JP4476173B2 - ガス放電表示パネル - Google Patents

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Description

本発明は、プラズマディスプレイパネルなどのガス放電表示パネル及びその製造方法に関し、特に保護層の構成及びその形成方法に関する。
ガス放電表示パネルは、ガス放電による紫外線を励起発光させて画像表示する表示装置であり、代表的なパネルとしてプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」と記す。)がある。PDPは、交流(AC)型と直流(DC)型に大別されるが、AC型が輝度、発光効率、寿命などの点で優れ、広く普及している。
AC型PDPは、複数の電極(表示電極またはアドレス電極)とこれを覆うように誘電体層を配した2枚の薄いパネルガラス(フロントパネルガラスとバックパネルガラス)の表面を、複数の隔壁を介して対向させ、当該複数の隔壁の間に蛍光体層を配し、マトリクス状に放電セル(サブピクセル)を形成した状態で、両パネルガラスの間に放電ガスを封入した構成を持つ。フロントパネルガラスの表示電極を覆う誘電体層の表面には保護層(膜)が形成される。
PDPでは、駆動時にはいわゆるフィールド内時分割階調表示方式に基づき、前記複数の電極に適宜給電して放電ガス中で放電を得ることにより蛍光発光させる。具体的には、PDPの駆動時はまず表示するフレームを複数のサブフレームに分け、各サブフレームをさらに複数の期間に分ける。各サブフレームでは、初期化期間で画面全体の壁電荷を初期化(リセット)した後、アドレス期間で点灯すべき放電セルのみに壁電荷を蓄積させるアドレス放電を行い、その後の放電維持期間ですべての放電セルに対して一斉に交流電圧(サステイン電圧)を印加することによって一定時間放電維持する。PDPで行われる各放電は確率現象に基づいて生じるため、個々の放電セルで放電が発生する率(放電確率と呼ばれる)が基本的にバラツキを有する性質を持つ。したがってこの性質によれば、例えばアドレス放電は、これを実行する印加パルス幅に比例して放電確率を高めることができることになる。
PDPの一般的な構成については、例えば特許文献1等に開示されている。
ここで、前記フロントパネルガラスの誘電体層を覆う保護層は、誘電体層を放電時のイオン衝撃から保護するために形成され、且つ放電空間に接した陰極電極材料としても機能するので、その膜質が放電特性に大きな影響を与える。当該保護層の材料としては、二次電子放出係数が大きく、これを用いることで放電開始電圧Vfが低減され、且つスパッタ耐性が高い性能を有していることから、酸化マグネシウム(MgO)が母材として広く用いられている。MgOを用いた保護層は、アドレス期間における放電(以下、「アドレス放電」と記す。)によって生じた電荷を保持して維持期間における放電(以下、「維持放電」と記す。)に寄与させることで放電開始電圧を低減させる効果がある。さらに、2次電子を効率良く放出するのでPDPの駆動に係る消費電力の低減にも有利である。当該保護層は通常、真空蒸着法により0.5〜1μm程度の膜厚に成膜されている。
ところで、近年のディスプレイデバイスにおける高精細化・大画面化の傾向に伴い、PDPにおいてもさらに消費電力の低減が臨まれるようになっている。この要望により、保護層においても改質を行い、放電開始電圧Vfを低減することで、消費電力の低減を図る対策がなされている。
具体的には、例えば特許文献2に示すように、保護層の母材であるMgOの結晶に対し、所定濃度の希ガス原子を添加する構成が開示されている。当該構成によれば、駆動中に当該結晶中に含まれた希ガス原子が放電空間中に拡散し、放電空間内に充填された別の希ガス原子の電離を容易化して放電に寄与する、いわゆるペニング効果が発揮される。このような方法によれば、純粋なMgO結晶からなる保護層に比べ、ある程度、放電開始電圧の低減が図れることが明らかになっている。
また、特許文献3及び4には、保護層にGe或いは水素を添加剤として分散させ、保護層の改質を行う技術が開示されている。当該技術によれば、保護層の電子放出能力を向上させることで放電遅れ時間を短縮し、書込不良を低減することができるとされている。
