JP2006131831A - ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 成形性に優れ、軽量、かつ高剛性、高耐熱性であることに加え、耐衝撃性、特に低温での耐衝撃性に優れた成形体となるポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 ポリアミド樹脂に膨潤性層状珪酸塩の珪酸塩層が分子レベルで分散されてなる樹脂組成物であって、96質量%濃硫酸を溶媒とし、温度25℃、濃度1g/dlの条件下で測定した際の相対粘度をX、膨潤性層状珪酸塩の配合量をY(質量%)としたときにY≦X(ただし、2.5≦X≦4、2≦Y≦4)を満足するポリアミド樹脂組成物。樹脂組成物は、−30℃での面衝撃強さが4.5J以上であり、かつ、荷重たわみ温度が130℃以上、曲げ弾性率が4GPa以上であることが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、膨潤性層状珪酸の珪酸塩層を含み、剛性、耐熱性、低温での耐衝撃性に優れたポリアミド樹脂組成物に関するものである。
ポリアミド樹脂は、その優れた物理的、化学的性質から、自動車部品、電気電子部品をはじめ、土木、建築分野で幅広く用いられている。自動車分野においては、低燃費を実現するための軽量化と生産性とを両立するために、樹脂材料による射出成形品が活用されており、なかでもポリアミド樹脂はさまざまな機構部品用の材料として多く使用されている。
近年、温度その他の条件面で厳しい環境下に曝されるエンジンルーム内部品でも樹脂化が進んでおり、とりわけ、樹脂化が顕著なのはエンジンカバーやタイミングベルトカバーなどのカバー類である。
カバー用樹脂材料としては、これまでガラス繊維で強化されたポリアミド6樹脂やポリアミド66樹脂等のポリアミド樹脂組成物が用いられてきた。これらは、高い耐熱性に加え、耐衝撃性やリサイクル性といった広範囲の要求性能を満たす材料だったからである。
しかし、必要な機械的物性を保持しつつ軽量化の要求に応えるには、従来のガラス繊維や無機フィラーによる強化材料では限界があった。一方、性能とは別の観点から生産コストの低減もまた大きな要求であり、これに応える材料はシンプルな材料組成、優れた生産性(射出成形性やリサイクル性等)を具備している必要がある。
このような背景のもと、ポリアミド樹脂に膨潤性層状珪酸塩の珪酸塩層を分子レベルで分散させたポリアミド樹脂を用いたエンジンカバーが提案されている(特許文献1参照)。しかし、これらのポリアミド樹脂では成形性やリサイクル性には優れるものの、耐衝撃性については不十分であり、特に低温での耐衝撃性発現は大きな課題であった。
このようなポリアミド樹脂の耐衝撃性を向上させる方法が種々提案されており、例えば、オレフィン系共重合体からなる耐衝撃性改良材との混合物(特許文献2参照)によれば、ポリアミド樹脂の耐衝撃性を大きく向上させることができる。しかしこの方法では、耐衝撃性の向上に反して、ポリアミド樹脂が本来有する優れた耐熱性や剛性が低下していく傾向があり、両立が困難であった。
また、ポリアミド樹脂そのものの改質として、膨潤性層状珪酸塩の陽イオン交換容量や初期粒子径の最適化(特許文献3参照)も提案されている。しかしこの方法は、耐衝撃性の改善には有効であったものの、耐衝撃性と耐熱性や剛性とのバランスの点において、なお、問題が残っていた。
特開平2-240160号公報 特許第2528163号 WO98/49235号
本発明は、上記の問題を解決し、成形性に優れ、軽量、かつ高剛性、高耐熱性であることに加え、耐衝撃性、特に低温での耐衝撃性に優れた成形体となるポリアミド樹脂組成物を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリアミド樹脂に膨潤性層状珪酸塩の珪酸塩層を分散させ、かつ相対粘度と膨潤性層状珪酸塩の配合量が特定の範囲と関係を満足させればよいことを知見して本発明に到達した。
すなわち、本発明は、次の構成を要旨とするものである。
(1)ポリアミド樹脂に膨潤性層状珪酸塩の珪酸塩層が分子レベルで分散されてなる樹脂組成物であって、96質量%濃硫酸を溶媒とし、温度25℃、濃度1g/dlの条件下で測定した際の相対粘度をX、膨潤性層状珪酸塩の配合量をY(質量%)としたときにY≦X(ただし、2.5≦X≦4、2≦Y≦4)を満足することを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
