JP2006145495A - 検査対象物判別方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 検査対象物75を打撃する加振手段71と、打撃によって生じる振動を受信する振動受信手段72を設ける。また、振動受信手段72からの信号を周波数解析し、検査対象物75に固有の周波数分布中の波形データを取得し、これと基準物について周波数解析し取得しておいた基準波形データとの間の周波数差により検査対象物判別を行う解析判別手段73を設ける。上記波形データは、検査対象物75の基本波よりも高い周波数側の所定の高次波における波形データを選択することで上記周波数差を大きくとり、判別に用いるしきい値の選択を容易にした。検査に用いる基準波形データを用意しておくだけで、良品、不良品等の様々な検査を共通の手法で実行可能とした。
【選択図】 図7
Description
そこで、検査対象物に打撃を加えることによって生じる振動(音)を周波数解析して上記検査対象物に固有の基本波又はこれに隣接する波形を取得し、そのピーク値を含む波形と、予め取得しておいた基準波形との間の周波数差によって、検査対象物の表面欠陥の有無を判別する方法が提案された。
これによれば、視覚に頼った検査ではない点で検出力を向上できるが、上記の周波数差が小さく、割れ等の表面欠陥の有無判別に用いるしきい値(周波数)の設定が困難となった。このため、判別精度を上げることができない場合もあり、従来、この点についての改善が要望されていた。またこの方法においては、検査対象物の内部欠陥(内部酸化等の内部組織の欠陥)を判別することはできず、内部欠陥も検出したい場合には、別途、異なる手法で行わなければならず煩雑であり、この点についての改善も要望されていた。
また本発明の目的は、検査対象物の量産工程においてラインの一時停止等で検査対象物に温度の変化が生じた場合にも、表面欠陥や内部欠陥を判別できる検査対象物判別方法及び装置を提供することにある。
特許請求の範囲の請求項3に記載の発明は、上記請求項1に記載の検査対象物判別方法において、基準波形データに、焼入れされた基準物の波形データを用い、検査対象物の焼入れ済みか否かの判別を行うことを特徴とする。
特許請求の範囲の請求項4に記載の発明は、上記請求項1に記載の検査対象物判別方法において、基準波形データに、特定材質の基準物の波形データを用い、検査対象物が前記特定材質によるものか否かの判別を行うことを特徴とする。
周波数解析の結果として得られる周波数分布は、その検査対象物の形状、寸法、密度、材質、更には表面や内部の欠陥の有無、あるいはその検査対象物が焼入れ済みか否かの性状等(属性)を反映して固有のパターンを示す。このため、検査対象物についての周波数分布を、基準とする対象物、つまり基準物について予め周波数解析して得ておいた周波数分布のパターンデータ(周波数分布データ)と比較すれば、基準物との材質の異同、つまり基準物と同材質のものかどうかを判別できる。また基準物の周波数分布データとして、表面や内部に欠陥のない特定の部材、製品(良品)や、焼入れ済みの特定の部材、製品についての周波数分布データを保持しておき、ある検査対象物について、保持しておいた上記周波数分布データと一致するかを比較すれば、その検査対象物が良品であるか、あるいは焼入れ済みかどうかを判別することができる。
また上述したように、周波数解析の結果として得られる周波数分布データによって行われる、基準物に対する検査対象物の判別は、何を判別するかという判別目的に応じて保持しておく基準波形データ別に任意に行うことができる。すなわち、それらの基準波形データを予め用意しておけば、材質の異同、表面や内部の欠陥の有無、あるいはその検査対象物が焼入れ済みか否か等について、共通の手法で同様に判別することができる。
したがって、請求項1に記載の発明によれば、表面や内部の欠陥の検査や、検査対象物が焼入れされているか、あるいは特定材質か否かを高効率、低コストで行うことができる。目視によらないので、それらの検査、判別が高精度で行われることは勿論である。
なお、「所定の高次波」は、基準物について基準波形データを得る際等において、実験や計算を行って選択、保持される。
特許請求の範囲の請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、基準波形データに、焼入れされた基準物の波形データを用いるので、検査対象物の焼入れ済みか否かの判別方法を具体的に実現できる。
特許請求の範囲の請求項4に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、基準波形データに、特定材質の基準物の波形データを用いるので、検査対象物が前記特定材質によるものか否かの判別方法を具体的に実現できる。
