JP2006132652A - アンギュラ玉軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】 耐水素疲労特性に優れた高速回転アンギュラ玉軸受を提供する。
【解決手段】 アンギュラ玉軸受1は、dn値900000以上で使用されるアンギュラ玉軸受であって、内周に転走面2aを有する外輪2と、外輪2の転走面2aに対向する転走面3aを有する内輪3と、外輪2と内輪3との間に介在する複数の玉4とを備えている。内輪3、外輪2および玉4の少なくとも1つの部材が、合金元素として少なくともVを含有しており、かつ転動接触を受ける表面および表層におけるC、Si、Mn、Cr、およびVの含有量が、それぞれC:0.5質量%以上1.2質量%以下、Si:0.1質量%以上1質量%以下、Mn:0.1質量%以上1.5質量%以下、Cr:0.1質量%以上2.2質量%以下、V:0.1質量%以上の範囲内にある鋼材よりなっている。
【選択図】 図1
【解決手段】 アンギュラ玉軸受1は、dn値900000以上で使用されるアンギュラ玉軸受であって、内周に転走面2aを有する外輪2と、外輪2の転走面2aに対向する転走面3aを有する内輪3と、外輪2と内輪3との間に介在する複数の玉4とを備えている。内輪3、外輪2および玉4の少なくとも1つの部材が、合金元素として少なくともVを含有しており、かつ転動接触を受ける表面および表層におけるC、Si、Mn、Cr、およびVの含有量が、それぞれC:0.5質量%以上1.2質量%以下、Si:0.1質量%以上1質量%以下、Mn:0.1質量%以上1.5質量%以下、Cr:0.1質量%以上2.2質量%以下、V:0.1質量%以上の範囲内にある鋼材よりなっている。
【選択図】 図1
Description
本発明は、アンギュラ玉軸受に関し、より特定的には、dn値900000以上で使用される高速回転アンギュラ玉軸受に関する。
工作機の主軸などに用いられるアンギュラ玉軸受は、その機構上、転動体(玉)と軌道輪との間の転がり接触表面において不可避的にスピンが生じる。この場合のスピンとは、内輪または外輪の回転軸の垂線に対して傾斜した軸周りに回転する転動体のスピンである。最近では、生産性向上のための高速化に加え、コンパクト化、低騒音化、メンテナンスフリー化などの要求がある。それに伴ない、アンギュラ玉軸受にかかる負荷が増大し、前述のスピンが大きくなる。また、アンギュラ玉軸受はエアオイルやグリースによる希薄潤滑下で用いられる。
このように、アンギュラ玉軸受は希薄潤滑下で大きなスピンが生じる状況で用いられるため、転がり接触表面において大きなすべりが生じやすくなる。その影響により、転がり接触表面で潤滑剤が分解するなどして水素が発生し、鋼中に侵入することで早期剥離が生じることがある。特にグリース潤滑の場合にはアンギュラ玉軸受の潤滑が最も希薄となり、内輪の回転数と内輪の内径との積として定義されるdn値が900000以上の高速回転で使用されると、この早期剥離が顕著になる。
水素は鋼の疲労強度を著しく低下させるため、実用条件でも容易に転がり接触表面あるいはその直下の表層内部からき裂を発生・伝播させて早期剥離に至らせる。この早期剥離の多くは、大きなすべりが作用したときに転がり接触表面に作用する周方向の引張応力が原因で生じると考えられる。今後、高速回転アンギュラ玉軸受の使用条件はますます厳しくなる傾向にあることは間違いなく、したがって、ますます耐水素疲労特性に優れる鋼材が必要になると予想される。
鋼材の耐水素疲労特性を向上させる従来技術に、たとえば特開2000−282178号公報がある。鋼材にCr(クロム)を多く添加することで鋼表面に不動態膜を形成し、鋼中への水素の侵入を抑制するものである。しかしながら、Crを多く添加することで炭化物が粗大化し、それが応力集中源となって早期剥離が生じることがある。また、不動態膜は水素の拡散を遅くする効果はあるが、発生した水素が鋼表面に吸着するのを促進する効果も併せ持つ。起動停止が頻繁に行なわれれば、停止時に水素が散逸するため、鋼中への水素の侵入を遅らせることは早期剥離の抑制に有効であろう。しかしながら、連続して使われるのであれば、不動態膜が多くの水素を吸着する分、鋼中に侵入する水素量が増すため、早期剥離を抑制することが難しい。特に工作機においては、生産性向上のため無人連続稼動する方向にあり、そのような用途に対しては従来技術では不十分である。
