JP5306233B2 - 水溶性アントラピリドン化合物又はその塩、インク組成物及び着色体 - Google Patents
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Description
従来、万年筆、フェルトペン等のインク及びインクジェット記録用のインクとしては、色素として水溶性の染料を水性媒体に溶解したインクが使用されている。また、これらのインクにおいては、ペン先やインク吐出ノズルでのインクの目詰まりを防止すべく、一般に水溶性の有機溶剤が添加されている。これらのインクには、十分な濃度の記録画像を与えること、ペン先やノズルの目詰まりを生じないこと、被記録材上での乾燥性がよいこと、滲みが少ないこと、保存安定性に優れること等が要求される。また、形成される記録画像には、耐水性、耐湿性、耐光性、耐ガス性等の堅牢度が求められている。
インクジェットプリンターのノズル詰まりは、ノズル付近でインク中の水分が他の溶剤や添加剤よりも先に蒸発し、水分が少なく溶剤や添加剤が多いという組成状態になったときに色素が結晶化し析出することに由来するものが多い。よって、インクを蒸発乾燥させた場合においても結晶が析出しにくいということが非常に重要な要求性能の一つである。また、この理由により、溶剤や添加剤に対する高い溶解性も色素に求められる性質の一つである。
よって、より多くの種類の普通紙上で一様に優れた耐水性をもち、さらには色相、鮮明性にも優れたマゼンタ色素が求められていた。
本発明は水又は水溶性有機溶剤に対する溶解性が高く、インクジェット記録に適する色相と鮮明性を有し、特に普通紙にプリントした場合における耐水性に優れた水溶性のマゼンタ色素及びそれを含有する保存安定性の良いインク組成物を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、
1)
下記式(1)で表されるアントラピリドン化合物又はその塩、
シアヌルアミノ基及びアゾ基が置換したベンゼン環上の、置換位置が特定されていないスルホン酸基は、シアヌルアミノ基の置換位置を1位、アゾ基の置換位置を5位とした場合に2位又は4位に置換しており、
Rは水酸基;アニリノ基;トルイジノ基;キシリジノ基;C2−C8アルキルアニリノ基;フェニルC1−C3アルキルアミノ基;C1−C12アルキルアミノ基;ジC1−C12アルキルアミノ基;カルボキシC1−C12アルキルアミノ基;又はスルホC1−C12アルキルアミノ基を表す。)、
2)
R1が水素原子又はC1−C8アルキル基であり、
Rがアニリノ基;トルイジノ基;キシリジノ基;C2−C4アルキルアニリノ基;フェニルC1−C3アルキルアミノ基;C1−C8アルキルアミノ基;ジC1−C8アルキルアミノ基;カルボキシC1−C5アルキルアミノ基;又はスルホC1−C4アルキルアミノ基である上記1)に記載のアントラピリドン化合物又はその塩、
3)
R1がメチル基であり、
Rがアニリノ基;トルイジノ基;キシリジノ基;C2−C4アルキルアニリノ基;フェニルC1−C3アルキルアミノ基;C1−C8アルキルアミノ基;又はカルボキシC1−C5アルキルアミノ基である上記1)に記載のアントラピリドン化合物又はその塩、
4)
下記式(19)で表される上記1)乃至3)のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物又はその塩、
下記式(20)で表される上記1)乃至3)のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物又はその塩、
上記1)乃至5)のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物又はその塩を色素として含有し、さらに水を含有することを特徴とするインク組成物、
7)
水溶性有機溶剤をさらに含有する上記6)に記載のインク組成物、
8)
インクジェット記録用である上記7)に記載のインク組成物、
9)
色素として含有する上記1)乃至5)のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物の総質量中における無機不純物の含有量が、該化合物の総質量に対して1質量%以下である上記6)乃至8)のいずれか一項に記載のインク組成物、
10)
