JP2006117716A - 開環重合体水素化物の製造方法 - Google Patents

開環重合体水素化物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
有機溶媒に対する溶解性が高く、取り扱いが容易で、低分子量体の生成が少ない機械的強度に優れる開環重合体水素化物の製造方法を提供する。
【解決手段】
周期表第6族遷移金属原子に、第二級または第三級アルキルイミドが結合してなる遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物とからなる重合触媒の存在下で、溶液中、ノルボルネン系単量体を開環重合して開環重合体を得る工程と、得られた開環重合体の炭素−炭素二重結合を水素化する工程とを有することを特徴とする開環重合体水素化物の製造方法。
【選択図】 なし。

Description

本発明は、溶解性と機械的強度に優れるノルボルネン系開環重合体水素化物を、簡易かつ効率よく製造する方法に関する。
ノルボルネン系単量体を開環重合して得られる開環重合体の水素化物が、透明性、耐熱性、低複屈折性、成形加工性などに優れることは従来から知られており、光ディスクや光学レンズなどの光学成形品の成形材料として好適であることが提案されている。
かかるノルボルネン系開環重合体水素化物は、適当な溶媒中、メタセシス反応触媒の存在下にノルボルネン系単量体を開環重合し、得られる開環重合体中の炭素−炭素二重結合を水素化することにより得ることができる。ノルボルネン系単量体を開環重合する方法としては、溶媒中で、チーグラー型重合触媒の存在下に、ノルボルネン系単量体を開環メタセシス重合する方法が広く知られている。
チーグラー型重合触媒としては、例えば、MoClやWCl等のモリブデンやタングステンのハロゲン化物と、テトラフェニルスズやテトラ(n−ブチル)スズ等の有機スズとからなる重合触媒;や、MoOClやWOCl等のモリブデンやタングステンのオキシハロゲン化物と、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等の有機アルミニウムとからなる重合触媒;等が知られている。
しかしながら、これらの重合触媒は高い重合活性を示すものの、重合反応を制御することが困難なものである。このため、例えば、これら重合触媒の存在下に重合すると、架橋した不溶性の開環重合体が大量に生成して、その後の水素化反応が十分に進行しないために、得られる重合体の耐熱性や機械的強度が劣る場合があった。また、重量平均分子量が2,000以下の低分子量体が多量に生成するために、得られるノルボルネン系開環重合体水素化物の機械的強度が低下するという問題もあった。
これらの問題を解決する方策として、例えば、遷移金属化合物触媒成分と金属化合物助触媒成分から成るメタセシス重合触媒の存在下に重合して得られるメタセシス重合体溶液を、実質的にメタセシス重合触媒を不活性化せずに、遷移金属化合物と還元性金属化合物からなる水素添加触媒の存在下に水素と接触させるメタセシス重合体の水素添加方法(特許文献1)、ジシクロペンタジエン系モノマーを開環重合触媒の存在下に開環重合する際に、反応調整剤として、ニトリル、ケトン、エーテルまたはエステル等を存在させる方法(特許文献2)等が提案されている。
しかしながら、特許文献1記載の方法では、不溶性の開環重合体の生成は抑制できるが、低分子量体の生成を抑えることは困難であった。また、特許文献2記載の方法では、ノルボルネン系単量体を最適な速度で逐次添加しないと、不溶性の開環重合体が生成したり、低分子量体の生成を抑制できない場合があった。
一方、特許文献3、4には、イミド配位子を有するタングステン錯体と有機金属還元剤とからなる触媒系が報告されている。しかしながら、これらの文献に記載されているフェニルイミドを配位子に持つタングステン錯体を使用して、ノルボルネン系単量体、特にジシクロペンタジエンを重合すると、その開環重合体水素化物は、通常溶媒に不溶であるため、反応器からの取り出しが困難であったり、ろ過による不純物の除去ができないという問題があった。また、特許文献3記載の方法は塊状重合であるため、得られる重合体は架橋性開環重合体であった。
特開平7−41549号公報 特開平11−124429号公報 特開平5−345817号公報 特開平11−80325号公報
本発明は、かかる従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、低分子量体の生成が少なく、有機溶媒に対する溶解性が高く、取り扱いが容易で、かつ機械的強度に優れる開環重合体水素化物の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、sec−ブチルイミド、シクロヘキシルイミドおよびアダマンチルイミド等の第二級または第三級アルキルイミドが結合してなる周期表第6族遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物とからなる重合触媒を用いてノルボルネン系単量体を重合すると、得られる開環重合体中の低分子量体の生成が抑制されること、および該開環重合体の水素化物が有機溶媒に対する溶解性に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、周期律表第6族遷移金属原子に、第二級または第三級アルキルイミドが結合してなる遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物とからなる重合触媒の存在下で、溶液中、ノルボルネン系単量体を開環重合して開環重合体を得る工程と、得られた開環重合体の炭素−炭素二重結合を水素化する工程とを有することを特徴とする開環重合体水素化物の製造方法が提供される。
