JP2006137062A - 木目材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 好適な生産性及び外観品質を有するとともに、温度変化に伴う変形を抑制することができる木目材を提供する。
【解決手段】 車輌部品を構成するために使用される木目材としてのウッドパネル21は、合成樹脂製の基材層31を備えており、該基材層31の一面には、接着層34を介して木質層32が接着されている。この木質層32は、天然木製であり、木目を有している。また、基材層31の他面には、第2木質層36を有する収縮層33が基材層31を挟んで木質層32と対向するように設けられている。この収縮層33は、加熱雰囲気下で第2木質層36が収縮することにより、収縮するように構成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、車輌の内装部品、或いは外装部品等の車輌部品を構成するために使用され、該車輌部品の意匠面で木目調を表現する木目材に関するものである。
一般に、ステアリングホイール、インストルメントパネル、コンソール、ドアトリム等といった内装部品、ドアピラーガーニッシュ、ドアモール等といった外装部品等の車輌部品において、その表面(外面)の意匠性を向上させるべく、同表面を木目調としたものが提供されている。
例えば、特許文献1に記載のステアリングホイールでは、該ステアリングホイールを構成する芯金を無垢材からなる木部材(木目材)で取り囲み、被覆することにより、該ステアリングホイールの表面を木目調としている。このステアリングホイールは、無垢材を使用していることから、該無垢材の木目による模様が独特且つ複雑に変化するため、天然木が有するぬくもり感、雰囲気感、質感等を如実に表現しており、高度な外観品質を有している。しかし、このステアリングホイールは、高度な外観品質を有する一方で、無垢材から木部材を削り出す、木部材の形状を芯金の形状に合わせる等の作業を必要とし、製造が煩雑で生産性に劣るものとなる。
例えば、特許文献2に記載のステアリングホイールでは、該ステアリングホイールを構成する芯金の少なくとも一部が被覆部で覆われ、この被覆部にフィニッシャ(木目材)が取り付けられている。そして、必要に応じてフィニッシャの表面に種々の装飾が施されるようになっている。なお、特許文献2には、この装飾としては、例えば、木目調の流体印刷加工、塗装、シートまたはフィルムの貼り付け加工、シートまたはフィルムのインモールドコートなどが記載されている。この他に、例えば、特許文献3に記載の車両内装用樹脂製疑似木目パネル(木目材)では、樹脂材料により成形される車両内装用加飾部品の樹脂層の表面または裏面に図柄を転写絵付けして、該車両内装用加飾部品を木目調としている。加えて、特許文献4に記載の木目調ボード(木目材)の製造方法では、天然繊維と熱可塑性樹脂繊維とを原料とし木目調柄を有する木目調ボードを製造している。
上記の特許文献2〜4の記載のように、フィニッシャ、疑似木目パネル、木目調ボード等のような木目材を用いて木目調の装飾を行う場合、製造が簡易であることから、生産性は好適である。だがしかし、幾ら生産性が好適であっても、印刷加工、塗装等の方法で表現された木目による模様は略一様であって変化に乏しく、その外観品質は、天然木による外観品質に遠く及ばない。
例えば、特許文献5に記載のステアリング用グリップ部材の突板貼り合わせ方法では、天然木を極めて薄く削り取って作り出される突板からなる突板化粧シート(木目材)でステアリングのグリップ材部表面が覆われることにより、ステアリング用グリップ部材を木目調としている。この特許文献5に記載のステアリング用グリップ部材の突板貼り合わせ方法によれば、無垢材からの削り出し等の煩雑な作業を必要とせず、生産性が好適であり、また突板化粧シート等のような木目材が天然木の木目による独特且つ複雑な模様を表現しており、外観品質に優れる。
特開2002−87281号公報 特開2000−264222号公報 特開平9−240386号公報 特開2003−305706号公報 特開2001−30915号公報
ところが、ステアリングホイール等のような車輌部品は、夏季、冬季等を通じて使用されるものであり、温度変化を伴う環境下で使用することが前提となっている。また、天然木は、温度変化に応じて収縮・膨張する性質を有しており、特に夏季の炎日で高温となる過酷な環境下で大きく収縮する傾向がある。このため、上記特許文献5に記載の突板化粧シート等のように天然木を使用する木目材は、温度変化を伴う環境下での使用時に天然木が収縮することで大きく変形し、取り付け箇所から反りあがったり、浮き上がったり等してしまうおそれがあった。
