JP4369725B2 - プラズマディスプレイパネルとその製造方法 - Google Patents
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AC型PDPは、複数の電極(表示電極またはアドレス電極)とこれを覆うように誘電体層を配した2枚の薄いパネルガラスの表面を、複数の隔壁を介して対向させ、当該複数の隔壁の間に蛍光体層を配し、マトリクス状に放電セル(サブピクセル)を形成した状態で、両パネルガラスの間に放電ガスを封入した構成を持つ。表示電極を覆う誘電体層の表面には保護層(膜)が形成される。
ここで、前面側のパネルガラスの誘電体層を覆う保護層は、誘電体層を放電時のイオン衝撃から保護するために形成され、且つ放電空間に接した陰極電極材料としても機能するので、その膜質が放電特性に大きな影響を与えることが知られている。上記文献でも、MgOは二次電子放出係数の大きな材料であるため、これを用いることにより放電開始電圧Vfが低減されること、およびスパッタ耐性が高いことにより、保護層としてこのMgO材料が選定されている。MgOからなる保護層は通常、真空蒸着法により0.5〜1μm程度の膜厚に成膜されている。
具体的には、近年ではディスプレイの高精細化・大型化が望まれ、セル数の増加に伴いPDPの高速駆動化が求められるようになり、この駆動時間の短縮化に伴い各サブフレームに割り当てる時間の短縮が要求されている。この駆動時間の短縮化によって、放電確率が低下し、アドレス放電等の放電を確実に行えない可能性が増える。この問題に対し、デュアルスキャン方式では、例えば駆動回路中のデータドライバICを増やし、パネル上下からパネル中央に向けてアドレス放電を同時に行って見かけ上のアドレス期間を一定時間確保する方法が考えられている。しかし、この方式ではデータドライバICの増設数が通常の2倍必要となる上、配線も複雑になり、高コスト・歩留まりの低下を招く可能性がある。
PDPの省電力駆動を可能とする技術として、例えば特開2001−332175号公報、特開平10-334809号公報には、保護層のMgOに酸素欠損部分を存在させたり、不純物を添加してMgOの禁制帯中に伝導帯(C.B)近傍にエネルギー準位を形成すると放電開始電圧Vfが低減されることや放電特性(特に放電バラツキ)を改善する技術が開示されている。図7はその先行技術における保護層のMgO中のエネルギー状態と放電空間との関係を示す図である。これらの従来技術では、例えばMgOに対し珪素を添加することなどによって、当図7が示すように、保護層33の伝導帯近傍に第1のエネルギー準位31を設ける。これによりPDP駆動時に、保護層中で励起される電子数を増加させ、放電空間32への電子の供給を容易にさせて放電確率を向上させる。図7中、EgはMgOのバンドギャップで7.8eV、EaはMgOの電子親和力で0.85eVであることをそれぞれ示している。
前記プラズマディスプレイパネルでは、保護層において、前記第1のエネルギー準位は酸素欠損部分に起因するものとすることができる。
1-1.PDPの構成
図1は、本発明の実施の形態1に係るAC型PDP1の主要構成を示す部分的な断面斜視図である。図中、z方向がPDP1の厚み方向、xy平面がPDP1のパネル面に平行な平面に相当する。PDP1は、ここでは一例として42インチクラスのNTSC仕様に合わせた仕様にしているが、本発明はもちろんXGAやSXGA等、この他の仕様・サイズに適用してもよい。
フロントパネル10の基板となるフロントパネルガラス11には、その一方の主面に複数対の表示電極12、13(スキャン電極12、サステイン電極13)が形成されている。各表示電極12、13は、ITOまたはSnO2等の透明導電性材料からなる帯状の透明電極120、130(厚さ0.1μm、幅150μm)に対して、Ag厚膜(厚み2μm〜10μm)、アルミニウム(Al)薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等からなるバスライン121、131(厚さ7μm、幅95μm)が積層されてなる。このバスライン121、131によって透明電極120、130のシート抵抗が下げられる。
