JP2006124612A - インク組成物及び該インク組成物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 印刷によって形成される画像が、経時的に変色、退色を起こす現象の中で、特に、2種類以上の着色剤を使用したインクにおいて、画像を形成した場合に、画像劣化の発生が有効に防止され、安定的に画質を維持することができる画像形成を可能とする着色剤を2種以上含むインク、特に、インクジェット記録用インク、及び該インクの製造方法を提供すること。
【解決手段】 2種以上の着色剤を含有するインク組成物において、該着色剤の混合物について測定した一重項酸素消光速度(kQmix)の値が2.0×108M-1s-1以上であることを特徴とするインク及び該インクの製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】 2種以上の着色剤を含有するインク組成物において、該着色剤の混合物について測定した一重項酸素消光速度(kQmix)の値が2.0×108M-1s-1以上であることを特徴とするインク及び該インクの製造方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、堅牢性に優れる画像を与える2以上の着色剤を有するインク組成物及び該インク組成物の製造方法に関する。
インクジェット印刷は、機器自体が廉価に提供されており、更に、低ランニングコスト、カラー記録が容易であること等の特長を有していることから、近年、コンピュータ、デジタルカメラ等からのデジタル信号の出力機器として、インクジェットプリンターが急速に普及している。特に近年では、家庭やオフィスで手軽に印刷できるインクジェットプリンターが開発され、その画質も銀塩写真に迫るものが開発されてきている。
ここで、インクジェットプリンターに用いられる記録用インクについては、染料を水性媒体若しくは非水性媒体に溶解させた染料インク、或いは、顔料を水性媒体若しくは油性媒体中に分散させた顔料インク、或いは、熱溶融可能な固体インク等、様々なタイプのインクについての提案がある。これらの中でも、現在の主流となっているインクは、染料を水性媒体に溶解させた染料インクであり、発色の美しさ、人体及び環境に対する高い安全性等の特長を有している。しかしながら、水性染料は、耐光性、耐酸化性に劣るため、染料インクによって形成した画像は、銀塩写真と比較して保存安定性に劣り、特に、光等により経時的に画質、色相が劣化するという問題がある。
上記の問題に対する解決方法として、インク中における染料の劣化を防ぐ様々な解決方法が提案されている。その方法としては、インクに、酸化防止剤や紫外線吸収剤を添加する方法、画像表面をオーバーコートする方法によるものが主としたものである。これまでに、インク中に含有させる添加剤の種類や添加方法、酸化防止剤等の効果、選択法について、一重項酸素消光速度からアプローチしたもの(特許文献1参照)、インクジェット記録媒体のインク受容層に含有させる添加剤の種類や添加方法、酸化防止剤等の効果、選択法について、一重項酸素消光速度からアプローチしたもの(特許文献2参照)はあるが、着色剤が持つ一重項酸素消光速度(kQ)から、画像の劣化防止法についてアプローチしたものは未だ知られていない。又、本発明者らのこれまでの検討で、インクとした場合に、単独の使用では堅牢性が優れていると評価される画像が得られる着色剤であっても、これらを2種以上混合して使用したインクの場合には、予想に反して、着色剤を単独で使用したインクよりも、画像の堅牢性が低下してしまうことが多くの場合において認められた。これまでの公知資料には、上記した場合に発生する画像の堅牢性の低下現象に関する理論やモデル、予測方法に関するものは見当たらなかった。
従って、本発明の目的は、印刷によって形成される画像が、経時的に変色、退色(本発明では「変退色」という)を起こす現象の中で、特に、2種類以上の着色剤を使用したインク組成物(以下、「インク」という)において、画像を形成した場合に、画像劣化の発生が有効に防止され、安定的に画質を維持することができる画像形成を可能とする着色剤を2種以上含むインク、特に、インクジェット記録用インク、及び該インクの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、従来技術において生じていた上記した課題を解決するために鋭意研究を行った結果、2種類以上の着色剤が含有されたインクにおいて、該2種類以上の着色剤を組み合わせた着色剤の混合物の一重項酸素消光速度を測定した場合に、特定の値となるように、好ましくは、各着色剤の一重項酸素消光速度の測定値の間に特定の関係を有する組み合わせとなるように着色剤を選択することによって、着色剤の混合使用時においても、画像は、予想される以上の堅牢性の低下を起こすことがなく、画像の変退色が、従来のものに比べて著しく改善されることを見出して本発明に至った。ここで、一重項酸素とは、不対電子を持たないが空の軌道が2個の電子を強く求めるため、強力な酸化力を発揮するものである。