本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、好適な生産性及び外観品質を有するとともに、温度変化に伴う変形を抑制することができる木目材を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の木目材の発明は、車輌部品を構成するために使用される木目材であって、基材層と、該基材層の一面に接着層を介して接着されており、天然木製で木目を有する木質層と、前記基材層を挟んで前記木質層と対向するように前記基材層の他面に設けられており、加熱雰囲気下で収縮する収縮層とを備えていることを要旨とする。
上記の構成によれば、木目材は、基材層の一面に天然木製の木質層を積層してなるものであり、例えば無垢材からの削り出し等といった煩雑な作業を必要とせず、生産性を好適なものとすることができるようになる。また、木質層は天然木製であり、木目による独特且つ複雑な模様を表現しており、木目材を外観品質に優れたものとすることができるようになる。さらに、基材層を挟んで木質層と対向するように収縮層を設けたことにより、高温環境下においては、木質層と収縮層とが互いに収縮する。このため、基材層の他面側で収縮する収縮層により、基材層の一面側における木目材の収縮が緩和され、基材層の変形を抑制することができるようになる。その結果、木目材において、好適な生産性及び外観品質を有するとともに、温度変化に伴う変形を抑制することができる。
請求項2に記載の木目材の発明は、請求項1に記載の発明において、前記収縮層は、前記木質層の木目方向と直交する方向へ収縮することを要旨とする。上記の構成によれば、天然木製の木質層は、その木目方向と直交する方向への収縮が大きくなる性質を有することから、収縮層を木質層の木目方向と直交する方向へ収縮するものとすることにより、木質層の収縮を好適に抑制することができる。
請求項3に記載の木目材の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記収縮層は、天然木製で木目を有する第2の木質層と、該第2の木質層を前記基材層の他面に接着するための第2の接着層とからなり、前記木質層の木目方向と前記第2の木質層の木目方向とが同方向となるように揃えられていることを要旨とする。上記の構成によれば、収縮層を第2の木質層から構成し、木質層の木目方向と第2の木質層の木目方向とを同方向に揃えることにより、木質層の収縮をより好適に抑制することができるようになり、木目材の変形を好適に抑制することができる。
請求項4に記載の木目材の発明は、請求項3に記載の発明において、前記木質層に使用する天然木と、前記第2の木質層に使用する天然木とを同一の樹種としたことを要旨とする。上記の構成によれば、木質層の収縮を第2の木質層の収縮で相殺することができるようになり、木目材の変形を防止することができる。
本発明によれば、好適な生産性及び外観品質を有するとともに、温度変化に伴う変形を抑制することができる。
以下、本発明の木目材を、車輌部品である自動車のステアリングホイールに使用するウッドパネルに具体化した一実施形態について説明する。なお、以下の説明において「上下方向」及び「左右方向」をいう場合は、車両を直進させる直進操舵位置の状態(図3に示す状態)にあるステアリングホイールの上下方向(図3における上下方向)及び左右方向(図3における左右方向)をいうものとする。
まず、ステアリングホイールの構成について説明する。
図3に示すように、ステアリングホイール11は、円環状のリム部12と、その中央に配置されたパッド部13と、リム部12とパッド部13とを連結する複数(本実施形態では3本)のスポーク部14とを備えている。リム部12には、芯金としての円環状のリム部芯金15が埋設されている。このリム部芯金15の左右両側及び下部からは、板状のスポーク部芯金16がリム部芯金15の略中心へ向かうように延設されている。各スポーク部芯金16の先端部には、三角板状のボスプレート17が連結されている。そして、これらリム部芯金15、スポーク部芯金16及びボスプレート17により、ステアリングホイール11の骨格が構成されている。なお、リム部芯金15、スポーク部芯金16及びボスプレート17は、それぞれアルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金等の金属材料から形成されている。
前記リム部12は、前記スポーク部芯金16をリム被覆部18で被覆することにより構成されたものである。前記パッド部13は、前記ボスプレート17をボス被覆部19で被覆することにより構成されたものである。前記スポーク部14は、前記スポーク部芯金16をスポーク被覆部20で被覆することにより構成されたものである。また、前記リム被覆部18は、ステアリングホイール11の表面で上部及び下部をそれぞれ装飾する木目材としての2つのウッドパネル21と、これらウッドパネル21が設けられた箇所を除いて前記スポーク部芯金16を被覆するリム被覆部本体22とを備えている。ボス被覆部19、スポーク被覆部20及びリム被覆部本体22は、それぞれ発泡ポリウレタン等の樹脂材料から形成されるとともに、スポーク被覆部20はリム被覆部本体22と一体に形成されている。なお、前記パッド部13には図示しないエアバック装置等が内装されている。