本発明の開環重合体水素化物の製造方法においては、前記開環重合体を得る工程を、周期表第15族原子を有するルイス塩基の存在下に行うのが好ましい。
また、本発明の開環重合体水素化物の製造方法においては、前記ノルボルネン系単量体がジシクロペンタジエンであるのが好ましい。
本発明の製造方法によれば、低分子量体の生成が少なく、有機溶媒に対する溶解性が高く、取り扱いが容易で、かつ機械的強度に優れる開環重合体水素化物を簡易かつ効率よく製造することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の開環重合体水素化物の製造方法は、周期表第6族遷移金属原子に、第二級または第三級アルキルイミドが結合した遷移金属化合物と有機アルミニウムオキシ化合物とからなる重合触媒の存在下で、溶液中、ノルボルネン系単量体を開環重合して開環重合体を得る工程と、得られた開環重合体の炭素−炭素二重結合を水素化する工程とを有する。
1)開環重合体を得る工程
この工程は、前記遷移金属化合物と有機アルミニウムオキシ化合物とからなる重合触媒の存在下で、溶液中、ノルボルネン系単量体を開環重合して開環重合体を得る工程である。
(1)ノルボルネン系単量体
本発明に用いるノルボルネン系単量体は、式(1)
Figure 2006117716
で表されるノルボルネン構造を有する化合物である。
ノルボルネン系単量体としては、分子内にノルボルネン環と縮合する環を有しないノルボルネン系単量体、および3環以上の多環式ノルボルネン系単量体等が挙げられる。
前記分子内にノルボルネン環と縮合する環を有しないノルボルネン系単量体の具体例としては、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−ブチルノルボルネン、5−ヘキシルノルボルネン、5−デシルノルボルネン、5−シクロヘキシルノルボルネン、5−シクロペンチルノルボルネン等の無置換またはアルキル基を有するノルボルネン類;5−エチリデンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−プロペニルノルボルネン、5−シクロヘキセニルノルボルネン、5−シクロペンテニルノルボルネン等のアルケニル基を有するノルボルネン類;5−フェニルノルボルネン等の芳香環を有するノルボルネン類;5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−エトキシカルボニルノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−メチル−5−エトキシカルボニルノルボルネン、ノルボルネニル−2−メチルプロピオネイト、ノルボルネニル−2−メチルオクタネイト、5−ヒドロキシメチルノルボルネン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5,5−ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5−ヒドロキシ−i−プロピルノルボルネン、5,6−ジカルボキシノルボルネン、5−メトキシカルボニル−6−カルボキシノルボルネン等の酸素原子を含む極性基を有するノルボルネン類;5−シアノノルボルネン等の窒素原子を含む極性基を有するノルボルネン類;等が挙げられる。
3環以上の多環式ノルボルネン系単量体とは、分子内にノルボルネン環と、該ノルボルネン環と縮合している1つ以上の環とを有するノルボルネン系単量体である。その具体例としては、下記に示す式(2)または式(3)で示される単量体が挙げられる。
Figure 2006117716
(式中、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基;またはケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基;を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の二価の炭化水素基である。)
Figure 2006117716
(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基;またはケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基;を表し、RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。mは1または2である。)
式(2)で示される単量体としては、具体的には、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン等が挙げられる。また、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレンともいう)、テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9,9a,10−ヘキサヒドロアントラセンともいう)、等の芳香環を有するノルボルネン誘導体も挙げることができる。
式(3)で示される単量体としては、mが1であるテトラシクロドデセン類、mが2であるヘキサシクロヘプタデセン類が挙げられる。
