JP2006139208A - 能動消音制御装置 - Google Patents

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Abstract


【課題】 モータの速度ゲインの変化に伴って様々な周波数の騒音が発生するような状況でも、その様々な周波数の騒音を追従遅れなく確実に打消すことが可能な能動消音制御装置を提供する。
【解決手段】 適応フィルタの適応フィルタ係数を決定する要素であり且つ音の収束速度を決定する制御パラメータである収束係数を、モータの速度ゲインが設定値以上の場合に大きく設定して設定値未満の場合に小さく設定する。
【選択図】 図6

Description

この発明は、空気調和機等の騒音を打消す能動消音制御装置に関する。
一般に、空気調和機は、室外機および室内機により構成されている。室外機にはコンプレッサモータおよび室外ファンモータが搭載され、室内機には室内ファンモータが搭載されている。これらモータは運転時に音を発するが、その音が騒音となって居住者に不快感を与えることがある。
このような不快な音を防ぐ手段として、能動消音制御装置(アクティブ消音制御装置ともいう;ANC)が知られている(例えば特許文献1)。
能動消音制御装置は、モータの音に対する打消用の音を生成し、この生成した音を制御用スピーカからモータに向け放射するとともに、その放射領域の音をモニタ用マイクで捕らえ、捕らえた音が小さくなるように上記生成を補正する。
特開平2−226019号公報
モータ制御では、目標速度と現行速度との差や、負荷条件などにより、加減速時の速度ゲイン(単位時間当たりの速度変動量)を切り換える制御が行われる。たとえば、目標速度と現行速度との差が大きい場合には、速度ゲインを大きく設定して速度(回転数)を早期に目標速度に到達させ、差が小さくなったら、速度ゲインを小さく設定して、速度が目標速度を挟んで変動してしまうハンチングを防ぐ制御が行われる。
一方、モータの音(電磁音)は、モータの回転数がr(rps)である場合に、rの整数倍の周波数の成分が騒音レベルとなる。このため、上記のように速度ゲインが大きく設定されて速度(回転数)の変動幅が大きくなると、様々な周波数の騒音が発生するようになり、ある周波数の騒音に対する打消用音が生成されそれが放射されて騒音が打消されていく間に、別の周波数の騒音が発生し、騒音の打消しが追い付かない状況となる。
この発明は、上記の事情を考慮したもので、モータの速度ゲインの変化に伴って様々な周波数の騒音が発生するような状況でも、その様々な周波数の騒音を追従遅れなく確実に打消すことが可能な能動消音制御装置を提供することを目的としている。
また、ファンの騒音に対する能動消音制御装置においては、ファンの前後に騒音が生じるため、一方向だけの騒音を打ち消しても十分ではない。このため、ファンの前後の騒音を打ち消すためには、ファンの前後方向に打消し音を出すことのできる構成が必要である。そこで、簡単な構成でファンの前後方向の騒音を打消すことのできるスピーカ構造を得ることを目的とする。
さらに、空気調和機においては、利用者の居住空間に最も近いところに設置されるリモートコントロール装置の周囲の騒音を小さくすることが効果的である。そこで、リモートコントロール装置周辺の騒音を打ち消す能動消音制御装置を得ることを目的とする。
請求項1に係る発明の能動消音制御装置は、音信号を生成して出力する適応フィルタを備え、消音対象のモータの音をモニタ用マイクで捕らえ、モニタ用マイクからの入力と前記適応フィルタの出力との差をその適応フィルタにフィードバックして同適応フィルタの適応フィルタ係数を修正することにより、モータの音に対する打消用の音信号を適応フィルタから得て制御用スピーカに供給し、制御用スピーカから出る音をモータに向け放射するものであって、適応フィルタ係数を決定する要素であり且つ音の収束速度を決定する制御パラメータである収束係数を、モータの速度ゲインが設定値以上の場合に大きく設定して設定値未満の場合に小さく設定する制御手段、を備えている。
請求項5に係る発明の能動消音制御装置は、ファンの音に対する打消用の音を生成して制御用スピーカから発するものであって、制御用スピーカについて限定している。制御用スピーカは、励磁ユニットおよび振動板からなり、振動板の前側に出る音の位相と後側に出る音の位相が互いに逆で、背後に遮音箱を持たない構成である。この制御用スピーカの振動板の前側がファンの送風下流側に対応し、かつ振動板の後側がファンの送風上流側に対応する状態に、同制御用スピーカが配置されている。
請求項7に係る発明の能動消音制御装置は、室内機およびその室内機に対する運転操作用のワイヤレス式のリモートコントロール装置に搭載されており、リモートコントロール装置に、室内機から出る音を捕らえる参照用マイクと、室内機から出る音に対する打消用の音を放射する制御用スピーカと、この制御用スピーカから放射される音の放射領域に配置されるモニタ用マイクと、上記参照用マイクおよび上記モニタ用マイクからの入力に応じて上記打消用の音を生成する制御手段とを備えている。
この発明の能動消音制御装置によれば、モータの速度ゲインの変化に伴って様々な周波数の騒音が発生するような状況でも、その様々な周波数の騒音を追従遅れなく確実に打消すことができる。
[1]以下、この発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。
図1において、1は室外機で、コンプレッサ2、室外ファン3、モニタ用マイク4、制御用スピーカ5、能動消音制御基板(以下、ANC制御基板という)6、および制御基板7を有している。モニタ用マイク4は、制御用スピーカ5から放射される音の放射領域に配置され、その放射領域内の音を捕らえる。制御用スピーカ5は、コンプレッサ2のモータ(後述のコンプレッサモータ2M)に向けて、騒音打消用の音を発する。
ANC制御基板6は、制御基板7とのシリアル通信によりコンプレッサモータ2Mに対する騒音打消用の音を生成する。制御基板7は、室外機1を制御する。
11は室内機で、室内ファン12、モニタ用マイク13、制御用スピーカ14、能動消音制御基板(以下、ANC制御基板という)15、および制御基板16を有している。モニタ用マイク13は、制御用スピーカ14から放射される音の放射領域に配置され、その放射領域内の音を捕らえる。制御用スピーカ14は、室内ファン12のモータ(後述の室内ファンモータ12M)に向けて、騒音打消用の音を発する。ANC制御基板15は、制御基板16とのシリアル通信により、室内ファンモータ12Mに対する騒音打消用の音を生成する。制御基板16は、室内機11および室外機1の全体を制御する。
これら室外機1および室内機11が渡り配管10およびケーブル(図示しない)により接続されて、空気調和機が構成されている。ケーブルには、電源ラインのほかに、室外機1の制御基板7と室内機11の制御基板16との間の電源全2重通信を行うための信号ラインが含まれている。
