JP2006127864A - ガス放電表示装置とその製造方法 - Google Patents

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伸一 山本
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幹彦 西谷
Masatoshi Kitagawa
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Abstract

【課題】
所望の放電応答速度を有することで、確実な画像表示の実施が可能であると共に消費電力の低減が図られたガス放電表示装置を提供する。
【解決手段】
放電空間30を挟んで対向配置された一対の基板の内、一方の基板10上に複数の電極とこれを覆うように誘電体層13が配設され、さらに前記誘電体層13上に、放電空間30を臨む保護膜14が積層されてなるガス放電表示装置であって、前記保護膜14は、結晶成長されてなる2種類の配向結晶体を含み、且つ、前記2種類の配向結晶体は、前記電極の配設位置上の前記保護膜14領域において、共に前記放電空間30を臨む状態で散在している構成とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、ガス放電表示装置の表示パネル構造及びガス放電表示装置の製造方法に関する。
ガス放電表示装置は、表示用デバイスとして広く普及され、その代表的なものとしてプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」と記す。)を用いた装置(以下、「PDP装置」と記す。)が挙げられる。
その中でも、発光効率や寿命等の面から広く普及している交流型PDP装置に関する概要を述べると、パネル部の構成は前面基板と背面基板とが放電空間を挟んで対向配置され、その放電空間に放電ガスが封入されてなる。前面基板上には、複数の表示電極対がストライプ状に配設され、その表示電極対を覆うように誘電体層及び保護膜が順次積層される。一方、背面基板上には、複数のデータ電極が上記表示電極対と交差するように配設される。
当該パネル部に駆動装置が接続されてPDP装置が構成され、駆動においては表示電極とデータ電極間での選択的な書き込み放電により保護膜に壁電荷を形成する。次いで表示電極に電圧を印加し、壁電荷形成領域で維持放電を発生させ、画像表示を行う。
上記保護膜には、酸化マグネシウム(以下、「MgO」と記す。)膜が代表的に用いられる。これは、放電による表示電極及び誘電体層のスパッタを抑制し、且つ、2次電子の放出及び壁電荷の保持によるPDP装置の消費電力の低減効果を得るためである。
このような性能を有する保護膜にも、経時的な劣化が生じる。これにより、耐スパッタ性及び2次電子放出係数の低下が生じ、結果、PDP装置の消費電力の増加、又は本来点灯すべき箇所から放電が発生しない点灯不良などを招いてしまう。そこで、保護膜の経時的劣化による消費電力の低減を抑制するため、従来では保護膜を主に形成している結晶の配向が(100)であることに注目し、保護膜形成に主に寄与する結晶として、(100)配向よりも、耐スパッタ性、2次電子放出係数及び放電応答性能が高い点で優れている(111)配向の結晶を利用することで2次電子放出係数や放電応答性能の向上などが図られている(例えば、特許文献1)。
特開平5-234519号公報
しかしながら、特許文献1のように(111)配向によって主に形成された保護膜を利用すると、反面、(111)配向は(100)配向よりも電荷を保持しにくい性質を有しているので、保護膜における放電応答速度が、所望の放電応答速度よりも速すぎる場合が生じる。また、書き込み放電の応答速度が速すぎると、そのとき形成された壁電荷が維持放電時まで保持されていない場合が生じ、放電セルにおいて維持放電が発生せず、結果、画像表示が行われないという事態を招くことがある。
本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであって、所望の放電応答速度に調整することが容易で、画像表示の確実な実施が可能であると共に消費電力の低減が図られたガス放電表示装置を提供することを目的とする。
本発明では上記課題を解決するために以下の手段を用いている。