テトラシクロドデセン類の具体例としては、テトラシクロドデセン、8−メチルテトラシクロドデセン、8−エチルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキシルテトラシクロドデセン、8−シクロペンチルテトラシクロドデセン等の無置換またはアルキル基を有するテトラシクロドデセン類;8−メチリデンテトラシクロドデセン、8−エチリデンテトラシクロドデセン、8−ビニルテトラシクロドデセン、8−プロペニルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキセニルテトラシクロドデセン、8−シクロペンテニルテトラシクロドデセン等の環外に二重結合を有するテトラシクロドデセン類;8−フェニルテトラシクロドデセン等の芳香環を有するテトラシクロドデセン類;8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−ヒドロキシメチルテトラシクロドデセン、8−カルボキシテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸無水物等の酸素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−シアノテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸イミド等の窒素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−クロロテトラシクロドデセン等のハロゲン原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−トリメトキシシリルテトラシクロドデセン等のケイ素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類等が挙げられる。
ヘキサシクロヘプタデセン類の具体例としては、ヘキサシクロヘプタデセン、12−メチルヘキサシクロヘプタデセン、12−エチルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキシルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンチルヘキサシクロヘプタデセン等の無置換またはアルキル基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−メチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−エチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−ビニルヘキサシクロヘプタデセン、12−プロペニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキセニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンテニルヘキサシクロヘプタデセン等の環外に二重結合を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−フェニルヘキサシクロヘプタデセン等の芳香環を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−メチル−12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−ヒドロキシメチルヘキサシクロヘプタデセン、12−カルボキシヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン−12,13−ジカルボン酸、ヘキサシクロヘプタデセン−12,13−ジカルボン酸無水物等の酸素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−シアノヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸イミド等の窒素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−クロロヘキサシクロヘプタデセン等のハロゲン原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−トリメトキシシリルヘキサシクロヘプタデセン等のケイ素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類等が挙げられる。これらのノルボルネン系単量体は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの3環以上の多環式ノルボルネン系単量体には、エンド体とエキソ体の異性体が含まれるが、本発明に使用する単量体は、これら異性体の混合物であっても構わない。
これらの中でも、本発明で用いるノルボルネン系単量体としては、機械的強度に優れる開環重合体水素化物を簡便に得られることから、ジシクロペンタジエンが特に好ましい。
本発明においては、上記したノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体とを組み合わせて用いることもできる。ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン等の環状ジエンおよびその誘導体;等が挙げられる。
(2)重合触媒
本発明に使用される重合触媒は、(a)周期表第6族遷移金属原子に、第二級または第三級アルキルイミドが結合した遷移金属化合物(以下、「遷移金属イミド化合物」ということがある。)と、(b)有機アルミニウムオキシ化合物とからなる。
(a)遷移金属イミド化合物