20は運転操作用のワイヤレス式のリモートコントロール装置(以下、リモコンという)で、液晶表示部21および各種操作釦を有するとともに、上面の開閉カバーを開いた盤面に各種コード設定釦を有し、赤外線光により、室外機11との間で各種データの送受信を行う。
室外機1におけるANC制御基板6および制御基板7の具体的な構成、室外機11におけるANC制御基板15および制御基板16の具体的な構成を図2に示している。
ANC制御基板6は、コンプレッサモータ2Mに対する騒音打消用のディジタル音信号を生成する制御部、プログラム記憶用のROM、データ記憶用のRAM、音生成用の制御パラメータ(モニタ用マイク4と制御用スピーカ5との間の音響伝達関数Cなど)を記憶した不揮発性メモリたとえばE2PROM、制御基板7とのデータ送受信用のシリアル通信回路(UART)、制御部で生成されたディジタル音信号をアナログ音信号に変換するD/Aコンバータ、変換されたアナログ音信号を増幅して制御用スピーカ5に供給する音出力回路、モニタ用マイク4から入力されるアナログ音信号を増幅する音入力回路、増幅されたアナログ音信号をディジタル音信号に変換して制御部に供給するA/Dコンバータを有している。
制御基板7は、制御の中枢となる制御部、プログラム記憶用のROM、データ記憶用のRAM、不揮発性メモリたとえばE2PROM、コンプレッサモータ2Mを駆動するコンプレッサモータ駆動回路、ANC制御基板6とのデータ送受信用のシリアル通信回路(UART)、外気温度センサ8の検知温度をディジタルデータに変換して制御部に供給するA/Dコンバータ、室外ファンモータ3Mを駆動するファンモータ駆動回路、室内側の制御基板16とのデータ送受信用の電源全2重通信回路を有している。なお、騒音源であるコンプレッサモータ2Mの音は同コンプレッサモータ2Mの回転位置(ロータ位置あるいは回転角ともいう)と相関関係にあり、その回転位置に応じてレベル変化する電圧信号がコンプレッサモータ駆動回路から検出され、その検出信号がディジタル音生成用の参照信号として制御部に供給される。この参照信号は、制御部からシリアル通信回路(UART)を介して、ANC制御基板6の制御部に供給される。
ANC制御基板15は、室内ファンモータ12Mの騒音打消用のディジタル音信号を生成する制御部、プログラム記憶用のROM、データ記憶用のRAM、音生成用の制御パラメータ(モニタ用マイク13と制御用スピーカ14との間の音響伝達関数Cなど)を記憶した不揮発性メモリたとえばE2PROM、制御基板16とのデータ送受信用のシリアル通信回路(UART)、制御部で生成されたディジタル音信号をアナログ音信号に変換するD/Aコンバータ、変換されたアナログ音信号を増幅して制御用スピーカ14に供給する音出力回路、モニタ用マイク13から入力されるアナログ音信号を増幅する音入力回路、増幅されたアナログ音信号をディジタル音信号に変換して制御部に供給するA/Dコンバータを有している。
制御基板16は、制御の中枢となる制御部、プログラム記憶用のROM、データ記憶用のRAM、不揮発性メモリたとえばE2PROM、リモコン20との赤外線光送受用の赤外通信回路、ANC制御基板15とのデータ送受信用のシリアル通信回路(UART)、室内温度センサ17の検知温度をディジタルデータに変換して制御部に供給するA/Dコンバータ、室内ファンモータ12Mを駆動するファンモータ駆動回路、室外側制御基板7とのデータ送受信用の電源全2重通信回路を有している。なお、騒音源である室内ファンモータ12Mの音は同室内ファンモータ12Mの回転位置(ロータ位置あるいは回転角ともいう)と相関関係にあり、その回転位置に応じてレベル変化する電圧信号がファンモータ駆動回路から検出され、その検出信号がディジタル音生成用の参照信号として制御部に供給される。この参照信号は、制御部からシリアル通信回路(UART)を介して、ANC制御基板15の制御部に供給される。
ANC制御基板6,15のそれぞれ制御部には、モータの騒音に対する打消用の音を生成する生成手段として、適応ディジタルフィルタが搭載されている。一般のディジタルフィルタは、特性たとえばカットオフ周波数や用途(IPF,HPF,BPF等)によってフィルタ係数が決まっているのに対し、適応ディジタルフィルタは誤差信号等によって、毎回、フィルタ係数を修正していくものである。この適応ディジタルフィルタ(以下、適応フィルタという)の基本構成を図3に示している。
この適応フィルタは、次のような働きをする。まず、適応フィルタの出力信号(制御用スピーカ出力)yは、所望信号(モニタ用マイク入力)dと比較され、その差が誤差信号eとして得られる。適応フィルタ・アルゴリズムでは、この誤差信号eを出来るだけ小さくするように、その誤差信号eを利用して適応フィルタ係数を修正していく。従って、適応フィルタの出力信号yとしては、所望信号dに似た信号が得られることとなる。
適応フィルタの制御アルゴリズムには、最小2乗アルゴリズムおよび逐次修正アルゴリズムがある。最小2乗アルゴリズムは、優れた特性を持つアルゴリズムであるが計算量が多いというデメリットがある。逐次修正アルゴリズムは、2乗平均誤差を最小にする係数を施行錯誤的に繰り返しながら求めていくアルゴリズムであって、最小2乗アルゴリズムに比べて計算量が少なく実用的なアルゴリズムである。この逐次修正アルゴリズムの代表的なものとして、最小降下法が知られている。実際によく使われるのは、最小降下法から導かれるLMSアルゴリズムである。このLMSアルゴリズムを用いた適応フィルタ構成を図4に示している。hが適応フィルタ係数であり、下式により更新される。
new[k]=hold[k]+μ・e[n]・x[n−k]
new:適応フィルタ係数の更新値
old:前回の適応フィルタ係数
k:0,1,〜M(フィルタ次数)
e:誤差信号(=d−y)
x:参照信号(回転位置検出信号等)
μ:収束速度
ここで、収束速度μは、適応フィルタ係数hを決定する要素であって、とくに音の収束速度(音が低減していく速度)を決定する制御パラメータであり、大きく設定すれば打消し対象である音の収束が速くなり、小さく設定すれば打消し対象である音の収束は遅くなるものの外乱の影響を受け難く安定した動作が可能となる。
上記の適応フィルタから、図5に示すように、モータからの騒音信号に対して位相が逆で振幅が同じ波形の音信号(制御用スピーカ出力)が得られ、その音信号が制御用スピーカに供給される。この制御用スピーカの出力により、モータからの騒音が打消(相殺)される。モニタ用マイクへの入力信号レベルは、打消しに伴って減衰していく。
作用を説明する。