放電空間を挟んで対向配置された一対の基板の内、一方の基板上に複数の電極とこれを覆うように誘電体層が配設され、さらに前記誘電体層上に、放電空間を臨む保護膜が積層されてなるガス放電表示装置であって、前記保護膜は、結晶成長されてなる2種類の配向結晶体を含み、且つ、前記2種類の配向結晶体は、前記電極の配設位置上の前記保護膜領域において、共に前記放電空間を臨む状態で散在している構成とする。また、前記2種類の配向結晶体は、前記誘電体層の表面から前記放電空間を臨む表面まで結晶成長されてなる構成とすることが望ましい。
そして、放電空間を挟んで対向配置された一対の基板の内、一方の基板上に複数の電極とこれを覆うように誘電体層が配設され、さらに前記誘電体層上に、放電空間を臨む保護膜が積層されてなるガス放電表示装置であって、前記保護膜は、誘電体層上に形成される第1の保護膜部と、前記放電空間を臨む第2の保護膜部とが順次積層された構成を有し、前記第2の保護膜部は、結晶成長されてなる2種類の配向結晶体を含み、前記2種類の配向結晶体は、前記電極の配設位置上の前記保護膜領域において、共に前記放電空間を臨む状態で散在している構成としても構わない。また、前記2種類の配向結晶体は、前記第1の保護膜部の表面から前記放電空間を臨む表面まで結晶成長されてなる構成とすることが望ましい。
上述した前記2種類の配向結晶体の内の一方は、(100)配向を有し、他方は(111)配向を有していることが好ましく、さらに、前記保護膜表面における(111)配向の配向結晶体が占める面積割合は、20%以上80%以下の範囲内、又は前記保護膜全体のX線波形における(111)配向の配向結晶体が占めるX線ピーク強度の比率は、20%以上80%以下の範囲内であること、そして、前記配向結晶体の内の少なくとも1つの配向をもつ結晶体は、他の配向性をもつ結晶体より大きな単結晶構造を有していることがさらに好ましい。
以下の条件が含まれていればさらに好適である。
放電空間を臨む前記保護膜の表面は、中心線平均粗さが40nm以上200nm以下であること、さらには100nm以上200nm以下であること、そして、前記保護膜は、少なくとも金属酸化物材料を含んでなる、又は前記保護膜は、酸化マグネシウムからなる場合は上述の本発明の目的の達成に寄与するものとなる。
次に、当該ガス放電表示装置の製造方法としては以下のようにする。
放電空間を挟んで対向配置される一対の基板の内、一方の基板上に形成されている複数の電極を覆う誘電体層の上に保護膜が積層されてなるガス放電表示装置の製造方法であって、前記保護膜の形成ステップは、前記誘電体層上に単結晶構造をもつ種結晶粒子を少なくとも1種類散在させる第1サブステップと、前記第1サブステップの後に、前記結晶粒子と同じ配向を有する配向結晶体を含み、且つ、少なくとも2種類の配向結晶を前記基板の厚み方向に成長させる第2サブステップとによってなるとする。
前記第1サブステップは、散布法、スプレー法、印刷法、分散堆積法、転写法及び電着法の内の少なくとも1種を含む方法によってなされる用にすることが好ましく、さらには、前記第2サブステップは、少なくとも(100)配向及び(111)配向を有するMgOを結晶成長させることが好適となる。
本発明に係るガス放電装置では、結晶成長されてなる2種類の配向結晶体が、表示電極の配設位置上の保護膜領域において、放電空間を臨む状態で散在している構成なので、上記2種類の配向結晶体における各々の電子放出特性を含めることができる。従って、各配向結晶体が放電空間に露出する比率を調整することによって、ガス放電表示装置の放電応答を所望の速度に制御することが可能となる。特に、異なる配向結晶体がある程度均等に散在する状態で形成されている場合には、放電空間の中においてさらに安定した放電特性を得ることができる。
さらに、保護膜の表面がこのような複数の配向結晶体によって凹凸状態を形成している場合には、その表面が平滑状態である場合と比べて、保護膜の表面積が拡大されることになるので、2次電子放出係数の増加に繋がる。
以上のように、本発明の構成を利用することで、簡易な方法により、PDP装置における確実な画像表示の実現と共に消費電力の低減に繋げることができるので有効である。
以下、本発明の実施の形態について、一例として用いる下記のPDPを図面に基づいて説明する。なお、ここで用いるPDPについては、本発明の構成上の特徴及び作用などを説明するための一例として用いるものであって、本発明はこれに限定を受けるものではない。
(実施例1)
(全体構成)
図1は本実施の形態におけるPDP100の主要部斜視図である。PDP100は、前面パネル10と背面パネル20とが対向して接着密閉されてなり、後述する駆動回路が加わることにより、画像表示可能な形態、即ち、プラズマディスプレイ表示装置となる。
(1)前面パネル10
