JP2006131899A - コーティング剤用組成物及びその製造方法 - Google Patents

コーティング剤用組成物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 合成樹脂製レンズ表面に施用した時に、密着性、耐擦傷性、耐溶剤性および耐候性が優れ、表面に微小な穴や窪みが存在しないハードコート膜、特に高い屈折率を有するハードコート膜を与えるコーティング組成物を製造する方法を提供すること。
【解決手段】 (A)ジイソプロピルアミンのようなアミン化合物を含有する金属酸化物ゾル、(B)γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのようなエポキシ基を有する重縮合性ケイ素化合物及び(C)トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム(III)のような硬化触媒を含んでなる組成物を製造する方法であって、前記(A)成分と前記(B)成分とを、好ましくは、温度10℃以上40℃未満の温度で6時間以上混合を行なったのち、得られた混合物と前記(C)成分とを混合する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、合成樹脂に耐擦傷性を付与するために使用されるハードコート用のコーティング剤として好適に使用できる組成物およびその製造方法に関する。
合成樹脂製レンズ(プラスチックレンズ)は、軽さ、安全性、易加工性、ファッション性などガラスレンズにない特徴を有し、近年急速に普及してきた。しかし、一般に、プラスチックレンズはガラスに比べて屈折率が小さいため、レンズの外周が厚くなる傾向がある。このため合成樹脂レンズの分野では、より高い屈折率を有する合成樹脂レンズによって薄型化が行われている。
一方、プラスチックレンズは、傷が付き易い欠点がある為にシリコーン系コート膜をプラスチックレンズ表面に施す方法が一般的に行われている。このシリコーン系コート膜は、シリカ微粒子、重合可能なアルコキシシラン化合物、重合触媒、酸水溶液、及び有機溶媒を主成分とするコーティング組成物(特許文献1参照:以下、低屈折率コーティング組成物とも言う)を合成樹脂レンズ表面に塗布し、加熱することにより該組成物を硬化させると共に溶媒を揮発させることにより形成されている。
しかし、屈折率が1.60や1.67といった高屈折率プラスチックレンズに低屈折率コーティング組成物を用いてコート膜を施した場合、プラスチックレンズとコート膜の屈折率の差により干渉縞が発生し、外観不良の原因となる。
この問題を解決するために、コーティング組成物の一成分であるシリカ微粒子を、(i)屈折率の高いSb、Ti、Zr、Sn等の複合金属酸化物に置き換えたコーティング組成物(特許文献2参照)、(ii)Ti、Ce、Sn等に置き換えたコーティング組成物(特許文献3参照)、(iii)Sn、Zr、W、Si等の複合金属酸化物に置き換えたコーティング組成物(特許文献4参照)、(iv)Sn、Zr、Sb、Si等の複合金属酸化物に置き換えたコーティング組成物(特許文献5参照)などが検討されている。
特公昭57−2735号公報 特開平5−264805号公報 特開平10−245523号公報 特開2000−281973号公報 特願2004−111837号
しかしながら、高屈折率レンズ用ハードコート液として前記(i)、(ii)、(iii)及び(iv)に示されるような従来のコーティング剤を用いてハードコートを行なった場合には、その表面に目視では判別できない口径50〜1000nmの穴若しくは窪みが多数存在することが明らかとなった。
このような穴若しくは窪みは、目視で確認できないものであるため、その存在がこれまで認識されていなかったが、このような穴もしくは窪みのような表面欠陥が存在すること自体が好ましいものではなく、また、その存在はハードコート層の物性低下、例えば、耐薬品性、耐温水性、耐熱性或いは耐候性の低下の原因となることが懸念される。
そこで、本発明は、高屈折率レンズ用のハードコート液として好適に使用されるコーティング剤であって、上記したような表面欠陥を発生させることのないコーティング剤を提供することを目的とする。
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、(i)上記表面欠陥発生の問題は従来の高屈折率レンズ用ハードコート液に限らず、その成分として「安定剤としてアミン化合物を用いた金属酸化物ゾル」を使用したコーティング剤に共通の問題であること、(ii)コーティング剤調製の際に特定の2種類の原料成分を予備混合すると共に得られた混合液を比較的低温で長時間保存してから他の原料成分と混合した時には、前記表面欠陥の発生が起こらない場合があるという知見を得た。そして、これら知見に基づき更に検討を行なった結果、特定の調製方法を採用すればアミン化合物を含有するコーティング剤組成物であっても前記表面欠陥発生の問題が発生しなくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、第一の発明は、(A)アミン化合物を含有する金属酸化物ゾル、(B)エポキシ基を有する重縮合性ケイ素化合物及び(C)硬化触媒を含んでなる組成物を製造する方法であって、前記(A)成分と前記(B)成分とを混合し、次いで(C)成分とを混合することを特徴とする前記方法である。
また、第二の発明は、前記(A)、(B)及び(C)の各成分を含む組成物であって、該組成物中について29Si−NMR測定を行なったときのスペクトルが下記式(1)〜(3)に示される条件を全て満足することを特徴とする前記組成物である。
X/(X+Y+Z) ≦ 0.1 (1)
0.4 ≦ Y/(X+Y+Z) ≦ 0.9 (2)
0.1 ≦ Z/(X+Y+Z) ≦ 0.6 (3)