(2)−30℃での面衝撃強さが4.5J以上であり、かつ、荷重たわみ温度が130℃以上、曲げ弾性率が4GPa以上であることを特徴とする上記(1)記載のポリアミド樹脂組成物。
本発明によれば、高い剛性と耐熱性を有しつつ、実用材料として十分な低温雰囲気における耐衝撃性を兼ね備えており、自動車分野におけるエンジンルームのカバー類のみならず、機械分野や建材分野、電気・電子分野等の幅広いアプリケーションに対応できるポリアミド樹脂組成物が提供される。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明におけるポリアミド樹脂組成物とは、ポリアミド樹脂マトリックス中に膨潤性層状珪酸塩の珪酸塩層が分子レベルで分散されたものである。ここで、珪酸塩層とは、膨潤性層状珪酸塩を構成する基本単位であり、膨潤性層状珪酸塩の層構造を崩すこと(以下、「劈開」という。)によって得られる板状の無機結晶である。
本発明における珪酸塩層とは、この珪酸塩層の一枚一枚、もしくは層間にポリアミド分子鎖が挿入されているが、その積層構造が完全には崩れていない状態を意味し、必ずしも一枚一枚にまで劈開されている必要はない。また、分子レベルで分散されるとは、膨潤性層状珪酸塩の珪酸塩層がポリアミド樹脂マトリックス中に分散する際に、それぞれが平均1nm以上の層間距離を保ち、互いに塊を形成することなく存在している状態をいう。ここで塊とは、原料である膨潤性層状珪酸塩が全く劈開していない状態を指す。また、層間距離とは、前記珪酸塩層間の距離である。このような状態は、ポリアミド複合材料の試験片について、例えば透過型電子顕微鏡観察を行うことにより確認することができる。
本発明において用いる膨潤性層状珪酸塩は、珪酸塩を主成分とする負に帯電した結晶層と、その層間に介在するイオン交換能を有するカチオンとからなる構造を有するものであり、後述する方法で求めた陽イオン交換容量が50ミリ当量/100g以上であることが望ましい。この陽イオン交換容量が50ミリ当量/100g未満のものでは、膨潤能が低いためにポリアミド複合材料の製造時に実質的に未劈開状態のままとなり、性能の向上が認められない。本発明においては、陽イオン交換容量の値の上限に特に制限はなく、現実に調製可能な膨潤性層状珪酸塩の中から適当なものを選べばよい。
このような膨潤性層状珪酸塩としては、天然に産出するものでも人工的に合成あるいは変成されたものでもよく、例えばスメクタイト族(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、ソーコナイト等)、バーミキュライト族(バーミキュライト等)、雲母族(フッ素雲母、白雲母、パラゴナイト、金雲母、レピドライト等)、脆雲母族(マーガライト、クリントナイト、アナンダイト等)、緑泥石族(ドンバサイト、スドーアイト、クッケアイト、クリノクロア、シャモナイト、ニマイト等)が挙げられるが、本発明においては、Na型あるいはLi型膨潤性フッ素雲母やモンモリロナイトが特に好適に用いられる。
本発明において好適に用いられる膨潤性フッ素雲母は、一般的に次式で示される構造式を有するものである。
M((MgγLi()Si4OσFε
(式中で、Mはイオン交換性のカチオンを表し、具体的にはナトリウムやリチウムが挙げられる。また、(、(、γ、σ及びεはそれぞれ係数を表し、0≦(≦0.5、0≦(≦0.5、2.5≦γ≦3、10≦σ≦11、1.0≦ε≦2.0である。)
このような膨潤性フッ素雲母の製造法としては、例えば酸化珪素、酸化マグネシウム及び各種フッ化物とを混合し、その混合物を電気炉あるいはガス炉中で1400〜1500℃の温度範囲で完全に溶融し、その冷却過程で反応容器内に膨潤性フッ素雲母の結晶を成長させる溶融法が挙げられる。
また、タルク〔Mg3Si4O10(OH)2〕を出発物質として用い、これにアルカリ金属イオンをインターカレーションして膨潤性を付与し、膨潤性フッ素雲母を得る方法もある(特開平2-149415号公報。)。この方法では、所定の配合比で混合したタルクと珪フッ化アルカリを、磁性ルツボ内で700〜1200℃の温度下に短時間加熱処理することによって、膨潤性フッ素雲母を得ることができる。