特開平9−92133号公報 特開2002−358898号公報 特開2002−33053号公報 特開2004−31264号公報
しかしながら、本発明者らの鋭意検討によれば、上記各種の従来技術を用いても、十分な消費電力の低減効果を図ることは困難であることが分かった。すなわち、従来技術によるペニング効果の向上、或いは保護層の二次電子放出係数の改善や放電遅れの防止効果は、一定の効果は得られるものの、実際にPDPにおいて有効な消費電力の低減に至るには、さらなる改良の余地が残されている。
具体的には、PDPの低消費電力化を図るために例えば放電ガス中のXe分圧を高めるという手段が用いられる。そうすることによって発光効率は改善するけれども、その一方で放電開始電圧が上昇してしまうという問題がある。したがってより効果的な低消費電力化を実現するには高Xe分圧下でも放電開始電圧が上昇しないようにする必要がある。
本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、保護層を改質することにより、従来に比べて良好に低消費電力化を実現することが可能なガス放電表示パネルを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は、表面に誘電体層および保護層が順次積層されたパネルを備えるガス放電表示パネルであって、前記保護層は、金属酸化物からなる母材に対し、10質量ppm以上1000質量ppm未満の希ガス原子と、300質量ppm以上10000質量ppm以下のH原子とが分散されてなる構成とした。
ここで前記保護層は、さらに前記母材に対し、10質量ppm以上500質量ppm未満のGe原子が添加物として分散されてなる構成とすることができる。
また、前記保護層は、前記希ガス原子として、200質量ppmのAr原子を含む構成とすることもできる。
また本発明は、表面に誘電体層および保護層が順次積層されたパネルを備えるガス放電表示パネルであって、前記保護層は、金属酸化物からなる母材に対し、10質量ppm以上1000質量ppm未満の希ガス原子と、10質量ppm以上500質量ppm未満のGe原子とが分散されてなる構成を有するものとした。
ここで前記保護層は、前記希ガス原子として、200質量ppmのAr原子を含む構成とすることもできる。
また、本発明における前記希ガス原子は、Ar原子することができる。
さらに前記金属酸化物としては、MgO、SrO、CaO、BaO、La、CeOの少なくともいずれかとすることもできる。
本発明は、ガス放電表示パネルの保護層において、金属酸化物からなる母材に対し、10質量ppm以上1000質量ppm未満の希ガス原子と、300質量ppm以上10000質量ppm以下のH原子とが分散されてなる構成とすることにより、従来に比べて飛躍的に放電開始電圧を低減させることが可能となっている。
すなわち、本発明は保護層に添加された添加物が駆動時に放電空間に拡散させることでペニング効果を得るものではなく、保護層におけるMgOの結晶構造に分散された状態を維持し、保護層全体でのエネルギー準位において、価電子帯と伝導帯との間に別途エネルギー準位が形成される。このエネルギー準位により、経時的に安定な電子のリザーバー作用がなされて二次電子放出係数の向上がなされ、結果的にPDPの消費電力の低減が効果的に図られるようになっている。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
<実施の形態1>
1−1.PDPの構成
図1は、本発明の実施の形態1に係るAC型PDP1の主要構成を示す部分的な断面斜視図である。図中、z方向がPDP1の厚み方向、xy平面がPDP1のパネル面に平行な平面に相当する。PDP1は、ここでは一例として42インチクラスのNTSC仕様に合わせた仕様にしているが、本発明のPDPは、当然ながらXGAやSXGA等、この他の仕様・サイズに適用してもよい。
図1に示すように、PDP1の構成は、互いに主面を対向させて配設されたフロントパネル10およびバックパネル16に大別される。