なお、上記(1)〜(3)式における、X、Y及びZは、前記組成物について、測定溶媒として重メタノール(CDOD)を用い、観測周波数99.25MHz、45°パルス5.0μs、繰り返し時間15秒、ブロードニングファクター1.21Hzの条件で29Si−NMRを測定した場合における、夫々下記のケミカルシフト範囲に存在するピークの積分強度を表す。
〔X、Y及びZのケミカルシフトの範囲〕
X:−36ppm〜−43ppm
Y:−45ppm〜−52ppm
Z:−55ppm〜−65ppm。
本発明の上記組成物は、本発明の上記製造方法によって有利に製造することができる。
また、第三の発明は、前記本発明の組成物からなるコーティング剤であり、更に第四の発明は、ポリシロキサンからなるマトリックス中に金属酸化物のコロイド粒子が分散したハードコート層を有するプラスチックレンズであって、当該ハードコート層の表面に口径50〜1000nmの穴若しくは窪み実質的に存在しないことを特徴とする前記プラスチックレンズである。
上記本発明のプラスチックレンズは、第五の本発明、即ち、プラスチックレンズ基材の表面に前記本発明のコーティング剤を塗布する工程及び該工程で塗布されたコーティング剤を硬化させる工程を含むことを特徴とする方法により好適に得ることができる。
本発明の製造方法により製造される本発明の組成物は、従来のハードコート液と同等の性能を発揮するばかりでなく、該組成物を用いて形成されるハードコート層には微細な穴や窪みといった表面欠陥が実質的に存在しないため、(微視的な)外観が良好であり、高い耐久性が期待できるという優れた特徴を有する。
高屈折率レンズ用のハードコート液のように安定剤としてアミン化合物を含有するハードコート液を使用する場合において、このような表面欠陥の発生を防止する技術はこれまで存在せず、このような技術を初めて提供する本発明の意義は大きい。
本発明により、上記したような優れた効果が得られる機構は、次のようなものであると考えられる。即ち、前記したような予備混合を行なわずに調製した従来のコーティング組成物では、アミン化合物は金属酸化物微粒子の分散安定剤として機能することから分かるように(A)成分においては両者間に相互作用が存在する。このため、コーティング剤として使用した場合において、硬化のために加熱したときにアミン化合物は気化し難い状態となっており、硬化の進行により組成物の粘度が高くなってもアミン化合物の気化が終了せず、コート膜に微細な穴や窪みが発生することが避けられない。これに対し、本発明の製造方法により製造される本発明のコーティング組成物においては、前記したような予備混合を行なうことにより、(B)成分と(A)成分の金属酸化物微粒子との相互作用(例えば微粒子表面における縮合反応)により金属微粒子とアミン化合物との相互作用が相対的に弱まり、アミン化合物は気化し易い状態になっていると考えられる。このため、コーティング剤として使用したときに組成物の粘度が高くなる前にアミン化合物の散逸が完了するため、上記したような表面欠陥が発生しなくなるものと考えられる。
本発明の製造方法では、(A)アミン化合物を含有する金属酸化物ゾル、(B)エポキシ基を有する重縮合性ケイ素化合物および(C)硬化触媒を含んでなる組成物を製造する。
本発明の方法で使用するこれら成分は、何れも従来のハードコート液の原料成分として使用されているものであり、金属酸化物ゾルがアミン化合物を含有するものに限定される以外は、従来のハードコート液の原料成分として使用されているものが特に制限無く使用できる。以下、これら成分について説明する。
本発明では、(A)成分として、金属酸化物の微粒子が分散媒に分散したゾルであって安定剤としてアミン化合物を含有する金属酸化物ゾルが使用される。該成分は、例えば本発明の組成物をハードコート液として使用した場合に、得られるコート膜に硬度を付与すると共にその屈折率を制御する機能を有する。
上記金属酸化物微粒子としては、Si、Al、Sn、Sb、Ta、La、Fe、Zr、Sn、Ti、In、W、Zn及びCeからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の酸化物又は複合酸化物からなる微粒子が挙げられる。なお、Siは半金属元素と云われ、厳密な分類では金属元素とは云えないが、ここでは金属元素に含まれるものとして定義する。
金属酸化物として好適なものを具体的に示せば、SiO、Al、SnO、Sb、Ta、La、Fe、ZrO、SnO、TiO、In、WO、ZnO、CeO、及びこれらから選ばれる任意の2種以上の組合せからなる複合酸化物を挙げることができる。なお、金属酸化物微粒子が複合酸化物微粒子である場合、酸化物の複合化はどのような形態でもよく、例えば、微粒子全体が1種の(均一組成の)複合酸化物のみからなる形態、1種の金属酸化物又は複合酸化物からなるマトリックス中に異種の金属酸化物又は複合酸化物からなる相が分散した形態、1種の金属酸化物又は複合酸化物からなるコア粒子の外側に異種の金属酸化物又は複合酸化物からなる層が形成された形態を含む。この最後の形態において、外側の層は、単層構造でも、互いに異なる物質で形成される層が積層された積層構造でもよい。
上記酸化物微粒子の平均粒子径は、得られるコート膜が透明性を有するという観点から、通常は1〜300nmであるのが好適であり、好ましくは1〜200nmである。
(A)成分において上記金属酸化物微粒子は分散媒に分散した状態で使用される。このとき分散媒としては水及び又はアルコールが好適に使用される。アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、n−ブチルアルコールが使用でき、これらの中でもメタノール又は2−プロパノールが特に好ましい。
分散媒の使用量は、金属酸化物微粒子がゾルとして存在するのに十分な量であれば特に限定されないが、コーティング用の組成物として使用したときに得られるコート層の屈折率を高くするという理由及びゾルの安定性が高いという理由から金属微粒子と分散媒との硬化体質量を基準として50質量%〜90質量%であるのが好ましい。