即ち、本発明は、2種以上の着色剤を含有するインクにおいて、該着色剤の混合物について測定した一重項酸素消光速度(kQmix)の値が2.0×108 M-1s-1以上であることを特徴とするインクである。
更に、上記した本発明の別の実施形態は、2種以上の着色剤を含有するインクの製造方法において、含有させる着色剤の混合物について一重項酸素消光速度(kQmix)を測定し、該値が2.0×108M-1s-1以上となるような2種以上の着色剤の組み合わせを選択してインクを製造することを特徴とするインクの製造方法である。
本発明によれば、インク中に含有させる2種類以上の着色剤の混合状態での一重項酸素消光速度(kQmix)を測定し、該値が特定以上となるようにすることによって、好ましくは、該kQmixと、各単独の着色剤がそれぞれに持つ固有消光速度定数(kQ)を比較し、着色剤のうち一番高い値を持つ着色剤の一重項酸素消光速度(kQ1)、一番低い値を持つ着色剤の一重項酸素消光速度(kQ2)との相関関係を把握することによって、インク調製時に光曝露試験後の画像堅牢性(濃度残存率)を予測することができ、特にインクジェット印刷法により形成された画像の変退色防止に優れた効果を発揮し、画像の保存安定性を向上させるインクを効率的に提供することが可能となる。
以下、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。従来行われている一重項酸素消光速度(kQ)に関する理論やモデル、測定方法、計算方法はいくつかあり、既に研究され文献等に発表されている。例えば、Harry H.Wasserman、Robert W.Murray著のSINGLET OXYGEN(1979)の第5章Quenchingof Singlet Oxygen等にいくつかの測定方法が掲載されている。又、既に測定された化合物と一重項酸素消光速度(kQ)の値が掲載されている文献の例としては、Journal of Physical Chemistry Reference DataのVol.10、No.4、809〜999頁(1981年)等があるが、これらの公知資料、文献等で議論されている一重項酸素消光速度(kQ)は、いわゆる酸化防止剤(抗酸化剤、一重項酸素消光剤)に関してであり、インクに含有するための着色剤の一重項酸素消光速度(kQ)に関する理論やモデル、測定方法、計算方法に関するものは見当たらない。それゆえ、着色剤が2種類以上共存しているときの一重項酸素消光速度(kQ)に関する理論やモデル、測定方法、計算方法に関するものは当然見当たらない。
一重項酸素消光速度定数(kQ)の測定は溶液中で行われているが、記録シートに吸着或いは分散している状態でも、ある程度相関がある。例えば、紙では、セルロース高分子中に染料が溶解或いは分散している状態であり、又、水も含有していることから、溶液中の測定値と記録シート上での性能に相関がある。水中での一重項酸素の寿命は(5±2)×105M-1s-1であるので、少なくともkQが1×106M-1s-1以上の値を有する化合物であることが好ましいといわれている。これまで、一重項酸素消光剤の一重項酸素消光速度(kQ)に関しては、第22回酸化反応討論会要旨集7頁(愛媛大理、向井、大幅ら)、J.Am.Chem.Soc.93:5774−5779;1971(Young,R.H et.al)に記載されている競争反応法、或いはChem.Phys.Lett.262:125−130;1996(M.Mitsui et.al)に記載されている時間分解ESR(Electron spin resonance)法を用いて測定されてきた。
即ち、以下に述べる競争反応法によって測定されているが、本発明においても基本的には同様の方法を用いて測定した。競争反応法では、先ず、被測定物質(本発明の場合は着色剤)が溶解可能なエタノール溶媒を用い、35℃で、3−(1,4−エポジオキシル−4−メチル−1,4−ジヒドロ−1−ナフチル)プロピオン酸(EP)から、Tetrahedron Lett.,41、2177〜2181(1985)等に、井上らによって記載されている方法に従って、一重項酸素を発生させ、消光速度の基準物質として2,5−ジフェニル−3,4−ベンゾフラン(DPBF)を用い、被測定物質と、一重項酸素との反応速度が既知であるDPBFとを共存させ、両者を一重項酸素に対し競争反応させ、DPBFの吸収波長(λmax=411nm)における吸光度の減衰速度低下効果に関する被測定物質の濃度依存性を反応速度測定モード装備の多連装分光光度計により追跡することにより、一重項酸素消光速度(kQ)を測定する。
