JP4476173B2 - ガス放電表示パネル - Google Patents
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Description
AC型PDPは、複数の電極(表示電極またはアドレス電極)とこれを覆うように誘電体層を配した2枚の薄いパネルガラス(フロントパネルガラスとバックパネルガラス)の表面を、複数の隔壁を介して対向させ、当該複数の隔壁の間に蛍光体層を配し、マトリクス状に放電セル(サブピクセル)を形成した状態で、両パネルガラスの間に放電ガスを封入した構成を持つ。フロントパネルガラスの表示電極を覆う誘電体層の表面には保護層(膜)が形成される。
ここで、前記フロントパネルガラスの誘電体層を覆う保護層は、誘電体層を放電時のイオン衝撃から保護するために形成され、且つ放電空間に接した陰極電極材料としても機能するので、その膜質が放電特性に大きな影響を与える。当該保護層の材料としては、二次電子放出係数が大きく、これを用いることで放電開始電圧Vfが低減され、且つスパッタ耐性が高い性能を有していることから、酸化マグネシウム(MgO)が母材として広く用いられている。MgOを用いた保護層は、アドレス期間における放電(以下、「アドレス放電」と記す。)によって生じた電荷を保持して維持期間における放電(以下、「維持放電」と記す。)に寄与させることで放電開始電圧を低減させる効果がある。さらに、2次電子を効率良く放出するのでPDPの駆動に係る消費電力の低減にも有利である。当該保護層は通常、真空蒸着法により0.5〜1μm程度の膜厚に成膜されている。
具体的には、例えば特許文献2に示すように、保護層の母材であるMgOの結晶に対し、所定濃度の希ガス原子を添加する構成が開示されている。当該構成によれば、駆動中に当該結晶中に含まれた希ガス原子が放電空間中に拡散し、放電空間内に充填された別の希ガス原子の電離を容易化して放電に寄与する、いわゆるペニング効果が発揮される。このような方法によれば、純粋なMgO結晶からなる保護層に比べ、ある程度、放電開始電圧の低減が図れることが明らかになっている。
本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、保護層を改質することにより、従来に比べて良好に低消費電力化を実現することが可能なガス放電表示パネルを提供することにある。
ここで前記保護層は、さらに前記母材に対し、10質量ppm以上500質量ppm未満のGe原子が添加物として分散されてなる構成とすることができる。
また、前記保護層は、前記希ガス原子として、200質量ppmのAr原子を含む構成とすることもできる。
ここで前記保護層は、前記希ガス原子として、200質量ppmのAr原子を含む構成とすることもできる。
また、本発明における前記希ガス原子は、Ar原子とすることができる。
すなわち、本発明は保護層に添加された添加物が駆動時に放電空間に拡散させることでペニング効果を得るものではなく、保護層におけるMgOの結晶構造に分散された状態を維持し、保護層全体でのエネルギー準位において、価電子帯と伝導帯との間に別途エネルギー準位が形成される。このエネルギー準位により、経時的に安定な電子のリザーバー作用がなされて二次電子放出係数の向上がなされ、結果的にPDPの消費電力の低減が効果的に図られるようになっている。
<実施の形態1>
1−1.PDPの構成
図1は、本発明の実施の形態1に係るAC型PDP1の主要構成を示す部分的な断面斜視図である。図中、z方向がPDP1の厚み方向、xy平面がPDP1のパネル面に平行な平面に相当する。PDP1は、ここでは一例として42インチクラスのNTSC仕様に合わせた仕様にしているが、本発明のPDPは、当然ながらXGAやSXGA等、この他の仕様・サイズに適用してもよい。
フロントパネル10の基板となるフロントパネルガラス11には、その一方の主面に複数対の表示電極12、13(スキャン電極12、サステイン電極13)が形成されている。各表示電極12、13は、ITOまたはSnO2等の透明導電性材料からなる帯状の透明電極120、130(厚さ0.1μm、幅150μm)に対して、Ag厚膜(厚み2μm〜10μm)、アルミニウム(Al)薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等からなるバスライン121、131(厚さ7μm、幅95μm)が積層されてなる。このバスライン121、131によって透明電極120、130のシート抵抗が下げられる。
