JP2001269699A - 硝酸汚染地下水の直接浄化方法 - Google Patents

硝酸汚染地下水の直接浄化方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 効率的な炭素源の利用と脱窒菌の高濃度化を
図ることができ、貴金属の添加を必要とすることもな
く、より安全性の高い地下水の直接浄化を可能とする、
新しい浄化方法とそのための装置を提供する。 【解決手段】 澱粉由来の生分解性プラスチックを単一
炭素源並びに菌体固定化担体とし、この担体に脱窒菌を
固定化して硝酸態窒素に汚染された地下水と接触させ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、硝酸汚染
地下水の直接浄化方法とその装置に関するものである。
さらに詳しくは、この出願の発明は、硝酸態の窒素で汚
染された飲用および灌漑用等の地下水の効率的で、安全
かつ安価な直接的浄化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】生物学的脱窒においては、電
子供与態となる炭素源が必須であることから、従来の硝
酸汚染、すなわち硝酸態窒素により汚染された地下水の
直接浄化には、脱窒菌と水溶性の炭素源を別々に地下水
に投入する方法が用いられてきた。しかしながらこのよ
うな従来の方法では、脱窒菌そして水溶性の炭素源は容
易に地下水脈中に拡散し、充分に効果を発揮することが
できないという問題があった。
【0003】また、飲用を目的とした脱窒においては、
用いる炭素源にメタノール等のように毒性の危惧のある
ものは避けなければならない。このため、炭素源の選択
も制約されてしまうという問題があった。
【0004】さらにまた、従来、脱窒菌の能力を十分発
揮させるには、脱窒代謝過程に関与する酵素の多くが金
属酵素であるためFe,Mo,Mn,Cuなどの重金属
の微量添加が必要とされてきた。一方、地下水の金属含
有量は様々であり、一般的に金属含有量の高いものは飲
用には利用されないという問題もある。
【0005】そこで、この出願の発明は、以上のとおり
の従来技術の問題点を解消し、効率的な炭素源の利用と
脱窒菌の高濃度化を図ることができ、重金属の添加を必
要とすることもなく、より安全性の高い地下水の直接浄
化を可能とする、新しい浄化方法とそのための装置を提
供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】この出願の発明は、上記
のとおりの課題を解決するものとして、まず第1には、
澱粉由来の生分解性プラスチックスを単一炭素源並びに
菌体固定化担体とし、この担体に脱窒菌を固定化して硝
酸態窒素に汚染された地下水と接触させることを特徴と
する硝酸汚染地下水の直接浄化方法を提供する。
【0007】また、この出願の発明は、上記方法に関し
て、第2には澱粉由来の生分解性プラスチックスは、澱
粉含有量が60重量%以上で、水に対する溶解性が低
く、かつ多孔質である浄化方法を提供し、第3には、生
分解性プラスチックスは、廃棄物の再利用品である浄化
方法を、第4には、脱窒菌は、重金属の要求性がなく、
亜硝酸を蓄積することなく20℃以下の低い温度で脱窒
能を有している浄化方法を提供する。
【0008】そして、この出願の発明は第5には、上記
の担体を網ケースに充填し、これを上下方向に揺動させ
て水との接触を図るようにした方法を提供し、第6に
は、この方法のための装置として担体を収納充填する網
ケースとともに、これを地下水との接触状態において上
下方向に揺動させる揺動手段を備えていることを特徴と
する硝酸汚染地下水の直接浄化装置をも提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】この出願の発明は、上記のとおり
の特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態につ
いて説明する。
【0010】なによりもこの出願の発明が特徴とするこ
とは、澱粉を単一の炭素源として生育できる脱窒菌を安
価な澱粉由来生分解性プラスチックスに固定化して硝酸
態窒素汚染地下水の直接浄化を行うことである。
【0011】この浄化方法では、脱窒菌が常に炭素源と
共に存在することから効率的な炭素源の利用と、脱窒菌
の高濃度化が図れる。
【0012】澱粉にはメタノールを炭素源とする場合の
ような毒性の危惧はなく、またこれを資化する微生物も
多数おり、有用な脱窒菌を分離するのに有利である。
【0013】澱粉由来の生分解性プラスチックスは、澱
