JP4369725B2 - プラズマディスプレイパネルとその製造方法 - Google Patents

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本発明は、プラズマディスプレイパネルとその製造方法に関し、特に誘電体層上を覆う酸化マグネシウムからなる保護層とその形成方法に関する。
プラズマディスプレイパネル(以下PDPという)とは、ガス放電で発生した紫外線によって蛍光体を励起発光させ、画像表示するガス放電パネルである。その放電の形成手法からPDPは交流(AC)型と直流(DC)型に分類することが出来るが、AC型は輝度、発光効率、寿命の点でDC型より優れているため、このタイプが最も一般的である。
AC型PDPは、複数の電極(表示電極またはアドレス電極)とこれを覆うように誘電体層を配した2枚の薄いパネルガラスの表面を、複数の隔壁を介して対向させ、当該複数の隔壁の間に蛍光体層を配し、マトリクス状に放電セル(サブピクセル)を形成した状態で、両パネルガラスの間に放電ガスを封入した構成を持つ。表示電極を覆う誘電体層の表面には保護層(膜)が形成される。
PDPでは、駆動時にはいわゆるフィールド内時分割階調表示方式に基づき、前記複数の電極に適宜給電して放電ガス中で放電を得ることにより発生する紫外線で蛍光発光させる。具体的には、PDPの駆動時はまず表示するフレームを複数のサブフレームに分け、各サブフレームをさらに複数の期間に分ける。各サブフレームでは、初期化期間で画面全体の壁電荷を初期化(リセット)した後、アドレス期間で点灯すべき放電セルのみに壁電荷を蓄積させるアドレス放電を行い、その後の放電維持期間ですべての放電セルに対して一斉に交流電圧(サステイン電圧)を印加することによって一定時間放電維持する。PDPで行われる各放電は確率現象に基づいて生じるため、個々の放電セルで放電が発生する率(放電確率と呼ばれる)が基本的にバラツキを有する性質を持つ。したがってこの性質によれば、例えばアドレス放電は、これを実行する印加パルス幅に比例して放電確率を高めることができることになる。
PDPの一般的な構成については、例えば特開平9−92133号公報等に開示されている。
ここで、前面側のパネルガラスの誘電体層を覆う保護層は、誘電体層を放電時のイオン衝撃から保護するために形成され、且つ放電空間に接した陰極電極材料としても機能するので、その膜質が放電特性に大きな影響を与えることが知られている。上記文献でも、MgOは二次電子放出係数の大きな材料であるため、これを用いることにより放電開始電圧Vfが低減されること、およびスパッタ耐性が高いことにより、保護層としてこのMgO材料が選定されている。MgOからなる保護層は通常、真空蒸着法により0.5〜1μm程度の膜厚に成膜されている。
またPDPではこのように放電開始電圧Vfの低減を実現するためにMgOからなる保護層が用いられているが、液晶表示装置などと比較するとそれでも動作電圧が高く、駆動回路・集積回路には高耐圧トランジスタやドライバICなどが必要となる。これがPDPのコストを引き上げる要因の1つになっている。
具体的には、近年ではディスプレイの高精細化・大型化が望まれ、セル数の増加に伴いPDPの高速駆動化が求められるようになり、この駆動時間の短縮化に伴い各サブフレームに割り当てる時間の短縮が要求されている。この駆動時間の短縮化によって、放電確率が低下し、アドレス放電等の放電を確実に行えない可能性が増える。この問題に対し、デュアルスキャン方式では、例えば駆動回路中のデータドライバICを増やし、パネル上下からパネル中央に向けてアドレス放電を同時に行って見かけ上のアドレス期間を一定時間確保する方法が考えられている。しかし、この方式ではデータドライバICの増設数が通常の2倍必要となる上、配線も複雑になり、高コスト・歩留まりの低下を招く可能性がある。
従って、コストを抑えつつ、PDPを低電圧により省電力駆動させることが臨まれている。
PDPの省電力駆動を可能とする技術として、例えば特開2001−332175号公報、特開平10-334809号公報には、保護層のMgOに酸素欠損部分を存在させたり、不純物を添加してMgOの禁制帯中に伝導帯(C.B)近傍にエネルギー準位を形成すると放電開始電圧Vfが低減されることや放電特性(特に放電バラツキ)を改善する技術が開示されている。図7はその先行技術における保護層のMgO中のエネルギー状態と放電空間との関係を示す図である。これらの従来技術では、例えばMgOに対し珪素を添加することなどによって、当図7が示すように、保護層33の伝導帯近傍に第1のエネルギー準位31を設ける。これによりPDP駆動時に、保護層中で励起される電子数を増加させ、放電空間32への電子の供給を容易にさせて放電確率を向上させる。図7中、EgはMgOのバンドギャップで7.8eV、EaはMgOの電子親和力で0.85eVであることをそれぞれ示している。
特開2001−332175号公報 特開平10-334809号公報
しかしながらこの従来技術では、放電開始電圧Vfを十分低減させることと、“黒ノイズ”と呼称される表示の乱れの両方を同時に解決できないという問題がある。“黒ノイズ”とは、点灯すべきセル(選択セル)が点灯しない現象であり、パネル画面のうちの点灯領域と非点灯領域との境界で生じ易い。1つのライン又は1つの列における複数の選択セルの全てが点灯しないというものではなく、発生部位が点在することから、黒ノイズの原因はアドレス放電が生じないか、又は生じても強度が足りないという現象から生じていると考えられる。この原因としては、単純にMgOの禁制帯中の伝導帯近傍にエネルギー準位を設けて放電開始電圧Vfを低減させるだけでは、壁電荷の保持力を低減させてしまい、アドレッシングの実効電圧が下がることが考えられる。この結果、アドレスミスが起こり、画像表示性能が低減してしまう。