特開2000−282178号公報
本発明は、上記のような問題を解決するものであって、耐水素疲労特性に優れた高速回転アンギュラ玉軸受を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、種々の組成のずぶ焼入れ鋼、浸炭鋼、および高周波焼入れ鋼(中炭素鋼)に対して、後述する疲労強度に及ぼす水素の影響を評価した結果、少なくともV(バナジウム)を含有し、かつC(炭素)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)、Cr、およびVの含有量が、それぞれC:0.5質量%以上1.2質量%以下、Si:0.1質量%以上1質量%以下、Mn:0.1質量%以上1.5質量%以下、Cr:0.1質量%以上2.2質量%以下、V:0.1質量%以上の範囲内にある鋼材であれば、耐水素疲労特性が大幅に向上することを見出した。
このため本発明のアンギュラ玉軸受は、dn値900000以上で使用されるアンギュラ玉軸受であって、内周に転走面を有する外輪と、外輪の転走面に対向する転走面を有する内輪と、外輪と内輪との間に介在する複数の転動体とを備えている。内輪、外輪および転動体の少なくとも1つの部材が、合金元素として少なくともVを含有しており、かつ転動接触を受ける表面および表層におけるC、Si、Mn、Cr、およびVの含有量が、それぞれC:0.5質量%以上1.2質量%以下、Si:0.1質量%以上1質量%以下、Mn:0.1質量%以上1.5質量%以下、Cr:0.1質量%以上2.2質量%以下、V:0.1質量%以上の範囲内にある鋼材よりなることを特徴とするものである。
V炭化物は疲労強度の低下を招く拡散性水素を強力にトラップし、剥離の起点になる非金属介在物などの応力集中源への拡散性水素の集積を抑制する効果がある。通常、転動部品の転動接触部には高硬度が要求されるため、焼入れした後に低温焼戻しして用いられる。Vは小量の添加であっても焼入れ加熱時もしくは浸炭時にV炭化物として安定に存在するため、焼入れした後に低温焼戻ししてもV炭化物が残存する。Mo(モリブデン)炭化物やTi(チタン)炭化物もV炭化物ほどではないものの同様の効果がある。しかしながら、Moは大量に添加しないと焼入れ加熱時もしくは浸炭時ではMo炭化物としては存在せず母地に溶けてしまうため、焼入れした後に低温焼戻しした状態ではMo炭化物は残存しない。Tiは窒素との親和性が強く、非金属介在物の1つであるTi窒化物を形成するため、剥離の起点となる応力集中源が増えることになる。なお、Vは素材硬さを高める欠点があるので、中炭素鋼のように焼鈍せずに用いる鋼材の場合は、Vを多く添加しすぎると加工性が損なわれる。そのため、必要とされる他の合金元素の添加量との兼ね合いで、それぞれの添加量を適当に調整する必要がある。
C量の下限を0.5質量%としたのは、高周波焼入れ鋼は通常中炭素鋼であるが、C量が0.5質量%未満では高周波焼入れ後に転動接触部に必要とされる硬度が得られなくなるためである。一方、C量の上限を1.2質量%としたのは、ずぶ焼入れ鋼の場合、焼入れ焼戻し後に残存する未溶解炭化物が粗大化し、靭性が低下するためである。なお、ここで言うC量とは、転動接触を受ける表面および表層におけるC量のことであり、浸炭鋼の場合には浸炭後の表層のC量を指す。
Si量の下限を0.1質量%としたのは、もともとSiは鋼中に含まれるもので、それ以下に減らすこと自体が困難であり、そうすることの意味もないからである。Siは焼戻しによる軟化を抑える効果があり、高温用途で用いる安価な鋼材には欠かせない。しかし、1質量%を超えると冷間加工性、熱間加工性が低下するので、それを上限とした。
Mn量の下限を0.1質量%としたのは、Mnは鋼中に不可避に含まれるSと化合してMnSを析出するため、Sの粒界偏析を抑制するためである。また、Siと同様にMnももともと鋼中に含まれるものなので、それ以下に減らすこと自体が困難であり、そうすることの意味もないからである。Mnは鋼材の焼入れ性を向上させる有効な元素である。しかし、Mnはセメンタイト中にFe(鉄)原子と置換して複合炭化物を形成し、素材硬度を上昇させるので、添加しすぎると加工性や被削性が低下する。そのため、Mn量の上限は1.5質量%とした。