本発明で使用する金属酸化物微ゾルはアミン化合物を含有する必要がある。アミン化合物を含有しない場合には、前記した表面欠陥発生の問題が起こらないため本発明の方法を採用する意義は特にない。アミン化合物としては、金属酸化物ゾルの安定剤(分散安定性を高める働きをする)として使用されているアミン化合物が特に制限なく使用できる。このようなアミン化合物を例示すれば、アンモニウム;エチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピルアミン等のアルキルアミン;ベンジルアミン等のアラルキルアミン;モルホリン、ピペリジン等の脂環式アミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン等のアルカノールアミンを挙げることができる。これらアミン化合物は単独又は異なる種類のものを混合して使用することができる。これらアミン化合物の添加量は、金属酸化物微粒子の質量を基準として0.01〜5質量%、特に0.01〜4質量%が好適である。
また、(A)成分には、分散安定性を向上させる目的で、カルボン酸化合物を金属酸化物微粒子の質量を基準として0.01〜5質量%添加してもよい。カルボン酸化合物としては、例えば、酢酸、シュウ酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、サリチル酸、グリコール酸、安息香酸、フタル酸、マロン酸、マンデル酸が使用できる。
(A)成分である金属酸化物ゾルにおいては、金属酸化物微粒子の分散性の低下による分散液の透過率減少を防ぎ、金属酸化物微粒子の分散安定性の低下によるコーティング組成物の保存安定性の低下を防止するために、前記アミン化合物或いはアミン化合物及びカルボン酸化合物を添加してゾルのpHを4.0〜9.5の範囲とするのが好ましい。
工業的に入手可能な金属酸化物ゾルであって、本発明における(A)成分として好適に使用できるものを具体的に示せば、メタノール分散SnO−ZrO−Sb−SiO複合金属酸化物(日産化学工業(株)製HX−305M5)、メタノール分散TiO−SnO−ZrO−Sb複合金属酸化物(日産化学工業(株)製HIT−30M1)、メタノール分散Sb金属酸化物(日産化学工業(株)製AMT−330S)等を挙げることができる。
本発明の方法で(B)成分は、本発明の組成物を、例えばハードコート液として使用して硬化させた場合において、前記(A)成分に含まれる金属酸化物微粒子を取り込んで硬化することにより被膜を形成すると共に、得られた被膜、例えばハードコート層、と基材との密着性を向上される機能を有する。
(B)成分として使用する“エポキシ基を有する重縮合性ケイ素化合物”としては、エポキシ基及び加水分解性基を有するケイ素化合物或いは該化合物と酸性水溶液とを混合して得られる反応生成物(該化合物の部分加水分解物及び/又は該部分加水分解物の縮合物)が好適に使用できる。エポキシ基及び加水分解性基を有するケイ素化合物として好適に使用できるものを具体的に例示すれば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、及びβ−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを挙げることができる。これら化合物は、単独で使用してもよいし、異なる種類のものを併用してもよい。これらの中でもレンズとの密着性、架橋性と言う観点から、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン又はγ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランを使用するのが好適であり、特にこれら化合物を酸水溶液と混合した状態で使用するのが好適である。
なお、エポキシ基及び加水分解性基を有するケイ素化合物と酸性水溶液とを混合する場合に使用する酸性水溶液としては、上記化合物中の加水分解性基を加水分解、縮合させる機能を有する酸であれば、公知の酸が何ら制限無く使用できる。この様な酸を例示すれば、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の無機酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸が挙げられる。これらの中でも、コーティング組成物の保存安定性、加水分解性の観点から、塩酸又は酢酸が好適に使用される。また、酸性水溶液における各種酸の濃度は、0.01N〜5Nであるのが好適である。酸水溶液中の水の量は、ケイ素化合物中の最終的に加水分解される加水分解性基に相当する総モル数の0.1倍〜3倍モル数となるように配合するのが好適である。
本発明では、(B)成分に“エポキシ基を有しない重縮合性ケイ素化合物”を添加してもよい。該化合物の使用量は特に限定されないが、“エポキシ基を有する重縮合性ケイ素化合物”100質量部に対して0〜70質量部、特に0〜50質量部であるのが好適である。
“エポキシ基を有しない重縮合性ケイ素化合物”として使用できる化合物を具体的に例示すれば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、ビニルトリメトキシシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ビス[(3−メチルジメトキシシリル)プロピル]ポリプロピレンオキシド、ビス(トリメトキシシリル)エタン、2,2−ビス(3−トリエトキシシリルプロポキシメチル)ブタノール、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、1,3−[ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリエチレノキシ]−2−メチレンプロパン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−ジスルフィド、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、p−ビス(トリメトキシシリルメチル)ベンゼン、及びビス[3−(ジエトキシメチルシリル)プロピル]カーボネート、及びこれら化合物を酸性水溶液と混合して得られる反応生成物を挙げることができる。これらの化合物は、2種以上混合して用いても何ら構わない。
