JP4779337B2 - 生分解性発泡体 - Google Patents
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Description
これらは、いずれも、使用する樹脂を自然界のライフサイクルに、より安全に組み入れようとするものである。
しかし、実用に供するには、その性能をさらに向上させる必要がある。
1. トリエタノールアミン又はジエタノールアミンを必須成分とする多価アルコールと脂肪族ジカルボン酸を縮重合させて得られる生分解性ポリマーを樹脂成分とする生分解性発泡体であって、前記生分解性ポリマーの縮重合反応の初期から熱分解型発泡剤を反応系に存在させて発泡と同時に縮重合させてなり、縮重合を原料が溶融する温度以上の温度で行うとともに、発泡開始までは前記発泡剤の分解温度よりも低い温度で縮重合を行い、発泡と同時に残りの反応を行うことにより、架橋反応を主に発泡以後に発生させて得られることを特徴とする生分解性発泡体。
2. 項1記載の生分解性発泡体を四級化してなる生分解性発泡体。
3. 生分解性ポリマーがイオン吸着能を有する項2記載の生分解性発泡体。
4. トリエタノールアミン又はジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸を縮重合させて得られる生分解性ポリマーを樹脂成分とする生分解性発泡体の製造法であって、前記生分解性ポリマーの縮重合反応の初期から熱分解型発泡剤を反応系に存在させ、縮重合を原料が溶融する温度以上の温度で行うとともに、発泡開始までは前記発泡剤の分解温度よりも低い温度で縮重合を行い、発泡と同時に残りの反応を行うことにより、架橋反応を主に発泡以後に発生させ、トリエタノールアミン又はジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸のプレポリマーを加熱分解型発泡剤の存在下に加熱して発泡と同時に縮重合反応させることを特徴とする生分解性発泡体の製造法。
5. トリエタノールアミン又はジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸のプレポリマーを加熱分解型発泡剤の存在下に加熱して発泡と同時に縮重合反応させたあと、ポリマー発泡体を酸処理して四級化することを特徴とすることを特徴とする項4記載の生分解性発泡体の製造法。
本発明に係る生分解性発泡体は、イオン交換能を有することにより、硝酸イオン、燐酸イオン等を吸着しやすくなり、これにより水の浄化に有用な性質を有するようになる。また、この結果、その発泡体に微生物がよりよく付着し安くなり、これが水の浄化をより効果的にする。また、発泡体であるため、表面側から樹脂が生分解されて、脱落し、内部の樹脂が表面又は表面近くに表れるためイオン吸着が更新される。
これらの生分解性発泡体は、特定のポリエステル原料を使用して容易に製造することができる。
本発明に係る生分解性発泡体は、上記した好ましい性質を有することにより、水処理に有用であり、処理すべき水に浸漬させておくと、効果的に水の浄化を行うことができる。
さらに、本発明に係る生分解性発泡体を利用してイオン吸着生分解性発泡体及び微生物保持生分解性発泡体を製造することができ、これらは、再利用可能であり、環境リサイクル上好ましい。
ポリエステルの合成法は、酸成分とアルコール成分を同時に仕込み縮重合反応させる1段合成法と、一部の酸成分とアルコール成分を縮重合反応させ、途中で、残りの酸成分、アルコール成分を仕込んで反応させる2段合成法等により行うことができ、その他製造条件に特に制限はない。
熱分解型発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、クエン酸、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゼンスルホニルヒドラジド、アゾジカルボン酸バリウム、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、P−トルエンスルホニルヒドラジド、P−トルエンスルホニルアセトンヒドラゾーン等が挙げられる。熱分解型発泡剤の添加割合は、所望の発泡倍率に応じて適宜定めることができるが、樹脂成分の合計量100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは2〜40重量部の範囲内で使用される。このような発泡に際して、上記のプレポリマーには、必要に応じて各種添加剤、例えば、酸化防止剤、整泡剤、滑剤、紫外線吸収剤、重合調整剤、顔料等を加えることができる。これらは、プレポリマーの合成の初期から存在させることができる。
発泡倍率は、得られた発泡体をサイコロ状に切り出し、たて、横、高さ寸法と重量を測定し、発泡前の比重の倍数で求める。発泡前の比重は、温度23℃下において1cm3あたりの重量から求める。発泡倍率が低いと、発泡による表面積が少なく、吸着効果が低くなる。また、発泡倍率が高いと、樹脂の強度が低く、取り扱い性が悪くなる。
