JP2006117764A - 生分解性発泡体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 優れた生分解性を有する新規な発泡体、優れた水処理能力を有する発泡体提供する。
【解決手段】 イオン交換能を有する生分解性ポリマーを樹脂成分とする生分解性発泡体。具体的には、生分解性ポリマーはトリエタノールアミン又はジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸を縮重合させて得られるポリマーを樹脂成分とする生分解性発泡体を四級化したものである。この生分解性発泡体を被処理水中に浸漬することにより水の浄化ができる。被処理水は流水、循環水又は溜まり水である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、生分解性発泡体、その製造法、それを用いる水処理方法、微生物保持生分解性発泡体、その製造法、イオン吸着生分解性発泡体及びその製造法に関する。
近年、生分解性ポリエステル樹脂からなる発泡体が、環境の問題から種々提案されている。発泡体に使用されるポリエステルは生分解性を有するように脂肪族エステル結合を有するものが提案されている。これらはいずれも、緩衝剤、包装材、防音材等の用途に使用されるものである(例えば、特許文献1参照)。
これらは、いずれも、使用する樹脂を自然界のライフサイクルに、より安全に組み入れようとするものである。
一方、環境問題の一つとして、生活排水等による河川、湖沼の汚染を防止するために、種々の水処理方法が提案されている。例えば、ポリエチレン連続気泡発泡体を利用し、それに、例えば、リン吸着剤を担持させたものがリンの除去材として提案されているが、ポリエチレンへの生分解性の付与は難しく、自然界のライフサイクルに、より安全に組み入れることは困難である。
他方、非特許文献1に記載のトリエタノールアミン又はジエタノールアミンと脂肪族多価カルボン酸を縮重合させて得られるポリマーが生分解性を有し、この樹脂を四級化した樹脂はイオン吸着能を有し、その結果、水処理に有用な性質を有することが知られている。
しかし、実用に供するには、その性能をさらに向上させる必要がある。
特開2002−256098号公報 ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス・パート エー;ポリマー・ケミストリー(Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry) 39巻17号第2896〜2903頁
本発明は、第一に、優れた生分解性を有する新規な発泡体及びその製造法を提供するものである。本発明は第二に、優れた水処理能力を有する発泡体及びその製造法並びにそれを利用した水処理方法を提供するものである。本発明は、第三に、再利用価値の大きい発泡体及びその製造法を提供するものである
本発明は、次の物に関する。
1. イオン交換能を有する生分解性ポリマーを樹脂成分とする生分解性発泡体。
2. 生分解性ポリマーがトリエタノールアミン又はジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸を縮重合させて得られるポリマーを樹脂成分とする生分解性発泡体。
3. 生分解性ポリマーがイオン吸着能を有する項2記載の生分解性発泡体。
4. 生分解性ポリマーがトリエタノールアミン又はジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸を縮重合させて得られるポリマーの四級化物である項1又は3記載の生分解性発泡体。
5. トリエタノールアミン又はジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸のプレポリマーを加熱分解型発泡剤の存在下に加熱して発泡と同時に縮重合反応させることを特徴とする生分解性発泡体の製造法。
6. トリエタノールアミン又はジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸のプレポリマーを加熱分解型発泡剤の存在下に加熱して発泡と同時に縮重合反応させたあと、ポリマー発泡体を酸処理して四級化することを特徴とすることを特徴とする生分解性発泡体の製造法。