なお、“エポキシ基を有しない重縮合性ケイ素化合物”と酸性水溶液とを混合する場合には、操作の簡便性から“エポキシ基を有する重縮合性ケイ素化合物”と“エポキシ基を有しない重縮合性ケイ素化合物”とを予め混合し、得られた混合物を酸性水溶液と混合するのが好適である。このとき、水の量は全ケイ素化合物中の最終的に加水分解される加水分解性基に相当する総モル数の0.1倍〜3倍モル数となるように配合するのが好適である。
本発明の方法で使用する(C)成分は、主に前記(B)成分の“エポキシ基を有する重縮合性ケイ素化合物”のエポキシ基を重合させる機能を有する。(C)成分として使用する使用する硬化触媒は、このような作用をする化合物であれば特に限定されないが、溶解性、最終的に得られる組成物の保存安定性や、該組成物を硬化させたときの硬化体の硬度などの観点から、以下に示すような化合物を使用するのが好適である。
即ち、Li(I)、Cu(II),Zn(II),Co(II),Ni(II),Be(II),Ce(III),Ta(III),Ti(III),Mn(III),La(III),Cr(III),V(III),Co(III),Fe(III),Al(III),Ce(IV),Zr(IV),V(IV)等を中心金属原子とするアセチルアセトナート錯体;過塩素酸、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸アルミニウム、過塩素酸亜鉛、過塩素酸アンモニウム等の過塩素酸類;酢酸ナトリウム、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸亜鉛等の有機金属塩;又は塩化第二錫、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化チタン、塩化亜鉛、塩化アンチモン等のルイス酸を使用するのが好適である。なお、これら硬化触媒は、単独で使用しても2種以上を混合して使用しても何ら問題はない。
本発明の製造方法では、前記成分(A)、(B)及び(C)を混合してこれらを含有する組成物を製造するに際し、先ず前記(A)成分と前記(B)成分とを混合し、次いで得られた混合物と前記(C)成分とを混合することが重要である。この混合方法を採用せずに、3成分を一緒に混合した場合には、本発明の効果を得ることができない。
上記混合工程においては、(A)成分と(B)成分は、好ましくは10℃以上40℃未満、更に好ましくは15〜30℃の温度で6時間以上混合される。ここでいう混合は、(A)成分と(B)成分を接触させたのち接触を継続させることを意味する。従って、混合には、攪拌混合はもちろんのこと静置混合も含まれる。いずれにしても、接触後少なくとも初期には攪拌することが好ましい。混合温度が10℃未満である場合には長時間保持しなければ本発明の効果を得ることができず、実用的ではない。また、混合温度が40℃以上の場合には、最終的に得られる組成物のポットライフ(可使時間)が短くなる。
(A)成分と(B)成分を接触させる際の温度は特に限定されないが、上記と同じ理由から40℃未満で行なうのが好適である。また、両成分の使用量は、最終的に得ようとする組成物の組成に応じて適宜決定すればよいが、目的物である組成物(目的組成物)をハードコート液として使用する場合には、夫々次に示す量使用するのが好適である。即ち、(A)成分については、(A)成分に含まれる金属微粒子の質量の合計が、目的組成物を硬化して得られる硬化体の質量(以下、単に硬化体質量ともいう)を基準として20〜70質量%、特に30〜65質量%となる量であるのが好適である。金属酸化物微粒子の上記基準での配合量が20質量%未満ではコート膜の耐擦傷性、コート層と必要に応じてその上に形成される無機蒸着膜との密着性、及びハードコート層の屈折率等が不十分となる傾向がある。また、70質量%を超える場合にはハードコート層にクラックが生じる傾向がある。
また、(B)成分である“エポキシ基を有する重縮合性ケイ素化合物”の量は、該化合物が完全に重縮合したときの質量が前記硬化体質量の30〜80質量%、特に35〜70質量%となる量であるのが好適である。(B)成分の量が上記基準で30質量%未満の場合にはハードコート膜にクラックが生じる傾向があり、80質量%を超えるとコート膜の耐擦傷性、コート層と必要に応じてその上に形成される無機蒸着膜との密着性、及びハードコート層の屈折率等が不十分となる傾向がある。
なお、上記「硬化体質量」とは、金属酸化物微粒子の質量、(B)成分及び必要に応じて添加される“エポキシ基を有しない重縮合性ケイ素化合物”、さらには後述する“必要に応じて添加されるエポキシ化合物”が重縮合したりあるいは重合したりして得られる固形分の質量の合計からなるものであり、これら成分の使用量および反応による質量変化を考慮して計算できる質量である。したがって、目的組成物に含まれる揮発性成分の質量は「硬化体質量」には含まれない。
混合工程における前記2成分の混合方法は特に限定されないが、所定量の各成分を夫々40℃未満の温度となるように温度調整してから攪拌下で両者を混合するのが好適である。なお、両成分の混合は、(C)成分が共存しない条件下であれば特に限定されず、(A)〜(C)成分以外の任意成分の共存下で行うこともできる。たとえば(B)成分と任意成分とを予め混合してから、更に(A)成分と混合することもできる。