前面パネル10は、前面基板11に表示電極対12が配設され、表示電極対12を覆うようにして誘電体層13、さらに保護膜14が順次積層されてなる。
前面基板11は、高歪点ガラスあるいはソーダガラスからなる。表示電極対12はスキャン電極121とサステイン電極122により構成され、その各々はITOからなる複数対の透明な電極121a、122aがストライプ状に形成され、その上に形成されるバス電極121b、122bによってなる。このスキャン電極121及びサステイン電極122は表示電極対12を形成している。透明電極121a、122aの材料には酸化スズあるいは酸化亜鉛など、バス電極121b、122bの材料にはAg、アルミニウムなどからなる膜、あるいはクロム/銅/クロムの積層膜なども適用可能である。
誘電体層13は、Pb-B系の低融点ガラスペーストをマスクスクリーン印刷し、焼成して形成されている。その上に形成される保護膜14は、MgOを主成分としている。保護膜14は、PDP100の放電時に発生するイオンによって、誘電体層13及び表示電極対12がスパッタされることを防止すると共に、2次電子放出を促進し、PDP100の駆動電圧の抑制作用を有している。この保護膜14の詳細に関しては後述している。
(2)背面パネル20
背面パネル20は、背面基板21にデータ電極22が配設され、それらを覆うようにして誘電体層23が形成され、さらに所定の高さを有する隔壁が形成され、上記誘電体層23の上面(Z方向正方向側)と隔壁24の側面には蛍光体層25が形成されている。
背面基板21は、高歪点ガラスまたはソーダライムガラスからなる。データ電極22はAgからなり、スクリーン印刷法やフォトエッチング法などによりストライプ状に形成されている。
誘電体層23は、主にPb-B系の低融点ガラスからなり、隔壁24がその上にストライプ状に形成されており、隔壁24間の内側、及び隔壁24に挟まれる誘電体層23の表面上には赤色、緑色、青色の蛍光体層25が塗布されている。
(3)放電空間30
放電空間30は、前面パネル10と背面パネル20が、封着材(不図示)によって封着されることで、密閉空間となる構成である。当該放電空間30内は、高真空状態となるように排気された後に、ネオンとキセノンを主成分とする混合ガスが放電ガスとして充填された状態である。
(保護膜14の構成について)
本実施例における保護膜14の構成について図2を用いて説明する。図2は、図1におけるPDP100の断面図を示し、そのYZ断面図及びXZ断面図が示されている。図のように、保護膜14は、鉛直方向(Z方向)に延伸した略円柱形状を有すると共に、主にMgOの(111)配向粒子が結晶成長してなる配向結晶体(以下、「棒状結晶体」と記す。)14bが、誘電体層13上に主にMgOの(100)配向粒子が結晶成長してなる積層状態の配向結晶体(以下、「積層結晶体」)14aを貫く状態で構成され、約600nmの厚みに成膜されている。(111)配向の結晶粒子は直径10nm〜10μmの大きさである。なお、図2(a)に示すようにY方向において棒状結晶体14bはある程度均一な間隔を設けて配設され、棒状結晶体14b及び積層結晶体14aのどちらともが放電空間30を臨んでいる状態である。なお、棒状結晶体14bは隔壁25間に設けられていることが好ましい。
一方、X方向において、棒状結晶体14bは、一定間隔を設けて形成され、積層結晶体14aと共に放電空間30を臨んだ状態で形成されている。この棒状結晶体14bは、少なくとも表示電極配設領域上(A1及びA2の範囲)に設けられていれば良く、局所的、又は集中的な配設位置ではなく、均等に分布されていることが好ましい。また、図2(b)の拡大図に示されるように、棒状結晶体14bが積層結晶体14aの表面よりも微小長さH1だけ突出しているのが好ましい。ただし、各突出部の長さは同一でなくても構わない。このような成膜状態の保護膜14の表面における中心線平均粗さは20nm〜200nmの範囲内であり、40〜200nm、さらに望ましくは100nm〜200nmの範囲内ならば有益である。
本実施形態における保護膜14の厚みは0.6μmであるが、0.1〜1μmの範囲内で調整しても構わない。さらに、保護膜14の材料として金属酸化物材料であるMgOを利用しているが、MgOの他にもCaO、BaO、SrO、MgNO及びZnOなどの内の少なくとも1種を含んだ金属酸化物から形成されるものでも、またはこれらを組み合わせて形成されるものでも構わない。また、これらの保護膜14に、放電性能の向上を目的として不純物がドープされたものでも構わない。
(保護膜14の製造方法)