7. 生分解性ポリマーを樹脂成分とする生分解性発泡体を被処理水中に浸漬することを特徴とする水処理方法。
8. 生分解性ポリマーがイオン交換能を有するものである項7記載の水処理方法。
9. 項2〜4のいずれかに記載の生分解性発泡体を被処理水中に浸漬することを特徴とする水処理方法。
10. 被処理水が硝酸イオン又は亜硝酸イオンを含むものである項7〜9のいずれかに記載の水処理方法。
11. 被処理水が燐酸イオンを含むものである項7〜9のいずれかに記載の水処理方法。
12. 被処理水が流水、循環水又は溜まり水である項7〜11のいずれかに記載の水処理方法。

13. 項1〜4のいずれかに記載の生分解性発泡体に微生物を保持させてなる微生物保持生分解性発泡体。
14. 被処理水中に項1〜4のいずれかに記載の生分解性発泡体を浸漬することにより微生物を保持させることを特徴とする微生物保持生分解性発泡体の製造法。

15. 項1〜4又は項13のいずれかに記載の生分解性発泡体に硝酸イオン若しくは亜硝酸イオン又は燐酸イオンを吸着させてなるイオン吸着生分解性発泡体。
16. 被処理水中に項1〜4のいずれかに記載の生分解性発泡体を浸漬することにより硝酸イオン若しくは亜硝酸イオン又は燐酸イオンを吸着させることを特徴とするイオン吸着分解性発泡体の製造法。
本発明に係る生分解性発泡体は、発泡体であるため微生物が付着しやすく、生分解性が未発泡体よりも優れる。また、発泡体であるため、表面側から樹脂が生分解されて、脱落し、内部の樹脂が生分解されやすくなる。
本発明に係る生分解性発泡体は、イオン交換能を有することにより、硝酸イオン、燐酸イオン等を吸着しやすくなり、これにより水の浄化に有用な性質を有するようになる。また、この結果、その発泡体に微生物がよりよく付着し安くなり、これが水の浄化をより効果的にする。また、発泡体であるため、表面側から樹脂が生分解されて、脱落し、内部の樹脂が表面又は表面近くに表れるためイオン吸着が更新される。
これらの生分解性発泡体は、特定のポリエステル原料を使用して容易に製造することができる。
本発明に係る生分解性発泡体は、上記した好ましい性質を有することにより、水処理に有用であり、処理すべき水に浸漬させておくと、効果的に水の浄化を行うことができる。
さらに、本発明に係る生分解性発泡体を利用してイオン吸着生分解性発泡体及び微生物保持生分解性発泡体を製造することができ、これらは、再利用可能であり、環境リサイクル上好ましい。
本発明における生分解性ポリマーとしては、例えば、トリエタノールアミン又はジエタノールアミンと脂肪族多価カルボン酸とから得られるポリエステルがある。このポリエステルは多価アルコール成分としてトリエタノールアミン又はジエタノールアミンを必須成分とするものであり、その他のアルコール成分としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジブロムネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,3−ヘキサンジオール等の脂肪族グリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールのうち1種若しくは2種以上を併用して用いることができる。多価アルコール成分全体に対するトリエタノールアミン又はジエタノールアミンの割合は、50〜100モル%であることが好ましい。多価カルボン酸としては、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンニ酸等の脂肪族ジカルボン酸が好ましい。多価カルボン酸と多価アルコール成分は、当量比で多価カルボン酸1当量に対して多価アルコール0.7〜1.3の範囲で配合することが好ましく、特に0.9〜1.1の範囲で配合することが好ましく、等当量で使用することが最も好ましい。上記のポリエステルは、過酸化物との反応により架橋された物であってもよい。多価アルコール及び多価カルボン酸の使用量の合計に対して、3官能以上の多価アルコール及び多価カルボン酸の合計が、25〜50モル%使用されることがことが好ましい。