本発明に用いられる遷移金属イミド化合物は、周期表第6族遷移金属原子に、第二級または第三級アルキルイミドが配位してなる化合物であればよく、具体的には、下記式(4)で示す化合物を挙げることができる。
Figure 2006117716
式(4)中、Mは周期表第6族遷移金属を表す。具体的には、Cr、Mo、W等が挙げられ、なかでも触媒機能が優れることからMo、Wが好ましく、Wが特に好ましい。
は中性配位子、すなわち中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子を表す。具体的には、ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトンやシクロヘキサノン等のケトン類;アセトニトリルやベンゾニトリル等のニトリル類;トリエチルアミンやN,N−ジエチルアニリン等のアミン類;ピリジンやルチジン等のピリジン類;トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド;シクロオクタジエン;水;一酸化炭素;トルエンやキシレン等のアレーン類;トリフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類;エチレンカーボネート等の炭酸エステル;エチルアセテート等のエステル類;等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、安定な遷移金属錯体を形成できることから、エーテル類、ピリジン類、ニトリル類が好ましい。
aは0〜2の整数を表す。
はアニオン性配位子、すなわち中心金属から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子を表す。具体的には、フッ素原子、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;水素(ヒドリド);アセチルアセトネート等のジケトネート基;置換シクロペンタジエニル基、置換アリル基、アルケニル基、アルキル基、アリール基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルキルスルフォネート基、アリールスルフォネート基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、安定な遷移金属錯体を形成できることから、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシル基、アリールオキシ基が好ましい。
bは1〜4の整数を表す。
〜R10の少なくとも2つはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子およびケイ素原子から選ばれる原子を含む官能基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基で、残りは水素原子である。R〜R10は、互いに結合して、シクロヘキシル基、アダマンチル基等の環構造を有する基を形成していてもよい。
〜R10のうち2つが炭化水素基で1つが水素原子である場合は、式(4)で表される化合物は第二級アルキルイミド配位子となり、R〜R10のすべてが炭化水素基である場合は第三級アルキルイミド配位子となる。
第二級アルキルイミド配位子の具体例としては、イソプロピルイミド、sec−ブチルイミド、ジエチルメチルイミド、シクロペンチルイミド、シクロヘキシルイミド、シクロヘプチルイミド、シクロオクチルイミド、シクロドデシルイミド、ジフェニルメチルイミド、α−メチルベンジルイミド等が挙げられる。
第三級アルキルイミド配位子の具体例としては、tert−ブチルイミド、アダマンチルイミド、トリフェニルメチルイミド等が挙げられる。
これらの中でも、シクロペンチルイミド、シクロヘキシルイミド、シクロヘプチルイミド、シクロオクチルイミド、シクロドデシルイミド、アダマンチルイミド等の、R〜R10のうち少なくとも2つが互いに結合して環構造を有するアルキルイミド配位子が好ましく、シクロペンチルイミド、シクロヘキシルイミド、シクロヘプチルイミド、アダマンチルイミドが特に好ましい。
また、式(4)で表される化合物においては、複数個のL同士、またはX同士が結合してキレート配位子となっていてもよく、R〜R10がL、またはXと結合してキレート配位子となっていてもよい。
式(4)で表される化合物の具体例を、Mがタングステンの場合(タングステンイミド化合物)を例にとって示すと、タングステン(イソプロピルイミド)(テトラクロリド)(ジエチルエーテル)、タングステン(sec−ブチルイミド)(テトラクロリド)(ジエチルエーテル)、タングステン(tert−ブチルイミド)(テトラクロリド)(ジエチルエーテル)、タングステン(シクロヘキシルイミド)(テトラクロリド)、タングステン(シクロヘキシルイミド)(テトラクロリド)(ジエチルエーテル)、タングステン(シクロヘキシルイミド)(フェノキシド)(トリクロリド)(ジエチルエーテル)、タングステン(シクロヘキシルイミド)(ジフェノキシド)(ジクロリド)(テトラヒドロフラン)、タングステン(アダマンチルイミド)(テトラクロリド)、タングステン(アダマンチルイミド)(テトラクロリド)(テトラヒドロフラン)、タングステン(アダマンチルイミド)(tert−ブトキシド)(トリクロリド)(ジエチルエーテル)、タングステン(アダマンチルイミド)(テトライソプロポキシド)等が挙げられる。
遷移金属イミド化合物は、公知の方法、例えば、特許文献3に記載されている方法で合成することができる。
例えば、タングステンイミド化合物は、六塩化タングステンと、シロキサン化合物やケトン化合物等のオキシ化剤から得られるタングステンオキシテトラクロリドに、目的の置換基を有するイソシアネートとを混合して反応させ、精製・単離することによって合成することができる。