コンプレッサモータ2Mおよび室内ファンモータ12Mの制御では、目標速度と現行速度との差や、負荷条件などにより、加減速時の速度ゲイン(単位時間当たりの速度変動量(rps/s))を切り換える制御が行われる。たとえば、目標速度と現行速度との差が大きい場合には、速度ゲインを大きく設定して速度(回転数)を早期に目標速度に到達させ、差が小さくなったら、速度ゲインを小さく設定して、速度が目標速度を挟んで変動してしまうハンチングを防ぐ制御が行われる。
一方、モータの音(電磁音)は、モータの回転数がr(rps)である場合に、rの整数倍の周波数の成分が騒音レベルとなる。このため、上記のように速度ゲインが大きく設定されて速度(回転数)の変動幅が大きくなると、様々な周波数の騒音が発生するようになり、ある周波数の騒音に対する打消用音が生成されそれが放射されて騒音が打消されていく間に、別の周波数の騒音が発生し、騒音の打消しが追い付かない状況となる。
そこで、図6のフローチャートに示すように、モータの速度ゲインGsが検出される。そして、収束係数μが、検出された速度ゲインGsに応じて可変設定される。すなわち、速度ゲインGsが設定値たとえば“2”以上の場合、大きな収束係数μとしてたとえばμ=0.01が設定される。速度ゲインGsが設定値“2”未満の場合は、小さな収束係数μとしてたとえばμ=0.0001が設定される。
このように、速度ゲインGsが設定値“2”以上と比較的大きくて、モータの速度(回転数)の変動幅が大きくなる状況では、大きな収束係数μ=0.01が設定されて、打消し対象である騒音の収束速度が速くなる。したがって、モータの速度の変動幅が大きくて、様々な周波数の騒音が発生するような状況でも、それぞれの周波数の騒音を追従遅れなく確実に打消していくことができる。
速度ゲインGsが設定値“2”未満と比較的小さくて、モータの速度の変動幅が小さい状況では、大きい収束係数を設定すると、小さな騒音に対しても打消し音が大きく変動する、更には発散してしまう等の問題を引き起こす可能性もある。そこで、この場合には小さい収束係数μ=0.0001を設定して、騒音の周波数、音圧の変化は小さいため、これを追従遅れなく確実に打消すことができる。
[2]この発明の第2の実施形態について説明する。
図7のフローチャートに示すように、モータの速度ゲインGsが検出される。そして、収束係数μが、検出された速度ゲインGsに比例して段階的に設定される。すなわち、速度ゲインGsが設定値“4”以上の場合、収束係数μ=0.1が設定される。速度ゲインGsが設定値“4”未満、設定値“3”以上の場合、収束係数μ=0.01が設定される。速度ゲインGsが設定値“3”未満、設定値“2”以上の場合、収束係数=0.001が設定される。速度ゲインGsが設定値“2”未満、設定値“1”以上の場合、収束係数=0.0001が設定される。速度ゲインGsが設定値“1”未満の場合は、収束係数μ=0.00001が設定される。
このように、速度ゲインGsが大きいほど、つまりモータの速度の変動幅が大きいほど、大きな収束係数μが設定されて、打消し対象である騒音の収束速度が速くなる。したがって、モータの速度の変動幅が大きくて、様々な周波数の騒音が発生するような状況でも、それぞれの周波数の騒音を追従遅れなく確実に打消していくことができる。
とくに、収束係数μの段階的な設定であることにより、速度ゲインGsの変化にきめ細かく対応できるという利点がある。
他の構成および作用は第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
[3]この発明の第3の実施形態について説明する。
図8に示すように、室外機1において、ANC制御基板6の構成が制御基板7に一体化される。さらに、室内機11において、ANC制御基板15の構成が制御基板16に一体化される。
他の構成および作用は第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
[4]この発明の第4の実施形態について説明する。
室外機1および室内機11において、ANC制御基板6(および15)のそれぞれ不揮発性メモリであるE2PROM(記憶手段)に、制御用スピーカ5(および14)の最適出力ゲインG0がモータ2M(および12M)の回転数ごとに記憶され、かつモータ2M(および12M)の回転位置と制御用スピーカ5(および14)の出力信号との最適位相差φ0がモータ2M(および12M)の回転数ごとに記憶されている。
ANC制御基板6(および15)の制御部は、主要な機能として次の(1)(2)の手段を有する。
(1)モータ2M(または12M)の回転数が変化したとき、予め実験によって決めた、各回転数に対応する最適出力ゲインG0および最適位相差φ0をE2PROMから読み出す読出手段。
(2)上記読出手段で読み出された最適出力ゲインG0、同読み出された最適位相差φ0、およびモータ2M(または12M)の実際の回転位置φ(制御基板7,16から知らされる)を用いた下式の演算により、制御用スピーカ5(または14)の最適出力SPoutを求めてその値に同制御用スピーカ5(または14)の出力を更新設定する制御手段。
SPout=G0・sin(φ0+φ)
作用を説明する。
図9のフローチャートに示すように、モータ2M(または12M)の回転数が変化したとき、その回転数に対応する最適出力ゲインG0および最適位相差φ0が読み出される。そして、読み出された最適出力ゲインG0、同読み出された最適位相差φ0、およびモータ2M(または12M)の実際の回転位置φを用いた演算により、制御用スピーカ5(または14)の最適出力SPoutが求められ、その値に同制御用スピーカ5(または14)の出力が更新設定される。この結果、それぞれの速度に対応して最適な打消し音の発生を得ることができる。他の構成および作用は第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
[5]この発明の第5の実施形態について説明する。
室外機1および室内機11において、ANC制御基板6(および15)のそれぞれ不揮発性メモリであるE2PROM(記憶手段)に、制御用スピーカ5(および14)の最適出力ゲインG0がモータ2M(および12M)の回転数ごとに記憶され、かつモータ2M(および12M)の回転位置と制御用スピーカ5(および14)の出力信号との最適位相差φ0がモータ2M(および12M)の回転数ごとに記憶されている。
ANC制御基板6(および15)の制御部は、主要な機能として次の(1)〜(9)の手段を有する。
(1)モータ2M(または12M)の回転数が変化したとき、その回転数に対応する最適出力ゲインG0および最適位相差φ0をE2PROMから読み出す第0読出手段。
(2)上記読出手段で読み出された最適出力ゲインG0、同読み出された最適位相差φ0、およびモータ2M(または12M)の実際の回転位置φ(制御基板7,16から知らされる)を用いた下式の演算により、制御用スピーカ5(または14)の最適出力SPoutを求めてその値に同制御用スピーカ5(または14)の出力を更新設定する第0制御手段。