任意成分としては、(B)成分に関する説明で記載した、酸性水溶液及び“エポキシ基を有しない重縮合性ケイ素化合物”の他、エポキシ化合物、有機溶剤、界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、分散染料、油溶染料、蛍光染料、顔料、フォトクロミック化合物、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール等を挙げることができる。
酸性水溶液及び“エポキシ基を有しない重縮合性ケイ素化合物”の種類及び使用量については既に説明したとおりである。これら以外の任意成分としては、それぞれ従来のハードコート液において使用されているものが特に限定されること無く使用できる。また、その使用量も従来のハードコート液におけるものと特に変わる点はない。
例えば、有機溶剤{(A)成分の分散媒は該有機溶剤には含まない}としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、乳酸エチルなどのエステル類;エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジオキサンなどのエーテル類;アセトン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン類;メチレンクロライドなどのハロゲン化炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類等が使用できる。
これら有機溶剤は、単独で使用してもかまわないが、コーティング組成物の物性を制御する目的のために2種以上を混合して用いるのが好ましい。これら有機溶剤の中でも、必要に応じて使用される酸水溶液に対する溶解性、目的組成物をハードコート液として使用した場合におけるコート膜形成時の易揮発性、得られるコート膜の平滑性の観点から、メタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール及びエチレングリコールモノイソプロピルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも2種を使用するのが好適である。これら有機溶剤の使用量は特に限定されないが、硬化体質量の、例えば1〜20倍、特に1.5〜10倍となる量が好適である。
また、エポキシ化合物{(B)成分は含まない}としては、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ノナプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールヒドロキシヒバリン酸エステルのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールジグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ化合物;イソホロンジオールジグリシジルエーテル、ビス−2,2−ヒドロキシシクロヘキシルプロパンジグリシジルエーテル等の脂環族エポキシ化合物;レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、オルトフタル酸ジグリシジルエステル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ化合物等が使用できる。
これらの中でも、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテルが特に好ましい。これらエポキシ化合物は、2種以上混合して用いてもかまわない。これらエポキシ化合物の使用量は、硬化体質量の、例えば0〜30質量%であることが好ましい。
(A)成分と(B)成分の混合は、好ましくは10℃以上40℃未満の温度で6時間以上行われる。当該混合中において混合物を攪拌するのが好適である。混合時間は6時間以上であれば特に限定されないが、あまり長時間保持しても効果は変わらないので保持時間は、6〜50時間とするのが好適である。混合時間は、混合温度が低い場合には長くするのが好適である。目安として、混合温度が10〜15℃のときは15時間以上、混合温度が15〜20℃のときは12時間以上、混合温度20〜30℃のときは8時間以上、混合温度30℃を越え40℃未満のときは6時間以上とすればよい。
本発明の製造方法では、前記の如くして得られた(A)成分と(B)成分との混合物を、次いで前記(C)成分とを混合することにより、目的とする組成物を得る。このとき、(C)成分の使用量は、最終的に得ようとする組成物の組成に応じて適宜決定すればよいが、硬化体質量の0.01〜5.0質量%、特に0.1〜3.0質量%の範囲とするのが好ましい。 (A)成分と(B)成分との混合物の混合物と前記(C)成分とを混合する際の条件は特に限定されないが、10〜40℃、特に好ましくは15〜25℃で攪拌下に行うのが好ましい。なお、前記した任意成分は、(A)成分と(B)成分との混合工程で添加せずにこのとき混合してもよい。
このようにして得られる組成物(本発明の組成物)は、ハードコート液として使用した場合には従来のハードコート液と比べて、得られるハードコート膜に微細な穴や窪みといった表面欠陥が実質的に存在しないという点で優れている。ここで、“ハードコート膜に微細な穴や窪みといった表面欠陥が実質的に存在しない”とは、コート膜表面を走査型電子顕微鏡で観察した時に、任意の50μm×50μmの視野に存在する口径50〜1000nmの穴若しくは窪みの数、好適には上記範囲の視野10視野ついて観察を行ったときの1視野あたりに存在する上記穴若しくは窪みの平均個数、が5個未満であることを意味する。
