JP2006117803A - ポリカーボネート樹脂組成物及び樹脂筐体 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂組成物及び樹脂筐体 Download PDF

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Abstract

【課題】
永久帯電防止性と耐磨耗性のバランスが良好で、しかも、外観、熱安定性、燃焼性及び剛性も含めた全ての特性に優れるポリカーボネート樹脂組成物、及びこれを成形してなる樹脂筐体を提供する。
【解決手段】
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂50〜95重量部、(B)芳香族ポリエステル樹脂5〜50重量部の合計100重量部に対し、(C)ブロックコポリアミド樹脂1〜30重量部、(D)衝撃改良剤0〜30重量部、(E)タルク1〜50重量部、(F)ホスファイト系抗酸化剤0.01〜5重量部及び(G)リン系難燃剤1〜30重量部を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物、及びこれを射出成形して得られることを特徴とする樹脂筐体。
【選択図】 なし

Description

本発明はポリカーボネート樹脂組成物に関するものである。更に詳しくは、本発明は、永久帯電防止性と耐磨耗性のバランスが良好で、しかも、外観、熱安定性、燃焼性および剛性も含めた全ての特性に優れるポリカーボネート樹脂組成物、及びこれを成形してなる樹脂筐体に関するものであり、特に記録媒体等の樹脂筐体への利用に好適である。
ポリカーボネート樹脂は、すぐれた耐衝撃特性、耐熱性、電気的特性などにより、OA(オフィスオートメーション)機器、家庭電化機器、電気・電子機器、自動車分野、建築分野等様々な分野において幅広く利用されている。このポリカーボネート樹脂の溶融流動性を改良する方法として、例えば特開2000−63650(特許文献1)に開示されているように、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)などのスチレン系樹脂をポリカーボネート樹脂に配合した組成物が、ポリマーアロイとして、その耐熱性、耐衝撃性の特性を生かし、多くの成形品分野に用いられてきている。
また、ポリカーボネート樹脂は、一般のプラスチックと同様に電気抵抗が大きく、摩擦や接触によって容易に帯電する。この帯電により、放電時に電撃ショックが生じたり、塵埃の付着による外観不良が発生し、特に前記のOA機器、電気・電子機器分野の成形品にあっては、ICの誤作動などが発生するため、その対策が求められており、帯電防止性を確保する方法として、ポリカーボネート樹脂組成物に帯電防止剤を配合する方法などが採用されている。例えば、上述した特許文献1においては、帯電防止剤として、アルキルスルホン酸塩などのアニオン系帯電防止剤が配合された樹脂組成物が開示されている。
しかし、上述したスチレン系樹脂をポリカーボネート樹脂に配合した樹脂組成物は、帯電防止性や耐磨耗性という観点からみた場合には、未だ性能が不十分であった。
一方、帯電防止性の発現を促進するため、ポリカーボネート樹脂にポリエステル樹脂が配合された樹脂組成物が以下の特許文献2及び3に開示されている。
特許文献2には、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)芳香族ポリエステル樹脂、(E)タルク等の無機質充填剤及び(F)ホスファイト系抗酸化剤からなるポリカーボネート樹脂組成が開示され、特に(F)ホスファイト系抗酸化剤を配合した樹脂組成物を使用することにより、高剛性、且つ外観が良好で、電気・電子機器分野のハウジング材等に好適な成形品が得られることが記載されている。しかし、ここで開示された樹脂組成物であっても、特に永久帯電防止性が要求されるOA機器や記録媒体の樹脂筐体等の特定のハウジング材用途という観点からは、未だ不十分であるという問題があった。
また、特許文献2には、(C)ブロックコポリアミド樹脂と(E)タルクと(G)リン系難燃剤とを、特定量組み合わせて配合した樹脂組成物が、永久帯電防止性と耐磨耗性のバランスが良好で、しかも、外観、熱安定性、燃焼性及び剛性も含めた全ての特性に優れる成形品を提供することは全く示唆されていない。
特許文献3には、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)芳香族ポリエステル樹脂、(C)ブロックコポリアミド樹脂、(D)衝撃改良剤、及び(F)ホスファイト系抗酸化剤からなるポリカーボネート樹脂組成物が、永久帯電防止性に優れ、特に、特定の(F)ホスファイト系抗酸化剤の配合により熱安定性が向上し、また、(B)芳香族ポリエステル樹脂の配合により成形品の外観が改善できることが記載されている。しかし、ここに開示された樹脂組成物であっても、特に永久帯電防止性が要求されるOA機器や記録媒体の樹脂筐体等の特定のハウジング材用途という観点からは、未だ、外観、表面平滑性、燃焼性及び剛性が不十分であるという問題があった。
また、特許文献3には、(C)ブロックコポリアミド樹脂と(E)タルクと(G)リン系難燃剤とを、特定量組み合わせて配合した樹脂組成物が、永久帯電防止性と耐磨耗性のバランスが良好で、しかも、外観、熱安定性、燃焼性及び剛性も含めた全ての特性に優れる成形品を提供することは全く示唆されていない。
特開2000−63650号公報 特開平5−222283号公報 特開平7−224217号公報