ここでは、上記保護膜14の形成方法について図3を用いて説明する。図3は、当該形成方法を示す概略工程図である。
先ず、図3(a)に示すように、前面基板11に配設された表示電極対12を被覆している誘電体層13を形成し、この表示電極対12上に(111)配向を有するMgO結晶粒子を散在させる。具体的には以下のように行う。図3(b)のように略円柱状の容器41の底にほぼ水平に設置する。次に、容器41の上部に設置されている結晶粒子挿入部42に、(111)配向を有するMgOの結晶粒子1400bを所定量入れる。そして、窒素ガスや空気などの圧縮ガス43により、MgOの結晶粒子1400bをノズル45から勢いよく噴出させて散布する。その後、圧縮ガス43の注入を止めて、結晶粒子1400bを一定時間にわたって自然落下させ、誘電体層13の表面上に堆積させる。容器41の形状は底面が平らなものであれば他の形状でも構わない。散布方式に関しても、電界を印加することで更に均一に分散させる方法や、結晶粒子同士の凝集を防止するために乾式及び湿式方法などの他の方法を用いても構わない。表示電極対12との対向領域上にだけ結晶粒子1400bを散在させる場合には、金属マスク等を併用する。上記散布法によって散布する結晶粒子1400bは、散布範囲において均等に分布するように調整することが望ましい。なお、結晶粒子1400bを誘電体層13上に散布する方法としては、例えば、印刷法、スプレー法、分散堆積法、転写法及び電着法などの方法を用いても構わない。
次に、図3(c)に示すように、スパッタリング装置内(図示省略)において、結晶粒子1400bが散在する誘電体層13の表面全体にAr2ガス中で約600nm膜厚のMgOを成膜する。このとき、誘電体層13の表面に(100)配向を形成するように条件設定する。誘電体層13の表面上には、結晶粒子1400bが存在する領域と存在しない領域とにMgOが同時に成膜されるが、結晶粒子1400bが存在しない領域では主に(100)配向からなる結晶が、誘電体層13の表面からほぼ膜厚方向に結晶成長し、(111)配向を有する結晶粒子1400bからは、(111)配向の結晶が膜厚方向に結晶成長して棒状結晶体14bが形成される。その棒状結晶体14bの間を積層結晶体14aが隙間無く充填されて保護膜14を形成する。また、上記方法ではスパッタリング法を用いているが、その他にも電子ビーム蒸着法、各種CVD法、或いはこれらを組み合わせて成膜しても構わない。なお、形成される積層結晶体14a及び棒状結晶体14bの比率は、主に結晶粒子1400bを散布する工程で散布密度を調整することにより行う。
(PDP装置の駆動方法)
PDP装置は、図示を省略しているが、PDP100と、その各電極121、122、22に各ドライバを含む制御駆動部が接続された構成を有している。そこで、その制御駆動部が接続されたPDP装置の駆動方法について、図4を用いて説明する。図4は、フィールド内時分割階調表示方式をもって、例えば256階調を表現するために1フィールドを8つのサブフィールドSF1〜SF8に分割し、各装置を駆動する方法を示すものであり、横軸が時間を示し、斜線部が初期化期間及び書き込み期間を示している。
例えば図4の下半分の拡大図に示すように、サブフィールドSF6は、一定の時間が割り当てられた初期化期間T1と、書き込み期間T2と、輝度の相対比率に応じた長さの時間で設定された維持期間T3とから構成される。PDP装置の表示駆動を行う際には、まず初期化期間T1において、PDP100の全放電セルで初期化放電を発生させ、当該サブフレーム以前のサブフレームにおける放電の影響の除去や放電特性のバラツキを吸収する初期化が実施される。
書き込み期間T2において、サブフィールドデータに基づいて、スキャン電極121(1)〜121(k)を1ラインごとに順にスキャンし、当該サブフィールドで維持放電させる放電セルに対して、必要なデータ電極22に電圧パルス1003を印加し、スキャン電極121とデータ電極22との間で微小な放電(書き込み放電)を発生させる。
その後、維持期間T3において、全放電セルのサステイン電極122及びスキャン電極121に対し、電圧パルス1001、1002を印加し、書き込み期間T2で選択された放電セルにおいて維持放電が発生する。ここで、維持期間T3において印加される電圧パルス1001、1002は180〜200Vの矩形波電圧であり、互いに同一の周期を有し、且つ、その位相が半周期ごとにずれている。当該期間中には、電圧パルス1001、1002に同期してデータ電極22にも電圧パルス1003が印加される。なお、データ電極22の電圧パルス1003はスキャン電極121及びサステイン電極122の電圧パルス1001、1002のパルス幅よりも狭いパルス幅を有していることが好ましく、その電圧パルス1003の立ち上げ時期は他の電圧パルス1001、1002の立ち上げ時期又は立下り時期と一致していなくても構わない。