ポリエステルの合成法は、酸成分とアルコール成分を同時に仕込み縮重合反応させる1段合成法と、一部の酸成分とアルコール成分を縮重合反応させ、途中で、残りの酸成分、アルコール成分を仕込んで反応させる2段合成法等により行うことができ、その他製造条件に特に制限はない。
上記生分解性ポリマーの合成(重縮合反応)は、原料が溶融する温度以上で行うことが好ましい。発泡は、重縮合反応によって、十分に分子量が増大した時点で行う。分子量が小さい内に発泡剤を作用させると、ガスが抜けてしまい、発泡体を形成することが出来ない。発泡は、発泡剤の分解又は注入により行うが、熱分解型発泡剤を使用する場合、合成の初期から、発泡剤を反応系に存在させ、発泡開始までは発泡剤の分解温度より低い温度で縮重合を行い、発泡時に発泡剤の分解温度以上に加熱し、発泡と同時に残りの反応を行うようにすることが好ましい。架橋反応は主に発泡以後に起こるようにすることが好ましい。
本発明における発泡剤は、公知のものであれば、特に制限なく使用できる。通常、熱分解型発泡剤又は揮発性発泡剤が使用される。
熱分解型発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、クエン酸、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゼンスルホニルヒドラジド、アゾジカルボン酸バリウム、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、P−トルエンスルホニルヒドラジド、P−トルエンスルホニルアセトンヒドラゾーン等が挙げられる。熱分解型発泡剤の添加割合は、所望の発泡倍率に応じて適宜定めることができるが、樹脂成分の合計量100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは2〜40重量部の範囲内で使用される。このような発泡に際して、上記のプレポリマーには、必要に応じて各種添加剤、例えば、酸化防止剤、整泡剤、滑剤、紫外線吸収剤、重合調整剤、顔料等を加えることができる。これらは、プレポリマーの合成の初期から存在させることができる。
本発明における生分解性発泡体は、前記プレポリマー及びその他の添加剤等を押出機で混練溶融し押出機の途中から揮発性発泡剤を注入し、更に混練溶融して低圧域へ押出して発泡させる方法によって製造することができる。揮発性発泡剤としては、窒素ガス、炭酸ガス等の気体、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ネオペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の炭化水素、メチルクロライド、メチレンクロライド、ジクロロフルオロメタン、クロロトリフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン等のハロゲン化炭化水素類が挙げられる。発泡剤の添加量としては、樹脂成分100重量部に対して、5〜25重量部の範囲が用いられ、特に10〜20重量部が好ましい。
押出発泡においては、上記揮発性発泡剤の他に気泡調整剤として、無機質フィラーである炭酸カルシウムやタルク等の核形成剤及び押出発泡後の寸法収縮を抑える収縮防止剤、更に発泡品の物性を阻害しない限り、他の添加物として酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤等を加えることができる。
生分解性ポリマーの原料が2官能アルコールと2官能カルボン酸から主に合成される場合、架橋剤を発泡に際して存在させることが好ましい。架橋剤としては、例えば、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等の過酸化物などを用いることができ、添加割合は樹脂成分の合計量100重量部に対して、0.5〜5重量部の範囲が好ましい。また、この場合、架橋助剤として、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等を所望の架橋度合に応じて適宜使用することができるが、樹脂成分の合計量に対して、通常0.2〜5重量部の範囲が好ましい。架橋剤は、発泡の際に存在していればよく、場合により、前記プレポリマーの合成初期から存在させてもよい。