フロントパネル10の基板となるフロントパネルガラス11には、その一方の主面に複数対の表示電極12、13(スキャン電極12、サステイン電極13)が形成されている。各表示電極12、13は、ITOまたはSnO等の透明導電性材料からなる帯状の透明電極120、130(厚さ0.1μm、幅150μm)に対して、Ag厚膜(厚み2μm〜10μm)、アルミニウム(Al)薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等からなるバスライン121、131(厚さ7μm、幅95μm)が積層されてなる。このバスライン121、131によって透明電極120、130のシート抵抗が下げられる。
表示電極12、13を配設したフロントパネルガラス11には、当該ガラス11の主面全体にわたって、酸化鉛(PbO)または酸化ビスマス(Bi)または酸化燐(PO)を主成分とする低融点ガラス(厚み20μm〜50μm)の誘電体層14が、マスクスクリーン印刷法等によって形成されている。誘電体層14は、AC型PDP特有の電流制限機能を有しており、DC型PDPに比べて長寿命化を実現する要素になっている。誘電体層14の表面には、厚さ約1.0μmの保護層15がコートされている。
ここで、本実施の形態1の特徴は保護層15の構成にあるが、これについては詳細を後述する。
バックパネル16の基板となるバックパネルガラス17には、その一方の主面にAg厚膜(厚み2μm〜10μm)、アルミニウム(Al)薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等からなる幅60μmの複数のアドレス電極18が、x方向を長手方向としてy方向に一定間隔毎(360μm)でストライプ状に並設され、このアドレス電極18を内包するようにバックパネルガラス17の全面にわたって厚さ30μmの誘電体膜19がコートされている。
誘電体膜19の上には、さらに隣接するアドレス電極18の間隙に合わせて隔壁20(高さ約150μm、幅40μm)が配設され、隣接する隔壁20によってセルSUが区画され、x方向での誤放電や光学的クロストークの発生を防ぐ役割をしている。そして隣接する2つの隔壁20の側面とその間の誘電体膜19の面上には、カラー表示のための赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のそれぞれに対応する蛍光体層21〜23が形成されている。
なお、誘電体膜19を用いずにアドレス電極18を直接蛍光体層21〜23で内包するようにしてもよい。
フロントパネル10とバックパネル16は、アドレス電極18と表示電極12、13の互いの長手方向が直交するように対向させながら配置され、両パネル10、16の外周縁部をガラスフリットで封着されている。この両パネル10、16間にはHe、Xe、Neなどの不活性ガス成分からなる放電ガス(封入ガス)が所定の圧力(通常53.2kPa〜79.8kPa程度)で封入されている。
隣接する隔壁20間は放電空間24であり、隣り合う一対の表示電極12、13と1本のアドレス電極18が放電空間24を挟んで交叉する領域が、画像表示にかかるセル(「サブピクセル」とも言う。)SUに対応する。セルピッチはx方向が1080μm、y方向が360μmである。隣り合うRGB3つのセルSUで1画素(1080μm×1080μm)が構成される。
1−2.PDPの駆動方法について
上記構成のPDP1は、不図示の駆動部によって、一対の表示電極12、13の間隙には数十kHz〜数百kHzのAC電圧が印加されることにより、セルSU内で放電を発生させ、励起されたXe原子からの紫外線によって蛍光体層21〜23を励起し可視光発光するように駆動される。
その駆動方法例としては、いわゆるフィールド内時分割階調表示方式がある。当該方式は、表示するフィールドを複数のサブフィールドに分け、各サブフィールドをさらに複数の期間に分ける。各サブフィールドでは、初期化期間で画面全体の壁電荷を初期化(リセット)した後、アドレス期間で点灯すべき放電セルのみに壁電荷を蓄積させるアドレス放電を行い、その後の放電維持期間ですべての放電セルに対して一斉に交流電圧(サステイン電圧)を印加することによって一定時間放電維持することで発光表示するものである。