スキャン電極22とサステイン電極23の各々には、このようにして各期間T1〜T3ごとに波形が設定された各電圧パルス1001、1002が印加される。PDP100では、書き込みがなされた放電セルにおいて、維持期間T3における電圧の印加により維持放電が発生する。この維持放電により発生する紫外線が蛍光体25により可視光変換されて画像が表示される。
(本実施形態の優位性)
このようにして駆動されるPDP100を備えるPDP装置が得られる有効性について説明する。
放電空間を臨む保護膜14が、(100)配向結晶体及び(111)配向結晶体のように少なくとも2種類の配向結晶体からなる状態の場合、(111)配向結晶体は(100)配向結晶体よりも耐スパッタ性及び2次電子放出係数が高いため、主に(100)配向結晶体で形成されている保護膜を利用する場合よりもPDP100の放電性能が向上し、消費電力も低減される。
そこで、保護膜14を形成している電子放出特性の異なる2つの配向結晶のそれぞれの占有比率を調整することで、PDP100の放電特性も調整できることを図5を用いて示す。図5は、保護膜14の表面積に対する(111)配向結晶体が占める割合(以下、「占有率」と記す。)を横軸に示し、縦軸にPDP100の放電応答時間の相対比(以下、「時間相対比」と記す。)を示している。放電応答時間は、書き込み期間において、データ電極22とスキャン電極121又はサステイン電極122とに電圧印加してから放電が発生するまでの時間である。また、時間相対比は、主に(100)配向のみからなる保護膜利用時の放電発光について100回実験したデータの平均値を基準とした放電応答時間の相対比である。
図5から、占有率が増えると時間相対比が小さくなる、つまり、放電応答時間が速くなることが分かる。特に、占有率が20%付近では、0%の場合と比較して時間相対比が約0.5倍となり、放電応答速度は約2倍となる。このように、放電応答速度が増すと、PDP装置において例えば画像表示の高精細化を図るために高速駆動が行われたとしても、電圧印加からかなり遅れて放電が発生するような、所謂、放電遅れなどの解消にも繋がることとなり、大きな効果を得ることができる。しかし、当該グラフにおいては、その傾きは占有率が0〜約20%の範囲においては急峻な形状を示しており、この範囲内では占有率の微小な違いによりPDP100の時間相対比の値も大きく影響を受けてしまう。これは、放電応答速度の制御という観点からするとあまり好ましくはない。一方、占有率が100%となる場合において、時間相対比は0.1よりも小さく、放電応答速度はかなり大きく増すが、この(111)配向結晶体は(100)配向結晶体と比較して壁電荷を保持する性能の点では劣っており、書き込み放電時に素早く放電が発生すると、壁電荷が保護膜14の表面に形成された場合でも発光に直接関与する維持放電時には、選択された領域に壁電荷が保持されておらず、確実な画像表示を行うことが困難となる。また、実際の保護膜14の形成工程において、常時、安定した条件及び設備環境によって100%の占有率を有する保護膜14を形成することは困難な点を考慮すると、保護膜14における占有率は90%以下、特に、80%以下であることが好ましい。
以上の点により、PDP100における安定した画像表示を行うために、保護膜14の占有率は、20〜80%の範囲内であると考えられる。
また、本発明者らの上記配向結晶のX線強度測定実験により、配向結晶全体における(111)配向結晶体の占めるX線ピーク強度の比率が、20〜80%の範囲内においても、同様にして放電応答時間を適切な範囲内に収めることができ、放電開始電圧も低減されることが分かった。
その他にも、上述した2種類の配向結晶は、それぞれ成長速度が異なるため、形成される保護膜14の表面は凹凸形状(図2拡大図参照)を有する。この形成された保護膜14表面の中心線平均粗さは20nm〜200nmの範囲内であり、主に(100)配向結晶体のみ、もしくは(111)配向結晶体のみから形成されるような従来の場合における中心線平均粗さ(20nm)よりも大きな値を示す。また、散在される結晶粒子の径が大きい場合には成膜厚さに重畳されることとなるので、保護膜14の表面における中心線平均粗さはさらに大きくなる。このように、中心線平均粗さが40nm以上、特に100nm以上となれば、保護膜14の表面積は上記従来の保護膜表面よりも大きくなるため、保護膜14の2次電子放出係数が向上し、PDP100の消費電力の低減に繋がる。