バックパネル16の基板となるバックパネルガラス17には、その一方の主面にAg厚膜(厚み2μm〜10μm)、アルミニウム(Al)薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等からなる幅60μmの複数のアドレス電極18が、x方向を長手方向としてy方向に一定間隔毎(360μm)でストライプ状に並設され、このアドレス電極18を内包するようにバックパネルガラス17の全面にわたって厚さ30μmの誘電体膜19がコートされている。誘電体膜19の上には、さらに隣接するアドレス電極18の間隙に合わせて隔壁20(高さ約150μm、幅40μm)が配設され、隣接する隔壁20によってサブピクセルSUが区画され、x方向での誤放電や光学的クロストークの発生を防ぐ役割をしている。そして隣接する2つの隔壁20の側面とその間の誘電体膜19の面上には、カラー表示のための赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のそれぞれに対応する蛍光体層21〜23が形成されている。
フロントパネル10とバックパネル16は、アドレス電極18と表示電極12、13の互いの長手方向が直交するように対向させながら配置され、両パネル10、16の外周縁部をガラスフリットで封着されている。この両パネル10、16間にはHe、Xe、Neなどの不活性ガス成分からなる放電ガス(封入ガス)が所定の圧力(通常53.2kPa〜79.8kPa程度)で封入されている。
1-2.PDPの基本動作
上記構成のPDP1は、表示電極12、13およびアドレス電極18に給電する不図示の駆動部によって駆動される。画像表示のための駆動時には、一対の表示電極12、13の間隙には数十kHz〜数百kHzのAC電圧が印加され、サブピクセルSU内で放電を発生させ、励起されたXe原子からの紫外線によって蛍光体層21〜23を励起し可視光発光させる。
初期化期間とは、それ以前のセルの点灯による影響(蓄積された壁電荷による影響)を防ぐため、画面全体の壁電荷の消去(初期化放電)を行う期間である。当図2に示す波形例では、すべての表示電極12、13に放電開始電圧Vfを超える正極性の下りランプ波形のリセットパルスを印加する。これとともに、バックパネル16側の帯電とイオン衝撃を防ぐために、すべてのアドレス電極18に正極性パルスを印加する。印加パルスの立ち上がりと立ち下がりの差動電圧によって、すべてのセルで弱い面放電である初期化放電が生じ、すべてのセルにおいて壁電荷が蓄積され、画面全体が一様な帯電状態となる。
なお初期化期間およびアドレス期間の長さは、輝度の重みに関わらず一定であるが、放電維持期間の長さは輝度の重みが大きいほど長い。つまり、各サブフレームの表示期間の長さは互いに異なる。
1-3.本実施の形態1の保護層について
本実施の形態1では前記保護層15として、図3に示したようなエネルギー図に相当するエネルギー準位を有するMgOを適用することを主たる特徴としている。すなわち実施の形態1では、禁制帯中に伝導帯(C.B;Conduction Band)近傍の第1のエネルギー準位151に加え、価電子帯(V.B;Valence Band)近傍に第2のエネルギー準位152を持つMgOを保護層15として適用する。保護層15を半導体として見た場合、この第1のエネルギー準位151は電子を放出しやすいドナーライク、第2のエネルギー準位は電子を保持しやすいアクセプタライクな性質をそれぞれ有していると言うことができる。
すなわち、以上の構成を有する保護層15によれば、まずPDP1駆動時(例えば初期化期間)において、表示電極対12、13に給電がなされ、スキャン電極12に下りランプ波形の正極パルスが印加されると、放電ガスが励起され、放電空間24内でプラズマ(ここでは初期化放電)が発生する。そして、プラズマからの紫外線により、保護層15のMgO中の電子が励起状態になる。この電子の励起から基底状態までのエネルギー差に対応して、700nm近辺の発光波長を持つ可視光発光が生じる。
(表1)には、MgOの禁制帯中において、前記に示した第1のエネルギー準位を形成できる欠損および不純物と第2のエネルギー準位を形成できる欠損および添加物である各種元素をまとめている。表1に示すように、実施の形態1は第1および第2のエネルギー準位に起因するものを一定の組み合わせ、場合によっては複数種の元素を混合してMgOに対しドーピングする"co-doping"により実現することができる。以下の表1中の各組み合わせは、本願発明者らが鋭意検討した結果見出されたものである。
A.第1のエネルギー準位が酸素欠損部分、第2のエネルギー準位がMg欠損部分よりなる。
B.第1のエネルギー準位が酸素欠損部分、第2のエネルギー準位がクロムに起因する。