本発明の目的は、永久帯電防止性と耐磨耗性のバランスが良好で、しかも、外観、熱安定性、燃焼性及び剛性も含めた全ての特性に優れるポリカーボネート樹脂組成物、及びこれを成形してなる樹脂筐体を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)芳香族ポリエステル樹脂を含む樹脂組成物において、特に(C)ブロックコポリアミド樹脂と(E)タルクと(G)リン系難燃剤とを、特定量組み合わせて配合した樹脂組成物を使用することにより、永久帯電防止性と耐磨耗性のバランスが良好で、しかも、外観、熱安定性、燃焼性及び剛性も含めた全ての特性に優れ、記録媒体等の樹脂筐体等の特定のハウジング材用途に好適な樹脂組成物を提供できることを見出し、本発明を完成した。
従来、(C)ブロックコポリアミド樹脂等の帯電防止剤を使用した場合には、帯電防止効果が向上する一方、耐磨耗性が低下し、両性能ともバランスの良い樹脂組成物を得ることは困難であったことを考慮すると、本発明の意義は大きい。
また、本発明者らは、(E)タルクを(C)ブロックコポリアミド樹脂及び(G)リン系難燃剤と組み合わせて配合した樹脂組成物を使用することにより、従来着目されていなかった外観性能である、成形品の表面平滑性や反り、ヒケ、シルバー等の発生が改善されることを見出した。
すなわち、本発明の要旨は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂50〜95重量部、(B)芳香族ポリエステル樹脂5〜50重量部の合計100重量部に対し、(C)ブロックコポリアミド樹脂1〜30重量部、(D)衝撃改良剤0〜30重量部、(E)タルク1〜50重量部、(F)ホスファイト系抗酸化剤0.01〜5重量部及び(G)リン系難燃剤1〜30重量部を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物、及びこれを射出成形して得られることを特徴とする樹脂筐体、に存する。
本発明により、永久帯電防止性と耐磨耗性のバランスが良好で、しかも、外観、熱安定性、燃焼性及び剛性も含めた全ての特性に優れるポリカーボネート樹脂組成物を提供することができ、電気電子機器や精密機械のハウジング材用途に好適である。特に永久帯電防止性と耐磨耗性のバランスが良好で、且つ、反り等の外観に優れるため、金属性のシャッター機構を有するフロッピーディスク、MO等の記憶媒体の樹脂筐体として好適に利用でき、更には、燃焼性も良好なため、UDO(Ultra Density Optical)、PDD(Profesional Data Disk)、DLT(Digital Linear Tape)等の樹脂筐体としても好適に利用できる。
以下、本発明につき詳細に説明する。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂
本発明における(A)芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲンと反応させる界面重合法(ホスゲン法)、又は芳香族ジヒドロキシ化合物を炭酸ジエステルと反応させる溶融法(エステル交換法)により得られる樹脂であり、直鎖状又は分岐状の熱可塑性重合体又は共重合体である。また、溶融法で製造することにより、末端基のOH基量が調整された樹脂であってもよい。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、中でもビスフェノールAが好ましい。また、これらの化合物に、スルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することができる。
また、分岐状の芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、上述した芳香族ジヒドロキシ化合物の一部を以下の化合物、即ちフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のポリヒドロキシ化合物や、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチン等の化合物で置換すればよい。これら置換する化合物の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、0.01〜10モル%であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するためには、一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いることができ、具体的には、m−及びp−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等の芳香族モノヒドロキシ化合物などが挙げられる。
上述した中でも、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノールAから誘導されるポリカーボネート樹脂、又はビスフェノールAと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が好ましい。また、ビスフェノールAとシロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーとの共重合体であってもよい。更に、本発明の(A)芳香族ポリカーボネート樹脂は、2種以上の樹脂を混合して用いてもよい。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、通常16,000〜30,000、好ましくは18,000〜23,000である。
(B)芳香族ポリエステル樹脂