本発明は以上の課題に鑑みて為されたものであって、放電開始電圧Vfを低減することによって、高価な高耐圧トランジスタやドライバICを用いなくても放電確率を高めることができ、且つ、壁電荷の保持力を保つことによって、点灯すべきセルが点灯しない黒ノイズの発生率を低減できる保護層を有するPDPとその製造方法を提供することを目的としている。
上記課題を解決するため、本発明は、保護層が形成された第1基板が、放電空間を介して第2基板と対向配置され、前記両基板周囲が封着されてなるプラズマディスプレイパネルであって、前記保護層は酸化マグネシウムを主体とする材料からなり、前記酸化マグネシウムの禁制帯中において、伝導帯近傍に第1のエネルギー準位を形成するものが存在し、価電子帯近傍に第2のエネルギー準位を形成するものが存在する構成とした。
具体的には、前記プラズマディスプレイパネルでは、保護層において、前記第1のエネルギー準位が存在することにより放電バラツキが抑制され、前記第2のエネルギー準位が存在することにより壁電荷が保持される構成を持つ。
前記プラズマディスプレイパネルでは、保護層において、前記第1のエネルギー準位は酸素欠損部分に起因するものとすることができる。
また前記プラズマディスプレイパネルでは、保護層において、前記第2のエネルギー準位はマグネシウム欠損部分に起因するものとすることができる。
このように本発明の構成を有する保護層によれば、駆動時において第2のエネルギー準位は電子に占有された状態で存在し、第1のエネルギー準位にはわずかに電子が存在するか、負の帯電状態に対応して容易に第1のエネルギー準位を電子を占有させた状態にできるとともに、MgOの絶縁抵抗も下がることはない。すなわち、本発明によれば、従来技術において第1のエネルギー準位のみのために放電バラツキおよび放電開始電圧Vfの低減と壁電荷の保持力との間にはトレードオフの関係があったが、本発明では壁電荷の保持力を保ちつつ放電バラツキおよび放電開始電圧Vfの低減が図れる。
1.実施の形態1
1-1.PDPの構成
図1は、本発明の実施の形態1に係るAC型PDP1の主要構成を示す部分的な断面斜視図である。図中、z方向がPDP1の厚み方向、xy平面がPDP1のパネル面に平行な平面に相当する。PDP1は、ここでは一例として42インチクラスのNTSC仕様に合わせた仕様にしているが、本発明はもちろんXGAやSXGA等、この他の仕様・サイズに適用してもよい。
図1に示すように、PDP1の構成は、互いに主面を対向させて配設されたフロントパネル10およびバックパネル16に大別される。
フロントパネル10の基板となるフロントパネルガラス11には、その一方の主面に複数対の表示電極12、13(スキャン電極12、サステイン電極13)が形成されている。各表示電極12、13は、ITOまたはSnO2等の透明導電性材料からなる帯状の透明電極120、130(厚さ0.1μm、幅150μm)に対して、Ag厚膜(厚み2μm〜10μm)、アルミニウム(Al)薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等からなるバスライン121、131(厚さ7μm、幅95μm)が積層されてなる。このバスライン121、131によって透明電極120、130のシート抵抗が下げられる。
表示電極12、13を配設したフロントパネルガラス11には、当該ガラス11の主面全体にわたって、酸化鉛(PbO)または酸化ビスマス(Bi2O3)または酸化燐(PO4)を主成分とする低融点ガラス(厚み20μm〜50μm)の誘電体層14が、スクリーン印刷法等によって形成されている。誘電体層14は、AC型PDP特有の電流制限機能を有しており、DC型PDPに比べて長寿命化を実現する要素になっている。誘電体層14の表面には、厚さ約1.0μmの保護層15が順次コートされている。
ここで、本実施の形態1の特徴は保護層15の構成にあるが、これについては詳細を後述する。
バックパネル16の基板となるバックパネルガラス17には、その一方の主面にAg厚膜(厚み2μm〜10μm)、アルミニウム(Al)薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等からなる幅60μmの複数のアドレス電極18が、x方向を長手方向としてy方向に一定間隔毎(360μm)でストライプ状に並設され、このアドレス電極18を内包するようにバックパネルガラス17の全面にわたって厚さ30μmの誘電体膜19がコートされている。誘電体膜19の上には、さらに隣接するアドレス電極18の間隙に合わせて隔壁20(高さ約150μm、幅40μm)が配設され、隣接する隔壁20によってサブピクセルSUが区画され、x方向での誤放電や光学的クロストークの発生を防ぐ役割をしている。そして隣接する2つの隔壁20の側面とその間の誘電体膜19の面上には、カラー表示のための赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のそれぞれに対応する蛍光体層21〜23が形成されている。
なお、誘電体膜19を用いずにアドレス電極18を直接蛍光体層21〜23で内包するようにしてもよい。
フロントパネル10とバックパネル16は、アドレス電極18と表示電極12、13の互いの長手方向が直交するように対向させながら配置され、両パネル10、16の外周縁部をガラスフリットで封着されている。この両パネル10、16間にはHe、Xe、Neなどの不活性ガス成分からなる放電ガス(封入ガス)が所定の圧力(通常53.2kPa〜79.8kPa程度)で封入されている。
隣接する隔壁20間は放電空間24であり、隣り合う一対の表示電極12、13と1本のアドレス電極18が放電空間24を挟んで交叉する領域が、画像表示にかかるサブピクセルSUに対応する。セルピッチはx方向が1080μm、y方向が360μmである。隣り合うRGB3つのサブピクセルSUで1画素(1080μm×1080μm)が構成される。
1-2.PDPの基本動作