C.第1のエネルギー準位が珪素、第2のエネルギー準位が酸素欠損部分に起因する。ここで本来珪素、酸素欠損はともに第1のエネルギー準位を形成するものであるが、珪素の方がより伝導帯に近い準位を形成するので、効果としては、この組み合わせ(上記C)の場合、珪素が第1のエネルギー準位、酸素欠損部分が第2のエネルギー準位となる。
なお上記酸素欠損部分を形成する方法としては、保護層のMgOにおいて少なくとも放電空間24に臨む表面から100nm以上にわたってMgリッチに形成する方法が挙げられる。この「100nm」という数値は、一般にPDPを寿命程度点灯した場合において、多く見積もって保護層が摩耗すると言われる厚みを考慮して設定するものである。
E.第1のエネルギー準位がIII、IV、VII族典型元素、第2のエネルギー準位がMg欠損部分よりなる。
なお、このEの組み合わせパターンにおいて、Mg欠損部分を酸素リッチなMgOにより形成するとともに、発光中心として遷移金属元素であるクロム(Cr)を添加(ドープ)することができる。Crが発光中心として作用することについては実施の形態2で詳細に述べる。このようなMg欠損部分およびCrを含む保護層は、上記Dの組み合わせパターンと同様に、少なくとも放電空間24に臨む表面から100nm以上の深さにわたって形成するのが望ましい。
F.第1のエネルギー準位がVII族典型元素、第2のエネルギー準位が水素を除くI族典型元素又は遷移元素、もしくはV族典型元素に起因する。
なお、この他の元素としては、水素(H)が第1のエネルギー準位を形成できる元素として有効である。この水素はI族元素であるが、MgOの結晶内において結晶界面(interfacial)に入り込むように含まれるため、他のI族元素とは構造的に異なる形で保護層に含まれ、例外的に第1のエネルギー準位を形成することが可能となっている。
定量的には、MgOからなる保護層において、前記第1のエネルギー準位と第2のエネルギー準位をほぼ同程度、もしくは前記第1のエネルギー準位の方が少し多くなるように形成するのが望ましい。
図8は本発明の保護層(酸化マグネシウム)の特性を説明する図である。
前述したように本発明では、保護層を主として構成する酸化マグネシウムにおいて、MgO中に電子を供給するドナーとして第1のエネルギー準位(E1)を形成し、MgO中に正孔(ホール)を供給するアクセプターとして第2のエネルギー準位(E2)を形成している。ここで図8に示すように、E1量とE2量には次の特性が存在する。
またMgOにおいて、E2の量を単純に増加させると放電開始電圧Vfを上昇させる結果に繋がるが、上記E1と併せてE2を設けることで、より効果的な放電開始電圧Vfの低減を図ることができる。具体的には図8に示すように、ほぼE1量=E2量となるよう設定し、かつこれらのエネルギー準位を形成するための添加物量を適宜調整すれば、PDPの放電状態を良好に保ちつつ、放電開始電圧Vfを低減できることが可能である。E1量とE2量には当図のように最適な領域範囲が存在する。
従来技術のMgOからなる保護層は、上述したように例えばMgOの禁制帯の伝導帯近傍に第1のエネルギー準位を設け、これにより図7のように当該第1のエネルギー準位31に存在する電子が、矢印32に示す遷移で獲得したエネルギーを利用して近くの電子を放電空間に放出させ放電開始電圧Vfを下げる工夫がなされているものがある。しかしこの従来技術は、本願発明者らの実験によれば放電開始電圧Vfが低減される一方で、第1のエネルギー準位31に存在する電子の増加に比例してMgOの絶縁性が保てなくなり、画像表示のための壁電荷等の電荷保持が困難になって、いわゆる黒ノイズが生じやすくなることが分かった。
ここでは実施の形態1のPDP1の製造方法について、その一例を説明する。なお、ここに挙げる製造方法は、これ以降の実施の形態2、3のPDP1の製造方法にも同様に適用できる。
2-1.フロントパネルの作製
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるフロントパネルガラスの面上に表示電極を作製する。ここでは印刷法によって表示電極を形成する例を示すが、これ以外にもダイコート法、ブレードコート法等で形成することができる。
次に、形成した表示電極の上から、軟化点が550℃〜600℃の酸化鉛系あるいは酸化ビスマス系の誘電体ガラス粉末とブチルカルビトールアセテート等からなる有機バインダーを混合したペーストを塗布する。そして、550℃〜650℃程度で焼成し、誘電体層を形成する。
a.