本実施形態のような(100)及び(111)配向結晶の構成を採ることにより、保護膜14の不純物吸着性の点においても優位性を持つ。例えば、棒状結晶体14bが集中的に分布されているような場合には、当該分布領域における保護膜密度が疎となってしまい、不純物が吸着しやすい状態を形成することとなる。しかし、当該保護膜14のように、(100)及び(111)配向結晶体が、局所集中的に分布されることなく、所望の領域に均等に分布されていることにより、保護膜密度が疎とならず不純物吸着を抑制することができる。特に、積層結晶体14a部分が、複数の結晶粒子が重畳して結晶成長してなる場合にはさらに当該有効性が増すこととなるので好ましい。
そして、本実施形態における保護膜14の形成方法は、上記散布方式などのように簡易な方法を用いているため、ほぼ均一に、且つ、所定の面密度で結晶粒子1400bを散布させることができるので有益である。
(実施例2)
次に、(実施例1)とは異なる保護膜14の構成について説明する。なお、以下では(実施例1)と異なる部分についてのみ説明し、他の部分に関しては省略している。
本実施例におけるPDP100のXZ断面図が図6に示されている。
本実施例における保護膜140の構成は、誘電体層13上に共に約300nmの膜厚であるMgOの第1保護膜141と、第2保護膜142が順次積層されたものである。
第1保護膜141は主に(100)配向の配向結晶体として形成される。第2保護膜142は図示されるように、積層結晶140aと棒状結晶140bによって形成される。この積層結晶140aと棒状結晶140bは第1保護膜141上において、それぞれの結晶粒子が(実施例1)の場合と同様、保護膜140において均等に分布されて結晶成長してなるものである。このようにして放電空間を臨む領域では、主に2種類の配向結晶によって保護膜140が形成され、さらに緻密に結晶成長して形成された保護膜141が当該保護膜140における下層部分として存在しているため、保護膜140における2次電子放出係数の向上に繋がる。なお、保護膜140の厚みに関しては、(実施例1)と同様、100nm〜1μmの間で調整しても構わない。また、(111)配向結晶体の占める面積割合も20〜80%の範囲内において同様に調整可能である。
(その他の事項)
本発明に係るガス放電表示装置及びその駆動方法に関しては、上記内容に限定するものではない。例えば、本実施形態においては、(111)配向結晶体が(100)配向結晶体を貫通する構成となっているが、逆の構成として、(100)配向結晶体が(111)配向結晶体を貫通する構成であっても構わない。また、保護膜を形成する主な結晶粒子の配向は、(111)及び(100)の組み合わせだけでなく、他の組み合わせであっても構わない。
(111)配向結晶体のように鉛直方向に結晶成長させた配向結晶を利用しているが、その結晶成長の方向は、例えば斜め方向として保護膜表面を凹凸形状とするように、他の方向を採ったとしても構わない。
また、上記実施形態では、ガス放電表示装置の一例としてPDP装置を用いたが、本発明は空間内で放電を生じさせて画像表示に寄与させているメカニズムを有しているような他の装置にも適用可能である。
本発明に係るガス放電表示装置は、大型、且つ、高精細な表示装置などを用いる映像機器産業、宣伝機器産業やその他の産業分野に利用することができ、その産業利用性は大きい。
本実施形態に係るPDPの展開斜視図である。 本実施形態に係るPDPのYZ断面図及びXZ断面図である。 本実施形態に係る保護膜の製造を示す工程図である。 本実施形態に係るPDP装置の駆動において、各電極への電圧印加のタイミングチャートである。 本実施形態に係る保護膜における(111)配向結晶体の面積率に対応する放電応答時間相対比を示すグラフである。 実施例2に係るPDPのXZ断面図である。
符号の説明
10 前面パネル
11 前面基板
12 表示電極対
13 誘電体層
14 保護膜
20 背面パネル
21 背面基板
22 データ電極
23 誘電体層
24 隔壁
25 蛍光体層
100 PDP
121 スキャン電極
122 サステイン電極
121a、122a 透明電極
121b、122b バス電極

Claims (15)

  1. 放電空間を挟んで対向配置された一対の基板の内、一方の基板上に複数の電極とこれを覆うように誘電体層が配設され、さらに前記誘電体層上に、放電空間を臨む保護膜が積層されてなるガス放電表示装置であって、