本発明の組成物は、組成的には従来のハードコート液と特に変わる点は無いが、前記(A)成分と(B)成分との混合工程によりアミン化合物と金属酸化物微粒子との相互作用が弱められているので、該組成物を硬化させるために加熱した際に、アミン化合物が容易に散逸する。したがって、アミン化合物の気化によって膜表面が一時的に荒れても組成物の流動によってその荒れは回復し、きれいな表面状態の硬化膜を得ることができる。上記の「アミン化合物と金属微粒子との相互作用の低下」は、(A)成分と(B)成分との混合物工程において(B)成分と金属酸化物微粒子との間に相互作用が発生するために起こるものと考えられ、このような相互作用の発生は、本発明の組成物について29Si−NMR測定を行なうことにより間接的に確認することができる。
即ち、本発明の組成物について29Si−NMR測定を行なったときのスペクトルが下記式(1)〜(3)に示される条件を全て満足することで確認することができる。
X/(X+Y+Z) ≦ 0.1 (1)
0.4 ≦ Y/(X+Y+Z) ≦ 0.9 (2)
0.1 ≦ Z/(X+Y+Z) ≦ 0.6 (3)
なお、上記(1)〜(3)記式における、X、Y及びZは、前記組成物について、測定溶媒として重メタノール(CDOD)を用い、観測周波数99.25MHz、45°パルス5.0μs、繰り返し時間15秒、ブロードニングファクター1.21Hzの条件で29Si−NMRを測定した場合における、夫々下記のケミカルシフト範囲に存在するピークの積分強度を表す。
〔X、Y及びZのケミカルシフトの範囲〕
X:−36ppm〜−43ppm
Y:−45ppm〜−52ppm
Z:−55ppm〜−65ppm。
(A)成分と(B)成分とを混合し次いで(C)成分を混合する本発明の混合工程を経ないで調製した組成物について29Si−NMR測定を行なったときのスペクトルはこの条件を満足しないことから、本発明の組成物は上記式(1)〜(3)に示される条件を全て満足する29Si−NMRスペクトルを与えることで特徴付けられる。
本発明の組成物においては、効果の観点から、29Si−NMRスペクトルが下記式(1’)〜(3’)に示される条件を全て満足するものであるのが好ましい。
X/(X+Y+Z) ≦ 0.05 (1’)
0.4 ≦ Y/(X+Y+Z) ≦ 0.7 (2’)
0.3 ≦ Z/(X+Y+Z) ≦ 0.6 (3’)
本発明の組成物をハードコート液のようなコーティング剤として使用する場合、その使用方法は、従来のハードコート液における場合と特に変わる点はない。例えば、プラスチックメガネレンズ等の光学基板に必要に応じて前処理を施した後、本発明の組成物を塗布し、硬化させればよい。
上記前処理としては、アルカリ処理、酸処理、界面活性剤処理、UVオゾン処理、無機あるいは有機物の微粒子による研磨処理、プライマー処理又はプラズマもしくはコロナ放電処理が挙げられる。
また、塗布・硬化方法としては、ディッピング法、スピンコート法、スプレー法あるいはフロー法等によりコーティング組成物を塗布することができる。特にメガネレンズ用途としては、数多くの基材の両面を効率よく塗膜するため、ディッピング法が好適に使用される。
組成物の塗布後、乾燥空気あるいは空気中で風乾して通常加熱処理することによって硬化しコート膜が形成される。加熱温度は基材によって異なるが、80℃以上好ましくは100℃以上〜基材が変形しない温度(一般には150℃)が好適である。硬化時間は、130℃で約2時間、100〜120℃で約2〜5時間が一応の目安となる。硬化して形成されるコート膜は、0.1〜50μm程度の厚みとすることが可能であるが、メガネレンズ用コート膜としては1〜10μmの厚みが特に好適である。
このようにして得られたコート被膜の表面上には、無機物質からなる反射防止膜を形成することもできる。反射防止膜の形成方法としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等が挙げられる。真空蒸着法においては、蒸着中にイオンビームを同時に照射するイオンビームアシスト法を用いてもよい。また、膜構成としては、単層反射防止膜もしくは多層反射防止膜のどちらを用いてもかまわない。このとき使用される無機物の具体例としては、SiO,SiO,ZrO,TiO,TiO,Ti,Ti,Al,Ta,CeO,MgO,Y,SnO,MgF,WOなどが挙げられる。これらの無機物は単独で用いてもよく、もしくは2種以上の混合物を用いても構わない。
以下、実施例および比較例を掲げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下に本実施例で使用した化合物の略号と名称を示す。
〔(A)成分:金属酸化物微粒子〕
・ゾル1・・・Sn−Zr−Sb−Siゾル:メタノール分散酸化スズ−酸化ジルコニウム−五酸化アンチモン−二酸化ケイ素複合金属酸化物ゾル(固形分濃度30.3質量%、日産化学工業(株)製HX−305M5)。該ゾルを分析したところ、アミン化合物としてジイソプロピルアミンが0.8質量%含まれていることが確認された。
・ゾル2・・・Ti−Zr−Sn−Sbゾル:メタノール分散酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化スズ−五酸化アンチモン複合金属酸化物ゾル(固形分濃度30.6質量%、日産化学工業(株)製HIT−30M1)。該ゾルを分析したところ、アミン化合物としてジイソプロピルアミンが2.1質量%含まれていることが確認された。
・ゾル3・・・Sbゾル:メタノール分散五酸化アンチモンゾル(固形分濃度31.0質量%、日産化学工業(株)製AMT−330S)。該ゾルを分析したところ、アミン化合物としてジイソプロピルアミンが1.0質量%含まれていることが確認された。
〔(B)成分:エポキシ基を有する重縮合性ケイ素化合物〕
・GTS:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