尚、一重項酸素消光速度(kQ)を測定する別の方法としては、ベンゼン、トルエン等の有機溶媒を用いて、一重項酸素とTEMPO(2,2,6,6−tetramethylpiperidinyl−1−oxyl)のCIDEP(Chemically induced dynamic electron polarization)スペクトルへの被測定物質の濃度依存性の時間変化を、時間分解ESR法によって追跡する方法が挙げられる。
本発明においては着色剤の一重項酸素消光速度が測定できる方法であれば測定方法に関しては限定されるものではなく、着色剤の速度測定用溶媒への溶解性により、一重項酸素発生手段、着色剤の吸収波長によっては消光速度基準物質、一重項酸素消光速度測定手段(分光光度計を用いた競争反応法、ESRを用いた時間分解ESR法)を適宜選択して用いることができる。
尚、当然のことながら、一重項酸素消光速度を測定される着色剤の混合物の混合比と、インク中の着色剤の混合比は同じにする必要がある。
尚、当然のことながら、一重項酸素消光速度を測定される着色剤の混合物の混合比と、インク中の着色剤の混合比は同じにする必要がある。
本発明においては着眼点を着色剤に移し、上記の測定をインクの設計に利用することについて下記の検討を行った。先ず、被測定物質として種々の異なる着色剤を選択し、その着色剤の単独での一重項酸素消光速度(kQ)及びその対数値(logkQ)と、2種以上の着色剤を混合した種々の組み合わせのものを被測定物質として、該混合物の一重項酸素消光速度(kQmix)及びその対数値(logkQmix)を測定した。そして、上記でkQを測定した単独の着色剤、或いは複数の着色剤を組み合わせてなる種々の着色剤を含有するインクを作成し、該インクを用いて記録媒体に印刷した。得られたそれぞれの画像について、堅牢性を評価し、その相関関係について鋭意検討を行った。堅牢性については、光曝露試験前後において画像の反射濃度をそれぞれ測定し、濃度残存率を算出することで評価した。この際に行った光曝露試験の条件及び方法は、70,000lux白色蛍光灯による24℃・60%RHの温湿度条件下での260時間促進耐光性試験である。又、反射濃度は、分光光度計スペクトロリノ(グレタグマクベス社製)で測定した。
ここで、着色剤(色素、染料)に関しては、下記に挙げた理由等から、従来から、一重項酸素消光速度(kQ)を測定した例は知られていない。(1)着色剤は、消光速度測定の基準物質であるDPBFの吸収波長λmax411nm付近に吸収があることが多い、(2)着色剤はエタノール溶媒に溶けにくいものが多い、(3)誘電率が高い水系での測定はESR法には不向きである。これに対し、本発明では、411nm付近に吸収がない着色剤に関して、超音波等を適宜照射することで、エタノール溶媒に溶解させることを可能とし、着色剤の一重項酸素消光速度(kQ)及び(kQmix)を測定することに成功した。尚、一重項酸素消光速度(kQ)及び(kQmix)の測定手段に関しては、この他にも一重項酸素消光速度(kQ)を測定できる手段があればそれを用いることもできる。即ち、本発明の技術的な特徴は、着色剤の一重項酸素消光速度(kQ)を測定し、該kQ値によってインクに含有させる着色剤の組み合わせを決定すれば、経時的な画像劣化が抑制された堅牢性の高い画像を得ることができる優れたインクとなることを見いだした点にある。
より具体的には、2種以上の着色剤が混合されてなるインクにおいて、下記の関係を満たすことが有効であることを見いだして本発明に至った。(1)その着色剤の組み合わせで混合した被測定物質の一重項酸素消光速度(kQmix)を測定し、測定値が2.0×108M-1s-1以上となるように着色剤の組み合わせを決定する。(2)好ましくは、上記のkQmixの測定に加えて更に、その着色剤のそれぞれについて測定した一重項酸素消光速度(kQ)の中で一番高い値をkQ1、一番低い値をkQ2とした時に、上記kQmixが少なくともkQ2より大きくなるように着色剤の組み合わせを決定する。