Cr量の下限を0.1質量%としたのは、その程度の量は不純物として含まれ、それを取除くことで各種機械的特性が向上することはないためである。一方、多量に添加することで炭化物が粗大化するため、それが応力集中源となって早期剥離が生じることがある。また、不動態膜(Cr酸化物膜)は水素の拡散を遅くする効果はあるが、発生した水素が鋼表面に吸着するのを促進する効果も併せ持つためである。したがって、Cr量の上限は2.2質量%以下とした。
C、Si、Mn、Crの個々の上下限を設定した根拠は上記のとおりだが、それらの組合せについて注意すべきことが2つある。1つは、Siは高温でもフェライトを安定にするため、C量が亜共析の範囲で、かつSi量が多い場合にはA3点が上昇するため、MnとCrの量によっては焼入れ加熱温度が低すぎると焼入れ不足になることである。もう1つは、MnやCrは低温でもオーステナイトを安定にするため、C量が下限もしくは上限で、かつMnやCrの量が多い場合には、焼入れ加熱温度もしくは浸炭温度が高すぎるとV炭化物が安定に存在しなくなることである。なお、これらの確認には多元系合金の平衡状態図を用いればよい。現在では、多元系合金の平衡状態図を計算により精度よく容易に求めることができる。
本発明のアンギュラ玉軸受においては、上記特性を有する内輪、外輪および転動体の少なくとも1つの部材が、Si、Mn、V、Moの含有量(質量%)から(1)式で求まるHが(2)式を満たす鋼材であることが好ましい。
H=5.8[Si]+11.5[Mn]+56.2[V]+15.2[Mo]…(1)
H≦70…(2)
H≦70…(2)
本発明のアンギュラ玉軸受の内輪、外輪および転動体の少なくとも1つにV炭化物を含む鋼材を用いることにより、その軸受が希薄潤滑下で高速回転されたときに、転がり接触表面に作用するすべりにより潤滑剤が分解するなどして発生する水素が、鋼中に侵入することで生じる早期剥離を防止することができる。
以下、本発明の一実施の形態について図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態におけるアンギュラ玉軸受の構成を示す断面図である。図1を参照して、本実施の形態のアンギュラ玉軸受1は、外輪2と、内輪3と、複数の玉(転動体)4と、保持器5とを備えている。アンギュラ玉軸受1においては、内輪2または外輪3のうち少なくともいずれか一方が回転軸Aを中心として回転する。外輪2は転走面2aを内周に有しており、内輪3は転走面2aに対向する転走面3aを外周に有している。複数の玉4は、外輪2の転走面2aと内輪3の転走面3aとの間に介在した状態で、保持器5のポケット6内に保持されている。本実施の形態のアンギュラ玉軸受1は、dn値が900000以上の条件で使用される高速回転アンギュラ玉軸受である。なお、「dn値」とは軸受の高速運転の指標となる数値であり、内輪の内径「D」(mm)と、軸受の回転速度「N」(rpm)との積で表わされる。
本発明の実施の形態におけるアンギュラ玉軸受1では、玉4、外輪2および内輪3のうちの少なくとも1つの部材が、合金元素として少なくともVを含有し、かつ転動接触を受ける表面および表層におけるC、Si、Mn、Cr、およびVの含有量が、それぞれC:05質量%以上1.2質量%以下、Si:0.1質量%以上1質量%以下、Mn:0.1質量%以上1.5質量%以下、Cr:0.1質量%以上2.2質量%以下、V:0.1質量%以上の範囲内にある鋼材よりなっている。
本実施の形態によれば、玉4、外輪2および内輪3のうちの少なくとも1つの部材が上記の要件を備えた鋼材よりなることにより、耐水素疲労特性に優れたアンギュラ玉軸受を得ることができる。
また玉4、外輪2および内輪3のうちの少なくとも1つの部材が上記の要件を備えた鋼材よりなるとともに、Si、Mn、V、Moの含有量から(1)式で求まるHが(2)式を満たす鋼材であることが好ましい。
H=5.8[Si]+11.5[Mn]+56.2[V]+15.2[Mo]…(1)
H≦70…(2)
なお本実施の形態では、図1に示すアンギュラ玉軸受1について示したが、本発明はこれに限られず、高速回転アンギュラ玉軸受であればよい。