まず、MgOを酸化性雰囲気で成膜することによって、MgO結晶中にMgの欠損部分を形成する。その後、短時間の還元性雰囲気処理でMgO結晶中に酸素欠損部分を形成する。これによって、MgO中に、酸素欠損部分とMgの欠損部分の2種の欠損部分を共存させる。酸素欠損部分が第1のエネルギー準位、Mgの欠損部分が第2のエネルギー準位となる。このように、上記2種の欠損部分を形成する処理はどちらを先に行ってもよい。還元性雰囲気処理及び酸化性雰囲気処理としては、それぞれ水素を含んだプラズマ処理及び酸素を含んだプラズマ処理、或いは水素を含んだ熱処理及び酸素を含んだ熱処理を行うことができる。
ペレット状のMgOに、Na、K、Cu、Agなどの水素(H)を除くI族元素、もしくはN(窒素)、P、As、SbなどのV族元素を添加する。そして還元性雰囲気中で成膜工程を行う。還元性雰囲気処理として、熱処理またはプラズマ処理を行う。これにより、酸素欠損部分が第1のエネルギー準位、上記水素(H)を除くI族元素もしくはN(窒素)、V族元素が第2のエネルギー準位をそれぞれ形成する。
ペレット状のMgOに、B、Al、Ga、InなどのIII族元素、IV族元素、もしくはF、Cl、Br、IなどのVII族元素を添加する。そして酸化性雰囲気中で成膜工程を行う。酸化性雰囲気処理として、酸素を含んだ熱処理または酸素を含んだプラズマ処理を行う。これにより上記III族元素、もしくは上記VII族元素が第1のエネルギー準位を形成する。また、酸化性雰囲気処理により形成される、Mgの欠損部分が第2のエネルギー準位となる。
ペレット状のMgOに、前記VII族元素と、前記水素(H)を除くI族元素もしくはV族元素を同時に添加し、成膜する。そして酸化性雰囲気中で成膜工程を行う。これにより前記VII族元素が第1のエネルギー準位を形成し、前記水素(H)を除くI族元素もしくはV族元素が第2のエネルギー準位を形成する。
ペレット状のMgOに、前記III族元素、IV族元素、VII族元素のうちのいずれかと、前記水素(H)を除くI族元素もしくはV族元素を同時に添加し、成膜する。これにより、前記III族元素、IV族元素、VII族元素のうちのいずれかが第1のエネルギー準位を形成し、前記水素(H)を除くI族元素もしくはV族元素が第2のエネルギー準位を形成する。
実施の形態1において、Crを添加する場合の添加量は、保護層の結晶性を維持するため、1E18/cm3以下が適当である。なお後述のSiやHを添加する場合は、少なくとも1E16/cm3程度は必要である。
また、保護層はCVD(Chemical vapor deposition)等別の方法で形成してもよい。
2-2.バックパネルの作製
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるバックパネルガラスの表面上に、スクリーン印刷法によりAgを主成分とする導電体材料を一定間隔でストライプ状に塗布し、厚さ約5μmのアドレス電極を形成する。ここで、作製するPDP1を例えば40インチクラスのNTSC規格もしくはVGA規格とするためには、隣り合う2つのアドレス電極の間隔を0.4mm程度以下に設定する。
次に、誘電体膜と同じ鉛系ガラス材料を用いて、誘電体膜の上に、隣り合うアドレス電極の間毎に高さ約60〜100μmの隔壁を形成する。この隔壁は、例えば上記ガラス材料を含むペーストを繰り返しスクリーン印刷し、その後焼成して形成できる。なお、本発明では隔壁を構成する鉛系ガラス材料にSi成分が含まれていると、保護層のインピーダンス上昇を抑制する効果が高まるので望ましい。このSi成分はガラスの化学組成に含まれていても、ガラス材料に添加してもよい。また蒸気圧の高い不純物(N、H、Cl、F等)の添加物は、MgOの成膜時に気相中にガス状に適量添加してもよい。
RGB各色蛍光の化学組成は、例えば以下の通りである。
赤色蛍光体;Y2O3;Eu3+
緑色蛍光体;Zn2SiO4:Mn
青色蛍光体;BaMgAl10O17:Eu2+
各蛍光体材料は、平均粒径2.0μmのものが使用できる。これをサーバー内に50質量%の割合で入れるとともに、エチルセルローズ1.0質量%、溶剤(α-ターピネオール)49質量%を投入し、サンドミルで撹拌混合して、15×10-3Pa・sの蛍光体インクを作製する。そして、これをポンプにて径60μmのノズルから隔壁20間に噴射させて塗布する。このとき、パネルを隔壁20の長手方向に移動させ、ストライプ状に蛍光体インクを塗布する。その後は500℃で10分間焼成し、蛍光体層21〜23を形成する。