粉含有量が60重量%以上、たとえば70%前後で、水
に対する溶解性が低く、かつ多孔質であるものが好適に
用いられる。これらの特性は、多数の脱窒菌を固定化で
き、比較的長期間にわたる処理を可能とするのに重要な
要因である。
【0014】好適な澱粉由来の生分解性プラスチックに
ついてその物性値を例示すると、たとえば比重1.01
〜1.05で、懸濁が容易なもの、そして気孔率は10
〜60%のものが挙げられる。また、澱粉の素材につい
ては、馬鈴薯、サツマイモ、小麦、トーモロコシ等の各
種のものであってよい。また、メチルアクリレート等の
不飽和結合を有し、重合性の良好なモノマーによりグラ
フト重合した澱粉もこの出願の発明において好適に用い
られる。
【0015】澱粉由来の生分解性プラスチックスとして
は、たとえば澱粉を乳酸ポリマーとの複合化や共重合化
したもの、あるいはシクロデキストリン等により架橋
(重合)処理したもの、その他の各種の天然物ポリマー
との複合化により成形したもの等の各種のものが用いら
れる。ただ、単一の炭素源としても使用することから、
生分解性プラスチックスに占める澱粉もしくば澱粉のブ
ロックの割合は60重量%以上とするのが好ましい。そ
して多孔質のものとするのが好ましい。
【0016】また、澱粉由来生分解性プラスチックスと
しては、パッキング材等として実際に利用されている使
い捨て物質、つまり廃棄物の再利用品とすることもでき
る。この場合には極めて安価である。そして、廃棄物の
有効利用という観点からも意義がある。
【0017】たとえば以上のような生分解性プラスチッ
クスを担体とするこの発明の方法においては、この担体
に脱窒菌を固定化する。菌の固定化は、たとえば菌体懸
濁液に乾燥した担体を投入するだけでよく、担体の細孔
内に菌体が吸引され容易に定着することになる。この場
合の脱窒菌としては、重金属を添加することなく脱窒能
を発揮する菌であることが望ましい。また、井戸水は1
5℃前後であることから、一般的には20℃以下の低温
下での増殖および脱窒能力をもつものが望ましい。
【0018】この出願の発明の方法によって、二次汚染
を引き起こすことなく、澱粉由来生分解性プラスチック
スに固定化した上記の菌体を地下水脈中に投入して直接
浄化を図る際には、よりその効果を発揮するためには水
脈中に相当大量の固定化菌体を投入することが望ましい
ことから、この発明では、硝酸汚染地下水を井戸の中で
浄化するための装置も提供する。
【0019】この装置では脱窒菌の活性化に伴って多く
の窒素ガスが発生し、これが担体に付着して担体を浮上
させることから、担体と水中との接触が悪くなり、処理
効率の低下が起こるとの問題を未然に防止するように、
物理的強度が少なく脆弱な担体を破砕することなく、狹
い井戸の中で担体を水中に分散させる。このため、たと
えば具体的には図1に例示したように、円筒状の網籠
(A)の中に籠容積の60−70%の固定化担体(B)
を充填し、これをエアー・シリンダー(C)等の上下方
向の揺動手段で鉛直方向に運動させるようにする。その
際、たとえば下降させる場合には比較的ゆっくりと移動
させ、上昇させる場合には素早く移動させる。このよう
な籠の動きによって内部の担体は、浮力によって水中を
上昇して水との良好な接触が保たれる。脱窒の進行に伴
って担体が消耗し、この補充が必要よなることから、担
体を充填した籠はカートリッジ化しておき、交換時には
古いカートリッジの中の担体を新規カートリッジの中に
混入させることができる。この操作によって、古い担体
に付着していた脱窒菌が新たに担体に移行して再び脱窒
を行うことができる。
【0020】そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく
はこの発明の方法について説明する。もちろん、この発
明は以下の実施例によって限定されることはない。
【0021】
【実施例】(脱窒菌)湖沼の底泥を分離源として、脱窒
菌株を分離した。菌の分離源は水戸市千波湖の底泥であ
る。分離方法は以下のとおりである。
【0022】すなわち、十分希釈した底泥懸濁液を、増
殖寒天プレートに塗布し、4℃で3−4週間培養し、発
生したコロニーを可溶性澱粉を含む寒天プレート(ペプ
トン、酵母エキス含有)に移植し、4℃で3−4週間培
養した。発生したコロニーによる澱粉分解は、沃素−ヨ
ウ化カリ溶液をプレート上に注入して、コロニー周辺に
黒青色が現れないことによって確認した。澱粉分解性が
確認されたコロニーは、再度ペプトン、酵母エキスを含
まない澱粉含有寒天培地に移植し、澱粉だけが単一の炭
素源である栄養分の少ない最小培地での増殖を確認し
た。