H≦70…(2)
なお本実施の形態では、図1に示すアンギュラ玉軸受1について示したが、本発明はこれに限られず、高速回転アンギュラ玉軸受であればよい。
以下、本発明の実施例について説明する。
1.軸荷重疲労試験
表1に示すA−1〜A−10の発明鋼とA−11〜A−20の比較鋼とから、試験部直径が4mmの疲労試験片を製作し、表1中に示した焼入れ加熱温度からずぶ焼入れした後、180℃で焼戻しを施した。表1に熱処理後の硬さを示したように、いずれもHV700以上の硬度を有していた。表1中のHの値はSi、Mn、V、Moを上記(1)式に代入して求まる値である。表1中のV炭化物の欄には、焼入れ加熱温度においてV炭化物が安定に存在するならば「〇」、Vの添加量が少ないため母地に溶けてしまう、もしくはVを含まなければ「×」を示した。なお、比較鋼A−11はJIS−SUJ2であり、比較鋼A−12はJIS−SUJ3である。
表1に示すA−1〜A−10の発明鋼とA−11〜A−20の比較鋼とから、試験部直径が4mmの疲労試験片を製作し、表1中に示した焼入れ加熱温度からずぶ焼入れした後、180℃で焼戻しを施した。表1に熱処理後の硬さを示したように、いずれもHV700以上の硬度を有していた。表1中のHの値はSi、Mn、V、Moを上記(1)式に代入して求まる値である。表1中のV炭化物の欄には、焼入れ加熱温度においてV炭化物が安定に存在するならば「〇」、Vの添加量が少ないため母地に溶けてしまう、もしくはVを含まなければ「×」を示した。なお、比較鋼A−11はJIS−SUJ2であり、比較鋼A−12はJIS−SUJ3である。
表2に示すB−1〜B−4の発明鋼とB−5〜B−10の比較鋼とから、試験部直径が4mmの疲労試験片を製作し、試験部のC濃度が内部まで均一に0.8質量%となるように、表2中に示した浸炭温度で浸炭し、適切な焼入れ加熱温度に下げてから焼入れし、180℃で焼戻しを施した。表2に熱処理後の硬さを示したように、いずれもHV700以上であった。表2中のHの値はSi、Mn、V、Moを上記(1)式に代入して求まる値である。表2中のV炭化物の欄には、浸炭温度においてV炭化物が安定に存在するならば「〇」、Vの添加量が少ないため母地に溶けてしまう、もしくはVを含まなければ「×」を示した。なお、比較鋼B−5はJIS−SCM420である。
表3に示すC−1〜C−5の発明鋼とC−6〜C−12の比較鋼とから、試験部直径が4mmの疲労試験片を製作し、試験部が内部まで均一に硬化するように、表3中に示した焼入れ加熱温度を狙って高周波加熱してから焼入れし、150℃で焼戻しを施した。表3に熱処理後の硬さを示したように、いずれもHV700以上であった。表3中のHの値は、Si、Mn、V、Moを上記(1)式に代入して求まる値である。表3中のV炭化物の欄には、浸炭温度においてV炭化物が安定に存在するならば「〇」、Vの添加量が少ないため母地に溶けてしまう、もしくはVを含まなければ「×」を示した。なお、比較鋼C−6はJIS−S53Cである。
疲労試験に先立ち、試験片に陰極電解法により水素チャージを施した。水素チャージには、1.4g/リットルのチオ尿素を添加した0.05mol/リットルの希硫酸水溶液を用いた。鋼種によって水素の拡散速度が異なり、また鋼種が異なると同じ電流密度でも表面の水素濃度が異なる。それらを予め求めておいた上で、電流密度とチャージ時間とを調整し、試験部の内部まで拡散性水素量が均一に3質量−ppmとなるようにした。なお、ここで言う拡散性水素量とは、180℃/hで昇温したときに常温から350℃までに放出される水素質量のサンプル質量に対する分率のことである。
試験片に水素チャージした後、直ちに常温大気中で疲労試験を行なった。試験における応力比はR=−1であり、負荷周波数20kHzである。負荷回数が108回に達しても未破断であった場合は試験を打切った。なお、試験片に導入された拡散性水素は、常温でも鋼中を拡散し、時間がたてば散逸してしまう。しかし、今回行なった試験は高速負荷であり、極短時間で負荷回数が108回に達するので、拡散性水素が散逸する余地がない。したがって、疲労強度に及ぼす拡散性水素の影響を合理的に評価することができる。