図4に示すように、前記ウッドパネル21は、ステアリングホイール11の表面(図4中で上面)から外周面(図4中で右側面)までを覆うべく、断面円弧状に形成されている。このウッドパネル21の内面には、略箱状をなすホルダー23が突設されている。該ホルダー23には、取着ピン24が嵌め込まれている。この取着ピン24の先端には、複数の係止突部24aが螺刻されている。これらホルダー23及び取着ピン24は、ウッドパネル21をステアリングホイール11に取着するための係合部を構成している。
前記スポーク部芯金16には、取着ピン24と対応する位置となるように、係入孔25が凹設されている。この係入孔25の内面には、複数の係止凹部25aが螺刻されている。ウッドパネル21は、取着ピン24がスポーク部芯金16の係入孔25に嵌入されることにより、ステアリングホイール11に取着されている。また、ウッドパネル21は、取着ピン24の係止突部24aが係入孔25の係止凹部25aに係合されることにより、ステアリングホイール11からの脱着を抑制されている。
ウッドパネル21とリム被覆部本体22との境界部において、ウッドパネル21の端面には、凸条26が設けられている。この凸条26と対応して、リム被覆部本体22の端面には、凹条27が設けられている。これら凸条26及び凹条27は、ステアリングホイール11にウッドパネル21が取着された場合、互いに係合することによって、ウッドパネル21とリム被覆部本体22との境界部を略面一とし、意匠性を向上させている。なお、リム被覆部本体22は、意匠性のさらなる向上等を目的として、その表面が皮革等からなるシート材によって被覆される場合がある。このようにリム被覆部本体22の表面をシート材で被覆する場合、該シート材の端部が前記凸条26及び前記凹条27の間に挟み込まれることにより、シート材のリム被覆部本体22の表面からの剥離が抑制される。
次に、前記ウッドパネル21の構成について説明する。
図1に示すように、ウッドパネル21は、基材層31と、ウッドパネル21の表面側となる該基材層31の一面に設けられた木質層32と、ウッドパネル21の内面側となる該基材層31の他面に設けられた収縮層33とを備えている。この収縮層33は、前記基材層31を挟んで前記木質層32と対向している。
前記基材層31は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のエステル系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ABS系樹脂等の合成樹脂から形成されている。この基材層31は、ウッドパネル21を所望する形状とし、さらに該形状を保持するために設けられている。また、前記ホルダー23等の係合部、凸条26等は、基材層31に形成されている。従って、基材層31には、ステアリングホイール11に対する取付精度の高さに加え、リム被覆部本体22との境界部を略面一とする等の意匠性の向上を目的とすべく成形精度の高さも要求されることとなる。さらに、ウッドパネル21に要求される生産性の高さをも鑑みた結果、本実施形態の基材層31は、金型を使用した射出成形法により成形されている。なお、この基材層31を省略し、木質層32のみでウッドパネル21を成形する場合、前記の取付精度及び成形精度を高く維持するために木材を精密に切削する等の作業が必要となり、生産性が低下してしまう。
前記木質層32は、天然木製の薄板から形成されている。この木質層32は、天然木による柾目、板目、杢目等の木目をウッドパネル21に付与することにより、該木目による独特且つ複雑な模様を表現し、ウッドパネル21を外観品質に優れたものとするために設けられている。従って、木質層32に使用される天然木には、美しい木目を有するものが使用される。このような天然木の樹種としては、バーズアイメープル、カーリーメープル等の楓、ウォールナット等の胡桃、オーク等の楢(ナラ)、樫、ローズナット等が挙げられる。
木質層32は、スライサー、ロータリーレース等の装置で天然木製の木材をスライス(薄切り)して得られた単板で形成することが好ましい。なお、複数枚の単板を互いに貼り合わせることにより形成されたものが「合板」である。木質層32を合板で形成した場合、木質層32が硬くなり、基材層31から剥離したり、浮き上がったり等してしまうおそれがある。さらに、木質層32を合板で形成した場合、該木質層32の厚みの増加に応じて前記基材層31を薄くする必要があり、ウッドパネル21の取付精度、成形精度、剛性等が低下してしまうおそれがある。