本発明における(B)芳香族ポリエステル樹脂としては、通常エンジニアリングプラスチックとして知られているものが用いられる。なかでも、テレフタル酸またはそのジアルキルエステルと脂肪族グリコール類との重縮合反応によって得られるポリアルキレンテレフタレート又はこれを主体とした共重合体が好ましく用いられる。このようなポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)が好ましく用いられる。
上記の脂肪族グリコール類としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の直鎖脂肪族グリコール類が用いられる。これら直鎖脂肪族グリコール類は、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の環状脂肪族又は芳香族のジオール類や多価アルコール類と併用する事ができる。これら併用できるジオール類及び多価アルコール類の使用量は、直鎖脂肪族グリコール100重量部に対して40重量部以下の範囲である事が望ましい。
また、(B)芳香族ポリエステル樹脂の製造に際しては、テレフタル酸又はそのジアルキルエステルと共に、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸等の二塩基酸、三塩基酸、またそれらのジアルキルエステルを使用する事ができる。その使用量は、テレフタル酸又はそのジアルキルエステル100重量部に対して40重量部以下の範囲である事が好ましい。
本発明において用いられる(B)芳香族ポリエステル樹脂の数平均分子量としては、通常2000〜60000の範囲のものが使用され、25000〜52000の範囲のものが好適である。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、上述した(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)芳香族ポリエステル樹脂の組成比率は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂50〜95重量部、好ましくは60〜90重量部、(B)芳香族ポリエステル樹脂5〜50重量部、好ましくは10〜40重量部の比率である。
本発明の樹脂組成物において、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂は、その組成比率が少ないと耐熱性が劣り、多いと帯電防止性が不十分となるので好ましくない。また、(B)芳香族ポリエステル樹脂は、添加することにより剥離現象の改良が認められるが、その組成比率が多すぎると耐熱性の低下が大きくなるので好ましくない。
本発明において、(B)芳香族ポリエステル樹脂を(A)芳香族ポリカーボネート樹脂に配合することにより、他の熱可塑性樹脂を配合する場合に比べて、外観や熱安定性、燃焼性、剛性を維持しつつ、永久帯電防止性及び耐磨耗性が向上するという効果がある。
(C)ブロックコポリアミド樹脂
本発明におけるブロックコポリアミド樹脂としては、a)ポリアミドブロックとb)ポリエーテルブロックおよび/またはc)ポリエステルブロックからなり、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックおよび/またはポリエステルブロックとは、エステル結合又はエステルアミド結合を形成する。
本発明におけるブロックコポリアミド樹脂は、一般的にポリエーテルエステルアミド樹脂と呼ばれているものを含む。
本発明におけるブロックコポリアミド樹脂は、一般的にポリエーテルブロックアミド樹脂と呼ばれているものが好ましく、ポリエーテルブロックアミド樹脂とは、a)炭素数6以上のアミノカルボン酸、炭素数6以上のラクタム、及び炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩から選ばれるポリアミドブロックと、b)数平均分子量200〜6000のポリ(アルキレンオキシド)グリコールのポリエーテルブロックとから構成されてなる樹脂である。本発明においては、ポリエーテルブロックアミド樹脂として、ポリエステルブロックを有しないものが好ましい。
(C)ブロックコポリアミド樹脂の構成成分であるa)ポリアミドブロックを構成する、アミノカルボン酸、ラクタム、及びジアミンとジカルボン酸の塩としては、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペルコン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノカルボン酸、カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタムおよびラウロラクタムなどのラクタム、ヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩、ヘキサメチレンジアミン−セバシン酸塩及びヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸塩などのジアミン−ジカルボン酸の塩等が挙げられ、中でも特にカプロラクタム、12−アミノドデカン酸、ヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩が好ましく用いられる。
また(C)ブロックコポリアミド樹脂の構成成分であるb)ポリエーテルブロックを構成するポリ(アルキレンオキシド)グリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシド又はテトラヒドロフランのブロックまたはランダム共重合体などが用いられる。これらの中でも、永久帯電防止性が優れる点で特にポリエチレングリコールが好ましく用いられる。