なお、種々の基準物に係る基準波形データは、装置内部の記憶装置あるいは外部の記憶装置に予め蓄積、保持しておくことが好ましい。
量産ライン等の環境に変化があり、製造された部材、製品等(検査対象物)の間に温度変化が生じると、その検査対象物に固有の周波数分布が変動し、上述した固有の周波数を用いた判別方法では判別不可能となる。しかし、量産ライン環境に温度変化が生じても、自身の温度は、連続的に加えられる打撃が済む間(短時間)変わらない。したがって、量産ラインの一時停止等で検査対象物である製品間に温度差が生じた場合でも、特定の検査対象物の表面欠陥や内部欠陥を判別できる。なお、本発明によれば、表面欠陥又は内部欠陥が生じている大凡の位置も分かる。
まず、本発明(第1の発明)に係る検査対象物判別方法について説明する。
部材、製品等の物体に打撃を加え、自由振動を与えればその物体は、次式(1)で与えられる固有周波数(固有振動数)fで振動する。
f=〔(α2/L2)×(EI/ρS)1/2〕/2π …(1)
ただし、αは定数、Lは検査対象物の長さ、Eは弾性率(ヤング率:σ/ε)、Iは慣性モーメント、ρは密度、Sは断面積、πは円周率である。
そしてこの固有周波数を基本波として、それより高い周波数側に高次波が生じる。
図1中には、2つの周波数分布波形P11,P12が示されているが、2つの物体の材質が異なれば、その周波数分布波形も異なる。つまり、周波数分布波形はその物体に固有のものである。このことから、材質の相違は周波数分布波形の相違となって表われることが分かる。
図2は、これを基本波P1(図1参照)より高い周波数領域において、上述したような種々の属性をもつ多数の検査対象物(設計値が同じ部材、製品)、ここでは焼結コンロッドについての周波数分布波形を示す。
この図2に示すように、表面欠陥(ここでは割れ)の大小によって周波数分布波形のピーク値をとる周波数が異なり、また内部欠陥(ここでは内部酸化)が生じていると、大凡定まった周波数領域内に周波数分布波形のピーク値が現れる。また、それらピーク値間にも周波数差が生じている。欠陥のない物体(良品)については、大凡、欠陥品(不良品)に比べて更に高い周波数側にピーク値が集中している。
このことから、また図1との比較から、周波数解析により得られた周波数分布波形における、基本波から高い周波数側に離れた高次波のピーク値を含む波形相互を比較すれば、上記良品と不良品との相違がより高精度に判別でき、また、材質の相違(異材品か否か)も高精度に判別可能であることが分かる。
図3は割れの有無を、図4は焼入れ済みか否かを、図5は一方の材質が他方の材質と同じか否かを、各々設計値を同じくする検査対象物について、容易に判別できることを表す。
すなわち図3〜図5は、基準物と検査対象物との間で検出される、ピーク値を含む波形相互間における周波数差(幅)fwが、基本波又はそれに隣接する波動相互間で比較した場合(各(a)図)と、基本波から高い周波数側に離れた高次波のピーク値を含む波形相互間で比較した場合(各(b)図)とを、比較対照した図である。なお、各図中の波形は、同じ基準物、検査対象物に対して、各々複数回加振し解析して得られた波形を重ねて示したものである。
ここで基準物とは、図3では良品、図4では焼入れ品(焼入れ済み品)、図5では一方の材質:S48C(炭素鋼)を指し、また検査対象物とは、同様に不良品、未焼入れ品、あるいは他方の材質:SCr20(クロム鋼)を指す。基準物及び検査対象物は同一設計値で製造、加工されたものである。図3〜図5中の各波形において、実線31,41,51が基準物の波形を、破線32,42,52が検査対象物の波形を示す。 図3〜図5を比較対照すると、この図3〜図5における各(b)図で示す場合、つまり基本波から高い周波数側に離れた高次波のピーク値を含む波形相互間で比較した場合は、各(a)図で示す場合より、いずれも周波数差fwが大きいことが分かる。したがって、割れのない良品か否か、焼入れ済み品か否か、あるいは一方の材質と同じか否かの判別に当たって境界値となるしきい値(周波数)の設定が容易になることが分かる。
このしきい値は、図示周波数差fwの範囲内において設定されることはいうまでもないが、これに縦軸に示す信号レベルの範囲もしきい値(上下限値)として設定してもよく、これによれば、判別の精度を上げることができる。周波数に係るしきい値も、周波数差fwの範囲内に加え、これとはピーク値の周波数を挟んで反対側(図中、右側)にも設定、つまり上下限値として設定するようにしてもよい。
内部酸化の判別についても、その有無や程度に応じて、周波数解析で得た周波数分布波形中のピーク値を含む波形相互間に周波数差が生じるので、後述するようにその判別が可能である。
