性層6,6’が活性層の一例を構成し、P型AlGaAs上部クラッド層7,7’が第2クラッド層の一例を構成し、AlGaAs高抵抗上部クラッド層8,8’が電流ブロック層の一例を構成する。
上記構成の狭ビーム半導体レーザによれば、N型AlGaAs下部クラッド層5の屈折率とP型AlGaAs上部クラッド層7の屈折率とが異なっている場合、量子井戸活性層6の第1光出射端面近傍の部分における幅Wf1を狭くすると、N型AlGaAs下部クラッド層5およびP型AlGaAs上部クラッド層7のうち屈折率の高い方に光が漏れやすくなる。その結果、上記光スポット17の径が大きくなることが計算および実験により得られた。
また、上記量子井戸活性層6の共振器長方向の中央部における幅Wc1と、上記量子井戸活性層6の第2光出射端面近傍の部分における幅Wrとに比べて、量子井戸活性層6の第1光出射端面近傍の部分における幅Wf1が狭いことによって、量子井戸活性層6の第1光出射端面近傍の部分における利得の低下を防ぐことができるので、閾値電流を十分に小さくすることができる。つまり、上記特許文献1の半導体レーザの閾値電流よりも低い閾値電流が得られる。
また、上記逆メサリッジ3は、上記特許文献1の順メサリッジに比べて、リッジ表面および側面におけるストライプ方向への均一性と平坦性が優れている。
以下、上記狭ビーム半導体レーザの製造工程を、図6A〜図6Eおよび図7A〜図7Eを用いて説明する。なお、図6A〜図6Eは上記第1光出射端面近傍の部分での概略断面図であり、図7A〜図7Eは狭ビーム半導体レーザの共振器長方向の中央部での概略断面図である。
まず、図6Aおよび図7Aに示すように、N型のGaAs(100)ジャスト基板1を使用し、<011>結晶軸方向に延在するストライプ状の段差面2A,2Bによって挟まれた逆メサリッジ3を形成する。この段差面2A,2Bおよび逆メサリッジ3は、フォトリソグラフィによるウェットエッチによって形成する。このウエットエッチングでは、硫酸と過酸化水素と水の混合液をエッチング液として用いる。また、上記逆メサリッジ3の第1光出射端面近傍の部分における幅Wf3は4.0μmとし、逆メサリッジ3の共振器長方向の中央部における幅WC3は例えば5.5μmとし、逆メサリッジ3の第1光出射端面近傍の部分と逆メサリッジ3の共振器長方向の中央部とを連結するテーパリッジの長さは200μmとする。また、上記逆メサリッジ3を形成すためのフォトマスクは、上記狭ビーム半導体レーザの共振器長が800μmになるように設計する。
次に、図6Bおよび図7Bに示すように、MOCVD法によって、N型GaAsバッファ層4,4’(層厚0.5μm)、N型AlGaAs下部クラッド層5,5’(x=0.5、層厚15μm)、ノンドープの量子井戸活性層6,6’(層厚8nmのAlGaAs井戸層×2、層厚5nmのAlGaAsバリア層、層厚30nmのAlGaAsガイド層×2)、P型AlGaAs上部クラッド層7”,7’(x=0.48、0.8μm)、ノンドープのN-型AlGaAs高抵抗上部クラッド層8”,8’(x=0.48、層厚0.4μm)、N型AlGaAs上部クラッド層9”,9’”(x=0.48、15μm)、N型GaAsキャップ層10’(0.3μm)を一回で成長する。
これにより、上記逆メサリッジ3上に断面三角形状領域30が形成される。この断面三角形状領域30は、リッジ面3aに対して例えば54.7度の角度をなす(111)B面を側面として有する。この(111)B面上へは結晶成長が起こり難いので、成長層が分断された構造が形成される。
より詳しくは、上記断面三角形状領域30内(逆メサリッジ3上)では、量子井戸活性層6の第1光出射端面近傍の部分における幅Wf1を1.0μmにし、量子井戸活性層6の共振器長方向の中央部における幅Wc1を2.5μmにしている。また、上記量子井戸活性層6の両側部から埋め込み層への電流リークを極力減らすために、量子井戸活性層6の両側部がN-型AlGaAs高抵抗上部クラッド層8’の断面三角形状領域30側の側部に衝合するように、P型AlGaAs上部クラッド層7”,7’の層厚を調整している。つまり、上記N-型AlGaAs高抵抗上部クラッド層8’が量子井戸活性層6の両側面を覆うように、P型AlGaAs上部クラッド層7”,7’の層厚を調整している。