さらに、本発明の(C)ブロックコポリアミド樹脂がc)ポリエステルブロックを含む場合には、炭素原子数4〜20のジカルボン酸が使用できる。ここで、c)ポリエステルブロックを構成する炭素原子数4〜20のジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸および3−スルホイソフタル酸ナトリウム等の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸およびジシクロヘキシル−4,4−ジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸およびドデカンジ酸(デカンジカルボン酸)等の脂肪族ジカルボン酸などが挙げられ、中でも特にテレフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸およびドデカンジ酸が、重合性、色調および物性の点から好ましく用いられる。
本発明の樹脂組成物において、(C)ブロックコポリアミド樹脂は、成形品に帯電防止性を付与する観点から、選択的に成形品の表面層に偏在させる事が重要である。このためにはブロックコポリアミド樹脂の各構成成分a)〜c)の構成比率が特定範囲のものを選択することが好ましい。
すなわち、ブロックコポリアミド樹脂の構成成分であるa)ポリアミドブロックと、b)ポリエーテルブロック及びc)ポリエステルブロックの合計との構成比率[a:(b+c)]は、通常5〜90重量%:10〜95重量%である。
b)ポリエーテルブロックとc)ポリエステルブロックの合計が95重量%を越える場合は、成形品表層部にブロックコポリアミド樹脂を偏在させ得るが、表面硬度が低く傷つき易く、機械的強度も低くなる傾向がある。一方、10重量%未満では、得られる樹脂の帯電防止性が低下する傾向があり、帯電防止効果を満足させるために必要な量のブロックコポリアミド樹脂を樹脂組成物に配合すると、耐熱性、機械的強度が低下する傾向がある。
この(C)ブロックコポリアミド樹脂の製造方法としては、例えば(1)(a)ポリアミドブロックとしてのアミノカルボン酸またはラクタムと(c)ポリエステルブロックとしてのジカルボン酸を反応させて両末端がカルボン酸基のポリアミドプレポリマーを製造し、これに(b)ポリエーテルブロックとしてのポリ(アルキレンオキシド)グリコールを真空下に反応させる方法、(2)(a)(b)(c)の各成分を反応槽に仕込み、水の存在下または非存在下に高温で加圧反応させる事により、カルボン酸末端のポリアミドプレポリマーを生成させ、その後常圧または減圧下に重合を進める方法、及び(3)前記(a)(b)(c)の各成分を同時に反応槽に仕込み溶融混合した後、高真空下で一挙に重合を進める方法等を用いることができる。
また、b)ポリ(アルキレンオキシド)グリコール等のポリエーテルブロック成分と、c)ジカルボン酸等のポリエステルブロック成分とは、通常1:1のモル比で反応に供される。
(C)ブロックコポリアミド樹脂の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)芳香族ポリエステル樹脂の合計100重量部に対し、1〜30重量部である。ブロックコポリアミド樹脂の添加量が1重量部未満である場合は、永久帯電防止性が不足しやすい。さらに、30重量部を超えると柔軟になりすぎ、機械的強度が劣るので好ましくない。ブロックコポリアミド樹脂の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)芳香族ポリエステル樹脂の合計100重量部に対し、好ましくは3〜25重量部、さらに好ましくは5〜20重量部である。
従来、ポリカーボネート樹脂組成物に帯電防止剤を配合した場合には、帯電防止効果が向上する一方、耐磨耗性が低下し、両性能ともバランスの良い樹脂組成物を得ることは困難であったが、(C)ブロックコポリアミド樹脂を(E)タルクと組み合わせて配合することにより、両性能のバランスの改善されることを見出した本発明の意義は大きい。
(D)衝撃改良剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において配合することが好ましい他の成分である、(D)衝撃改良剤としては、例えば、アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体、スチレン系コア−シェルグラフト共重合体、MBS樹脂、ポリエステル系エラストマー、SBR、SEBS、ポリウレタン系エラストマー等が例示される。これらの内、ポリカーボネート樹脂等のマトリックスとの相溶性、耐熱性等から、アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体が特に好適に用いられる。
なかでも、例えば、特開平8−199058で挙げられる、ガラス転移温度の低い架橋成分を含むアルキルアクリレート系ゴム状重合体内殻層と、組成物のマトリックスとの接着性を改善する芳香族ビニル系ガラス状重合体最外殻層とを有する多層構造重合が好ましく用いられる。
(D)衝撃改良剤の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)芳香族ポリエステル樹脂の合計100重量部に対し、0〜30重量部である。衝撃改良剤の添加量が30重量部を超えると弾性率の低下が大きくなるので好ましくない。衝撃改良剤の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)芳香族ポリエステル樹脂の合計100重量部に対し、好ましくは1〜25重量部、さらに好ましくは3〜20重量部である。