上記構成のPDP1は、表示電極12、13およびアドレス電極18に給電する不図示の駆動部によって駆動される。画像表示のための駆動時には、一対の表示電極12、13の間隙には数十kHz〜数百kHzのAC電圧が印加され、サブピクセルSU内で放電を発生させ、励起されたXe原子からの紫外線によって蛍光体層21〜23を励起し可視光発光させる。
このとき上記駆動部では、各セルの発光をON/OFFの2値制御によって制御し、階調表現するために、外部からの入力画像である時系列の各フレームFを、例えば6個のサブフレームに分割する。各サブフレームにおける輝度の相対比率が例えば1:2:4:8:16:32となるように重み付けをして、各サブフレームのサステイン(維持放電)の発光回数を設定する。
ここで図2は、本PDP1の駆動波形プロセスの一例である。ここではフレーム中の第m番目のサブフレームの駆動波形を示している。当図2が示すように、各サブフレームには、初期化期間、アドレス期間、放電維持期間、消去期間がそれぞれ割り当てられる。
初期化期間とは、それ以前のセルの点灯による影響(蓄積された壁電荷による影響)を防ぐため、画面全体の壁電荷の消去(初期化放電)を行う期間である。当図2に示す波形例では、すべての表示電極12、13に放電開始電圧Vfを超える正極性の下りランプ波形のリセットパルスを印加する。これとともに、バックパネル16側の帯電とイオン衝撃を防ぐために、すべてのアドレス電極18に正極性パルスを印加する。印加パルスの立ち上がりと立ち下がりの差動電圧によって、すべてのセルで弱い面放電である初期化放電が生じ、すべてのセルにおいて壁電荷が蓄積され、画面全体が一様な帯電状態となる。
アドレス期間は、サブフレームに分割された画像信号に基づいて選択されたセルのアドレッシング(点灯/不点灯の設定)を行う期間である。当該期間では、スキャン電極12を接地電位に対して正電位にバイアスし、すべてのサステイン電極13を負電位にバイアスする。この状態で、パネル上部最先におけるライン(一対の表示電極に対応する横一列のセル)から1ラインずつ順に各ラインを選択し、該当するスキャン電極12に負極性のスキャンパルスを印加する。また、点灯すべきセルに対応したアドレス電極18に対して、正極性のアドレスパルスを印加する。これにより前記初期化期間での弱い面放電を受け継ぎ、点灯すべきセルのみでアドレス放電が行われ、壁電荷が蓄積される。
放電維持期間は、階調準位に応じた輝度を確保するために、アドレス放電により設定された点灯状態を拡大して放電維持する期間である。ここでは不要の放電を防止するため、全てのアドレス電極18を正極性の電位にバイアスし、全てのサステイン電極13に正極性のサステインパルスを印加する。その後、スキャン電極12とサステイン電極13とに対して交互にサステインパルスを印加し、所定期間放電を繰り返す。
消去期間では、スキャン電極12に漸減パルスを印加し、これによって壁電荷を消去させる。
なお初期化期間およびアドレス期間の長さは、輝度の重みに関わらず一定であるが、放電維持期間の長さは輝度の重みが大きいほど長い。つまり、各サブフレームの表示期間の長さは互いに異なる。
PDP1ではサブフレームで行われる各放電によって、Xeに起因する、147nmに鋭いピークを有する共鳴線と、173nmを中心とする分子線からなる真空紫外線が発生する。この真空紫外線が各蛍光体層21〜23に照射され、可視光が発生する。そして、RGB各色ごとのサブフレーム単位組み合わせにより、多色・多階調表示がなされる。
1-3.本実施の形態1の保護層について
本実施の形態1では前記保護層15として、図3に示したようなエネルギー図に相当するエネルギー準位を有するMgOを適用することを主たる特徴としている。すなわち実施の形態1では、禁制帯中に伝導帯(C.B;Conduction Band)近傍の第1のエネルギー準位151に加え、価電子帯(V.B;Valence Band)近傍に第2のエネルギー準位152を持つMgOを保護層15として適用する。保護層15を半導体として見た場合、この第1のエネルギー準位151は電子を放出しやすいドナーライク、第2のエネルギー準位は電子を保持しやすいアクセプタライクな性質をそれぞれ有していると言うことができる。
このような構成の保護層15を用いることで、第1のエネルギー準位151で放電開始電圧Vfの低減と放電確率の確保を図り、且つ第2のエネルギー準位152で壁電荷の保持により黒ノイズを防止するものとした。
すなわち、以上の構成を有する保護層15によれば、まずPDP1駆動時(例えば初期化期間)において、表示電極対12、13に給電がなされ、スキャン電極12に下りランプ波形の正極パルスが印加されると、放電ガスが励起され、放電空間24内でプラズマ(ここでは初期化放電)が発生する。そして、プラズマからの紫外線により、保護層15のMgO中の電子が励起状態になる。この電子の励起から基底状態までのエネルギー差に対応して、700nm近辺の発光波長を持つ可視光発光が生じる。
このような駆動時に際しPDP1の保護層15のMgOでは、伝導帯近くに設けられた第1のエネルギー準位で、負の帯電状態に対応して容易に第1のエネルギー準位に電子を占有できる状態となり、励起される電子数が増加されて放電空間24への電子供給が容易になっている。これにより放電バラツキおよび放電開始電圧Vfが抑制されるとともに、良好な放電確率が発揮される。
一方、PDP1では保護層15のMgOにおける価電子帯付近に設けられた第2のエネルギー準位においても第1のエネルギー準位が本来保持していた電子の供給を受けた状態となる。この第2のエネルギー準位に占有される電子によって、保護層15では十分な壁電荷を保持することができるとともに、放電開始電圧Vfの抑制ができる。したがって、従来のようにMgOの絶縁抵抗が低下することが抑制されるので、点灯すべきセルが点灯しない、いわゆる"黒ノイズ”の発生を効果的に防止することができる。