本発明においては、触媒成分として、得られる単離精製した遷移金属イミド化合物を用いてもよいし、精製する前の遷移金属イミド化合物を用いることもできる。例えば、上記タングステンイミド化合物を用いる場合は、タングステンオキシテトラクロリドと置換イソシアネートとの反応生成物をそのまま用いることができる。さらに、六塩化タングステンとオキシ化剤とを反応させた反応液に置換イソシアネートを混合し、反応した溶液をそのまま触媒成分として用いても構わない。
(b)有機アルミニウムオキシ化合物
上記(a)遷移金属イミド化合物は、有機アルミニウムオキシ化合物と組み合わせることにより、分子量分布が狭く、低分子量体の含有量が少ないノルボルネン系開環重合体水素化物を得るのに好適な、高活性な重合触媒となる。
有機アルミニウムオキシ化合物とは、アルミニウム原子に酸素原子が結合した化合物であり、具体的には、アルキルオキシ基またはアリールオキシ基を有するアルミニウム化合物またはアルミノキサンである。
アルキルオキシ基を有するアルミニウム化合物としては、ジメチルアルミニウムメトキシド、メチルアルミニウムジメトキシド、ジメチルアルミニウムブトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、ジイソブチルアルミニウムイソブトキシド等が挙げられる。アリールオキシ基を有するアルミニウム化合物としては、ジメチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジイソブチルアルミニウムフェノキシド等が挙げられる。
アルミノキサンとしては、従来公知の、有機アルミニウムと水との反応によって得られるアルミノキサン、例えば、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン等を挙げることができる。
また、有機アルミニウムオキシ化合物としては、有機アルミニウムと、水、アルコール類またはフェノール類とを、開環重合する工程で混合して得られるものでもよい。
アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等が挙げられる。
フェノール類としては、フェノール、o−メチルフェノール、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等が挙げられる。
これらの中でも、アルコール類が好ましく、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコールが特に好ましい。
有機アルミニウムオキシ化合物の使用量は、用いる有機アルミニウムオキシ化合物によって異なるが、遷移金属イミド化合物の中心金属に対して、モル比で0.1〜1,000倍が好ましく、0.2〜500倍がより好ましく、0.5〜200倍が特に好ましい。使用量が0.1倍より少ないと重合活性が向上せず、1,000倍より多いと副反応が起こりやすくなる。
本発明においては、前記(a)、(b)の重合触媒系に、さらに第三成分としてルイス塩基を添加するのが好ましい。ルイス塩基の存在下で開環重合を行うことによって、重合速度や得られる開環重合体の分子量分布を制御することができる。
ルイス塩基としては、周期表第15族原子を有するルイス塩基が、重合・水素化後の重合体の溶解性を改良できる観点から、より好ましい。周期表第15族原子としては、窒素原子またはリン原子が挙げられる。
窒素原子を有するルイス塩基としては、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン等のアミン類;ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、2,3−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、3,4−ジメチルピリジン、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、α−コリジン、β−コリジン、γ−コリジン等のピリジン類;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセタミド等のアミド類;等を挙げることができる。
リン原子を有するルイス塩基としては、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等のホスフィン類;トリフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類;等が挙げられる。
また、その他のルイス塩基として、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトンやシクロヘキサノン等のケトン類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド類;エチルアセテート等のエステル類;等を使用することもできる。
添加するルイス塩基の量は、特に制限されないが、遷移金属イミド化合物の中心金属に対して、モル比で0.1〜1,000倍が好ましく、0.2〜500倍がより好ましく、0.5〜200倍が特に好ましい。
(3)溶媒
開環重合反応は有機溶媒中で行われる。用いる有機溶媒としては、開環重合反応に影響せず、得られる重合体が所定の条件で溶解もしくは分散できるものであれば、特に限定されないが、工業的に汎用なものが好ましい。