色素として含有する上記1)乃至5)のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物の含有量が、組成物の総質量に対して0.1〜20質量%の範囲である請求項6乃至9のいずれか一項に記載のインク組成物、
11)
上記6)乃至10)のいずれか一項に記載のインク組成物をインクとして用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に記録を行うインクジェット記録方法、
12)
上記被記録材が情報伝達用シートである上記11)に記載のインクジェット記録方法、
13)
上記情報伝達用シートが普通紙又は多孔性白色無機物を含有するインク受容層を有するシートである上記12)に記載のインクジェット記録方法、
14)
上記6)乃至10)のいずれか一項に記載のインク組成物により着色された着色体、
15)
着色がインクジェットプリンターによりなされた上記14)に記載の着色体、
16)
上記6)乃至10)のいずれか一項に記載のインク組成物を含有する容器が装填されたインクジェットプリンター、
に関する。
さらに本発明のインク組成物は、従来の染料インクと比較して特に普通紙上での耐水性が極めて向上している。また、写真画質用インクジェット専用紙やフィルムのような多孔性白色無機物を表面に塗工した被記録材に記録しても耐水性が良好であり、写真調の記録画像の長期保存安定性にも優れている。このため、記録メディアを選ばないことが特徴の一つであるインクジェット印刷に非常に適しているインクである。このように、上記式(1)の水溶性アントラピリドン化合物はインク用、特にインクジェット記録用インクに含有するマゼンタ色素として極めて有用である。
なお、式(1)中、上記「シアヌルアミノ基及びアゾ基が置換したベンゼン環」に付与した1乃至6の数字は、該ベンゼン環上の位置を記載したものである。
Rで表されるトルイジノ基としてはo−、m−、p−トルイジノが挙げられる。
同様に、キシリジノ基としては、2,4−キシリジノ、2,5−キシリジノ、3,5−キシリジノ、3,4−キシリジノが挙げられる。
同様に、C2−C8アルキルアニリノ基のC2−C8アルキル部分は、直鎖、分岐鎖のいずれでもよいが、直鎖がより好ましい。該アルキル部分の炭素数は、C2−C6が好ましく、C2−C4がより好ましい。その具体例としては、4−エチルアニリノ、4−n−ブチルアニリノ、4−tert−ブチルアニリノ、4−n−ヘキシルアニリノ、4−n―オクチルアニリノ等が挙げられる。
同様に、フェニルC1−C3アルキルアミノ基のC1−C3アルキル部分は、直鎖、分岐鎖のいずれでもよいが、直鎖がより好ましい。その具体例としては、ベンジルアミノ、2−フェネチルアミノ、フェニルプロピルアミノ等のアルキル部分が直鎖のもの;1−フェネチルアミノ等のアルキル部分が分岐鎖のもの;等が挙げられる。
同様に、C1−C12アルキルアミノ基のC1−C12アルキル部分は、直鎖、分岐鎖のいずれでもよく、いずれも好ましいが、分岐鎖がより好ましい。該アルキル部分の炭素数は、C1−C10が好ましく、C1−C8がより好ましい。その具体例としては、メチルアミノ、ブチルアミノ、ヘキシルアミノ、オクチルアミノ、デシルアミノ、等のアルキル部分が直鎖のもの;2−エチルヘキシル等のアルキル部分が分岐鎖のもの;等が挙げられる。
同様に、ジC1−C12アルキルアミノ基のアルキル部分は、直鎖、分岐鎖のいずれでもよいが、直鎖がより好ましい。該アルキル部分の炭素数は、C1−C8が好ましい。その具体例としては、ジメチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジヘキシルアミノ等が挙げられる。
同様に、カルボキシC1−C12アルキルアミノ基のアルキル部分は、直鎖、分岐鎖のいずれでもよいが、直鎖がより好ましい。該アルキル部分の炭素数は、C1−C8が好ましく、C1−C5がより好ましい。その具体例としては、カルボキシメチルアミノ、カルボキシエチルアミノ、5−カルボキシペンチルアミノ等が挙げられる。
同様に、スルホC1−C12アルキルアミノ基のアルキル部分は、直鎖、分岐鎖のいずれでもよいが、直鎖がより好ましい。該アルキル部分の炭素数は、C1−C8が好ましく、C1−C6がより好ましく、C1−C4がさらに好ましい。その具体例としては、2−スルホエチルアミノ、3−スルホプロピルアミノ、4−スルホブチルアミノ等が挙げられる。