ここで具体的に本発明で前記第1および第2のエネルギー準位をそれぞれ形成するためには、MgOの結晶における欠損、または不純物として添加物(ドーパント)を用いる。
(表1)には、MgOの禁制帯中において、前記に示した第1のエネルギー準位を形成できる欠損および不純物と第2のエネルギー準位を形成できる欠損および添加物である各種元素をまとめている。表1に示すように、実施の形態1は第1および第2のエネルギー準位に起因するものを一定の組み合わせ、場合によっては複数種の元素を混合してMgOに対しドーピングする"co-doping"により実現することができる。以下の表1中の各組み合わせは、本願発明者らが鋭意検討した結果見出されたものである。
Figure 0004369725
このように、MgOに第1のエネルギー準位を形成する方法としては、MgO結晶を形成する際に、MgO結晶中に酸素欠損部分を設ける他、MgO結晶中にB、Al、Ga、InなどのIII族典型元素、Si、Ge、SnなどのIV族典型元素、F、Cl、Br、IなどのVII族典型元素を含有させる方法が挙げられる。また、MgOに第2のエネルギー準位を形成する方法としては、MgO結晶を形成する際に、MgO結晶中にMg欠損部分を設ける他、Na、K、Cu、Agなどの水素(H)を除くI族典型元素又は遷移元素、N(窒素)、P、As、SbなどのV族典型元素を含有させる方法が挙げられる。
ここで、本実施の形態で第1または第2のエネルギー準位を形成する構成の組み合わせは以下のいずれかで行う。
A.第1のエネルギー準位が酸素欠損部分、第2のエネルギー準位がMg欠損部分よりなる。
B.第1のエネルギー準位が酸素欠損部分、第2のエネルギー準位がクロムに起因する。
C.第1のエネルギー準位が珪素、第2のエネルギー準位が酸素欠損部分に起因する。ここで本来珪素、酸素欠損はともに第1のエネルギー準位を形成するものであるが、珪素の方がより伝導帯に近い準位を形成するので、効果としては、この組み合わせ(上記C)の場合、珪素が第1のエネルギー準位、酸素欠損部分が第2のエネルギー準位となる。
D.第1のエネルギー準位が酸素欠損部分、第2のエネルギー準位が水素を除くI族典型元素又は遷移元素、もしくはV族典型元素に起因する。
なお上記酸素欠損部分を形成する方法としては、保護層のMgOにおいて少なくとも放電空間24に臨む表面から100nm以上にわたってMgリッチに形成する方法が挙げられる。この「100nm」という数値は、一般にPDPを寿命程度点灯した場合において、多く見積もって保護層が摩耗すると言われる厚みを考慮して設定するものである。
なお、このDの組み合わせパターンに水素を添加することで、後述の理由により水素が第1のエネルギー準位として作用する。
E.第1のエネルギー準位がIII、IV、VII族典型元素、第2のエネルギー準位がMg欠損部分よりなる。
なお、このEの組み合わせパターンにおいて、Mg欠損部分を酸素リッチなMgOにより形成するとともに、発光中心として遷移金属元素であるクロム(Cr)を添加(ドープ)することができる。Crが発光中心として作用することについては実施の形態2で詳細に述べる。このようなMg欠損部分およびCrを含む保護層は、上記Dの組み合わせパターンと同様に、少なくとも放電空間24に臨む表面から100nm以上の深さにわたって形成するのが望ましい。
さらに、このEの組み合わせパターンにおいて、水素または上記IV族典型元素として珪素を添加すると、水素または珪素は伝導帯近傍まで励起された電子のリザーバーとして作用し、発光中心からの可視光発光を長寿命化することができる。
F.第1のエネルギー準位がVII族典型元素、第2のエネルギー準位が水素を除くI族典型元素又は遷移元素、もしくはV族典型元素に起因する。
G.第1のエネルギー準位がIII、IV、VII族典型元素のいずれか、第2のエネルギー準位が水素を除くI族典型又は遷移元素、もしくはV族典型元素に起因する。
なお、この他の元素としては、水素(H)が第1のエネルギー準位を形成できる元素として有効である。この水素はI族元素であるが、MgOの結晶内において結晶界面(interfacial)に入り込むように含まれるため、他のI族元素とは構造的に異なる形で保護層に含まれ、例外的に第1のエネルギー準位を形成することが可能となっている。
また、上記Crは、MgOに第2のエネルギー準位を形成できる元素としても有効である。クロムを用いた構成例については実施の形態2、3で詳細に説明する。
定量的には、MgOからなる保護層において、前記第1のエネルギー準位と第2のエネルギー準位をほぼ同程度、もしくは前記第1のエネルギー準位の方が少し多くなるように形成するのが望ましい。
1-4.保護層(酸化マグネシウム)について
図8は本発明の保護層(酸化マグネシウム)の特性を説明する図である。
前述したように本発明では、保護層を主として構成する酸化マグネシウムにおいて、MgO中に電子を供給するドナーとして第1のエネルギー準位(E1)を形成し、MgO中に正孔(ホール)を供給するアクセプターとして第2のエネルギー準位(E2)を形成している。ここで図8に示すように、E1量とE2量には次の特性が存在する。
すなわち、E1がある一定量以上になると、MgOのインピーダンスが下がり、壁電荷を保持できなくなる。一方、E1がある一定量以下になると、放電初期における放電空間への電子供給に大きなバラツキが生じ、放電開始の時間的バラツキが大きくなって黒ノイズの原因となる。
またMgOにおいて、E2の量を単純に増加させると放電開始電圧Vfを上昇させる結果に繋がるが、上記E1と併せてE2を設けることで、より効果的な放電開始電圧Vfの低減を図ることができる。具体的には図8に示すように、ほぼE1量=E2量となるよう設定し、かつこれらのエネルギー準位を形成するための添加物量を適宜調整すれば、PDPの放電状態を良好に保ちつつ、放電開始電圧Vfを低減できることが可能である。E1量とE2量には当図のように最適な領域範囲が存在する。