この際、タルクと混合する珪フッ化アルカリの量は、混合物全体の10〜35質量%の範囲とすることが好ましい。この範囲をはずれる場合には、膨潤性フッ素雲母の生成収率が低下する傾向を示す。
次に、 本発明に用いられるモンモリロナイトは次式で表されるもので、天然に産出するものを水ひ処理等を用いて精製することにより得ることができる。
aSi(Al2-aMg)O10(OH)2・nH2
(式中で、Mはナトリウム等のカチオンを表し、0.25≦a≦0.6である。また層間のイオン交換性カチオンと結合している水分子の数はカチオン種や湿度等の条件によって様々に変わりうるので、式中ではnH2Oで表した)
また、モンモリロナイトにはマグネシアンモンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、鉄マグネシアンモンモリロナイト等の同型イオン置換体の存在が知られており、これらを用いてもよい。
本発明においては、上記した膨潤性層状珪酸塩の初期粒子径について特に制限はない。ここで初期粒子径とは、本発明のポリアミド樹脂組成物を製造する際に用いる原料としての膨潤性層状珪酸塩の粒子径であり、樹脂組成物中の珪酸塩層の大きさとは異なるものである。しかしこの粒子径も、また得られるポリアミド樹脂組成物の物性、特に剛性や耐熱性に少なからず影響を及ぼす。したがって、前記した膨潤性層状珪酸塩の混合比率を選択するに当たっては、この点も考慮するのが望ましく、必要に応じてジェットミル等で粉砕して粒子径をコントロールすることが好ましい。
ここで、膨潤性フッ素雲母系鉱物をインターカレーション法により合成する場合には、原料であるタルクの粒子径を適切に選択することにより初期粒子径を変更することができ、粉砕との併用により、より広い範囲で初期粒子径を調節することができる点で好ましい方法である。
本発明におけるポリアミド樹脂組成物のポリアミド樹脂マトリックスとは、アミノカルボン酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸(それらの一対の塩も含まれる。)を主たる原料とするアミド結合を主鎖内に有する重合体である。その原料の具体例としては、アミノカルボン酸としては、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等がある。またラクタムとしてはε−カプロラクタム、ω−ウンデカノラクタム、ω−ラウロラクタム等がある。ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、2,4-ジメチルオクタメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン等がある。またジカルボン酸としては、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等がある。また、これらジアミンとジカルボン酸は一対の塩として用いることもできる。
このようなポリアミド樹脂の好ましい例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリウンデカミド(ナイロン11)、ポリカプロアミド/ポリウンデカミドコポリマー(ナイロン6/11)、ポリドデカミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリドデカミドコポリマー(ナイロン6/12)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロンTMDT)、ポリビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)及びこれらの混合物乃至共重合体等が挙げられる。中でもナイロン6、ナイロン66が特に好ましい。
本発明においては、次の条件が満足されることが不可欠である。すなわち、ポリアミド樹脂組成物の相対粘度(96質量%濃硫酸を溶媒とし、温度25℃、濃度1g/dlの条件で測定)Xと膨潤性層状珪酸塩の配合量Y(質量%)がY≦X(ただし、2.5≦X≦4、2≦Y≦4)の関係を満たすことが必要がある。Y>Xであると、ポリアミド樹脂組成物は耐衝撃性に劣る傾向を示し、好ましくない。また、Xが2.5未満もしくはYが4を超える場合もポリアミド樹脂組成物の耐衝撃性が満足しない場合があり、好ましくない。一方、Xが4を超える場合はポリアミド樹脂組成物の流動性が極端に低下し、射出成形性が著しく低下するため好ましくなく、Yが2未満であると剛性と耐熱性の向上が不十分となるため好ましくない。XとYのより好ましい範囲は2.7≦X≦3.7、2.2≦Y≦3.6であり、最適な範囲は2.9≦X≦3.5、2.4≦Y≦3.3である。