Rとして好ましいものは、アニリノ基、キシリジノ基、C2−C8アルキルアニリノ基、フェニルC1−C3アルキルアミノ基、C1−C12アルキルアミノ基、カルボキシC1−C12アルキルアミノ基であり、より好ましくはアニリノ基及びC2−C8アルキルアニリノ基である。これらの好ましい具体例としては、下記表1のRに記載した各基であり、アニリノ、2,4−ジメチルアニリノ、4−n−ブチルアニリノ、ベンジルアミノ、フェネチルアミノ、フェニルプロピルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、5−カルボキシペンチルアミノ、等がより好ましい。上記のうち、アニリノ及び4−n−ブチルアニリノがさらに好ましい。
例えば、後述する実施例1の(工程8)における液量を880部に調整する前の反応液、あるいは式(1)で表される化合物を含むウェットケーキ又は式(1)で表される化合物の乾燥品等を溶解した水溶液に食塩を加えて塩析し、析出固体を濾過することにより、上記式(1)で表される化合物のナトリウム塩をウェットケーキとして得ることができる。
また、得られたナトリウム塩のウェットケーキを水に溶解後、塩酸等の酸を加えてそのpHを適宜調整し、析出した固体を濾過することにより、上記式(1)で表される化合物の遊離酸を、あるいは式(1)で表される化合物の一部がナトリウム塩である遊離酸とナトリウム塩との混合物を得ることもできる。
さらに、式(1)で表される化合物の遊離酸のウェットケーキを水と共に撹拌しながら、例えば、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水、式(2)で表される化合物の水酸化物等を添加してアルカリ性にすれば、各々相当するカリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、又は4級アンモニウム塩を得ることもできる。
遊離酸のモル数に対して、加える上記の塩のモル数を制限することにより、例えばリチウムとナトリウムとの混塩等、さらにはリチウム、ナトリウム、カリウム、及びアンモニウムの混塩等も調製することが可能である。
上記式(1)で表される化合物の塩は、その塩の種類により溶解性等の物理的な性質、あるいはインクとして用いた場合のインクの性能、特に堅牢性に関する性能が変化する場合もある。このため目的とするインク性能等に応じて塩の種類を選択することも好ましく行われる。
すなわち、下記式(5)で示されるアントラキノン化合物1モルとベンゾイル酢酸エチルエステル1.1〜3モルとを、キシレン等の極性溶媒中、炭酸ナトリウム等の塩基性化合物の存在下、130〜180℃の条件で5〜15時間反応させることにより、下記式(6)で表される化合物を得る。
これらの無機不純物は、上記式(1)で表される化合物を色素として含有するインク組成物及び/又はインクを調製する場合に、該インク等の保存安定性や、該インクを使用してインクジェット記録等を行う際の吐出安定性等に悪影響を与えることが多い。このため、上記式(1)で表されるアントラピリドン化合物の総質量中における、該無機不純物の含有量は1質量%以下にすることが好ましく、下限は0質量%、すなわち分析機器における検出限界以下でもよい。
無機不純物の少ない化合物を製造するには、例えば逆浸透膜による方法が知られている。その他の方法として、上記式(1)で表される化合物の乾燥品あるいはウェットケーキを、メタノール等のC1−C4アルコール及び水の混合溶媒中に懸濁させて撹拌した後、固体を濾取し、乾燥することによっても脱塩処理が可能である。
上記式(1)の化合物を含む反応液は、本発明のインク組成物の製造に直接使用することも出来る。また、反応液から該化合物を単離、例えばスプレー乾燥等の方法により反応液を乾燥して単離した後、得られた化合物をインク組成物に加工することもできる。本発明のインク組成物は、上記式(1)で表される化合物を色素としてインク組成物の総質量に対して通常0.1〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%、さらに好ましくは2〜8質量%含有する。
水溶性有機溶剤の含有量はインクの総質量に対して0〜60質量%、好ましくは10〜50質量%であり、インク調製剤は同様に0〜20質量%、好ましくは0〜15質量%用いるのが良い。上記以外の残部は水である。