本発明者らの検討によれば、上記kQmixの値が、2.0×108M-1s-1以上である場合における着色剤化合物の混合状態は、励起一重項酸素を速やかに消光する特性を有するものとなる。この場合の消光機構としては、消光する化合物と一重項酸素が反応して酸化物となって消光する化学的消光速度(krmix)と、反応せずに一重項酸素を三重項酸素に変換する物理的消光速度(kqmix)があるが、一重項酸素消光速度(kQmix)には通常、この両方の消光速度が含まれている。この場合に、一重項酸素を消光する速さの目安となるのが一重項酸素消光速度(kQmix)であり、この定数は、濃度1M(mol・dm-3)の一重項酸素消光剤溶液中の消光剤分子が1秒当たりに消光する一重項酸素の分子数を表している。つまり、この値が大きいほど一重項酸素を消光しやすいと言える。
尚、本発明においては、kQmixの値が1.0×1012M-1s-1以下であることが好ましい。kQmixの値が1.0×1012M-1s-1を超えると着色剤の活性が強くなり過ぎて、安定に存在しにくくなることがある。
尚、本発明においては、kQmixの値が1.0×1012M-1s-1以下であることが好ましい。kQmixの値が1.0×1012M-1s-1を超えると着色剤の活性が強くなり過ぎて、安定に存在しにくくなることがある。
更に、本発明にかかるインクは、着色剤を含有しているものであることから、本発明において規定する一重項酸素消光速度(kQmix)の値を、化学的消光速度(krmix)によって稼ぐような形態となることは、好ましいものとは言えない。本発明においては、一重項酸素消光速度(kQmix)中における化学的消光速度(krmix)の割合(krmix/kQmix)が、10%以下となるような着色剤の組み合わせを用いることが好ましく、より好ましくは、一重項酸素消光速度(kQmix)が、物理的消光速度(kqmix)に限りなく近いことが最も好ましい形態であると言える。
本発明において着目している着色剤を混合使用したときに、このような一重項酸素消光速度に関して、このような現象が認められる原因としては、着色剤同士の相互作用が考えられる。エネルギー移動により効率的に一重項酸素を消光しているメカニズムにおいては、着色剤の分子間で立体障害等の分子内反応が阻害されるような相互作用が生じることにより、一重項酸素消光速度(kQ)に悪影響が出てくると考えられる。この点、着色剤の一重項酸素消光メカニズムが類似している着色剤同士においては、そのような相互作用が少ないことが考えられ、このことは、後述する本発明の実施例にみられるように、アゾ系着色剤同士、アントラピリドン系着色剤同士で好適な組み合わせが多いこと等にも裏付けられている。本発明による選択法により着色剤の組み合わせを選択することによって、着色剤分子自身が高い一重項酸素消光能力(抗酸化能力)を発揮し、極めて高い画像堅牢性を達成することが可能となる。
染料を代表とする記録剤(着色剤)による記録物の退色機構については諸説があるが、一般には、次のように考えられている。光の照射により染料等の記録剤が三重項励起状態となり、更に、その三重項状態の記録剤と、基底状態の三重項酸素のエネルギー交換により励起一重項酸素が生成する。この一重項酸素は、活性が高い上に比較的寿命が長く、染料等の記録剤と反応して記録剤を酸化或いは分解して画像を劣化させる原因になると考えられている。本発明においては、インクにおいて、着色剤化合物の混合状態が励起一重項酸素を速やかに消光する特性を有する、kQmixの値が2.0×108M-1s-1以上となるようにしているため、光の照射によって発生する画像劣化の原因となる一重項酸素を着色剤そのものが消光することで、着色剤付近の一重項酸素の濃度を低くできるので、画像の変退色を防ぐことができる。
本発明で用いる着色剤としては、水溶性の染料を用いることが好ましく、具体的には、カラーインデックスにおいて、酸性染料、直接染料、触媒染料、反応染料、可溶性建染染料、硫化染料、食用染料に分類されているものが挙げられる。又、カラーインデックスに記載されていないものであっても、着色剤を混合した状態における一重項酸素消光速度(kQmix)が、本発明で規定する値以上となるものであれば、好適に使用できる。
以下、本発明にかかるインクの、インクジェット記録用インクに適用する場合の好ましい形態について説明する。本発明にかかるインクは、上述した規定を満足するように選択された着色剤の組み合わせ、より好ましくは染料の組み合わせを有するものであればよいが、基本的には、更に、水、或いは、水と水溶性有機溶剤との混合媒体の水系媒体とからなる。
この際の水溶性有機溶剤としては、好ましくは、水溶性高沸点低揮発性の有機溶剤を用いる。好ましい水溶性高沸点低揮発性の有機溶剤の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレン基が2〜6の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコール低級モノアルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコール低級ジアルキルエーテル類が挙げられる。これらの水溶性高沸点低揮発性有機溶剤の添加量は適宜決定されてよいが、インク全質量に対し、5〜35質量%の範囲で添加されるのが好ましい。その理由は、多過ぎると、印刷物に残ったこれら溶剤が場合によって、空気中の湿気を吸収して、保存中の画像のにじみの原因となる恐れがあるからである。