上記N型AlGaAs下部クラッド層5,5’、P型AlGaAs上部クラッド層7”,7’、N-型AlGaAs高抵抗上部クラッド層8”,8’およびN型AlGaAs上部クラッド層9”,9’”におけるxはAl組成比を現している。例えばP型AlGaAs上部クラッド層7”,7’(x=0.48、0.8μm)とは、Al0.48Ga0.52Asからなる厚さ0.8μmのP型上部クラッド層のことを意味する。上記xの値から分かるように、本実施の形態では、P型AlGaAs上部クラッド層7”,7’、N-型AlGaAs高抵抗上部クラッド層8”,8’およびN型AlGaAs上部クラッド層9”,9’”のAl組成比は、N型AlGaAs下部クラッド層5,5’のAl組成比よりも0.02だけ小さくしている。すなわち、本実施の形態では、上部クラッド層の屈折率を下部クラッド層の屈折率よりも大きくしている。
また、上記の成長層の形成には、N型ドーパントとの一例としてSiを用いると共に、P型ドーパントの一例としてC(カーボン)を用いている。また、上記SiのソースとしてはSi26を用い、上記CのソースとしてはCBr4を用いている。これらのSiおよびCは成長プロセス中に他の層に拡散しないという特徴がある。
次に、上記N型GaAsキャップ層10の表面に、図6Cおよび図7Cに示すように、プラズマCVD法によりSiO2膜61を約400nmの厚さに形成する。このときのSiO2膜61を上方から見た概略図を図8Aに示す。この図8Aに示すように、上記SiO2膜61においては、断面三角形状領域30の直上の平坦部のうち、光導波路18のテーパ部15および非励起部14上を除く部分のSiO2膜が除去されて、窓部62が形成されている。つまり、上記窓部62は、光導波路18の励起部16上に形成されている。この光導波路励起部16は、SiO2膜61に関して断面三角形状領域30の直上の平坦部に含まれている。なお、図8AのVIC−VIC線から見た概略断面図が図6Cであり、図8AのVIIC−VIIC線から見た概略断面図が図7Cである。
次に、全表面にスパッタ法によりZnO膜を数nmの厚さに形成し、SiO2膜61の上のZnO膜を除去する。これにより、図6Dおよび図7Dに示すように、SiO2膜61の窓部62内にのみZnO膜63が残る。このときのZnO膜63から見た概略図を図8Bに示す。なお、図8AのVID−VID線から見た概略断面図が図6Dであり、図8AのVIID−VIID線から見た概略断面図が図7Dである。
次に、上記基板1をRTA(高速熱処理)炉内に入れて、930℃で40秒間熱処理する。上記RTA炉とは昇温と降温を急速に行う装置である。
このRTA炉による高速熱処理中に、SiO2膜61で覆われた部分では、図6Eに示すように、量子井戸活性層6の第1光出射端面近傍の部分におけるAlGaAs井戸層のGa原子が、矢印U方向に拡散してSiO2膜61に吸収される。これにより、上記量子井戸活性層6の第1光出射端面近傍の部分が有するAlGaAs井戸層のAl組成比が増加する。すなわち、上記量子井戸活性層6の量子井戸構造が無秩序化する。この無秩序化により、図5に示すように、量子井戸活性層6の第1光出射端面近傍の部分のバンドギャップエネルギEg1は、量子井戸活性層6の共振器長方向の中央部のバンドギャップエネルギEg2よりも高くなるので、狭ビーム半導体レーザ内で導波されるレーザ光の波長に対して量子井戸活性層6の第1光出射端面近傍の部分が透明となる。従って、上記量子井戸活性層6の第1光出射端面近傍の部分では、図4に示すように、電流が注入されない非励起部となっていても、光吸収は起こらない。
一方、上記ZnO膜63で覆われた活性層幅の広い部分(量子井戸活性層6の共振器長方向の中央部)では、図7Eに示すように、高速熱処理中にZnO膜63から矢印D方向にZn原子が結晶中に拡散する。これにより、上記N-型AlGaAs高抵抗上部クラッド層8”、N型AlGaAs上部クラッド層9”,9’”およびN型GaAsキャップ層10’の一部の導電型がP型に変換される。つまり、図1および図2に示すように、N-型の部分とP型の部分とを有するAlGaAs高抵抗上部クラッド層8、N型の部分とP型の部分とを有するN型AlGaAs上部クラッド層9,9’、およびN型の部分とP型の部分とを有するN型GaAsキャップ層10が得られる。従って、上記量子井戸活性層6の共振器長方向の中央部は電流が注入される励起部となる(図4参照)。