SPout=G0・sin(φ0+φ)
(3)モータ2M(または12M)の回転数が一定時間以上にわたって一定のとき、モータ2M(または12M)の回転数に対応する最適出力ゲインG0および最適位相差φ0を前記記憶手段から読み出す第1読出手段。
(4)上記読出手段で読み出された最適位相差φ0に対する所定の微調整幅Δφを設定し、上記読出手段で読み出された最適出力ゲインG0、同読み出された最適位相差φ0、前記設定した微調整幅Δφ、およびモータ2M(または12M)の実際の回転位置φを用いた下式の演算により、制御用スピーカ5(または14)の最適出力SPoutを求めてその値に同制御用スピーカ5(または14)の出力を更新設定する第1制御手段。
SPout=G0・sin(φ0+Δφ+φ)
(5)上記第1制御手段の処理後、モニタ用マイク4(または13)からの入力レベルの平均値を算出する第1算出手段。
(6)上記第1算出手段の算出結果が最小となるように上記第1制御手段の処理を繰り返し、最小となったときの演算に用いられた微調整幅Δφの分だけE2PROM内の最適位相差φ0を補正してφp(=φ0+Δφ)に更新する第2制御手段。
(7)上記第2制御手段の処理後、第1読出手段で読み出された最適出力ゲインG0に対する所定の微調整幅ΔGを設定し、第1読出手段で読み出された最適出力ゲインG0、上記第2制御手段の更新値である最適位相差φp、上記設定した微調整幅ΔG、およびモータ2M(または12M)の実際の回転位置φを用いた下式の演算により、制御用スピーカ5(または14)の最適出力SPoutを求めてその値に同制御用スピーカ5(または14)の出力を更新設定する第3制御手段。
SPout=(G0+ΔG)・sin(φp+φ)
(8)上記第3制御手段の処理後、モニタ用マイク4(または13)からの入力レベルの平均値を算出する第2算出手段。
(9)上記第2算出手段の算出結果が最小となるように上記第3制御手段の処理を繰り返し、最小となったときの演算に用いられた微調整幅ΔGの分だけE2PROM内の最適出力ゲインG0を補正してGp(=G0+ΔG)に更新する第4制御手段。
作用を説明する。
図10のフローチャートに示すように、モータ2M(または12M)の回転数が一定時間以上にわたって一定のとき、モータ2M(または12M)の回転数に対応する最適出力ゲインG0および最適位相差φ0が読み出される。
読み出された最適位相差φ0に対する所定の微調整幅Δφが設定され(−値から+値の範囲で段階的に設定される)、上記読み出された最適出力ゲインG0、同読み出された最適位相差φ0、上記設定された微調整幅Δφ、およびモータ2M(または12M)の実際の回転位置φを用いた演算により、制御用スピーカ5(または14)の最適出力SPoutが求められてその値に同制御用スピーカ5(または14)の出力が更新設定される。
この更新設定の処理後、モニタ用マイク4(または13)からの入力レベルの平均値が算出される。そして、算出結果が最小となるように上記微調整幅Δφの設定からの処理が繰り返され、最小となったときの演算に用いられた微調整幅Δφの分だけE2PROM内の最適位相差φ0が補正されてφp(=φ0+Δφ)に更新される。
この更新後、上記読み出された最適出力ゲインG0に対する所定の微調整幅ΔGが設定され(−値から+値の範囲で段階的に設定される)、上記読み出された最適出力ゲインG0、上記更新値である最適位相差φp、上記設定された微調整幅ΔG、およびモータ2M(または12M)の実際の回転位置φを用いた演算により、制御用スピーカ5(または14)の最適出力SPoutが求められてその値に同制御用スピーカ5(または14)の出力が更新設定される。
この更新設定の処理後、モニタ用マイク4(または13)からの入力レベルの平均値が算出される。そして、算出結果が最小となるように上記微調整幅ΔGの設定からの処理が繰り返され、最小となったときの演算に用いられた微調整幅ΔGの分だけE2PROM内の最適出力ゲインG0が補正されてGp(=G0+ΔG)に更新される。
以上のように、モニタ用マイク4(または13)からの入力レベルの平均値が最小となるように最適位相差φ0および最適出力ゲインG0の微調整を繰り返すことにより、室外機1および室内機11の機体の違いに影響を受けることなく、全ての機体にそれぞれ適合する最適位相差φ0および最適出力ゲインG0を設定することができる。したがって、同じ製品の空気調和機であれば、E2PROMに書き込む初期データは共通でよく、不要なコスト上昇を避けることができる。
他の構成および作用は第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
[6]この発明の第6の実施形態について説明する。
図11に示すように、室外機1において、室外ファン3の音(羽根ピッチ音)を打消すためのもう1つのモニタ用マイク4およびもう1つの制御用スピーカ5が設けられている。この場合、室外機1のANC制御では、コンプレッサモータ2Mの騒音および室外ファン3の音をそれぞれ打消すための2チャンネルの音が生成される。
他の構成および作用は第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
[7]この発明の第7の実施形態について説明する。
図12に示すように、室外機1において、モニタ用マイク4が取り除かれている。室内機11でも、モニタ用マイク13が取り除かれている。室外機1のANC制御および室外機11のANC制御のいずれにおいても、音のモニタを要することなく、打消用の音が安価に生成される。大きな外乱、変動がない条件であれば、モニタ用マイク4(13)によるフィードバックをかけなくとも、騒音の打消しは可能となる。空気調和機の室外機、室内機ではそれほど大きな外乱がない場合が多い。このような場合は、モニタ用マイク4(13)を不要としてコスト低減を図ることができる。
他の構成および作用は第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
[8]この発明の第8の実施形態について説明する。
室外機1の制御基板7におけるコンプレッサモータ駆動回路として、図13に示すモータ駆動回路が採用されている。このモータ駆動回路は、商用交流電源の電圧を整流する倍電圧整流回路、その倍電圧整流回路の出力を三相交流電圧に変換するスイッチング回路、このスイッチング回路のスイッチング素子をオン,オフ駆動するためのPWM変調信号を出力するMCUを有している。MCUは、PWM変調に必要なモータの回転位置データを、スイッチング回路における各相のシャント抵抗Ru,Rv,Rwに生じる電圧から取り込む。