有機ハロゲン系化合物としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられる。
ピリジンオキシド系化合物としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられる。
イソチアゾリン系化合物としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。
その他の防腐防黴剤としては、ソルビン酸ソーダ、酢酸ソーダ、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
防腐防黴剤のその他の具体例としては、例えば、アベシア社製 商品名プロクセルGXL(S)、プロクセルXL−2(S)等が好ましく挙げられる。
さらに、必要に応じてメンブランフィルター等を用いて精密濾過を行い、夾雑物を除いてもよい。特にインクジェットプリンター用のインクとして使用する場合には精密濾過を行うことが好ましい。精密濾過を行うフィルターの孔径は通常1〜0.1μm、好ましくは、0.8〜0.2μmである。
また、本発明の化合物が有する耐水性等の効果を阻害しない範囲で、公知のマゼンタ色素を併用してもよい。
また、他の色、例えばブラックインクの調色用、あるいはイエロー色素やシアン色素と混合して、レッドインクやブルー(又はバイオレット)インクを調製する目的で、本発明の化合物を色素として用いることもできる。
普通紙とは、特にインク受容層を設けていない紙のことを意味し、用途によってさまざまなものが数多く市販されている。市販されている普通紙の一例を挙げると、インクジェット用としては、セイコーエプソン社製 両面上質普通紙;キヤノン社製 カラー普通紙;Hewlett Packard社製 Multipurpose Paper、All−in−one Printing Paper;等がある。この他、特に用途をインクジェット印刷に限定しないPPC用紙等も普通紙である。
本発明のインク組成物は、上記のような普通紙に記録した画像の耐水性が特に優れているが、その他の光、オゾン、湿度、摩擦等に対する耐性にも優れる。一方、上記のインクジェット専用紙等に記録した記録画像の耐水性にも非常に優れ、また同様に耐光性、耐ガス性、耐湿性、耐擦性等にも優れる。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインク組成物と共に、イエロー、シアン、必要に応じて、グリーン、ブルー(又はバイオレット)、レッド、ブラック等の各インクを併用し得る。この場合、各色のインクは、それぞれの容器に注入され、それらの容器を、インクジェットプリンターの所定位置に装填して使用する。
インクジェットプリンターには、例えば機械的振動を利用したピエゾ方式;及び加熱により生ずる泡を利用したバブルジェット(登録商標)方式等を利用したものがある。本発明のインクジェット記録方法は、いかなる方式であっても使用が可能である。
本発明のインク組成物は、貯蔵中に色素成分等が沈澱、分離することがない。また、本発明のインク組成物をインクジェット記録に使用した場合、ノズル付近におけるインク組成物の乾燥による結晶の析出は非常に起こりにくく、噴射器(インクヘッド)を閉塞することもない。本発明のインク組成物は連続式インクジェットプリンターを用い、比較的長い時間間隔においてインクを再循環させて使用する場合においても、又はオンデマンド式インクジェットプリンターによる断続的な使用においても、物理的性質の変化を起こさない。
(工程1)キシレン360部中に、撹拌しながら、下記式(12)で表される化合物94.8部、炭酸ナトリウム3.0部、ベンゾイル酢酸エチルエステル144.0部を順次加えて昇温し、140〜150℃の温度で8時間反応を行った。その間、反応で生成するエタノール及び水をキシレンと共沸させながら系外へ留出させ、反応を完結させた。次いで、冷却し、30℃にてメタノール240部を添加して30分撹拌後、析出固体を濾取した。得られた固体をメタノール360部で洗浄後、乾燥して、下記式(13)で表される化合物124.8部を淡黄色針状結晶として得た。
一方、氷水60部に商品名リパールOH(アニオン界面活性剤、ライオン株式会社製)0.4部を加え、シアヌルクロライド8.9部を添加し、30分撹拌した後、得られた懸濁液を、上記の式(15)を含む溶液中に添加し、10%水酸化ナトリウム水溶液にてpHを2.7〜3.0に保ち、25〜30℃で4時間反応を行うことにより、下記式(16)で表される化合物を含有する反応液を得た。