木質層32の厚みは、好ましくは0.2〜1mmであり、より好ましくは0.2〜0.5mmである。厚みが0.2mm未満の場合、基材層31の色調に影響されて木質層32の色調が所望通りとならなかったり、ウッドパネル21を形成する際に木質層32が破れやすくなったり等の不具合が生じるおそれがある。厚みが1mmを越える場合、木質層32が柔軟性に劣るものとなり、曲面状をなす基材層31の表面に取着する際に木質層32が割れたり、曲面に沿わなくなったり等の不具合が生じるおそれがある。
前記木質層32は、前記基材層31に接着層34を介して接着されている。この接着層34は、基材層31の一面に塗布された接着剤34aと、基材層31側となる木質層32の一面(図中で裏面)に設けられた裏打材34bとからなる。前記接着剤34aは、基材層31の表面に木質層32を強固に接着し、該基材層31の曲面状をなす表面に木質層32を好適に沿わせるために使用されている。この接着剤34aとしては、ウレタン系、レゾルシノール系、メラミン系、ユリア系、フェノール系等の接着剤が挙げられる。
前記裏打材34bは、天然木製の薄板を曲げたり、伸ばしたり等して基材層31の表面に接着して木質層32を形成する場合、該薄板を補強することにより、薄板の破れ、割れ等の不具合を抑制するために使用されている。この裏打材34bとしては、不織布、織布、編布、フィルム等が挙げられる。これらの中でも、不織布、織布、編布は、接着剤34aが染み込みやすいため、裏打材34bとして好ましく、不織布は、繊維の並び方向に基づく伸縮量の差が生じにくいため、裏打材34bとしてより好ましい。裏打材34bの材料としては、該裏打材34bを薄くした場合にも強度を得やすいという観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のエステル系樹脂等の合成樹脂が挙げられる。また、裏打材34bを不織布、織布、編布等で形成する場合、加熱によって溶融し部材同士を接合する熱溶融繊維、接着剤としての機能を有する接着性繊維等を含ませてもよい。
前記木質層32において、ウッドパネル21の表面側となる木質層32の他面(図中で表面)には、被覆層35が設けられている。この被覆層35は、透明な塗料からなるコート剤から形成されている。被覆層35は、木質層32の表面に光沢感、色調の深み等を付与することにより、ウッドパネル21の意匠性のさらなる向上を図るために設けられている。被覆層35に使用する塗料としては、ポリウレタン系塗料、ポリエステル系塗料等が挙げられる。また、被覆層35を塗料から形成する場合、ウッドパネル21の加熱時には該塗料中の溶媒が蒸発したり等することにより、被覆層35は僅かに収縮する。
前記収縮層33は、前記基材層31の一面からウッドパネル21の表面までの構成と同一となるように形成されている。即ち、収縮層33は、天然木製で木目を有する第2の木質層である第2木質層36と、この第2木質層36を前記基材層31の他面に接着するための第2の接着層である第2接着層37とを備えている。この第2接着層37は、前記基材層31の他面に塗布された第2接着剤37aと、基材層31側となる第2木質層36の一面(図中で表面)に設けられた第2裏打材37bとからなる。さらに、ウッドパネル21の内面側となる第2木質層36の他面(図中で裏面)には、第2被覆層38が設けられている。これら第2木質層36、第2接着剤37a、第2裏打材37b及び第2被覆層38は、それぞれ木質層32、接着剤34a、裏打材34b及び被覆層35と、同一の材料で同一の厚さとなるように形成されている。
天然木は、加熱した場合に、内包された水分が蒸散される等して乾燥することにより、その木目の方向と直交する方向へ大きく収縮する性質を有している。従って、当該収縮層33は、加熱雰囲気下で第2木質層36の木目の方向と直交する方向へ収縮するように構成されている。第2木質層36に使用する天然木には、前記木質層32に使用する天然木と同一の樹種のものが使用されている。また、収縮層33は、第2木質層36の木目の方向と、前記木質層32の木目の方向とが同方向に揃うように設けられている。このように木目の方向が揃えられていることにより、加熱雰囲気下で木質層32と第2木質層36とは同方向へ収縮するように構成されている。
図2に示すように、当該収縮層33は、ウッドパネル21の内面側となる基材層31の他面において、前記ホルダー23を避けて設けられている。このようにホルダー23を避けて収縮層33を設けたことにより、加熱雰囲気下で収縮層33が収縮する場合、該収縮層33の収縮によるホルダー23の変形を抑制することができるようになっている。
次に、前記ウッドパネル21の作用について以下に記載する。
さて、ウッドパネル21は、ステアリングホイール11に取着された後、該ステアリングホイール11が車輌部品として耐熱性に適合したものであることを確認すべく、耐熱試験が行われる。なお、この耐熱試験は、80〜100℃の高温雰囲気下で行われる。この耐熱試験において、ウッドパネル21の基材層31の一面においては、木質層32がその木目の方向と直交する方向へ収縮する。一方、基材層31の他面においては、第2木質層36がその木目の方向と直交する方向へ収縮する。このとき、木質層32と第2木質層36とは、互いの木目の方向が揃えられていることから、それぞれ同方向へ収縮する。このため、基材層31の一面と他面とで互いの収縮が相殺され、ウッドパネル21は、木質層32の収縮等により変形することなく、その形状を保持される。