例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系脂肪族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系芳香族炭化水素系溶媒;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素炭化水素系溶媒;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフラン等のエ−テル系溶媒;アニソール、フェネトール等の芳香族エーテル系溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、工業的に汎用な芳香族炭化水素系溶媒や脂肪族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族エーテル系溶媒が好ましい。
(4)開環重合の方法
開環重合は、前記有機溶媒中、前記遷移金属イミド化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、およびノルボルネン系単量体を混合することによって行われる。混合する順序は特に限定されない。例えば、遷移金属イミド化合物と有機アルミニウムオキシ化合物との混合物をノルボルネン系単量体に添加して混合してもよいし、ノルボルネン系単量体と遷移金属イミド化合物との混合物に有機アルミニウムオキシ化合物を添加して混合してもよいし、ノルボルネン系単量体と有機アルミニウムオキシ化合物との混合物に遷移金属イミド化合物を添加して混合してもよい。第三成分としてルイス塩基を添加する場合は、上記のいずれの溶液に添加しても構わない。
用いる重合触媒とノルボルネン系単量体の使用割合は、重合触媒中の遷移金属:ノルボルネン系単量体が、モル比で、通常1:100〜1:2,000,000、好ましくは1:200〜1,000,000、より好ましくは1:500〜1:500,000である。触媒量が多すぎると触媒除去が困難となり、少なすぎると十分な重合活性が得られない。
ノルボルネン系単量体の濃度は、溶液中1〜50重量%が好ましく、2〜45重量%がより好ましく、3〜40重量%が特に好ましい。単量体の濃度が1重量%より小さい場合は生産性が悪く、50重量%より大きい場合は重合後の溶液粘度が高すぎて、その後の水素化反応が困難となる。
重合温度は、特に制限はなく、通常、−30℃〜+200℃、好ましくは0℃〜180℃である。重合時間は、特に制限はなく、通常、1分間〜100時間である。
開環重合においては、反応系に分子量調節剤を添加することができる。分子量調節剤を添加することで、得られる開環重合体の分子量を調整することができる。用いる分子量調節剤としては特に限定されず、従来公知のものが使用できる。例えば、ビニル化合物やジエン化合物が挙げられる。
前記ビニル化合物としては、ビニル基を有する有機化合物であれば特に限定されないが、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエン等のスチレン類;エチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエーテル類;アリルクロライド等のハロゲン含有ビニル化合物;酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレート等酸素含有ビニル化合物、アクリルアミド等の窒素含有ビニル化合物等を挙げることができる。
ジエン化合物としては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン等の非共役ジエン;または1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン;等が挙げられる。
ビニル化合物またはジエン化合物の使用量は、目的とする開環重合体の分子量により、通常、ノルボルネン系単量体に対して、0.1〜10モル%の範囲で任意に選択することができる。
得られる開環重合体の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定した重量平均分子量が、通常、5,000〜1,000,000、好ましくは7,000〜500,000、より好ましくは8,000〜400,000である。分子量が小さすぎると機械的強度が弱く、高すぎると重合溶液が高粘度となるため、取り扱いが困難となる。
2)水素化する工程
この工程は、前記開環重合する工程で得られたノルボルネン系開環重合体の炭素−炭素二重結合を水素化する工程である。当該工程で行われる水素化反応は、水素化触媒の存在下に水素を導入し、ノルボルネン系開環重合体の主鎖中の炭素−炭素二重結合を飽和単結合に変換する反応である。
水素化触媒としては特に限定されず、オレフィン化合物の水素化に際して一般的に使用されているものを適宜使用すればよい。例えば、酢酸コバルトとトリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナートとトリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリドとn−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリドとsec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネートとジメチルマグネシウム等の遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなるチーグラー系触媒;ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、特開平7−2929号公報、特開平7−149823号公報、特開平11−209460号公報、特開平11−158256号公報、特開平11−193323号公報、特開平11−209460号公報等に記載されるルテニウム化合物からなる貴金属錯体触媒;等の均一系触媒;ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム等の金属を、カーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタン等の担体に担持させた担持型不均一系触媒;等が挙げられる。