【0023】この試験を通過した25菌株について脱窒
能の有無を検討した。 Giltay-Starch培地20mlを含
む試験管にコロニーを移植し、10日間培養した。培地
のグリーン色が青色に変化し、ガスの発生が認められる
ものを脱窒能ありと判定した。脱窒の高い株を取得し
た。簡易自動固定装置BIOLOGで固定を試みたが、
このシステム中のデーターベース中には登録されていな
い菌体であった。この菌は、15℃の低温下、重金属無
添加のもとで亜硝酸を蓄積することなく350ppmの
高濃度硝酸を窒素ガスに変換した。また、この菌は、重
金属の添加および30℃では脱窒能が阻害されるという
珍しい特性を有してもいた。
【0024】(直接浄化)実験室内の模擬井戸における
脱窒処理を、図1の構成の装置を用いて行なった。
【0025】ステンレス製の網籠(basket)(A)の容積
は、リアクター容積の20%とした。この網籠(A)に
は、前記の菌体を固定化した担体(B)を充填した。
【0026】担体および炭素源として、パッキン材とし
て実用化されている澱粉由来の多孔質の生分解性プラス
チックス(澱粉含有量72重量%)の廃棄物を再利用し
た。
【0027】このものは、比重が1.03で、気孔率は
20%である。この担体を、前記の菌体の懸濁液に投入
して菌の固定化を行った。
【0028】図2は、脱窒処理の繰り返し回分法による
試験の結果を経時的に示したものである。図中の矢印
は、新たな硝酸ナトリウムが投入されたことを意味して
いる。NO3 態の窒素と、NO2 態の窒素の変化が示さ
れている。
【0029】この図2において、17日に添加した後は
(17−23日)、硝酸の減少が起きていないが、これ
は実験開始時に添加した澱粉担体が全て消費去れ尽くさ
れたためである。23日に新たな澱粉担体を投入後再び
脱窒が再開された。
【0030】この図2に示したように、15℃の低温下
で170ppmの硝酸態窒素を4−5日で、亜硝酸を蓄
積することなく完全に除去できることが確認された。ま
た、消耗した担体を補充することによって長期間脱窒処
理が可能であることが示された。
【0031】
【発明の効果】以上詳しく説明したとおり、この出願の
発明によって、効率的に、しかも毒性への懸念もなく、
安価に硝酸汚染地下水の直接的浄化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の装置構成の一例を示した概要図であ
る。
【図2】実施例としての脱窒処理の結果を例示した図で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 1/20 C12N 1/20 F 11/10 11/10 Fターム(参考) 4B033 NA01 NA12 NB14 NB46 NB68 NC04 ND04 ND08 NE07 NF06 4B065 AA01X BA23 BB18 BC42 BD22 CA01 CA56 4D003 AA08 AA16 BA07 DA23 EA19 EA30 FA02 FA06 FA10 4D040 AA04 AA34 BB42 BB82 BB93

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 澱粉由来の生分解性プラスチックスを単
    一炭素源並びに菌体固定化担体とし、この担体に脱窒菌
    を固定化して硝酸態窒素に汚染された地下水と接触させ
    ることを特徴とする硝酸汚染地下水の直接浄化方法。
  2. 【請求項2】 澱粉由来の生分解性プラスチックスは、
    澱粉含有量が60重量%以上で、水に対する溶解性が低
    く、かつ多孔質である請求項1の浄化方法。
  3. 【請求項3】 澱粉由来の生分解性プラスチックスは、
    廃棄物の再利用品である請求項1または2の浄化方法。
  4. 【請求項4】 脱窒菌は、重金属の要求性がなく、亜硝
    酸を蓄積することなく20℃以下の低い温度で脱窒能を
    有する請求項1ないし3のいずれかの浄化方法。
  5. 【請求項5】 担体を網ケースに充填し、これを上下方
    向に揺動させて水との接触を図る請求項1ないし4のい
    ずれかの浄化方法。
  6. 【請求項6】 請求項5の方法のための装置であって、
    担体を収納充填する網ケースとともに、これを地下水と
    の接触状態において上下方向に揺動させる揺動手段を備
    えていることを特徴とする硝酸汚染地下水の直接浄化装
    置。
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