λmax:519、538nm。
実施例1の(工程1)〜(工程7)と同様にして得られた上記式(18)で表される化合物を含有するスラリー液に、実施例1の(工程8)で用いたアニリンの代わりに4−n−ブチルアニリン17.9部を添加して加熱し、90℃にて2時間反応させた。その間、反応系内のpHは8から4.6に低下した。反応を完結後、反応液を濾過して不溶解物を除去した後、濾液を800部に調整し、次いで60℃に加熱し、濃塩酸を添加してpHを3.5に調整し、次いで塩化アンモニウム40部を添加し、60℃にて30分撹拌し、固体を析出させた。析出した固体を濾取し、20%塩化アンモニウム水溶液200部で洗浄して赤色のウェットケーキ160部を得た。得られたウェットケーキをエタノール800部と共に加熱撹拌して70℃にて30分保持した後、析出固体を濾取し、エタノール500部で洗浄後、乾燥して下記式(20)で表される化合物41.6部のアンモニウム塩を赤色固体として得た。
λmax:522、539nm。
実施例1の(工程1)〜(工程7)と同様にして得られた上記式(18)で表される化合物を含有するスラリー液に、2,4−ジメチルアニリン14.5部を添加して加熱し、90℃にて40分反応させた。その間、反応系内のpHは8から3.8に低下した。反応を完結後、反応液を濾過して不溶解物を除去した後、濾液を800部に調整し、次いで55℃に加熱し、濃塩酸を添加してpHを4に調整し、次いで塩化アンモニウム80部を添加し、さらに濃塩酸を添加してpHを3に調整して固体を析出させた。析出した固体を濾取し、20%塩化アンモニウム水溶液400部で洗浄して赤色のウェットケーキ240部を得た。得られたウェットケーキをエタノール800部と共に加熱撹拌して65℃にて1時間保持した後、濾過し、エタノール400部で洗浄後、乾燥して下記式(21)で表される化合物のアンモニウム塩48.0部を赤色固体として得た。
λmax:518、536nm。
実施例1の(工程1)〜(工程7)と同様にして得られた上記式(18)のスラリー液に、フェネチルアミン14.5部を添加して加熱し、25%苛性ソーダ水溶液を加えながらpHを8〜9に調整して85℃にて3時間反応を行い、反応を完結させた。反応液を濾過して不溶解物を除去した後、濾液を1000部に調整し、次いで60℃に加熱し、濃塩酸を添加してpHを4.0に調整し、次いで塩化アンモニウム75部を添加し、さらに濃塩酸を添加してpHを2.0に調整して30分撹拌し、固体を析出させた。析出した固体を濾取し、20%塩化アンモニウム水溶液400部で洗浄して赤色のウェットケーキ120部を得た。得られたウェットケーキをエタノール800部と共に加熱撹拌して65℃にて30分保持した後、析出した固体を濾取し、エタノール400部で洗浄後、乾燥して下記式(22)で表される化合物49.0部のアンモニウム塩を赤色固体として得た。
λmax:520、536nm。
実施例1の(工程1)〜(工程7)と同様にして得られた上記式(18)のスラリー液に6−アミノヘキサン酸15.7部を添加し、25%苛性ソーダ水溶液を加えながらpHを8〜9に調整して90℃にて1時間反応を行い、反応を完結させた。濾過して不溶解物を除去した後、濾液を1000部に調整し、次いで60℃に加熱し、濃塩酸を添加してpHを3.0に調整し、次いで塩化アンモニウム100部を添加し、さらに濃塩酸を添加してpHを2.5に調整して15分撹拌し、固体を析出させた。析出した固体を濾取し、20%塩化アンモニウム水溶液240部で洗浄して赤色のウェットケーキ104部を得た。得られたウェットケーキをメタノール600部と共に加熱撹拌して60℃にて30分保持した後、氷冷して3℃にて30分撹拌後、濾過し、乾燥して下記式(23)で表される化合物19.2部のアンモニウム塩を赤色固体として得た。
λmax:516nm。