本発明における生分解性発泡体の発泡倍率は、3〜40倍が好ましく、更には4〜20倍が好ましい。
発泡倍率は、得られた発泡体をサイコロ状に切り出し、たて、横、高さ寸法と重量を測定し、発泡前の比重の倍数で求める。発泡前の比重は、温度23℃下において1cmあたりの重量から求める。発泡倍率が低いと、発泡による表面積が少なく、吸着効果が低くなる。また、発泡倍率が高いと、樹脂の強度が低く、取り扱い性が悪くなる。
生分解性ポリマーの生成は縮重合反応によるが、このときに生じる水を除去する必要があるため、真空下で合成してもよく、また、不活性ガスである窒素ガスを流して、水を窒素ガスの気流と共に除去してもよい。
発泡体の形状は任意であるが、厚さが2から30mmであることが好ましい。薄すぎると、生分解による崩壊が早く成りすぎ、厚すぎると生分解に時間がかかりすぎる用になる。前記した発泡、熱分解性発泡剤を含む反応物を型に移して行うことが好ましい。型の形状は任意であるが、底面が平らなトレイ状で行うことが好ましく、できた発泡体の取り扱い性からは、たて100mm〜2000mm、横100mm〜2000mm、深さ5mm〜100mmのものが好ましい。特に注入される樹脂の深さ(厚さ)は重要で、生じた水が除去されやすい深さであることを考慮すると、0.1mm〜20mm、更には10mm以下が望ましい。
前記生分解性ポリマーの四級化は、上記生分解性ポリマーの発泡体を希塩酸等の酸、ハロゲン化アルキルによりアミノ基を四級化することにより行うことができ、また、カルボキシル基にアミンを作用させて四級化サイトを生成してもよい。
ポリマー中の四級化サイトは、例えば、
(1)
Figure 2006117764
などや
(2)
Figure 2006117764
などで表される。
上記(1)の型の四級化サイトにより、陰イオン交換能を付与することができる。この結果、水中の硝酸イオン、燐酸イオン等を吸着する能力が与えられる。ポリマー中の四級化アミン窒素の量としては、ポリマー中のアミノ基の10%以上が四級化されていることが好ましく、50%以上四級化されていることがより好ましい。
イオン交換能を利用して、水中の硝酸イオン、燐酸イオン等を吸着し、生活排水や湖沼における窒素成分、リン成分の除去を行うことができる。
本発明における生分解性発泡体は、発泡体であることから、生活排水や湖沼に浸漬することにより、微生物が効率的に付着しやすく、従って、効果的に生分解される。それだけでなく、微生物による硝酸イオンの分解、燐酸イオンの摂取等により、水の浄化が行われる。
この生分解性発泡体が前記したようなイオン交換能を有する場合は、生活排水や湖沼中に含まれる硝酸イオンや燐酸イオンが吸着され、それらが微生物の餌になるため、微生物の付着が促進される。水の浄化という観点からは、初期はイオン交換により硝酸イオンや燐酸イオンが発泡体に吸着されることにより浄化が行われ、微生物が充分付着した後は、微生物による水の浄化が行われる。
発泡体でない塊状の生分解性ポリマーである場合、ポリマーの表面に微生物が付着し、表面近くはポリマーが生分解を受けやすいが、微生物によって表面が覆われると生分解速度が著しく遅くなり、生分解性が生かされない。それだけではなく、表面の微生物が全く又はほぼ死滅し、水の浄化機能もなくなるか、非常に小さくなる。ところが、発泡された生分解性ポリマーでは、表面近くから微生物によりポリマーが生分解により、脱落し、常に新しい表面が現れるため、その機能を発揮し続けることができ、水の浄化に有用になる。その生分解性ポリマーが四級化されている方が水の浄化にとって好ましいことは前記したとおりである。