生分解性ポリマーの生成は縮重合反応によるが、このときに生じる水を除去する必要があるため、真空下で合成してもよく、また、不活性ガスである窒素ガスを流して、水を窒素ガスの気流と共に除去してもよい。
ポリマー中の四級化サイトは、例えば、
(1)
(2)
上記(1)の型の四級化サイトにより、陰イオン交換能を付与することができる。この結果、水中の硝酸イオン、燐酸イオン等を吸着する能力が与えられる。ポリマー中の四級化アミン窒素の量としては、ポリマー中のアミノ基の10%以上が四級化されていることが好ましく、50%以上四級化されていることがより好ましい。
イオン交換能を利用して、水中の硝酸イオン、燐酸イオン等を吸着し、生活排水や湖沼における窒素成分、リン成分の除去を行うことができる。
この生分解性発泡体が前記したようなイオン交換能を有する場合は、生活排水や湖沼中に含まれる硝酸イオンや燐酸イオンが吸着され、それらが微生物の餌になるため、微生物の付着が促進される。水の浄化という観点からは、初期はイオン交換により硝酸イオンや燐酸イオンが発泡体に吸着されることにより浄化が行われ、微生物が充分付着した後は、微生物による水の浄化が行われる。
発泡体でない塊状の生分解性ポリマーである場合、ポリマーの表面に微生物が付着し、表面近くはポリマーが生分解を受けやすいが、微生物によって表面が覆われると生分解速度が著しく遅くなり、生分解性が生かされない。それだけではなく、表面の微生物が全く又はほぼ死滅し、水の浄化機能もなくなるか、非常に小さくなる。ところが、発泡された生分解性ポリマーでは、表面近くから微生物によりポリマーが生分解により、脱落し、常に新しい表面が現れるため、その機能を発揮し続けることができ、水の浄化に有用になる。その生分解性ポリマーが四級化されている方が水の浄化にとって好ましいことは前記したとおりである。
前記した水の浄化に使用された生分解性発泡体は、全体が生分解される前に、その形状をもとのままではないが保っている間に回収することにより、肥料等に再利用することができる。従って、工業製品の環境リサイクルという観点からも好ましい。
トリエタノールアミン149g(1mol)セバシン酸303g(1.5mol)及び発泡剤としてアゾジカルボンアミド27.1g(トリエタノールアミンとセバシン酸の総量に対して6重量%)を秤量し、2,000ml容量のセパラブルフラスコに入れ、窒素気流(0.5リットル/分)下に、マグネチックスターラー内蔵型マントルヒータで150℃に昇温した。温度の上昇につれ、セバシン酸は溶解し、トリエタノールアミンは粘度が低下し、マグネチックスターラーが回転を始め、トリエタノールアミンとセバシン酸および発泡剤は均一に混合された。温度が150℃に昇温した後50分間150℃に維持し、プレポリマーを得た。プレポリマーへの反応に伴って生じる水は窒素ガスと共に器外に運び去った。得られたプレポリマーは常温でも容器から自重で落下する程度の粘度であった。
上記によって得られたプレポリマーを、たて約350mm、横約350mm、深さ30mmのアルミニウム製トレイに厚さ約5mmにいれ、たて約800mm、横約800mm、奥行き約800mmのオーブン内に配置し、窒素気流(100リットル/分)下に220℃に昇温し、この温度に120分間維持した。
その際、昇温につれて、縮合反応は進行して樹脂は増粘すると共に、反応に伴って生じる水は窒素ガスと共に器外に運び去った。また、アゾジカルボンアミドの分解温度は199℃であり、増粘中に発泡剤は分解し、その分解ガスによって微細な気泡を有する発泡体が得られた。
得られた発泡体の発泡倍率を求めたところ5.5倍であった。
前記で得られた発泡体を、500g当り、約5リットルのメタノールに浸漬し、約10分間揉み洗いした後、50℃の乾燥炉で24時間乾燥して、揮発分(未重合成分等)を除去した。その後、発泡体500g当り、約5リットルの塩酸液(塩酸1容積%水溶液)の中に180分浸漬した。浸漬後は純水で繰り返し洗浄した。その後、発泡体を圧縮して(押しつぶして)発泡体中に含まれる純水を極力押し出した後、24時間放置して自然乾燥させて四級化した発泡体を得た。
生分解性の試験は、滋賀県草津市にある(財)琵琶湖・淀川水質保全機構水質浄化共同実験センター内の水路型浄化実験施設のB水路にて実施した。本水路へは葉山川河口部の水を導入するようになっている。
本水路の流水中に、得られた発泡体を厚さ10mmにスライスして、浸漬したところ、約3ヶ月で厚さが5mmに減少し、表面から、樹脂が次第に脱落しながら生分解していく様子が確かめられた。
本発泡体を厚さ10mmにスライスし、高さ65cm、横43cmの金網に挟み込んだ発泡樹脂板とし、上記実験センターの水路に設置した。図1は、この設置状態を示す平面図である。水路(長さ24m、幅2m、水深65cm)を水流方向に3分割した水路1に発泡樹脂板を挟んだ金網2を千鳥状に計20枚(発泡体重量総量10kg)浸漬設置し、水路1の水量を、8.6m3/日となるように設定した。
水の浄化性能の評価は、図4に示す発泡樹脂板の上流部と下流部の水を取水し、それぞれの硝酸イオン、リン酸イオンの濃度を測定して、それぞれについて、
で求めた。