実施例1の(工程1)〜(工程7)と同様にして得られた上記式(18)のスラリー液に2−エチルヘキシルアミン15.5部を添加し、25%苛性ソーダ水溶液を加えながらpHを6〜6.5に調整して90℃にて2時間反応を行い、反応を完結させた。濾過して不溶解物を除去した後、濾液を1000部に調整し、次いで60℃に加熱し、濃塩酸を添加してpHを3.0に調整し、次いで塩化アンモニウム100部を添加し、さらに濃塩酸を添加してpHを1.5に調整して30分撹拌し、固体を析出させた。析出した固体を濾取し、20%塩化アンモニウム水溶液400部で洗浄して赤色のウェットケーキ144部を得た。得られたウェットケーキをエタノール1000部と共に加熱撹拌して70℃にて30分保持した後、20℃に冷却して析出した固体を濾過し、エタノール400部で洗浄し、乾燥して下記式(24)で表される化合物40.5部のアンモニウム塩を赤色固体として得た。
λmax:538、523nm。
上記実施例1の(工程9)で得られた上記式(19)で表される化合物、及びその他のインク調製剤等を、下記表2に示した組成比で混合して本発明のインク組成物を得た。得られたインク組成物を0.45μmのメンブランフィルターで濾過することにより夾雑物を除き、評価用のインクを得た。なお、水はイオン交換水を使用し、インク組成物のpHがおよそ9.0となるようにアンモニア水で調整後、総量が100部になるように水を加えた。得られたインクを実施例7とする。同様に、実施例2〜6で得られた化合物を用いる以外は実施例7と同様の組成及び操作によって得られたインクをそれぞれ実施例8〜12とする。
実施例1の(工程9)で得られた上記式(19)で表される化合物の代わりに、下記式(25)の比較用の色素を用いる以外は実施例7と同様にして、比較用のインク組成物を調製した。なお、下記式(25)で表される化合物はアンモニウム塩として合成したものを用いた。
実施例1の(工程1)〜(工程4)と同様にして得られた式(16)で表される化合物を含有する反応液中に、スルファニル酸8.0部と水40部と25%水酸化ナトリウム水溶液7.0部とからなる水溶液をpH3〜4で添加し、50℃に加熱し、その温度で1時間反応させた。その間、25%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを4に保持し、2次縮合液を得た。
得られた2次縮合液に、アニリン11.2部を添加し、90℃にて1.5時間反応させ、反応を完結させて3次縮合液を得た。その間、pHは5から3.4に低下した。濾過により不溶解物を除去した後、湯を加えて液量を500部に調整し、50℃に加熱し、濃塩酸を添加してpHを3に調整した。次いで塩化アンモニウム100部を添加し55℃にて1時間撹拌し、固体を析出させた。析出した固体を濾取し、20%塩化アンモニウム水溶液400部で洗浄して赤色のウェットケーキ84部を得た。
得られたウェットケーキをメタノール300部に加えて加熱し、55℃の温度で15分間保持して溶解させた。次いでエタノール75部を添加して、50℃にて15分間保持した後、水冷し、20℃にて30分間撹拌し、析出した固体を濾取し、メタノール280部とエタノール120部とからなる液で洗浄し、乾燥することにより、上記式(25)の色素49.2部を赤色固体として得た。
インクジェットプリンター(キヤノン社製 商品名:PIXUS ip4100)を用いて、下記表3に示す5種類の普通紙にインクジェット記録を行った。インクジェット記録の際、チェック柄のパターン(濃度100%と0%との1.5mm角正方形を交互に組み合わせたパターン)を作成し、コントラストの高いマゼンタ−ホワイトの印字物を得た。また、反射濃度が数段階の階調が得られるように画像パターンも作成し、マゼンタ色のグラデーションを有する印字物を得た。
耐水性試験の目視判断を行う際には、チェック柄の印刷物を用いた。
耐水性試験の色素残存率測定は、グラデーションを有する印字物を用い、試験前の印字物の反射濃度D値が1に最も近い部分について反射濃度の測定を行った。反射濃度は測色システム(GretagMacbeth社製、商品名SectroEye)を用いて測定した。
記録画像の各種試験方法及び試験結果の評価方法を以下に記載する。
プリントしたグラデーションを有する印字物中で反射濃度(D値)が1.0付近の部分について、上記測色システムを用いてL*、a*、b*値を測定した。鮮明性は、色度(a*、b*)からC*=[(a*)2+(b*)2]1/2を算出した。
実施例7〜12及び比較例1の結果を下記表4に記す。
普通紙2では、実施例7,9,11,12のC*値がそれぞれ61.5、62.4、60.8、60.8であったのに対し、比較例1は59.4と値が小さく、実施例7,9,11,12は比較例1よりも鮮明性が高い色相であることが分かる。