水の浄化は、浄化すべき水に本発明における生分解性発泡体を浸漬することによりおこなうことができる。生分解性ポリマーの形状は任意であるが、取り扱い性等から前記したようなものが好ましい。また、浄化すべき水は、流水でなくても良いが、浄化を効果的にするためには、流水であることが好ましい。効果的な流水をつくるために、湖沼等の水を水路に導入し、この水路に生分解性発泡体を多数配置することが好ましい。このとき、発泡体の配置個所や量は、浄化すべき水の状態(除去すべきイオンの濃度、期待する除去率、水の流速等)を考慮して適宜決定される。発泡体は流水の流れに対して千鳥に配置することが好ましく、また、水をせき止めないようにすることが好ましい。
本発明における微生物又はイオン吸着生分解性発泡体は、前記からも明らかなように、前記した生分解性発泡体を生活排水や湖沼等に浸漬することにより製造することができる。イオン吸着体は、本発明における生分解性発泡体を硝酸イオンや燐酸イオン等が含まれる水に浸漬することにより作製することができる。
前記した水の浄化に使用された生分解性発泡体は、全体が生分解される前に、その形状をもとのままではないが保っている間に回収することにより、肥料等に再利用することができる。従って、工業製品の環境リサイクルという観点からも好ましい。
(生分解性発泡体の製造、生分解性発泡体の形状)
トリエタノールアミン149g(1mol)セバシン酸303g(1.5mol)及び発泡剤としてアゾジカルボンアミド27.1g(トリエタノールアミンとセバシン酸の総量に対して6重量%)を秤量し、2,000ml容量のセパラブルフラスコに入れ、窒素気流(0.5リットル/分)下に、マグネチックスターラー内蔵型マントルヒータで150℃に昇温した。温度の上昇につれ、セバシン酸は溶解し、トリエタノールアミンは粘度が低下し、マグネチックスターラーが回転を始め、トリエタノールアミンとセバシン酸および発泡剤は均一に混合された。温度が150℃に昇温した後50分間150℃に維持し、プレポリマーを得た。プレポリマーへの反応に伴って生じる水は窒素ガスと共に器外に運び去った。得られたプレポリマーは常温でも容器から自重で落下する程度の粘度であった。
上記によって得られたプレポリマーを、たて約350mm、横約350mm、深さ30mmのアルミニウム製トレイに厚さ約5mmにいれ、たて約800mm、横約800mm、奥行き約800mmのオーブン内に配置し、窒素気流(100リットル/分)下に220℃に昇温し、この温度に120分間維持した。
その際、昇温につれて、縮合反応は進行して樹脂は増粘すると共に、反応に伴って生じる水は窒素ガスと共に器外に運び去った。また、アゾジカルボンアミドの分解温度は199℃であり、増粘中に発泡剤は分解し、その分解ガスによって微細な気泡を有する発泡体が得られた。
得られた発泡体の発泡倍率を求めたところ5.5倍であった。
(発泡体の四級化)
前記で得られた発泡体を、500g当り、約5リットルのメタノールに浸漬し、約10分間揉み洗いした後、50℃の乾燥炉で24時間乾燥して、揮発分(未重合成分等)を除去した。その後、発泡体500g当り、約5リットルの塩酸液(塩酸1容積%水溶液)の中に180分浸漬した。浸漬後は純水で繰り返し洗浄した。その後、発泡体を圧縮して(押しつぶして)発泡体中に含まれる純水を極力押し出した後、24時間放置して自然乾燥させて四級化した発泡体を得た。
(発泡体の生分解性試験方法及び結果)
生分解性の試験は、滋賀県草津市にある(財)琵琶湖・淀川水質保全機構水質浄化共同実験センター内の水路型浄化実験施設のB水路にて実施した。本水路へは葉山川河口部の水を導入するようになっている。
本水路の流水中に、得られた発泡体を厚さ10mmにスライスして、浸漬したところ、約3ヶ月で厚さが5mmに減少し、表面から、樹脂が次第に脱落しながら生分解していく様子が確かめられた。
(発泡体を利用した硝酸イオンの吸着性能試験方法及び結果)
本発泡体を厚さ10mmにスライスし、高さ65cm、横43cmの金網に挟み込んだ発泡樹脂板とし、上記実験センターの水路に設置した。図1は、この設置状態を示す平面図である。水路(長さ24m、幅2m、水深65cm)を水流方向に3分割した水路1に発泡樹脂板を挟んだ金網2を千鳥状に計20枚(発泡体重量総量10kg)浸漬設置し、水路1の水量を、8.6m/日となるように設定した。
水の浄化性能の評価は、図4に示す発泡樹脂板の上流部と下流部の水を取水し、それぞれの硝酸イオン、リン酸イオンの濃度を測定して、それぞれについて、