硝酸イオンの測定は、島津製作所製液体クロマトグラフSPD−10Aviを用い、移動相としては、リン酸二水素カリウム10mM、水酸化テトラブチルアンモニウム0.7mMを用いた。
また、リン酸イオンの測定は、リン酸呈色試薬HACH社PhosVer(商品名)を加え、それを25度の条件下で島津製作所製分光光度計UV−3101PCで、純水をブランクとして890nmで行った。
表1に、浸漬後の日数と除去率の関係を示す。また、グラフを図2(硝酸イオンの除去率)及び図3(硝酸イオンの除去率)に示す。
トリエタノールアミン149g(1mol)、セバシン酸303g(1.5mol)及び発泡剤としてアゾジカルボンアミド149.2g(トリエタノールアミンとセバシン酸の総量に対して33重量%)をそれぞれ秤量し、使用したこと以外は実施例1同じ方法で発泡体を製造した。得られた発泡体の発泡倍率を求めたところ8倍であった。
(非発泡体の製造と非発泡体による生分解、水の浄化の試験方法及び結果)
トリエタノールアミン149g(1mol)及びセバシン酸303g(1.5mol)を秤量して使用し、発泡剤を用いなかったこと以外は実施例1と同じ方法で非発泡体を製造した。この製法による樹脂を本考案では非発泡体と称しているが、反応が縮合反応である故、反応に伴って水が発生する。水は高温である故、水蒸気になって樹脂中から離散し、膨張する。しかし、発泡剤によって生じる分解ガスによる発泡作用とは異なり、細かいセル状態の生成はなく、薄いフィルム状に膨らんでいる様子が見られた。得られた膨張樹脂の膨張倍率を前記発泡倍率と同様にしてを求めたところ2倍であった。
得られた非発泡体樹脂を実施例1と同じ方法で四級化した。得られた四級化樹脂を水路の流水中に、厚さ10mmにスライスして、浸漬したところ、表面がどろどろに溶けた状態でその表面に微生物が付着し、死滅して堆積し、発泡体表面が密閉され状態になっている様子が確かめられた。
実施例1、2の発泡体および比較例1の非発泡体樹脂の吸着性能を調べた。
試験方法は以下の方法で行った。
まず,純水と既知濃度に調整した硝酸イオン溶液(1,2,3,4,5ppm)を,島津製作所製液体クロマトグラフSPD−10Aviにて、移動相としては、リン酸二水素カリウム10mM、水酸化テトラブチルアンモニウム0.7mMを用い,210nmの波長における(硝酸イオンの特長ピーク)吸光度より,硝酸イオン濃度の検量線を作成した。
次に発泡体又は非発泡樹脂を,次の方法で洗浄後,吸着率を測定した。
(1)発泡体又は非発泡樹脂を一辺約10mmの立方体に切断し,約4g秤量する。
(2)秤量した試料約4gに対し,メタノールを200ml加え,12時間スターラーで攪拌しながら洗浄する。
(3)12時間経過後の発泡体又は非発泡樹脂を回収し,2時間の減圧乾燥を行う。
(4)約5ppmに調整した硝酸液80mlに対し,回収した発泡体又は非発泡樹脂を2g入れ,スターラーで30分攪拌する。
(5)30分後の硝酸イオン濃度を,検量線作成時と同様の方法で液体クロマトグラフにより測定し,次式により吸着率を求めた。
2:水路壁
Claims (5)
- トリエタノールアミン又はジエタノールアミンを必須成分とする多価アルコールと脂肪族ジカルボン酸を縮重合させて得られる生分解性ポリマーを樹脂成分とする生分解性発泡体であって、前記生分解性ポリマーの縮重合反応の初期から熱分解型発泡剤を反応系に存在させて発泡と同時に縮重合させてなり、縮重合を原料が溶融する温度以上の温度で行うとともに、発泡開始までは前記発泡剤の分解温度よりも低い温度で縮重合を行い、発泡と同時に残りの反応を行うことにより、架橋反応を主に発泡以後に発生させて得られることを特徴とする生分解性発泡体。
- 請求項1記載の生分解性発泡体を四級化してなる生分解性発泡体。
- 生分解性ポリマーがイオン吸着能を有する請求項2記載の生分解性発泡体。
- トリエタノールアミン又はジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸を縮重合させて得られる生分解性ポリマーを樹脂成分とする生分解性発泡体の製造法であって、前記生分解性ポリマーの縮重合反応の初期から熱分解型発泡剤を反応系に存在させ、縮重合を原料が溶融する温度以上の温度で行うとともに、発泡開始までは前記発泡剤の分解温度よりも低い温度で縮重合を行い、発泡と同時に残りの反応を行うことにより、架橋反応を主に発泡以後に発生させ、トリエタノールアミン又はジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸のプレポリマーを加熱分解型発泡剤の存在下に加熱して発泡と同時に縮重合反応させることを特徴とする生分解性発泡体の製造法。
- トリエタノールアミン又はジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸のプレポリマーを加熱分解型発泡剤の存在下に加熱して発泡と同時に縮重合反応させたあと、ポリマー発泡体を酸処理して四級化することを特徴とすることを特徴とする請求項4記載の生分解性発泡体の製造法。
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