(E)タルク
本発明における(E)タルクは、特に限定されないが、中でも、表面外観の観点から、光透過式粒度分布測定器を用いる沈降法(浅田法)で測定した数平均粒子径が、1.0μm以上、更には1.5μm以上、特には2.0μm以上が好ましく、一方上限は、9.0μm以下、更には8.0μm以下、特には7.0μm以下のものが好ましい。
本発明における沈降法による数平均粒子径は、例えば(株)島津製作所製 粒度分布測定器SA−CP3L型を用い、以下の方法により測定するものである。
(測定法)
ビーカーにタルク試料を約0.1g入れ、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.05%溶液を湿らす程度に加えて攪拌棒で十分に練り込む。次いで、ここにヘキサメタリン酸ナトリウム0.05%溶液をビーカーの50ccの票線まで加え、超音波分散器にて10分間分散する。よく攪拌された状態で、分散させた試料溶液の10cc程度を採取し、ここにヘキサメタリン酸ナトリウム0.05%溶液を加え(ビーカーの50ccの票線まで)、濃度を調節する。更にスターラーで3分程度攪拌した後、その溶液でセルを共洗いする。共洗いをしたセルの試料溶液をスポイトで入れ、次いで、セルにふたをして水気をきれいに拭き取りゼロセットの完了している測定器本体にセットする。吸光度が100〜110になっていることを確認し、測定を開始する。(参考規格:JISZ−8820〜8822)
また、タルク中のFe成分及びをAl成分の含有量は、それぞれFe23、Al23として通常0.001重量%以上であり、一方上限は0.5重量%以下、更には0.2重量%以下であるものが好ましい。更には、耐衝撃性の観点から、表面処理されていないタルクを用いるのが好ましい。
(E)タルクの配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)芳香族ポリエステル樹脂の合計100重量部に対し、1〜50重量部である。タルクの添加量が1重量部未満である場合は、剛性が不足しやすい。さらに、50重量部を超えると成形品の外観が劣るので好ましくない。タルクの配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)芳香族ポリエステル樹脂の合計100重量部に対し、好ましくは3〜30重量部、さらに好ましくは5〜20重量部である。
本発明においては、(E)タルクを(C)ブロックコポリアミド樹脂と組み合わせて配合することにより、他の無機充填剤を使用する場合に比べて、永久帯電防止性、耐磨耗性、外観、燃焼性が向上し、また、従来着目されていなかった外観特性である、表面平滑性が改善され、反り等が減少するという効果がある。
(F)ホスファイト系抗酸化剤
本発明における(F)ホスファイト系抗酸化剤としては、例えば、下記一般式(I)で表わされるホスファイト化合物が挙げられる。
P(OR)(OR)(OR) ・・・(I)
(一般式(I)中、R〜Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜30のアラルキル基、またはこれらにハロゲン、アルキルチオ(ここで、アルキル基は炭素数1〜30)基又はヒドロキシル基が置換した基を表す。)
一般式(I)で表わされるホスファイト化合物としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられ、一般式(I)中のR〜Rとして、(モノノニル)フェニル基と(ジノニル)フェニル基の両方を含むホスファイトも挙げられる。
また、(F)ホスファイト系抗酸化剤としては、下記一般式(II)で表わされるホスファイト化合物が挙げられる。
Figure 2006117803
(一般式(II)中、R及びRは、各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、多価フェノール残基、多価アルコール残基、又はこれら多価フェノール残基及び多価アルコール残基中の水酸基の少なくとも一つがホスファイトエステルとなっている基を表す。また、Zはエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜20の4価の炭化水素残基である。)
上述したホスファイト系化合物の中でも、耐熱安定性の観点から、一般式(II)で表わされるホスファイト化合物が好ましく、中でも、下記一般式(III)で表わされるペンタエリスリトール型のホスファイト化合物が好ましい。
Figure 2006117803
Figure 2006117803
(一般式(III)中、R及びRは、一般式(II)と同義である。)
一般式(II)及び(III)で表わされるホスファイト化合物としては、例えば、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト,ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト,ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。具体的には、例えば旭電化工業(株)の商品名「アデカスタブPEP−36」又は「アデカスタブPEP−24G」等を使用することができる。また、本発明における(E)ホスファイト系抗酸化剤は、上述したホスファイト化合物のうち2種以上を組合わせて用いてもよい。