又、本発明にかかるインクに添加することができる他の水溶性有機溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール等の炭素数1〜5のアルキルアルコール類;スルフォラン、ピロリドン、N−メチル−2−イミダゾリジノン、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール等が挙げられる。これらの水溶性有機溶剤は単独でも混合しても使用でき、又、前記の水溶性高沸点低揮発性有機溶剤と併用することもできる。
本発明にかかるインクは、更に、多価アルコールの低級アルキルエーテルを含むことができる。多価アルコールの低級アルキルエーテルの好ましい例としては、モノ、ジ、及びトリエチレングリコールの炭素数1〜6のアルキルエーテル、モノ、ジ、及びトリプロピレングリコールの炭素数1〜6のアルキルエーテル、より好ましくは、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらの中で最も好ましいものは、ジエチレングリコールモノブチルエーテルである。その添加量は適宜決定されてよいが、例えば、5〜15質量%程度とすることが好ましい。
又、本発明にかかるインクは、アセチレングリコールを含むこともできる。この際に、アセチレングリコールとして市販されているものを利用することが可能であり、例えば、サーフィノール82、104、440、465、TG(オルフィンSTG)(以上商品名、製造元:AirProduct and Chemicals Inc.、販売元:日信化学工業株式会社)を利用することができる。アセチレングリコールの添加量は、適宜決定されてよいが、例えば0.3〜1.8質量%程度が好ましい。
又、本発明にかかる好ましい態様によれば、先に挙げたような多価アルコール低級アルキルエーテルと、上記のアセチレングリコールとを組み合わせて用いることができる。これらの併用によって、記録媒体に付着したインクが速やかに浸透し、カラーインクジェット記録においてしばしば問題とされる、隣接するドット間の混色等による印字品質の劣化を有効に防止できる。
更に、本発明にかかるインクは、その種々の特性を改善するための添加剤を含んでなることができる。添加剤の例としては、例えば、粘度、表面張力、pH、比抵抗等の各種物性値の調整や、防腐、防カビ等の目的で、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤;アセチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤;セルロース類、ポリビニルピロリドンポリビニルアルコール、水溶性樹脂等の水溶性の天然或いは合成高分子物;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン類;塩化リチウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウムの無機塩類、ベンゾトリアゾール等を添加することができる。
上記したような添加剤の添加量は、1〜30質量%の範囲とすることが好ましく、更に好適には、3〜20質量%の範囲である。又、界面活性剤の添加量は0.01〜10質量%の範囲とすることが好ましく、更に好適には0.05〜3質量%の範囲である。
インクの好ましい物性は、粘度、表面張力、pH(何れも25℃)について下記の通りである。粘度は1.5〜10cps(mPa・s)の範囲が好ましく、1.8〜5cps(mPa・s)の範囲であれば更に好ましい。表面張力は25〜45dyn/cm(mN/m)の範囲が好ましい。pHの好ましい範囲は4〜10、更に好ましくは6〜9の範囲である。
本発明にかかるインクは、インクジェット記録方法に好適に用いることができるが、その際に使用する記録媒体としては、例えば、紙、フィルム等の情報伝達用シート、繊維及び皮革等が挙げられる。情報伝達用シートについては、表面処理されたもの、具体的には、紙、フィルム等の基材にインク受容層を設けたものが好ましい。インク受容層を設けたものは、通常、インクジェット用専用紙(フィルム)やインクジェット用光沢紙(フィルム)と呼ばれているが、市販されているものとしては、例えば、光沢フィルム HG−101(キヤノン社製)、プロフェッショナルフォトペーパー PR−101(キヤノン社製)、マットフォトペーパー MP−101(キヤノン社製)等が挙げられる。