このように最適な領域範囲を考慮しながら製造した本実施の形態1によれば、従来のものに比べて放電開始電圧Vfを20%程度低減でき、且つ、壁電荷の保持力については従来のものと遜色なく、黒ノイズが生じない良好なPDP1を実現できる。
従来技術のMgOからなる保護層は、上述したように例えばMgOの禁制帯の伝導帯近傍に第1のエネルギー準位を設け、これにより図7のように当該第1のエネルギー準位31に存在する電子が、矢印32に示す遷移で獲得したエネルギーを利用して近くの電子を放電空間に放出させ放電開始電圧Vfを下げる工夫がなされているものがある。しかしこの従来技術は、本願発明者らの実験によれば放電開始電圧Vfが低減される一方で、第1のエネルギー準位31に存在する電子の増加に比例してMgOの絶縁性が保てなくなり、画像表示のための壁電荷等の電荷保持が困難になって、いわゆる黒ノイズが生じやすくなることが分かった。
これに対して実施の形態1のPDP1によれば、高価なドライバICや高耐圧トランジスタ等を用いることなく、放電開始電圧Vfを低減させつつ放電バラツキを抑制して確実なアドレス放電を確保し、且つ、黒ノイズの発生を防止することもできる。すなわち、従来技術においては保護層に第1のエネルギー準位しか設けられていなかったために、放電バラツキおよび放電開始電圧Vfを低減させる一方で壁電荷の保持力を失い、これによって生じていた黒ノイズによる画像劣化の問題が、本発明では根本的に解決することが可能となっている。
2.PDPの製造方法
ここでは実施の形態1のPDP1の製造方法について、その一例を説明する。なお、ここに挙げる製造方法は、これ以降の実施の形態2、3のPDP1の製造方法にも同様に適用できる。
2-1.フロントパネルの作製
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるフロントパネルガラスの面上に表示電極を作製する。ここでは印刷法によって表示電極を形成する例を示すが、これ以外にもダイコート法、ブレードコート法等で形成することができる。
まず、ITO(透明電極)材料を所定のパターンでフロントパネルガラス上に塗布する。これを乾燥させる。一方、金属(Ag)粉末と有機ビヒクルに感光性樹脂(光分解性樹脂)を混合してなる感光性ペーストを作製する。これを前記透明電極材料の上に重ねて塗布し、形成する表示電極のパターンを有するマスクで覆う。そして、当該マスク上から露光し、現像・焼成(590〜600℃程度の焼成温度)する。これにより透明電極上にバスラインが形成される。このフォトマスク法によれば、従来は100μmの線幅が限界とされていたスクリーン印刷法に比べ、30μm程度の線幅までバスラインを細線化することが可能である。なお、このバスラインの金属材料としては、この他にPt、Au、Ag、Al、Ni、Cr、また酸化錫、酸化インジウム等を用いることができる。
また、前記電極は上記方法以外にも、蒸着法、スパッタリング法などで電極材料を成膜したのち、エッチング処理して形成することも可能である。
次に、形成した表示電極の上から、軟化点が550℃〜600℃の酸化鉛系あるいは酸化ビスマス系の誘電体ガラス粉末とブチルカルビトールアセテート等からなる有機バインダーを混合したペーストを塗布する。そして、550℃〜650℃程度で焼成し、誘電体層を形成する。
次に、誘電体層の表面に、所定の厚みの保護層をEB蒸着法を用いて成膜する。基本的な成膜工程としては、蒸着源にペレット状のMgO(平均粒径3mm〜5mm、純度99.95%以上)を用いる。MgOに添加物を加える場合は、この段階で所定の元素を添加して適量混合しておく。そしてピアス式ガンを加熱源とする反応性EB蒸着法に基づき、真空度6.5×10-3Pa、酸素導入量10sccm、酸素分圧90%以上、レート2nm/s、基板温度150℃の条件で行う。
なお本実施の形態では、保護層の成膜工程のバリエーションとして以下の工程を行うことができる。MgO材料は、以下のペレット状の形態に限定しない。
a.
まず、MgOを酸化性雰囲気で成膜することによって、MgO結晶中にMgの欠損部分を形成する。その後、短時間の還元性雰囲気処理でMgO結晶中に酸素欠損部分を形成する。これによって、MgO中に、酸素欠損部分とMgの欠損部分の2種の欠損部分を共存させる。酸素欠損部分が第1のエネルギー準位、Mgの欠損部分が第2のエネルギー準位となる。このように、上記2種の欠損部分を形成する処理はどちらを先に行ってもよい。還元性雰囲気処理及び酸化性雰囲気処理としては、それぞれ水素を含んだプラズマ処理及び酸素を含んだプラズマ処理、或いは水素を含んだ熱処理及び酸素を含んだ熱処理を行うことができる。
b.
ペレット状のMgOに、Na、K、Cu、Agなどの水素(H)を除くI族元素、もしくはN(窒素)、P、As、SbなどのV族元素を添加する。そして還元性雰囲気中で成膜工程を行う。還元性雰囲気処理として、熱処理またはプラズマ処理を行う。これにより、酸素欠損部分が第1のエネルギー準位、上記水素(H)を除くI族元素もしくはN(窒素)、V族元素が第2のエネルギー準位をそれぞれ形成する。
c.
ペレット状のMgOに、B、Al、Ga、InなどのIII族元素、IV族元素、もしくはF、Cl、Br、IなどのVII族元素を添加する。そして酸化性雰囲気中で成膜工程を行う。酸化性雰囲気処理として、酸素を含んだ熱処理または酸素を含んだプラズマ処理を行う。これにより上記III族元素、もしくは上記VII族元素が第1のエネルギー準位を形成する。また、酸化性雰囲気処理により形成される、Mgの欠損部分が第2のエネルギー準位となる。
d.
ペレット状のMgOに、前記VII族元素と、前記水素(H)を除くI族元素もしくはV族元素を同時に添加し、成膜する。そして酸化性雰囲気中で成膜工程を行う。これにより前記VII族元素が第1のエネルギー準位を形成し、前記水素(H)を除くI族元素もしくはV族元素が第2のエネルギー準位を形成する。
e.