(F)ホスファイト系抗酸化剤の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)芳香族ポリエステル樹脂の合計100重量部に対し、0.01〜5重量部である。ホスファイト系抗酸化剤の添加量が0.01重量部未満である場合は、熱安定性の改良効果が少ない。さらに、5重量部を超えるとモールドデポジットの原因となり好ましくない。ホスファイト系抗酸化剤の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)芳香族ポリエステル樹脂の合計100重量部に対し、好ましくは0.02〜3重量部、さらに好ましくは0.05〜1重量部である。
(G)リン系難燃剤
本発明における(G)リン系難燃剤としては、分子中にリンを含む化合物であり、好ましくは、下記一般式(1)又は(2)で表されるリン系化合物が挙げられる。
Figure 2006117803
(一般式(1)中、R1 、R2 及びR3 は、各々独立して、炭素数1〜6のアルキル基、又はアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表し、h、i及びjは、各々0又は1を表す。)
上記一般式(1)で表されるリン系化合物は、公知の方法で、オキシ塩化燐等から製造することができる。一般式(1)で表されるリン系化合物の具体例としては、燐酸トリフェニル、燐酸トリクレジル、燐酸ジフェニル−2−エチルクリジル、燐酸トリ(イソプロピルフェニル)、メチルホスホン酸ジフェニルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、燐酸ジフェニルクレジル、燐酸トリブチル等が挙げられる。
Figure 2006117803
(一般式(2)中、R4〜R7 は、各々独立して、炭素数1〜6のアルキル基、又はアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表し、p、q、r及びsは、各々0又は1であり、tは1〜5の整数であり、Xはアリーレン基を表す。)
本発明の(G)リン系難燃剤としては、上述したリン系化合物の中でも、成形安定性(低ガス化)の観点から、上記一般式(2)で表される縮合燐酸エステル化合物を用いるのが好ましい。リン系難燃剤として、tが異なる複数の縮合燐酸エステルの混合物を用いる場合には、一般式(2)中のtは、それらの混合物の平均値として表す。また、アリーレン基Xとしては、好ましくはレゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA等のジヒドロキシ化合物から誘導される2価の基である。
一般式(2)で表される縮合燐酸エステル化合物の具体例としては、ジヒドロキシ化合物としてレゾルシノールを使用した場合は、フェニルレゾルシン・ポリホスフェート、クレジル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・クレジル・レゾルシン・ポリホスフェート、キシリル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル−p−t−ブチルフェニル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・イソプロピルフェニル・レゾルシンポリホスフェート、クレジル・キシリル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・イソプロピルフェニル・ジイソプロピルフェニル・レゾルシンポリホスフェート等が挙げられる。
本発明における(G)リン系難燃剤は、ホスファゼン化合物であってもよい。具体的には、環状フェノキシホスファゼン化合物、鎖状フェノキシホスファゼン化合物及び架橋フェノキシホスファゼン化合物から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
(G)リン系難燃剤の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)芳香族ポリエステル樹脂の合計100重量部に対し、1〜30重量部である。燐系難燃剤の添加量が1重量部未満である場合は、燃焼性の改良効果が少ない。さらに、30重量部を超えると耐熱性が低下しやすいので好ましくない。リン系難燃剤の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)芳香族ポリエステル樹脂の合計100重量部に対し、好ましくは2〜25重量部、さらに好ましくは3〜20重量部である。
本発明の樹脂組成物においては、(G)リン系難燃剤を(C)ブロックコポリアミド樹脂及び(E)タルクと組み合わせて配合することにより、他の難燃剤を用いた場合に比べて、外観特性としてシルバーの発生が抑制され、熱安定性が良好となるという効果がある。
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、例えば(1)(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)芳香族ポリエステル樹脂、(C)ブロックコポリアミド樹脂、(D)耐衝撃性改良剤、(E)タルク、(F)ホスファイト系抗酸化剤及び(G)リン系難燃剤を一括溶融混練する方法、(2)(A)〜(F)のうち一部の成分を予め一緒に溶融混練し、他の成分を押出機等の後工程で追加する方法、(3)(G)リン系難燃剤が液状である場合には、(A)〜(F)をあらかじめ溶融混練し、その後(G)を加えて溶融混練する方法等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物には、上記の各成分のほかに、紫外線吸収剤等の各種安定剤や顔料、染料、滑剤、難燃剤、離型剤、摺動性改良剤等の添加剤を添加することができ、また、離型剤や摺動性改良剤等の表面特性の改良剤を併用しても、目的とする帯電防止効果の低下をきたさないという利点がある。