Figure 2006117764

で求めた。
硝酸イオンの測定は、島津製作所製液体クロマトグラフSPD−10Aviを用い、移動相としては、リン酸二水素カリウム10mM、水酸化テトラブチルアンモニウム0.7mMを用いた。
また、リン酸イオンの測定は、リン酸呈色試薬HACH社PhosVer(商品名)を加え、それを25度の条件下で島津製作所製分光光度計UV−3101PCで、純水をブランクとして890nmで行った。
表1に、浸漬後の日数と除去率の関係を示す。また、グラフを図2(硝酸イオンの除去率)及び図3(硝酸イオンの除去率)に示す。
Figure 2006117764
この結果はつぎのことを示している。すなわち、発泡体を水流に浸漬後、しばらくは、硝酸イオン、リン酸イオンが発泡体の四級化サイト(吸着サイト)に吸着するため、水中の硝酸イオン及びリン酸イオンの濃度は減少する。やがて吸着サイトは飽和し、硝酸イオン除去率、リン酸イオン除去率は低下する。(表1の測定結果では、硝酸イオンで浸漬後約20日後、リン酸イオンで約30日後)。その吸着進行過程で、硝酸イオンやリン酸イオンを摂取・消化する微生物が付着し、次第に微生物によって硝酸イオンやリン酸イオンは処理され、再び硝酸イオン、リン酸イオンの除去率は上昇する。そのうち、発泡樹脂板表面の生分解が始まり、内部の樹脂が表面近くに表れるため新たな吸着サイトが現れ、イオン吸着がおこるとともに、新たな微生物の付着が起こり、また、すでに付着していた微生物は発泡体の生分解でそのすべてが発泡性樹脂から離脱するわけではないので、表1に示す良好な除去率の結果が得られたものであると考えられる。更に浸漬時間が経過すると、(図2、図3では80日前後)発泡樹脂板は生分解によって薄くなり、水が発泡樹脂板を貫通するようになり、千鳥状に流れなくなって、発泡樹脂との接触回数が減少し、除去率は低下すると考えられる。
(生分解性発泡体の製造、生分解性発泡体の形状)
トリエタノールアミン149g(1mol)、セバシン酸303g(1.5mol)及び発泡剤としてアゾジカルボンアミド149.2g(トリエタノールアミンとセバシン酸の総量に対して33重量%)をそれぞれ秤量し、使用したこと以外は実施例1同じ方法で発泡体を製造した。得られた発泡体の発泡倍率を求めたところ8倍であった。
比較例
(非発泡体の製造と非発泡体による生分解、水の浄化の試験方法及び結果)
トリエタノールアミン149g(1mol)及びセバシン酸303g(1.5mol)を秤量して使用し、発泡剤を用いなかったこと以外は実施例1と同じ方法で非発泡体を製造した。この製法による樹脂を本考案では非発泡体と称しているが、反応が縮合反応である故、反応に伴って水が発生する。水は高温である故、水蒸気になって樹脂中から離散し、膨張する。しかし、発泡剤によって生じる分解ガスによる発泡作用とは異なり、細かいセル状態の生成はなく、薄いフィルム状に膨らんでいる様子が見られた。得られた膨張樹脂の膨張倍率を前記発泡倍率と同様にしてを求めたところ2倍であった。
得られた非発泡体樹脂を実施例1と同じ方法で四級化した。得られた四級化樹脂を水路の流水中に、厚さ10mmにスライスして、浸漬したところ、表面がどろどろに溶けた状態でその表面に微生物が付着し、死滅して堆積し、発泡体表面が密閉され状態になっている様子が確かめられた。
(発泡体及び非発泡体樹脂を利用した硝酸イオンの吸着性能試験方法及び結果)
実施例1、2の発泡体および比較例1の非発泡体樹脂の吸着性能を調べた。
試験方法は以下の方法で行った。
まず,純水と既知濃度に調整した硝酸イオン溶液(1,2,3,4,5ppm)を,島津製作所製液体クロマトグラフSPD−10Aviにて、移動相としては、リン酸二水素カリウム10mM、水酸化テトラブチルアンモニウム0.7mMを用い,210nmの波長における(硝酸イオンの特長ピーク)吸光度より,硝酸イオン濃度の検量線を作成した。
次に発泡体又は非発泡樹脂を,次の方法で洗浄後,吸着率を測定した。
(1)発泡体又は非発泡樹脂を一辺約10mmの立方体に切断し,約4g秤量する。
(2)秤量した試料約4gに対し,メタノールを200ml加え,12時間スターラーで攪拌しながら洗浄する。