・GDS:γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン
・ETS:β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン。
〔(C)成分:硬化触媒〕
・C1:トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム(III)
・C2:トリス(2,4−ペンタンジオナト)鉄(III)
・C3:2,4−ペンタンジオナトリチウム(I)
・C4:過塩素酸アンモニウム。
〔その他の成分(D)〕
(D−1)エポキシ基を有しない重縮合性ケイ素化合物
・TES:テトラエトキシシラン
・APTES:γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン
・HTS:n−ヘキシルトリメトキシシラン
・OTS:n−オクチルトリメトキシシラン
・ODTS:n−オクタデシルトリメトキシシラン
・BIS1:ビス[3−(ジエトキシメチルシリル)プロピル]カーボネート
・BIS2:2,2−ビス(3−トリエトキシシリルプロポキシメチル)ブタノール。
(D−2)エポキシ化合物
・PETGE:ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル。
(D−3)有機溶剤
・MeOH:メタノール
・EtOH:エタノール
・IPA:イソプロパノール
・NPA:n−プロパノール
・NBA:n−ブタノール
・TBA:t−ブタノール
・EGPE:エチレングリコールモノイソプロピルエーテル
・EGEE:エチレングリコールモノエチルエーテル
・EGBE:エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル
・PGPE:プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル
・AcAc:アセチルアセトン
・DAA:ジアセトンアルコール。
(D−4)界面活性剤
・L1:シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7001」)
・L2:シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「FZ−2104」)。
〔プラスチックレンズ基材〕
TKA(アリル樹脂レンズ;屈折率=1.60)
TKB(アリル樹脂レンズ;屈折率=1.55)
SE(メタクリル樹脂+ビニル樹脂レンズ;屈折率=1.60)
MRA(チオウレタン樹脂レンズ;屈折率=1.60)
MRB(チオウレタン樹脂レンズ;屈折率=1.67)。
実施例1
(1)コーティング組成物の調製
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン530.1gを十分に撹拌しながら、0.05Nの塩酸水溶液121.3gを液温40℃以下で制御しながら添加し、添加開始から3時間室温(約23℃)で撹拌した。次いで、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7001」)2.0g、t−ブチルアルコール400g、ジアセトンアルコール200g、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル200g、イソプロピルアルコール200gを添加し、25℃で十分に攪拌混合した。その後、前述の混合物にメタノール分散酸化スズ−酸化ジルコニウム−五酸化アンチモン−酸化ケイ素複合金属酸化物ゾル(固形分濃度30.1質量%、日産化学工業(株)製HX−305M5)1250gを添加し、25℃で24時間攪拌混合した。
その後、上記混合工程で得られた混合物にAl(III)アセチルアセトナート6.0g、メタノール100gの混合液を添加し、25℃で1時間撹拌することで本発明のコーティング組成物(a)を得た。
得られたコーティング組成物(a)を、日本電子(株)製核磁気共鳴装置(JNM−LA500)を用い、測定溶媒として重メタノール(CDOD)を使用し、観測周波数99.25MHz、45°パルス5.0μs、繰り返し時間15秒、ブロードニングファクター1.21Hzの条件でシラン核磁気共鳴スペクトル(29Si−NMR)測定を実施した。
得られたスペクトルからケミカルシフトの範囲が−36ppm〜−43ppmに存在するピークの積分強度(X)、−45ppm〜−52ppmに存在するピークの積分強度(Y)、及び−55ppm〜−65ppmに存在するピークの積分強度(Z)を夫々調べたところ、Yの積分強度を1.00とした場合、X=0.00、Y=1.00、Z=0.75であり、X/(X+Y+Z)は0.00以下、Y/(X+Y+Z)は0.57、Z/(X+Y+Z)は0.43であった。
(2)コート膜の形成
40℃の10%NaOH水溶液に5分間の浸漬処理を施した屈折率1.60のチオウレタンレンズ(三井東圧製樹脂:MR8)を前記工程(1)で得られたコーティング組成物(a)にディッピングし、引上げ速度30cm/分の速度で引き上げて該チオウレタンレンズの表面にコーティング組成物を塗布した。ディッピングは、相対湿度40〜60%RH、温度22〜25℃の条件下で実施した。塗布後70℃で20分乾燥した後、120℃で4時間保持して硬化を行い、コート膜を形成した。
得られたコート膜は、厚みは約2ミクロン、屈折率1.60の無色透明な膜であった。
また、得られたコート膜について、下記(1)〜(5)の各項目について評価を行った。
その結果は、微視的外観:○、耐溶剤性:○、耐擦傷性:A、密着性:100/100、耐候性:100/100であった。
〔評価項目〕
(1)微視的外観
