JP2006144934A - 動力伝達シャフト - Google Patents
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Abstract
【解決手段】外周セレーション1a、1bなどが形成された動力伝達シャフトであって、外周セレーション1a、1bの切り上がり部1cの外表面からの深さ30μm、さらには外表面からの深さ50μmにおける圧縮残留応力を管理指標にして、ねじり疲労強度の評価を行う。そして、外表面からの深さ30μm、さらには外表面からの深さ50μmにおいて、1150MPa以上の圧縮残留応力を有するようにすると、高いねじり疲労強度を確保することができる。
【選択図】図3
Description
本発明の動力伝達シャフトは、自動車及び産業機械などに用いられることは、上述したとおりである。特に、自動車に用いられる動力伝達シャフトとしては、自在継手に連結される自動車用動力伝達シャフトなどである。例えば、動力伝達シャフトは、等速ジョイントなどの自在継手が両端側に連結された中間シャフトである。なお、動力伝達シャフトは、金属材料からなり、例えば、鉄を主成分とする鉄系の材料からなる。
本発明の軸方向切欠部は、軸方向断面で見た場合に、凹みが形成される部分である。この凹みは、周方向全周に凹みが形成される場合や、周方向の一部に凹みが形成される場合などがある。例えば、動力伝達シャフトが自在継手に連結される自動車用動力伝達シャフトの場合には、周方向全周に凹みが形成される軸方向切欠部は、自在継手を被覆するブーツが取付けられる部分などである。また、周方向の一部に凹みが形成される軸方向切欠部は、自在継手が組付けられる部位などであって、外周側のセレーションやキー溝などである。
本発明の圧縮残留応力の付与は、ショットピーニング処理により行われる。このショットピーニング処理は、平均粒半径が前記軸方向端部の最小曲率半径の3分の1〜3分の2の半径で、硬度が前記軸方向端部の処理前外表面硬度より50〜300Hv高い硬度からなる投射材を55〜90m/secの速度で前記軸方向端部に投射する処理である。このようなショットピーニング処理により、確実に外表面から所定深さの部位に1150MPa以上の圧縮残留応力を付与することができる。
本発明の動力伝達シャフトとして、自動車用ドライブシャフトに用いられる中間シャフトを例に挙げて説明する。まず、自動車用ドライブシャフトについて、図1を参照して説明する。図1は、自動車用ドライブシャフトの軸方向断面図を示す。図1に示すように、自動車用ドライブシャフトは、中間シャフト1と、インボードジョイント2と、アウトボードジョイント3と、ブーツ4、5とから構成されている。
中間シャフト1は、中実の棒状からなる動力伝達シャフトである。つまり、中間シャフト1は、インボードジョイント2の駆動軸側から入力される動力をアウトボードジョイント3の被駆動軸側に伝達する。この中間シャフト1の両端部の外周面には、軸方向に平行な外周セレーション1a、1bが形成されている。
インボードジョイント2は、スライド式トリポード型ジョイントからなる等速ジョイントである。このスライド式トリポード型ジョイントからなるインボードジョイント2は、図1に示すように、中間シャフト1の動力入力側に連結されている。このインボードジョイント2は、トリポード型インナ部材11と、トリポード型ローラ12と、トリポード型アウタ部材13とから構成される。
アウトボードジョイント3は、固定式ボールジョイントからなる等速ジョイントである。この固定式ボールジョイントからなるアウトボードジョイント3は、図1に示すように、中間シャフト1の動力出力側に連結されている。このアウトボードジョイント3は、ボール型インナ部材41と、ボール型アウタ部材42と、ケージ43と、ボール44とから構成される。
ブーツ4は、蛇腹状に形成され、一端側が中間シャフト1のブーツ取付用凹溝1eに固定され、他端側がインボードジョイント2のブーツ取付用凹溝32bに固定されている。また、ブーツ5は、蛇腹状に形成され、一端側が中間シャフト1のブーツ取付用凹溝1fに固定され、他端側がアウトボードジョイント3のブーツ取付用凹溝52cに固定されている。
次に、上述した中間シャフト1の製造方法について説明する。まず、中間シャフト1は、略棒状の鋼材からなる素材に外周セレーション1a、1b及びブーツ取付用凹溝1e、1fが加工形成される。例えば、外周セレーション1a、1bは転造により形成され、ブーツ取付用凹溝1e、1fは旋削加工により形成される。
次に、中間シャフト1の外周セレーション1a、1bの部分に施すショットピーニング処理を種々の条件について行い、それぞれの場合におけるねじり疲労強度について評価した。以下に、ショットピーニング処理前の中間シャフト1の形状・硬度、ショットピーニング処理の条件、ショットピーニング処理後の圧縮残留応力分布、ねじり疲労試験、ねじり疲労強度の評価結果について説明する。