ペレット状のMgOに、前記III族元素、IV族元素、VII族元素のうちのいずれかと、前記水素(H)を除くI族元素もしくはV族元素を同時に添加し、成膜する。これにより、前記III族元素、IV族元素、VII族元素のうちのいずれかが第1のエネルギー準位を形成し、前記水素(H)を除くI族元素もしくはV族元素が第2のエネルギー準位を形成する。
なお、保護層を成膜するには様々な方法があるが、ソースやターゲットに不純物を予め添加しておいて、それを用いて電子ビーム蒸着やスパッタによって成膜しても良い。また、MgO中にCrを含める場合、成膜工程の後処理としてドーピング処理やプラズマ処理によってMgO中にCrを添加することも可能である。
実施の形態において、Crを添加する場合の添加量は、保護層の結晶性を維持するため、1E18/cm3以下が適当である。なお後述のSiやHを添加する場合は、少なくとも1E16/cm3程度は必要である。
なお、上記添加物は、少なくとも表示電極対に対応した保護層の領域に添加すれば、それなりの効果が得られる。このように特定の保護層領域だけに添加物を加えるには、ある程度成膜されたMgO表面をパターニングマスクして、プラズマドーピングする方法等がある。
また、保護層はCVD(Chemical vapor deposition)等別の方法で形成してもよい。
以上でフロントパネルが作製される。
2-2.バックパネルの作製
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるバックパネルガラスの表面上に、スクリーン印刷法によりAgを主成分とする導電体材料を一定間隔でストライプ状に塗布し、厚さ約5μmのアドレス電極を形成する。ここで、作製するPDP1を例えば40インチクラスのNTSC規格もしくはVGA規格とするためには、隣り合う2つのアドレス電極の間隔を0.4mm程度以下に設定する。
続いて、アドレス電極を形成したバックパネルガラスの面全体にわたって鉛系ガラスペーストを厚さ約20〜30μmで塗布して焼成し、誘電体膜を形成する。
次に、誘電体膜と同じ鉛系ガラス材料を用いて、誘電体膜の上に、隣り合うアドレス電極の間毎に高さ約60〜100μmの隔壁を形成する。この隔壁は、例えば上記ガラス材料を含むペーストを繰り返しスクリーン印刷し、その後焼成して形成できる。なお、本発明では隔壁を構成する鉛系ガラス材料にSi成分が含まれていると、保護層のインピーダンス上昇を抑制する効果が高まるので望ましい。このSi成分はガラスの化学組成に含まれていても、ガラス材料に添加してもよい。また蒸気圧の高い不純物(N、H、Cl、F等)の添加物は、MgOの成膜時に気相中にガス状に適量添加してもよい。
隔壁が形成できたら、隔壁の壁面と、隔壁間で露出している誘電体膜の表面に、赤色(R)蛍光体、緑色(G)蛍光体、青色(B)蛍光体のいずれかを含む蛍光インクを塗布し、これを乾燥・焼成してそれぞれ蛍光体層とする。
RGB各色蛍光の化学組成は、例えば以下の通りである。
赤色蛍光体;Y2O3;Eu3+
緑色蛍光体;Zn2SiO4:Mn
青色蛍光体;BaMgAl10O17:Eu2+
各蛍光体材料は、平均粒径2.0μmのものが使用できる。これをサーバー内に50質量%の割合で入れるとともに、エチルセルローズ1.0質量%、溶剤(α-ターピネオール)49質量%を投入し、サンドミルで撹拌混合して、15×10-3Pa・sの蛍光体インクを作製する。そして、これをポンプにて径60μmのノズルから隔壁20間に噴射させて塗布する。このとき、パネルを隔壁20の長手方向に移動させ、ストライプ状に蛍光体インクを塗布する。その後は500℃で10分間焼成し、蛍光体層21〜23を形成する。
以上でバックパネルが完成される。
なおフロントパネルガラスおよびバックパネルガラスをソーダライムガラスからなるものとしたが、これは材料の一例として挙げたものであって、これ以外の材料でもよい。
2-3.PDPの完成
作製したフロントパネルとバックパネルを、封着用ガラスを用いて貼り合わせる。その後、放電空間の内部を高真空(1.0×10-4Pa)程度に排気し、これに所定の圧力(ここでは66.5kPa〜101kPa)でNe-Xe系やHe-Ne-Xe系、He-Ne-Xe-Ar系などの放電ガスを封入する。
以上でPDP1が完成する。
3.実施の形態2
3-1.PDPの構成
実施の形態2のPDP1の全体的な構成は、上記実施の形態1のPDPとほぼ同様であるが、保護層15の構成に特徴を有する。
すなわち本実施の形態2のPDP1では、その主な特徴として、保護層15をなすMgO結晶中に、その表面から深さ100nm以上にわたって、金属元素であるCrが1E18/cm3以下の濃度で添加されている。これとともに、MgO結晶は酸素欠損部分を有する構成としている。
この構成により、保護層15のMgOの禁制帯中では酸素欠損部分によって第1のエネルギー準位、Crによって第2のエネルギー準位がそれぞれ形成されるので、実施の形態1とほぼ同様の効果が奏される。
さらに本実施の形態2では、この添加物(ドーパント)としてのCrが、本PDP1駆動時に発光中心として働き、保護層のインピーダンスを制御することで、アドレス放電などの放電確率が向上され、優れた画像表示性能が発揮される。なお、Crが添加される保護層領域は、保護層15の全面に限らず、少なくとも表示電極対12、13が配設された位置に対応する領域であればよい。この効果の詳細については後述する。また、保護層15のインピーダンスを制御するドーパントとして、ここではCrを挙げているが、その他Mn、Fe等の遷移元素、Eu、Yb、Sm等の希土類のように、同様の効果を有すると思われるものを用いてもよい。
3-2.実施の形態2の効果について
保護層15の材料としては、スパッタ耐性および二次電子放出特性に優れるものが望まれるが、これはPDP1の駆動時に発生する放電を長期間良好に保つとともに、保護層15のキャリア濃度を維持してインピーダンス特性が変化するのを制御し、放電空間24において放電が生じやすくするための条件とされている。これを満足すれば、駆動時におけるアドレス放電等の放電確率を高めることができ、高精細表示に伴う高速駆動においても良好な画像表示性能を得ることができるので望ましい。
ここで本実施の形態2では、保護層のMgO結晶中に酸素欠損部分を設けることで禁制帯中において第1のエネルギー準位を確保するとともに、Si以外の添加材料(ここではCr)を用いて第2のエネルギー準位を形成し、実施の形態1と同様の効果を実現するものである。また、一方で本願発明者らは、MgOの結晶中で、Crが発光中心として働く作用があることを見出し、保護層15のインピーダンスを制御するドーパントとして、Crを利用するものとした。具体的には、MgOにCrを添加すると、700nm付近の波長にブロードな発光スペクトルを生じる現象があることが分かった(MgOに不純物を添加したときの物性解析についてはC.C.Chao.J.Phys.Chem.Solids.32 2517(1971)や、M.Maghrabi et al NIM B191(2002)181を参照)。