また、成形体の用途が特にエンジンルームのカバー類のような場合、エンジンルーム内という特殊な環境を考慮すれば、−30℃での面衝撃強さが4.5J以上で、かつ荷重たわみ温度が130℃以上、曲げ弾性率が4GPa以上であるような、靭性と剛性を併せ持つことが極めて好適である。
次に、本発明のポリアミド樹脂組成物の製法例について説明する。
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、溶融重合、基本的には、適宜選択した膨潤性層状珪酸塩の存在下、所定量のモノマーをオートクレーブに仕込んだ後、水等の開始剤を用い、温度240〜300℃、圧力0.2〜3MPa、1〜15時間の範囲内で溶融重縮合法によればよい。ナイロン6を樹脂マトリックスとする場合には、温度250〜280℃、圧力0.5〜2MPa、3〜5時間の範囲で重合することが好ましい。また、重合後のポリアミド樹脂組成物に残留しているポリアミドのモノマーを除去するために、このポリアミド樹脂組成物のペレットに対して熱水による精練を施すことが好ましい。この場合、好ましくは90〜100℃の熱水中で8時間以上の処理を行えばよい。
また、前記した膨潤性層状珪酸塩とポリアミド樹脂の重合に要するポリアミドモノマーの一部とを、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール等の分散媒中で混合させる工程を設けることが望ましい。一般的に、この工程における温度条件は室温、あるいは必要に応じて室温以上、分散媒の沸点以下で行い、ホモミキサーや超音波式分散機、高圧分散機等を用いることが望ましい。
このようなポリアミド樹脂組成物を製造するに当たっては、酸を添加してもよい。一般的に、酸を添加することにより、膨潤性層状珪酸塩の劈開が促進され、ポリアミド樹脂マトリックス中への珪酸塩層の分散がより進行するためである。
前記の酸としては、pKa(25℃、水中での値)が0〜6、又は負の酸であるなら有機酸でも無機酸でもよく、具体的には安息香酸、セバシン酸、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、亜硝酸、リン酸、亜リン酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、過塩素酸等が挙げられる。
酸の添加量は、使用する膨潤性層状珪酸塩の全陽イオン交換容量に対して1.0〜5.0倍モル量程度とすることが、膨潤性層状珪酸塩の劈開やポリアミド樹脂マトリックスにおける重合触媒としての作用の点から好ましい。
また、前記した溶融重合で得られたポリアミド樹脂組成物のペレットは、さらに固相重合を用いてより高分子量の強化ポリアミド樹脂とすることもできる。固相重合は、溶融重合により得られたポリアミド樹脂組成物を、通常は直径2〜5mm、長さ3〜6mm、好ましくは直径3〜4mm、長さ4〜5mmのペレット状にした後、不活性ガスの流通下、あるいは減圧下で、ポリアミドの融点未満の温度で5時間以上、好ましくは10時間以上行うことが好ましい。この際、固相重合の温度は融点よりも10℃以上低く、かつ 150℃以上とすることがより好ましい。この温度が 150℃未満では重合速度が遅く、一方融点近傍の温度ではペレットが融着する場合があるので好ましくない。
固相重合の際には、重合速度を上げる目的で、リン酸や硫酸又はこれらのナトリウム塩等を触媒として反応系に適量加えてもよいし、固相重合を行う温度よりも低い温度でペレットの予備結晶化を前もって行ってもよい。
また、本発明のポリアミド樹脂組成物を製造するに際しては、その特性を大きく損なわない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、着色防止剤、耐候剤、耐光剤、難燃剤、可塑剤、結晶核剤、離型剤等を添加してもよい。
熱安定剤や酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物が挙げられる。