バックパネル16の基板となるバックパネルガラス17には、その一方の主面にAg厚膜(厚み2μm〜10μm)、アルミニウム(Al)薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等からなる幅60μmの複数のアドレス電極18が、x方向を長手方向としてy方向に一定間隔毎(360μm)でストライプ状に並設され、このアドレス電極18を内包するようにバックパネルガラス17の全面にわたって厚さ30μmの誘電体膜19がコートされている。
フロントパネル10とバックパネル16は、アドレス電極18と表示電極12、13の互いの長手方向が直交するように対向させながら配置され、両パネル10、16の外周縁部をガラスフリットで封着されている。この両パネル10、16間にはHe、Xe、Neなどの不活性ガス成分からなる放電ガス(封入ガス)が所定の圧力(通常53.2kPa〜79.8kPa程度)で封入されている。
上記構成のPDP1は、不図示の駆動部によって、一対の表示電極12、13の間隙には数十kHz〜数百kHzのAC電圧が印加されることにより、セルSU内で放電を発生させ、励起されたXe原子からの紫外線によって蛍光体層21〜23を励起し可視光発光するように駆動される。
初期化期間とは、それ以前のセルの点灯による影響(蓄積された壁電荷による影響)を防ぐため、画面全体の壁電荷の消去(初期化放電)を行う期間である。当図2に示す波形例では、すべての表示電極12、13に放電開始電圧Vfを超える正極性の下りランプ波形のリセットパルスを印加する。これとともに、バックパネル16側の帯電とイオン衝撃を防ぐために、すべてのアドレス電極18に正極性パルスを印加する。印加パルスの立ち上がりと立ち下がりの差動電圧によって、すべてのセルで弱い面放電である初期化放電が生じ、すべてのセルにおいて壁電荷が蓄積され、画面全体が一様な帯電状態となる。
なお初期化期間およびアドレス期間の長さは、輝度の重みに関わらず一定であるが、放電維持期間の長さは輝度の重みが大きいほど長い。つまり、各サブフィールドの表示期間の長さは互いに異なる。
このような保護層の構成とすることによって、当該保護層の改質を行い、二次電子放出係数および電子保持力の向上を図ることで、従来構成に比べて放電開始電圧の低減効果が得られ、結果として、PDPの消費電力の低減が実現されるようになっている。
<実施の形態1の特徴および効果について>
PDPの消費電力の低減対策とする保護層の改質については、特許文献1〜4等に記載されているように、駆動時のアドレス期間において、アドレスミスに基づく黒ノイズの発生や、放電遅れなどの対策が講じられているが、いずれも有効な効果が得難い実情にある。これに対し本発明では、保護層のMgOに所定量の希ガス原子と水素原子を分散させることによって、後述の図3に示すように従来に比べて飛躍的に放電開始電圧を低減させることが可能となっている。
しかしながら本願発明者らが検討した結果、保護層にHを添加するだけでは膜密度が低下し、耐スパッタ性が低下することが分かった。本発明は当該技術とは異なり、保護層に対してHを添加するだけでなく、さらに希ガス原子を添加することによって、膜密度の低下を防止している。
[数1] n = (1−p)nν+ pns
n:膜の屈折率
nν:空間材料の屈折率(通常は空気)
ns:バルクの屈折率(単結晶の値を使用)
p:膜密度
この数1によれば、緻密な膜ほど屈折率が高くなるので、耐スパッタ性が優れていることが言える。
(保護層の形成方法について)
ここでは、本実施の形態に係る保護層15の形成方法の一例について説明する。
例えば、水素処理チャンバ内で基板をヒーターにより100〜300℃に加熱し、真空度が1×10-4〜7×10-4Paになるまでチャンバ内を排気する。その後、真空度が6×10-1Paになるように調整しながらアルゴンガスを導入する。次いで、水素ガスを1×10-5〜6×10-5m3/minの流量で導入しながら、高周波電源により13.56MHzの高周波を印加して水素処理チャンバ内に放電を発生させる。
なお、このような処理を行ってもH原子はMgOの結晶構造に対して十分に小さいため、例えば保護層の表面等に偏在することなく、層全体に拡散させることができる。
なお、このとき、成膜時の電子ビーム電流量、酸素分圧量、基板温度等は直接本発明の構成に影響を及ぼすことがないため、従来の設定条件に適応させることが可能となる。
ところで、保護層の形成方法に関しては上記方法に限定されず、例えば、成膜チャンバー内において水素を含むプラズマ処理を行いながら、MgOとGe原子とが混合された蒸着源を電子ビームガンによって加熱して形成する方法でも構わない。
以上の方法により保護層15を成膜することができる。