本実施の形態2は、PDP1駆動時の放電確率が放電空間と接する保護層の特性、すなわちMgOの結晶構造・結晶粒径や方位、およびこれに混在する不純物等の条件によって変化する特性に着目してなされたものである。
このようにCrを利用することによって、PDP1駆動時において、保護層15のMgOの禁制帯中において、酸素欠損部分による第1のエネルギー準位、Crによる第2のエネルギー準位が形成され、実施の形態1と同様の効果が奏される。
さらに、維持放電や初期化放電に起因するVUVの照射により、保護層15中で電子が励起され、Crからなる発光中心より発光波長の長い700nm近辺に波長を持つ可視光発光がなされる。このとき、保護層15中の電子が発光中心に遷移するとともに、保護層15中でエネルギー準位の伝導帯近傍まで励起される電子が発生する。この励起された電子によって、保護層15のキャリア濃度が向上し、保護層15のインピーダンス制御がなされる。また前記可視光発光にともない、伝導帯近まで励起された電子が増えてゆくと、PDP1の放電確率が増し、優れた画像表示性能が発揮されることとなる。このため、Siの他にCrを用いてもアドレス放電等の放電確率を高められるようになり、製造時の材料選択の自由度を広げる効果が得られる。
保護層のMgO中に発光中心を形成する技術としては、他に、保護層中の酸素欠損部分(Mgリッチ部分)を利用することもできる。上記酸素欠損部分に起因して、400nmから600nm程度に波長を持つ可視光発光が得られる。この可視光発光に際し、上記Crを添加する場合と同様に、MgO中の伝導帯準位に電子が励起され、保護層のキャリア濃度が向上する。その結果、上記と同様の効果が奏される。
ここで図4は、Crを添加した本実施の形態2のMgO層15のエネルギーバンドを示す。図4中、Ecは伝導体下端、Evは価電子帯上端を示す。当図4に示されるように、PDP1駆動時、例えば初期化期間において、表示電極対12、13に給電がなされ、スキャン電極12に下りランプ波形の正極パルスが印加されると、放電ガスが励起され、放電空間24内でプラズマ(初期化放電)が発生する。そして、プラズマからの紫外線により、保護層15のMgO中の電子が励起状態になる(E0→E2)。この電子の励起に際し、E2からE0のエネルギー差に対応して、700nm近辺の発光波長を持つ可視光発光が生じる。このとき、E2は上記第2のエネルギー準位として作用する。当該発光にともない、保護層15中において、伝導帯近傍の第1のエネルギー準位としての不純物準位(捕獲準位)E1にまで励起される電子が発生する。
このような過程で伝導帯近傍の不純物準位に電子が励起されることにより、保護層15のキャリア濃度が向上し、保護層15のインピーダンスの制御がなされる。その結果、初期化期間に続くアドレス期間、放電維持期間でいずれも放電確率が高まり、良好な画像表示性能を発揮することが可能となっている。また、放電確率が高まることにより、高精細表示に伴う高速駆動を行っても、確実にアドレス放電(書込放電)ができるため、良好な画像表示が発揮される。したがって、画面を2つの領域に分けたデュアルスキャン方式を用いてデータドライバICを増やさなくても高速駆動に対応できるので、低コストで高速駆動を実現できるといった効果も奏される。
なお、本実施の形態2の効果は、初期化期間からアドレス期間にかけて(すなわち、最も黒ノイズが発生しやすい期間にかけて)良好に発揮されるが、放電維持期間でも良好な維持放電がなされるという効果も望める。
さらに、PDPの構成によっては、PDPの構成要素に含まれるSi成分が放電空間を介して保護層中に含浸し、経時的にインピーダンス変化を起こすことが見られるが、本実施の形態2のようにCrを用いると、そのような問題の発生を回避できるというメリットもある。
4.実施の形態3
図5は、本実施の形態3におけるPDP1の保護層15の構成を示す部分断面図である。当図5に示すように、本実施の形態3の保護層15は2層15A、15Bからなる構造となっており、このうち表面にはCrが添加され、且つ酸素欠損部分を有する厚さ約100nmのMgOからなる保護層15Aが配設されている(請求の範囲5+6)。この構成によっても、酸素欠損部分が第1のエネルギー準位を形成し、Crが第2のエネルギー準位を形成する。このように本発明では、保護層15の厚み方向の膜質が一様であるものに限るものではなく、少なくともその表面近傍において第1および第2のエネルギー準位が形成された膜質になっていれば、本発明の効果を得ることができる。100nmという数値は、一般にPDPを寿命程度点灯した場合において、多く見積もって100nm程度保護層が磨耗すると言われることに基づいている。これだけの膜厚を確保すれば、通常使用時において、保護層15Aによる効果が持続するからである。
なお、このような2層構造の保護層15を形成する方法としては、EB(Electron beam)法やスパッタ法を用いることができる。この場合、一旦純粋なMgOソースやターゲットを用いて保護層15Bを形成したのち、Crを含むMgO材料を用いて保護層15Aを形成する。また、最初にMgOのみからなる保護層15を形成したのち、プラズマドーピング法等により保護層の表面処理を行う方法もある。
4.その他の事項
上記実施の形態2、3では、酸素欠損部分を持つ保護層15のMgOにCrを添加する例について説明したが、本発明はこの構成に限定せず、上記MgOにCrに加えて水素(H)を添加すると、さらに高い効果が得られる。MgOにCrとHを添加した場合、まずCrによって前述の通り、700nm付近のブロードな可視光発光が得られるとともに、伝導帯近傍にまで電子が励起され、保護層15のキャリア濃度が向上する。一方、添加されたHはMgOの酸素欠損部分に拡散していき、一価の負イオン状態になり、伝導帯下端の近傍にドナーライクな不純物準位を形成する。このようなHは、不純物準位まで励起された電子のリザーバーとして作用するので、可視光発光が長寿命になり、さらに保護層15のキャリア濃度が向上されることとなる(MgOに不純物を添加した場合の物性解析についてはG.H.Rosenblatt et al.Phys.Rev. B39(1989)10309を参照)。この効果によって、保護層15のMgOにCrに加えて水素(H)を添加した構成でも、実施の形態2、3と同様に放電確率を高め、良好な画像表示性能を得ることができる。
また本発明では、保護層15の別の構成として、例えばMgリッチなMgOを用いて酸素欠損部分を作り、これにSiを不純物として添加してもよい。この構成によれば、まず、保護層のMgO中に存在する酸素欠損部分で発光中心が形成され、これに伴って保護層のMgOには、伝導帯付近にまで励起される電子が生じる。この励起された電子に対し、Siはリザーバーとして作用するので、可視光発光が長寿命化され、保護層のキャリア濃度が良好に向上する。その結果、保護層のインピーダンス制御が可能となり、上記各実施の形態2、3と同様の効果が奏される。