また、モータ駆動回路に、音声入出力回路が組み込まれている。MCUは、この音声入出力回路と共に、ANC制御基板6と同様の機能を構築し、コンプレッサモータ2Mの騒音を打消すための音を生成する。生成に必要な制御パラメータは、MCUに接続されたEEPROMに記憶されている。EEPROMには、コンプレッサモータ2Mの駆動に必要な制御パラメータも記憶されている。
EEPROM内の制御パラメータは、MCUに外部接続される制御ボードを介して、書き込みおよび更新が可能である。制御ボードに代えて、パーソナルコンピュータ(PC)を接続し、そのパーソナルコンピュータの操作によって制御パラメータを書き込みあるいは更新することも可能である。
また、MCUは、打消用の音を生成する能動消音制御に関し、図14のフローチャートに示すように、コンプレッサモータ2Mの回転数が指定値未満の場合に能動消音制御をオフして打消用の音を生成せず、コンプレッサモータ2Mの回転数が指定値以上の場合に能動消音制御をオンして打消用の音を生成する。
すなわち、コンプレッサモータ2Mの回転数が低い場合は、騒音レベルが小さいこと、しかも制御用スピーカ5から数十Hz程度の超低音は出力が困難であることを考慮し、上記の制御が採用されている。
他の構成は、第1の実施形態と同じであり、その説明は省略する。
[9]第9の実施形態について説明する。
図15に示すように、モータ駆動回路のスイッチング回路に流れる電流のレベルが電流センサ30によって検知され、その検知レベルが比較器31において基準レベルVrefと比較される。
スイッチング回路に定常レベルの電流が流れている正常時は、比較器31の出力が論理“1”となり、音声入出力回路におけるアンド回路32のアンド条件が成立する。この場合、NCUから出力される打消用の音信号がアンド回路32を通して制御用スピーカ5に供給される。
スイッチング回路に過電流が流れると、比較器31の出力が論理“0”となり、音声入出力回路におけるアンド回路32のアンド条件が成立しなくなる。この場合、NCUから出力される打消用の音信号がアンド回路32で遮断され、制御用スピーカ5の出力が瞬時にオフされる。
電流センサ30の出力はMCUにも入力されており、過電流時はMCUがモータ駆動を停止し、コンプレッサモータ2Mの回転数が急激に零に向かう。一方、能動消音制御は、モータの回転数に追従するものの、急激な回転数変動に対しては追従が遅れてしまい、瞬間的ではあるが打消用の音が、騒音に加算されてしまい、逆に騒音を大きくしてしまう場合が生じる。このような不具合を解消するため、上記のように、過電流時はアンド回路32を遮断し、制御用スピーカ5の出力をハード的に瞬時オフしている。この結果、打消用の音が逆に騒音を助長することを防止できる。
ところで、コンプレッサモータ2Mの制御では、目標速度と現行速度との差や、負荷条件などにより、加減速時の速度ゲイン(単位時間当たりの速度変動量(rps/s))を切り換える制御が行われる。たとえば、目標速度と現行速度との差が大きい場合には、速度ゲインを大きく設定して速度(回転数)を早期に目標速度に到達させ、差が小さくなったら、速度ゲインを小さく設定して、速度が目標速度を挟んで変動してしまうハンチングを防ぐ制御が行われる。このような場合、モータ側のハンチングにおける細かい騒音変動に打消し音との位相や音の大きさがずれてしまい騒音を助長する可能性がある。そこで、この実施形態においては、速度変動中においては、適応フィルタ係数を変化させず、固定し、モータ速度のハンチングにより生じる騒音と打消し音とのずれを防止するものである。
具体的には、モータの速度ゲインを考慮して、図16のフローチャートに示す制御が実行される。
すなわち、速度ゲインが零でない場合、つまり速度変動中は、適応フィルタ係数hの更新が行われ(オン)、速度ゲインが零、つまり速度変動がなく、その状態が監視タイマーの計時TIMに基づく一定時間(指定値)経過した場合には適応フィルタ係数hの更新が停止される(オフ)。
ここでの一定時間は、速度変動後に適応制御が追従して騒音が十分に収束する時間、例えば、数分程度が適当である。
他の構成は、第8の実施形態と同じであり、その説明は省略する。
[10]第10の実施形態について説明する。
図17に示すように、モータ駆動回路に、整流回路およびスイッチング素子からなる高力率制御回路が組み込まれている。高力率制御回路は、倍電圧整流回路の入力側に接続され、AC割込みを始点に昇圧パルスを発生して、電流の起動を早め、力率を改善する。簡単な回路でありながら、99%近い入力力率に改善することができる。具体的には、電流が流れていない無通電期間の補償を行うもので、入力電圧(AC)の零クロスを検出し、これを始点にスイッチング素子を一定時間オンし、リアクタに強制的に短絡電流を流す。さらに、リアクタを短絡することで、エネルギを蓄積できるため、昇圧機能が得られ、PAM制御ができる。なお、昇圧パルス(短絡パルス)は、MCUのPPG(プログラム・パルス・ジェネレータ)で生成される。
この高力率制御回路によるPFC制御が有る場合の電流波形と無い場合の電流波形を、零クロスのAC割込みタイミング、および昇圧パルス波形と共に、図18に示している。
他の構成は、第8の実施形態と同じであり、その説明は省略する。
[11]第11の実施形態について説明する。
この第11の実施形態は、室外ファン3の音(羽根ピッチ音)を打消すためのモニタ用マイク4および制御用スピーカ5を有するもので、たとえば図11に示した第6の実施形態に適用される。
室外機1の正面から見た構成を図19に示し、その図19における室外機1のA−A線に沿う断面を図20に示している。
室外機1は、筐体の背面に吸込口41、前面に吹出口42を有し、その吸込口41から吹出口42にかけての通風路に熱交換器(室外熱交換器)43および室外ファン3を有している。室外ファン3は、羽根(翼ともいう)が吹出口42に臨む状態に配設されている。
室外機1の筐体内は、仕切り板44によって上記通風路と機械室に分けられている。機械室には、コンプレッサ2が設けられている。筐体内の上部には、ANC制御基板6や制御基板7が収められた電気ボックス8が設けられている。
このような構成の室外機1の筐体において、前面の吹出口42の近傍に、開口45が形成されている。そして、開口45内に、制御用スピーカ5が設けられている。制御用スピーカ5は、図21に示すように、励磁ユニット51および振動板52からなり、振動板52の前側に出る音の位相と後側に出る音の位相が互いに逆で、背後に遮音箱を持たない構成である。この制御用スピーカ5の振動板52の前側が室外ファン3の送風下流側に対応し、かつ振動板52の後側が室外ファン3の送風上流側に対応する状態に、同制御用スピーカ5が配置されている。
通風路において、室外ファン3の羽根と対向する位置に、かつ制御用スピーカ5から発せられる音の放射位置に、モニタ用マイク4が配置されている。また、室外ファンモータ3Mに振動センサ60が取付けられている。