次に、上記SiO2膜61をフッ酸により除去して、Au層とZn層とからなるP型電極11を形成し、チップ化しやすいような電極パターンを形成する。その後、ウェハ厚さが約80μmになるように、GaAs基板裏面を研磨する。そして、GaAs基板裏面に、Au層、Ge層およびNi層からなるN型電極12を形成する。
次に、活性層幅の最も狭い箇所と、活性層幅の最も広い箇所でへき開してレーザバーを作製して、活性層幅の最も狭い端面(第1光出射端面)には光透過膜を、活性層幅の最も広い端面(第2光出射端面)には光反射膜を形成した後、ダイシングによりチップ化する。
以上のようにして完成したレーザチップ(半導体レーザ)をパッケージにマウントして、レーザ特性を測定した。その結果、閾値電流の平均値は18mAであり、スロープ効率の平均値は1.1A/Wであった。また、レーザ波長は784nmであった。そして、光出力200mWでの遠視野像(半値全幅)を測定した所、活性層幅の最も狭い端面からは、θh(活性層の表面に平行な発散角)=5.8度、θv(活性層の表面に垂直な方向の発散角)=12度のレーザ光が出射される。一方、活性層幅の最も広い端面からはθh=9度、θv=16度のレーザ光が出射される。このようにして、低閾値電流と狭ビームを両立させた高出力半導体レーザが実現できた。
本発明では、GaAs基板上のリッジ形状として完全な逆メサ断面を形成したが、リッジ側面と基板主面のなす角度が90度以下であれば、断面三角形状領域の形成が可能である。
上記実施の形態では、AlGaAs系の赤外半導体レーザに本発明を適用したが、AlGaInP系の赤色レーザ、InGaAsP系の赤外半導体レーザおよびInGaN系の青色半導体レーザ等にも本発明を適用してもよい。
また、本発明が上記実施の形態に限定されないのは言うまでもない。
図1は本発明の一実施の形態の狭ビーム半導体レーザの概略斜視図である。 図2は上記狭ビーム半導体レーザの共振器長方向の中央部の概略断面図である。 図3は上記狭ビーム半導体レーザの要部の概略上面図である。 図4は上記狭ビーム半導体レーザの共振器長方向での概略断面図である。 図5は上記狭ビーム半導体レーザの共振器長方向でのエネルギーギャップの分布を示す図である。 図6Aは本発明の狭ビーム半導体レーザの一製造プロセス時の概略断面図である。 図6Bは本発明の狭ビーム半導体レーザの一製造プロセス時の概略断面図である。 図6Cは本発明の狭ビーム半導体レーザの一製造プロセス時の概略断面図である。 図6Dは本発明の狭ビーム半導体レーザの一製造プロセス時の概略断面図である。 図6Eは本発明の狭ビーム半導体レーザの一製造プロセス時の概略断面図である。 図7Aは本発明の狭ビーム半導体レーザの一製造プロセス時の他の概略断面図である。 図7Bは本発明の狭ビーム半導体レーザの一製造プロセス時の他の概略断面図である。 図7Cは本発明の狭ビーム半導体レーザの一製造プロセス時の他の概略断面図である。 図7Dは本発明の狭ビーム半導体レーザの一製造プロセス時の他の概略断面図である。 図7Eは本発明の狭ビーム半導体レーザの一製造プロセス時の他の概略断面図である。 図8Aは図6Cおよび図7Cにおける上記狭ビーム半導体レーザの概略上面図である。 図8Bは図6Dおよび図7Dにおける上記狭ビーム半導体レーザの概略上面図である。 図9は従来の狭ビーム半導体レーザの概略斜視図である。
符号の説明
1 N型GaAs(100)ジャスト基板
2A,2B 段差面
3 逆メサリッジ
4,4’ N型GaAsバッファ層、
5,5’ N型AlGaAs下部クラッド層、
6,6’ 量子井戸活性層
7,7’ P型AlGaAs上部クラッド層
8 AlGaAs高抵抗上部クラッド層
8’ ノンドープのN-型AlGaAs高抵抗上部クラッド層
9,9’ AlGaAs上部クラッド層
10 GaAsキャップ層
11 P側電極
12 N側電極
13 Zn拡散領域
14 非励起部
15 テーパ部
16 励起部
17 光スポット
18 光導波路
19 リッジ面
30 断面三角形状領域
62 窓部
61 SiO2
62 窓部
63 ZnO膜

Claims (12)

  1. <011>結晶軸方向に延在するストライプ部が形成され、(100)結晶面を主面とする化合物半導体基板と、