なおフロントパネルガラスおよびバックパネルガラスをソーダライムガラスからなるものとしたが、これは材料の一例として挙げたものであって、これ以外の材料でもよい。
2-3.PDPの完成
作製したフロントパネルとバックパネルを、封着用ガラスを用いて貼り合わせる。その後、放電空間の内部を高真空(1.0×10-4Pa)程度に排気し、これに所定の圧力(ここでは66.5kPa〜101kPa)でNe-Xe系やHe-Ne-Xe系、He-Ne-Xe-Ar系などの放電ガスを封入する。
3.実施の形態2
3-1.PDPの構成
実施の形態2のPDP1の全体的な構成は、上記実施の形態1のPDPとほぼ同様であるが、保護層15の構成に特徴を有する。
この構成により、保護層15のMgOの禁制帯中では酸素欠損部分によって第1のエネルギー準位、Crによって第2のエネルギー準位がそれぞれ形成されるので、実施の形態1とほぼ同様の効果が奏される。
保護層15の材料としては、スパッタ耐性および二次電子放出特性に優れるものが望まれるが、これはPDP1の駆動時に発生する放電を長期間良好に保つとともに、保護層15のキャリア濃度を維持してインピーダンス特性が変化するのを制御し、放電空間24において放電が生じやすくするための条件とされている。これを満足すれば、駆動時におけるアドレス放電等の放電確率を高めることができ、高精細表示に伴う高速駆動においても良好な画像表示性能を得ることができるので望ましい。
このようにCrを利用することによって、PDP1駆動時において、保護層15のMgOの禁制帯中において、酸素欠損部分による第1のエネルギー準位、Crによる第2のエネルギー準位が形成され、実施の形態1と同様の効果が奏される。
さらに、PDPの構成によっては、PDPの構成要素に含まれるSi成分が放電空間を介して保護層中に含浸し、経時的にインピーダンス変化を起こすことが見られるが、本実施の形態2のようにCrを用いると、そのような問題の発生を回避できるというメリットもある。
図5は、本実施の形態3におけるPDP1の保護層15の構成を示す部分断面図である。当図5に示すように、本実施の形態3の保護層15は2層15A、15Bからなる構造となっており、このうち表面にはCrが添加され、且つ酸素欠損部分を有する厚さ約100nmのMgOからなる保護層15Aが配設されている(請求の範囲5+6)。この構成によっても、酸素欠損部分が第1のエネルギー準位を形成し、Crが第2のエネルギー準位を形成する。このように本発明では、保護層15の厚み方向の膜質が一様であるものに限るものではなく、少なくともその表面近傍において第1および第2のエネルギー準位が形成された膜質になっていれば、本発明の効果を得ることができる。100nmという数値は、一般にPDPを寿命程度点灯した場合において、多く見積もって100nm程度保護層が磨耗すると言われることに基づいている。これだけの膜厚を確保すれば、通常使用時において、保護層15Aによる効果が持続するからである。
上記実施の形態2、3では、酸素欠損部分を持つ保護層15のMgOにCrを添加する例について説明したが、本発明はこの構成に限定せず、上記MgOにCrに加えて水素(H)を添加すると、さらに高い効果が得られる。MgOにCrとHを添加した場合、まずCrによって前述の通り、700nm付近のブロードな可視光発光が得られるとともに、伝導帯近傍にまで電子が励起され、保護層15のキャリア濃度が向上する。一方、添加されたHはMgOの酸素欠損部分に拡散していき、一価の負イオン状態になり、伝導帯下端の近傍にドナーライクな不純物準位を形成する。このようなHは、不純物準位まで励起された電子のリザーバーとして作用するので、可視光発光が長寿命になり、さらに保護層15のキャリア濃度が向上されることとなる(MgOに不純物を添加した場合の物性解析についてはG.H.Rosenblatt et al.Phys.Rev. B39(1989)10309を参照)。この効果によって、保護層15のMgOにCrに加えて水素(H)を添加した構成でも、実施の形態2、3と同様に放電確率を高め、良好な画像表示性能を得ることができる。
さらに本発明では、保護層15の構成として、酸素リッチなMgOに対して、CrとSiを添加してもよい。この場合でも上記酸素リッチなMgOに対してCrおよびHを添加した場合と同様の効果が奏される。
15 保護層
15A 酸素欠損部分を有する厚さ約100nmのMgOからなる保護層
24 放電空間
151 第1のエネルギー準位
152 第2のエネルギー準位
Claims (16)