(本実施の形態に関する比較実験及び実験結果について)
次に、本発明の実施例を作製し、当該実施例を比較例とともに性能比較実験した。この実験結果について以下に説明する。
(比較例1):MgOからなる母材に対して、希ガス原子やH原子などの不純物添加を行わない保護層を構成した。
(比較例2):MgOからなる母材に対して、Ar原子が200質量ppmで添加された保護層を構成した。
(実施例2):MgOからなる母材に対して、Ar原子が200質量ppm、Geが50質量ppm添加された保護層を用いた。
(実施例3):MgOからなる母材に対して、Ar原子が200質量ppm、H原子が1500質量ppm、Geが50質量ppm添加された保護層を用いた。
(実施例5):MgOからなる母材に対して、Ar原子が200質量ppm、H原子が10000質量ppm添加された保護層を用いた。
(実施例6):MgOからなる母材に対して、Ar原子が200質量ppm、Geが10質量ppm添加された保護層を用いた。
維持放電開始電圧を測定するにあたり、まず各々の保護膜を用いて13inchパネルを作製した。
なお、パネルに封入した放電ガスのXe分圧は15%とした。
<実験結果と考察>
各パターンにおいて、PDP装置を駆動させたときの各保護層の維持放電開始電圧は図4で示す通りである。
また、Ar原子を200質量ppm添加した比較例2の保護層の場合は、その放電開始電圧が329.7Vとなり、比較例1に対して約21.8V低下した。
一方、実施例1のように200質量ppmのAr原子と1500質量ppmの水素を添加した保護層を用いた場合は、放電開始電圧がさらに低下して321Vとなり、比較例1に対して30.5V低下した。次に実施例2のように200質量ppmのAr原子と50質量ppmのGe原子を添加した保護層を用いた場合は、放電開始電圧は319Vとなり、比較例1に対して32.5V低下することが分かった。
同様にAr原子が200質量ppm、H原子が5000質量ppm添加された保護層を持つ実施例4と、Ar原子が200質量ppm、H原子が10000質量ppm添加された保護層を持つ5では、比較例1に対して、それぞれ25.3V、24.4Vの放電開始電圧の低減効果が確認された。
ところで、H原子の濃度が300質量ppm以下になると、水素の添加効果がほとんど現れず、逆に10000質量ppm以上になると保護層の絶縁性が低下してしまうので好ましくないことが分かっている。Ar原子とGe原子についてはそれぞれ10質量ppm、10質量ppm以下になると、ArやGeの添加効果がほとんど現れず、逆にそれぞれ1000質量ppm、および500質量ppm以上になると保護層の結晶性が低下し、かえって放電開始電圧が高くなるので好ましくない。
10 フロントパネル
12 スキャン電極
13 サステイン電極
15 保護層
18 アドレス電極
Claims (7)
- 表面に誘電体層および保護層が順次積層されたパネルを備えるガス放電表示パネルであって、
前記保護層は、金属酸化物からなる母材に対し、10質量ppm以上1000質量ppm未満の希ガス原子と、300質量ppm以上10000質量ppm以下のH原子とが分散されてなる
ことを特徴とするガス放電表示パネル。 - 前記保護層は、さらに前記母材に対し、10質量ppm以上500質量ppm未満のGe原子が添加物として分散されてなる構成である
ことを特徴とする請求項1に記載のガス放電表示パネル。 - 前記保護層は、前記希ガス原子として、200質量ppmのAr原子を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のガス放電パネル。 - 表面に誘電体層および保護層が順次積層されたパネルを備えるガス放電表示パネルであって、
前記保護層は、金属酸化物からなる母材に対し、10質量ppm以上1000質量ppm未満の希ガス原子と、10質量ppm以上500質量ppm未満のGe原子とが分散されてなる
ことを特徴とするガス放電表示パネル。 - 前記保護層は、前記希ガス原子として、200質量ppmのAr原子を含む
ことを特徴とする請求項4に記載のガス放電パネル。 - 前記希ガス原子はAr原子である
ことを特徴とする請求項1、2、4のいずれかに記載のガス放電表示パネル - 前記金属酸化物は、MgO、SrO、CaO、BaO、La2O3、CeO2の少なくともいずれかである
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のガス放電表示パネル。
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