そして、ANC制御基板6に、モニタ用マイク4、制御用スピーカ5、および振動センサ60が接続されている。振動センサ60は、室外ファンモータ3Mの回転位置に相当する信号を出力する。この信号が参照信号としてANC制御基板6に入力される。
ANC制御基板6は、振動センサ60からの入力およびモニタ用マイク4からの入力に基づいて、室外ファン3の音(羽根ピッチ音)を打消すための音を生成し、生成した音を制御用スピーカ5から発する。
ここで、スピーカの音放射特性について図22〜図24により説明する。まず、図22に示すように、点音源の音の放射では、音源を囲うように球面状の同一位相面(波面)が形成され、十分遠方では平面波面となる。次に、スピーカの波面について考慮する。通常のスピーカは、図23に示すように、励磁ユニット51および振動板52を有し、かつ背後に遮音箱を設けて、その遮音箱で振動板52以外の部分を囲ったもので、振動板52から前後に少し離れた位置にほぼ平面に近い波面をそれぞれ形成する。前後の波面の位相は互いに同じであり、後方側の音が前方側の音よりも小さくなる。
この図23のような構成のスピーカを使用して後述する騒音の2次成分を低減するためには、同スピーカを2つ用意して両スピーカの背面側を図24のように付き合わせた形で配置し、かつ両スピーカに入力される音信号の位相を互いに逆(逆相)にする必要がある。
これに対し、本実施形態のように室外機1の筐体の開口45に設けた図21の制御用スピーカ5は、背後に遮音箱を持たない単体スピーカであり、前方と後方にほぼ同じ大きさの音を出し、振動板52から前後に少し離れた位置にほぼ平面に近い波面をそれぞれ形成する。前後の波面の位相は互いに逆(逆相)である。つまり、この図21の制御用スピーカ5と、図24の両スピーカの組み合わせとを比較すると、両者の機能はほぼ等価である。両者の違いは、図21の方が前後の音量を自由に調整できず、図24の方が前後の音量を自由に調整できる点である。
本実施形態では、背後に遮音箱を持たない単体スピーカである図21の制御用スピーカ5を採用することにより、遮音箱が無い分だけコストの低減が図れるとともに、遮音箱が無い分だけ省スペースとなって空間配置が容易になり、さらには重量が軽くなるという利点がある。
とくに、本実施形態では、単体スピーカである制御用スピーカ5が発する前後の音の位相が互いに逆(逆相)であることにより、室外ファン3の上流側の音および下流側の音をそれぞれ確実に打消すことができる。
室外ファン3の上流側の音および下流側の音がどのように打ち消されるかを実験により確かめた結果が図25および図26である。参考のため、制御用スピーカ5が無い場合の上流側の音および下流側の音を図27および図28に示している。この比較から判るように、単体スピーカである制御用スピーカ5を設けたことにより、騒音の2次成分のピークが10dB〜15dB低減している。
他の構成は、第1の実施形態と同じであり、その説明は省略する。
[12]第12の実施形態について説明する。
図29に示すように、制御用スピーカ5の振動板52の前に前面調整板53が設けられている。前面調整板53は、複数の開口53aを有し、制御用スピーカ5の前側に出る音の量と後側に出る音の量との比率を調整する働きをする。
このような前面調整板53を有する制御用スピーカ5の採用により、室外ファン3の上流側の音および下流側の音をそれぞれ確実に打消すことができる。
他の構成は、第11の実施形態と同じであり、その説明は省略する。
[13]第13の実施形態について説明する。
図30に示すように、制御用スピーカ5の背後に背面調整板54が設けられている。背面調整板54は、複数の開口54aを有し、制御用スピーカ5の前側に出る音の量と後側に出る音の量との比率を調整する働きをする。
このような背面調整板54を有する制御用スピーカ5の採用により、室外ファン3の上流側の音および下流側の音をそれぞれ確実に打消すことができる。
他の構成は、第11の実施形態と同じであり、その説明は省略する。
[14]第14の実施形態について説明する。
図31に示すように、制御用スピーカ5の振動板52の前に前面調整板53が設けられているとともに、制御用スピーカ5の背後に背面調整板54が設けられている。前面調整板53および背面調整板54は、それぞれ複数の開口53a,54aを有し、制御用スピーカ5の前側に出る音の量と後側に出る音の量との比率を調整する働きをする。
このような前面調整板53および背面調整板54を有する制御用スピーカ5の採用により、室外ファン3の上流側の音および下流側の音をそれぞれ確実に打消すことができる。
他の構成は、第11の実施形態と同じであり、その説明は省略する。
[15]第15の実施形態について説明する。
図32に示すように、室外機1の筐体において、前面の吹出口42を挟む位置に、2つの開口45が形成されている。一方の開口45内には、第11の実施形態と同じく制御用スピーカ5が設けられている。他方の開口45内には、図23に示したような、背後に遮音箱を有する構成の制御用スピーカ50が設けられている。
これら2つの制御用スピーカ5,50の採用に伴い、2つのANC制御基板6a,6bが用意されている。
2つの制御用スピーカ5,50を採用することにより、室外ファン3の騒音ピークの発生態様に合わせた効率のよい消音が可能となる。
他の構成は、第11の実施形態と同じであり、その説明は省略する。
[16]第16の実施形態について説明する。
この第16の実施形態は、室外ファン3の騒音ピークの発生態様を考慮して、第15の実施形態における制御用スピーカ50の取り付け状態を変更したものであり、図33に示すように、制御用スピーカ50の前面が室外ファン3に対向している。これに伴い、室外機1の筐体における開口45は、制御用スピーカ5用の1つだけ形成されている。
他の構成は、第15の実施形態と同じであり、その説明は省略する。
[17]第17の実施形態について説明する。
図34および図35に示すように、室外機1の筐体において、前面の吹出口42の近傍に開口46が形成され、その開口46の内側にダクト47を介して制御用スピーカ5が取り付けられている。制御用スピーカ5の振動板52から発せられる音は、ダクト47および開口46を通り、筐体の前面側に放出される。
図35のB−B線に沿う断面を図36に示している。ダクト47内には、制御用スピーカ5の振動板52に雨水や風が付着するのを防ぐため、振動板52の近傍に防水膜48が設けられている。開口46には、ダクト47内に雨水、風、太陽光が入るのを防ぐため、数枚の防雨壁49が設けられている。
他の構成は、第11の実施形態と同じであり、その説明は省略する。
[18]第18の実施形態について説明する。
図37に示すように、リモコン20に代えて、能動消音制御装置が搭載されたワイヤレス式のリモートコントロール装置(以下、リモコンという)70が用意されている。
リモコン70は、ノート型のパーソナルコンピュータに似た形状を有し、被空調室内の床やテーブルの上に載置することができるもので、参照用マイク71、モニタ用マイク72、制御用スピーカ73、操作盤面74を備えている。