この駆動時において、前記駆動部では、各セルでの発光をON/OFFの2値制御によって階調表現するために、外部からの入力画像である時系列の各フィールドFを、例えば6個のサブフィールドに分割する。各サブフィールドにおける輝度の相対比率が例えば1:2:4:8:16:32となるように重み付けをして、各サブフィールドのサステイン(維持放電)の発光回数を設定する。
ここで図2は、本PDP1の駆動波形プロセスの一例である。当図2ではフィールド中の第m番目のサブフィールドの駆動波形を示している。当図2が示すように、各サブフィールドには、初期化期間、アドレス期間、放電維持期間、消去期間がそれぞれ割り当てられる。
初期化期間とは、それ以前のセルの点灯による影響(蓄積された壁電荷による影響)を防ぐため、画面全体の壁電荷の消去(初期化放電)を行う期間である。当図2に示す波形例では、すべての表示電極12、13に放電開始電圧Vfを超える正極性の下りランプ波形のリセットパルスを印加する。これとともに、バックパネル16側の帯電とイオン衝撃を防ぐために、すべてのアドレス電極18に正極性パルスを印加する。印加パルスの立ち上がりと立ち下がりの差動電圧によって、すべてのセルで弱い面放電である初期化放電が生じ、すべてのセルにおいて壁電荷が蓄積され、画面全体が一様な帯電状態となる。
アドレス期間は、サブフィールドに分割された画像信号に基づいて選択されたセルのアドレッシング(点灯/不点灯の設定)を行う期間である。当該期間では、スキャン電極12を接地電位に対して正電位にバイアスし、すべてのサステイン電極13を負電位にバイアスする。この状態で、パネル上部最先におけるライン(一対の表示電極に対応する横一列のセル)から1ラインずつ順に各ラインを選択し、該当するスキャン電極12に負極性のスキャンパルスを印加する。また、点灯すべきセルに対応したアドレス電極18に対して、正極性のアドレスパルスを印加する。これにより前記初期化期間での弱い面放電を受け継ぎ、点灯すべきセルのみでアドレス放電が行われ、壁電荷が蓄積される。
放電維持期間は、階調準位に応じた輝度を確保するために、アドレス放電により設定された点灯状態を拡大して放電維持する期間である。ここでは不要の放電を防止するため、全てのアドレス電極18を正極性の電位にバイアスし、全てのサステイン電極13に正極性のサステインパルスを印加する。その後、スキャン電極12とサステイン電極13とに対して交互にサステインパルスを印加し、所定期間放電を繰り返す。
消去期間では、スキャン電極12に漸減パルスを印加し、これによって壁電荷を消去させる。
なお初期化期間およびアドレス期間の長さは、輝度の重みに関わらず一定であるが、放電維持期間の長さは輝度の重みが大きいほど長い。つまり、各サブフィールドの表示期間の長さは互いに異なる。
PDP1ではサブフィールドで行われる各放電によって、Xeに起因する147nmに鋭いピークを有する共鳴線と、173nmを中心とする分子線からなる真空紫外線が発生する。この真空紫外線が各蛍光体層21〜23に照射され、可視光が発生する。そして、RGB各色ごとのサブフィールド単位の組み合わせにより、多色・多階調表示がなされる。
ここにおいて、本発明の特徴は保護層15の構成にある。本実施の形態におけるPDP1は、保護層15をとして、母材となるMgOに対し、希ガス原子を10ppm質量以上1000質量ppm以下、且つ水素原子を300ppm質量以上10000質量ppm以下の範囲で分散させた構造を持つ。
このような保護層の構成とすることによって、当該保護層の改質を行い、二次電子放出係数および電子保持力の向上を図ることで、従来構成に比べて放電開始電圧の低減効果が得られ、結果として、PDPの消費電力の低減が実現されるようになっている。
なお、上記構成では、保護層の母材としてMgOを用いる例を示したが、本発明はこれに限定せず、例えばSrO、CaO、BaO、La、CeO等の少なくともいずれかを用いる等、各種金属酸化物を用いることができる。
<実施の形態1の特徴および効果について>
PDPの消費電力の低減対策とする保護層の改質については、特許文献1〜4等に記載されているように、駆動時のアドレス期間において、アドレスミスに基づく黒ノイズの発生や、放電遅れなどの対策が講じられているが、いずれも有効な効果が得難い実情にある。これに対し本発明では、保護層のMgOに所定量の希ガス原子と水素原子を分散させることによって、後述の図3に示すように従来に比べて飛躍的に放電開始電圧を低減させることが可能となっている。