フィリップスエレクトロンオプティックス社製電界放射型電子走査型電子顕微鏡(FE−SEM、XL30S)を用いて、コート膜表面を観察した。加速電圧5kVの条件で観察を実施し、コート膜表面の穴の数を評価した。評価基準は、50μm×50μmの範囲内に存在する口径50−1000nmの穴や窪みの数が5個未満のものを○、5個以上20個未満のものを△、20個以上のものを×として評価した。なお、観察は上記範囲の10視野について行い、1視野あたりの穴及び窪みの平均個数を求め、この値を評価した。
(2)耐溶剤性
メタノール、イソプロピルアルコール、トルエン、アセトン、0.4質量%NaOH水溶液にコーティング組成物を積層したレンズを24時間含浸し、表面状態変化を調べた。評価は、含浸前と変化がないものを○、変化したものを×とする。
(3)耐擦傷性
スチールウール(日本スチールウール(株)製 ボンスター#0000番)を用い1kgの荷重で10往復レンズ表面を擦り、傷ついた程度を目視で3段階評価した。評価基準は次の通りである。
A:ほとんど傷がつかない
B:少し傷がつく
C:塗膜が剥離している。
(4)密着性
コート膜とレンズの密着性をJISD−0202に準じてクロスカットテープ試験によって行った。すなわち、カッターナイフを使いレンズ表面に約1mm間隔に切れ目を入れ、マス目を100個形成させる。その上にセロファン粘着テープ(ニチバン(株)製)を強く貼り付けた後、表面から90°方向へ一気に引っ張り剥離した後コート膜の残っているマス目を測定した。評価結果は、(残っているマス目数)/100で表した。
(5)耐候性
光照射によるコート膜の耐久性を評価するために次の劣化促進試験を行った。すなわち、得られたコート層を有するレンズをスガ試験器(株)製キセノンウェザーメーターX25により200時間促進劣化させた。その後、前記(4)と同様の方法で密着性を評価した。
実施例2〜11
実施例1においてコーティング組成物(a)を調製したのと同様の方法で、表1に示す成分を混合して、コーティング組成物(b)〜(i)を得た。表1には、本発明の(A)成分を含む液を第1成分、(B)成分を含む液を第2成分、(C)成分を含む液を第3成分として記載した。該コーティング組成物の調合条件および該コーティング組成物の29Si−NMR測定の結果を表2に示した。
次に、これら組成物用いて表3に示すプラスチックレンズ基材の表面上に、実施例1と同様にして、コート膜を形成し、得られたコート膜について実施例1と同様の評価を行なった。その結果を表3に示した。
比較例1〜3
表2に示す調合条件で表2に示す組成を有するコーティング組成物を調製した。得られた組成物について、実施例1と同様にして29Si−NMR測定を実施した。その結果を併せて表2に示した。
次に、これら組成物用いて表3に示すプラスチックレンズ基材の表面上に、実施例1と同様にして、コート膜を形成し、得られたコート膜について実施例1と同様の評価を行なった。その結果を表3に示した。
Figure 2006131899
Figure 2006131899
Figure 2006131899
表3から明らかなように、実施例1〜11における本発明のコーティング組成物を用いてプラスチックレンズ基材の表面にコート層を形成した場合、微視的外観、耐溶剤性、耐擦傷性、密着性、耐候性いずれも良好であった。特に、外観に関しては全ての場合において良好であり、一切の穴は観測されなかった。一方、比較例1〜3では、耐溶剤性、耐擦傷性、密着性および耐候性といったレンズ物性は十分であるものの、微視的外観に不良が発生した。

Claims (7)

  1. (A)アミン化合物を含有する金属酸化物ゾル、(B)エポキシ基を有する重縮合性ケイ素化合物及び(C)硬化触媒を含んでなる組成物を製造する方法であって、前記(A)成分と前記(B)成分とを混合し、次いで得られた混合物と前記(C)成分とを混合することを特徴とする前記方法。
  2. (A)成分と(B)成分を、(C)成分と混合する前に、10℃以上40℃未満の温度で6時間以上混合することを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 請求項1又は2記載の方法で得られることを特徴とする組成物。
  4. (A)アミン化合物を含有する金属酸化物ゾル、(B)エポキシ基を有する重縮合性ケイ素化合物及び(C)硬化触媒を含んでなる組成物であって、該組成物中について29Si−NMR測定を行なったときのスペクトルが下記式(1)〜(3)に示される条件を全て満足することによって規定される状態で存在することを特徴とする前記組成物。
    X/(X+Y+Z) ≦ 0.1 (1)
    0.4 ≦ Y/(X+Y+Z) ≦ 0.9 (2)
    0.1 ≦ Z/(X+Y+Z) ≦ 0.6 (3)
    {前記式中、X、Y及びZは、前記組成物について、測定溶媒として重メタノール(CDOD)を用い、観測周波数99.25MHz、45°パルス5.0μs、繰り返し時間15秒、ブロードニングファクター1.21Hzの条件で29Si−NMRを測定した場合における、夫々下記のケミカルシフト範囲に存在するピークの積分強度を表す。}
    〔X、Y及びZのケミカルシフトの範囲〕
    X:−36ppm〜−43ppm
    Y:−45ppm〜−52ppm
    Z:−55ppm〜−65ppm
  5. 請求項3又は4に記載の組成物からなることを特徴とするコーティング剤。
  6. ポリシロキサンからなるマトリックス中に金属酸化物微粒子が分散したハードコート層を有するプラスチックレンズであって、当該ハードコート層の表面に口径50〜1000nmの穴若しくは窪み実質的に存在しないことを特徴とする前記プラスチックレンズ。
  7. プラスチックレンズ基材の表面に請求項5に記載のコーティング剤を塗布する工程及び該工程で塗布されたコーティング剤を硬化させる工程を含むことを特徴とする請求項6に記載のプラスチックレンズの製造方法。
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