- 第1基板が、放電空間を介して第2基板と対向配置され、前記両基板周囲が封着されてなるプラズマディスプレイパネルであって、
第1基板は第2基板と対向する主面に保護層を有し、
当該保護層は、酸化マグネシウムを主体とする材料からなり、酸素欠損部分、Mg欠損部分、もしくはドーパントのいずれかによる2つの異なる欠陥を有することで、禁制帯中に電子供与型の第1のエネルギー準位と電子受容型の第2のエネルギー準位が存在し、
前記第1のエネルギー準位は、前記第2のエネルギー準位よりも伝導帯に近接して存在している
プラズマディスプレイパネル。 - 前記第1のエネルギー準位は酸素欠損部分に起因している
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 前記第2のエネルギー準位はMg欠損部分に起因している
請求項2に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 前記保護層は、その放電空間に臨む表面から深さ100nm以上にわたってマグネシウムリッチに構成されている
請求項2に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 前記保護層にはクロムが添加されている
請求項2に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 保護層には水素を除くI族典型元素又は遷移元素、もしくはV族典型元素のいずれかが添加されることにより、第2のエネルギー準位が形成されている
請求項2に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 前記保護層には水素が添加され、当該水素および酸素欠損部分により、第1のエネルギー準位が形成されている
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 前記保護層は酸素欠損部分を有するとともに、珪素が添加されている
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 前記保護層にはIII、IV、VII族典型元素のいずれかが添加されている
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。 - III、IV、VII族典型元素のいずれかにより前記第1のエネルギー準位が形成され、
Mg欠損部分により前記第2のエネルギー準位が形成されている
請求項9に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 前記保護層は、その放電空間に臨む表面から深さ100nm以上にわたって、酸素リッチに構成され、且つ、クロムが添加されている
請求項10に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 前記保護層には、珪素または水素が添加されている
請求項11に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 前記保護層にはVII族典型元素が含まれ、
さらに水素を除くI族典型元素または遷移元素、もしくはV族典型元素のいずれかが添加されている
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。 - VII族典型元素により前記第1のエネルギー準位が形成され、
水素を除くI族典型元素または遷移元素、もしくはV族典型元素のいずれかにより前記第2のエネルギー準位が形成されている
請求項13に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 前記保護層にはIII族典型元素、IV族典型元素、VII族典型元素のいずれかと、
水素を除くI族典型元素または遷移元素、もしくはV族典型元素のいずれかが添加されている
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。 - III族典型元素、IV族典型元素、VII族典型元素のいずれかにより前記第1のエネルギー準位が形成され、
水素を除くI族典型元素または遷移元素、もしくはV族典型元素のいずれかにより前記第2のエネルギー準位が形成されている
請求項15に記載のプラズマディスプレイパネル。
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