これらの水素化触媒の中でも、担持型不均一系触媒が、水素化反応後に反応溶液を濾別することで水素化触媒を容易に除去できるので好ましい。
担持型不均一系触媒としては、具体的には、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナ等が挙げられる。
水素化反応は、通常、有機溶媒中で実施される。有機溶媒は生成する水素化物の溶解性により適宜選択することができ、前記開環重合反応に用いた有機溶媒と同様の有機溶媒を使用することができる。したがって、開環重合反応後、溶媒を入れ替えることなく、そのまま水素化触媒を添加して反応させることもできる。
水素化反応条件は、使用する水素化触媒の種類に応じて適宜選択すればよい。
反応温度は、通常、−20〜+250℃、好ましくは−10〜+220℃、より好ましくは0〜200℃である。−20℃未満では反応速度が遅くなり、一方、250℃を超えると副反応が起こる場合がある。
水素圧力は、通常、0.01〜10.0MPa、好ましくは0.05〜8.0MPa、より好ましくは0.1〜5.0MPaである。水素圧力が0.01MPa未満では水素化速度が遅くなり、10.0MPaを超えると高耐圧反応装置が必要となる。
反応時間は、所望の水素化率とできれば特に限定されないが、通常0.1〜50時間の範囲であり、重合体中の主鎖の炭素−炭素二重結合のうち50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上を水素化することができる。
得られる開環重合体水素化物の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)が、5,000〜1,000,000であり、好ましくは7,000〜500,000、より好ましくは8,000〜400,000である。分子量が小さすぎると機械的強度が弱く、大きすぎると溶液が高粘度となるため、取り扱いが困難となる。
本発明の製造方法により得られる開環重合体水素化物のうち、低分子量体(分子量が2,000以下の成分)の割合は、10%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下である。
以上のようにして得られる本発明の開環重合体水素化物は、機械的強度、成形外観性に優れており、医療用器材;電気絶縁材料;電子部品処理用器材;光学材料;受光素子用窓透の電子部品用途;窓、機器部品、ハウジング等の構造材料や建材; バンパー、ルームミラー、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、インストルメントパネル等の自動車用器材; スピーカーコーン材、スピーカー用振動素子、電子レンジ容器等の電気用器材; ボトル、リターナブルボトル、哺乳瓶等の食品用容器;ラップ等の包装材料;フィルム、シート、ヘルメット等の種々の用途に利用できる。
以下に、実施例、および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。実施例中の部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
(1)開環重合体および開環重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)、ならびに分子量2,000以下の低分子量体の全重合体に対する割合は、ジクロロベンゼンを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により140℃で測定し、ポリスチレン換算値として求めた。
(2)開環重合体水素化物の水素化率は、H−NMRスペクトル測定により求めた。
(3)開環重合体水素化物のガラス転移温度(Tg)および融点(Tm)は、示差走査熱量計を用いて、10℃/分で昇温して測定した。
[実施例1]
攪拌機付きガラス製反応器に、タングステン(シクロヘキシルイミド)テトラクロリド・ジエチルエーテル0.061部とシクロヘキサン1.0部を添加した。ここに、さらにジエチルアルミニウムエトキシド0.047部をヘキサン0.5部に溶解した溶液を添加して、室温にて30分撹拌した。
得られた混合物に、ジシクロペンタジエン7.5部、シクロヘキサン27部、1−オクテン0.3部を添加し、50℃において重合反応を行った。重合反応開始後、徐々に溶液の粘度が上昇した。3時間撹拌後、重合反応液に大量のイソプロピルアルコールを注いで沈殿物を凝集させ、濾別洗浄後、40℃で24時間減圧乾燥した。
得られた開環重合体の収量は7.4部であり、Mn=14,700、Mw=69,000であった。
攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体3部とシクロヘキサン47部を加えた。次いでビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリド0.0187部およびエチルビニルエーテル0.45部をシクロヘキサン10部に溶解した水素化触媒溶液を添加し、水素圧0.8MPa、160℃で8時間水素化反応を行った。