このような性能が得られる理由としては、本発明は保護層に添加された添加物が駆動時に放電空間に拡散させることでペニング効果を得るものではなく、もっぱら保護層におけるMgOの結晶構造に分散された状態を維持することにある。具体的には、保護層全体でのエネルギー準位において、価電子帯と伝導帯との間に別途エネルギー準位を存在させることにより、経時的に安定な電子のリザーバー作用がなされる。これにより、二次電子放出係数の向上がなされ、放電空間への二次電子の放出が容易になり、放電電圧(特に放電開始電圧Vfの低減)が図れるものと考えられる。
なお、特許文献3には、保護層に対しHを3at%(約1500質量ppmに相当)以上含有させるとプライミング完了電圧が低下する旨が開示されている。
しかしながら本願発明者らが検討した結果、保護層にHを添加するだけでは膜密度が低下し、耐スパッタ性が低下することが分かった。本発明は当該技術とは異なり、保護層に対してHを添加するだけでなく、さらに希ガス原子を添加することによって、膜密度の低下を防止している。
ここで、図3は各実施例(H原子とAr原子を含む保護膜)と膜密度との関係を示す図である。図3中「ref」は添加物を含まない比較例の酸化マグネシウム膜を示し、他の比較例として、H原子のみを含む酸化マグネシウム膜を記載している。なお、H原子のみを含む酸化マグネシウム膜についてのデータは、所定の計算(Ar原子のみを含む保護膜に対するAr原子及びH原子のいずれも含む保護膜の屈折率の低下の度合いを、ノンドープ(Ar原子を含まない)の保護膜の屈折率に掛けた値を水素添加膜の屈折率として算出する)によって得られたものである。
ここで、膜密度と屈折率には以下の関係(数1)があることが知られている。

[数1] n = (1−p)nν+ pns

n:膜の屈折率
nν:空間材料の屈折率(通常は空気)
ns:バルクの屈折率(単結晶の値を使用)
p:膜密度

この数1によれば、緻密な膜ほど屈折率が高くなるので、耐スパッタ性が優れていることが言える。
ここで、膜密度と保護膜の関係を示すデータ(図3)では、Ar原子とH原子を所定量分散させてなる保護膜において、高い膜密度が得られている。これにより、これらの実施例では屈折率が高くなり、良好な耐スパッタ性を有していると考えられる。なお、保護膜にH原子のみを分散させてなる構成や、保護膜に不純物を分散させない構成においては、このような膜密度の向上は余り高くなく、耐スパッタ性において実施例より劣ることが確認できる。特に、H原子のみを所定量分散させた構成は、酸化マグネシウムのみからなる比較例(ref)よりも性能が低い。
このように本発明では、酸化マグネシウムに単純にH原子を添加すると耐スパッタ性が損なわれるが、そこにさらにAr原子を添加することで、耐スパッタ性を向上させるようにした点に特徴を持つものである。
(保護層の形成方法について)
ここでは、本実施の形態に係る保護層15の形成方法の一例について説明する。
先ず、形成された誘電体層13の表面をターゲットとし、当該表面成膜を行うために、電子ビーム(EB)蒸着法を用いる。成膜に用いる蒸着源としては、例えばペレット状または粉末状のMgO、もしくはその焼結体を用いる。Geを添加する場合はペレット状のMgOに対し、ペレット状または粉末状のGe化合物を混合したものを用いるか、粉末状のMgOと粉末状のGe化合物とを混合したもの、あるいはその混合物の焼結体を用いる。このときのGe化合物の濃度は5質量ppm〜700質量ppmとする。
具体的には、酸素雰囲気中において、ピアス式電子ビームガンを加熱源として上記蒸着源を加熱し、さらに、基板表面に希ガスイオンを照射することで保護層を形成する。さらに保護層に水素を添加させる場合は、引き続いて成膜された保護層を、水素が含まれた雰囲気下でプラズマ処理を行う。
例えば、水素処理チャンバ内で基板をヒーターにより100〜300℃に加熱し、真空度が1×10-〜7×10-Paになるまでチャンバ内を排気する。その後、真空度が6×10-Paになるように調整しながらアルゴンガスを導入する。次いで、水素ガスを1×10-〜6×10-/minの流量で導入しながら、高周波電源により13.56MHzの高周波を印加して水素処理チャンバ内に放電を発生させる。