(3)12時間経過後の発泡体又は非発泡樹脂を回収し,2時間の減圧乾燥を行う。
(4)約5ppmに調整した硝酸液80mlに対し,回収した発泡体又は非発泡樹脂を2g入れ,スターラーで30分攪拌する。
(5)30分後の硝酸イオン濃度を,検量線作成時と同様の方法で液体クロマトグラフにより測定し,次式により吸着率を求めた。
Figure 2006117764
その試験結果を表2に示す。
Figure 2006117764
表2からわかるように、非発泡樹脂(比較例1)では、硝酸イオン濃度の減少率が5.6%であるのに比較して、発泡体(実施例1、実施例2)では、硝酸イオン濃度の減少率が高いことが確かめられた。
実験水路と発泡体を挟んだ金網の設置状態を示す平面図。 発泡体を水路に浸漬してからの硝酸イオン濃度及び硝酸イオンの除去率の経日変化を示すグラフ。 発泡体を水路に浸漬してからのリン酸イオン濃度及びリン酸イオンの除去率の経日変化を示すグラフ。
符号の説明
1:発泡体を挟んだ金網
2:水路壁

Claims (16)

  1. イオン交換能を有する生分解性ポリマーを樹脂成分とする生分解性発泡体。
  2. 生分解性ポリマーがトリエタノールアミン又はジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸を縮重合させて得られるポリマーを樹脂成分とする生分解性発泡体。
  3. 生分解性ポリマーがイオン吸着能を有する請求項2記載の生分解性発泡体。
  4. 生分解性ポリマーがトリエタノールアミン又はジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸を縮重合させて得られるポリマーの四級化物である請求項1又は3記載の生分解性発泡体。
  5. トリエタノールアミン又はジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸のプレポリマーを加熱分解型発泡剤の存在下に加熱して発泡と同時に縮重合反応させることを特徴とする生分解性発泡体の製造法。
  6. トリエタノールアミン又はジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸のプレポリマーを加熱分解型発泡剤の存在下に加熱して発泡と同時に縮重合反応させたあと、ポリマー発泡体を酸処理して四級化することを特徴とすることを特徴とする生分解性発泡体の製造法。
  7. 生分解性ポリマーを樹脂成分とする生分解性発泡体を被処理水中に浸漬することを特徴とする水処理方法。
  8. 生分解性ポリマーがイオン交換能を有するものである請求項7記載の水処理方法。
  9. 請求項2〜4のいずれかに記載の生分解性発泡体を被処理水中に浸漬することを特徴とする水処理方法。
  10. 被処理水が硝酸イオン又は亜硝酸イオンを含むものである請求項7〜9のいずれかに記載の水処理方法。
  11. 被処理水が燐酸イオンを含むものである請求項7〜9のいずれかに記載の水処理方法。
  12. 被処理水が流水、循環水又は溜まり水である請求項7〜11のいずれかに記載の水処理方法。
  13. 請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性発泡体に微生物を保持させてなる微生物保持生分解性発泡体。
  14. 被処理水中に請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性発泡体を浸漬することにより微生物を保持させることを特徴とする微生物保持生分解性発泡体の製造法。
  15. 請求項1〜4、又は13のいずれかに記載の生分解性発泡体に硝酸イオン若しくは亜硝酸イオン又は燐酸イオンを吸着させてなるイオン吸着生分解性発泡体。
  16. 被処理水中に請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性発泡体を浸漬することにより硝酸イオン若しくは亜硝酸イオン又は燐酸イオンを吸着させることを特徴とするイオン吸着分解性発泡体の製造法。

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