参照用マイク71は、室内機11から出る音を捕らえるためのもので、図38に詳細を示すように、倒伏自在なリンク機構75を介してリモコン70の本体に取り付けられている。モニタ用マイク72は、図38に詳細を示すように、倒伏自在なロッド76を介してリモコン70の本体に取り付けられており、制御用スピーカ73から放射される音の放射領域(消音領域)内に配置される。制御用スピーカ73は、いわゆる平面型スピーカであり、室内機11から発せられる音に向けて打消用の音を発するもので、パーソナルコンピュータのディスプレイのように開閉自在となっている。操作盤面74には、通常のリモコンと同じ各種操作キーが設けられている。
リモコン70の制御回路を図39に示している。
図39において、MCUは、各種操作キーの操作に応じた運転条件のデータを無線送信部により室内機11に送信するとともに、適応フィルタの構成を有し、参照用マイク71およびモニタ用マイク72からの入力に応じて室内機11から出る音に対する打消用のディジタル音信号を生成する。生成用の制御パラメータは、不揮発性メモリであるE2PROMに記憶されている。生成されたディジタル音信号はD/Aコンバータからローパスフィルタ(LPF)、増幅回路(AMP)、およびスピーカドライバを介して制御用スピーカ73に供給される。参照用マイク71から出力されるアナログ音信号は、増幅回路(AMP)およびローパスフィルタ(LPF)を介してA/Dコンバータに入力され、そこでディジタル音信号に変換されて打消音生成用の参照信号となる。モニタ用マイク72から出力されるアナログ音信号は、増幅回路(AMP)およびローパスフィルタ(LPF)を介してA/Dコンバータに入力され、そこでディジタル音信号に変換される。
被空調室内の任意の場所にリモコン70を設置して消音制御動作をオンすることにより、室内機11から発せられる音を打消すための音がリモコン70で生成され、生成された音が制御用スピーカ73から放射される。この放射により、被空調室内に室内機11の音がしない消音領域が確保される。この消音領域は、リモコン70の設置場所、参照用マイク71の配置位置、モニタ用マイク72の配置位置、および制御用スピーカ73の開閉位置を変えることにより、被空調室内のどこにでも容易に確保することができる。
[19]第19の実施形態について説明する。
図40に示すように、参照用マイク71を支えるリンク機構75に代えて、伸縮自在で角度可変のポール77が採用されている。モニタ用マイク72についても、ロッド76に代えて、伸縮自在で角度可変のポール78が採用されている。
このような構成によれば、参照用マイク71およびモニタ用マイク72のそれぞれ配置位置選定の自由度が増し、消音領域の選定がさらに容易となる。
他の構成は、第18の実施形態と同じであり、その説明は省略する。
[20]第20の実施形態について説明する。
図41のフローチャートに示すように、室内機11の風量が“微風”の場合、能動消音制御が自動的にオフされる。騒音レベルが問題とならない“微風”時に能動消音制御が働くと、強い外乱が発生した場合に能動消音制御の動作が不安定となる可能性があるため、あらかじめ能動消音制御をオフするようにしている。
他の構成は、第18の実施形態と同じであり、その説明は省略する。
[21]第21の実施形態について説明する。
図42のフローチャートに示すように、室内機11で運転モードや風量の変更があった場合に、適応フィルタ係数を決定する要素であって且つ音の収束速度を決定する制御パラメータである収束係数μが、一定時間だけ大きく設定される。たとえば、μ=0.1が設定される。
運転モードや風量の変更がない場合は、収束係数μが小さく設定される。たとえば、μ=0.001が設定される。
運転モードや風量の変更があって、様々な周波数の騒音が発生するような状況では、大きな収束係数μ=0.1が設定されることにより、打消し対象である騒音の収束速度が速くなる。したがって、様々な周波数の騒音が発生しても、それぞれの周波数の騒音を追従遅れなく確実に打消していくことができる。
運転モードや風量の変更がなくて、様々な周波数の騒音が発生しない状況では、小さな収束係数μ=0.001が設定されることにより、強い外乱が発生しても能動消音制御の安定した動作が可能である。
他の構成は、第18の実施形態と同じであり、その説明は省略する。
[22]第22の実施形態について説明する。
図43のフローチャートに示すように、室内機11の風量が“弱風”に設定された場合、参照すべき音やモニタすべき音のレベルが小さくなることを考慮し、参照用マイク71およびモニタ用マイク72からの音入力回路(増幅回路)の増幅率がそれぞれアップされる。
この増幅率のアップにより、参照すべき音やモニタすべき音を確実に捕らえることができ、消音制御の信頼性が向上する。
上記音入力回路(増幅回路)は、図44に示すように、複数の帰還抵抗器0Ω,1RΩ,…7RΩを有する増幅回路を有している。各帰還抵抗器は電子スイッチBit0,Bit1,…Bit7の開閉によって選択的に投入されるようになっており、その選択的な投入により、増幅回路の増幅度が変化する。
[23]なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
第1の実施形態の構成を示す図。 図1におけるANC制御基板および制御基板の具体的な構成を示すブロック図。 第1の実施形態における適応フィルタの基本構成を説明するための図。 第1の実施形態における適応フィルタの基本構成をLMSアルゴリズムにより示す図。 第1の実施形態における騒音信号、制御用スピーカ出力信号、モニタ用マイク入力信号の波形を示す図。 第1の実施形態の作用を説明するためのフローチャート。 第2の実施形態の作用を説明するためのフローチャート。 第3の実施形態の構成を示す図。 第4の実施形態の作用を説明するためのフローチャート。 第5の実施形態の作用を説明するためのフローチャート。 第6の実施形態の構成を示す図。 第7の実施形態の構成を示す図。 第8の実施形態の構成を示す図。 第8の実施形態の作用を説明するためのフローチャート。 第9の実施形態の構成を示す図。 第9の実施形態の作用を説明するためのフローチャート。 第10の実施形態の構成を示す図。 第10の実施形態の作用を説明するためのフローチャート。 第11の実施形態における室外機の正面から見た構成を示す図。 図19のA−A線に沿う断面を矢印方向に見た図。 第11の実施形態における制御用スピーカの構成を示す図。 第11の実施形態に係るスピーカの音放射特性を示す図。 第11の実施形態に係るスピーカの音放射特性を示す図。 第11の実施形態に係るスピーカの音放射特性を示す図。 第11の実施形態における室外ファンの上流側の騒音レベルを示す図。 