表4に、ずぶ焼入れ鋼のSN線図の回帰曲線から求めた107回強度を示す。V炭化物が焼入れ加熱温度において安定に存在する発明鋼は、そうでない比較鋼に対して107回強度が高かった。表5および表6に、それぞれ浸炭焼入れ鋼、高周波焼入れ鋼のSN線図の回帰曲線から求めた107回強度を示す。これらの場合もずぶ焼入れ鋼の場合と同様に、V炭化物が焼入れ加熱温度において安定に存在する発明鋼は、そうでない比較鋼に対して107回強度が高かった。
転動部品の実用最大接触面圧は高くとも4GPa程度であり、4GPaの最大面圧が作用したときに転動表面に繰返し作用する周方向の引張り応力は、転がり摩擦を考慮しても計算上700MPa程度である。また、今回の疲労試験では、3質量−ppmの拡散性水素を強制的に導入した影響を見たが、実際にはそれほど多量の水素が侵入するのはごく稀なケースと考えられる。すなわち、107回強度が700MPa以上であれば実用に十分に耐え得るものと考えられる。この観点から表1〜表3の発明鋼の107回強度を見ると、いずれの発明鋼も107回強度は700MPa以上である。一方、比較鋼の107回強度はすべて700MPa未満である。したがって、合金元素として少なくともVを含有し、かつ焼入れ加熱温度もしくは浸炭温度においてV炭化物が安定に存在することが、耐水素疲労強度を良好に保つために必要条件と言える。
2.加工性確認試験
上記のように、Vの添加は耐水素疲労強度の向上に不可欠である。しかし、Vを多量に添加しすぎると加工性が損なわれる。そこで、加工性を確認するため、表1の発明鋼および比較鋼を同一条件で球状化焼鈍した後、厚さ10mmの試験片を製作した。それに直径2mmのドリルで一定条件で穴をあけ、ドリルが折れるまでに空けられる穴の数を調べた。図2に表1のHの値と空いた穴の数との関係を示す。
上記のように、Vの添加は耐水素疲労強度の向上に不可欠である。しかし、Vを多量に添加しすぎると加工性が損なわれる。そこで、加工性を確認するため、表1の発明鋼および比較鋼を同一条件で球状化焼鈍した後、厚さ10mmの試験片を製作した。それに直径2mmのドリルで一定条件で穴をあけ、ドリルが折れるまでに空けられる穴の数を調べた。図2に表1のHの値と空いた穴の数との関係を示す。
図2を参照して、Hの値が70程度以下ではドリルの寿命は緩やかに低下し、それを超えると急激に寿命は低下した。上記(1)式からわかるように、Vの添加量はHの値の上昇に対する寄与が最も大きい。したがって、耐水素疲労特性と加工性とのバランスを良好に保つためには、むやみにVを添加しすぎず、かつSi、Mn、Moの添加量を適正に調整することで、Hの値が70以下となるようにすることが望ましい。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、dn値900000以上で使用される高速回転アンギュラ玉軸受に適用され得る。
1 アンギュラ玉軸受、2 外輪、3 内輪、2a,3a 転走面、4 玉、5 保持器、6 ポケット。
Claims (2)
- dn値900000以上で使用されるアンギュラ玉軸受であって、
内周に転走面を有する外輪と、
前記転走面に対向する転走面を有する内輪と、
前記外輪と前記内輪との間に介在する複数の転動体とを備え、
内輪、外輪および転動体の少なくとも1つの部材が、合金元素として少なくともVを含有し、かつ転動接触を受ける表面および表層におけるC、Si、Mn、Cr、およびVの含有量が、それぞれC:0.5質量%以上1.2質量%以下、Si:0.1質量%以上1質量%以下、Mn:0.1質量%以上1.5質量%以下、Cr:0.1質量%以上2.2質量%以下、V:0.1質量%以上の範囲内にある鋼材よりなることを特徴とする、アンギュラ玉軸受。 - 前記内輪、前記外輪および前記転動体の少なくとも1つの前記部材が、Si、Mn、V、Moの含有量から(1)式で求まるHが(2)式を満たす鋼材であることを特徴とする、請求項1に記載のアンギュラ玉軸受。
H=5.8[Si]+11.5[Mn]+56.2[V]+15.2[Mo]…(1)
H≦70…(2)
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Legal Events
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