なお上掲図1中、f11は本発明方法において周波数解析の対象としている周波数領域(0Hz〜40kHz程度)を示し、f12は従来の検査対象物判別方法において周波数解析の対象としている周波数領域(0Hz〜10kHz程度)を示す。本発明方法における周波数領域f11は可聴域から超音波域までの広い範囲に及んでいることが分かる。
この図6において、周波数領域A〜Cのうち、最も高い周波数領域Aにピーク値波形(ピーク値を含む波形)を示す試料群が内部酸化のない良品群である。次に高い周波数領域Bにピーク値波形を示す試料群は、内部酸化が僅かにあるが良品と判別して差し支えのない試料群である。周波数領域Cにピーク値波形を示す試料群は、内部酸化があって不良品と判別される試料群となる。
なお、内部酸化があると物体組織中に細かな孔が散在し、強度を低下させる。細かな孔は、内部酸化の程度が高くなるほど多数現れ、強度低下の度合いを高める。
しかも、検査対象物の基本波よりも高い周波数側の所定の、つまり実験や計算等により予め選択しておいた高次波におけるピーク値を含む波形データと、検査対象物に係る基準物についてその検査対象物に対する検査時と同じ条件下で予め周波数解析し取得しておいた基準波形データとの周波数差による場合には、検査対象物の判別に用いるしきい値の選択が容易になる。上記両波形データ間の周波数差は、基本波P1又はそれに隣接する波動相互間で比較する場合の周波数差よりも大きくなるからである。
本発明方法は、以上のような知見に基づきなされたものである。
図示するように、検査対象物判別装置は、加振手段71と振動受信手段72と解析判別手段73とモニタ74とを備えてなる。
この場合、加振手段71は、検査対象物(ここでは焼結コンロッド)75に打撃を加える手段であって、例えば空気圧で駆動されるハンマからなる。ここで、検査対象物75は、打撃を受けた際に自由振動可能に、例えばゴム板等の支持台76上に置かれている。
振動受信手段72は、加振手段71による打撃によって生じる検査対象物75の振動(音)を広帯域で受信する手段であって、ここでは0Hz〜40kHzまでの帯域幅を有するマイクロホンからなり、検査対象物75に近接配置されている。
解析判別手段73としては、例えば必要事項が記述されたプログラムを実行して上述したような解析判別処理を行うコンピュータが用いられ、この解析判別手段73による判別結果はモニタ74に表示される。例えば、表面割れ検査の場合には、検査対象物75の品番、シリアル番号と、割れあり、なしの別がモニタ74に表示される。
図7において、まず検査対象物75を支持台76上に載置すると共に、支持台76の位置を調整して加振手段71に対する検査対象物75の位置合わせを行い、その後、加振手段71が駆動して検査対象物75を打撃する。
この打撃により、検査対象物75には自由振動が生じ、この振動は振動受信手段72が受信する。受信帯域は0Hz〜40kHzまでと広帯域である。振動受信手段72は、受信した振動を電気信号に変換し、解析判別手段73に与える。
解析判別手段73は、振動受信手段72からの受信信号(振動データ)にフーリエ変換を施して周波数解析を行う。このように周波数解析して得られた周波数分布波形の一例が図1に示す波形である。
そこで、上記属性が既知の製品(良品、焼入れ済み品等の基準物)につき、検査対象物75に対する検査時と同じ条件下で予め周波数解析して周波数分布波形を多数取得し、基準波形データとして記憶しておくことにより、これを検査対象物75の判別、つまり良品か否か、焼入れ済み品か否か等の判別に利用できる。
すなわち、ある検査対象物75について、振動測定し周波数解析し取得した周波数分布波形を、予め多数記憶しておいた上記基準物の周波数分布波形(基準波形データ)の何れかと一致するかを比較対照すれば、その検査対象物75が良品であるか、あるいは焼入れ済み品であるか等を判別することができる。
まず、図8に示すように検査対象物(焼結コンロッド)75を所望の方向に沿って複数位置、図示例では位置イ〜ホの5箇所について連続的に打撃を加えながら各位置イ〜ホにおいて生じる振動(音)を広帯域、ここでは0Hz〜40kHzまでの帯域で受信する。そして、受信された各振動について周波数解析し、その検査対象物に固有の周波数分布(周波数スペクトル)中の同一次の波動、例えば基本波や同一次の高次波におけるピーク値を含む波形データを各々取得する。そして、これらのうちの何れか1つのデータ、例えば最初の打撃位置イにおけるデータ(基本的にはピーク値データ)を基準に、その基準のデータ値との間の周波数変化率を各々求め、求められた各周波数変化率の変化によって上記検査対象物75の表面欠陥や内部欠陥の有無の判別を行う。