そして、この放電により水素を励起させてプラズマを発生させ、基板に成膜されている保護層を励起した水素に10分間程度曝すことにより保護層の水素処理を行う。
なお、このような処理を行ってもH原子はMgOの結晶構造に対して十分に小さいため、例えば保護層の表面等に偏在することなく、層全体に拡散させることができる。
なお、このとき、成膜時の電子ビーム電流量、酸素分圧量、基板温度等は直接本発明の構成に影響を及ぼすことがないため、従来の設定条件に適応させることが可能となる。
また、上記成膜方法としては、電子ビーム蒸着法に限らず、スパッタ法、イオンプレーティング法などを用いても構わない。
ところで、保護層の形成方法に関しては上記方法に限定されず、例えば、成膜チャンバー内において水素を含むプラズマ処理を行いながら、MgOとGe原子とが混合された蒸着源を電子ビームガンによって加熱して形成する方法でも構わない。
また、成膜チャンバー内において水素ボンベに連結されたイオン銃から水素イオンを照射しながら、MgOとGeとが混合された蒸着源を電子ビームガンによって加熱して形成する方法などでも構わない。
以上の方法により保護層15を成膜することができる。
(本実施の形態に関する比較実験及び実験結果について)
次に、本発明の実施例を作製し、当該実施例を比較例とともに性能比較実験した。この実験結果について以下に説明する。
各種実施例、比較例における保護層の構成は以下の通りとした。
(比較例1):MgOからなる母材に対して、希ガス原子やH原子などの不純物添加を行わない保護層を構成した。
(比較例2):MgOからなる母材に対して、Ar原子が200質量ppmで添加された保護層を構成した。
(実施例1):MgOからなる母材に対して、Ar原子が200質量ppm、H原子が1500質量ppm添加された保護層を用いた。
(実施例2):MgOからなる母材に対して、Ar原子が200質量ppm、Geが50質量ppm添加された保護層を用いた。
(実施例3):MgOからなる母材に対して、Ar原子が200質量ppm、H原子が1500質量ppm、Geが50質量ppm添加された保護層を用いた。
(実施例4):MgOからなる母材に対して、Ar原子が200質量ppm、H原子が5000質量ppm添加された保護層を用いた。
(実施例5):MgOからなる母材に対して、Ar原子が200質量ppm、H原子が10000質量ppm添加された保護層を用いた。
(実施例6):MgOからなる母材に対して、Ar原子が200質量ppm、Geが10質量ppm添加された保護層を用いた。
<実験条件>
維持放電開始電圧を測定するにあたり、まず各々の保護膜を用いて13inchパネルを作製した。
なお、パネルに封入した放電ガスのXe分圧は15%とした。
駆動条件としては、このパネルのスキャン電極―サステイン電極間にあらかじめ100回程度維持パルスを印加して、セル内の壁電荷の分布を安定させておき、その後スキャン電極―アドレス電極間で対向放電が生じないようにアドレス電極に適切な電圧を印加する。その状態でスキャン電極―サステイン電極間のセル内電圧(外部印加電圧+壁電圧)を測定し、これを維持放電開始電圧として測定した。
この実験結果を図4に示す。
<実験結果と考察>
各パターンにおいて、PDP装置を駆動させたときの各保護層の維持放電開始電圧は図4で示す通りである。
当図4によれば、先ず、比較例1のように不純物添加を行わないで形成された保護層を用いた場合、放電開始電圧は352.2Vとなった。
また、Ar原子を200質量ppm添加した比較例2の保護層の場合は、その放電開始電圧が329.7Vとなり、比較例1に対して約21.8V低下した。
一方、実施例1のように200質量ppmのAr原子と1500質量ppmの水素を添加した保護層を用いた場合は、放電開始電圧がさらに低下して321Vとなり、比較例1に対して30.5V低下した。次に実施例2のように200質量ppmのAr原子と50質量ppmのGe原子を添加した保護層を用いた場合は、放電開始電圧は319Vとなり、比較例1に対して32.5V低下することが分かった。
さらに実施例3のように200質量ppmのAr原子と1500質量ppmと50質量ppmのGeを添加した保護層153を用いた場合、放電開始電圧は317.2Vとなり、比較例1に対して、34.3V低下することが分かった。