なお、上記ウッドパネル21のような木目材は、車輌部品として使用する故、生産性、外観品質に加え、温度変化に伴う変形の抑制能までも要求される。即ち、天然木製の単板を表面に貼着してなるものとして、所謂化粧板等のような合板が挙げられ、このような合板は、高級家具等の材料として一般的に使用されている。しかし、このような高級家具等は趣味性の高いものであり、生産性の高さを重視されるものではない。また、高級家具に限らず、一般的な家具等であれば、生産性の高さを重視するものも存在するが、このような家具等は、80〜100℃という高温雰囲気下での耐熱性を要求されるものではない。
前記の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)実施形態のウッドパネル21は、合成樹脂製の基材層31の一面に天然木製の薄板からなる木質層32を接着して構成されている。このため、製造が簡易であり、好適な生産性を有するとともに、天然木が有する好適な外観品質を付与することができる。また、基材層31の他面には、第2木質層36を有する収縮層33が設けられている。この収縮層33は、80〜100℃という高温雰囲気下において木質層32が収縮する場合、該収縮層33もまた収縮することにより、木質層32の収縮を緩和する。このため、木質層32の収縮によるウッドパネル21の変形を抑制することができる。
(2)また、収縮層33は、第2木質層36の木目の方向を考慮することにより、木質層32の木目の方向と直交する方向へ収縮するように構成されている。このため、木質層32の収縮を好適に抑制することができる。
(3)また、木質層32の木目の方向と第2木質層36の木目の方向とが同方向となるように揃えられているため、木質層32の収縮をより好適に抑制することができ、ウッドパネル21の変形を好適に抑制することができる。
(4)また、木質層32と第2木質層36とを同一の樹種から形成したことにより、木質層32の収縮量と第2木質層36の収縮量とを同一とすることができる。このため、基材層31の一面と他面とで互いの収縮が相殺され、ウッドパネル21の変形を防止することができる。
(5)また、接着層34は、接着剤34aと裏打材34bとから構成されている。このように裏打材34bを設けたことにより、ウッドパネル21の製造時における木質層32の破れ、割れ等といった不具合の発生を抑制することができる。
(6)また、収縮層33をホルダー23を避けて設けたことにより、収縮層33の収縮によるホルダー23の変形を抑制することができ、ウッドパネル21の取付精度を保持することができる。
(7)また、木質層32を天然木製の単板から形成したことにより、木質層32の厚みの増加による割れ等といった不具合の発生を抑制することができる。さらに、単板からなる木質層32はその収縮方向を予想しやすいことから、ウッドパネル21の変形を抑制するための収縮層33の設計を簡易なものとすることができる。
(8)また、ステアリングホイール11のような曲面を多く有する車輌部品において、ウッドパネル21は、高温雰囲気下における変形を好適に抑制することができ、該ステアリングホイール11の製品品質を高く維持することができる。
(変更例)
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 木目材は、ステアリングホイール11に取着されるウッドパネル21に限らず、例えばインストルメントパネル、コンソールのサイドパネルや化粧パネル、ドアトリムの化粧パネル等としてもよい。また、インストルメントパネル、コンソール、ドアトリム等といった内装部品に限らず、バンパーガーニッシュ、サイドモール、ドアピラー等の外装部品に木目材を取着してもよい。このように構成した場合にも、高温雰囲気下における木目材の変形を抑制することができる。
・ 不具合を生じない程度であれば、木質層を合板から形成してもよい。なお、木質層を合板から形成する場合、同合板は、単板の木目同士が交差するように貼り合わせることに限らず、単板の木目同士が揃うように貼り合わせて形成してもよい。
・ 例えば、図5(a)に示すように、収縮層33において、第2被覆層38を省略してもよい。また、図5(b)に示すように、収縮層33を第2被覆層38のみで構成してもよい。つまり、塗料からなる第2被覆層38は高温雰囲気下で収縮するため、収縮層33として使用することができる。あるいは、収縮層33を塗料に限らず、高温雰囲気下で架橋反応等の化学反応を起こすことにより収縮する合成樹脂等で構成してもよい。