第11の実施形態における室外ファンの下流側の騒音レベルを示す図。 第11の実施形態の制御用スピーカが無い場合の室外ファンの上流側の騒音レベルを示す図。 第11の実施形態の制御用スピーカが無い場合の室外ファンの下流側の騒音レベルを示す図。 第12の実施形態における制御用スピーカの構成を示す図。 第13の実施形態における制御用スピーカの構成を示す図。 第14の実施形態における制御用スピーカの構成を示す図。 第15の実施形態における室外機の筐体内の構成を示す図。 第16の実施形態における室外機の筐体内の構成を示す図。 第17の実施形態における室外機の筐体内の構成を示す図。 第17の実施形態における室外機の筐体の前面の構成を示す図。 図35のB−B線に沿う断面を矢印方向に見た図。 第18の実施形態における室内機およびリモコンの構成を示す図。 第18の実施形態におけるリモコンの構成を詳細に示す図。 第18の実施形態におけるリモコンの制御回路のブロック図。 第19の実施形態におけるリモコンの構成を示す図。 第20の実施形態の作用を説明するためのフローチャート。 第21の実施形態の作用を説明するためのフローチャート。 第22の実施形態の作用を説明するためのフローチャート。 第22の実施形態における音入力回路の構成を示す図。
符号の説明
1…室外機、2…コンプレッサ、2M…コンプレッサモータ、3…室外ファン、4…モニタ用マイク、5…制御用スピーカ、6…ANC制御基板、7…制御基板、11…室内機、12…室内ファン、12M…室内ファンモータ、13…モニタ用マイク、14…制御用スピーカ、15…ANC制御基板、16…制御基板、20…リモコン、41…吸込口、42…吹出口、43…熱交換器、45,46…開口、47…ダクト、50…遮断箱、51…励磁ユニット、52…振動板、53…前面調整板、54…背面調整板、60…振動センサ、70…リモコン、71…参照用マイク、72…モニタ用マイク、73…制御用スピーカ

Claims (7)

  1. 音信号を生成して出力する適応フィルタを備え、消音対象のモータの音をモニタ用マイクで捕らえ、モニタ用マイクからの入力と前記適応フィルタの出力との差をその適応フィルタにフィードバックして同適応フィルタの適応フィルタ係数を修正することにより、前記モータの音に対する打消用の音信号を前記適応フィルタから得て制御用スピーカに供給し、制御用スピーカから出る音を前記モータに向け放射する能動消音制御装置において、前記適応フィルタ係数を決定する要素であり且つ音の収束速度を決定する制御パラメータである収束係数を、前記モータの速度ゲインが設定値以上の場合に大きく設定して設定値未満の場合に小さく設定する制御手段、を備えたことを特徴とする能動消音制御装置。
  2. 前記制御手段は、前記収束係数を、前記モータの速度ゲインに比例して段階的に設定することを特徴とする請求項1に記載の能動消音制御装置。
  3. 前記制御用スピーカの最適出力ゲインG0を前記モータの回転数ごとに記憶し、かつ前記モータの回転位置と前記制御用スピーカの出力信号との最適位相差φ0を前記モータの回転数ごとに記憶した記憶手段と、前記モータの回転数が変化したとき、その回転数に対応する最適出力ゲインG0および最適位相差φ0を前記記憶手段から読み出す読出手段と、この読出手段で読み出された最適出力ゲインG0、同読み出された最適位相差φ0、および前記モータの実際の回転位置φを用いた演算により、前記制御用スピーカの最適出力SPoutを求めてその値に同制御用スピーカの出力を更新設定する制御手段と、をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の能動消音制御装置。
  4. 前記モータの回転数が一定時間以上にわたって一定のとき、前記モータの回転数に対応する最適出力ゲインG0および最適位相差φ0を前記記憶手段から読み出す読出手段と、この読出手段で読み出された最適位相差φ0に対する所定の微調整幅Δφを設定し、前記読出手段で読み出された最適出力ゲインG0、同読み出された最適位相差φ0、前記設定した微調整幅Δφ、および前記モータの実際の回転位置φを用いた演算により、前記制御用スピーカの最適出力SPoutを求めてその値に同制御用スピーカの出力を更新設定する第1制御手段と、この第1制御手段の処理後、前記モニタ用マイクからの入力レベルの平均値を算出する算出手段と、この算出手段の算出結果が最小となるように前記第1制御手段の処理を繰り返し、最小となったときの演算に用いられた微調整幅Δφの分だけ前記記憶手段内の最適位相差φ0を補正してφp(=φ0+Δφ)に更新する第2制御手段と、この第2制御手段の処理後、前記読出手段で読み出された最適出力ゲインG0に対する所定の微調整幅ΔGを設定し、前記読出手段で読み出された最適出力ゲインG0、前記第2制御手段の更新値である最適位相差φp、前記設定した微調整幅ΔG、および前記モータの実際の回転位置φを用いた演算により、前記制御用スピーカの最適出力SPoutを求めてその値に同制御用スピーカの出力を更新設定する第3制御手段と、この第3制御手段の処理後、前記モニタ用マイクからの入力レベルの平均値を算出する算出手段と、この算出手段の算出結果が最小となるように前記第3制御手段の処理を繰り返し、最小となったときの演算に用いられた微調整幅ΔGの分だけ前記記憶手段内の最適出力ゲインG0を補正して更新する第4制御手段と、をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の能動消音制御装置。
  5. ファンの音に対する打消用の音を生成して制御用スピーカから発する能動消音制御装置において、
    前記制御用スピーカは、励磁ユニットおよび振動板からなり、振動板の前側に出る音の位相と後側に出る音の位相が互いに逆で、背後に遮音箱を持たない構成であって、
    この制御用スピーカの振動板の前側が前記ファンの送風下流側に対応し、かつ振動板の後側が前記ファンの送風上流側に対応する状態に、同制御用スピーカを配置したことを特徴とする能動消音制御装置。
  6. 前記制御用スピーカは、振動板の前側に出る音の量と後側に出る音の量との比率を調整するための調整板を付属して備えていることを特徴とする請求項5に記載の能動消音制御装置。
  7. 空気調和機の室内機およびその室内機に対する運転操作用のワイヤレス式のリモートコントロール装置に、前記室内機から出る音を捕らえる参照用マイクと、前記室内機から出る音に対する打消用の音を放射する制御用スピーカと、この制御用スピーカから放射される音の放射領域に配置されるモニタ用マイクと、前記参照用マイクおよび前記モニタ用マイクからの入力に応じて前記打消用の音を生成する制御手段とを備えたことを特徴とする能動消音制御装置。
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