同様にAr原子が200質量ppm、H原子が5000質量ppm添加された保護層を持つ実施例4と、Ar原子が200質量ppm、H原子が10000質量ppm添加された保護層を持つ5では、比較例1に対して、それぞれ25.3V、24.4Vの放電開始電圧の低減効果が確認された。
また、Ar原子が200質量ppm、Geが10質量ppm添加された保護層を持つ実施例6では、比較例1に対して、35.6Vの放電開始電圧の低減効果が確認できる。この実施例6と上記実施例2から、Ar原子が200質量ppmで存在する場合、Geが10質量ppmから50質量ppmの範囲で存在する場合において、これらと同様の高い効果が得られることが期待される。
このように実施例1〜6のような構成の保護層を用いることによって、放電開始電圧を大きく低下させることができ、PDP駆動の低消費電力化に対して非常に有効であることが伺える。
ところで、H原子の濃度が300質量ppm以下になると、水素の添加効果がほとんど現れず、逆に10000質量ppm以上になると保護層の絶縁性が低下してしまうので好ましくないことが分かっている。Ar原子とGe原子についてはそれぞれ10質量ppm、10質量ppm以下になると、ArやGeの添加効果がほとんど現れず、逆にそれぞれ1000質量ppm、および500質量ppm以上になると保護層の結晶性が低下し、かえって放電開始電圧が高くなるので好ましくない。
なお、保護層は基本的にPDP装置の駆動による放電に伴って徐々に削られてしまう傾向があるので、このような磨耗が生じる過程においても、得られる上記効果に関して経時的変化が発生しないようにするため、上記Ar原子、H原子、およびGe原子はMgOに対し分散された状態で含まれていることが好ましい。
本発明のガス放電表示パネルは、例えば交通機関・公共施設或いは家庭用のテレビジョン装置に用いられるPDPを用いた表示装置に利用することが可能である。
実施の形態1におけるPDPの構成を模式的に示す断面斜視図である。 PDPの駆動プロセス例を示す図である。 保護膜の膜密度についてのデータを示す図である。 本発明に係る保護層の効果についての確認実験の結果を示すグラフである。
符号の説明
1 PDP
10 フロントパネル
12 スキャン電極
13 サステイン電極
15 保護層
18 アドレス電極

Claims (7)

  1. 表面に誘電体層および保護層が順次積層されたパネルを備えるガス放電表示パネルであって、
    前記保護層は、金属酸化物からなる母材に対し、10質量ppm以上1000質量ppm未満の希ガス原子と、300質量ppm以上10000質量ppm以下のH原子とが分散されてなる
    ことを特徴とするガス放電表示パネル。
  2. 前記保護層は、さらに前記母材に対し、10質量ppm以上500質量ppm未満のGe原子が添加物として分散されてなる構成である
    ことを特徴とする請求項1に記載のガス放電表示パネル。
  3. 前記保護層は、前記希ガス原子として、200質量ppmのAr原子を含む
    ことを特徴とする請求項1に記載のガス放電パネル。
  4. 表面に誘電体層および保護層が順次積層されたパネルを備えるガス放電表示パネルであって、
    前記保護層は、金属酸化物からなる母材に対し、10質量ppm以上1000質量ppm未満の希ガス原子と、10質量ppm以上500質量ppm未満のGe原子とが分散されてなる
    ことを特徴とするガス放電表示パネル。
  5. 前記保護層は、前記希ガス原子として、200質量ppmのAr原子を含む
    ことを特徴とする請求項4に記載のガス放電パネル。
  6. 前記希ガス原子はAr原子である
    ことを特徴とする請求項1、2、4のいずれかに記載のガス放電表示パネル
  7. 前記金属酸化物は、MgO、SrO、CaO、BaO、La2O3、CeO2の少なくともいずれかである
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のガス放電表示パネル。
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