上述の方法により得られた本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、射出成形法、押出成形法、中空成形法などにより各種成形品を製造することができるが、中でも、射出成形法による成形品の製造に好適に用いることができる。
射出成形法の条件としては、シリンダー温度が通常200〜350℃、好ましくは240〜300℃であり、金型温度が通常30〜100℃、好ましくは40〜80℃であり、成形サイクルが通常30秒〜3分、好ましくは40秒〜2分である。また、射出成形の際には、ホットランナー方式を併用することもできる。
本発明の樹脂組成物から得られる射出成形品は、永久帯電防止性と耐磨耗性のバランスが良好で、しかも、外観、熱安定性、燃焼性及び剛性も含めた全ての特性に優れるため、電気電子機器や精密機械のハウジング材用途に好適である。特に永久帯電防止性と耐磨耗性のバランスが良好で、且つ、反り等の外観に優れるため、金属性のシャッター機構を有するフロッピーディスク、MO等の記憶媒体の樹脂筐体(カートリッジ)として好適に利用できる。更には、長期間の使用に要求される燃焼性も良好なため、記録媒体の中でも、青色レーザーによる高密度記録媒体であり、耐久性が高く、データの長期保存が可能なUDO(Ultra Density Optical)、PDD(Profesional Data Disk)、DLT(Digital Linear Tape)等の樹脂筐体として好適に利用できる。
本発明の樹脂組成物が、このようなバランスの良い特性を示す理由は定かではないが、(E)タルクを使用することにより、ガラス繊維等の他の無機充填剤を使用する場合に比べて、成形品の表面平滑性が良好となり、その結果、樹脂筐体等として使用される際に、摩擦により成形品の表面が破壊されることがなく、また、破壊された成形品の一部が更に他の破壊の原因となることはないため、(C)ブロックコポリアミド樹脂等の帯電防止剤を使用しても、耐磨耗性が低下することなく、総合的にバランスの良い特性を示すものと推定される。
以下、本発明を実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用した各組成、及び、樹脂組成物又は成形品の物性評価法は以下の通りである。
[樹脂組成物の各原材料]
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂:ポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユーピロンH−3000」、粘度平均分子量18000)
(B)芳香族ポリエステル樹脂又はABS樹脂
(B−1)高粘度PET樹脂:三菱レイヨン製「PA−200D」
(B−2)PBT樹脂:三菱エンジニアリングプラスチックス社製「ノバヂュラン5020」
(B−3)塊状重合ABS樹脂:日本A&L(株)製「サンタックUT−61」
(C)帯電防止剤
(C−1)ポリエーテルブロックアミド樹脂(エルフ・アトケム(株)製「イルガスタットP16」、ポリエーテルブロックがポリエチレングリコールであり、ポリアミドブロックがPA12(ナイロン12)であるもの)
(C−2)ポリエーテルブロックアミド樹脂(エルフ・アトケム(株)製「ペバックスMH1657」、ポリエーテルブロックがポリエチレングリコールであり、ポリアミドブロックがPA6(ナイロン6)であるもの)
(C−3)アニオン系界面活性剤(花王製「エレクトロストリッパーPC−2」、アルキルベンゼンスルホン酸塩)
(D)衝撃改良剤:コアシェルポリマー(武田薬品工業(株)製「スタフィロイドMG−1011」)
(E)無機充填剤
(E−1)タルク:林化成製「ミクロンホワイト5000S」(沈降法による数平均粒子径2.8〜3.3μm、Fe含有量0.19重量%、表面処理なし)
(E−2)ガラス繊維
(F)ホスファイト系抗酸化剤:旭電化工業製「アデカスタブPEP−36」
(G)難燃剤
(G−1)リン系難燃剤:下記式(式中、t2 =1.08)で示される縮合燐酸エステル(旭電化工業(株)製「FP−700」)
Figure 2006117803
(G−2)臭素系難燃剤:テトラブロムビスフェノールA共重合PCオリゴマー、三菱エンジニアリングプラスチックス製「ユーピロンFR−53」
[実施例1〜3及び比較例1〜5]
難燃剤(G)を除く各成分を表1及び表2に示した割合(重量比)で配合し、タンブラーにて20分混合後、スクリュー径32mm、L/D=42の二軸押出機(日本製鋼所製、TEX−30HSST)にて、バレル設定温度250℃、スクリュー設定回転数250rpm、設定押出量20Kg/hrで混練した。難燃剤(G)は、表―1に示した割合(重量比)で二軸押出機の途中から液体注入し、樹脂組成物のペレットを作製した。得られたペレットを90℃で5時間乾燥した後、射出成形機(住友重機製、EC−220)にて、シリンダー温度270℃、金型温度60℃、成形サイクル60秒で、UDO用の樹脂筐体(5.25インチ)を成形した。以下の方法で評価した結果を、表1及び表2に示す。
[物性測定法]
(1)帯電防止性