インク受容層の一例を挙げると、例えば、多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックス等の、インク中の色素を吸着し得る無機微粒子をポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に上記基材表面に塗工することにより設けたものが挙げられる。尚、本発明にかかるインクは、普通紙にも利用できることは勿論である。
以下、好ましい実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、文中「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準を意味する。
下記に構造式を示した4種の着色剤(1)〜(4)について、それぞれ一重項酸素消光速度(kQ)を先に述べた競争反応法によって測定した。尚、着色剤によってはエタノールに溶解しにくいものもあったため、適宜、超音波を照射することによって、所望の濃度の溶液を調製し、これを測定に用いた。得られた測定結果を、色素(1)〜(4)のkQ値及びlogkQ値については表1に示した。更に、これらの色素(1)〜(4)を種々に組み合わせて、それぞれ2種類を下記の組成で含有させた6種類の混合物とし、上記と同様に測定溶液を調製し、これらを測定に用いた。表2に、測定の結果得られたkQmix及びlogkQmixを示した。
下記に示した構造の着色剤(3)は、以下のようにして合成した。キシレン中に1−(N−メチルアミノ)−4−ブロモアントラキノン、炭酸ナトリウム、ベンゾイル酢酸エチルエステルを反応させ、反応物を濾過、洗浄した。得られた反応物をN,N−ジメチルホルムアミド中で、メタアミノアセトアニリド、酢酸銅、炭酸ナトリウムを順次仕込み反応させ、反応物を濾過、洗浄した。更に、これを、発煙硫酸中でスルホン化し、濾過、洗浄を行い、これを水酸化ナトリウム存在下、シアヌルクロライドと縮合反応を行った。
<実施例、参考例及び比較例>
上記で説明した着色剤(1)〜(4)を用いて、着色剤を単独で(参考例)、或いは2種類の着色剤を混合して用いて(実施例或いは比較例)、以下の組成及び方法でインクジェット記録用インクをそれぞれ調製した。
・着色剤(1)〜(4) インク中に合量で5部
・ジエチレングリコール 5部
・グリセリン 10部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル社製)
1部
・イオン交換水 79部
以上の組成で混合し、更に、ポアサイズが0.2ミクロンのメンブレンフィルターを通じて加圧濾過し、インクを得た。
上記で説明した着色剤(1)〜(4)を用いて、着色剤を単独で(参考例)、或いは2種類の着色剤を混合して用いて(実施例或いは比較例)、以下の組成及び方法でインクジェット記録用インクをそれぞれ調製した。
・着色剤(1)〜(4) インク中に合量で5部
・ジエチレングリコール 5部
・グリセリン 10部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル社製)
1部
・イオン交換水 79部
以上の組成で混合し、更に、ポアサイズが0.2ミクロンのメンブレンフィルターを通じて加圧濾過し、インクを得た。
<評価>
上記で調製した実施例、参考例及び比較例の各インクを用いて、インクジェットプリンターPIXUS990i(キヤノン社製)でインクジェット記録を行った。記録媒体には、インクジェット専用紙プロフェッショナルフォトペーパー PR−101(キヤノン社製)を用い、大きさ1.0cm×1.0cmの領域を印字Dutyをコントロールすることで、OD(Optical Density)=0.9〜1.1の範囲に入るように印字し、評価試験に用いるサンプル画像とした。
上記で調製した実施例、参考例及び比較例の各インクを用いて、インクジェットプリンターPIXUS990i(キヤノン社製)でインクジェット記録を行った。記録媒体には、インクジェット専用紙プロフェッショナルフォトペーパー PR−101(キヤノン社製)を用い、大きさ1.0cm×1.0cmの領域を印字Dutyをコントロールすることで、OD(Optical Density)=0.9〜1.1の範囲に入るように印字し、評価試験に用いるサンプル画像とした。