図9は、位置イ〜ホにおいて各々求められた周波数変化率の変化曲線を、3つの態様で示す。この場合、変化曲線91は割れがなく、内部酸化が僅かにある検査対象物、変化曲線92は内部酸化のある検査対象物、変化曲線93は割れのある検査対象物についての曲線を各々例示している。なお、位置イ〜ホにおける変化率が各々「1」となるのは、検査対象物75に割れも内部酸化もない場合である。
このように、変化曲線91〜93の形態を見れば、つまり周波数変化率を各々求めれば、検査対象物75の表面欠陥や内部欠陥の有無の判別ができる。なお、曲線91,92から分かるように、割れや内部酸化等の欠陥位置において周波数変化率が低下しているので、欠陥が生じている大凡の位置も分かる。図示例では、位置ロ,ハ部分において欠陥が生じていることが分かる。
上述した第3の発明に係る検査対象物判別方法の装置(第4の発明)への適用は、例えば図7中の支持台76を任意方向に任意間隔で移動、停止可能とし、この支持台76の移動に応じて加振手段71が検査対象物75に打撃を加え、振動受信手段72が各停止位置における打撃のタイミングで検査対象物75の振動を受信する構成とすることで実現できる。
したがって、量産ラインの一時停止等で検査対象物である製品間に温度差が生じた場合でも、特定の検査対象物の表面欠陥や内部欠陥を判別できる。また、表面欠陥又は内部欠陥が生じている大凡の位置も分かる等の利点がある。
なお、図7に示す装置においては、振動受信手段にマイクロホン、つまり非接触式の振動受信手段を用いたが、これのみに限らず、接触式の振動受信手段を用いてもよい。
Claims (7)
- 検査対象物に打撃を加えることによって生じる該検査対象物の振動を受信し、この受信された振動を周波数解析し、該検査対象物に固有の周波数分布中の、該検査対象物の基本波よりも高い周波数側の所定の高次波におけるピーク値を含む波形データを取得し、この波形データと、前記検査対象物に係る基準物について、前記検査対象物に対する検査時と同じ条件下で予め周波数解析し取得しておいた基準波形データとの間の周波数差によって、前記検査対象物の判別を行うことを特徴とする検査対象物判別方法。
- 請求項1に記載の検査対象物判別方法において、
基準波形データは表面欠陥又は内部欠陥のない基準物の波形データであり、検査対象物の表面欠陥又は内部欠陥の有無の判別を行うことを特徴とする検査対象物判別方法。 - 請求項1に記載の検査対象物判別方法において、
基準波形データは焼入れされた基準物の波形データであり、検査対象物の焼入れ済みか否かの判別を行うことを特徴とする検査対象物判別方法。 - 請求項1に記載の検査対象物判別方法において、
基準波形データは特定材質の基準物の波形データであり、検査対象物が前記特定材質によるものか否かの判別を行うことを特徴とする検査対象物判別方法。 - 検査対象物に打撃を加える加振手段と、
前記打撃によって生じる前記検査対象物の振動を受信する振動受信手段と、
この振動受信手段によって受信された振動を周波数解析し、前記検査対象物に固有の周波数分布中の、該検査対象物の基本波よりも高い周波数側の所定の高次波におけるピーク値を含む波形データを取得し、この波形データと、前記検査対象物に係る基準物について、前記検査対象物に対する検査時と同じ条件下で予め周波数解析し取得しておいた基準波形データとの間の周波数差によって、前記検査対象物の判別を行う解析判別手段とを具備することを特徴とする検査対象物判別装置。 - 検査対象物の所望方向に沿う複数位置について連続的に打撃を加えながら各位置において生じる該検査対象物の振動を受信し、この受信された各振動について周波数解析し、該検査対象物に固有の周波数分布中の同一次の波動におけるピーク値を含む波形データを各々取得し、それらのうちの何れか1つのデータを基準に、その基準データ値との間の周波数変化率を各々求め、求められた各周波数変化率の変化によって前記検査対象物の表面欠陥又は内部欠陥の有無の判別を行うことを特徴とする検査対象物判別方法。
- 検査対象物に打撃を加える加振手段と、
前記打撃によって生じる前記検査対象物の振動を受信する振動受信手段と、
前記検査対象物の打撃位置を移動させる移動手段と、
前記検査対象物を打撃することによって生じる該検査対象物の振動を、該検査対象物の所望方向に沿う複数位置について連続的に受信し、この受信された各振動について周波数解析し、該検査対象物に固有の周波数分布中の同一次の波動におけるピーク値を含む波形データを各々取得し、それらのうちの何れか1つのデータを基準に、その基準データ値との間の周波数変化率を各々求め、求められた各周波数変化率の変化によって前記検査対象物の表面欠陥又は内部欠陥の有無の判別を行う解析判別手段とを具備することを特徴とする検査対象物判別装置。
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