従って、本発明のアントラピリドン化合物は、普通紙においてインクジェット用マゼンタ色素として好適な鮮明性、明度を有すると言える。
印刷後24時間乾燥を行ったチェック柄の印字物に対して、イオン交換水中に1時間浸漬した。乾燥後、パターンの着色部分の色落ち具合を目視で評価し、以下の基準で3段階に評価した。
色落ちがやや見られる・・・・・・・・・・・・・・・・・○
色落ちするが、着色の残存がある・・・・・・・・△
全て色落ちする・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・×
結果を表5に示す。
印刷後24時間乾燥を行ったグラデーションの印字物に対して、イオン交換水を一滴落とし、1分後にふき取る。乾燥後、反射濃度を上記の測色システムを用いて測色した。測定後、色素残存率を(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)×100(%)で計算して求めた値の結果を表6に示す。
また、耐水性試験2において、普通紙1では、比較例1の残存率が60.2に対して、実施例7〜12は70.5〜82.6であり、普通紙2では、比較例1の残存率が71.9に対して、実施例7〜12は77.1〜83.2であり、普通紙3では、比較例1が67.8に対して、実施例7〜12は72.1〜87.4であり、普通紙4では、比較例1が58.3に対して、実施例7〜12が78.5〜86.5である。従って、普通紙1〜4の全てにおいて実施例7〜12が比較例1よりも残存率が高く、明らかに良好である結果が得られた。すなわち、比較例1に対して実施例7〜12の記録画像は、目視及び測色結果のいずれにおいても極めて優れた耐水性を示し、本発明の色素及びこれを含有するインクの有用性が明らかとなった。
Claims (16)
- R1が水素原子又はC1−C8アルキル基であり、
Rがアニリノ基;トルイジノ基;キシリジノ基;C2−C4アルキルアニリノ基;フェニルC1−C3アルキルアミノ基;C1−C8アルキルアミノ基;ジC1−C8アルキルアミノ基;カルボキシC1−C5アルキルアミノ基;又はスルホC1−C4アルキルアミノ基である請求項1に記載のアントラピリドン化合物又はその塩。 - R1がメチル基であり、
Rがアニリノ基;トルイジノ基;キシリジノ基;C2−C4アルキルアニリノ基;フェニルC1−C3アルキルアミノ基;C1−C8アルキルアミノ基;又はカルボキシC1−C5アルキルアミノ基である請求項1に記載のアントラピリドン化合物又はその塩。 - 請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物又はその塩を色素として含有し、さらに水を含有することを特徴とするインク組成物。
- 水溶性有機溶剤をさらに含有する請求項6に記載のインク組成物。
- インクジェット記録用である請求項7に記載のインク組成物。
- 色素として含有する請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物の総質量中における無機不純物の含有量が、該化合物の総質量に対して1質量%以下である請求項6乃至8のいずれか一項に記載のインク組成物。
- 色素として含有する請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物の含有量が、組成物の総質量に対して0.1〜20質量%の範囲である請求項6乃至9のいずれか一項に記載のインク組成物。
- 請求項6乃至10のいずれか一項に記載のインク組成物をインクとして用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に記録を行うインクジェット記録方法。
- 前記被記録材が情報伝達用シートである請求項11に記載のインクジェット記録方法。
- 前記情報伝達用シートが普通紙又は多孔性白色無機物を含有するインク受容層を有するシートである請求項12に記載のインクジェット記録方法。
- 請求項6乃至10のいずれか一項に記載のインク組成物により着色された着色体。
- 着色がインクジェットプリンターによりなされた請求項14に記載の着色体。
- 請求項6乃至10のいずれか一項に記載のインク組成物を含有する容器が装填されたインクジェットプリンター。
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