    上記ストライプ部上に形成されたレーザ共振器と
    を備え、
    上記レーザ共振器は、上記化合物半導体基板上に形成された第1クラッド層と、上記第1クラッド層上に形成された活性層と、上記活性層上に形成された第2クラッド層とを有し、
    上記レーザ共振器の一方の端部における幅は、上記レーザ共振器の共振器長方向の中央部における幅と、上記レーザ共振器の他方の端部における幅とに比べて狭く、
    上記第2クラッド層の屈折率は上記第1クラッド層の屈折率と異なることを特徴とする半導体レーザ。
  2. 請求項1に記載の半導体レーザにおいて、
    上記レーザ共振器によって形成される光導波路は、上記レーザ共振器の他方の端部側から上記レーザ共振器の一方の端部側へ向かって幅が連続的に狭くなるテーパ部を有することを特徴とする半導体レーザ。
  3. 請求項1に記載の半導体レーザにおいて、
    上記第2クラッド層上に形成された電流ブロック層を備え、
    上記ストライプ部はリッジ部であり、
    上記活性層は量子井戸活性層であり、
    上記第1クラッド層、上記量子井戸活性層、上記第2クラッド層および上記電流ブロック層はエピタキシャル成長で形成され、
    上記量子井戸活性層は、上記リッジ部上に位置する部分と、上記リッジ部の両側方に位置する部分とに分断され、
    上記電流ブロック層の上記リッジ部上の部分の少なくとも一部は電流ブロック機能を消失していることを特徴とする半導体レーザ。
  4. 請求項3に記載の半導体レーザにおいて、
    上記電流ブロック層は、上記リッジ部上に位置する部分と、上記リッジ部の両側方に位置する部分とに分断され、
    上記量子井戸活性層の上記リッジ部上の部分における両側面は、上記電流ブロック層の上記リッジ部側方の部分で覆われていることを特徴とする半導体レーザ。
  5. 請求項3に記載の半導体レーザにおいて、
    上記量子井戸活性層に関して、上記レーザ共振器の一方の端面近傍の部分は量子井戸構造が無秩序化されていることを特徴とする半導体レーザ。
  6. 請求項3に記載の半導体レーザにおいて、
    上記化合物半導体基板はGaAsからなり、
    上記第1クラッド層、上記量子井戸活性層、上記第2クラッド層および上記電流ブロック層は、AlGaAs系またはAlGaInP系またはGaAs系またはGaInP系の化合物半導体からなり、
    上記第2クラッド層の屈折率は上記第1クラッド層の屈折率よりも高いことを特徴とする半導体レーザ。
  7. 請求項3に記載の半導体レーザにおいて、
    上記第1クラッド層、上記量子井戸活性層、上記第2クラッド層および上記電流ブロック層のエピタキシャル成長は有機金属気相成長法で行われたことを特徴とする半導体レーザ。
  8. 請求項3に記載の半導体レーザにおいて、
    上記電流ブロック層の上記リッジ部上の部分の少なくとも一部には、上記電流ブロック層上に形成されたZnO薄膜のZnが拡散していることを特徴とする半導体レーザ。
  9. 請求項5に記載の半導体レーザにおいて、
    上記量子井戸構造の無秩序化は、上記量子井戸活性層上に形成したSiO2膜を高速昇温熱処理法で熱処理することにより行われたことを特徴とする半導体レーザ。
  10. 請求項3に記載の半導体レーザにおいて、
    上記電流ブロック層の上記リッジ部上の部分に関して、上記レーザ共振器の一方の端面近傍の部分は電流ブロック機能を有する一方、上記レーザ共振器の一方の端面近傍の部分以外の部分は電流ブロック機能を消失していることを特徴とする半導体レーザ。
  11. 請求項10に記載の半導体レーザにおいて、
    上記電流ブロック機能を消失している部分には、上記電流ブロック層上に形成したZnO薄膜を高速熱処理法で熱処理することにより、上記ZnO薄膜のZnが拡散していることを特徴とする半導体レーザ。
  12. 請求項1に記載の半導体レーザにおいて、
    上記第1クラッド層または上記第2クラッド層には、CBr4をソースとしたCが不純物としてドーピングされていることを特徴とする半導体レーザ。
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