    前記保護膜は、結晶成長されてなる2種類の配向結晶体を含み、且つ、
    前記2種類の配向結晶体は、前記電極の配設位置上の前記保護膜領域において、共に前記放電空間を臨む状態で散在している
    ことを特徴とするガス放電表示装置。
  2. 前記2種類の配向結晶体は、前記誘電体層の表面から前記放電空間を臨む表面まで結晶成長されてなる
    ことを特徴とする請求項1に記載のガス放電表示装置。
  3. 放電空間を挟んで対向配置された一対の基板の内、一方の基板上に複数の電極とこれを覆うように誘電体層が配設され、さらに前記誘電体層上に、放電空間を臨む保護膜が積層されてなるガス放電表示装置であって、
    前記保護膜は、誘電体層上に形成される第1の保護膜部と、前記放電空間を臨む第2の保護膜部とが順次積層された構成を有し、
    前記第2の保護膜部は、結晶成長されてなる2種類の配向結晶体を含み、
    前記2種類の配向結晶体は、前記電極の配設位置上の前記保護膜領域において、共に前記放電空間を臨む状態で散在している
    ことを特徴とするガス放電表示装置。
  4. 前記2種類の配向結晶体は、前記第1の保護膜部の表面から前記放電空間を臨む表面まで結晶成長されてなる
    ことを特徴とする請求項3に記載のガス放電表示装置。
  5. 前記2種類の配向結晶体の内の一方は、(100)配向を有し、他方は(111)配向を有している
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のガス放電表示装置。
  6. 前記保護膜表面における(111)配向の配向結晶体が占める面積割合は、20%以上80%以下の範囲内である
    ことを特徴とする請求項5に記載のガス放電表示装置。
  7. 前記保護膜全体のX線波形における(111)配向の配向結晶体が占めるX線ピーク強度の比率は、20%以上80%以下の範囲内である
    ことを特徴とする請求項5に記載のガス放電表示装置。
  8. 前記配向結晶体の内の少なくとも1つの配向をもつ結晶体は、他の配向性をもつ結晶体より大きな単結晶構造を有している
    ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のガス放電表示装置。
  9. 放電空間を臨む前記保護膜の表面は、中心線平均粗さが40nm以上200nm以下である
    ことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のガス放電表示装置。
  10. 放電空間を臨む前記保護膜の表面は、中心線平均粗さが100nm以上200nm以下である
    ことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のガス放電表示装置。
  11. 前記保護膜は、少なくとも金属酸化物材料を含んでなる
    ことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のガス放電表示装置。
  12. 前記保護膜は、酸化マグネシウムからなる
    ことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のガス放電表示装置。
  13. 放電空間を挟んで対向配置される一対の基板の内、一方の基板上に形成されている複数の電極を覆う誘電体層の上に保護膜が積層されてなるガス放電表示装置の製造方法であって、
    前記保護膜の形成ステップは、
    前記誘電体層上に単結晶構造をもつ種結晶粒子を少なくとも1種類散在させる第1サブステップと、
    前記第1サブステップの後に、前記結晶粒子と同じ配向を有する配向結晶体を含み、且つ、少なくとも2種類の配向結晶を前記基板の厚み方向に成長させる第2サブステップとによってなる
    ことを特徴とするガス放電表示装置の製造方法。
  14. 前記第1サブステップは、散布法、スプレー法、印刷法、分散堆積法、転写法及び電着法の内の少なくとも1種を含む方法によってなされる
    ことを特徴とする請求項13に記載のガス放電表示装置の製造方法。
  15. 前記第2サブステップは、少なくとも(100)配向及び(111)配向を有するMgOを結晶成長させる
    ことを特徴とする請求項13に記載のガス放電表示装置の製造方法。
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