強化材としては、例えばクレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウィスカー、セラミックウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。
さらに、本発明のポリアミド樹脂組成物には、他の熱可塑性樹脂が混合されていてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えばポリブタジエン、ブタジエン/スチレン共重合体、アクリルゴム、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/プロピレン/ブタジエン共重合体、天然ゴム、塩素化ブチルゴム、塩素化ポリエチレン等のエラストマーまたはこえらの無水マレイン酸等による変性物、スチレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/フェニルマレイミド共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアリレート等が挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、高い剛性と耐熱性を有しつつ、実用材料として十分な低温雰囲気における耐衝撃性を兼ね備えており、自動車分野におけるエンジンルームのカバー類のみならず、機械分野や建材分野、電気・電子分野等の幅広いアプリケーションに対応することが可能となる。
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
なお、実施例並びに比較例で用いた原料と物性試験の測定方法は、次の通りである。
1.原料
(1)膨潤性フッ素雲母(M−1)
ボールミルにより平均粒子径が4.0μmとなるように粉砕したタルクに対し、平均粒子径が10μmの珪フッ化ナトリウムを全量の15質量%となるように混合した。これを磁性ルツボに入れ、電気炉にて850℃で1時間反応させることにより、平均粒径4.0μmの膨潤性フッ素雲母(M-1)を得た。この膨潤性フッ素雲母の組成は、Na0.60Mg2.63Si4O10F1.77、後述する測定方法により得られた陽イオン交換容量は110ミリ当量/100gであった。
(2)モンモリロナイト(M−2)
クニミネ工業社製「クニピア−F」を用いた。平均粒径は1.0μm、CECは115mmol/100gであった。
2.測定方法
(1)陽イオン交換容量(ミリ当量/100g)
日本ベントナイト工業会標準試験方法によるベントナイト(粉状)の陽イオン交換容量測定方法(JBAS-106-77)に基づいて求めた。
すなわち、浸出液容器、浸出管及び受器を縦方向に連結した装置を用いて、まず初めに、層状珪酸塩をpH=7に調製した1N酢酸アンモニウム水溶液により、その層間のイオン交換性カチオンの全てをNH4 +に交換する。その後、水とエチルアルコールを用いて十分に洗浄してから、前記したNH4 +型の層状珪酸塩を10質量%の塩化カリウム水溶液中に浸し、試料中のNH4 +をK+へと交換する。引き続いて、前記したイオン交換反応に伴い浸出したNH4 +を0.1N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定することにより、原料である膨潤性層状珪酸塩の陽イオン交換容量(ミリ当量/100g)を求めた。
(2)ポリアミド樹脂組成物の膨潤性層状珪酸塩量(無機灰分率:質量%)
ポリアミド樹脂組成物の乾燥ペレットを磁性ルツボに精秤し、500℃に保持した電気炉で15時間焼却処理した後の残渣を無機灰分として、次式に従って無機灰分率を求めた。
無機灰分率(質量%)={無機灰分質量(g)}/{焼却処理前の試料の全質量(g)}×100
(3)ポリアミド樹脂組成物の相対粘度
96質量%濃硫酸中に、ポリアミド樹脂組成物の乾燥ペレットを濃度が1g/dlになるように溶解させ、G-3ガラスフィルターにより無機成分を濾別した後、測定に供した。測定はウベローデ型粘度計を用い、25℃で行った。
(4)成形品の剛性(曲げ弾性率:GPa)
ASTM D-790に基づいて測定した。
(5)成形品の荷重たわみ温度(℃)
ASTM D-648に基づいて、荷重1.8MPaで測定した。
(6)成形品の耐衝撃性(面衝撃強さ:J)