成形した樹脂筐体を80℃、85%の湿熱槽に200時間保管して環境試験を行い、表面抵抗率および帯電半減期について調べた。表面抵抗率は、ULTRA HIGH RESISTANCE METER(ADVANTEST製)を使用し、環境試験後の樹脂筐体を23℃、50%湿度の条件で状態調節後測定した。帯電半減期は、環境試験前後の樹脂筐体について、スタティックオネストメータ(シシド静電気製)を使用し、印荷電圧9KV、印荷時間60秒の条件で行った。なお、帯電半減期とは、印荷電圧を切った後、印荷時の帯電量が半減するまでの時間を表したものであり、表面抵抗率と帯電半減期のいずれの値も、小さい方が帯電防止性が良好であると言える。また、環境試験後の表面抵抗率又は帯電半減期の値が小さい場合には、永久帯電防止性が良好であると言える。
(2)耐磨耗性
実施例及び比較例において得られた樹脂組成物のペレットを、80℃で5時間乾燥した後、射出成形機(住友重機製、NS−40)にて、シリンダー温度270℃、金型温度60℃、成形サイクル60秒で、外径25.6mm、内径20mm、高さ15mmの中空円筒を成形した。この中空円筒を、23℃、50%湿度の条件で状態調節した後、MT式S−6スラスト磨耗試験機(東洋精機製)を使用して耐磨耗性を測定した。試験条件は、上側SUS、下側(駆動側)樹脂とし、面圧1.5kgf/cm、線速度12cm/sで20時間走行前後の重量減少率(%)を測定した。
(3)外観
成形した樹脂筐体について、表面平滑性、反り、ヒケ、シルバーの状態を観察した。表1及び表2中の評価は以下の通りである。
(表面平滑性)○:表面は平滑である。 ×:表面が荒れている。
(反り) ○:反りが極めて小さい。 ×:反りが大きい。
(ヒケ) ○:ヒケが極めて小さい。 △:ヒケが小さい。 ×:ヒケが大きい。
(シルバー;熱安定性)
○:シルバー無し。 △:わずかにシルバー有り。 ×:シルバー多い。
樹脂組成物が熱により分解しやすい場合には、成形工程でガスが発生しやすくなり、その結果シルバーストリークス(銀条)が発生する。従って、シルバーが無い場合とは、樹脂組成物の熱安定性が良好であることを示す。
(4)燃焼性
実施例及び比較例において得られた樹脂組成物のペレットを、80℃で5時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所製、J−50EP)にて、シリンダー温度270℃、金型温度60℃、成形サイクル60秒で、長さ125mm、幅12.5mm、厚さ0.8mmの燃焼試験片を作成し、UL94に準拠して燃焼性の評価を行った。表中の「NG」は、UL94による燃焼性評価規格の基準にあてはまらないものである。
(5)曲げ試験(剛性)
実施例及び比較例において得られた樹脂組成物のペレットを、80℃で5時間乾燥した後、射出成形機(住友重機製、SG75)にて、シリンダー温度270℃、金型温度60℃、成形サイクル60秒で、長さ128mm、幅12.8mm、肉厚6.4mmの曲げ試験片を成形し、ASTM規格D790に準拠して曲げ弾性率を測定した。
Figure 2006117803
Figure 2006117803
(1)実施例1〜3を見ると、本発明の樹脂組成物により得られる成形品は、永久帯電防止性と耐磨耗性のバランスが良好で、外観、熱安定性、燃焼性および剛性の全ての特性に優れることが分かる。また、環境試験後の帯電圧半減期は、環境試験前の値よりも小さくなっており、本発明の樹脂組成物の場合には、環境試験後に帯電防止性が改善される傾向があることが分かる。
(2)実施例1と比較例3を比較すると、(E)タルクでなくガラス繊維を用いた場合には、永久帯電防止性、耐磨耗性、外観特性及び燃焼性が低下することが分かる。
(3)実施例1と比較例4を比較すると、本発明の(C)コポリアミド樹脂とは異なる帯電防止剤を用いた場合には、環境試験後の帯電防止性(永久帯電防止性)が悪いことが分かる。ここで、永久帯電防止効果を出すために、帯電防止剤の量を増やすと、耐磨耗性が低下することが予想される。
(4)実施例1と比較例5を比較すると、本発明の(G)リン系難燃剤とは異なるハロゲン系難燃剤を用いた場合には、外観特性が悪く、また熱安定性が悪いことが分かる。

Claims (5)

  1. (A)芳香族ポリカーボネート樹脂50〜95重量部、(B)芳香族ポリエステル樹脂5〜50重量部の合計100重量部に対し、(C)ブロックコポリアミド樹脂1〜30重量部、(D)衝撃改良剤0〜30重量部、(E)タルク1〜50重量部、(F)ホスファイト系抗酸化剤0.01〜5重量部及び(G)リン系難燃剤1〜30重量部を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
  2. (C)ブロックコポリアミド樹脂が、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックおよび/またはポリエステルブロックから構成されたものである請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  3. (G)リン系難燃剤が、下記一般式(2)で表される縮合燐酸エステル化合物である請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 2006117803
    (一般式(2)中、R4〜R7 は、各々独立して、炭素数1〜6のアルキル基、又はアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表し、p、q、r及びsは、各々0又は1であり、tは1〜5の整数であり、Xはアリーレン基を表す。)
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を射出成形して得られることを特徴とする樹脂筐体。
  5. 筐体が、記憶媒体の筐体である請求項4に記載の樹脂筐体。
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