さらに本発明では、保護層15の別の構成として、MgリッチなMgOを用い、これにHを不純物として添加してもよい。この構成によっても、図6のエネルギーバンド図に示すように、PDP1駆動時に保護層15のMgOに含まれる酸素欠損部分で可視光発光が生じる。この可視光発光に伴い、保護層15中でMgOの伝導帯近傍に励起される電子が生じるが、Hが当該励起された電子のリザーバーとして作用し、可視光発光が長寿命化される。その結果、上記各実施の形態2、3と同様の効果が奏される。ここで、MgリッチなMgOに対してCrをドーパントとして添加しても、発光中心が増加するので良好な効果が得られることとなる。またこの場合、発光中心として酸素欠損部分とCrの両方が存在するので、保護層のインピーダンスを制御する自由度が増えるというメリットもある。
また本発明では、保護層15に酸素リッチなMgOを用いたときに、特に効果が高い。MgOが酸素リッチである場合は、酸素欠損濃度が低く、本来の発光中心の数がわずかであるため、初期化放電後に生じる発光もごくわずかである。そこで本発明のように、MgO中にCr等を添加すれば、発光中心の数が増えるので、保護層のキャリア濃度が良好に増加し、飛躍的に放電ばらつきが小さくなるという効果が得られる。
また本発明では、保護層15の構成として、酸素リッチなMgOに対して、CrとHを添加してもよい。酸素リッチなMgOでは発光中心が少ないので、CrおよびHを添加することで、初期化放電後の発光中心からの発光と、二次電子の放出量を顕著に高めることができ、良好に上記各実施の形態2、3と同様の効果が奏される。
さらに本発明では、保護層15の構成として、酸素リッチなMgOに対して、CrとSiを添加してもよい。この場合でも上記酸素リッチなMgOに対してCrおよびHを添加した場合と同様の効果が奏される。
なお、上記のように酸素リッチまたはMgリッチなMgO中に、Cr、Si、H等を添加する構成でも、保護層のすべてをその構成にする必要はなく、保護層15の表面から少なくとも100nmの深さにわたってその構成になっていれば、本発明の効果を得ることができる。
本発明は、プラズマディスプレイパネル等のガス放電パネルを用いたテレビジョン装置に利用することができる。
実施の形態1におけるPDPの構成を模式的に示す断面斜視図である。 PDPの駆動プロセス例を示す図である。 本発明の実施の形態1において使用した保護層のMgO中のエネルギー状態と放電空間との関係を示す図である。 実施の形態2のPDPにおけるCrを添加した保護層のエネルギーバンド図である。 実施の形態3のPDPの保護層の構成を示す断面図である。 酸素欠損部分が存在する、またはHを添加した保護層のエネルギーバンド図である。 従来技術における保護層のMgO中のエネルギー状態と放電空間との関係を示す図である。 保護層(酸化マグネシウム)の特性を説明する図である。
符号の説明
1 PDP
15 保護層
15A 酸素欠損部分を有する厚さ約100nmのMgOからなる保護層
24 放電空間
151 第1のエネルギー準位
152 第2のエネルギー準位

Claims (16)

  1. 1基板が、放電空間を介して第2基板と対向配置され、前記両基板周囲が封着されてなるプラズマディスプレイパネルであって、
    第1基板は第2基板と対向する主面に保護層を有し、
    当該保護層は、酸化マグネシウムを主体とする材料からなり、酸素欠損部分、Mg欠損部分、もしくはドーパントのいずれかによる2つの異なる欠陥を有することで、禁制帯中に電子供与型の第1のエネルギー準位と電子受容型の第2のエネルギー準位が存在し、
    前記第1のエネルギー準位は、前記第2のエネルギー準位よりも伝導帯に近接して存在している
    プラズマディスプレイパネル。
  2. 前記第1のエネルギー準位は酸素欠損部分に起因している
    請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  3. 前記第2のエネルギー準位はMg欠損部分に起因している
    請求項に記載のプラズマディスプレイパネル。
  4. 前記保護層は、その放電空間に臨む表面から深さ100nm以上にわたってマグネシウムリッチに構成されている
    請求項に記載のプラズマディスプレイパネル。
  5. 前記保護層にはクロムが添加されている
    請求項に記載のプラズマディスプレイパネル。
  6. 保護層には水素を除くI族典型元素又は遷移元素、もしくはV族典型元素のいずれかが添加されることにより、第2のエネルギー準位が形成されている
    請求項に記載のプラズマディスプレイパネル。
  7. 前記保護層には水素が添加され、当該水素および酸素欠損部分により、第1のエネルギー準位が形成されている
    請求項に記載のプラズマディスプレイパネル。
  8. 前記保護層は酸素欠損部分を有するとともに、珪素が添加されている
    請求項に記載のプラズマディスプレイパネル。
  9. 前記保護層にはIII、IV、VII族典型元素のいずれかが添加されている
    請求項に記載のプラズマディスプレイパネル。
  10. III、IV、VII族典型元素のいずれかにより前記第1のエネルギー準位が形成され、
    Mg欠損部分により前記第2のエネルギー準位が形成されている
    請求項に記載のプラズマディスプレイパネル。
  11. 前記保護層は、その放電空間に臨む表面から深さ100nm以上にわたって、酸素リッチに構成され、且つ、クロムが添加されている
    請求項10に記載のプラズマディスプレイパネル。
  12. 前記保護層には、珪素または水素が添加されている
    請求項11に記載のプラズマディスプレイパネル。
  13. 前記保護層にはVII族典型元素が含まれ
    さらに水素を除くI族典型元素または遷移元素、もしくはV族典型元素のいずれかが添加されている
    請求項に記載のプラズマディスプレイパネル。
  14. VII族典型元素により前記第1のエネルギー準位が形成され、
    水素を除くI族典型元素または遷移元素、もしくはV族典型元素のいずれかにより前記第2のエネルギー準位が形成されている
    請求項13に記載のプラズマディスプレイパネル。
  15. 前記保護層にはIII族典型元素、IV族典型元素、VII族典型元素のいずれかと、
    水素を除くI族典型元素または遷移元素、もしくはV族典型元素のいずれかが添加されている
    請求項に記載のプラズマディスプレイパネル。
  16. III族典型元素、IV族典型元素、VII族典型元素のいずれかにより前記第1のエネルギー準位が形成され、
    水素を除くI族典型元素または遷移元素、もしくはV族典型元素のいずれかにより前記第2のエネルギー準位が形成されている
    請求項15に記載のプラズマディスプレイパネル。
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