デュポン式衝撃試験機にて、図1に示すような形状および肉厚の成形品に、所定の高さから重錘を落下させて衝撃強度を評価した。この際、成形品に直接衝撃力を与える部分は直径30mm、厚さ5mmの円盤とし、面衝撃を加えた。耐衝撃性は所定の高さ及び重錘荷重の組み合わせからなる条件下に、-30℃の雰囲気下、成形品が破壊しない最大の付与エネルギーG(J)を計算して定量化した。
G(J)=(試験片が破壊しない最高高さ(m))×(重力加速度(m/sec2)×(重錘荷重(g))
実施例1
膨潤性フッ素雲母(M−1)260gを、ε-カプロラクタム1kgと水500gとを混合して得た溶液中に加え、室温下、ホモミキサーを用いて1.5時間撹拌した。この分散液の全量を、予めε-カプロラクタム9kgを仕込み、95℃で溶融させておいた内容積30リットルのオートクレーブに投入し、撹拌しながら260℃に加熱し、圧力1.5MPaまで昇圧した。その後、徐々に水蒸気を放出しつつ温度260℃、圧力1.5MPaの状態を1時間維持し、さらに1時間かけて常圧まで放圧し、窒素を流通させながら30分間重合した。
重合が終了した時点で、前記反応生成物をストランド状に払い出し、冷却、固化した後、切断してポリアミド樹脂組成物からなるペレットを得た。次いで、このペレットを95℃の熱水で8時間精錬した後、乾燥した。得られたペレットを用い、東芝機械社製IS-100型成形機にてシリンダー温度250℃、金型温度90℃の条件で種々の試験片を射出成形し、各試験に供した。
実施例2
膨潤性フッ素雲母(M−1)の配合量を200gに変更し、放圧後15分間重合した以外は実施例1と同様にして重合を行い、精練、乾燥した後、得られた乾燥ペレットを用いて、実施例1と同一条件で射出成形を行うことにより試験片を得た。
実施例3
モンモリロナイト(M−2)の配合量を330gに変更し、放圧後45分間重合した以外は実施例1と同様にして重合を行い、精練、乾燥後、得られた乾燥ペレットを用いて、実施例1と同一条件で射出成形を行うことにより試験片を得た。
比較例1
膨潤性フッ素雲母(M−1)の配合量を400gに変更した以外は実施例1と同様にして重合を行い、精練、乾燥後、得られた乾燥ペレットを用いて、実施例1と同一条件で射出成形を行うことにより試験片を得た。
比較例2
膨潤性フッ素雲母(M−1)の配合量を220gに変更し、放圧後5分間重合した以外は実施例1と同様にして重合を行い、精練、乾燥後、得られた乾燥ペレットを用いて、実施例1と同一条件で射出成形を行うことにより試験片を得た。
比較例3
膨潤性フッ素雲母(M−1)の配合量を140gに変更した以外は実施例2と同様にして重合を行い、精練、乾燥後、得られた乾燥ペレットを用いて、実施例1と同一条件で射出成形を行うことにより試験片を得た。
実施例1〜3及び較例1〜3で得られたポリアミド樹脂組成物の諸物性を表1にまとめて示す。
表1から明らかなように、実施例1〜3では、剛性(曲げ弾性率)、耐熱性(荷重たわみ温度)、耐衝撃性(面衝撃強さ)ともに高いレベルで兼ね備えた成形品が得られた。
一方、膨潤性層状珪酸塩の配合量Yが4質量%を超え、Yが相対粘度Xより大きい比較例1と、Xが2.5より小さく、Yが度Xより大きい比較例2の成形品は、いずれも耐衝撃性が悪かった。また、Yが2質量%以下である比較例1の成形品は、剛性と耐熱性が悪く、比較例1〜3で得られた成形品は、いずれも剛性、耐熱性、耐衝撃性を兼ね備えたものはなく、実用上問題を有していた。
耐衝撃性の評価試験に用いた試験片の形状を示す斜視図である。

Claims (2)

  1. ポリアミド樹脂に膨潤性層状珪酸塩の珪酸塩層が分子レベルで分散されてなる樹脂組成物であって、96質量%濃硫酸を溶媒とし、温度25℃、濃度1g/dlの条件下で測定した際の相対粘度をX、膨潤性層状珪酸塩の配合量をY(質量%)としたときにY≦X(ただし、2.5≦X≦4、2≦Y≦4)を満足することを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
  2. −30℃での面衝撃強さが4.5J以上であり、かつ、荷重たわみ温度が130℃以上、曲げ弾性率が4GPa以上であることを特徴とする請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
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