・ 裏打材34b及び被覆層35のうち、少なくとも何れか一方を省略してもよい。
・ 収縮層33を、基材層31の他面で周縁部の何れかの箇所、或いは周縁部全体に設けてもよい。基材層31の他面で周縁部の何れかの箇所として、例えば図6(a)に示すように、収縮層33を基材層31の他面で長手方向の端部にのみ設けてもよく、図6(b)に示すように、収縮層33を基材層31の他面で短手方向の端部にのみ設けてもよい。或いは、図6(c)に示すように、収縮層33を基材層31の他面で周縁部全体に設けてもよい。即ち、ウッドパネル21においては、高温雰囲気下でその周縁部が変形する可能性が高いため、上記のように変形しやすい部分にのみ収縮層33を設けることにより、収縮層33を設けることによる製造コストの高騰を抑えることができる。
・ ホルダー23を覆うように収縮層33を設けてもよい。
・ 木質層32に使用する天然木と、第2木質層36に使用する天然木とを異なる樹種としてもよい。また、木質層32の木目方向と第2木質層36の木目方向とは、必ずしも揃えなくともよい。特に、木目が板目や杢目である場合、木目方向を揃えることが難しいため、このような場合は、互いの収縮方向を考慮して木質層32と第2木質層36とを配置すればよい。なお、木目のうち柾目とは木目の筋が略平行状に延びているものであり、板目とは木目の筋が略同心円状に延びているものであり、杢目とは木目の筋が互いに入り混じるように延びているものである。
・ 収縮層33は、天然木からなる木質層を有するものに限らず、加熱雰囲気下で収縮可能であれば、織布、編布、不織布、フィルム等で形成してもよい。なお、織布、編布等で収縮層33を形成する場合、収縮繊維を使用する等して、該織布、編布等を所定の一方向へ大きく収縮するように構成することが望ましい。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記接着層は、前記基材層の一面に塗布された接着剤と、前記基材層側となる前記木質層の一面に設けられた裏打材とからなることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の木目材。
・ 前記収縮層は、前記基材層の他面で周縁部全体、或いは周縁部の何れかの箇所に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の木目材。
・ 前記基材層の他面には、前記基材層を前記車輌部品に取着するための係合部が設けられており、前記収縮層は、該係合部を避けて設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の木目材。
・ 前記木質層は、天然木製の単板からなることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか一項に記載の木目材。
・ 前記車輌部品は、ステアリングホイール、インストルメントパネル、コンソール及びドアトリムのうち少なくとも何れか1つであることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の木目材。
本実施形態のウッドパネルを示す断面図。 本実施形態のウッドパネルを内面から見た状態を示す斜視図。 本実施形態のステアリングホイールを示す正面図。 本実施形態のステアリングホイールを示す一部を拡大した平断面図。 (a),(b)は別形態のウッドパネルを示す断面図。 (a)〜(c)は別形態のウッドパネルを内面から見た状態を示す斜視図。
符号の説明
11…車輌部品としてのステアリングホイール、21…木目材としてのウッドパネル、31…基材層、32…木質層、33…収縮層、34…接着層、36…第2の木質層としての第2木質層、37…第2の接着層としての第2接着層。

Claims (4)

  1. 車輌部品を構成するために使用される木目材であって、
    基材層と、該基材層の一面に接着層を介して接着されており、天然木製で木目を有する木質層と、前記基材層を挟んで前記木質層と対向するように前記基材層の他面に設けられており、加熱雰囲気下で収縮する収縮層とを備えていることを特徴とする木目材。
  2. 前記収縮層は、前記木質層の木目方向と直交する方向へ収縮することを特徴とする請求項1に記載の木目材。
  3. 前記収縮層は、天然木製で木目を有する第2の木質層と、該第2の木質層を前記基材層の他面に接着するための第2の接着層とからなり、前記木質層の木目方向と前記第2の木質層の木目方向とが同方向となるように揃えられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の木目材。
  4. 前記木質層に使用する天然木と、前記第2の木質層に使用する天然木とを同一の樹種としたことを特徴とする請求項3に記載の木目材。
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