まず、ショットピーニング処理を施す前の中間シャフト1について説明する。この中間シャフト1の外周セレーション1a、1bは、セレーションモジュールが1.05833である。そして、セレーション1a、1bの切り上がり部1cの最小曲率半径は、0.15mmである。この最小曲率半径の部分は、上述したように、図2(b)に示すセレーション1aの歯底部分の両端部分1dである。また、ショットピーニング処理前におけるセレーション1a、1bの切り上がり部1cの外表面硬度は、700Hvである。すなわち、ショットピーニング処理の前に行う熱処理により、表面硬度(処理前外表面硬度)が700Hvとなるようにしている。また、熱処理が施された中間シャフト1は、外表面の圧縮残留応力が約230MPaであって、外表面からの深さが深くなるほど圧縮残留応力が徐々に小さくなっている。
次に、ショットピーニング処理の条件について説明する。ショットピーニング処理の条件は、表1に示すように、case1〜case6の6種類の条件とした。表1に示すように、これらの条件は、投射材の種類及びアークハイトを異なる条件としている。具体的には、投射材の材質・平均粒径(直径)・平均硬度及びアークハイトを異なる条件としている。
ここで、上述したショットピーニング処理を施した後の中間シャフト1の外周セレーション1a、1bの切り上がり部1cにおける圧縮残留応力について測定した。具体的には、切り上がり部1cにおける外表面からの深さに対する圧縮残留応力を測定した。圧縮残留応力の測定は、外表面から軸心側に向かって電解研磨により掘っていき、外表面からの所定深さ毎に圧縮残留応力をX線応力測定機により測定した。なお、比較のため、ショットピーニング処理を行う前の中間シャフト1の外周セレーション1a、1bの切り上がり部1cにおける圧縮残留応力についても測定した。
上述したそれぞれの条件からなるショットピーニング処理を施した中間シャフト1及びショットピーニング処理を施していない中間シャフト1に対して、以下のねじり疲労試験を行った。ねじり疲労試験は、中間シャフト1の両端の外周セレーション1a、1bを把持して、700Nmのトルクを回転方向を交互に変えながら付与することにより行う。このトルクの付与を中間シャフト1に破断が生じるまで継続する。そして、トルクの付与回転方向を変更した場合のカウント数を1回として、中間シャフト1に破断が生じるまでのカウント数を計測した。なお、中間シャフト1に破断が生じる箇所は、通常、外周セレーション1a、1bの切り上がり部1cとなる。
上述したねじり疲労試験の測定結果について、図4を参照して説明する。図4は、ねじり疲労試験の測定結果を示す。すなわち、図4は、ショットピーニング処理の条件毎に、中間シャフト1に破断が生じるまでのカウント数を示す。図4に示すように、case1のカウント数は、117万499回、case2のカウント数は、75万349回、case3のカウント数は、53万7282回であった。case4のカウント数は、23万2965回、case5のカウント数は、12万3495回、case6のカウント数は、10万4044回であった。また、ショットピーニング処理を施さない場合には、13万8427回であった。ここで、カウント数が大きいほど、ねじり疲労強度が高いことになる。
Claims (6)
- 外周面に軸方向切欠部が形成された動力伝達シャフトであって、
前記軸方向切欠部の軸方向端部の外表面から深さ30μmにおいて1150MPa以上の圧縮残留応力を有することを特徴とする動力伝達シャフト。 - さらに、前記軸方向端部の外表面からの深さ50μmにおいて1150MPa以上の圧縮残留応力を有することを特徴とする請求項1記載の動力伝達シャフト。
- 前記圧縮残留応力は、平均粒半径が前記軸方向端部の最小曲率半径の3分の1〜3分の2の半径で、硬度が前記軸方向端部の処理前外表面硬度より50〜300Hv高い硬度からなる投射材を55〜90m/secの速度で前記軸方向端部に投射するショットピーニング処理により付与されることを特徴とする請求項1又は2に記載の動力伝達シャフト。
- 前記動力伝達シャフトは、前記ショットピーニング処理の前に前記軸方向端部に熱処理が施されることを特徴とする請求項3記載の動力伝達シャフト。
- 前記軸方向切欠部は、セレーションであることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の動力伝達シャフト。
- 前記動力伝達シャフトは、自在継手に連結される自動車用動力伝達シャフトであり、
前記軸方向切欠部は、前記自在継手に組み付ける部位であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の動力伝達シャフト。
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