反応液を多量のイソプロピルアルコールに注いでポリマ−を完全に析出させ、濾別洗浄後、40℃で24時間減圧乾燥した。H−NMRスペクトル測定においては、炭素−炭素二重結合由来のピークは観測されず、水素化率は99%以上であった。融点(Tm)は観測されず、ガラス転移温度(Tg)は101℃であった。
得られた開環重合体水素化物は、60℃のシクロヘキサンに完全に可溶であり、Mn=15,800、Mw=75,100であった。分子量2,000以下の低分子量体の全重合体に対する割合は、1.2重量%(ピーク面積比)であった。
[比較例1]
タングステン(シクロヘキシルイミド)テトラクロリド・ジエチルエーテルをタングステンオキシテトラクロリドに代えた他は、実施例1と同様にして重合を行った。重合後、重合反応溶液は白濁した。実施例1と同様にして水素化反応を行ったところ、水素化率は55%で、反応溶液は白濁していた。Mn=14,200、Mw=38,100であり、分子量2,000以下の低分子量体の全重合体に対する割合は、5.5重量%(ピーク面積比)であった。
[比較例2]
タングステン(シクロヘキシルイミド)テトラクロリド・ジエチルエーテルをタングステン(フェニルイミド)テトラクロリド・ジエチルエーテルに代えた他は、実施例1と同様の操作を行った。水素化後、重合体は析出した。水素化率は99%以上で、Mn=18,400、Mw=45,200であり、分子量2,000以下の低分子量体の全重合体に対する割合は、0.6重量%(ピーク面積比)であったが、重合体は結晶性で、融点(Tm=256℃)を有し、有機溶媒に不溶であった。
[実施例2]
ジエチルアルミニウムエトキシド0.047部をヘキサン0.5部に溶解した溶液に、さらに2,6−ジメチルピリジン0.013部を添加した他は、実施例1と同様の操作を行い、開環重合体7.4部を得た。得られた開環重合体は、Mn=10,000、Mw=24,000であった。
次いで、得られた開環重合体を用いて、実施例1と同様にして開環重合体水素化物を得た。H−NMRスペクトル測定においては、炭素−炭素二重結合由来のピークは観測されず、水素化率は99%以上であった。融点(Tm)は観測されず、ガラス転移温度(Tg)は97℃であった。
得られた開環重合体水素化物は、60℃のシクロヘキサンに完全に可溶であり、Mn=12,100、Mw=26,800であり、分子量2,000以下の低分子量体の全重合体に対する割合は、ピーク面積比で0.8重量%であった。
[実施例3]
タングステン(シクロヘキシルイミド)テトラクロリド・ジエチルエーテル0.061部に代えて、タングステン(sec−ブチルイミド)テトラクロリド・ジエチルエーテル0.058部用いた他は実施例1と同様の操作を行い、開環重合体7.4部を得た。得られた開環重合体は、Mn=15,200、Mw=95,800であった。
次いで、得られた開環重合体を用いて、実施例1と同様にして開環重合体水素化物を得た。H−NMRスペクトル測定においては、炭素−炭素二重結合由来のピークは観測されず、水素化率は99%以上であった。融点(Tm)は観測されず、ガラス転移温度(Tg)は102℃であった。
得られた開環重合体水素化物は、60℃のシクロヘキサンに完全に可溶であり、Mn=15,800、Mw=97,700であり、分子量2,000以下の低分子量体の全重合体に対する割合は、ピーク面積比で0.9重量%であった。
[実施例4]
タングステン(シクロヘキシルイミド)テトラクロリド・ジエチルエーテル0.061部に代えて、タングステン(アダマンチルイミド)テトラクロリドを0.058部用いた他は実施例1と同様の操作を行い、開環重合体7.4部を得た。得られた開環重合体のMn=11,100、Mw=43,300であった。
次いで、得られた開環重合体を用いて、実施例1と同様にして開環重合体水素化物を得た。H−NMRスペクトル測定においては、炭素−炭素二重結合由来のピークは観測されず、水素化率は99%以上であった。融点(Tm)は観測されず、ガラス転移温度(Tg)は99℃であった。
得られた開環重合体水素化物は、60℃のシクロヘキサンに完全に可溶であり、Mn=12,800、Mw=46,100であり、分子量2,000以下の低分子量体の全重合体に対する割合は、ピーク面積比で0.7重量%であった。
実施例1〜4では、低分子量体の生成は少なく、得られた開環重合体水素化物は60℃のシクロヘキサンに可溶であった。一方、比較例1では低分子量体が多く生成し、得られた開環重合体水素化物は一部不溶となって白濁するものであった。比較例2では、低分子量体の生成は少ないが、得られた開環重合体水素化物は有機溶媒に不溶なものであった。

Claims (3)

  1. 周期表第6族遷移金属原子に、第二級または第三級アルキルイミドが結合してなる遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物とからなる重合触媒の存在下で、溶液中、ノルボルネン系単量体を開環重合して開環重合体を得る工程と、得られた開環重合体の炭素−炭素二重結合を水素化する工程とを有することを特徴とする開環重合体水素化物の製造方法。
  2. 前記開環重合体を得る工程を、周期表第15族原子を有するルイス塩基の存在下に行うことを特徴とする請求項1に記載の開環重合体水素化物の製造方法。
  3. 前記ノルボルネン系単量体がジシクロペンタジエンである請求項1または2に記載の開環重合体水素化物の製造方法。







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