上記で得た各サンプル画像を用い、本発明の効果を確認するため、下記の試験を行った。即ち、耐光性試験・変退色試験の方法として、各サンプル画像に対して、70,000lux白色蛍光灯による24℃・60%RHの温湿度条件下での260時間促進耐光性試験を行った。評価方法は、この促進耐光性試験前及び後のサンプルについて、分光光度計スペクトロリノ(グレタグマクベス社製)を用いて光学密度をそれぞれ測定し、下記式(A)によって濃度残存率を計算により求めた。
濃度残存率(%)=(D/D0)×100・・・・式(A)
D・・・耐光性促進試験後(260時間後)の光学密度
D0・・・耐光性促進試験前の光学密度
濃度残存率(%)=(D/D0)×100・・・・式(A)
D・・・耐光性促進試験後(260時間後)の光学密度
D0・・・耐光性促進試験前の光学密度
着色剤を単独で使用した参考例のインク、及びこれに用いた着色剤について、着色剤の一重項酸素消光速度(kQ)、及びそのlogkQ、更に、インクとした場合の画像の堅牢性の指標となる濃度残存率を表1に示した。
着色剤を2種類用いた実施例及び比較例のインク、及びインクに用いた2種類の着色剤について、混合使用した場合の着色剤の一重項酸素消光速度(kQmix)及びそのlogkQmix、更に、インクとした場合の画像の堅牢性の指標となる濃度残存率を表2に示した。
更に、実施例、参考例及び比較例のインクによって形成した画像堅牢性の指標となる濃度残存率と、インクに使用した各着色剤における一重項酸素消光速度との関係を図1に示した。
表1、2及び図1から明らかな通り、2種以上の着色剤の混合物の一重項酸素消光速度(kQmix)とインク化して光曝露した後の画像堅牢性(濃度残存率)の間には明確な相関関係が存在し、着色剤の混合物の一重項酸素消光速度(kQmix)の値が2.0×108M-1s-1以上であって、好ましくは、単独の着色剤の持つ一重項酸素消光速度の中で一番高い値をkQ1、一番低い値をkQ2とした時、kQmixが少なくともkQ2より大きくなる組み合わせの着色剤を含有することを特徴とするインクであれば、着色剤の混合使用時においても着色剤単独時よりも堅牢性の低下等を引き起こすことなしに、満足な画像堅牢性を得られることがわかる。
Claims (7)
- 2種以上の着色剤を含有するインク組成物において、該着色剤の混合物について測定した一重項酸素消光速度(kQmix)の値が2.0×108M-1s-1以上であることを特徴とするインク組成物。
- 前記着色剤のそれぞれについて測定した一重項酸素消光速度(kQ)の中で一番高い値をkQ1、一番低い値をkQ2とした時に、インク中に含有させる2種以上の着色剤の混合物について測定した一重項酸素消光速度(kQmix)が、少なくともkQ2より大きい請求項1に記載のインク組成物。
- 前記着色剤が、アゾ系着色剤及びアントラピリドン系着色剤から選ばれる請求項1又は2に記載のインク組成物。
- インクジェット用である請求項1〜3の何れか1項に記載のインク組成物。
- 2種以上の着色剤を含有するインク組成物の製造方法において、含有させる着色剤の混合物について一重項酸素消光速度(kQmix)を測定し、該値が2.0×108M-1s-1以上となるような2種以上の着色剤の組み合わせを選択してインクを製造することを特徴とするインク組成物の製造方法。
- 前記着色剤のそれぞれについて測定した一重項酸素消光速度(kQ)の中で一番高い値をkQ1、一番低い値をkQ2とした時に、インク中に含有させる2種以上の着色剤の混合物について測定した一重項酸素消光速度(kQmix)が、少なくともkQ2より大きくなるように着色剤の組み合わせを決定する請求項5に記載のインク組成物の製造方法。
- 前記着色剤が、アゾ系着色剤及びアントラピリドン系着色剤から選ばれる請求項5又は6に記載のインク組成物の製造方法。
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WO2009078252A1 (ja) * | 2007-12-14 | 2009-06-25 | Nippon Kayaku Kabushiki Kaisha | 水溶性アントラピリドン化合物又はその塩、インク組成物及び着色体 |
-
2004
- 2004-11-01 JP JP2004318384A patent/JP2006124612A/ja active Pending
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WO2009078252A1 (ja) * | 2007-12-14 | 2009-06-25 | Nippon Kayaku Kabushiki Kaisha | 水溶性アントラピリドン化合物又はその塩、インク組成物及び着色体 |
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